説明

管内洗浄用ノズルおよびこれを用いた排水管洗浄方法

【課題】排水管内の洗浄効率を向上させると共に、作業者の負担を軽減し、ホースとの摩擦により管内の曲がり部にダメージを与える度合いを少なくすることができる管内洗浄用ノズルおよびこれを用いた排水管洗浄方法を提供すること。
【解決手段】立管2の上端部からノズルNを挿入し、ノズルを横引き管3に至るまで引き下ろす。続いて送水ホースHに高圧水を送ることでノズルに形成された斜め後方への噴射口より高圧水を噴射し、その推進力によりノズルNを横引き管3内に進行させることで、横引き管内を洗浄する。高圧水の送水を停止し、再び送水を開始させることで前記ノズルに形成された斜め前方への噴射口より高圧水を噴射させつつ、前記ノズルを横引き管内から立管内に沿って引き上げ、噴射水により横引き管内および前記立管内を洗浄する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、集合住宅等の排水管内を洗浄するのに適した管内洗浄用ノズルおよびこれを用いた排水管洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、土地の有効活用等の理由から、特に都市部やその近郊において高層ビル形式の集合住宅が多数建設されている。このビル形式の集合住宅から排出される生活排水(汚水)は、個別の宅内に敷設された専用排水管からビル内部に設けられた共用の立管を介して、外部の横引き管に排出されるように構成され、これにより良好な生活環境が維持されるようになされている。
【0003】
ところで、この生活排水(汚水)には多量の残渣、油脂等が含まれているために、前記した専用排水管のみならず共用排水管(前記立管および横引き管)の管壁に固形物となって付着し、相当の期間の経過により排水管を閉塞させることもある。また、この固形物から悪臭が放され、生活環境を悪化させることもある。このような生活環境の悪化を防止し、良好な生活環境を維持するために、一定期間ごとに専用排水管ならびに共用排水管の清掃が必要となる。
【0004】
従来、このように排水管内に付着した固形物を洗浄する(除去する)一つの手段として、高圧水噴射洗浄法(以下、高圧洗浄法という)が採用されている。この高圧洗浄法は、ホースの先端に取り付けられたノズルから排水管内に付着した固形物に向けて、高圧の水を噴射し、前記固形物を除去するものである。
【0005】
図8〜図11は、高層のビル形式による集合住宅における排水管の設置状況の一例、ならびに高圧洗浄法の作業例を模式的に示したものである。すなわち、図8〜図11に示すA,B,Cは、各階における個別の宅内を示したものであり、各宅内の台所、洗面所、洗濯パン、浴室からの生活排水は、それぞれ各宅内の床下部分に水平方向に敷設された専用排水管1a,1b,1cに排出され、これらは建築物(集合住宅)に垂直方向に敷設された共用の立管2に集合され、外部の横引き管3に流される。
【0006】
前記した排水管の敷設状態においては、一般的に前記立管2および横引き管3を含む共用排水管と、個別の宅内における専用排水管1a,1b,1cとに別けて洗浄する工法が採用される。
【0007】
まず図8は、前記立管2および横引き管3を含む共用排水管を洗浄する工法を説明するものであり、マンホール4または図示せぬ横引き管掃除口より、洗浄用ノズルNを横引き管3を介して立管2に挿入する。これは上向き洗浄と呼ばれる洗浄工法を示しており、通常における共用排水管の洗浄は、この上向き洗浄が採用される。この場合、フレキシブルホースHの先端に高圧水を斜め後方に噴射する洗浄用ノズルを取り付け、高圧水の噴射によるノズルの前方向への推進力を利用するようになされる。
【0008】
すなわち、図8に示す例においては作業者Pは、ホースHの先端に取り付けられたノズルNをマンホール4から横引き管3内に差し込み、ノズルNより高圧水を斜め後方に噴射させることによるノズルの前方向への推進力を利用して、ノズルNを横引き管3から立管2に向かって前進させつつ、管内の洗浄を行う。
【0009】
また、ノズルNが立管2の上端部付近まで達した場合には、ノズルNより高圧水を噴射させたまま、ホースHを引き戻す操作を行うことで、管内から剥離された汚れは噴射水により引き落とされるようにして横引き管3側に搬出される。これにより、ノズルNの行きと帰りの2度において共用排水管を洗浄することができる。
【0010】
ところで、排水管の種類や構造により、図8に示した上向き洗浄の工法が採用できない場合があり、この場合には図9に示すように、屋上付近の通気口5、或いは最上階付近の掃除口6を利用して洗浄作業が行われる。図9に示す例は下向き洗浄と呼ばれる洗浄工法を示しており、最上階付近の掃除口6より、立管2にノズルNを挿入し、高圧水を噴射させない状態でホースHを繰り出して、先端のノズルNを最下階まで挿入する。この状態で高圧水をノズルNより噴射させつつホースHを引き上げることで、共用排水管(立管2)内を洗浄することができる。
【0011】
なお、図9に示す下向き洗浄においては、ノズルNにおける高圧水の噴射方向はノズルの進退方向に直交する方向に(ノズルの周方向に噴射するように)構成されていることが望ましい。これによりノズルNの引き上げ時において、高圧水の噴射により発生するノズルの引上げ抵抗を軽減させることができる。
【0012】
一方、図10は専用排水管の洗浄工法を説明するものである。図10に示す例においてはA宅内における専用排水管1aを洗浄する様子を示したものであり、台所、洗面所、洗濯パン、浴室の4か所の排水口よりノズルNを挿入して洗浄が行われる。この場合、前記ノズルHは図8に示した上向き洗浄において用いるものと同様に、高圧水を斜め後方に噴射させるものが用いられる。
【0013】
これにより、ノズルの前方向への推進力を利用して、立管2の合流部まで洗浄が行われる。そして、ノズルNが立管2の合流部まで進んだ場合には、噴射水の噴射を停止させてホースを引き抜くことになる。
【0014】
これはホースを引き抜く際にも噴射水を噴射させた方が管内の洗浄効率を上げることができるものの、ノズルの前方向への推進力により排水管の曲がり部において大きな抵抗が発生し、ホース引き抜きの労力が大きく、また配管内の特に曲がり部にダメージを与えるのを避ける意味がある。そして、前記した専用排水管の洗浄工法は、各階における宅内において同様に行われる。
【0015】
