管内移動体用アクチュエータ、内視鏡、及び管内移動体用アクチュエータの制御方法
【課題】推進動作の高速化を図りつつ、管内移動体を効率的に推進させる。
【解決手段】管内移動体に並べて配置された複数のバルーン42、44、46の膨張・収縮を制御する際、第1及び第2駆動バルーン42、46のうち、係止バルーン44が腸壁40に係止した状態にあるときに駆動される駆動バルーン(例えば第1駆動バルーン42)の膨張速度が、係止バルーン44が腸壁40に係止した状態にないときに駆動される駆動バルーン(例えば第2の駆動バルーン46)の膨張速度よりも相対的に遅くなるように制御する。
【解決手段】管内移動体に並べて配置された複数のバルーン42、44、46の膨張・収縮を制御する際、第1及び第2駆動バルーン42、46のうち、係止バルーン44が腸壁40に係止した状態にあるときに駆動される駆動バルーン(例えば第1駆動バルーン42)の膨張速度が、係止バルーン44が腸壁40に係止した状態にないときに駆動される駆動バルーン(例えば第2の駆動バルーン46)の膨張速度よりも相対的に遅くなるように制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は管内移動体用アクチュエータ、内視鏡、及び管内移動体用アクチュエータの制御方法に係り、特に、管壁に推進力を伝えて管内を移動する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡の大腸挿入は、大腸が体内で曲がりくねった構造であること、体腔に固定されていない部分があることなどから、非常に難しい。そのため、挿入手技の習得には多くの経験を必要とし、挿入手技が未熟の場合には、患者に大きな苦痛を与える結果となる。
【0003】
大腸部位の中で特に挿入が難しいと言われているのは、S状結腸と横行結腸である。S状結腸と横行結腸はその他の結腸とは異なり体腔内に固定されていない。そのため、自身の長さの範囲にて体腔内で任意な形状をとることができ、また、内視鏡挿入時の接触力により体腔内で変形する。
【0004】
大腸挿入においては、挿入時の腸管への接触を少しでも減らすために、S状結腸や横行結腸を直線化することが重要である。直線化のために多くの手技がこれまで提案されているが、同時に、曲がった腸管を手繰り寄せて湾曲度合いを低減するための挿入補助具がいくつか提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1、2には、可撓管部の外周面に螺旋状に4本の膨張・収縮が可能な変動チューブ巻回されており、各変動チューブ内の圧力を変動させて4本の変動チューブを順次膨張・収縮させることにより、外皮の外周面を順次膨張・収縮させて先端側から手元側に膨張部を移動させて腸管を手繰り寄せる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−9545号公報
【特許文献2】特開2006−223895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、複数の変動チューブの上下運動だけではチューブの接触面を移動させる効果はほとんどない。腸管のひだが、膨張したチューブ間の溝に効率的に入った場合にのみ手繰り寄せる効果があるが、S状結腸ではひだはほとんど存在せず、また手繰り寄せる過程で腸管は直線化しひだの突起量は小さくなるため、手繰り寄せる効果は著しく低減する。
【0008】
一方、例えば1つのバルーンを膨張させ該バルーンの外周面の第1の部分を腸管内壁に当接させて係止させた状態としたときに、該第1の部分と連続しているバルーンの外周面の第2の部分に腸管内壁に沿ってバルーンの外周面を移動させると、バルーンが腸管内壁に当接している状態ではこの第1の部分から第2の部分の移動に伴い、例えば腸管内壁を手繰り寄せることできるが、腸管等の生体組織は、その組織の弾性により応力を加えることで管径方向だけでなく管内壁に沿って伸縮すると共に、応力を解除すると該弾性による復元力によって伸縮前の状態に戻る性質があるため、バルーンを収縮させ腸管内壁から離すと、上述した復元力により手繰り寄せた腸管内壁が元に戻ることになる。
【0009】
このように、1つのバルーンによって係止力を発生させて腸壁に係止させ、かつ推進力を発生させて腸壁に対し相対的に移動させることは困難である。
【0010】
これに対して、複数のバルーンの膨張・収縮を繰り返すことにより管内移動体を腸壁に対し相対的に移動させる方式(以下、回転バルーン方式ともいう。)が検討されている。回転バルーン方式によれば、1つのバルーンのみを用いる方式に比べて大きな推進量と推進力を得ることができ、管内移動体を腸壁に対し相対的に移動させることができる。
【0011】
ここで、回転バルーン方式の概略について図12及び図13を用いて簡単に説明する。回転バルーン方式では、例えば図12に示すように、管内移動体900の先端部に複数のバルーン902、904、906が並べて配置されており、これらのバルーン902、904、906の膨張・収縮の制御が行われる。以下では、中央に配置されるバルーン904を係止バルーン(又は回転バルーン)といい、その両側に配置されるバルーン902、906をそれぞれ第1駆動バルーン、第2駆動バルーンという。
【0012】
管内移動体900を腸壁(図12中不図示、図13に符号910で図示)に対し相対的に進める場合には、腸管内に管内移動体900が挿入され、係止バルーン(回転バルーン)904と第1及び第2駆動バルーン902、906がいずれも収縮している状態を初期状態としたとき、まず、第2駆動バルーン906を膨張させ、収縮状態にある係止バルーン904が第1駆動バルーン902に覆い被さった状態にする(図13(A))。
【0013】
次に、係止バルーン904を膨張させて、係止バルーン904が腸壁910に係止した状態にする(図13(B))。
【0014】
続いて、第2駆動バルーン906を収縮させると共に、第1駆動バルーン902を膨張させ、係止バルーン904を管内移動体900に対する固着部904aを中心として管内移動体900の進行方向の前方(矢印Aで示す方向)からその反対側となる後方に回転させる(図13(C))。このとき、係止バルーン904は腸壁910に当接しながら回転するので、腸壁910は管内移動体900の進行方向の後方に手繰り寄せられる。その結果、管内移動体900は腸壁910に対し相対的に進行方向の前方に推進する。
【0015】
そして、係止バルーン904及び第1駆動バルーン902を共に収縮させ、腸壁910に対する係止状態を解除する(図13(D))。
【0016】
こうして、係止バルーン904と第1及び第2駆動バルーン902、906が全て収縮した初期状態となる。以降、図13(A)〜(D)に示した各動作を繰り返すことにより、管内移動体900を腸壁910に対し相対的に進行方向の前方に逐次推進させることができる。
【0017】
ところで、従来の回転バルーン方式では、第1駆動バルーン902と第2駆動バルーン906の膨張速度はいずれも同一速度で行われている。このため、推進動作の高速化を図るために各駆動バルーン902、906の膨張速度を大きくしていくと、推進時において、係止バルーン904が第1駆動バルーン902の膨張速度に追従できずに十分に回転させることができない事象が発生することが判明した。
【0018】
これは、推進時に第1駆動バルーン902が膨張するとき、膨張状態にある係止バルーン904が第1駆動バルーン902の急激な膨張変形によって一時的に内側に変形して、第1駆動バルーン902から係止バルーン904に与えられる押圧力が吸収されてしまい、係止バルーン904が十分に回転しないまま、次の推進シーケンスに移ってしまうことが主な原因であると考えられる。
【0019】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、推進動作の高速化を図りつつ、管内移動体を効率的に推進させることができる管内移動体用アクチュエータ、内視鏡、及び管内移動体用アクチュエータの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の管内移動体用アクチュエータは、管内に挿入される管内移動体に固定され、膨張時に前記管内の管壁に係止した状態となるように構成される第1の膨張収縮部材と、前記第1の膨張収縮部材の前記管内移動体の移動方向の前後に並べて配置された状態で前記管内移動体に固定され、膨張時に前記管壁に係止した状態とならないように構成されると共に前記第1の膨張収縮部材に押圧力を付与する第2及び第3の膨張収縮部材と、前記第1の膨張収縮部材、前記第2の膨張収縮部材、及び前記第3の膨張収縮部材の膨張及び収縮を制御することにより、前記管内移動体を前記管壁に対して相対的に移動させる制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記第1の膨張収縮部材が前記管壁に係止した状態であるときには前記第2の膨張収縮部材を膨張させる一方で、前記第1の膨張収縮部材が前記管壁に係止した状態でないときには前記第3の膨張収縮部材を膨張させるように制御を行う手段であって、前記第2の膨張収縮部材の膨張速度が前記第3の膨張収縮部材の膨張速度よりも相対的に遅くなるように制御する手段であることを特徴とする。
【0021】
本発明によれば、第1の膨張収縮部材が管壁に係止した状態であるときに駆動される第2の膨張収縮部材の膨張速度が、第1の膨張収縮部材が管壁に係止した状態でないときに駆動される第3の膨張収縮部材の膨張速度に比べて相対的に遅くなるように制御される。これにより、推進時(即ち、第2の膨張収縮部材の膨張時)に、第2の膨張収縮部材の膨張変形が第1の膨張収縮部材によって吸収されることなく、第2の膨張収縮部材から第1の膨張収縮部材に対して押圧力が確実に伝達されるようになる。その結果、第1の膨張収縮部材を十分に回転させることができ、推進動作の高速化を図りつつ、管内移動体を効率的に推進させることが可能となる。
【0022】
請求項2に記載の管内移動体用アクチュエータは、請求項1に記載の管内移動体用アクチュエータであって、前記制御手段は、前記第2の膨張収縮部材の膨張速度が前記第3の膨張収縮部材の膨張速度の1/2以下となるように制御することを特徴とする。
【0023】
請求項3に記載の管内移動体用アクチュエータは、請求項1又は2に記載の管内移動体用アクチュエータであって、前記制御手段は、前記第1の膨張収縮部材が前記管壁に係止した状態であるときには、前記第1の膨張収縮部材を内圧Pmax[Pa]の高圧膨張状態にすると共に、前記第1の膨張収縮部材が前記管壁に係止した状態でないときには、前記第1の膨張収縮部材を内圧Pmin[Pa](但し、0<Pmin<Pmaxとする。)の低圧膨張状態にすることを特徴とする。
【0024】
請求項4に記載の管内移動体用アクチュエータは、請求項3に記載の管内移動体用アクチュエータであって、前記制御手段は、前記第3の膨張収縮部材を膨張させるときには、前記第1の膨張収縮部材が前記低圧膨張状態となるように制御することを特徴とする。
【0025】
請求項5に記載の管内移動体用アクチュエータは、請求項3又は4に記載の管内移動体用アクチュエータであって、前記制御手段は、前記第1の膨張収縮部材を前記高圧膨張状態から前記低圧膨張状態に変化させる際、前記第1の膨張収縮部材を前記高圧膨張状態から内圧0[Pa]の完全収縮状態に一旦変化させた後に前記低圧膨張状態に変化させるように制御することを特徴とする。
【0026】
請求項6に記載の管内移動体用アクチュエータは、請求項3乃至5のいずれか1項に記載の管内移動体用アクチュエータであって、前記低圧膨張状態であるときの前記第1の膨張収縮部材の内圧Pmin[Pa]は、次式 0<Pmin<3×103を満たすことを特徴とする。
【0027】
請求項7に記載の管内移動体用アクチュエータは、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の管内移動体用アクチュエータであって、前記管内移動体に固定され、膨張時に前記管内の管壁に係止した状態となるように構成される第4の膨張収縮部材を更に備え、前記制御手段は、前記第4の膨張収縮部材の膨張及び収縮を制御することを特徴とする。
【0028】
請求項8に記載の管内移動体用アクチュエータは、請求項7に記載の管内移動体用アクチュエータであって、前記制御手段は、前記第1の膨張収縮部材及び前記第4の膨張収縮部材の少なくとも一方が前記管壁に係止した状態となるように、前記第1の膨張収縮部材及び前記第4の膨張収縮部材の膨張及び収縮を制御することを特徴とする。
【0029】
