説明

管型フロー反応装置、該管型フロー反応装置を用いた樹脂微粒子の製造方法

【課題】撹拌翼を用いても、プラグフロー性を維持することができ、均一な反応を促進し、粗大粒子が混入することがなく、粒径分布や分子量分布が狭い均一な樹脂微粒子を得ることができる優れた管型フロー反応装置、及び管型フロー反応装置を用いた樹脂微粒子の製造方法の提供。
【解決手段】撹拌翼を有する管型フロー反応装置において、該管型フロー反応装置の流路は円筒状であり、前記撹拌翼の撹拌軸の半径をC、撹拌翼の厚さをt、撹拌翼の回転方向に向いた撹拌翼面Bと撹拌翼面Bに平行で撹拌軸との中心を通る面Sとの距離をAとしたとき、t<2C、t/2C<A/C≦1、であり、撹拌翼面Bは撹拌軸の中心を通る面Sよりも撹拌翼の回転方向にあることを特徴とする管型フロー反応装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管型フロー反応装置、該管型フロー反応装置を用いた樹脂微粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
乳化重合や懸濁重合により工業的に樹脂微粒子を作製する方法として、バッチ式反応装置や連続式反応装置を用いて作製する方法が知られている。
【0003】
バッチ式反応装置は、重合反応に関与していない非生産時間が多いことや、反応装置の大型化により初期設備投資が増大したり伝熱能力が不足したりするといった問題があった。
【0004】
そこで、非生産時間を大幅に削減でき、装置の小型化も可能な連続式反応装置が採用されるようになってきた。
【0005】
連続式の反応装置としては、管型フロー反応装置が開示されている(例えば、特許文献1、2参照。)。
【0006】
管型フロー反応装置で反応の促進を行おうとすると、撹拌翼などの動的撹拌機構を設置することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−140386号公報
【特許文献2】特開2003−316075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、撹拌翼などの動的撹拌機構を用いると、プラグフロー性が維持できず、得られた樹脂微粒子の均一性が失われてしまうという問題があった。
【0009】
本発明の目的は、撹拌翼を用いても、重合性反応液のプラグフロー性を維持することにより、粗大粒子が混入することがなく、粒径分布や分子量分布が狭い均一な樹脂微粒子を得ることができる優れた管型フロー反応装置、及び管型フロー反応装置を用いた樹脂微粒子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、下記構成を採ることにより達成できる。
1.撹拌翼を有する管型フロー反応装置において、
該管型フロー反応装置の流路は円筒状であり、
前記撹拌翼の撹拌軸の半径をC、撹拌翼の厚さをt、撹拌翼の回転方向に向いた撹拌翼面Bと撹拌翼面Bに平行で撹拌軸との中心を通る面Sとの距離をAとしたとき、
t<2C
t/2C<A/C≦1
であり、
撹拌翼面Bは撹拌軸の中心を通る面Sよりも撹拌翼の回転方向にあることを特徴とする管型フロー反応装置。
2.円筒状流路管の長さをLa、撹拌翼の長さをLbとしたとき、
Lb/Laが0.80〜0.99であることを特徴とする前記1に記載の管型フロー反応装置。
3.前記円筒状流路管の長さをLa、円筒状流路管の内径をDとしたとき、
La/Dが、1〜100であることを特徴とする前記1または2に記載の管型フロー反応装置。
4.前記1〜3の何れかに記載の管型フロー反応装置を用い、
重合性単量体を重合して高分子樹脂微粒子を作製することを特徴とする樹脂微粒子の製造方法。
5.前記1〜3の何れかに記載の管型フロー反応装置を用い、
重合性単量体を乳化重合して高分子樹脂微粒子を作製することを特徴とする樹脂微粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の管型フロー反応装置、及び管型フロー反応装置を用いた樹脂粒子の製造方法は、撹拌翼を用いても、重合性反応液のプラグフロー性を維持することにより、粗大粒子が混入することがなく、粒径分布や分子量分布が狭い均一な樹脂微粒子を得ることができる優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の管型フロー反応装置の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の管型フロー反応装置の一例を示す流れ方向断面模式図である。
【図3】本発明の管型フロー反応装置の一例を示す流れ方向垂直断面模式図である。
【図4】本発明の比較例となる管型フロー反応装置の一例を示す流れ方向垂直断面模式図である。
【図5】油滴分散液作製装置と管型フロー反応装置からなる樹脂微粒子の連続製造装置の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
重合性単量体を重合して樹脂微粒子を作製する管型フロー反応装置において、反応を促進するため撹拌翼により撹拌を行うと、重合性反応液のプラグフロー性が維持できず、得られた樹脂微粒子中に粗大粒子が混入したり、粒径分布や分子量分布が不均一になったりするという問題があった。
【0014】
本発明者らは、撹拌翼を用い撹拌しても、重合性反応液のプラグフロー性を維持することにより、粗大粒子が混入することがなく、粒径分布や分子量分布が狭い均一な樹脂微粒子が得られる管型フロー反応装置について検討を行った。
【0015】
管型フロー反応装置において、撹拌翼を用いて重合性単量体を含む重合性反応液を撹拌した際にプラグフロー性が維持できなくなる(失われる)のは、重合性反応液が撹拌翼に衝突する際に撹拌軸方向の流れが生じることによると推察した。
