説明

管材の成形装置

【課題】 1つの駆動源で複数の分割型を均等に型締めできる成形装置を提供する。
【解決手段】 管材に絞り加工とかしめ加工を行うには、先ず芯金30に管材を外挿する。このとき外金型1を構成する上下の分割型11,12は型開き状態にある。この状態から外金型1を構成する上方の分割型11を下動させる。すると、内金型2を構成する4つの分割型21,22,23,24は中心に向かって均等に移動し、4つの分割型の内側面に形成した成形面26,27にてエキゾーストパイプに絞り加工とかしめ加工を同時に施す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管材特にエキゾーストパイプなどの二重管に対して絞り加工及び/またはかしめの加工を同時に行うことが可能な成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金型間で管材を成形する装置として特許文献1及び特許文献2に開示されるものがある。特許文献1には、管状の部材としてアース端子をかしめる成形装置として、型締めした際に六角形の成形部が形成される6個の分割金型に、エンボス加工用のパンチを取り付けた構造が開示されている。
【0003】
また特許文献2には、バルジ成形装置として、外側の金型内に内側の金型を配置し、この内側の金型内に成形部を設けた構造が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−233918号公報
【特許文献2】特開2003−251418号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示される成形装置にあっては、個々の分割金型を夫々油圧シリンダで進退させるようにしている。このため油圧シリンダの数が増加し装置が大掛かりになり、また個々の分割金型に作用する力も必ずしも均等にはならない。更に、絞り加工とかしめ加工を同時に行うこともできない。
【0006】
一方、特許文献2に開示される成形装置はバルジ加工用であるので、管材の内側に圧力流体を供給し、管材を外側に広げつつ成形するものであり、管材には均等に成形圧が左右するが、絞り加工やかしめ加工には適さない。また管材が二重管の場合には、制約が多く成形できる形状が限られてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため本発明に係る成形装置は、外金型と、この外金型内に配置される内金型とを備え、前記外金型は上下の分割型からなり、これら上下の分割型のうちの一方は他方に対して相対的に進退動可能とされ、上下の分割型には前記内金型の配置空間を画成するスライド面が形成され、また前記内金型は4つの分割型に分割され、これら4つの分割型の外側面は前記上下の分割型のスライド面に摺接するスライド面とされ、また4つの分割型の内側面は成形面とされ、更に4つの分割型の側面間には開方向に付勢する弾発部材が設けられた構成とした。
【0008】
上記において、上下の分割型を90°倒して左右に配置しても、成形装置としての機能は変わらないので、本願で規定する上下の分割型には左右に分割したものも含まれる。
【0009】
また、前記スライド面は上下の分割型の進退動方向に対して45°傾斜しているのが、最も効果的である。更に、前記成形面には絞り加工用成形面とかしめ加工用成形面が形成され、かしめ加工用成形面は隣接する分割型に跨って形成されていると、各分割型に均等な負荷が作用する。
【0010】
更に、上記の成形装置を用いた管材の成形方法の一例は、前記内金型を構成する4つの分割型の中心に配置される芯金に二重管を挿入し、次いで前記外金型を構成する上下の分割型の一方を閉じ方向に移動させ、この移動によって前記内金型を構成する4つの分割型を中心に向かって均等に移動させ、4つの分割型の内側面に形成した成形面にて前記二重管に絞り加工とかしめ加工を同時に施す。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る成形装置によれば、管材に作用する成形圧が内金型の分割型ごとに均等になるので、精密な絞り加工およびかしめ加工が可能になる。
また、本発明によれば絞り加工とかしめ加工を同時に行うことができ、従来の工程数を削減することができる。
更に、かしめ加工する成形面を隣接する分割型に跨って設けることで、成形時の加圧力が均等に行われる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明の好適な実施例について、図面を参照して説明する。ここで、図1は本発明に係る成形装置の型開き状態の正面図、図2は同成形装置の内金型を構成する4つの分割金型のうちの1つの分割金型の斜視図、図3は同成形装置の成形装置の型開き状態の正面図、図4は成形後のエキゾーストパイプの端部を示した図である。
【0013】
成形装置は外金型1と内金型2を備える。外金型1は上下の分割型11,12からなり、上方の分割型11はスライド部材13に係合し、図示しない油圧シリンダやモータの駆動によって下方の分割型12に対して進退動を行う。
【0014】
前記外金型1の上方の分割型11の下面には逆V字型をなす平滑なスライド面11a,11bが形成され、下方の分割型12の下面には逆V字型をなす平滑なスライド面12a,12bが形成され、これらスライド面11a,11b,12a,12bにて囲まれる空間に前記内金型2を配置している。
【0015】
また、スライド面11a,11bとの間およびスライド面12a,12bとの間には、型閉じの際に後述する内金型2の分割型の角部が入り込む逃げ凹部11c,12cを形成している。
【0016】
前記内金型2は4つの分割型21,22,23,24に分割され、これら4つの分割型の外側面は前記上下の分割型11,12のスライド面11a,11b,12a,12bに摺接するスライド面21a,22a,23a,24aとされ、また4つの分割型の内側面21b,22b,23b,24bは成形面とされ、更に4つの分割型の側面間21c,22c,23c,24cには4つの分割型を開方向に付勢する弾発部材としてのスプリング25…が設けられている。
【0017】
前記4つの分割型の内側面21b,22b,23b,24bには、図2に示すように絞り加工用の成形面26とかしめ加工用の成形面27が形成されている。特に、かしめ加工用の成形面27については型締めした際に、隣接する分割型のかしめ加工用の成形面27が連続して1つのかしめ加工用の成形面を形成するように2つの分割型に跨って形成されている。
【0018】
更に、前記4つの分割型21,22,23,24の中心には成形する管材を外挿する芯金30を配置している。
【0019】
以上において、例えば二重管構造のエキゾーストパイプの一端に絞り加工とかしめ加工を行うには、先ず芯金30にエキゾーストパイプを外挿する。このとき外金型1を構成する上下の分割型11,12は型開き状態にあり、内金型2を構成する4つの分割型21,22,23,24はスプリング25…の弾発力で開方向に押され、4つの分割型の各スライド面21a,22a,23a,24aは上下の分割型11,12のスライド面11a,11b,12a,12bに隙間なく摺接している。
【0020】
この状態から外金型1を構成する上方の分割型11を下動させる。すると、内金型2の分割型21,22は外金型1の分割型11のスライド面11a,11bによって下方に押され、その結果、分割型21,22は相対的にスライド面11a,11bに沿って斜め上方に移動し、この移動が下方への移動と合成されて、図の矢印で示すように芯金30の中心に向かって移動する。
【0021】
また内金型2を構成する分割型22,23も同様の原理によって芯金30の中心に向かって移動する。上記の移動によって内金型2を構成する4つの分割型21,22,23,24は中心に向かって均等に移動し、4つの分割型の内側面に形成した成形面26,27にてエキゾーストパイプに絞り加工とかしめ加工を同時に施す。成形後のエキゾーストパイプの端部を図4に示している。
【0022】
実施例にあっては、内金型2を構成する4つの分割型の内側面に絞り加工用の成形面26とかしめ加工用の成形面27の両方を形成したが、いずれか一方のみを形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る成形装置の型開き状態の正面図
【図2】同成形装置の内金型を構成する4つの分割金型のうちの1つの分割金型の斜視図
【図3】同成形装置の成形装置の型開き状態の正面図
【図4】成形後のエキゾーストパイプの端部を示した図
【符号の説明】
【0024】
1…外金型、
11,12…上下の分割型
11a,11b,12a,12b…スライド面
11c,12c…逃げ凹部
13…スライド部材
2…内金型
21,22,23,24…内金型の分割型
21a,22a,23a,24a…スライド面
21b,22b,23b,24b…内金型の内側面
21c,22c,23c,24c…内金型の側面
25…スプリング
26…絞り加工用の成形面
27…かしめ加工用の成形面
30…芯金