請求項9に記載の内視鏡は、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の管内移動体用アクチュエータを備えることを特徴とする。
【0030】
請求項10に記載の管内移動体用アクチュエータの制御方法は、管内に挿入される管内移動体に固定され、膨張時に前記管内の管壁に係止した状態となるように構成される第1の膨張収縮部材と、前記第1の膨張収縮部材の前記管内移動体の移動方向の前後に並べて配置された状態で前記管内移動体に固定され、膨張時に前記管壁に係止した状態とならないように構成されると共に前記第1の膨張収縮部材に押圧力を付与する第2及び第3の膨張収縮部材と、を備え、前記第1の膨張収縮部材、前記第2の膨張収縮部材、及び前記第3の膨張収縮部材の膨張及び収縮を制御することにより、前記管内移動体を前記管壁に対して相対的に移動させる管内移動体用アクチュエータの制御方法であって、前記第1の膨張収縮部材が前記管壁に係止した状態であるときには前記第2の膨張収縮部材を膨張させる一方で、前記第1の膨張収縮部材が前記管壁に係止した状態でないときには前記第3の膨張収縮部材を膨張させるように制御を行い、前記第2の膨張収縮部材の膨張速度が前記第3の膨張収縮部材の膨張速度よりも相対的に遅くなるように制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、第1の膨張収縮部材が管壁に係止した状態であるときに駆動される第2の膨張収縮部材の膨張速度が、第1の膨張収縮部材が管壁に係止した状態でないときに駆動される第3の膨張収縮部材の膨張速度に比べて相対的に遅くなるように制御される。これにより、推進時(即ち、第2の膨張収縮部材の膨張時)に、第2の膨張収縮部材の膨張変形が第1の膨張収縮部材によって吸収されることなく、第2の膨張収縮部材から第1の膨張収縮部材に対して押圧力が確実に伝達されるようになる。その結果、第1の膨張収縮部材を十分に回転させることができ、推進動作の高速化を図りつつ、管内移動体を効率的に推進させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】電子内視鏡の構成図
【図2】挿入部の先端部の拡大断面図
【図3】バルーン制御装置のブロック構成図
【図4】第1の実施形態に係る正進動作のタイムチャートを示した図
【図5】図4の正進動作のタイミングチャートに対応させた各バルーンの膨張及び収縮の様子を示した概略断面図
【図6】第1の実施形態に係る逆進動作のタイムチャートを示した図
【図7】図6の逆進動作のタイミングチャートに対応させた各バルーンの膨張及び収縮の様子を示した概略断面図
【図8】第2の実施形態に係る正進動作のタイムチャートを示した図
【図9】図8の正進動作のタイミングチャートに対応させた各バルーンの膨張及び収縮の様子を示した概略断面図
【図10】第3の実施形態に係る正進動作のタイムチャートを示した図
【図11】図10の正進動作のタイミングチャートに対応させた各バルーンの膨張及び収縮の様子を示した概略断面図
【図12】従来の回転バルーン方式を説明するための概略図
【図13】従来の回転バルーン方式によって管内移動体を推進させるときの様子を示した説明図
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
【0034】
〔第1の実施形態〕
図1は、本発明の第1の実施形態に係る電子内視鏡の外観を示す図である。また、図2は、図1の電子内視鏡の先端部の構成を示す図である。
【0035】
図1に示すように、本実施形態の電子内視鏡1は、被検体の管内に挿入され当該管内を移動する管内移動体である挿入部10と、挿入部10の基端部分に連設された操作部12とを備えて構成される。
【0036】
挿入部10の先端に連設された先端部10aには、被検体内の被観察部位の像光を取り込むための対物レンズと像光を撮像する撮像素子(いずれも図示せず)が内蔵されている。撮像素子により取得された被検体内の画像は、ユニバーサルコード14に接続されたプロセッサ装置のモニタ(いずれも図示せず)に内視鏡画像として表示される。
【0037】
また、先端部10aには、被観察部位に光源装置(図示せず)からの照明光を照射するための照明窓や、鉗子口16と連通した鉗子出口、送気・送水ボタン12aを操作することによって、対物レンズを保護する観察窓の汚れを落とすための洗浄水やエアーが噴射されるノズルなどが設けられている。
【0038】
先端部10aの後方には、複数の湾曲駒を連結した湾曲部10bが設けられている。湾曲部10bは、操作部12に設けられたアングルノブ12bが操作されて、挿入部10内に挿設されたワイヤが押し引きされることにより、上下左右方向に湾曲動作する。これにより、先端部10aが被検体内の所望の方向に向けられる。
【0039】
湾曲部10bの後方には、可撓性を有する軟性部10cが設けられている。軟性部10cは、先端部10aが被観察部位に到達可能なように、且つ術者が操作部12を把持して操作する際に支障を来さない程度に患者との距離を保つために、1〜数mの長さを有する。
【0040】
先端部10aには、その進行方向の前方側(図2の右側)から順に、第1駆動バルーン42、係止バルーン44、及び第2駆動バルーン46の3つのバルーンが並べて配置されており、さらにこれらの後方には保持バルーン23が所定の間隔をおいて配置されている。
【0041】
尚、第1及び第2駆動バルーン42、46は、膨張時であっても管壁の内壁面に係止した状態とならないように構成されている。
【0042】
また、後述する推進動作では、係止バルーン44及び保持バルーン23の少なくとも一方が膨張して管壁に当接して係止されるようになっている。
【0043】
第1及び第2駆動バルーン42、46、係止バルーン44、及び保持バルーン23は、主に膨張収縮自在なラテックスゴムからなり、各バルーン内の圧力を制御するバルーン制御装置18にそれぞれ接続されている。
【0044】
図2に示すように、先端部10aの内部には、第1駆動バルーン42に連通し気体が送られる送気管48と、係止バルーン44に連通し気体が送られる送気管50と、第2駆動バルーン46に連通し気体が送られる送気管52と、保持バルーン23に連通し気体が送られる送気管27とが設けられている。これら送気管48、50、52、27は、湾曲部10b、軟性部10c、及びユニバーサルコード14の内部を通って前述のバルーン制御装置18に接続されている。
【0045】
尚、先端部10aにおいて第1及び第2駆動バルーン42、46と係止バルーン44は互いに隣接して配置され、挿入部10の周方向全体に形成される。第1及び第2駆動バルーン42、46、係止バルーン44、保持バルーン23は、挿入部10の周方向に一様な形状(軸対称な形状)に構成されていることが好ましいが、これに限定されず、挿入部10の周方向に一様ではない形状(非軸対称な形状)であってもよい。
【0046】
また、第1及び第2駆動バルーン42、46と係止バルーン44、保持バルーン23が挿入部10の先端部10aに配置された構成となっているが、これに限らず、湾曲部10bや軟性部10cに配置されていてもよい。
【0047】
また、少なくとも係止バルーン44と第1駆動バルーン42、係止バルーン44と第2駆動バルーン46は、互いに形状が異なることが好ましい。
【0048】
また、図2に示すように係止バルーン44が収縮時に第1駆動バルーン42や第2駆動バルーン46に必ずしも覆い被さっている必要はなく、後述するように、少なくとも係止バルーン44が膨張して腸壁40(図5又は図7参照)を係止した時に、係止バルーン44が第1駆動バルーン42や第2駆動バルーン46に覆い被さっていればよい。
【0049】
上記のように構成された電子内視鏡1で、例えば、大腸や小腸のように複雑に屈曲した管路の内壁面を観察する場合には、第1及び第2駆動バルーン42、46、係止バルーン44及び保持バルーン23が収縮した状態で挿入部10を被検体内に挿入し、光源装置を点灯して被検体内を照明しながら、撮像素子により得られる内視鏡画像をモニタで観察する。
【0050】
術者が先端部10aを例えば肛門より大腸等の管腔路に挿入し、先端部10aが管路内の所定位置に到達すると、術者がバルーン制御装置18を操作することにより第1及び第2駆動バルーン42、46と係止バルーン44及び保持バルーン23の膨張・収縮を制御して、管腔路の内壁面に押圧力を作用させる。これにより、管腔路の内壁面が手繰り寄せられ、挿入部10が管腔路の内壁面に対し相対的に進行方向の前方または後方に推進する。
【0051】
尚、推進動作のフローの詳しい説明は後述する。また、以下の説明において、先端部10aが進行方向の前方に推進する動作を正進動作とし、先端部10aが進行方向の後方に推進する動作を逆進動作とする。
【0052】
図3は、図1のバルーン制御装置18のブロック構成図である。図3に示すように、バルーン制御装置18は、吸引ポンプ34、供給ポンプ36、圧力制御部32、及びバルブ開閉制御部30を備えて構成される。
【0053】
バルーン制御装置18は、第1及び第2駆動バルーン42、46、係止バルーン44、及び保持バルーン23を個々に独立して内圧が調整できる構造となっており、バルブ開閉制御部30と圧力制御部32を介して、吸引ポンプ34及び供給ポンプ36が第1及び第2駆動バルーン42、46、係止バルーン44、及び保持バルーン23に接続されている。
【0054】
バルーン制御装置18は、後述する推進動作のフローに従った処理を実行し、バルブ開閉制御部30によって各バルーンに接続されたバルブ(不図示)の開閉を制御し、圧力制御部32によって吸引ポンプ34と供給ポンプ36を制御する。
【0055】
次に、電子内視鏡1の先端部10aの推進動作について説明する。
【0056】
図4は、推進動作における正進動作のタイミングチャートを示した図である。また、図5は、図4の正進動作のタイミングチャートに対応させた各バルーンの膨張及び収縮の様子を示した概略断面図である。
【0057】
図4のタイミングチャートの開始時(即ち、図4の工程Aが開始される時点)には、電子内視鏡1の先端部10aが測定対象(例えば大腸)内に挿入された状態において、第2駆動バルーン46と係止バルーン44が共に収縮し、且つ、第1駆動バルーン42が膨張した状態であり、さらに保持バルーン23が膨張して腸壁40に係止した状態になっているものとする。
【0058】
まず、上記状態から、第1駆動バルーン42から気体を吸引して収縮させると共に、第2駆動バルーン46に気体を充填して膨張させる(図4の工程A)。この第2駆動バルーン46の膨張によって、図5(A)に示すように、係止バルーン44は第1駆動バルーン42側に押し出され、収縮した第1駆動バルーン42に覆い被さる状態になる。
【0059】
次に、係止バルーン44に気体を充填して膨張させて、係止バルーン44を腸壁40に係止させる(図4の工程B)。これによって、図5(B)に示すように、保持バルーン23と共に係止バルーン44が腸壁40に係止した状態となる。
【0060】
尚、以下では、係止バルーン44が膨張して腸壁40に接触している状態のとき、係止バルーン44の表面のうち、腸壁40に接触していない部分(即ち、挿入部10と腸壁40の間を埋める部分)を第1の部分といい、腸壁40に接触している部分を第2の部分ということにする。
【0061】
次に、係止バルーン44を膨張させた状態を保持すると共に、保持バルーン23から気体を吸引して収縮させる(図4の工程C)。これによって、図5(C)に示すように、係止バルーン44のみが腸壁40に係止した状態となる。
【0062】
続いて、係止バルーン44を腸壁40に係止させた状態で、第2駆動バルーン46から気体を吸引して収縮させると共に、第1駆動バルーン42に気体を充填して膨張させる(図4の工程D)。これによって、図5(D)に示すように、係止バルーン44は、第1駆動バルーン42の膨張により先端部10aの進行方向の後方に向かってその表面が順々に繰り出されるように徐々に押圧されていく。
【0063】
換言すれば、係止バルーン44の表面における第1の部分(腸壁40に接触していない部分)の前方側(先端部10aの進行方向の前方側;図中の右側)は、第1駆動バルーン42の膨張による押圧力によって、腸壁40に接触して第2の部分(腸壁40に接触している部分)へと徐々に遷移する。これにより、係止バルーン44は、腸壁40に対し先端部10aの進行方向の後方(図5(D)の黒矢印)に向かって押圧力を与える。
【0064】
即ち、係止バルーン44がいわゆるキャタピラ(登録商標)のように(無限軌道のように)、腸壁40を当接しながら先端部10aの進行方向の後方に向かって繰り出される。
【0065】
