説明

管内面の洗浄方法および回収用治具

【課題】洗浄用部材を到達側分岐管から容易に取出して回収することが可能な管内面の洗浄方法を提供する。
【解決手段】洗浄用ボール22を縮小した状態で発進側分岐管から水道管1内へ挿入し、水道管1内で洗浄用ボール22を拡張し、水道管1内に水を流して洗浄用ボール22を移送することにより水道管1の内面を洗浄用ボール22で洗浄し、洗浄用ボール22が到達側分岐管8に到達すると、水道管1内を断水状態にして、到達側分岐管8に銛28を挿入し、銛28で洗浄用ボール22を破裂させ、銛28を洗浄用ボール22に引っ掛けて到達側分岐管8から脱抜することにより、洗浄用ボール22を到達側分岐管8から引き出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば水道管等の管内面の洗浄方法および洗浄に使用される回収用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の管内面の洗浄方法については、例えば、図22に示すように、水道管101の上流側の開閉弁102と下流側の開閉弁103とを閉じて、水道管101の所定領域104の流れを遮断し、この状態で、拡縮自在な洗浄用ピグ105を上流の発進側分岐管106から水道管101内へ挿入し、その後、上流側の開閉弁102を開いて水道管101内に通水し、洗浄用ピグ105を水道管101内の下流側へ移送しながら、水道管101の内面を洗浄用ピグ105で洗浄し、洗浄後、洗浄用ピグ105を下流の到達側分岐管107から回収する洗浄方法が知られている(下記特許文献1参照)。また、拡縮自在な洗浄用ピグ105としては、内部に中空部を有する圧縮変形自在なゴム製のものが知られている(下記特許文献2参照)。
【0003】
発進側および到達側分岐管106,107の各内径は水道管101の内径よりも小径であり、上記のような洗浄方法では、洗浄用ピグ105は、発進側分岐管106内において縮径し、発進側分岐管106から水道管101内に挿入されると拡径し、水道管101内から到達側分岐管107内に挿入されると縮径される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−66522
【特許文献2】特開2001−87727
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記の従来形式では、特に、到達側分岐管107の内径と水道管101の内径とに大幅な差がある場合、洗浄用ピグ105は、水道管101内から到達側分岐管107内に挿入される際に、大幅に縮径されることになる。このため、大幅に縮径された洗浄用ピグ105が到達側分岐管107内の途中で詰ってしまい、洗浄用ピグ105(洗浄用部材)を到達側分岐管107内からスムーズに取り出すことが困難であるという問題が生じる。
【0006】
本発明は、洗浄用部材を到達側分岐管から容易に取り出して回収することが可能な管内面の洗浄方法および回収用治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本第1発明における管内面の洗浄方法は、拡縮自在な洗浄用部材を縮小した状態で上流の発進側分岐管から本管内へ挿入し、
本管内で洗浄用部材を拡張し、
本管内に流体を流して洗浄用部材を移送することにより本管内面を洗浄用部材で洗浄し、
洗浄用部材が下流の到達側分岐管に到達すると、本管内を断水状態にして、到達側分岐管に回収用治具を挿入し、
回収用治具で洗浄用部材を破裂させ、
回収用治具を到達側分岐管から脱抜することにより、回収用治具を用いて、洗浄用部材を、本管内から到達側分岐管内を通して引き出すものである。
【0008】
これによると、本管の内径とそれよりも小径である到達側分岐管の内径とに大幅な差がある場合でも、回収用治具で洗浄用部材を破裂させた後、回収用治具を用いて、洗浄用部材を到達側分岐管内から引き出すため、洗浄用部材を到達側分岐管から容易に取り出して回収することが可能である。
【0009】
本第2発明における管内面の洗浄方法は、回収用治具で洗浄用部材を破裂させた後、本管内を通水状態にし、
本管内から到達側分岐管内に引き出された洗浄用部材を流体圧によって押し出すものである。
【0010】