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管材に対して絞り加工またはかしめ加工を行う成形装置において、この成形装置は外金型と、この外金型内に配置される内金型とを備え、前記外金型は上下の分割型からなり、これら上下の分割型のうちの一方は他方に対して相対的に進退動可能とされ、上下の分割型には前記内金型の配置空間を画成するスライド面が形成され、また前記内金型は4つの分割型に分割され、これら4つの分割型の外側面は前記上下の分割型のスライド面に摺接するスライド面とされ、また4つの分割型の内側面は成形面とされ、更に4つの分割型の側面間には4つの分割型を開方向に付勢する弾発部材が設けられていることを特徴とする管材の成形装置。
【請求項2】
請求項1に記載の管材の成形装置において、前記スライド面は上下の分割型の進退動方向に対して45°傾斜していることを特徴とする管材の成形装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の管材の成形装置において、前記成形面には絞り加工用成形面とかしめ加工用成形面が形成され、かしめ加工用成形面は隣接する分割型に跨って形成されていることを特徴とする管材の成形装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項4に記載の成形装置を用いた管材の成形方法であって、前記内金型を構成する4つの分割型の中心に配置される芯金に二重管を挿入し、次いで前記外金型を構成する上下の分割型の一方を閉じ方向に移動させ、この移動によって前記内金型を構成する4つの分割型を中心に向かって均等に移動させ、4つの分割型の内側面に形成した成形面にて前記二重管に絞り加工とかしめ加工を同時に施すことを特徴とする管材の成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−44704(P2007−44704A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−229154(P2005−229154)
【出願日】平成17年8月8日(2005.8.8)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】