そのため、腸壁40は先端部10aの進行方向の後方に手繰り寄せられる。従って、図5(D)の白矢印のように、電子内視鏡1の先端部10aは腸壁40に対し相対的に進行方向の前方に推進(正進)する。
【0066】
本実施形態に係る正進動作では、第1駆動バルーン42の膨張速度は第2駆動バルーン46の膨張速度よりも相対的に遅くなるように制御が行われる。
【0067】
具体的には、図4の工程Dにおいて、膨張して腸壁40を係止状態にある係止バルーン44を進行方向の後方(図5の左側)に押し出すときに駆動される第1駆動バルーン42の膨張速度が相対的に遅くなるように制御される一方で、図4の工程Aにおいて、収縮して腸壁40に対する係止状態が解除された係止バルーン44を進行方向の前方(図5の右側)に押し出すときに駆動される第2駆動バルーン46の膨張速度が相対的に速くなるように制御が行われる。第1駆動バルーン42の膨張速度は第2駆動バルーン46の膨張速度の1/2以下に設定されることが好ましい。
【0068】
図4に示した例では、工程Dにかかる所要時間(即ち、第1駆動バルーン42が収縮状態から膨張状態に遷移する時間)は例えば2〜4秒となっており、工程Aにかかる所要時間(即ち、第2駆動バルーン46が収縮状態から膨張状態に遷移する時間)の約2.5倍に設定されている。
【0069】
このように第1駆動バルーン42の膨張速度が第2駆動バルーン46の膨張速度よりも相対的に遅くなるように制御することによって、推進時(即ち、第1駆動バルーン42の膨張時)に、第1駆動バルーン42の膨張変形が係止バルーン44の内側への変形で吸収されることなく、第1駆動バルーン42から係止バルーン44に対して押圧力が確実に伝達されるようになる。その結果、係止バルーン44を先端部10aに対する固着部を中心にして先端部10aの進行方向の前方から後方に向かって十分に回転移動させることができ、推進動作の高速化を図りつつ、先端部10aを効率的に推進させることが可能となる。
【0070】
尚、正進動作において、第2駆動バルーン46を膨張させるときには係止バルーン44は収縮して腸壁40に対する係止状態が解除された状態となっており、第1駆動バルーン42を膨張させたときのような問題は起こらないため、第2駆動バルーン46の膨張速度を第1駆動バルーン42の膨張速度よりも相対的に速くすることが可能である。
【0071】
このようにして第1駆動バルーン42を膨張させた後、第1駆動バルーン42及び係止バルーン44を膨張させた状態を保持すると共に、保持バルーン23を膨張させる(図4の工程E)。これによって、図5(E)に示すように、係止バルーン44と共に保持バルーン23が腸壁40に係止した状態となる。
【0072】
そして、第1駆動バルーン42及び保持バルーン23を膨張させた状態を保持し、係止バルーン44を収縮させる(図4の工程F)。これによって、図5(F)に示すように、保持バルーン23のみが腸壁40に係止した状態となる。また、係止バルーン44は第2駆動バルーン46に覆い被さった状態となる。
【0073】
以降、正進動作を継続する場合には、図4の工程A〜工程Fを繰り返す。
【0074】
図6は、推進動作における逆進動作のタイミングチャートを示した図である。また、図7は、図6の逆進動作のタイミングチャートに対応させた各バルーンの膨張及び収縮の様子を示した概略断面図である。
【0075】
図6のタイミングチャートの開始時(即ち、図6の工程Aが開始される時点)には、上述した正進動作の開始時(即ち、図4の工程Aが開始される時点)と同様に、電子内視鏡1の先端部10aが測定対象(例えば大腸)内に挿入された状態において、第1駆動バルーン42と係止バルーン44が共に収縮し、且つ、第2駆動バルーン46が膨張した状態であり、さらに保持バルーン23が膨張して腸壁40に係止した状態になっているものとする。
【0076】
まず、上記状態から、第2駆動バルーン46から気体を吸引して収縮させると共に、第1駆動バルーン42に気体を充填して膨張させる(図6の工程A)。この第1駆動バルーン42の膨張によって、図7(A)に示すように、係止バルーン44は第2駆動バルーン46側に押し出され、収縮した第2駆動バルーン46に覆い被さる状態になる。
【0077】
次に、係止バルーン44に気体を充填して膨張させて、係止バルーン44を腸壁40に係止させる(図6の工程B)。これによって、図7(B)に示すように、保持バルーン23と共に係止バルーン44が腸壁40に係止した状態となる。
【0078】
次に、係止バルーン44を膨張させた状態を保持すると共に、保持バルーン23から気体を吸引して収縮させる(図6の工程C)。これによって、図7(C)に示すように、係止バルーン44のみが腸壁40に係止した状態となる。
【0079】
続いて、係止バルーン44を腸壁40に係止させた状態で、第1駆動バルーン42から気体を吸引して収縮させると共に、第2駆動バルーン46に気体を充填して膨張させる(図6の工程D)。これによって、図7(D)に示すように、係止バルーン44は、第2駆動バルーン46の膨張により先端部10aの進行方向の前方に向かってその表面が順々に繰り出されるように徐々に押圧されていく。
【0080】
換言すれば、係止バルーン44の表面における第1の部分(腸壁40に接触していない部分)の後方側(先端部10aの進行方向の後方側;図中の左側)は、第2駆動バルーン46の膨張による押圧力によって、腸壁40に接触して第2の部分(腸壁40に接触している部分)へと徐々に遷移する。これにより、係止バルーン44は、腸壁40に対し先端部10aの進行方向の前方(図7(D)の黒矢印)に向かって押圧力を与える。
【0081】
即ち、係止バルーン44がいわゆるキャタピラ(登録商標)のように(無限軌道のように)、腸壁40を当接しながら先端部10aの進行方向の前方に向かって繰り出される。
【0082】
そのため、腸壁40は先端部10aの進行方向の前方に手繰り寄せられる。従って、図7(D)の白矢印のように、電子内視鏡1の先端部10aは腸壁40に対し相対的に進行方向の後方に推進(逆進)する。
【0083】
本実施形態に係る逆進動作では、第2駆動バルーン46の膨張速度は第1駆動バルーン42の膨張速度よりも相対的に遅くなるように制御が行われる。
【0084】
具体的には、図6の工程Dにおいて、膨張して腸壁40を係止状態にある係止バルーン44を進行方向の前方(図7の右側)に押し出すときに駆動される第2駆動バルーン46の膨張速度が相対的に遅くなるように制御される一方で、図6の工程Aにおいて、収縮して腸壁40に対する係止状態が解除された係止バルーン44を進行方向の後方(図7の左側)に押し出すときに駆動される第1駆動バルーン42の膨張速度が相対的に速くなるように制御が行われる。第2駆動バルーン46の膨張速度は第1駆動バルーン42の膨張速度の1/2以下に設定されることが好ましい。
【0085】
図6に示した例では、工程Dにかかる時間(即ち、第2駆動バルーン46が収縮状態から膨張状態に遷移する時間)は例えば2〜4秒となっており、工程Aにかかる所要時間(即ち、第1駆動バルーン42が収縮状態から膨張状態に遷移する時間)の約2.5倍に設定されている。
【0086】
このように第2駆動バルーン46の膨張速度が第1駆動バルーン42の膨張速度よりも相対的に遅くなるように制御することによって、推進時(即ち、第2駆動バルーン46の膨張時)に、第2駆動バルーン46の膨張変形が係止バルーン44の内側への変形で吸収されることなく、第2駆動バルーン46から係止バルーン44に対して押圧力が確実に伝達されるようになる。その結果、係止バルーン44を先端部10aに対する固着部を中心にして先端部10aの進行方向の後方から前方に向かって十分に回転移動させることができ、推進動作の高速化を図りつつ、先端部10aを効率的に推進させることが可能となる。
【0087】
尚、逆進動作において、第1駆動バルーン42を膨張させるときには係止バルーン44は収縮して腸壁40に対する係止状態が解除された状態となっており、第2駆動バルーン46を膨張させたときのような問題は起こらないため、第1駆動バルーン42の膨張速度を第2駆動バルーン46の膨張速度よりも相対的に速くすることが可能である。
【0088】
このようにして第2駆動バルーン46を膨張させた後、第2駆動バルーン46及び係止バルーン44を膨張させた状態を保持すると共に、保持バルーン23を膨張させる(図6の工程E)。これによって、図7(E)に示すように、係止バルーン44と共に保持バルーン23が腸壁40に係止した状態となる。
【0089】
そして、保持バルーン23を膨張させた状態を保持し、係止バルーン44を収縮させる(図6の工程F)。これによって、図7(F)に示すように、保持バルーン23のみが腸壁40に係止した状態となる。
【0090】
以降、逆進動作を継続する場合には、図6の工程A〜工程Fを繰り返す。
【0091】
尚、本実施形態では、図4及び図6の工程Fにおいて、保持バルーン23を膨張させた状態で係止バルーン44の収縮と共に、第1又は第2駆動バルーン42、46を同時に収縮させているが、これらは必ずしも同時に収縮させる必要はなく、係止バルーン44を収縮させた後に第1又は第2駆動バルーン42、46を収縮させてもよい。
【0092】
また、第1及び第2駆動バルーン42、46と係止バルーン44のようにバルーンを使用する代わりに、布のような素材により所望の形状や大きさに膨張収縮が可能な膨張収縮部材を使用してもよい。
【0093】
また、第1及び第2駆動バルーン42、46と係止バルーン44とから成るバルーンユニットを複数個所に設けてもよい。
【0094】
第1の実施形態によれば、バルーン制御装置18による第1及び第2駆動バルーン42、46の膨張・収縮を制御する際、第1及び第2駆動バルーン42、46のうち、膨張して腸壁40を係止状態にある係止バルーン44を反対側に押し出すときに駆動される駆動バルーンの膨張速度が、収縮して腸壁40に対する係止状態が解除された係止バルーン44を反対側に押し出すときに駆動される駆動バルーンの膨張速度よりも相対的に遅くなるように制御が行われる。これにより、推進時に、第1又は第2駆動バルーン42、46の膨張変形が係止バルーン44の内側への変形で吸収されることなく、第1又は第2駆動バルーン42、46から係止バルーン44に対して押圧力が確実に伝達されるようになる。その結果、係止バルーン44を十分に回転させることができ、推進動作の高速化を図りつつ、先端部10aを効率的に推進させることが可能となる。
【0095】
また、本実施形態では、係止バルーン44及び保持バルーン23の少なくとも一方を腸壁40に係止させた状態で推進動作が行われるので、腸管の復元力により手繰り寄せた腸管内壁が元に戻ることなく、確実に、腸管に対して係止力を発生させて腸壁40に係止させ、かつ推進力を発生させるので、挿入部10を腸壁40に対し相対的に移動させることができる。
【0096】
尚、本実施形態では、先端部10aの進行方向の前方より第1駆動バルーン42、係止バルーン44、第2駆動バルーン46、保持バルーン23の順序で配設された構成例を示したが、これらの配設順序は本例に限らず、進行方向の前方より保持バルーン23、第1駆動バルーン42、係止バルーン44、第2駆動バルーン46であってもよい。
【0097】
また、前記のような正進動作と逆進動作を適宜組み合わせて行うことにより、先端部10aを進行方向の前後に移動させることができる。
【0098】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。以下、第1の実施形態と共通する部分については説明を省略し、本実施形態の特徴的な部分を中心に説明する。
【0099】
第1の実施形態では、例えば正進動作の場合、第2駆動バルーン46を膨張させることによって、係止バルーン44が第2駆動バルーン46に覆い被さった状態(図5(F))から第1駆動バルーン42に覆い被さった状態(図5(A))に変化させている。このとき、係止バルーン44は内圧0[Pa]に完全に収縮した状態(完全収縮状態)となっているため、第2駆動バルーン46の膨張時に、係止バルーン44が自身で巻き付きを起こしたり、第2駆動バルーン46の表面に巻き付いた状態となってしまい、係止バルーン44が第1駆動バルーン42に覆い被さった状態(図5(A))とならない場合が考えられる。このような場合が起こると、係止バルーン44を適切な位置で再膨張させることができなくなり、推進ロスが大きくなってしまう。
【0100】
そこで第2の実施形態では、第1の実施形態に潜在する問題点を改善すべく、係止バルーン44を内圧0[Pa]の完全収縮状態にすることなく、少なくとも内圧が所定の圧力以上となるように常に膨張させた状態で係止バルーン44の膨張・収縮を制御することによって、係止バルーン44が巻き付きを起こすことなく、係止バルーン44が適切な位置で再膨張できるようにする。