これによると、回収用治具を用いて、洗浄用部材を到達側分岐管内から引き出す際、洗浄用部材は流体圧によって押し出されるため、洗浄用部材を到達側分岐管から一段と容易に取り出すことが可能である。
【0011】
本第3発明における管内面の洗浄方法は、到達側分岐管に到達した洗浄用部材を本管内で捕捉した後、本管内を断水状態にして、到達側分岐管に回収用治具を挿入するものである。
【0012】
これによると、洗浄用部材が本管内を到達側分岐管の上流側から下流側へ通過して回収不能に陥ってしまうのを防止することができる。
本第4発明における管内面の洗浄方法は、回収用治具として銛を使用するものである。
【0013】
これによると、銛を到達側分岐管に挿入し、銛の先端で洗浄用部材を突刺して破裂させ、破裂した洗浄用部材を銛の先端部に引っ掛けて到達側分岐管内から引き出すことにより、洗浄用部材を容易に回収することができる。
【0014】
本第5発明は、上記第1発明から第4発明のいずれか1項に記載の管内面の洗浄方法に用いられる回収用治具であって、
到達側分岐管に挿脱自在な棒状部と、棒状部の先端に設けられ且つ洗浄用部材を突き刺す突刺し部とを有し、
突刺し部に、破裂した洗浄用部材を引っ掛ける掛止部が形成されているものである。
【0015】
これによると、回収用治具を到達側分岐管に挿入し、突刺し部の先端で洗浄用部材を突刺して破裂させ、破裂した洗浄用部材を掛止部に引っ掛けて到達側分岐管内から引き出すことにより、洗浄用部材を容易に回収することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように本発明によると、洗浄用部材を到達側分岐管から容易に取り出して回収することが可能である。また、洗浄用部材が本管内を到達側分岐管の上流側から下流側へ通過して回収不能に陥ってしまうのを防止することができる。さらに、回収用治具の突刺し部の先端で洗浄用部材を突刺して破裂させ、破裂した洗浄用部材を掛止部に引っ掛けて到達側分岐管内から引き出すことにより、洗浄用部材を容易に回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施の形態における水道管およびその付帯設備の図である。
【図2】同、洗浄装置を用いて水道管を洗浄している状態を示す図である。
【図3】同、水道管内の洗浄に用いる洗浄用ボールの断面図である。
【図4】同、水道管内の洗浄に用いる銛の図であり、(a)は正面図、(b)は(a)におけるX−X矢視図である。
【図5】同、水道管内の洗浄に用いる捕捉用治具の側面図である。
【図6】同、捕捉用治具の一部拡大断面図である。
【図7】図5におけるX−X矢視図である。
【図8】同、水道管内の洗浄方法を示す図であり、洗浄用ボールを水道管内に挿入する行程を示す。
【図9】同、水道管内の洗浄方法を示す図であり、捕捉用治具を取付ける行程を示す。
【図10】同、水道管内の洗浄方法を示す図であり、捕捉用治具を取付ける行程を示す。
【図11】同、水道管内の洗浄方法を示す図であり、捕捉用治具を取付ける行程を示す。
【図12】同、水道管内の洗浄方法を示す図であり、洗浄用ボールで水道管内を洗浄している状態を示す。
【図13】同、水道管内の洗浄方法を示す図であり、洗浄用ボールが捕捉用治具の受止部材に当接した状態を示す。
【図14】同、水道管内の洗浄方法を示す図であり、洗浄用ボールが捕捉用治具で捕捉された状態を示す。
【図15】図14におけるX−X矢視図である。
【図16】同、水道管内の洗浄方法を示す図であり、捕捉用治具を取り外した状態を示す。
【図17】同、水道管内の洗浄方法を示す図であり、銛で洗浄用ボールを破裂させる行程を示す。
【図18】同、水道管内の洗浄方法を示す図であり、銛で洗浄用ボールを引上げる行程を示す。
【図19】同、水道管内の洗浄方法を示す図であり、洗浄用ボールを回収する行程を示す。
【図20】本発明の第2の実施の形態における水道管内の洗浄に用いる第1の錆除去用治具の図であり、(a)は側面図、(b)は(a)におけるX−X矢視図である。
【図21】同、水道管内の洗浄に用いる第2の錆除去用治具の図であり、(a)は側面図、(b)は(a)におけるX−X矢視図である。
【図22】従来の水道管内の洗浄方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明における実施の形態を、図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