ところで、共用排水管を洗浄する場合において、図8および図9に示した上向き洗浄工法および下向き洗浄工法も採用できないような場合には、オーバーラップ洗浄工法を採用する場合もある。図11は、その洗浄工法を説明するものであり、これは図10に示した例と同様に各宅内に敷設された専用排水管を利用して共用排水管内にノズルを挿入するものである。
【0016】
この場合においても、ノズルHは高圧水を斜め後方に噴射させるものが用いられる。すなわち図11に示すようにA宅内の専用排水管1aにノズルNを挿入し、高圧水を噴射させることによるノズルの前方向への推進力を利用して、立管2の合流部まで洗浄を行う。さらに立管2との合流後も、そのまま高圧水を噴射させつつノズルNを下階における専用排水管1bの合流部まで進行させて立管2内を洗浄する。
【0017】
ノズルNが下階における専用排水管1bの合流部まで達した場合には、高圧水の噴射を止めて、ホースHを引き抜く作業が行われる。これはホースを引き抜く際にも噴射水を噴射させた方が管内の洗浄効率を上げることができるものの、ノズルの前方向への推進力により排水管の曲がり部において大きな抵抗が発生し、ホース引き抜きの労力が大きく、また配管内の特に曲がり部にダメージを与えるのを避ける意味がある。
【0018】
前記したオーバーラップ洗浄工法は、各階毎に同様の洗浄工法を実行することで、立管2の全体を洗浄することができる。なお、前記した各洗浄工法において用いられる高圧水を斜め後方に噴射させる管内洗浄用のノズルについては、すでに数多くの特許出願がなされており、例えば特許文献1および2などに開示されている。
【特許文献1】特開2003−184151号公報
【特許文献2】特開2006−239637号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
ところで、図9に示した従来における共用排水管の下向き洗浄においては、立管2と横引き管3との間に曲がり部T1が存在するために、ノズルNを横引き管3の奥までに誘導することが難しく、横引き管3の洗浄に限界が生ずる。
【0020】
そこで、ノズルNとして高圧水を斜め後方に噴射するものを用いれば、その推進力を利用して横引き管3の奥までにノズルを誘導することが可能ではあるものの、前記ノズルを引き出しつつ管内の洗浄を行うには、まず前記曲がり部T1においてホースHとの間で摩擦が発生する。さらに、立管2の高さ分に引き出された長尺なホースの重量と、ノズルNの推進力に対抗してホースを引き上げなけれはならないために、作業者Pに大きな負担が加わるという問題点を抱えることになる。
【0021】
一方、図10に示した従来における専用排水管の洗浄工法においても、排水口と専用排水管1aとの間に曲がり部T2が存在するために、ノズルNより高圧水を斜め後方に噴射させたまま、ホースHを引き抜く作業は同様に作業者への負担が大きく、曲がり部T2にダメージを与える可能性が生ずる。このために、従来における専用排水管の洗浄工法においてはすでに説明したとおり、ノズルNの進行時(往動時)において管内の洗浄を行い、ノズルNの戻り時(復動時)には高圧水の噴射を停止させざるを得ない。
【0022】
さらに、図11に示した従来におけるオーバーラップ洗浄工法においても、排水口と専用排水管1aとの間に曲がり部T2が、また専用排水管1aと立管2との間に曲がり部T3がそれぞれ存在するために、同様の理由によりノズルNの進行時(往動時)において管内の洗浄を行い、ノズルNの戻り時(復動時)には高圧水の噴射を停止させざるを得ない。
【0023】
この発明は、従来における共用排水管の下向き洗浄工法、専用排水管の洗浄工法、並びにオーバーラップ洗浄工法を実行する場合の前記した各問題点に着目してなされたものであり、ノズルの往復動においてそれぞれ高圧水の噴射を行うことで管内の洗浄効率を向上させると共に、作業者の負担を軽減し、かつホースとの摩擦により排水管内の特に曲がり部にダメージを与える度合いを少なくすることができる管内洗浄用ノズルおよびこれを用いた排水管洗浄方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
前記した課題を解決するためになされたこの発明にかかる管内洗浄用ノズルは、送水ホースの先端部に取り付けられ、前記ホースを介して送られる高圧水を、ホース側から視た斜め前方および斜め後方に噴射する噴射口をそれぞれ形成したノズル本体と、前記ノズル本体内に収容され、重力を受けて移動する封止体により、前記ノズル本体に形成された斜め前方への噴射口および斜め後方への噴射口に対して、前記高圧水の送水を択一的に切り換える切替え弁とを備えた点に特徴を有する。
【0025】
この場合、好ましい一つの形態は、前記ホース側から視たノズル本体の前方が下向きに設定された場合、前記切替え弁を構成する封止体がノズル本体内の前方側に移動して、前記ノズル本体に形成された斜め前方への噴射口に至る高圧水を封止することで、ノズル本体に形成された斜め後方への噴射口に対して高圧水を送水するよう構成され、前記ホース側から視たノズル本体が水平方向に向くように設定された場合、前記封止体がノズル本体の前方側から離れ、前記ノズル本体に形成された斜め後方への噴射口に至る高圧水を封止することで、ノズル本体に形成された斜め前方への噴射口に対して高圧水を送水するよう構成される。
【0026】
また、好ましい他の一つの形態は、前記ホース側から視たノズル本体の前方が下向きに設定された場合、前記切替え弁を構成する封止体がノズル本体内の前方側に移動して、前記ノズル本体に形成された斜め後方への噴射口に至る高圧水を封止することで、ノズル本体に形成された斜め前方への噴射口に対して高圧水を送水するよう構成され、前記ホース側から視たノズル本体が水平方向に向くように設定された場合、前記封止体がノズル本体の前方側から離れ、前記ノズル本体に形成された斜め前方への噴射口に至る高圧水を封止することで、ノズル本体に形成された斜め後方への噴射口に対して高圧水を送水するよう構成される。
【0027】
前記したいずれの形態においても、前記斜め前方への噴射口および斜め後方への噴射口はそれぞれ複数備えられ、前記ノズル本体に対して放射状に形成されていることが望ましい。
【0028】
また、前記切替え弁を構成する封止体は球状部材により構成されていることが望ましく、前記球状部材が重力を受けて移動することで、ノズル本体内に形成された前記斜め前方への噴射口に通ずる円形状の開口、もしくはノズル本体内に形成された斜め後方への噴射口に通ずる円形状の開口を、択一的に閉塞するように構成される。