【0101】
図8は、第2実施形態に係る正進動作のタイムチャートを示した図である。また、図9は、図8の正進動作のタイミングチャートに対応させた各バルーンの膨張及び収縮の様子を示した概略断面図である。
【0102】
第2の実施形態では、先端部10aに設けられた複数のバルーン42、44、46、23のうち、第1及び第2駆動バルーン42、46と保持バルーン23は第1の実施形態と同様にして制御が行われる一方で、係止バルーン44は第1の実施形態とは異なる制御が行われる。
【0103】
具体的には、図8に示すように、係止バルーン44は、内圧0[Pa]の完全に収縮した状態(完全収縮状態)になることなく、内圧Pmin[Pa]の低圧膨張状態と内圧Pmax[Pa]の高圧膨張状態との間で膨張・収縮を繰り返すように制御が行われる(但し、0<Pmin<Pmaxとする。)。
【0104】
より詳しく説明すると、係止バルーン44は、図8の工程Aでは低圧膨張状態となっており、次の工程Bで低圧膨張状態から高圧膨張状態に変化し、工程Cが開始されて工程Eが終了するまでの間は高圧膨張状態が維持される。そして、工程Fで高圧膨張状態から低圧膨張状態に変化して、工程Aが開始される時点の状態に戻る。以後、工程A〜工程Fが順次繰り返し実行される。
【0105】
係止バルーン44が低圧膨張状態であるときの内圧Pmin[Pa]としては、係止バルーン44が腸壁40に接触しないか、又は、腸壁40に接触しても腸壁40との間に係止力を発生させない程度の膨張径となるような圧力が設定される。一方、係止バルーン44が高圧膨張状態であるときの内圧Pmax[Pa]としては、係止バルーン44が腸壁40に接触して腸壁40との間に十分な係止力を発生させる程度の膨張径となるような圧力が設定される。
【0106】
本実施形態においては、係止バルーン44が低圧膨張状態であるときの内圧Pmin[Pa]としては、次式 0<Pmin≦3×103(より好ましくは、0<Pmin≦2×103)を満足する範囲内に設定されることが好ましく、例えば係止バルーン44の内圧Pminは2×103[Pa]に設定された状態で制御が行われる。
【0107】
本実施形態においては、第1駆動バルーン42に比べて第2駆動バルーン46の膨張量を小さくすることも可能である。図8の工程Aでは、第2駆動バルーン46を膨張させるときには係止バルーン44は低圧膨張状態となっている。このときの係止バルーン44の膨張量は少なく、腸壁40に係止していないため、第2駆動バルーン46を膨張させたときに係止バルーン44から与えられる反発力(戻り力)は、図8の工程Dにおいて第1駆動バルーン42を駆動させたときに係止バルーン44から与えられる反発力よりも小さい。従って、第1駆動バルーン42に比べて第2駆動バルーン46の膨張量を小さくしても、係止バルーン44を容易に第1駆動バルーン42側に押し出すことができ、係止バルーン44を第1駆動バルーン42に覆い被さった状態とすることができる。
【0108】
尚、第2の実施形態に係る逆進動作については、図8に示したタイムチャートにおいて第1駆動バルーン42と第2駆動バルーン46の制御シーケンスが相互に入れ替わる点以外は同様であるので、ここでは重複を避けるため説明を省略する。
【0109】
第2の実施形態によれば、係止バルーン44は、内圧Pmin[Pa]の低圧膨張状態と内圧Pmax[Pa]の高圧膨張状態との間で膨張・収縮を繰り返すように制御が行われる。即ち、係止バルーン44の内圧が少なくとも所定の圧力(Pmin[Pa])以上となるように常に膨張させた状態で係止バルーン44の内圧が制御される。
【0110】
これにより、第1及び第2駆動バルーン42、46のうち、一方の駆動バルーン(低圧膨張状態にある係止バルーン44が覆い被さっている方の駆動バルーン)を膨張させたとき、低圧膨張状態にある係止バルーン44は、自身で巻き付きを起こすことなく、駆動バルーンから与えられる押圧力によって先端部10aの進行方向の前方又は後方に先端部10aに対する固着部を中心として回転移動し、他方の駆動バルーンに全体的に覆い被さった状態となる。その結果、係止バルーン44を適切に再膨張させることが可能となり、推進ロスを生じることなく、先端部10aを腸壁40に対して効率良く推進させることが可能となる。
【0111】
また、第1の実施形態と同様に、第1及び第2駆動バルーン42、46の膨張速度が相対的に異なるように制御が行われるので、推進時に第1又は第2駆動バルーン42、46の膨張変形が係止バルーン44の内側への変形で吸収されることなく、第1又は第2駆動バルーン42、46から係止バルーン44に対して押圧力が確実に伝達されるようになる。その結果、係止バルーン44を十分に回転させることができ、推進動作の高速化を図りつつ、先端部10aを効率的に推進させることが可能となる。
【0112】
〔第3の実施形態〕
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。以下、第1又は第2の実施形態と共通する部分については説明を省略し、本実施形態の特徴的な部分を中心に説明する。
【0113】
図10は、第3実施形態に係る正進動作のタイムチャートを示した図である。また、図11は、図10の正進動作のタイミングチャートに対応させた各バルーンの膨張及び収縮の様子を示した概略断面図である。
【0114】
第3の実施形態では、係止バルーン44の制御が一部異なる点以外は、第2の実施形態と同様の制御が行われる。
【0115】
具体的には、図10の工程Fにおいて、係止バルーン44を内圧Pmax[Pa]の高圧膨張状態(図11(E))から内圧0[Pa]の完全収縮状態(図11(F))に一旦変化させてから内圧Pmin[Pa]の低圧膨張状態(図11(G))に変化させている。
【0116】
より詳しく説明すると、図3に示したバルーン制御装置18は、バルブ開閉制御部30を制御して係止バルーン44に対応するバルブを開状態にした後、吸引ポンプ34を駆動して係止バルーン44から気体を吸引して、係止バルーン44を完全収縮状態にする。そして、吸引ポンプ34の駆動を停止した後、供給ポンプ36を駆動して完全収縮状態となった係止バルーン44に所定体積の気体を一定時間供給して(少量送気)して、係止バルーン44を低圧膨張状態にしている。
【0117】
このときの係止バルーン44に対する気体の送気量としては、係止バルーン44が高圧膨張状態(即ち、腸壁40に係止している状態)となっているときの体積の10分の1以下の体積であることが好ましい。
【0118】
このように係止バルーン44を完全収縮状態にした後に所定体積の気体を一定時間供給する方式(少量送気方式)によれば、係止バルーン44を高圧膨張状態から低圧膨張状態に直接変化させる態様(第2の実施形態)に比べて、係止バルーン44に対する制御が簡便となり、制御時間を短縮することが可能となる。
【0119】
尚、第3の実施形態に係る逆進動作については、図10に示したタイムチャートにおいて第1駆動バルーン42と第2駆動バルーン46の制御シーケンスが相互に入れ替わる点以外は同様であるので、ここでは重複を避けるため説明を省略する。
【0120】
第3の実施形態によれば、上述した第1及び第2の実施形態と同様の効果が得られると共に、係止バルーン44を高圧膨張状態から低圧膨張状態に直接変化させることなく、完全収縮状態を経てから行われるので、係止バルーン44に対する制御が簡便となり、制御時間の短縮によって推進動作の高速化が可能となる。
【0121】
尚、上述した各実施形態では、電子内視鏡1の挿入部10に直接バルーンを取り付けた例を挙げて説明したが、本発明はこれに限定されず、挿入部10が挿入固定される筒体(オーバーチューブ)の先端に複数のバルーンが並設される場合についても同様に適用することが可能である。
【0122】
以上、本発明の管内移動体用アクチュエータ、内視鏡、及び管内移動体用アクチュエータの制御方法について詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0123】
1…電子内視鏡、10…挿入部、10a…先端部、18…バルーン制御装置、23…保持バルーン、42…第1駆動バルーン、44…係止バルーン、46…第2駆動バルーン
【技術分野】
【0001】
本発明は管内移動体用アクチュエータ、内視鏡、及び管内移動体用アクチュエータの制御方法に係り、特に、管壁に推進力を伝えて管内を移動する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡の大腸挿入は、大腸が体内で曲がりくねった構造であること、体腔に固定されていない部分があることなどから、非常に難しい。そのため、挿入手技の習得には多くの経験を必要とし、挿入手技が未熟の場合には、患者に大きな苦痛を与える結果となる。
【0003】
大腸部位の中で特に挿入が難しいと言われているのは、S状結腸と横行結腸である。S状結腸と横行結腸はその他の結腸とは異なり体腔内に固定されていない。そのため、自身の長さの範囲にて体腔内で任意な形状をとることができ、また、内視鏡挿入時の接触力により体腔内で変形する。
【0004】
大腸挿入においては、挿入時の腸管への接触を少しでも減らすために、S状結腸や横行結腸を直線化することが重要である。直線化のために多くの手技がこれまで提案されているが、同時に、曲がった腸管を手繰り寄せて湾曲度合いを低減するための挿入補助具がいくつか提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1、2には、可撓管部の外周面に螺旋状に4本の膨張・収縮が可能な変動チューブ巻回されており、各変動チューブ内の圧力を変動させて4本の変動チューブを順次膨張・収縮させることにより、外皮の外周面を順次膨張・収縮させて先端側から手元側に膨張部を移動させて腸管を手繰り寄せる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−9545号公報
【特許文献2】特開2006−223895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、複数の変動チューブの上下運動だけではチューブの接触面を移動させる効果はほとんどない。腸管のひだが、膨張したチューブ間の溝に効率的に入った場合にのみ手繰り寄せる効果があるが、S状結腸ではひだはほとんど存在せず、また手繰り寄せる過程で腸管は直線化しひだの突起量は小さくなるため、手繰り寄せる効果は著しく低減する。
【0008】
一方、例えば1つのバルーンを膨張させ該バルーンの外周面の第1の部分を腸管内壁に当接させて係止させた状態としたときに、該第1の部分と連続しているバルーンの外周面の第2の部分に腸管内壁に沿ってバルーンの外周面を移動させると、バルーンが腸管内壁に当接している状態ではこの第1の部分から第2の部分の移動に伴い、例えば腸管内壁を手繰り寄せることできるが、腸管等の生体組織は、その組織の弾性により応力を加えることで管径方向だけでなく管内壁に沿って伸縮すると共に、応力を解除すると該弾性による復元力によって伸縮前の状態に戻る性質があるため、バルーンを収縮させ腸管内壁から離すと、上述した復元力により手繰り寄せた腸管内壁が元に戻ることになる。
【0009】
このように、1つのバルーンによって係止力を発生させて腸壁に係止させ、かつ推進力を発生させて腸壁に対し相対的に移動させることは困難である。
【0010】
これに対して、複数のバルーンの膨張・収縮を繰り返すことにより管内移動体を腸壁に対し相対的に移動させる方式(以下、回転バルーン方式ともいう。)が検討されている。回転バルーン方式によれば、1つのバルーンのみを用いる方式に比べて大きな推進量と推進力を得ることができ、管内移動体を腸壁に対し相対的に移動させることができる。
【0011】
ここで、回転バルーン方式の概略について図12及び図13を用いて簡単に説明する。回転バルーン方式では、例えば図12に示すように、管内移動体900の先端部に複数のバルーン902、904、906が並べて配置されており、これらのバルーン902、904、906の膨張・収縮の制御が行われる。以下では、中央に配置されるバルーン904を係止バルーン(又は回転バルーン)といい、その両側に配置されるバルーン902、906をそれぞれ第1駆動バルーン、第2駆動バルーンという。
【0012】
管内移動体900を腸壁(図12中不図示、図13に符号910で図示)に対し相対的に進める場合には、腸管内に管内移動体900が挿入され、係止バルーン(回転バルーン)904と第1及び第2駆動バルーン902、906がいずれも収縮している状態を初期状態としたとき、まず、第2駆動バルーン906を膨張させ、収縮状態にある係止バルーン904が第1駆動バルーン902に覆い被さった状態にする(図13(A))。