先ず、第1の実施の形態を図1〜図19を参照しながら説明する。
【0019】
図1に示すように、1は地中に埋設された水道管(本管の一例)であり、水道管1には上流側の開閉弁2と下流側の開閉弁3とが設けられている。尚、図面において、各開閉弁2,3が閉じている場合は黒塗りで表示し、開いている場合は白抜きで表示する。
【0020】
両開閉弁2,3間は、水道管1内を洗浄する際に断水する断水区間4である。断水区間4には上流の発進側消火栓部5と下流の到達側消火栓部6とが設けられている。両消火栓部5,6は、水道管1の管頂部から分岐した分岐管7,8と、分岐管7,8の上端に接続されたボール式等の補修弁9,10と、補修弁9,10の上端に接続された消火栓11,12とを有している。
【0021】
消火栓部5,6はそれぞれ、地中に掘られた消火栓部収納用空間13,14内に収納されている。尚、分岐管7,8の内径は水道管1の内径よりも小さい。また、消火栓部収納用空間13,14の上面開口部は着脱自在な蓋15,16で閉じられている。また、両消火栓部5,6間は、水道管1内を洗浄する際の洗浄対象区間17である。
【0022】
図2に示すように、21は水道管1の洗浄対象区間17を洗浄する洗浄装置である。この洗浄装置21は、拡縮自在な洗浄用ボール22(洗浄用部材の一例)と、接続短管23,24と、緊急時に洗浄用ボール22を回収する緊急時ボール回収手段25と、排水手段26と、水道管1内で洗浄用ボール22を捕捉する捕捉用治具27と、捕捉された洗浄用ボール22を破裂させて回収する銛28(回収用治具の一例,図4参照)とを有している。
【0023】
図3に示すように、洗浄用ボール22は、ゴム等の弾性材製で且つ内部に中空部32を有する球体部33と、球体部33の外面を覆うスポンジ部34と、外部から中空部32に連通した注水口35とを備えている。注水口35には、中空部32に水37(流体の一例)を注入するための注水用ホース36が着脱自在に接続されている。尚、注水口35には、注水口35から中空部32に注入された水37が外部へ流出することを防止するバルブ等の逆流防止機構(図示省略)が備えられている。
【0024】
発進側の接続短管23は発進側の補修弁9の上端に着脱自在であり、到達側の接続短管24は到達側の補修弁10の上端に着脱自在である。
緊急時ボール回収手段25は、洗浄用ボール22に接続された回収用ロープ38と、回収用ロープ38を巻取り送出しする巻取装置39とを有している。巻取装置39は、発進側の接続短管23の上端に着脱自在な接続フレーム40と、接続フレーム40の上端に設けられた電動式のリール41とを有している。
【0025】
排水手段26は、到達側の接続短管24の上端に着脱自在な排水用接続管43と、排水用接続管43に接続された排水用配管44と、排水用配管44を開閉する排水用弁45とを有している。尚、排水用接続管43はT字管である。
【0026】
図4,図17に示すように、銛28は、排水用接続管43から接続短管24および補修弁10および分岐管8を経て水道管1に連通する到達側の縦管路47に挿脱自在な棒状部48と、棒状部48の先端に設けられ且つ先端が尖った突刺し部49とを有している。尚、突刺し部49は、破裂した洗浄用ボール22を引っ掛ける複数の掛止板49a(返し)を供えている。これら掛止板49aは、掛止部の一例であり、突刺し部49の基端部に放射状に設けられている。尚、図4では掛止板49aを4枚設けているが、4枚に限定されるものではなく、複数枚又は単数枚設けてもよい。
【0027】
また、捕捉用治具27は以下のような構成を有している。
図5〜図7に示すように、捕捉用治具27は、排水用接続管43の上端開口部に形成されたフランジ43a(図9参照)に着脱自在な取付用フランジ51を有している。取付用フランジ51の中央部には貫通孔52が形成され、この貫通孔52には可動部材50が昇降自在に挿通されている。可動部材50は、到達側の縦管路47に挿脱自在であり、外側のパイプ部材53と、パイプ部材53内に挿通された棒状部材54とを有している。パイプ部材53は取付用フランジ51に対して昇降自在であり、棒状部材54はパイプ部材53に対して昇降自在である。
【0028】