【0029】
これに加えて、好ましくは前記ホースを介して送られる高圧水の噴射により回転駆動されるロータが前記ノズル本体に具備され、前記ロータの回転に伴い、前記ホースを介して送られる高圧水をノズル本体の周方向に回転させつつ噴射させる回転噴射手段がさらに具備された構成のノズルを採用することもできる。
【0030】
さらに、前記ホース側から視たノズル本体の前端部側に、可撓性の連結部材を介して重りが取り付けられた構成のノズルも好適に利用することもできる。この場合、前記重りが複数個の重りに分割されて具備され、前記各重りが可撓性の連結部材をそれぞれ介して直列に接続された構成とすることが望ましい。
【0031】
また、前記した課題を解決するためになされたこの発明にかかる排水管洗浄方法の好ましい一つの態様は、請求項1、請求項2、請求項4ないし請求項6のいずれか1項に記載された管内洗浄用ノズルを利用して排水管内を洗浄する排水管洗浄方法であって、建築物に垂直方向に敷設された立管と、この立管の下流に連通する水平方向に敷設された横引き管の管内を洗浄するに際して、前記立管の上端部もしくはその付近から、送水ホースの先端部に取り付けられた前記ノズルを立管内に挿入し、前記ノズルが横引き管に至るまで前記ホースを挿入する工程と、前記送水ホースに高圧水を送ることで、前記ノズルに形成された斜め後方への噴射口より高圧水を噴射し、ノズルを前記横引き管内に進行させることで、噴射水により横引き管内を洗浄する工程と、前記送水ホースに対する高圧水の送水を停止し、再び送水を開始させることで前記ノズルに形成された斜め前方への噴射口より高圧水を噴射させつつ、前記ノズルを横引き管内から前記立管内に沿って引き上げ、噴射水により横引き管内および前記立管内を洗浄する工程とが実行される点(下向き洗浄工法の1)に特徴を有する。
【0032】
またこの発明にかかる排水管洗浄方法の他の好ましい一つの態様は、請求項1、請求項2、請求項4ないし請求項6のいずれか1項に記載された管内洗浄用ノズルを利用して排水管内を洗浄する排水管洗浄方法であって、建築物に垂直方向に敷設された立管と、この立管の下流に連通する水平方向に敷設された横引き管の管内を洗浄するに際して、前記立管の上端部もしくはその付近から、送水ホースの先端部に取り付けられた前記ノズルを立管内に挿入し、続いて送水ホースに高圧水を送ることで、前記ノズルに形成された斜め後方への噴射口より高圧水を噴射し、ノズルを横引き管に至るまで進行させることで噴射水により立管内を洗浄する工程と、前記ノズルに形成された斜め後方への噴射口より高圧水の噴射を継続して、ノズルを前記横引き管内に進行させることで、噴射水により横引き管内を洗浄する工程と、前記送水ホースに対する高圧水の送水を停止し、再び送水を開始させることで前記ノズルに形成された斜め前方への噴射口より高圧水を噴射させつつ、前記ノズルを横引き管内から前記立管内に沿って引き上げ、噴射水により横引き管内および前記立管内を再び洗浄する工程とが実行される点(下向き洗浄工法の2)に特徴を有する。
【0033】
またこの発明にかかる排水管洗浄方法の他の好ましい一つの態様は、請求項1、請求項3ないし請求項8のいずれか1項に記載された管内洗浄用ノズルを利用して排水管内を洗浄する排水管洗浄方法であって、建築物に垂直方向に敷設された共用の立管にそれぞれ連通する各宅内に敷設された専用排水管の管内を洗浄するに際して、前記各宅内における専用排水管に通ずる排水口より送水ホースの先端部に取り付けられた前記ノズルを挿入し、続いて送水ホースに高圧水を送ることで、前記ノズルに形成された斜め後方への噴射口より高圧水を噴射し、ノズルを前記専用排水管内から前記立管の合流部まで進行させることで、噴射水により専用排水管内を洗浄する工程と、前記送水ホースに対する高圧水の送水を停止し、再び送水を開始させることで前記ノズルに形成された斜め前方への噴射口より高圧水を噴射させつつ、前記ノズルを専用排水管内に沿って引き戻し、噴射水により専用排水管内を再び洗浄する工程とが実行される点(専用排水管洗浄工法)に特徴を有する。
【0034】
さらにこの発明にかかる排水管洗浄方法の他の好ましい一つの態様は、請求項1、請求項3ないし請求項8のいずれか1項に記載された管内洗浄用ノズルを利用して排水管内を洗浄する排水管洗浄方法であって、建築物に垂直方向に敷設された共用の立管と、前記立管にそれぞれ連通する各宅内に敷設された専用排水管の管内を洗浄するに際して、前記各宅内における専用排水管に通ずる排水口より送水ホースの先端部に取り付けられた前記ノズルを挿入し、続いて送水ホースに高圧水を送ることで、前記ノズルに形成された斜め後方への噴射口より高圧水を噴射し、ノズルを前記専用排水管内から前記立管の合流部まで進行させることで、噴射水により専用排水管内を洗浄する工程と、前記ノズルに形成された斜め後方への噴射口より高圧水の噴射を継続して前記立管と下の階の専用排水管との合流部までノズルを進行させることで、噴射水により立管内を洗浄する工程と、前記送水ホースに対する高圧水の送水を停止し、再び送水を開始させることで前記ノズルに形成された斜め前方への噴射口より高圧水を噴射させつつ、前記ノズルを立管内および専用排水管内に沿って引き戻し、噴射水により立管内および専用排水管内を再び洗浄する工程とが実行される点(オーバーラップ洗浄工法)に特徴を有する。
【発明の効果】
【0035】
前記した構成の管内洗浄用ノズルによると、ノズル本体内に重力を受けて移動する封止体を含む切替え弁が備えられ、この切替え弁によってノズル本体に形成された斜め前方への噴射口および斜め後方への噴射口に対する高圧水の供給を択一的に切り換えることができる。すなわち、高圧水の送水を停止させた時のノズル本体の姿勢によって、高圧水の噴射方向を選択することが可能であり、排水管内の洗浄工法に応じて、ノズルの前方向または後方向(戻り方向)への推進力を利用しつつ排水管内を洗浄することができる。
【0036】