【0016】
この撹拌軸方向の流れは、撹拌翼と撹拌軸の接続部などに液溜まりが生じやすい構造になっていたり、液の流れの方向と撹拌軸とが衝突する角度が大きくなっていたりする場合に生じやすい。
【0017】
そこで、液溜まり部の削減や液の流れの方向と撹拌軸面とが衝突する角度を小さくすることにより、撹拌軸方向の流れを削減することによりプラグフロー性が維持できるのではと考え、その形状について検討を行った。
【0018】
種々検討の結果、以下のような管型フロー反応装置を用いると、粗大粒子が形成されず、粒径分布や分子量分布が狭い均一な樹脂微粒子を得ることができ、その樹脂微粒子を用いてトナーを作製するとカブリの発生とトナー飛散を解消できることを見出した。
【0019】
本発明の管型フロー反応装置は撹拌翼を有し、管型フロー反応装置の流路は円筒状の管であり、撹拌翼の撹拌軸の半径をC、撹拌翼の厚さをt、撹拌翼の回転方向に向いた撹拌翼面Bと撹拌翼面Bに平行で撹拌軸との中心を通る面Sとの距離をAとしたとき、
t<2C、
t/2C<A/C≦1
であり、
撹拌翼面Bは撹拌軸との中心を通る面Sよりも撹拌翼の回転方向にあることを特徴としている。
【0020】
又、円筒状流路管の長さをLa、撹拌翼の長さをLbとしたとき、Lb/Laが0.80〜0.99であることが好ましい。
【0021】
又、円筒状流路管の長さをLa、円筒状流路管の内径をDとしたとき、La/Dが、1〜100であることが好ましい。
【0022】
又、円筒状流路管の内径をD、撹拌翼の径をdとしたとき、d/Dが、0.3〜0.9であることが好ましい。
【0023】
又、撹拌軸の半径をC、撹拌翼の径をdとしたとき、C/dが、0.1〜0.4であることが好ましい。
【0024】
管型フロー反応装置を上記構成とすることにより、液溜まり部の削減や液の流れの方向と羽根とが衝突する角度を小さくすることになり、半径方向の流れを増し、軸方向の流れを削減し、プラグフロー性を維持することができる。
【0025】
以下、本発明の管型フロー反応装置について説明する。
【0026】
本発明の管型フロー反応装置とは、円筒状流路管の中に撹拌翼を設けたプラグフロー性(押し出し流れ性)のある反応装置である。本発明の管型フロー反応装置は、時間に対して依存性のある反応に適した反応装置であり、例えば、懸濁重合、乳化重合に代表される樹脂微粒子を得る重合反応に用いることが好ましい。
【0027】
図1は、本発明の管型フロー反応装置の一例を示す概略図である。
【0028】
図1において、1は重合性反応液の注入口、2は樹脂微粒子の取出口、3はジャケット、Dは円筒状流路管の内径、Laは円筒状流路管の長さ、dは撹拌翼の径、Lbは撹拌翼の長さを示す。
【0029】
管型フロー反応装置は、重合性反応液を加熱もしくは冷却できるジャケットを有するものが好ましい。
【0030】
また、管型フロー反応装置の円筒状流路管及び撹拌翼の材質は、耐食性に優れ汚れが付着しにくい表面加工されているものが好ましい。具体的にはグラスライニングやフッ素樹脂加工されているものが好ましい。
【0031】
図2は、本発明の管型フロー反応装置の一例を示す流れ方向の断面模式図である。
【0032】
図2において、1は重合性反応液の注入口、2は樹脂微粒子の取出口、3はジャケット、4は撹拌翼、5は撹拌軸、6は円筒状流路管、7はプラグフロー部、8は管型フロー反応装置、Dは円筒状流路管の内径、dは撹拌翼の径、Laは円筒状流路管の長さ、Lbは撹拌翼の長さを示す。
【0033】
図3は、本発明の管型フロー反応装置の一例を示す流れに対し垂直方向の断面模式図である。
【0034】
図3において、4は撹拌翼、5は撹拌軸、6は円筒状流路管、8は管型フロー反応装置、Dは円筒状流路管の内径、dは撹拌翼の径、tは撹拌翼の厚さ、Cは撹拌軸の半径、Bは撹拌翼の回転方向に向いた撹拌翼面、Sは撹拌翼面に平行で撹拌軸の中心を通る面、Aは撹拌翼の回転方向に向いた撹拌翼面Bと撹拌軸の中心を通る面Sとの距離、Eは液溜まり部、矢印は回転方向を示す。
【0035】
尚、撹拌翼面Bは撹拌軸との中心を通る面Sよりも撹拌翼の回転方向にある。
【0036】
図3に示す管型フロー反応装置を用いることで、プラグフロー性が維持でき、更に、撹拌軸に撹拌翼を接合する部分で発生する液だまり量も少なくでき、装置内に滞留する時間を同じにすることができる。
【0037】
図4は、本発明の比較例となる管型フロー反応装置の一例を示す流れ方向垂直断面模式図である。
【0038】
図4において、4は撹拌翼、5は撹拌軸、6は円筒状流路管、20は管型フロー反応装置、Dは円筒状流路管の内径、dは撹拌翼の径、tは撹拌翼の厚さ、Cは撹拌軸の半径、Bは撹拌翼の回転方向に向いた撹拌翼面、Sは撹拌翼面に平行で撹拌軸の中心を通る面、Fは撹拌翼の回転方向に向いた撹拌翼面Bと撹拌軸の中心を通る面Sとの距離、Eは液溜まり部を示す。
【0039】
撹拌軸との中心を通る面Sは、撹拌翼面Bはよりも撹拌翼の回転方向にある。
【0040】
図4に示す管型フロー反応装置を用いると、撹拌軸に撹拌翼を接合する部分で発生する液だまり量が多くなり、重合性反応液の滞留時間を同じにすることが難しい。
【0041】
以下、管型フロー反応装置の構成について詳細に説明する。
1.撹拌翼の厚さ(t)と撹拌軸の直径(2C)の関係
撹拌翼の厚さ(t)は撹拌軸の直径(2C)より小さいこと(t<2C)を特徴とする。
2.撹拌翼の厚さ(t)、撹拌軸の直径(2C)、距離(A)、撹拌軸の半径(C)の関係
撹拌翼の厚さ(t)/撹拌軸の直径(2C)は距離(A)/撹拌軸の半径(C)より小さく、距離(A)/撹拌軸の半径(C)は1.00以下であることを特徴とする。
【0042】
t/2Cは0.04〜0.60が好ましく、0.05〜0.30がより好ましい。
【0043】
A/Cは0.06〜1.00が好ましく、0.50〜1.00がより好ましい。