パイプ部材53は下端部に円板状の上板体55を有している。また、棒状部材54は、上端部にねじ部56を有するとともに、下端部に円板状の下板体57を有している。ねじ部56はパイプ部材53の上方に突出し、ねじ部56には、ワッシャ62が外嵌され且つナット63が螺合されている。また、下板体57は上板体55の下方に対向している。
【0029】
上板体55と下板体57との間には、径方向に拡縮自在なゴム等の弾性材製の閉塞用ボール69が挟まれている。閉塞用ボール69は、可動部材50が上昇した際、到達側の分岐管8の下端開口部を閉塞するものである。尚、棒状部材54の下端部は閉塞用ボール69を貫通している。また、ねじ部56とワッシャ62とナット63とによって、閉塞用ボール69を到達側の分岐管8の径方向へ拡大する拡径手段64が構成されている。
【0030】
下板体57には、水道管1内において洗浄用ボール22を下流側から受け止める受止部材58と、ストッパー59とが設けられている。この受止部材58は、平板状であり、その上端部が蝶番60を介して下板体57に連結され、蝶番60を中心にして水道管1の管長方向に揺動自在である。尚、受止部材58は、図5の実線で示すように、外力を受けない状態では下向きに垂下しており、垂下姿勢から水道管1の下流側への揺動範囲がストッパー59により所定の揺動範囲に規制される。図5の仮想線で示すように、受止部材58は、ストッパー59に当接した際、下部が水道管1の下流側へ傾斜する傾斜姿勢となる。
【0031】
図6に示すように、取付用フランジ51とパイプ部材53との間はOリング61等のシール材でシールされており、Oリング61を押えるためのねじ締め込み式の押え部材65がパイプ部材53に外嵌されている。押え部材65に形成された雄ねじを取付用フランジ51の貫通孔52に形成された雌ねじに螺合し、押え部材65を締め込むことにより、Oリング61が押圧されて圧縮され、取付用フランジ51とパイプ部材53との間がシールされる。
【0032】
図5に示すように、パイプ部材53には、可動部材50の軸心を到達側の分岐管8の軸心に合わせる心出用治具66が外嵌されている。この心出用治具66は、パイプ部材53に対して軸心方向へ移動自在であり、固定用ボルト67によってパイプ部材53に固定される。
【0033】
図5,図7に示すように、パイプ部材53には、取付用フランジ51に対する可動部材50の上昇を認識するための認識用部材71が外嵌されている。認識用部材71は、パイプ部材53に対して軸心方向(上下方向)に移動自在な円筒状の本体72と、本体72をパイプ部材53に固定する固定ボルト73(固定部材)とを有している。
【0034】
以下、上記洗浄装置21を用いて水道管1の内面を洗浄する洗浄方法について説明する。
(1)先ず、図8に示すように、両開閉弁2,3を閉じ、洗浄対象区間17を断水状態(流れを遮断した状態)にする。その後、蓋15,16を取り外し、補修弁9,10から消火栓11,12を取り外し、発進側の補修弁9の上端に接続短管23を接続し、到達側の補修弁10の上端に接続短管24を接続する。この際、両補修弁9,10を開にしておく。
【0035】
(2)洗浄用ボール22の注水口35に注水用ホース36の先端を接続し、回収用ロープ38を洗浄用ボール22に接続し、洗浄用ボール22を、縮径(縮小)した状態で、発進側の接続短管23から補修弁9と分岐管7とを経て水道管1内に挿入する。
【0036】
(3)図3に示すように、水37を注水用ホース36から洗浄用ボール22の注水口35を通じて中空部32に所定量注入することにより、洗浄用ボール22を膨らませて拡径(拡張)させる。これにより、洗浄用ボール22の外面(すなわちスポンジ部34)が水道管1の内面に確実に接触した状態になる。
【0037】
(4)注水用ホース36を上方向に引っ張って、注水用ホース36の先端を洗浄用ボール22の注水口35から取り外した後、注水用ホース37を回収する。
(5)次に、図2に示すように、緊急時ボール回収手段25の接続フレーム40の下端のフランジを発進側の接続短管23の上端のフランジに接合する。この際、接続フレーム40の下端のフランジと発進側の接続短管23の上端のフランジとの間をガスケット等のシール材(図示せず)でシールし、また、接続フレーム40の下端のフランジと回収用ロープ38との間をパッキン等のシール材(図示せず)でシールする。
【0038】