また、前記した排水管の洗浄方法によると、前記洗浄用ノズルの前方向または後方向への推進力を利用して、送水ホースの繰り出しまたは引き戻しの操作を行うことができるので、作業者の負担を軽減することができる。また、排水管内の曲がり部に対する送水ホースの摺接度合いを低減させることができるので、前記曲がり部にダメージを与える度合いを少なくすることができる。加えて、排水管内を移動するノズルの往動および復動の2回にわたってそれぞれ高圧水の噴射を行うことができるので、排水管内の洗浄効率を一層向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、この発明にかかる管内洗浄用ノズルおよびこれを用いた排水管洗浄方法について、図に示す実施の形態に基づいて説明する。まず、図1Aおよび図1Bは管内洗浄用ノズルの第1の実施の形態をその中央部で切断した状態で示したものであり、これは後述する共用排水管の下向き洗浄工法において利用するに適したノズル構成を示している。
【0038】
図1Aはノズルの先端を下向きにした状態を、また図1Bはノズルを水平方向に向けた状態をそれぞれ示している。図に示すノズル本体11は金属素材により構成され、端部のホース接続口12において図示せぬ接続金具を介して送水ホースの先端部に取り付けられる。前記ノズル本体11には、その軸芯13に沿って、ホース接続口12より供給される高圧水の送水空間14が形成されている。そして送水空間14の大径部には、重力を受けて移動する封止体としての球状部材(以下ボールと称する。)15が収容されている。
【0039】
前記ボール15は、図1Aに示すようにノズルの先端を下向きにした状態においては、重力にしたがってノズル本体11内の前方側に移動する。また図1Bに示すようにノズルを水平方向に向けた状態においては、重力にしたがってノズル本体11内の前方側から離れるように作用する。
【0040】
一方、前記ノズル本体11には、前記ホースを介して送られる高圧水を、ホース側から視た斜め前方に噴射する噴射口16、および斜め後方に噴射する噴射口17がそれぞれ形成されている。前記斜め前方への噴射口16は複数、例えば4〜6個程度備えられ、各噴射口16は、前記ノズル本体11の周方向においてほぼ等間隔をもって放射状に形成されている。そして、好ましくは噴射口16を形成する内管の軸芯と、ノズル本体11の軸芯13に直交する面との角度αは、5〜20度に設定されている。
【0041】
また、前記斜め後方への噴射口17は複数、例えば4〜6個程度備えられ、各噴射口17は、前記ノズル本体11の周方向においてほぼ等間隔をもって放射状に形成されている。そして、好ましくは噴射口17を形成する内管の軸芯と、ノズル本体11の軸芯13に直交する面との角度βは、45度前後に設定されている。
【0042】
前記ノズル本体11に形成された送水空間14から前記した斜め前方への噴射口16に連通する送水部には円形状の開口18が形成されており、図1Aに示すようにノズルの先端を下向きにした状態において、前記ボール15が前記開口18を閉塞するように作用する。
【0043】
また、同様にノズル本体11に形成された送水空間14から前記した斜め後方への噴射口17に連通する送水部には円形状の開口19が形成されており、図1Bに示すようにノズルを水平方向に向けた状態において、前記ボール15が前記開口19を閉塞するように作用する。したがって、ノズル本体11に形成された送水空間14内に収容された前記ボール15と、送水空間14に形成された円形状の開口18,19は、高圧水の送水を択一的に切り換える切替え弁として機能する。
【0044】
斯くして、前記したノズルの構成によると、ホース側から視たノズル本体11の前方が下向きに設定された図1Aに示す状態においては、前記切替え弁を構成するボール15がノズル本体内の前方側に移動して、円形状の開口18を閉塞するので、ノズル本体に形成された斜め前方への噴射口16に至る高圧水を封止し、ノズル本体に形成された斜め後方への噴射口17に対して高圧水を送水するよう作用する。
【0045】
また、ノズル本体11が水平方向に向くように設定された図1Bに示す状態においては、前記切替え弁を構成するボール15がノズル本体の前方側から離れ、円形状の開口19を閉塞するので、ノズル本体に形成された斜め後方への噴射口17に至る高圧水を封止し、ノズル本体に形成された斜め前方への噴射口16に対して高圧水を送水するよう作用する。
【0046】
次に、図2Aおよび図2Bは管内洗浄用ノズルの第2の実施の形態をその中央部で切断した状態で示したものであり、これは後述する専用排水管の洗浄工法およびオーバーラップ洗浄工法において利用するに適したノズル構成を示している。
【0047】
そして、図2Aはノズルの先端を下向きにした状態を、また図2Bはノズルを水平方向に向けた状態をそれぞれ示している。この図2Aおよび図2Bに示す構成の管内洗浄用ノズルは、基本構成はすでに説明した図1Aおよび図1Bに示したものと同一であり、したがって相当する各部を同一符号で示し、その詳細な説明は省略する。
【0048】
この図2Aおよび図2Bに示す管内洗浄用ノズルにおいては、ノズル本体11の前方側に斜め後方への噴射口17が形成されており、またノズル本体11の後方側に斜め前方への噴射口16が形成されている。
【0049】
したがって前記したノズルの構成によると、ホース側から視たノズル本体11の前方が下向きに設定された図2Aに示す状態においては、前記切替え弁を構成するボール15がノズル本体内の前方側に移動して、円形状の開口19を閉塞するので、ノズル本体に形成された斜め後方への噴射口17に至る高圧水を封止し、ノズル本体に形成された斜め前方への噴射口16に対して高圧水を送水するよう作用する。
【0050】
また、ノズル本体11が水平方向に向くように設定された図2Bに示す状態においては、前記切替え弁を構成するボール15がノズル本体の前方側から離れ、円形状の開口18を閉塞するので、ノズル本体に形成された斜め前方への噴射口16に至る高圧水を封止し、ノズル本体に形成された斜め後方への噴射口17に対して高圧水を送水するよう作用する。
【0051】
図3は請求項9に記載された発明にかかる排水管の洗浄方法について説明するものであり、これは図1Aおよび図1Bに示した管内洗浄用ノズルを利用して共用排水管を下向き洗浄する例を示したものである。なお、図3に示す集合住宅における排水管の設置例は、すでに説明した図8〜図11に示した例と同一であり、したがってその詳細な説明は省略する。
【0052】
図3に示した下向き洗浄工法においては、立管2の上端部もしくはその付近、すなわち、最上階における立管2の掃除口6もしくはその付近に設けられた通気口5より、立管2内にノズルNが挿入される。そして、高圧水を噴射させない状態でホースHを繰り出して、先端のノズルNが最下階の横引き管3に至るまでホースを挿入する。この状態でホースに高圧水を送り込むことにより、ノズルNに形成された斜め後方への噴射口17より高圧水を噴射させることができる。