【0013】
次に、係止バルーン904を膨張させて、係止バルーン904が腸壁910に係止した状態にする(図13(B))。
【0014】
続いて、第2駆動バルーン906を収縮させると共に、第1駆動バルーン902を膨張させ、係止バルーン904を管内移動体900に対する固着部904aを中心として管内移動体900の進行方向の前方(矢印Aで示す方向)からその反対側となる後方に回転させる(図13(C))。このとき、係止バルーン904は腸壁910に当接しながら回転するので、腸壁910は管内移動体900の進行方向の後方に手繰り寄せられる。その結果、管内移動体900は腸壁910に対し相対的に進行方向の前方に推進する。
【0015】
そして、係止バルーン904及び第1駆動バルーン902を共に収縮させ、腸壁910に対する係止状態を解除する(図13(D))。
【0016】
こうして、係止バルーン904と第1及び第2駆動バルーン902、906が全て収縮した初期状態となる。以降、図13(A)〜(D)に示した各動作を繰り返すことにより、管内移動体900を腸壁910に対し相対的に進行方向の前方に逐次推進させることができる。
【0017】
ところで、従来の回転バルーン方式では、第1駆動バルーン902と第2駆動バルーン906の膨張速度はいずれも同一速度で行われている。このため、推進動作の高速化を図るために各駆動バルーン902、906の膨張速度を大きくしていくと、推進時において、係止バルーン904が第1駆動バルーン902の膨張速度に追従できずに十分に回転させることができない事象が発生することが判明した。
【0018】
これは、推進時に第1駆動バルーン902が膨張するとき、膨張状態にある係止バルーン904が第1駆動バルーン902の急激な膨張変形によって一時的に内側に変形して、第1駆動バルーン902から係止バルーン904に与えられる押圧力が吸収されてしまい、係止バルーン904が十分に回転しないまま、次の推進シーケンスに移ってしまうことが主な原因であると考えられる。
【0019】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、推進動作の高速化を図りつつ、管内移動体を効率的に推進させることができる管内移動体用アクチュエータ、内視鏡、及び管内移動体用アクチュエータの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の管内移動体用アクチュエータは、管内に挿入される管内移動体に固定され、膨張時に前記管内の管壁に係止した状態となるように構成される第1の膨張収縮部材と、前記第1の膨張収縮部材の前記管内移動体の移動方向の前後に並べて配置された状態で前記管内移動体に固定され、膨張時に前記管壁に係止した状態とならないように構成されると共に前記第1の膨張収縮部材に押圧力を付与する第2及び第3の膨張収縮部材と、前記第1の膨張収縮部材、前記第2の膨張収縮部材、及び前記第3の膨張収縮部材の膨張及び収縮を制御することにより、前記管内移動体を前記管壁に対して相対的に移動させる制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記第1の膨張収縮部材が前記管壁に係止した状態であるときには前記第2の膨張収縮部材を膨張させる一方で、前記第1の膨張収縮部材が前記管壁に係止した状態でないときには前記第3の膨張収縮部材を膨張させるように制御を行う手段であって、前記第2の膨張収縮部材の膨張速度が前記第3の膨張収縮部材の膨張速度よりも相対的に遅くなるように制御する手段であることを特徴とする。
【0021】
本発明によれば、第1の膨張収縮部材が管壁に係止した状態であるときに駆動される第2の膨張収縮部材の膨張速度が、第1の膨張収縮部材が管壁に係止した状態でないときに駆動される第3の膨張収縮部材の膨張速度に比べて相対的に遅くなるように制御される。これにより、推進時(即ち、第2の膨張収縮部材の膨張時)に、第2の膨張収縮部材の膨張変形が第1の膨張収縮部材によって吸収されることなく、第2の膨張収縮部材から第1の膨張収縮部材に対して押圧力が確実に伝達されるようになる。その結果、第1の膨張収縮部材を十分に回転させることができ、推進動作の高速化を図りつつ、管内移動体を効率的に推進させることが可能となる。
【0022】
請求項2に記載の管内移動体用アクチュエータは、請求項1に記載の管内移動体用アクチュエータであって、前記制御手段は、前記第2の膨張収縮部材の膨張速度が前記第3の膨張収縮部材の膨張速度の1/2以下となるように制御することを特徴とする。
【0023】
請求項3に記載の管内移動体用アクチュエータは、請求項1又は2に記載の管内移動体用アクチュエータであって、前記制御手段は、前記第1の膨張収縮部材が前記管壁に係止した状態であるときには、前記第1の膨張収縮部材を内圧Pmax[Pa]の高圧膨張状態にすると共に、前記第1の膨張収縮部材が前記管壁に係止した状態でないときには、前記第1の膨張収縮部材を内圧Pmin[Pa](但し、0<Pmin<Pmaxとする。)の低圧膨張状態にすることを特徴とする。
【0024】
請求項4に記載の管内移動体用アクチュエータは、請求項3に記載の管内移動体用アクチュエータであって、前記制御手段は、前記第3の膨張収縮部材を膨張させるときには、前記第1の膨張収縮部材が前記低圧膨張状態となるように制御することを特徴とする。
【0025】
請求項5に記載の管内移動体用アクチュエータは、請求項3又は4に記載の管内移動体用アクチュエータであって、前記制御手段は、前記第1の膨張収縮部材を前記高圧膨張状態から前記低圧膨張状態に変化させる際、前記第1の膨張収縮部材を前記高圧膨張状態から内圧0[Pa]の完全収縮状態に一旦変化させた後に前記低圧膨張状態に変化させるように制御することを特徴とする。
【0026】
請求項6に記載の管内移動体用アクチュエータは、請求項3乃至5のいずれか1項に記載の管内移動体用アクチュエータであって、前記低圧膨張状態であるときの前記第1の膨張収縮部材の内圧Pmin[Pa]は、次式 0<Pmin<3×103を満たすことを特徴とする。
【0027】
請求項7に記載の管内移動体用アクチュエータは、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の管内移動体用アクチュエータであって、前記管内移動体に固定され、膨張時に前記管内の管壁に係止した状態となるように構成される第4の膨張収縮部材を更に備え、前記制御手段は、前記第4の膨張収縮部材の膨張及び収縮を制御することを特徴とする。
【0028】
請求項8に記載の管内移動体用アクチュエータは、請求項7に記載の管内移動体用アクチュエータであって、前記制御手段は、前記第1の膨張収縮部材及び前記第4の膨張収縮部材の少なくとも一方が前記管壁に係止した状態となるように、前記第1の膨張収縮部材及び前記第4の膨張収縮部材の膨張及び収縮を制御することを特徴とする。
【0029】
請求項9に記載の内視鏡は、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の管内移動体用アクチュエータを備えることを特徴とする。
【0030】
請求項10に記載の管内移動体用アクチュエータの制御方法は、管内に挿入される管内移動体に固定され、膨張時に前記管内の管壁に係止した状態となるように構成される第1の膨張収縮部材と、前記第1の膨張収縮部材の前記管内移動体の移動方向の前後に並べて配置された状態で前記管内移動体に固定され、膨張時に前記管壁に係止した状態とならないように構成されると共に前記第1の膨張収縮部材に押圧力を付与する第2及び第3の膨張収縮部材と、を備え、前記第1の膨張収縮部材、前記第2の膨張収縮部材、及び前記第3の膨張収縮部材の膨張及び収縮を制御することにより、前記管内移動体を前記管壁に対して相対的に移動させる管内移動体用アクチュエータの制御方法であって、前記第1の膨張収縮部材が前記管壁に係止した状態であるときには前記第2の膨張収縮部材を膨張させる一方で、前記第1の膨張収縮部材が前記管壁に係止した状態でないときには前記第3の膨張収縮部材を膨張させるように制御を行い、前記第2の膨張収縮部材の膨張速度が前記第3の膨張収縮部材の膨張速度よりも相対的に遅くなるように制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、第1の膨張収縮部材が管壁に係止した状態であるときに駆動される第2の膨張収縮部材の膨張速度が、第1の膨張収縮部材が管壁に係止した状態でないときに駆動される第3の膨張収縮部材の膨張速度に比べて相対的に遅くなるように制御される。これにより、推進時(即ち、第2の膨張収縮部材の膨張時)に、第2の膨張収縮部材の膨張変形が第1の膨張収縮部材によって吸収されることなく、第2の膨張収縮部材から第1の膨張収縮部材に対して押圧力が確実に伝達されるようになる。その結果、第1の膨張収縮部材を十分に回転させることができ、推進動作の高速化を図りつつ、管内移動体を効率的に推進させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】電子内視鏡の構成図
【図2】挿入部の先端部の拡大断面図
【図3】バルーン制御装置のブロック構成図
【図4】第1の実施形態に係る正進動作のタイムチャートを示した図
【図5】図4の正進動作のタイミングチャートに対応させた各バルーンの膨張及び収縮の様子を示した概略断面図
【図6】第1の実施形態に係る逆進動作のタイムチャートを示した図
【図7】図6の逆進動作のタイミングチャートに対応させた各バルーンの膨張及び収縮の様子を示した概略断面図
【図8】第2の実施形態に係る正進動作のタイムチャートを示した図
【図9】図8の正進動作のタイミングチャートに対応させた各バルーンの膨張及び収縮の様子を示した概略断面図
【図10】第3の実施形態に係る正進動作のタイムチャートを示した図
【図11】図10の正進動作のタイミングチャートに対応させた各バルーンの膨張及び収縮の様子を示した概略断面図
【図12】従来の回転バルーン方式を説明するための概略図
【図13】従来の回転バルーン方式によって管内移動体を推進させるときの様子を示した説明図
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
【0034】
〔第1の実施形態〕
図1は、本発明の第1の実施形態に係る電子内視鏡の外観を示す図である。また、図2は、図1の電子内視鏡の先端部の構成を示す図である。
【0035】
図1に示すように、本実施形態の電子内視鏡1は、被検体の管内に挿入され当該管内を移動する管内移動体である挿入部10と、挿入部10の基端部分に連設された操作部12とを備えて構成される。
【0036】
挿入部10の先端に連設された先端部10aには、被検体内の被観察部位の像光を取り込むための対物レンズと像光を撮像する撮像素子(いずれも図示せず)が内蔵されている。撮像素子により取得された被検体内の画像は、ユニバーサルコード14に接続されたプロセッサ装置のモニタ(いずれも図示せず)に内視鏡画像として表示される。
【0037】
また、先端部10aには、被観察部位に光源装置(図示せず)からの照明光を照射するための照明窓や、鉗子口16と連通した鉗子出口、送気・送水ボタン12aを操作することによって、対物レンズを保護する観察窓の汚れを落とすための洗浄水やエアーが噴射されるノズルなどが設けられている。
【0038】
先端部10aの後方には、複数の湾曲駒を連結した湾曲部10bが設けられている。湾曲部10bは、操作部12に設けられたアングルノブ12bが操作されて、挿入部10内に挿設されたワイヤが押し引きされることにより、上下左右方向に湾曲動作する。これにより、先端部10aが被検体内の所望の方向に向けられる。
【0039】
湾曲部10bの後方には、可撓性を有する軟性部10cが設けられている。軟性部10cは、先端部10aが被観察部位に到達可能なように、且つ術者が操作部12を把持して操作する際に支障を来さない程度に患者との距離を保つために、1〜数mの長さを有する。
【0040】
先端部10aには、その進行方向の前方側(図2の右側)から順に、第1駆動バルーン42、係止バルーン44、及び第2駆動バルーン46の3つのバルーンが並べて配置されており、さらにこれらの後方には保持バルーン23が所定の間隔をおいて配置されている。
【0041】
尚、第1及び第2駆動バルーン42、46は、膨張時であっても管壁の内壁面に係止した状態とならないように構成されている。
【0042】