【0044】
t/2C<A/C≦1を満足することにより、撹拌翼面Bを撹拌翼面に平行で撹拌軸の中心を通る面Sより回転方向にずらすことができ、撹拌翼面Bと流れとの衝突角度を小さくでき、上下方向への流れの抑制することができる。
3.撹拌翼の面Bは撹拌軸の中心を通る面Sよりも撹拌翼の回転方向にある
撹拌翼の面Bは撹拌軸の中心を通る面Sよりも撹拌翼の回転方向にあることにより、撹拌翼面と流れとの衝突角度を小さくでき、上下方向への流れの抑制することができる。
【0045】
尚、撹拌翼の枚数は特に限定されず、1枚以上であれば良く、好ましくは2枚から4枚である。
4.円筒状流路管の長(La)と撹拌翼の長さ(Lb)の関係
円筒状流路管の長さ(La)と撹拌翼の長さ(Lb)の関係(Lb/La)を0.80〜0.99とすることにより、上下方向への流れを作り出すことを抑制し、プラグフロー性を維持しつつ、伝熱と反応の促進を両立させることができる。上下方向への流れの抑制効果のために、(Lb/La)が0.90〜0.99であるとさらに好ましい。
【0046】
Lb/Laが0.80より小さいと撹拌翼のない部分の撹拌の効果を得にくい。
5.円筒状流路管の長さ(La)と円筒状流路管の内径(D)の関係
円筒状流路管の長さ(La)と円筒状流路管の内径(D)との比(La/D)は、1〜100が好ましく、5〜20がより好ましい。
【0047】
La/Dを小さくすることによりプラグフロー性には不利となるが装置全体を小型化することができ好ましい。La/Dを大きくすることによりプラグフロー性には有利であるが経済性(装置コスト)の観点から好ましくなくなる。
6.管型フロー反応装置の内径(D)と撹拌翼の径(d)の関係(d/D)
管型フロー反応装置の内径と撹拌翼の径の関係(d/D)は0.3〜0.9が好ましく、0.5〜0.7がより好ましい。
【0048】
d/Dを上記範囲とすることにより、円筒状流路管内の重合性反応液の撹拌を促進し、熱対流を抑制でき、撹拌翼の軸方向の流れに対して半径方向の流れを強くすることにより、重合性反応液中の原料の比重差によるプラグフロー性のくずれや滞留時間に差がでるのを抑制することができ好ましい。
【0049】
d/Dが0.3より小さいと撹拌の効果が得られず、0.9より大きいと円筒状流路管の管壁と撹拌翼との隙間が小さくなりすぎて流れに乱れが生じ好ましくない。
7.撹拌軸の半径(C)と撹拌翼の径(d)の関係
撹拌軸の半径(C)/撹拌翼の径(d)は0.1〜0.4が好ましく、0.2〜0.3がより好ましい。
【0050】
C/dを上記範囲にすることにより、撹拌翼の長さを長くとれ、距離Aを大きくでき、軸方向の流れを抑制することができる。
【0051】
撹拌軸が撹拌翼に対して大きいと、撹拌翼の長さが短くなり撹拌効果が減少する。
【0052】
尚、液だまりをより少なくするため撹拌軸に撹拌翼を接合する部分(付け根)に補強を兼ねた補強部を設けてもよく、円筒状流路管面と撹拌翼の間で液の乱れを少なくするため撹拌翼の先端に丸みを付けても良い。
【0053】
又、撹拌翼の長さが長く、撹拌翼の径が大きい場合は、スリットを有する撹拌翼を用いることが好ましい。
【0054】
本発明の管型フロー反応装置を用いて樹脂微粒子を作製すると、装置を小型化してもプラグフロー性を保持でき、重合性反応液が装置内に滞留する時間を均一に、且つ一定にすることができる。その結果、粗大粒子の形成が少なく、粒径分布が狭い(例えば、樹脂微粒子の体積基準の粒度分布における変動係数(CV値)が20%以下)、分子量分布が狭い(例えば、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が2.5以下)の樹脂微粒子を得ることができる。
【0055】
次に、本発明の管型フロー反応装置を用いて、樹脂微粒子を連続して作製する連続製造装置について説明する。
【0056】
(樹脂微粒子の連続製造装置)
樹脂微粒子の連続製造装置は、大きく分けて油滴分散液作製装置と管型フロー反応装置からなる。
【0057】
管型フロー反応装置には、重合性単量体を含む反応液を供給する装置、撹拌翼を回転させる装置、反応終了後の樹脂微粒子を含有する溶液を取り出す装置、反応を制御する制御装置等の付帯設備を設ける。
【0058】
図5は、油滴分散液作製装置と管型フロー反応装置からなる樹脂微粒子の連続製造装置の一例を示す模式図である。
【0059】
図5において、8は管型フロー反応装置、9は重合性単量体と必要に応じて連鎖移動剤を溶解する溶液タンク、10は界面活性剤溶液タンク、11は油滴分散液作製装置、12は油滴分散液ストックタンク、13は重合開始剤溶液タンク、14は油滴作製装置、15−1と15−2と15−3と15−4は定量ポンプ、16−1と16−2はバルブを示す。
【0060】
本発明の管型フロー反応装置を用いて、樹脂微粒子を連続して作製する方法について説明する。
【0061】
1.重合性単量体と連鎖移動剤を混合溶解して溶液タンクに保管する工程
2.界面活性剤を水に溶解して溶液タンクに保管する工程
3.重合性単量体と連鎖移動剤を混合溶解した溶液と界面活性剤水溶液を、バルブを介して油滴分散液作製装置に投入し、分散装置により油滴径が50〜500μmの油滴分散液を作製する工程
4.油滴分散液を油滴分散液ストックタンクに一次保管する工程
5.油滴分散液ストックタンクの油滴分散液と重合開始剤を溶解した重合開始剤溶液を、バルブを介して管型フロー反応装置に連続的に注入し、注入後、管型フロー反応装置内の撹拌翼の回転数、滞留時間、反応温度等を制御して連続重合を行い、樹脂微粒子を作製する工程
6.樹脂微粒子を含有する溶液を、取出口から取り出す工程
を経て作製される。
【0062】
尚、本発明において、重合性反応液とは、油滴分散液と重合開始剤溶液を混合した液を云う。
【0063】
〈油滴分散液作製装置〉