【0053】
すなわち、ノズルNが横引き管3に到達した状態においては、ノズルNの姿勢は図1Aに示すようにその先端が下向きにされた状態であり、ノズル本体内のボール15は重力により斜め前方への噴射口16に連通する開口18を閉塞するように作用する。この状態で高圧水が送り込まれるために、高圧水は前記したとおり斜め後方への噴射口17より噴射する。そして、高圧水がノズルに送り込まれている状態においては、ボール15はその水圧を受けて開口18の閉塞を継続する。
【0054】
したがって、ノズルNには前進方向への推進力が働き、これによりノズルNを横引き管3内に容易に誘導することができる。そして、ホースを繰り出すことにより、ノズルNは横引き管3内を進み、この時にノズルNより吐出される噴射水により、横引き管3内を洗浄することができる。
【0055】
横引き管3の洗浄が必要な位置までノズルNが達した場合には、前記送水ホースに対する高圧水の送水を停止する。この状態においては、ノズルNの姿勢は図1Bに示すように水平方向に向いた状態であり、したがってノズル本体内のボール15は重力により、斜め後方への噴射口17に連通する開口19側に移動する。この状態で再びホースHに送水を開始させることで、今度は斜め前方への噴射口16より高圧水が噴射する。
【0056】
なおこの時、図1Bに示すように開口19はノズルの軸芯13に対して必ずしも下側に位置していると限らず、再び送水したときにボール15は再び開口18を閉塞する場合もある。これはノズルに受ける推進力により作業員は感触で確認することができるので、送水を停止して、ホースHを適宜回動させた後に送水することで、斜め前方への噴射口16より高圧水を噴射するように切り替えることができる。そして、高圧水が送り込まれている状態においては、ボール15はその水圧を受けて開口19の閉塞を継続する。
【0057】
そして、ホースHを除々に引き上げることで、ノズルNは後方向(戻り方向)に作用する推進力を受けつつ前記横引き管3内および立管2内を移動し、その噴射水により管内を洗浄することができる。
【0058】
図1Aおよび図1Bに示した管内洗浄用ノズルを利用した共用排水管の下向き洗浄工法によると、ノズルNの進行および後退方向の推進力を利用して横引き管3内を往復において洗浄することができる。この時、立管2と横引き管3とが交差する曲がり部T1において、ホースHとの間で大きな摩擦が発生するのを避けることができ、曲がり部にダメージを与える度合いを低減させることができる。またノズルの推進力が利用されるので、立管2内を引き上げる作業者の負担も軽減される。
【0059】
なお、前記した共用排水管の下向き洗浄工法においては、最初にノズルNより高圧水を噴射させない状態で立管2内を下ろし、ノズルNが横引き管3に至るまでホースHを繰り出すようにしているが、前記立管2内にノズルNを下ろす際において高圧水を噴射させる洗浄工法(請求項10に記載された発明)を採用することもできる。
【0060】
この下向き洗浄工法(第2の下向き洗浄工法ともいう。)においては、図3に示すように最上階における立管2の掃除口6もしくはその付近に設けられた通気口5より、立管2にノズルNが挿入される。この状態においては、ノズルNの姿勢は図1Aに示すようにその先端が下向きにされた状態であり、ノズル本体内のボール15は重力により斜め前方への噴射口16に連通する開口18を閉塞する。この状態で高圧水が送り込まれ、これにより高圧水は斜め後方への噴射口17より噴射される。
【0061】
そして、ホースHを立管2内に繰り出すことで、ノズルNは立管2内を洗浄しつつ立管2内を下に向かって進行する。そして、ノズルNが横引き管3に到達した場合にも引き続き高圧水を噴射させた状態とすることで、ノズルNを横引き管3内に誘導することができる。この後は、前記した下向き洗浄工法と同様の工程が実行される。
【0062】
前記した第2の下向き洗浄工法によると、立管2内のノズルNの往復動において、それぞれ管内を洗浄することができるので、洗浄効率を上げることができる。
【0063】
図4は、請求項11に記載された発明にかかる排水管の洗浄方法について説明するものであり、これは図2Aおよび図2Bに示した管内洗浄用ノズルを利用してA宅内の専用排水管1aを洗浄する例を示したものである。なお、図4に示す集合住宅における排水管の設置例は、すでに説明した図8〜図11に示した例と同一であり、したがってその詳細な説明は省略する。
【0064】
図4に示した専用排水管の洗浄工法においては、A宅内における専用排水管1aに通ずる排水口より送水ホースHの先端部に取り付けられた前記ノズルNを挿入する。専用排水管1a内に挿入されたノズルNの姿勢は、図2Bに示すように水平方向に向いた状態であり、したがってノズル本体内のボール15は重力により、斜め前方への噴射口16に連通する開口18側に入り込む。この状態でホースHに送水を開始させることで、斜め後方への噴射口17より高圧水が噴射する。
【0065】
なおこの時、図2Bに示すように開口18はノズルの軸芯13に対して必ずしも下側に位置していると限らず、送水を開始したときにボール15は開口19を閉塞する場合もある。これはノズルに受ける推進力により作業員は感触で確認することができるので、送水を停止して、ホースHを適宜回動させた後に送水することで、図2Bに示すように斜め後方への噴射口17より高圧水を噴射するように設定することができる。そして、高圧水がノズルに送り込まれている状態においては、ボール15はその水圧を受けて開口18の閉塞を継続する。
【0066】
前記したようにノズルの斜め後方への噴射口17より高圧水を噴射させた状態でホースHを繰り出すことにより、ノズルNは前方への推進力を受けて専用排水管1a内を、立管2に向かって進行し、この時、ノズルからの噴射水により専用排水管は洗浄される。そしてノズルNが専用排水管1aから立管2の合流部まで進行したところで、高圧水の送水を停止させる。
【0067】
この時のノズルNの姿勢は図2Aに示すようにその先端が下向きにされた状態であり、ノズル本体内のボール15は重力により斜め後方への噴射口17に連通する開口19を閉塞するように作用する。この状態で再び高圧水を送水することにより、図2Aに示すようにノズルの斜め前方への噴射口16より高圧水が噴射されることになり、ノズルNは後退する方向への推進力を受ける。