また、後述する推進動作では、係止バルーン44及び保持バルーン23の少なくとも一方が膨張して管壁に当接して係止されるようになっている。
【0043】
第1及び第2駆動バルーン42、46、係止バルーン44、及び保持バルーン23は、主に膨張収縮自在なラテックスゴムからなり、各バルーン内の圧力を制御するバルーン制御装置18にそれぞれ接続されている。
【0044】
図2に示すように、先端部10aの内部には、第1駆動バルーン42に連通し気体が送られる送気管48と、係止バルーン44に連通し気体が送られる送気管50と、第2駆動バルーン46に連通し気体が送られる送気管52と、保持バルーン23に連通し気体が送られる送気管27とが設けられている。これら送気管48、50、52、27は、湾曲部10b、軟性部10c、及びユニバーサルコード14の内部を通って前述のバルーン制御装置18に接続されている。
【0045】
尚、先端部10aにおいて第1及び第2駆動バルーン42、46と係止バルーン44は互いに隣接して配置され、挿入部10の周方向全体に形成される。第1及び第2駆動バルーン42、46、係止バルーン44、保持バルーン23は、挿入部10の周方向に一様な形状(軸対称な形状)に構成されていることが好ましいが、これに限定されず、挿入部10の周方向に一様ではない形状(非軸対称な形状)であってもよい。
【0046】
また、第1及び第2駆動バルーン42、46と係止バルーン44、保持バルーン23が挿入部10の先端部10aに配置された構成となっているが、これに限らず、湾曲部10bや軟性部10cに配置されていてもよい。
【0047】
また、少なくとも係止バルーン44と第1駆動バルーン42、係止バルーン44と第2駆動バルーン46は、互いに形状が異なることが好ましい。
【0048】
また、図2に示すように係止バルーン44が収縮時に第1駆動バルーン42や第2駆動バルーン46に必ずしも覆い被さっている必要はなく、後述するように、少なくとも係止バルーン44が膨張して腸壁40(図5又は図7参照)を係止した時に、係止バルーン44が第1駆動バルーン42や第2駆動バルーン46に覆い被さっていればよい。
【0049】
上記のように構成された電子内視鏡1で、例えば、大腸や小腸のように複雑に屈曲した管路の内壁面を観察する場合には、第1及び第2駆動バルーン42、46、係止バルーン44及び保持バルーン23が収縮した状態で挿入部10を被検体内に挿入し、光源装置を点灯して被検体内を照明しながら、撮像素子により得られる内視鏡画像をモニタで観察する。
【0050】
術者が先端部10aを例えば肛門より大腸等の管腔路に挿入し、先端部10aが管路内の所定位置に到達すると、術者がバルーン制御装置18を操作することにより第1及び第2駆動バルーン42、46と係止バルーン44及び保持バルーン23の膨張・収縮を制御して、管腔路の内壁面に押圧力を作用させる。これにより、管腔路の内壁面が手繰り寄せられ、挿入部10が管腔路の内壁面に対し相対的に進行方向の前方または後方に推進する。
【0051】
尚、推進動作のフローの詳しい説明は後述する。また、以下の説明において、先端部10aが進行方向の前方に推進する動作を正進動作とし、先端部10aが進行方向の後方に推進する動作を逆進動作とする。
【0052】
図3は、図1のバルーン制御装置18のブロック構成図である。図3に示すように、バルーン制御装置18は、吸引ポンプ34、供給ポンプ36、圧力制御部32、及びバルブ開閉制御部30を備えて構成される。
【0053】
バルーン制御装置18は、第1及び第2駆動バルーン42、46、係止バルーン44、及び保持バルーン23を個々に独立して内圧が調整できる構造となっており、バルブ開閉制御部30と圧力制御部32を介して、吸引ポンプ34及び供給ポンプ36が第1及び第2駆動バルーン42、46、係止バルーン44、及び保持バルーン23に接続されている。
【0054】
バルーン制御装置18は、後述する推進動作のフローに従った処理を実行し、バルブ開閉制御部30によって各バルーンに接続されたバルブ(不図示)の開閉を制御し、圧力制御部32によって吸引ポンプ34と供給ポンプ36を制御する。
【0055】
次に、電子内視鏡1の先端部10aの推進動作について説明する。
【0056】
図4は、推進動作における正進動作のタイミングチャートを示した図である。また、図5は、図4の正進動作のタイミングチャートに対応させた各バルーンの膨張及び収縮の様子を示した概略断面図である。
【0057】
図4のタイミングチャートの開始時(即ち、図4の工程Aが開始される時点)には、電子内視鏡1の先端部10aが測定対象(例えば大腸)内に挿入された状態において、第2駆動バルーン46と係止バルーン44が共に収縮し、且つ、第1駆動バルーン42が膨張した状態であり、さらに保持バルーン23が膨張して腸壁40に係止した状態になっているものとする。
【0058】
まず、上記状態から、第1駆動バルーン42から気体を吸引して収縮させると共に、第2駆動バルーン46に気体を充填して膨張させる(図4の工程A)。この第2駆動バルーン46の膨張によって、図5(A)に示すように、係止バルーン44は第1駆動バルーン42側に押し出され、収縮した第1駆動バルーン42に覆い被さる状態になる。
【0059】
次に、係止バルーン44に気体を充填して膨張させて、係止バルーン44を腸壁40に係止させる(図4の工程B)。これによって、図5(B)に示すように、保持バルーン23と共に係止バルーン44が腸壁40に係止した状態となる。
【0060】
尚、以下では、係止バルーン44が膨張して腸壁40に接触している状態のとき、係止バルーン44の表面のうち、腸壁40に接触していない部分(即ち、挿入部10と腸壁40の間を埋める部分)を第1の部分といい、腸壁40に接触している部分を第2の部分ということにする。
【0061】
次に、係止バルーン44を膨張させた状態を保持すると共に、保持バルーン23から気体を吸引して収縮させる(図4の工程C)。これによって、図5(C)に示すように、係止バルーン44のみが腸壁40に係止した状態となる。
【0062】
続いて、係止バルーン44を腸壁40に係止させた状態で、第2駆動バルーン46から気体を吸引して収縮させると共に、第1駆動バルーン42に気体を充填して膨張させる(図4の工程D)。これによって、図5(D)に示すように、係止バルーン44は、第1駆動バルーン42の膨張により先端部10aの進行方向の後方に向かってその表面が順々に繰り出されるように徐々に押圧されていく。
【0063】
換言すれば、係止バルーン44の表面における第1の部分(腸壁40に接触していない部分)の前方側(先端部10aの進行方向の前方側;図中の右側)は、第1駆動バルーン42の膨張による押圧力によって、腸壁40に接触して第2の部分(腸壁40に接触している部分)へと徐々に遷移する。これにより、係止バルーン44は、腸壁40に対し先端部10aの進行方向の後方(図5(D)の黒矢印)に向かって押圧力を与える。
【0064】
即ち、係止バルーン44がいわゆるキャタピラ(登録商標)のように(無限軌道のように)、腸壁40を当接しながら先端部10aの進行方向の後方に向かって繰り出される。
【0065】
そのため、腸壁40は先端部10aの進行方向の後方に手繰り寄せられる。従って、図5(D)の白矢印のように、電子内視鏡1の先端部10aは腸壁40に対し相対的に進行方向の前方に推進(正進)する。
【0066】
本実施形態に係る正進動作では、第1駆動バルーン42の膨張速度は第2駆動バルーン46の膨張速度よりも相対的に遅くなるように制御が行われる。
【0067】
具体的には、図4の工程Dにおいて、膨張して腸壁40を係止状態にある係止バルーン44を進行方向の後方(図5の左側)に押し出すときに駆動される第1駆動バルーン42の膨張速度が相対的に遅くなるように制御される一方で、図4の工程Aにおいて、収縮して腸壁40に対する係止状態が解除された係止バルーン44を進行方向の前方(図5の右側)に押し出すときに駆動される第2駆動バルーン46の膨張速度が相対的に速くなるように制御が行われる。第1駆動バルーン42の膨張速度は第2駆動バルーン46の膨張速度の1/2以下に設定されることが好ましい。
【0068】
図4に示した例では、工程Dにかかる所要時間(即ち、第1駆動バルーン42が収縮状態から膨張状態に遷移する時間)は例えば2〜4秒となっており、工程Aにかかる所要時間(即ち、第2駆動バルーン46が収縮状態から膨張状態に遷移する時間)の約2.5倍に設定されている。
【0069】
このように第1駆動バルーン42の膨張速度が第2駆動バルーン46の膨張速度よりも相対的に遅くなるように制御することによって、推進時(即ち、第1駆動バルーン42の膨張時)に、第1駆動バルーン42の膨張変形が係止バルーン44の内側への変形で吸収されることなく、第1駆動バルーン42から係止バルーン44に対して押圧力が確実に伝達されるようになる。その結果、係止バルーン44を先端部10aに対する固着部を中心にして先端部10aの進行方向の前方から後方に向かって十分に回転移動させることができ、推進動作の高速化を図りつつ、先端部10aを効率的に推進させることが可能となる。
【0070】
尚、正進動作において、第2駆動バルーン46を膨張させるときには係止バルーン44は収縮して腸壁40に対する係止状態が解除された状態となっており、第1駆動バルーン42を膨張させたときのような問題は起こらないため、第2駆動バルーン46の膨張速度を第1駆動バルーン42の膨張速度よりも相対的に速くすることが可能である。
【0071】
このようにして第1駆動バルーン42を膨張させた後、第1駆動バルーン42及び係止バルーン44を膨張させた状態を保持すると共に、保持バルーン23を膨張させる(図4の工程E)。これによって、図5(E)に示すように、係止バルーン44と共に保持バルーン23が腸壁40に係止した状態となる。
【0072】
そして、第1駆動バルーン42及び保持バルーン23を膨張させた状態を保持し、係止バルーン44を収縮させる(図4の工程F)。これによって、図5(F)に示すように、保持バルーン23のみが腸壁40に係止した状態となる。また、係止バルーン44は第2駆動バルーン46に覆い被さった状態となる。
【0073】
以降、正進動作を継続する場合には、図4の工程A〜工程Fを繰り返す。
【0074】
図6は、推進動作における逆進動作のタイミングチャートを示した図である。また、図7は、図6の逆進動作のタイミングチャートに対応させた各バルーンの膨張及び収縮の様子を示した概略断面図である。
【0075】
図6のタイミングチャートの開始時(即ち、図6の工程Aが開始される時点)には、上述した正進動作の開始時(即ち、図4の工程Aが開始される時点)と同様に、電子内視鏡1の先端部10aが測定対象(例えば大腸)内に挿入された状態において、第1駆動バルーン42と係止バルーン44が共に収縮し、且つ、第2駆動バルーン46が膨張した状態であり、さらに保持バルーン23が膨張して腸壁40に係止した状態になっているものとする。
【0076】
まず、上記状態から、第2駆動バルーン46から気体を吸引して収縮させると共に、第1駆動バルーン42に気体を充填して膨張させる(図6の工程A)。この第1駆動バルーン42の膨張によって、図7(A)に示すように、係止バルーン44は第2駆動バルーン46側に押し出され、収縮した第2駆動バルーン46に覆い被さる状態になる。
【0077】
次に、係止バルーン44に気体を充填して膨張させて、係止バルーン44を腸壁40に係止させる(図6の工程B)。これによって、図7(B)に示すように、保持バルーン23と共に係止バルーン44が腸壁40に係止した状態となる。
【0078】
次に、係止バルーン44を膨張させた状態を保持すると共に、保持バルーン23から気体を吸引して収縮させる(図6の工程C)。これによって、図7(C)に示すように、係止バルーン44のみが腸壁40に係止した状態となる。
【0079】
続いて、係止バルーン44を腸壁40に係止させた状態で、第1駆動バルーン42から気体を吸引して収縮させると共に、第2駆動バルーン46に気体を充填して膨張させる(図6の工程D)。これによって、図7(D)に示すように、係止バルーン44は、第2駆動バルーン46の膨張により先端部10aの進行方向の前方に向かってその表面が順々に繰り出されるように徐々に押圧されていく。
【0080】
換言すれば、係止バルーン44の表面における第1の部分(腸壁40に接触していない部分)の後方側(先端部10aの進行方向の後方側;図中の左側)は、第2駆動バルーン46の膨張による押圧力によって、腸壁40に接触して第2の部分(腸壁40に接触している部分)へと徐々に遷移する。これにより、係止バルーン44は、腸壁40に対し先端部10aの進行方向の前方(図7(D)の黒矢印)に向かって押圧力を与える。