図5における油滴分散液作製装置11は、重合性単量体と必要に応じて連鎖移動剤もしくは連鎖移動剤を溶解した溶液を、界面活性剤水溶液中に分散し、特定油滴径を有する油滴分散液を作製するのに用いられる。
【0064】
油滴作製装置14としては、例えば高速回転するローターを備えた撹拌装置「クレアミックス」(エム・テクニック社製)、超音波分散機、機械式ホモジナイザー、マントンゴーリン及び圧力式ホモジナイザーなど機械式分散機を挙げることができる。これらの中では、超音波分散機が目的の油滴径を得られやすく好ましい。
【0065】
油滴の粒径は、超音波分散機の素子形状、出力、油滴を作製するのに用いる溶液処方、界面活性剤水溶液処方により異なるので、油滴分散液作製装置の加工条件は適宜目的の油滴粒径が得られる様調整する。
【0066】
油滴は、その径が50〜500μmのものが好ましく用いられる。上記範囲に油滴径を調製することにより分散液中で油滴を安定に維持することができる。
【0067】
油滴径の測定は、光散乱法、レーザー回折散乱法、レーザードップラー法等を用いた市販の粒径測定機器により行うことができる。好ましい粒径測定装置としては、「マイクロトラックMT3300(日機装社製)」、「LA−750(HORIBA製)」などを用いることができる。
【0068】
〈管型フロー反応装置〉
図5に示す管型フロー反応装置8について説明する。
【0069】
管型フロー反応装置8は、作製した油滴分散液と重合開始剤溶液を注入口1より管型フロー反応装置に送り込む手段、送り込まれた液をジャケット3で加熱しながらプラグフロー部7をプラグフローさせ、重合反応を行って樹脂微粒子を作製する手段と、樹脂微粒子を含む溶液を取出口2より取り出す手段を有する装置である。
【0070】
管型フロー反応装置の各寸法、形状の一例を下記に示す。
【0071】
円筒状流路管の内径(D) :110mm
撹拌翼の径(長さ)(d) :80mm
撹拌翼の厚さ(t) :4mm
撹拌軸の半径(C) :24mm
撹拌翼面(B)と撹拌軸の中心を通る面(S)との距離(A):12mm
円筒状流路管の長さ(La) :400mm
撹拌翼の長さ(Lb) :380mm
尚、撹拌翼の面(B)は撹拌軸の中心を通る面(S)よりも撹拌翼の回転方向にある。
【0072】
この管型フロー反応装置では、
1.t<2C=4<2×24
2.t/2C<A/C≦1==4/2×24<12/24≦1
3.撹拌翼の面Bは撹拌軸の中心を通る面Sよりも撹拌翼の回転方向にある
4.Lb/La=380/400=0.95
5.La/D=400/110=3.63
6.d/D=80/110=0.73
7.C/d=24/80=0.3
となる。
【0073】
連続製造装置を用いて樹脂微粒子を作製する条件としては、撹拌翼の回転数、滞留時間、反応温度及び重合性反応液供給速度を目的の樹脂微粒子が得られるよう設定して行う。好ましくは、下記の様な条件で設定することが好ましい。
【0074】
管型フロー反応装置内の滞留時間は、5〜200minが好ましく、10〜120minがより好ましい。
【0075】
反応温度は、60〜98℃が好ましい。
【0076】
重合性反応液の注入量は10〜10000cm/minが好ましい。
【0077】
撹拌翼の回転数は、5〜400rpmが好ましい。
【0078】
尚、回転数は重合性反応液の種類、反応温度、注入量、管型フロー反応装の寸法等により決められる。
【0079】
尚、上記条件は、重合性単量体、連鎖移動剤、界面活性剤、重合開始剤の種類や用いられる量等により適宜設定される。
【0080】
以下、樹脂微粒子の作製に用いる重合性単量体、連鎖移動剤、界面活性剤、重合開始剤について説明する。
【0081】
(重合性単量体)
本発明に係る樹脂微粒子は、少なくとも1種の重合性単量体を重合して得られた重合体を構成成分として含むものである。前記重合性単量体としては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−クロロスチレン、3,4−ジクロロスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレンの様なスチレン或いはスチレン誘導体、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル等のメタクリル酸エステル誘導体、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸フェニル等のアクリル酸エステル誘導体、エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン類、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等のビニルエステル類、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトン等のビニルケトン類、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物、ビニルナフタレン、ビニルピリジン等のビニル化合物類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等のアクリル酸或いはメタクリル酸誘導体がある。これらビニル系単量体は単独或いは組み合わせて使用することができる。
【0082】