【0068】
この状態で、ホースHを除々に引き上げる操作を行うことにより、ノズルNから吐出する噴射水により専用排水管1a内は再び洗浄される。なお、前記した専用排水管の洗浄工法は、各階における宅内において同様に行われる。
【0069】
前記図2Aおよび図2Bに示した管内洗浄用ノズルを利用した専用排水管の洗浄工法によると、ノズルNの進行および後退方向の推進力を利用して専用排水管内を往復において洗浄することができるので、洗浄効率を高めることができる。また排水口から専用排水管につながる曲がり部T2において、ホースHとの間で大きな摩擦が発生するのを避けることができ、曲がり部にダメージを与える度合いを低減させることができる。またノズルの前進および後退方向への推進力が利用されるので、作業者の負担も軽減される。
【0070】
図5は、請求項12に記載された発明にかかる排水管の洗浄方法について説明するものであり、これは図2Aおよび図2Bに示した管内洗浄用ノズルを利用してオーバーラップ洗浄工法により排水管を洗浄する例を示したものである。なお、図5に示す集合住宅における排水管の設置例は、すでに説明した図8〜図11に示した例と同一であり、したがってその詳細な説明は省略する。
【0071】
図5に示したオーバーラップ洗浄工法においては、A宅内における専用排水管1aに通ずる排水口より送水ホースHの先端部に取り付けられたノズルNを挿入する。専用排水管1a内に挿入されたノズルNの姿勢は、図2Bに示すように水平方向に向いた状態であり、したがってノズル本体内のボール15は重力により、斜め前方への噴射口16に連通する開口18側に入り込む。この状態でホースHに送水を開始させることで、斜め後方への噴射口17より高圧水が噴射する。
【0072】
なおこの時、図2Bに示すように開口18はノズルの軸芯13に対して必ずしも下側に位置していると限らず、送水を開始したときにボール15は開口19を閉塞する場合もある。これはノズルに受ける推進力により作業員は感触で確認することができるので、送水を停止して、ホースHを適宜回動させた後に送水することで、図2Bに示すように斜め後方への噴射口17より高圧水を噴射するように設定することができる。そして、高圧水がノズルに送り込まれている状態においては、ボール15はその水圧を受けて開口18の閉塞を継続する。
【0073】
前記したようにノズルの斜め後方への噴射口17より高圧水を噴射させた状態でホースHを繰り出すことにより、ノズルNは前方への推進力を受けて専用排水管1a内を、立管2に向かって進行し、この時、ノズルからの噴射水により専用排水管は洗浄される。そしてノズルNが専用排水管1aから立管2の合流部まで進行した後も高圧水の噴射を継続したままホースHを送り込むことで、ノズルNは前記立管2と下の階の専用排水管1bとの合流部まで進行する。この間に立管2内はノズルからの噴射水により洗浄される。
【0074】
図5に示すように前記ノズルNが、下の階の専用排水管との合流部まで進行した時に高圧水の送水を停止させる。この時のノズルNの姿勢は図2Aに示すようにその先端が下向きにされた状態であり、ノズル本体内のボール15は重力により斜め後方への噴射口17に連通する開口19を閉塞するように作用する。この状態で再び高圧水を送水することにより、図2Aに示すようにノズルの斜め前方への噴射口16より高圧水が噴射されることになり、ノズルNは後退する方向への推進力を受ける。
【0075】
この状態で、ホースHを除々に引き上げる操作を行うことにより、ノズルNは立管2内および専用排水管1a内に沿って戻り、この時にノズルNから吐出する噴射水により立管2内および専用排水管1a内は再び洗浄される。なお、前記したオーバーラップ洗浄工法は、各階毎に同様の洗浄工法を実行することで、立管2の全体を洗浄することができる。
【0076】
前記図2Aおよび図2Bに示した管内洗浄用ノズルを利用したオーバーラップ洗浄工法工法においても、ノズルNの進行および後退方向の推進力を利用して専用排水管および立管内を往復において洗浄することができるので、洗浄効率を高めることができる。また排水口から専用排水管につながる曲がり部T2および専用排水管と立管との間の曲がり部T3において、ホースHとの間で大きな摩擦が発生するのを避けることができ、前記各曲がり部にダメージを与える度合いを低減させることができる。またノズルの前進および後退方向への推進力が利用されるので、作業者の負担も軽減される。
【0077】
次に図6A〜図6Cは、この発明にかかる管内洗浄用ノズルの他の好ましい実施の形態を示したものである。これは前記した共用排水管の下向き洗浄に適したノズルへの採用例を示している。なお、図6Aにおいては、すでに説明した図1Aに示す各部と同一の機能を果たす部分を同一符号で示しており、したがってその詳細な説明は省略する。
【0078】
この図6A〜図6Cに示す実施の形態においては、高圧水の噴射により回転駆動されるロータがノズル本体の周側面に沿って取り付けられ、前記ロータの回転に伴い、高圧水をノズル本体の周方向に回転させつつ噴射させる回転噴射手段がさらに備えられている。
【0079】
すなわち、符号21は円環状に形成されたロータであり、このロータ21はノズル本体11の周側面に沿って取り付けられている。そしてロータ21の内周面側における前記ノズル本体11には、給水路22が環状に形成され、この給水路22に対して送水空間14より高圧水が供給されるように構成されている。
【0080】
図6Bは、図6AのD−D線における断面図、すなわちロータ21をほぼ中央で破断した状態で示している。図6Bに示されたようにロータ21には、ロータの中心部を通る線に対して若干オフセットされた状態でノズル孔21aが形成されている。したがって前記したロータ21の構成によると、給水路22に供給される高圧水は、オフセットされた状態のノズル孔21aより噴射されるので、ロータ21はその反作用により図6Bに示す矢印R方向に回転駆動を受ける。なお、図に示す前記ノズル孔21aは、周方向において2か所に形成されているが、これは周方向の3ないし4か所に形成される場合もある。
【0081】
一方、図6Cはロータ21の一部を拡大して示したものであり、このロータ21はノズル本体11との間でスリット21bを形成し、前記したようにオフセット状態のノズル孔21aの作用により矢印R方向に回転駆動される。そして、前記スリット21bより高圧水がノズル本体11の軸芯13に直交する方向に全周にわたって吐出され、あたかもウォータースクリーンのような吐出形態になされる。