(6)到達側の接続短管24の上端に排水用接続管43を接続し、捕捉用治具27を以下のようにして取付ける。
(7)押え部材65を緩めておき、固定ボルト73を緩めて認識用部材71をパイプ部材53に対して昇降自在にした状態で、図9に示すように、捕捉用治具27を排水用接続管43の上端開口部から到達側の縦管路47に挿入し、取付用フランジ51を排水用接続管43の上端のフランジ43aに接合する。
【0039】
(8)図10に示すように、ナット63を回すことにより、パイプ部材53に対して棒状部材54が引上げられ、上板体55と下板体57との上下間隔が縮小され、閉塞用ボール69の水平方向における直径が分岐管8の内径よりも拡大する。
【0040】
(9)閉塞用ボール69が水道管1と到達側の分岐管8との接合部分に下方から当接するまで、可動部材50を取付用フランジ51に対して一旦引上げ、その後、可動部材50を所定距離だけ下げて、図11に示すように、水道管1の頂部と上板体55との間に所定寸法(例えば数センチメートル)の隙間74を形成する。
【0041】
(10)押え部材65を締め込み、認識用部材71の下端が押え部材65の上端に当接した状態で、固定ボルト73を締付け、認識用部材71をパイプ部材53に固定する。これにより、可動部材50は、認識用部材71と押え部材65とを介して取付用フランジ51に支持され、到達側の縦管路47内に吊り下げられた状態で保持される。これにより、捕捉用治具27が取り付けられる。
【0042】
(11)図2,図12に示すように、下流側の開閉弁3を引き続き閉じた状態のままで、上流側の開閉弁2を開く。これにより、水道管1内の水W(流体の一例)が、開閉弁2から水道管1の洗浄対象区間17を流れ、到達側の分岐管8から補修弁10と接続短管24と排水用接続管43とを通って排水用配管44へ排水される。このため、拡径状態の洗浄用ボール22が水圧によって水道管1内の洗浄対象区間17を発進側から到達側へ移送され、この際、洗浄用ボール22のスポンジ部34が水道管1の内面を摺動することにより、水道管1の内面が洗浄される。また、このとき、洗浄用ボール22の移送に伴って、緊急時ボール回収手段25の回収用ロープ38がリール41から送り出される。
【0043】
尚、この際、図6に示すように、Oリング61が押え部材65により押圧されて圧縮されているため、取付用フランジ51とパイプ部材53との間がシールされるとともに、洗浄用ボール22が受止部材58に受け止められる前に、可動部材50が内水圧によって上昇してしまうのを防止することができる。
【0044】
(12)図13に示すように、洗浄用ボール22は、到達側の分岐管8の下方に達すると、受止部材58によって受け止められる。この際、受止部材58は、上流側から下流側へ押され、蝶番60を中心に下流側へ揺動し、ストッパー59に当接して傾斜姿勢になる。これにより、洗浄用ボール22が捕捉用治具27で捕捉される。
【0045】
この際、心出用治具66が分岐管8の内面に当接することにより、可動部材50が分岐管8の径方向に変動するのを防止することができる。
また、図14,図15に示すように、可動部材50は、捕捉された洗浄用ボール22から上向きの力Fを受けて、上昇する。この力Fにより、可動部材50と共に認識用部材71が押え部材65から上昇し、認識用部材71と押え部材65との間に隙間75が発生する。作業者は、この隙間75を目視で確認することにより、洗浄用ボール22が捕捉用治具27で捕捉されたことを、確実且つ正確に認識(確認)することができる。
【0046】
さらに、上記のように洗浄用ボール22が捕捉された際、閉塞用ボール69は、可動部材50と共に上昇し、到達側の分岐管8の下端開口部を閉塞して止水する。これにより、洗浄用ボール22の一部が分岐管8に入り込んでしまうのを防止することができる。仮に、洗浄用ボール22の一部が分岐管8に入り込んでしまうと、洗浄用ボール22が不用意に破裂して水道管1内に沈下し回収不能に陥る虞がある。
【0047】
(13)上流側の開閉弁2を閉じて、洗浄対象区間17を断水させる。その後、図16に示すように、取付用フランジ51を排水用接続管43の上端のフランジ43aから取り外し、捕捉用治具27を到達側の縦管路47から上方へ脱抜して取り外す。
【0048】