また、樹脂を構成する重合性単量体としてイオン性解離基を有するものを組み合わせて用いることがさらに好ましい。例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等の置換基を単量体の構成基として有するもので、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマール酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル、スチレンスルホン酸、アリルスルフォコハク酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アシッドホスホオキシエチルメタクリレート、3−クロロ−2−アシッドホスホオキシプロピルメタクリレート等が挙げられる。
【0083】
さらに、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート等の多官係数性ビニル類を使用して架橋構造の樹脂とすることもできる。
【0084】
(重合開始剤)
上記重合性単量体はラジカル重合開始剤を用いて重合することができる。
【0085】
樹脂微粒子の作製方法が懸濁重合法の場合は、油溶性重合開始剤を用いることができる。この油溶性重合開始剤としては、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系又はジアゾ系重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンペルオキサイド、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、クメンヒドロペルオキサイド、t−ブチルヒドロペルオキサイド、ジ−t−ブチルペルオキサイド、ジクミルペルオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキサイド、ラウロイルペルオキサイド、2,2−ビス−(4,4−t−ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、トリス−(t−ブチルペルオキシ)トリアジンなどの過酸化物系重合開始剤や過酸化物を側鎖に有する高分子開始剤などを挙げることができる。
【0086】
又、乳化重合法の場合には、水溶性ラジカル重合開始剤を使用することができる。水溶性重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、アゾビスアミノジプロパン酢酸塩、アゾビスシアノ吉草酸及びその塩、過酸化水素等を挙げることができる。
【0087】
重合開始剤の量は、重合性単量体に対し、0.1〜10.0質量%が好ましい。
【0088】
(連鎖移動剤)
連鎖移動剤としては、1−オクタンチオール、エタンチオール、t−オクチルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、ベンツチアゾール等を挙げることができる。
【0089】
連鎖移動剤の使用量は、重合性単量体に対し、0.5〜5.0質量%が好ましい。
【0090】
(界面活性剤)
また、重合性単量体と連鎖移動剤を含有する溶液を水溶液中に油滴として分散する際に使用される界面活性剤は特に限定されるものでは無いが、下記のイオン性界面活性剤を好適なものの例として挙げることができる。
【0091】
イオン性界面活性剤としては、スルホン酸塩(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アリールアルキルポリエーテルスルホン酸ナトリウム、3,3−ジスルホンジフェニル尿素−4,4−ジアゾ−ビス−アミノ−8−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム、オルト−カルボキシベンゼン−アゾ−ジメチルアニリン、2,2,5,5−テトラメチル−トリフェニルメタン−4,4−ジアゾ−ビス−β−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム等)、硫酸エステル塩(ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム等)、脂肪酸塩(オレイン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、カプロン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウム等)が挙げられる。
【0092】
また、ノニオン性界面活性剤も使用することができる。具体的には、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドとポリエチレンオキサイドの組み合わせ、ポリエチレングリコールと高級脂肪酸とのエステル、アルキルフェノールポリエチレンオキサイド、高級脂肪酸とポリエチレングリコールのエステル、高級脂肪酸とポリプロピレンオキサイドのエステル、ソルビタンエステル等を挙げることができる。
【0093】
次に、樹脂微粒子の特性について説明する。
【0094】
(分子量分布(Mw/Mn))
本発明の管型フロー反応装置を用いて重合性単量体を重合すると、重量平均分子量Mwが10,000〜15,000程度の樹脂微粒子を好適に得ることができる。重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比(分子量分布)(Mw/Mn)は2.5以下のものを好適に得ることができる。
【0095】
樹脂微粒子の分子量は、テトラヒドロフラン(THF)をカラム溶媒として用いたゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法により測定することができる。
【0096】
GPC(ゲルパーミエイションクロマトグラフ)による樹脂の分子量の測定方法としては、濃度1mg/mlになるように測定試料をテトラヒドロフランに溶解させる。溶解条件としては、室温にて超音波分散機を用いて5分間行う。次いで、ポアサイズ0.2μmのメンブランフィルターで処理した後、GPCへ10μL試料溶解液を注入する。GPCの測定条件の具体例を下記に示す。