【0082】
したがって、前記した構成の管内洗浄用ノズルを利用することで、ノズル本体の周方向に回転されつつウォータースクリーンのように吐出される高圧水が加わるので、さらに排水管内の洗浄効果を高めることができる。
【0083】
図7は、この発明にかかる管内洗浄用ノズルのさらに他の好ましい実施の形態を示したものである。これは前記した専用排水管の洗浄工法、もしくはオーバーラップ洗浄工法に適したノズルに採用した例を示している。なお、図7においては、すでに説明した図2Aおよび図2Bに示す各部と同一の機能を果たす部分は同一符号で示しており、したがってその詳細な説明は省略する。
【0084】
この図7に示す実施の形態においても、すでに説明した図6A〜図6Cに示した例と同様にロータ21が備えられ、このロータ21の回転によりノズル本体の周方向に高圧水を回転させつつ吐出させることができるように構成されている。
【0085】
加えて、図7に示す実施の形態においては、ノズル本体の前端部側に可撓性の連結部材を介して重りが取り付けられた構成にされている。すなわち、この実施の形態においては前記重りが複数個の重り23a〜23dに分割されて具備され、前記各重りが可撓性の連結部材24a〜24dをそれぞれ介して直列に接続された構成にされている。
【0086】
前記各重り23a〜23dはそれぞれ端面部分に丸みを付けた円柱体により構成されており、前記各連結部材24a〜24dは、前記重りを構成する円柱体の端面において各重りを直列に結合している。そして、前記各連結部材は、適度な鋼性を備えた金属製もしくは合成樹脂製のワイヤーにより構成されている。
【0087】
図7に示す例は、前記した専用排水管1aから立管2に向かってノズルNが移動する状況を示したものであり、前記各重り23a〜23dは重力方向への傾き作用により、前記専用排水管1aから立管2に移動するノズル本体を立管2の重力方向、すなわち下に向かって誘導できるように作用する。
【0088】
これにより、ノズルNが誤って立管2内を上方向に進入するのを確実に阻止することができ、前記した専用排水管の洗浄工法、もしくはオーバーラップ洗浄工法において、排水管の確実な洗浄動作を期待することができる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1A】この発明にかかる管内洗浄用ノズルの第1の実施の形態をノズルの先端を下向きにした状態の断面図である。
【図1B】同じくノズルを水平方向に向けた状態の断面図である。
【図2A】この発明にかかる管内洗浄用ノズルの第2の実施の形態をノズルの先端を下向きにした状態の断面図である。
【図2B】同じくノズルを水平方向に向けた状態の断面図である。
【図3】この発明にかかる共用排水管の下向き洗浄工法の例を説明する模式図である。
【図4】同じく専用排水管の洗浄工法の例を説明する模式図である。
【図5】同じくオーバーラップ洗浄工法の例を説明する模式図である。
【図6A】この発明にかかる管内洗浄用ノズルの他の好ましい実施の形態を示した断面図である。
【図6B】図6Aに示すD−D線におけるロータの断面図である。
【図6C】ロータの一部の拡大図である。
【図7】この発明にかかる管内洗浄用ノズルのさらに他の好ましい実施の形態を示した断面図である。
【図8】従来における共用排水管の上向き洗浄工法の例を説明する模式図である。
【図9】同じく共用排水管の下向き洗浄工法の例を説明する模式図である。
【図10】同じく専用排水管の洗浄工法の例を説明する模式図である。
【図11】同じくオーバーラップ洗浄工法の例を説明する模式図である。
【符号の説明】
【0090】
1a〜1c 専用排水管
2 立管
3 横引き管
4 マンホール
5 通気口
6 掃除口
11 ノズル本体
12 ホース接続口
13 ノズル本体の軸芯
14 送水空間
15 ボール(封止体)
16 斜め前方への噴射口
17 斜め後方への噴射口
18,19 開口
21 ロータ
21a ノズル孔
21b スリット
22 給水路
23a〜23d 重り
24a〜24d 連結部材
A〜C 個別の宅内
H ホース
N ノズル
P 作業者
T1〜T3 曲がり部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送水ホースの先端部に取り付けられ、前記ホースを介して送られる高圧水を、ホース側から視た斜め前方および斜め後方に噴射する噴射口をそれぞれ形成したノズル本体と、
前記ノズル本体内に収容され、重力を受けて移動する封止体により、前記ノズル本体に形成された斜め前方への噴射口および斜め後方への噴射口に対して、前記高圧水の送水を択一的に切り換える切替え弁とを備えたことを特徴とする管内洗浄用ノズル。
【請求項2】
前記ホース側から視たノズル本体の前方が下向きに設定された場合、前記切替え弁を構成する封止体がノズル本体内の前方側に移動して、前記ノズル本体に形成された斜め前方への噴射口に至る高圧水を封止することで、ノズル本体に形成された斜め後方への噴射口に対して高圧水を送水するよう構成され、
前記ホース側から視たノズル本体が水平方向に向くように設定された場合、前記封止体がノズル本体の前方側から離れ、前記ノズル本体に形成された斜め後方への噴射口に至る高圧水を封止することで、ノズル本体に形成された斜め前方への噴射口に対して高圧水を送水するよう構成されることを特徴とする請求項1に記載された管内洗浄用ノズル。
【請求項3】
前記ホース側から視たノズル本体の前方が下向きに設定された場合、前記切替え弁を構成する封止体がノズル本体内の前方側に移動して、前記ノズル本体に形成された斜め後方への噴射口に至る高圧水を封止することで、ノズル本体に形成された斜め前方への噴射口に対して高圧水を送水するよう構成され、
前記ホース側から視たノズル本体が水平方向に向くように設定された場合、前記封止体がノズル本体の前方側から離れ、前記ノズル本体に形成された斜め前方への噴射口に至る高圧水を封止することで、ノズル本体に形成された斜め後方への噴射口に対して高圧水を送水するよう構成されることを特徴とする請求項1に記載された管内洗浄用ノズル。
【請求項4】
前記斜め前方への噴射口および斜め後方への噴射口はそれぞれ複数備えられ、前記ノズル本体に対して放射状に形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載された管内洗浄用ノズル。