【0081】
即ち、係止バルーン44がいわゆるキャタピラ(登録商標)のように(無限軌道のように)、腸壁40を当接しながら先端部10aの進行方向の前方に向かって繰り出される。
【0082】
そのため、腸壁40は先端部10aの進行方向の前方に手繰り寄せられる。従って、図7(D)の白矢印のように、電子内視鏡1の先端部10aは腸壁40に対し相対的に進行方向の後方に推進(逆進)する。
【0083】
本実施形態に係る逆進動作では、第2駆動バルーン46の膨張速度は第1駆動バルーン42の膨張速度よりも相対的に遅くなるように制御が行われる。
【0084】
具体的には、図6の工程Dにおいて、膨張して腸壁40を係止状態にある係止バルーン44を進行方向の前方(図7の右側)に押し出すときに駆動される第2駆動バルーン46の膨張速度が相対的に遅くなるように制御される一方で、図6の工程Aにおいて、収縮して腸壁40に対する係止状態が解除された係止バルーン44を進行方向の後方(図7の左側)に押し出すときに駆動される第1駆動バルーン42の膨張速度が相対的に速くなるように制御が行われる。第2駆動バルーン46の膨張速度は第1駆動バルーン42の膨張速度の1/2以下に設定されることが好ましい。
【0085】
図6に示した例では、工程Dにかかる時間(即ち、第2駆動バルーン46が収縮状態から膨張状態に遷移する時間)は例えば2〜4秒となっており、工程Aにかかる所要時間(即ち、第1駆動バルーン42が収縮状態から膨張状態に遷移する時間)の約2.5倍に設定されている。
【0086】
このように第2駆動バルーン46の膨張速度が第1駆動バルーン42の膨張速度よりも相対的に遅くなるように制御することによって、推進時(即ち、第2駆動バルーン46の膨張時)に、第2駆動バルーン46の膨張変形が係止バルーン44の内側への変形で吸収されることなく、第2駆動バルーン46から係止バルーン44に対して押圧力が確実に伝達されるようになる。その結果、係止バルーン44を先端部10aに対する固着部を中心にして先端部10aの進行方向の後方から前方に向かって十分に回転移動させることができ、推進動作の高速化を図りつつ、先端部10aを効率的に推進させることが可能となる。
【0087】
尚、逆進動作において、第1駆動バルーン42を膨張させるときには係止バルーン44は収縮して腸壁40に対する係止状態が解除された状態となっており、第2駆動バルーン46を膨張させたときのような問題は起こらないため、第1駆動バルーン42の膨張速度を第2駆動バルーン46の膨張速度よりも相対的に速くすることが可能である。
【0088】
このようにして第2駆動バルーン46を膨張させた後、第2駆動バルーン46及び係止バルーン44を膨張させた状態を保持すると共に、保持バルーン23を膨張させる(図6の工程E)。これによって、図7(E)に示すように、係止バルーン44と共に保持バルーン23が腸壁40に係止した状態となる。
【0089】
そして、保持バルーン23を膨張させた状態を保持し、係止バルーン44を収縮させる(図6の工程F)。これによって、図7(F)に示すように、保持バルーン23のみが腸壁40に係止した状態となる。
【0090】
以降、逆進動作を継続する場合には、図6の工程A〜工程Fを繰り返す。
【0091】
尚、本実施形態では、図4及び図6の工程Fにおいて、保持バルーン23を膨張させた状態で係止バルーン44の収縮と共に、第1又は第2駆動バルーン42、46を同時に収縮させているが、これらは必ずしも同時に収縮させる必要はなく、係止バルーン44を収縮させた後に第1又は第2駆動バルーン42、46を収縮させてもよい。
【0092】
また、第1及び第2駆動バルーン42、46と係止バルーン44のようにバルーンを使用する代わりに、布のような素材により所望の形状や大きさに膨張収縮が可能な膨張収縮部材を使用してもよい。
【0093】
また、第1及び第2駆動バルーン42、46と係止バルーン44とから成るバルーンユニットを複数個所に設けてもよい。
【0094】
第1の実施形態によれば、バルーン制御装置18による第1及び第2駆動バルーン42、46の膨張・収縮を制御する際、第1及び第2駆動バルーン42、46のうち、膨張して腸壁40を係止状態にある係止バルーン44を反対側に押し出すときに駆動される駆動バルーンの膨張速度が、収縮して腸壁40に対する係止状態が解除された係止バルーン44を反対側に押し出すときに駆動される駆動バルーンの膨張速度よりも相対的に遅くなるように制御が行われる。これにより、推進時に、第1又は第2駆動バルーン42、46の膨張変形が係止バルーン44の内側への変形で吸収されることなく、第1又は第2駆動バルーン42、46から係止バルーン44に対して押圧力が確実に伝達されるようになる。その結果、係止バルーン44を十分に回転させることができ、推進動作の高速化を図りつつ、先端部10aを効率的に推進させることが可能となる。
【0095】
また、本実施形態では、係止バルーン44及び保持バルーン23の少なくとも一方を腸壁40に係止させた状態で推進動作が行われるので、腸管の復元力により手繰り寄せた腸管内壁が元に戻ることなく、確実に、腸管に対して係止力を発生させて腸壁40に係止させ、かつ推進力を発生させるので、挿入部10を腸壁40に対し相対的に移動させることができる。
【0096】
尚、本実施形態では、先端部10aの進行方向の前方より第1駆動バルーン42、係止バルーン44、第2駆動バルーン46、保持バルーン23の順序で配設された構成例を示したが、これらの配設順序は本例に限らず、進行方向の前方より保持バルーン23、第1駆動バルーン42、係止バルーン44、第2駆動バルーン46であってもよい。
【0097】
また、前記のような正進動作と逆進動作を適宜組み合わせて行うことにより、先端部10aを進行方向の前後に移動させることができる。
【0098】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。以下、第1の実施形態と共通する部分については説明を省略し、本実施形態の特徴的な部分を中心に説明する。
【0099】
第1の実施形態では、例えば正進動作の場合、第2駆動バルーン46を膨張させることによって、係止バルーン44が第2駆動バルーン46に覆い被さった状態(図5(F))から第1駆動バルーン42に覆い被さった状態(図5(A))に変化させている。このとき、係止バルーン44は内圧0[Pa]に完全に収縮した状態(完全収縮状態)となっているため、第2駆動バルーン46の膨張時に、係止バルーン44が自身で巻き付きを起こしたり、第2駆動バルーン46の表面に巻き付いた状態となってしまい、係止バルーン44が第1駆動バルーン42に覆い被さった状態(図5(A))とならない場合が考えられる。このような場合が起こると、係止バルーン44を適切な位置で再膨張させることができなくなり、推進ロスが大きくなってしまう。
【0100】
そこで第2の実施形態では、第1の実施形態に潜在する問題点を改善すべく、係止バルーン44を内圧0[Pa]の完全収縮状態にすることなく、少なくとも内圧が所定の圧力以上となるように常に膨張させた状態で係止バルーン44の膨張・収縮を制御することによって、係止バルーン44が巻き付きを起こすことなく、係止バルーン44が適切な位置で再膨張できるようにする。
【0101】
図8は、第2実施形態に係る正進動作のタイムチャートを示した図である。また、図9は、図8の正進動作のタイミングチャートに対応させた各バルーンの膨張及び収縮の様子を示した概略断面図である。
【0102】
第2の実施形態では、先端部10aに設けられた複数のバルーン42、44、46、23のうち、第1及び第2駆動バルーン42、46と保持バルーン23は第1の実施形態と同様にして制御が行われる一方で、係止バルーン44は第1の実施形態とは異なる制御が行われる。
【0103】
具体的には、図8に示すように、係止バルーン44は、内圧0[Pa]の完全に収縮した状態(完全収縮状態)になることなく、内圧Pmin[Pa]の低圧膨張状態と内圧Pmax[Pa]の高圧膨張状態との間で膨張・収縮を繰り返すように制御が行われる(但し、0<Pmin<Pmaxとする。)。
【0104】
より詳しく説明すると、係止バルーン44は、図8の工程Aでは低圧膨張状態となっており、次の工程Bで低圧膨張状態から高圧膨張状態に変化し、工程Cが開始されて工程Eが終了するまでの間は高圧膨張状態が維持される。そして、工程Fで高圧膨張状態から低圧膨張状態に変化して、工程Aが開始される時点の状態に戻る。以後、工程A〜工程Fが順次繰り返し実行される。
【0105】
係止バルーン44が低圧膨張状態であるときの内圧Pmin[Pa]としては、係止バルーン44が腸壁40に接触しないか、又は、腸壁40に接触しても腸壁40との間に係止力を発生させない程度の膨張径となるような圧力が設定される。一方、係止バルーン44が高圧膨張状態であるときの内圧Pmax[Pa]としては、係止バルーン44が腸壁40に接触して腸壁40との間に十分な係止力を発生させる程度の膨張径となるような圧力が設定される。
【0106】
本実施形態においては、係止バルーン44が低圧膨張状態であるときの内圧Pmin[Pa]としては、次式 0<Pmin≦3×103(より好ましくは、0<Pmin≦2×103)を満足する範囲内に設定されることが好ましく、例えば係止バルーン44の内圧Pminは2×103[Pa]に設定された状態で制御が行われる。
【0107】
本実施形態においては、第1駆動バルーン42に比べて第2駆動バルーン46の膨張量を小さくすることも可能である。図8の工程Aでは、第2駆動バルーン46を膨張させるときには係止バルーン44は低圧膨張状態となっている。このときの係止バルーン44の膨張量は少なく、腸壁40に係止していないため、第2駆動バルーン46を膨張させたときに係止バルーン44から与えられる反発力(戻り力)は、図8の工程Dにおいて第1駆動バルーン42を駆動させたときに係止バルーン44から与えられる反発力よりも小さい。従って、第1駆動バルーン42に比べて第2駆動バルーン46の膨張量を小さくしても、係止バルーン44を容易に第1駆動バルーン42側に押し出すことができ、係止バルーン44を第1駆動バルーン42に覆い被さった状態とすることができる。
【0108】
尚、第2の実施形態に係る逆進動作については、図8に示したタイムチャートにおいて第1駆動バルーン42と第2駆動バルーン46の制御シーケンスが相互に入れ替わる点以外は同様であるので、ここでは重複を避けるため説明を省略する。
【0109】
第2の実施形態によれば、係止バルーン44は、内圧Pmin[Pa]の低圧膨張状態と内圧Pmax[Pa]の高圧膨張状態との間で膨張・収縮を繰り返すように制御が行われる。即ち、係止バルーン44の内圧が少なくとも所定の圧力(Pmin[Pa])以上となるように常に膨張させた状態で係止バルーン44の内圧が制御される。
【0110】
これにより、第1及び第2駆動バルーン42、46のうち、一方の駆動バルーン(低圧膨張状態にある係止バルーン44が覆い被さっている方の駆動バルーン)を膨張させたとき、低圧膨張状態にある係止バルーン44は、自身で巻き付きを起こすことなく、駆動バルーンから与えられる押圧力によって先端部10aの進行方向の前方又は後方に先端部10aに対する固着部を中心として回転移動し、他方の駆動バルーンに全体的に覆い被さった状態となる。その結果、係止バルーン44を適切に再膨張させることが可能となり、推進ロスを生じることなく、先端部10aを腸壁40に対して効率良く推進させることが可能となる。
【0111】
また、第1の実施形態と同様に、第1及び第2駆動バルーン42、46の膨張速度が相対的に異なるように制御が行われるので、推進時に第1又は第2駆動バルーン42、46の膨張変形が係止バルーン44の内側への変形で吸収されることなく、第1又は第2駆動バルーン42、46から係止バルーン44に対して押圧力が確実に伝達されるようになる。その結果、係止バルーン44を十分に回転させることができ、推進動作の高速化を図りつつ、先端部10aを効率的に推進させることが可能となる。
【0112】
〔第3の実施形態〕
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。以下、第1又は第2の実施形態と共通する部分については説明を省略し、本実施形態の特徴的な部分を中心に説明する。
【0113】
図10は、第3実施形態に係る正進動作のタイムチャートを示した図である。また、図11は、図10の正進動作のタイミングチャートに対応させた各バルーンの膨張及び収縮の様子を示した概略断面図である。
【0114】
第3の実施形態では、係止バルーン44の制御が一部異なる点以外は、第2の実施形態と同様の制御が行われる。