【0097】
装置:HLC−8220(東ソー製)
カラム:TSKguardcolumn+TSKgelSuperHZM−M3連(東ソー製)
カラム温度:40℃
溶媒:テトラヒドロフラン
流速:0.2ml/min
検出器:屈折率検出器(RI検出器)
試料の分子量測定では、試料の有する分子量分布を単分散のポリスチレン標準粒子を用いて測定した検量線を用いて算出する。検量線測定用のポリスチレンとしては10点用いた。
【0098】
(粒径分布)
得られる樹脂微粒子の粒径としては、体積基準におけるメディアン径(D50)で50nm〜500μmのものを好適に得ることができる。ここで、体積基準におけるメディアン径(D50)とは、一定体積の樹脂微粒子を粒径の大きい順または小さい順にカウントしたとき、カウント数(累積値)が全粒子数の50%に相当する樹脂微粒子の粒径のことをいうものである。
【0099】
得られた樹脂微粒子は、これを構成する樹脂微粒子の体積基準の粒度分布における変動係数(CV値)が20%以下であることが好ましい。変動係数が上記範囲であると、シャープな粒度分布の樹脂微粒子となる。
【0100】
尚、樹脂微粒子の体積基準の粒度分布における変動係数(CV値)は、以下の式より算出される。
【0101】
変動係数(CV値)(%)=(体積基準の粒度分布における標準偏差)/(体積基準におけるメディアン径(D50))×100
本発明に係る樹脂微粒子の体積基準におけるメディアン径(D50)や変動係数(CV値)は、「マルチサイザー3(ベックマン・コールター社製)」に、データ処理用のコンピューターシステム(ベックマン・コールター社製)を接続した装置や、「マイクロトラックUPA−150(日機装社製)」により測定することができる。
【0102】
測定器、測定条件は、得られる樹脂微粒子に適した測定レンジとなるように選択して行うものとする。
【0103】
(樹脂微粒子中の粗大粒子の量)
本発明で云う樹脂微粒子中の粗大粒子の量とは、得られた樹脂微粒子中に含まれる粗大粒子の質量を云う。
【0104】
樹脂微粒子中の粗大粒子の量は、樹脂微粒子の分散液を目開き50μmの篩を通過させ、篩上に残った質量と篩を通過した樹脂微粒子の質量を測定し、下記式から求めた値である。
【0105】

樹脂微粒子中の粗大粒子の質量%=篩上に残った質量/(篩を通過した樹脂微粒子の質量+篩上に残った質量)×100
本発明の管型フロー反応装置で作製した樹脂微粒子は、粗大粒子の形成を少なくでき、上記のような粒径分布や分子量分布を有しているので、例えば、トナーの原料、液晶のスペーサー等に用いることができる。
【実施例】
【0106】
以下に、実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれらに限定されるものではない。
【0107】
《樹脂微粒子の作製》
以下のようにして樹脂微粒子を作製した。
【0108】
〈樹脂微粒子1の作製〉
前記図5に示す連続樹脂微粒子製造装置(「管型フロー反応装置8」は図3に示す装置)を用い、下記手順で樹脂微粒子を作製した。
【0109】
(1)界面活性剤溶液の調製
下記材料を混合溶解して界面活性剤溶液を調製した。
【0110】
ドデシル硫酸ナトリウム 0.8質量部
イオン交換水 539.2質量部
(2)重合性単量体溶液の調製
下記材料を混合溶解して重合性単量体溶液を調製した。
【0111】
スチレン 67.7質量部
n−ブチルアクリレート 19.9質量部
メタクリル酸 10.9質量部
t−オクチルメルカプタン 2.2質量部
(3)油滴分散液の調製
上記で調製した重合性単量体溶液を界面活性剤溶液中に、機械式分散機「USホモジナイザー300T型(日本精機製作所製)」を用いて油滴径が100nmとなるように分散し、油滴分散液を調製した。
【0112】
(4)重合開始剤溶液の調製
下記材料を混合溶解して重合開始剤溶液を調製した。
【0113】
重合開始剤(過硫酸カリウム) 9.2質量部
イオン交換水 200.0質量部
(5)重合工程
前記図5に示す連続樹脂微粒子製造装置の管型フロー反応装置として、
円筒状流路管の内径(D)、円筒状流路管の長さ(La)、撹拌翼の径(d)、撹拌翼の長さ(Lb)、撹拌軸の半径(d)、羽根の厚さ(t)、撹拌翼面(B)と面(S)との距離(A)が下記寸法の「反応装置1」を用いた。
【0114】
円筒状流路管の長さ(La) :400mm
撹拌翼の長さ(Lb) :380mm
円筒状流路管の内径(D) :110mm
撹拌翼の径(d) :80mm
撹拌軸の半径(C) :24mm
撹拌翼の厚さ(t) :4mm
撹拌翼面(B)と面(S)との距離(A):12mm
撹拌翼の枚数 :2枚
上記で調製した油滴分散液を、管型フロー反応装置8の油滴分散液投入部1から、80cm/minの速度で連続投入すると同時に、重合開始剤溶液を15cm/minの速度で連続投入し、撹拌軸の回転数が10rpm、プラグフロー部7の内部温度が90℃、滞留時間が40minになるよう設定し、連続して重合を行い、樹脂微粒子を作製した。これを「樹脂微粒子1」とする。
【0115】
〈樹脂微粒子2〜19の作製〉
樹脂微粒子1の作製で用いた「管型フロー反応装置8」の各寸法を表1のように変更した「反応装置2〜19」を用いた以外は、樹脂微粒子1の作製と同様にして樹脂微粒子を作製した。これを「樹脂微粒子2〜19」とする。
【0116】
〈樹脂微粒子20の作製〉
樹脂微粒子1の作製で用いた管型フロー反応装置の「撹拌翼面Bは撹拌軸の中心を通る面Sよりも撹拌翼の回転方向にある」を、図4(比較用)のように「撹拌軸の中心を通る面Sは撹拌翼面Bはよりも撹拌翼の回転方向にある」に変更した「反応装置20」を用いた以外は同様にして樹脂微粒子を作製した。これを「樹脂微粒子20」とする。
【0117】
〈樹脂微粒子21の作製〉