【請求項5】
前記切替え弁を構成する封止体は球状部材により構成され、前記球状部材が重力を受けて移動することで、ノズル本体内に形成された前記斜め前方への噴射口に通ずる円形状の開口、もしくはノズル本体内に形成された斜め後方への噴射口に通ずる円形状の開口を、択一的に閉塞するように構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載された管内洗浄用ノズル。
【請求項6】
前記ホースを介して送られる高圧水の噴射により回転駆動されるロータが前記ノズル本体に具備され、前記ロータの回転に伴い、前記ホースを介して送られる高圧水をノズル本体の周方向に回転させつつ噴射させる回転噴射手段がさらに具備されていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載された管内洗浄用ノズル。
【請求項7】
前記ホース側から視たノズル本体の前端部側に、可撓性の連結部材を介して重りが取り付けられていることを特徴とする請求項1、請求項3ないし請求項6のいずれか1項に記載された管内洗浄用ノズル。
【請求項8】
前記重りが複数個の重りに分割されて具備され、前記各重りが可撓性の連結部材をそれぞれ介して直列に接続されていることを特徴とする請求項7に記載された管内洗浄用ノズル。
【請求項9】
請求項1、請求項2、請求項4ないし請求項6のいずれか1項に記載された管内洗浄用ノズルを利用して排水管内を洗浄する排水管洗浄方法であって、
建築物に垂直方向に敷設された立管と、この立管の下流に連通する水平方向に敷設された横引き管の管内を洗浄するに際して、
前記立管の上端部もしくはその付近から、送水ホースの先端部に取り付けられた前記ノズルを立管内に挿入し、前記ノズルが横引き管に至るまで前記ホースを挿入する工程と、 前記送水ホースに高圧水を送ることで、前記ノズルに形成された斜め後方への噴射口より高圧水を噴射し、ノズルを前記横引き管内に進行させることで、噴射水により横引き管内を洗浄する工程と、
前記送水ホースに対する高圧水の送水を停止し、再び送水を開始させることで前記ノズルに形成された斜め前方への噴射口より高圧水を噴射させつつ、前記ノズルを横引き管内から前記立管内に沿って引き上げ、噴射水により横引き管内および前記立管内を洗浄する工程と、
を実行することを特徴とする排水管洗浄方法。
【請求項10】
請求項1、請求項2、請求項4ないし請求項6のいずれか1項に記載された管内洗浄用ノズルを利用して排水管内を洗浄する排水管洗浄方法であって、
建築物に垂直方向に敷設された立管と、この立管の下流に連通する水平方向に敷設された横引き管の管内を洗浄するに際して、
前記立管の上端部もしくはその付近から、送水ホースの先端部に取り付けられた前記ノズルを立管内に挿入し、続いて送水ホースに高圧水を送ることで、前記ノズルに形成された斜め後方への噴射口より高圧水を噴射し、ノズルを横引き管に至るまで進行させることで噴射水により立管内を洗浄する工程と、
前記ノズルに形成された斜め後方への噴射口より高圧水の噴射を継続して、ノズルを前記横引き管内に進行させることで、噴射水により横引き管内を洗浄する工程と、
前記送水ホースに対する高圧水の送水を停止し、再び送水を開始させることで前記ノズルに形成された斜め前方への噴射口より高圧水を噴射させつつ、前記ノズルを横引き管内から前記立管内に沿って引き上げ、噴射水により横引き管内および前記立管内を再び洗浄する工程と、
を実行することを特徴とする排水管洗浄方法。
【請求項11】
請求項1、請求項3ないし請求項8のいずれか1項に記載された管内洗浄用ノズルを利用して排水管内を洗浄する排水管洗浄方法であって、
建築物に垂直方向に敷設された共用の立管にそれぞれ連通する各宅内に敷設された専用排水管の管内を洗浄するに際して、
前記各宅内における専用排水管に通ずる排水口より送水ホースの先端部に取り付けられた前記ノズルを挿入し、続いて送水ホースに高圧水を送ることで、前記ノズルに形成された斜め後方への噴射口より高圧水を噴射し、ノズルを前記専用排水管内から前記立管の合流部まで進行させることで、噴射水により専用排水管内を洗浄する工程と、
前記送水ホースに対する高圧水の送水を停止し、再び送水を開始させることで前記ノズルに形成された斜め前方への噴射口より高圧水を噴射させつつ、前記ノズルを専用排水管内に沿って引き戻し、噴射水により専用排水管内を再び洗浄する工程と、
を実行することを特徴とする排水管洗浄方法。
【請求項12】
請求項1、請求項3ないし請求項8のいずれか1項に記載された管内洗浄用ノズルを利用して排水管内を洗浄する排水管洗浄方法であって、
建築物に垂直方向に敷設された共用の立管と、前記立管にそれぞれ連通する各宅内に敷設された専用排水管の管内を洗浄するに際して、
前記各宅内における専用排水管に通ずる排水口より送水ホースの先端部に取り付けられた前記ノズルを挿入し、続いて送水ホースに高圧水を送ることで、前記ノズルに形成された斜め後方への噴射口より高圧水を噴射し、ノズルを前記専用排水管内から前記立管の合流部まで進行させることで、噴射水により専用排水管内を洗浄する工程と、
前記ノズルに形成された斜め後方への噴射口より高圧水の噴射を継続して前記立管と下の階の専用排水管との合流部までノズルを進行させることで、噴射水により立管内を洗浄する工程と、
前記送水ホースに対する高圧水の送水を停止し、再び送水を開始させることで前記ノズルに形成された斜め前方への噴射口より高圧水を噴射させつつ、前記ノズルを立管内および専用排水管内に沿って引き戻し、噴射水により立管内および専用排水管内を再び洗浄する工程と、
を実行することを特徴とする排水管洗浄方法。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図6C】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2008−163644(P2008−163644A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−354354(P2006−354354)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(393023536)フジクス株式会社 (3)
【Fターム(参考)】