(14)図17に示すように、銛28を排水用接続管43の上端開口部から到達側の分岐管8内に挿入し、銛28の突刺し部49の先端で洗浄用ボール22を突き刺して破裂させる。
【0049】
(15)図18に示すように、中央部分に貫通孔77を有するフランジ蓋78を排水用接続管43の上端のフランジ43aに取付ける。この際、銛28の棒状部材48をフランジ蓋78の貫通孔77に挿通しておく。尚、棒状部材48と貫通孔77の内周面との間はOリング等のシール材でシールされている。
【0050】
そして、上流側の開閉弁2を開いて、水道管1内の水Wを開閉弁2から排水用配管44へ通水しながら、破裂した洗浄用ボール22を、銛28の掛止板49aに引っ掛けて、水道管1内から排水用接続管43の上端開口部まで引上げる。この際、洗浄用ボール22は下方からの水圧Pによって押し上げられるため、銛28を用いて洗浄用ボール22を容易に引上げることができる。
【0051】
(16)その後、開閉弁2を閉じて洗浄対象区間17を断水させ、図19に示すように、フランジ蓋78を排水用接続管43から取り外し、破裂した洗浄用ボール22を排水用接続管43の上端開口部から取り出して回収する。これにより、水道管1の洗浄作業が完了する。
【0052】
上記のように、銛28で洗浄用ボール22を破裂させた後、銛28を用いて、洗浄用ボール22を到達側の分岐管8と補修弁10と接続短管24と排水用接続管43から引き出すため、水道管1の内径とそれよりも小径である分岐管8の内径とに大幅な差がある場合でも、洗浄用ボール22を、分岐管8を通して排水用接続管43から容易に取り出し回収することが可能である。
【0053】
また、銛28を用いて、洗浄用ボール22を排水用接続管43内から引き出す際、図18に示すように、洗浄用ボール22は水圧Pによって押し出されるため、洗浄用ボール22を一段と容易に取り出すことが可能である。
【0054】
また、図14に示すように、洗浄用ボール22を捕捉用治具27で捕捉することにより、洗浄用ボール22が到達側の分岐管8の下方を上流側から下流側へ通過するのを防止することができるため、洗浄用ボール22を到達側の分岐管8から確実に回収することが可能である。
【0055】
尚、万一、洗浄用ボール22が、到達側の分岐管8に達する前に、洗浄対象区間17の途中で破裂した場合、図2に示すように、緊急時ボール回収手段25のリール41を作動させて回収用ロープ38を巻き取ることにより、洗浄用ボール22を発進側の分岐管7へ引き戻して接続短管23から回収することができる。
【0056】
洗浄作業完了後、緊急時ボール回収手段25と排水手段26と両接続短管23,24とを取り外し、図1に示すように、両消火栓11,12と両蓋15,16とを取り付ける。
(第2の実施の形態)
先ず、第2の実施の形態を図20,図21を参照しながら説明する。
【0057】
第2の実施の形態では、上記第1の実施の形態で説明した水道管1の洗浄方法を行う際、最初に、到達側の分岐管8内および水道管1と分岐管8との連通部分81(接合部分)に付着した瘤状の錆82を錆除去用治具83,84で除去しておく。
【0058】
図20に示すように、第1の錆除去用治具83は、パイプ85と、パイプ85の先端に回転自在に設けられた複数の回転羽根86と、回転羽根86を回転駆動させる回転駆動装置(図示省略)とを有している。尚、回転羽根86は、金属製であり、回転軸心方向から見て放射状に設けられている。
【0059】
図21に示すように、第2の錆除去用治具84は、パイプ88と、パイプ88の先端に回転自在に設けられた回転体89と、回転体89を回転駆動させる回転駆動装置(図示省略)と、回転体89に設けられた複数のチェン90と、チェン90の先端に取り付けられた金属製のハンマー91とを有している。
【0060】
以下、上記第1および第2の錆除去用治具83,84を用いた水道管1の洗浄方法について説明する。
(1)先ず、両開閉弁2,3を閉じ、洗浄対象区間17を断水状態(流れを遮断した状態)にする。その後、蓋15,16を取り外し、補修弁9,10から消火栓11,12を取り外す。この際、両補修弁9,10を開にしておく。
【0061】