樹脂微粒子7の作製で用いた管型フロー反応装置の撹拌翼を取り除いた「反応装置21」を用いた以外は同様にして樹脂微粒子を作製した。これを「樹脂微粒子21」とする。
【0118】
〈樹脂微粒子22の作製〉
樹脂微粒子1の作製で用いた管型フロー反応装置の円筒状の管を断面が四角形の角状の管に変更し、管型フロー反応装置の各寸法を表1のように変更した「反応装置22」を用いた以外は同様にして樹脂微粒子を作製した。これを「樹脂微粒子22」とする。
【0119】
表1に、樹脂微粒子1〜22の作製に用いた管型フロー反応装置の各寸法等を示す。
【0120】
【表1】

【0121】
表2に、t<2C、t/2C<A/C≦1、BがS面より回転方向にあるかの有無、Lb/La、La/D、d/D、C/dの値を示す。
【0122】
【表2】

【0123】
〈樹脂微粒子の評価〉
表3に、樹脂微粒子の作製に用いた反応装置No.粗大粒子の量、粒径、CV値、Mw、Mw/Mnを示す。
【0124】
【表3】

【0125】
得られた樹脂微粒子の特性評価としては、粗大粒子の量が1質量%以下、CV値が20%以下、Mw/Mnが2.5以下であれば合格レベルであると判断した。
【0126】
実施例1〜13で得られた「樹脂微粒子」は、粗大粒子の量が1質量%以下、重量平均分子量(Mw)が10,000〜15000、体積基準の粒度分布における変動係数(CV値)が20%以下、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が2.5以下、体積基準におけるメディアン径(D50)が80〜140nmと合格レベルであった。
【0127】
一方、比較例1〜9の「樹脂微粒子」は粗大粒子の量、CV値、Mw/Mnの何れかが上記範囲から外れていることがわかる。
【0128】
尚、粗大粒子の量、CV値、Mw、Mw/Mn、粒径は前記の方法で測定して得られた値である。
【0129】
《トナーの作製》
トナーは、上記で作製した樹脂微粒子を用い、以下のようにして作製した。
【0130】
先ず、着色剤粒子の分散液を調製した。
【0131】
〈着色剤粒子の分散液の調製〉
ドデシル硫酸ナトリウム90質量部をイオン交換水1600質量部に撹拌溶解した。この溶液を撹拌しながら、pH2.5のカーボンブラック「カーボンブラック#1000(三菱化成社製)」420質量部を徐々に添加し、次いで、撹拌装置「クレアミックス(エム・テクニック(株)製)」を用いて分散処理することにより、「着色剤粒子の分散液」を調製した。この分散液中の着色剤粒子の粒子径を、電気泳動光散乱光度計「ELS−800(大塚電子社製)」を用いて測定したところ、110nmであった。
【0132】
次に、シェル用樹脂粒子の分散液を作製した。
【0133】
(シェル用樹脂粒子の分散液の作製)
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、ドデシル硫酸ナトリウム2.3質量部をイオン交換水3000質量部に添加し、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を80℃に昇温させた。昇温後、過硫酸カリウム10質量部をイオン交換水200質量部に溶解させたものを添加し、下記単量体を含む混合液を1時間かけて滴下後、80℃にて2時間加熱、撹拌することにより重合を行い、樹脂粒子を作製した。これを「シェル用樹脂粒子の分散液」とする。
【0134】
単量体を含む混合液
スチレン 520質量部
n−ブチルアクリレート 210質量部
メタクリル酸 68質量部
n−オクチルメルカプタン 16質量部
〈トナー1の作製〉
(凝集・融着)
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、上記で作製した「樹脂微粒子1」の分散液を固形分換算で340質量部と、イオン交換水1000質量部と、「着色剤粒子の分散液」を固形分換算で42質量部を仕込み、液温を30℃に調整した後、5Nの水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを10に調整した。
【0135】
次いで、塩化マグネシウム60質量部をイオン交換水60質量部に溶解した水溶液を、230rpmの撹拌速度で撹拌下、30℃にて10分間かけて添加した。3分間保持した後に本溶液を60分間かけて90℃まで昇温した。昇温完了後、撹拌速度を170rpmに下げて90℃を保持して、コア粒子の成長反応を行った。
【0136】
体積基準におけるメディアン径(D50)が4.5μmになった時点で、撹拌速度を280rpmに上げ、「シェル用樹脂粒子の分散液」を固形分換算で40質量部、10分間かけて添加し、コア粒子の周りにシェル用樹脂粒子を付着させてシェル化反応を行った。シェル用樹脂粒子の分散液を添加後、120分後に、塩化ナトリウム80質量部をイオン交換水400質量部に溶解した水溶液を添加してシェル化反応を停止させ、更に、融着工程として液温度92℃にて加熱撹拌することにより、「FPIA−2100」による測定で円形度が0.945になるまで、粒子間の融着を進行させる。その後、液温30℃まで冷却し、塩酸を添加してpHを4.0に調整し、撹拌を停止してコア・シェル構造の粒子の分散液を得た。得られた分散液を「トナー母体粒子1の分散液」とする。
【0137】
(洗浄・乾燥)
凝集・融着工程にて生成した「トナー母体粒子1の分散液」をバスケット型遠心分離機「MARKIII型式番号60×40(松本機械(株)製)」で固液分離し、トナー母体粒子のウェットケーキを形成した。該ウェットケーキを、前記バスケット型遠心分離機で濾液の電気伝導度が5μS/cmになるまで40℃のイオン交換水で洗浄し、その後「フラッシュジェットドライヤー(セイシン企業社製)」に移し、水分量が1.0質量以下%となるまで乾燥して「トナー母体粒子1」を作製した。