【0115】
具体的には、図10の工程Fにおいて、係止バルーン44を内圧Pmax[Pa]の高圧膨張状態(図11(E))から内圧0[Pa]の完全収縮状態(図11(F))に一旦変化させてから内圧Pmin[Pa]の低圧膨張状態(図11(G))に変化させている。
【0116】
より詳しく説明すると、図3に示したバルーン制御装置18は、バルブ開閉制御部30を制御して係止バルーン44に対応するバルブを開状態にした後、吸引ポンプ34を駆動して係止バルーン44から気体を吸引して、係止バルーン44を完全収縮状態にする。そして、吸引ポンプ34の駆動を停止した後、供給ポンプ36を駆動して完全収縮状態となった係止バルーン44に所定体積の気体を一定時間供給して(少量送気)して、係止バルーン44を低圧膨張状態にしている。
【0117】
このときの係止バルーン44に対する気体の送気量としては、係止バルーン44が高圧膨張状態(即ち、腸壁40に係止している状態)となっているときの体積の10分の1以下の体積であることが好ましい。
【0118】
このように係止バルーン44を完全収縮状態にした後に所定体積の気体を一定時間供給する方式(少量送気方式)によれば、係止バルーン44を高圧膨張状態から低圧膨張状態に直接変化させる態様(第2の実施形態)に比べて、係止バルーン44に対する制御が簡便となり、制御時間を短縮することが可能となる。
【0119】
尚、第3の実施形態に係る逆進動作については、図10に示したタイムチャートにおいて第1駆動バルーン42と第2駆動バルーン46の制御シーケンスが相互に入れ替わる点以外は同様であるので、ここでは重複を避けるため説明を省略する。
【0120】
第3の実施形態によれば、上述した第1及び第2の実施形態と同様の効果が得られると共に、係止バルーン44を高圧膨張状態から低圧膨張状態に直接変化させることなく、完全収縮状態を経てから行われるので、係止バルーン44に対する制御が簡便となり、制御時間の短縮によって推進動作の高速化が可能となる。
【0121】
尚、上述した各実施形態では、電子内視鏡1の挿入部10に直接バルーンを取り付けた例を挙げて説明したが、本発明はこれに限定されず、挿入部10が挿入固定される筒体(オーバーチューブ)の先端に複数のバルーンが並設される場合についても同様に適用することが可能である。
【0122】
以上、本発明の管内移動体用アクチュエータ、内視鏡、及び管内移動体用アクチュエータの制御方法について詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0123】
1…電子内視鏡、10…挿入部、10a…先端部、18…バルーン制御装置、23…保持バルーン、42…第1駆動バルーン、44…係止バルーン、46…第2駆動バルーン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管内に挿入される管内移動体に固定され、膨張時に前記管内の管壁に係止した状態となるように構成される第1の膨張収縮部材と、
前記第1の膨張収縮部材の前記管内移動体の移動方向の前後に並べて配置された状態で前記管内移動体に固定され、膨張時に前記管壁に係止した状態とならないように構成されると共に前記第1の膨張収縮部材に押圧力を付与する第2及び第3の膨張収縮部材と、
前記第1の膨張収縮部材、前記第2の膨張収縮部材、及び前記第3の膨張収縮部材の膨張及び収縮を制御することにより、前記管内移動体を前記管壁に対して相対的に移動させる制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記第1の膨張収縮部材が前記管壁に係止した状態であるときには前記第2の膨張収縮部材を膨張させる一方で、前記第1の膨張収縮部材が前記管壁に係止した状態でないときには前記第3の膨張収縮部材を膨張させるように制御を行う手段であって、前記第2の膨張収縮部材の膨張速度が前記第3の膨張収縮部材の膨張速度よりも相対的に遅くなるように制御する手段であることを特徴とする管内移動体用アクチュエータ。
【請求項2】
前記制御手段は、前記第2の膨張収縮部材の膨張速度が前記第3の膨張収縮部材の膨張速度の1/2以下となるように制御することを特徴とする請求項1に記載の管内移動体用アクチュエータ。
【請求項3】
前記制御手段は、前記第1の膨張収縮部材が前記管壁に係止した状態であるときには、前記第1の膨張収縮部材を内圧Pmax[Pa]の高圧膨張状態にすると共に、前記第1の膨張収縮部材が前記管壁に係止した状態でないときには、前記第1の膨張収縮部材を内圧Pmin[Pa](但し、0<Pmin<Pmaxとする。)の低圧膨張状態にすることを特徴とする請求項1又は2に記載の管内移動体用アクチュエータ。
【請求項4】
前記制御手段は、前記第3の膨張収縮部材を膨張させるときには、前記第1の膨張収縮部材が前記低圧膨張状態となるように制御することを特徴とする請求項3に記載の管内移動体用アクチュエータ。
【請求項5】
前記制御手段は、前記第1の膨張収縮部材を前記高圧膨張状態から前記低圧膨張状態に変化させる際、前記第1の膨張収縮部材を前記高圧膨張状態から内圧0[Pa]の完全収縮状態に一旦変化させた後に前記低圧膨張状態に変化させるように制御することを特徴とする請求項3又は4に記載の管内移動体用アクチュエータ。
【請求項6】
前記低圧膨張状態であるときの前記第1の膨張収縮部材の内圧Pmin[Pa]は、次式
0<Pmin<3×103
を満たすことを特徴とする請求項3乃至5のいずれか1項に記載の管内移動体用アクチュエータ。
【請求項7】
前記管内移動体に固定され、膨張時に前記管内の管壁に係止した状態となるように構成される第4の膨張収縮部材を更に備え、
前記制御手段は、前記第4の膨張収縮部材の膨張及び収縮を制御することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の管内移動体用アクチュエータ。
【請求項8】
前記制御手段は、前記第1の膨張収縮部材及び前記第4の膨張収縮部材の少なくとも一方が前記管壁に係止した状態となるように、前記第1の膨張収縮部材及び前記第4の膨張収縮部材の膨張及び収縮を制御することを特徴とする請求項7に記載の管内移動体用アクチュエータ。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の管内移動体用アクチュエータを備えることを特徴とする内視鏡。
【請求項10】
管内に挿入される管内移動体に固定され、膨張時に前記管内の管壁に係止した状態となるように構成される第1の膨張収縮部材と、
前記第1の膨張収縮部材の前記管内移動体の移動方向の前後に並べて配置された状態で前記管内移動体に固定され、膨張時に前記管壁に係止した状態とならないように構成されると共に前記第1の膨張収縮部材に押圧力を付与する第2及び第3の膨張収縮部材と、を備え、
前記第1の膨張収縮部材、前記第2の膨張収縮部材、及び前記第3の膨張収縮部材の膨張及び収縮を制御することにより、前記管内移動体を前記管壁に対して相対的に移動させる管内移動体用アクチュエータの制御方法であって、
前記第1の膨張収縮部材が前記管壁に係止した状態であるときには前記第2の膨張収縮部材を膨張させる一方で、前記第1の膨張収縮部材が前記管壁に係止した状態でないときには前記第3の膨張収縮部材を膨張させるように制御を行い、
前記第2の膨張収縮部材の膨張速度が前記第3の膨張収縮部材の膨張速度よりも相対的に遅くなるように制御することを特徴とする管内移動体用アクチュエータの制御方法。
【請求項1】
管内に挿入される管内移動体に固定され、膨張時に前記管内の管壁に係止した状態となるように構成される第1の膨張収縮部材と、
前記第1の膨張収縮部材の前記管内移動体の移動方向の前後に並べて配置された状態で前記管内移動体に固定され、膨張時に前記管壁に係止した状態とならないように構成されると共に前記第1の膨張収縮部材に押圧力を付与する第2及び第3の膨張収縮部材と、
前記第1の膨張収縮部材、前記第2の膨張収縮部材、及び前記第3の膨張収縮部材の膨張及び収縮を制御することにより、前記管内移動体を前記管壁に対して相対的に移動させる制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記第1の膨張収縮部材が前記管壁に係止した状態であるときには前記第2の膨張収縮部材を膨張させる一方で、前記第1の膨張収縮部材が前記管壁に係止した状態でないときには前記第3の膨張収縮部材を膨張させるように制御を行う手段であって、前記第2の膨張収縮部材の膨張速度が前記第3の膨張収縮部材の膨張速度よりも相対的に遅くなるように制御する手段であることを特徴とする管内移動体用アクチュエータ。
【請求項2】
前記制御手段は、前記第2の膨張収縮部材の膨張速度が前記第3の膨張収縮部材の膨張速度の1/2以下となるように制御することを特徴とする請求項1に記載の管内移動体用アクチュエータ。
【請求項3】
前記制御手段は、前記第1の膨張収縮部材が前記管壁に係止した状態であるときには、前記第1の膨張収縮部材を内圧Pmax[Pa]の高圧膨張状態にすると共に、前記第1の膨張収縮部材が前記管壁に係止した状態でないときには、前記第1の膨張収縮部材を内圧Pmin[Pa](但し、0<Pmin<Pmaxとする。)の低圧膨張状態にすることを特徴とする請求項1又は2に記載の管内移動体用アクチュエータ。
【請求項4】
前記制御手段は、前記第3の膨張収縮部材を膨張させるときには、前記第1の膨張収縮部材が前記低圧膨張状態となるように制御することを特徴とする請求項3に記載の管内移動体用アクチュエータ。
【請求項5】
前記制御手段は、前記第1の膨張収縮部材を前記高圧膨張状態から前記低圧膨張状態に変化させる際、前記第1の膨張収縮部材を前記高圧膨張状態から内圧0[Pa]の完全収縮状態に一旦変化させた後に前記低圧膨張状態に変化させるように制御することを特徴とする請求項3又は4に記載の管内移動体用アクチュエータ。
【請求項6】
前記低圧膨張状態であるときの前記第1の膨張収縮部材の内圧Pmin[Pa]は、次式
0<Pmin<3×103
を満たすことを特徴とする請求項3乃至5のいずれか1項に記載の管内移動体用アクチュエータ。
【請求項7】
前記管内移動体に固定され、膨張時に前記管内の管壁に係止した状態となるように構成される第4の膨張収縮部材を更に備え、
前記制御手段は、前記第4の膨張収縮部材の膨張及び収縮を制御することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の管内移動体用アクチュエータ。
【請求項8】
前記制御手段は、前記第1の膨張収縮部材及び前記第4の膨張収縮部材の少なくとも一方が前記管壁に係止した状態となるように、前記第1の膨張収縮部材及び前記第4の膨張収縮部材の膨張及び収縮を制御することを特徴とする請求項7に記載の管内移動体用アクチュエータ。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の管内移動体用アクチュエータを備えることを特徴とする内視鏡。
【請求項10】
管内に挿入される管内移動体に固定され、膨張時に前記管内の管壁に係止した状態となるように構成される第1の膨張収縮部材と、
前記第1の膨張収縮部材の前記管内移動体の移動方向の前後に並べて配置された状態で前記管内移動体に固定され、膨張時に前記管壁に係止した状態とならないように構成されると共に前記第1の膨張収縮部材に押圧力を付与する第2及び第3の膨張収縮部材と、を備え、
前記第1の膨張収縮部材、前記第2の膨張収縮部材、及び前記第3の膨張収縮部材の膨張及び収縮を制御することにより、前記管内移動体を前記管壁に対して相対的に移動させる管内移動体用アクチュエータの制御方法であって、
前記第1の膨張収縮部材が前記管壁に係止した状態であるときには前記第2の膨張収縮部材を膨張させる一方で、前記第1の膨張収縮部材が前記管壁に係止した状態でないときには前記第3の膨張収縮部材を膨張させるように制御を行い、
前記第2の膨張収縮部材の膨張速度が前記第3の膨張収縮部材の膨張速度よりも相対的に遅くなるように制御することを特徴とする管内移動体用アクチュエータの制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−147503(P2011−147503A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−9265(P2010−9265)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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