図20に示すように、第1の錆除去用治具83を到達側の補修弁10から分岐管8内に挿入し、回転羽根86を回転させて、到達側の分岐管8内の錆82を回転羽根86で除去する。除去後、第1の錆除去用治具83を分岐管8内から上方へ脱抜し、図21に示すように、第2の錆除去用治具84を、到達側の補修弁10から分岐管8を通して水道管1内に挿入し、回転体89を回転させる。これにより、チェン90と共にハンマー91が回転し、水道管1と分岐管8との円弧(R)形状の連通部分81の錆82をハンマー91で除去する。
【0062】
その後、第2の錆除去用治具84を分岐管8内から上方へ脱抜し、図8に示すように、発進側の補修弁9の上端に接続短管23を接続し、到達側の補修弁10の上端に接続短管24を接続する。その後、上記第1の実施の形態で説明した洗浄方法の(2)〜(16)を実施すればよい。このように、水道管1を洗浄する際、予め最初に錆82を除去しておくことにより、洗浄用ボール22を確実に回収することができる。
【0063】
上記第2の実施の形態では、第1の錆除去用治具83を用いて分岐管8内の錆82を除去した後、第2の錆除去用治具84を用いて水道管1と分岐管8との連通部分81の錆82を除去しているが、先ず、第2の錆除去用治具84を用いて錆82を除去した後、第1の錆除去用治具83を用いて錆82を除去してもよい。また、第1および第2の錆除去用治具83,84のいずれか片方のみを用いて錆82を除去してもよい。
【0064】
上記第1および第2の実施の形態では、本管の一例として水道管1を挙げたが、水道管1に限定されるものではなく、例えば下水道管等であってもよい。また、流体の一例として水Wを挙げたが、水Wに限定されるものではない。
【0065】
上記第1および第2の実施の形態では、消火栓用の分岐管7,8を利用して水道管1を洗浄しているが、消火栓用に限定されるものではなく、例えば、空気管用の分岐管や各種補修用の分岐管等を利用して洗浄してもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 水道管(本管)
7 発進側の分岐管
8 到達側の分岐管
22 洗浄用ボール(洗浄用部材)
28 銛(回収用治具)
48 棒状部
49 突刺し部
49a 掛止爪(掛止部)
P 水圧(流体圧)
W 水(流体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡縮自在な洗浄用部材を縮小した状態で上流の発進側分岐管から本管内へ挿入し、
本管内で洗浄用部材を拡張し、
本管内に流体を流して洗浄用部材を移送することにより本管内面を洗浄用部材で洗浄し、
洗浄用部材が下流の到達側分岐管に到達すると、本管内を断水状態にして、到達側分岐管に回収用治具を挿入し、
回収用治具で洗浄用部材を破裂させ、
回収用治具を到達側分岐管から脱抜することにより、回収用治具を用いて、洗浄用部材を、本管内から到達側分岐管内を通して引き出すことを特徴とする管内面の洗浄方法。
【請求項2】
回収用治具で洗浄用部材を破裂させた後、本管内を通水状態にし、
本管内から到達側分岐管内に引き出された洗浄用部材を流体圧によって押し出すことを特徴とする請求項1記載の管内面の洗浄方法。
【請求項3】
到達側分岐管に到達した洗浄用部材を本管内で捕捉した後、本管内を断水状態にして、到達側分岐管に回収用治具を挿入することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の管内面の洗浄方法。
【請求項4】
回収用治具として銛を使用することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の管内面の洗浄方法。
【請求項5】
上記請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の管内面の洗浄方法に用いられる回収用治具であって、
到達側分岐管に挿脱自在な棒状部と、棒状部の先端に設けられ且つ洗浄用部材を突き刺す突刺し部とを有し、
突刺し部に、破裂した洗浄用部材を引っ掛ける掛止部が形成されていることを特徴とする回収用治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−96196(P2012−96196A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−247976(P2010−247976)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】