【0138】
(外添処理)
上記で得られた「トナー母体粒子1」に、疎水性シリカ(数平均一次粒子径=12nm)を1質量%及び疎水性チタニア(数平均一次粒子径=20nm)を0.3質量%添加し、ヘンシェルミキサーにより混合して、「トナー1」を作製した。
【0139】
得られたトナーのガラス転移点は40℃、軟化点は101℃であった。尚、ガラス転移点及び軟化点は、前記の方法で測定した値である。
【0140】
〈現像剤の調製〉
上記で作製した「トナー1」に、シリコーン樹脂を被覆した体積平均粒60μmのフェライト粒子を混合し、トナー濃度が6%の「現像剤1」を調製した。
【0141】
〈トナー2(比較例用)の作製)〉
上記トナー1の作製に用いた実施例1の「樹脂微粒子1」の分散液を、比較例3の「樹脂微粒子6」の分散液に変更した以外は同様にして「トナー2」(比較例用)を作製した。
【0142】
〈トナー3(比較例用)の作製〉
上記トナー1の作製に用いた実施例1の「樹脂微粒子1」の分散液を、比較例7の「樹脂微粒子20」の分散液に変更した以外は同様にして「トナー3」(比較例用)を作製した。
【0143】
《現像剤の調製》
上記で作製したトナーの各々に対し、アクリル樹脂を被覆した体積平均粒径35μmのフェライトキャリアを混合し、トナー濃度が7質量%となる様にして「現像剤1〜3」を調製した。
【0144】
〈トナーの評価〉
評価用画像形成装置として、市販のデジタルプリンタ「bizhub Pro1050」(コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製)を準備した。
【0145】
上記画像形成装置に、上記で作製したトナーと現像剤を順次装填し、常温常湿(20℃、50%RH)のプリント環境で、印字率が10%の文字画像をA4判の上質紙(画像支持体)に40万枚プリントした。
【0146】
(画像かぶり)
画像かぶりは、印字されていないプリント用紙(白紙)の濃度を20カ所、画像濃度を測定し、その平均値を白紙濃度とし、次に、無地画像のプリントがなされたプリント用紙の白地部分を同様に20カ所、画像濃度を測定し平均濃度を算出し、その平均濃度から前記白紙濃度を引いた値をかぶり濃度として評価した。測定は反射濃度計「RD−918(マクベス社製)」を用いて行った。尚、画像かぶりは、画像かぶり濃度0.003以下を合格とする。
【0147】
(トナー飛散)
トナー飛散の評価は、40万枚プリント終了後に現像器周辺のトナーこぼれとトナー飛散による機内汚れ状態を目視で観察した結果と、トナー飛散によるプリント画像の汚れ欠陥を目視で行った。トナー飛散は、◎、○及び△を合格とする。
【0148】
評価基準
◎:トナーこぼれ、トナー飛散による機内汚れ全くなく、トナー飛散によるプリント画像の汚れ欠陥もなし
○:軽微なトナーこぼれ、トナー飛散による機内汚れはあるが、トナー飛散によるプリント画像の汚れ欠陥が無く、実用上問題無いレベル
△:トナーこぼれ、トナー飛散による機内汚れがあり、トナー飛散によるプリント画像の汚れ欠陥が一部に認められるが、実用上問題とならないレベル
×:トナーこぼれ、トナー飛散による機内汚れがひどく、トナー飛散によるプリント画像の汚れ欠陥が認められ、実用上問題となるレベル。
【0149】
表4に、評価結果を示す。
【0150】
【表4】

【0151】
表4の評価結果から、本発明の実施例1の樹脂微粒子1を用いて作製した「トナー1」は画像かぶり及びトナー飛散ともに合格であった。一方比較例の「樹脂微粒子6,20」を用いて作製した「トナー2、3」は評価項目の何れかに問題があることが判る。
【符号の説明】
【0152】
1 重合性反応液の注入口
2 樹脂微粒子の取出口
3 ジャケット
4 撹拌翼
5 撹拌軸
6 円筒状流路管
7 プラグフロー部
8 管型フロー反応装置
D 円筒状流路管の内径
d 撹拌翼の径
La 円筒状流路管の長さ
Lb 撹拌翼の長さ
B 撹拌翼の回転方向に向いた撹拌翼面
S 撹拌翼面に平行で撹拌軸の中心を通る面
t 羽根の厚さ
A 撹拌翼の回転方向に向いた撹拌翼面Bと撹拌軸の中心を通る面Sとの距離
C 撹拌軸の半径
E 液溜まり部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撹拌翼を有する管型フロー反応装置において、
該管型フロー反応装置の流路は円筒状であり、
前記撹拌翼の撹拌軸の半径をC、撹拌翼の厚さをt、撹拌翼の回転方向に向いた撹拌翼面Bと撹拌翼面Bに平行で撹拌軸との中心を通る面Sとの距離をAとしたとき、
t<2C
t/2C<A/C≦1
であり、
撹拌翼面Bは撹拌軸の中心を通る面Sよりも撹拌翼の回転方向にあることを特徴とする管型フロー反応装置。
【請求項2】
円筒状流路管の長さをLa、撹拌翼の長さをLbとしたとき、
Lb/Laが0.80〜0.99であることを特徴とする請求項1に記載の管型フロー反応装置。
【請求項3】
前記円筒状流路管の長さをLa、円筒状流路管の内径をDとしたとき、
La/Dが、1〜100であることを特徴とする請求項1または2に記載の管型フロー反応装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の管型フロー反応装置を用い、
重合性単量体を重合して高分子樹脂微粒子を作製することを特徴とする樹脂微粒子の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜3の何れかに記載の管型フロー反応装置を用い、
重合性単量体を乳化重合して高分子樹脂微粒子を作製することを特徴とする樹脂微粒子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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