説明

管材開削用治具

【課題】主に、開削工具がケーブル類を傷付けるのを防止し得るようにする。
【解決手段】ケーブル保護管22などの管材に対し、開削工具24を取付けた電動工具25を用いて穴23を開削する際に用いられる管材開削用治具31である。電動工具25に対して装着可能な工具装着部32と、工具装着部32に取付けられて開削進行方向33へ延びる支持脚部34と、支持脚部34の先端部分に設けられた開削深度規制部35とを有するようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ケーブル保護管などの管材を開削加工する際に用いられる管材開削用治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電力ケーブルや通信ケーブルなどのケーブル類を地中に埋設するために、ケーブル類を収容可能なケーブル保護管などの管材が用いられている。このようなケーブル保護管は、本管と、この本管から分岐された支管などによって構成されている。そして、本管に支管を取付ける際には、本管に対して支管取付用の穴を開削する必要がある。
【0003】
図6、図7に示すように、ケーブル保護管1に対して支管取付用の穴2を開削する開削作業は、従来、ホールソーなどと称する一般的な回転刃物(開削工具3)を取付けた電動ドリルなどの電動工具4を用いて手作業で行うようにしていた。
【0004】
なお、上記開削作業を、専用工具を用いて行うことも知られてはいるが(例えば、特許文献1参照)、専用工具は高価であり、また、取り扱いも容易ではないため、余り一般的ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−036019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、一般的な開削工具3を取付けた電動工具4を用いて手作業で上記本管の開削作業を行った場合、開削工具3や電動工具4には、開削深さを規制する手段が何ら設けられていないため、図8に示すように、開削完了直後に、開削工具3が勢い余って穴2の奥まで落ち込み、ケーブル保護管1内のケーブル類5を傷付けてしまうおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載された発明は、管材に対し、開削工具を取付けた電動工具を用いて穴を開削する際に用いられる管材開削用治具であって、電動工具に対して装着可能な工具装着部と、該工具装着部に取付けられて開削進行方向へ延びる支持脚部と、該支持脚部の先端部分に設けられた開削深度規制部とを有することを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載された発明は、上記において、前記支持脚部が、開削する管材の径寸法に応じて長さを調節可能な長さ調節機構を有することを特徴としている。
【0009】
請求項3に記載された発明は、上記において、前記開削深度規制部が、開削屑の飛散を防止可能な飛散防止部を有することを特徴としている。
【0010】
請求項4に記載された発明は、上記において、前記開削深度規制部が、透明部材によって構成されたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、上記構成によって、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、開削工具を取付けた電動工具に対して工具装着部を装着することによって管材開削用治具がセットされる。これにより、工具装着部に取付られて開削進行方向へ延びる支持脚部を介して、支持脚部先端の開削深度規制部が、開削工具による開削深度を規制する。以て、開削工具が勢い余ってケーブル保護管などの管材の奥まで落ち込むことによりケーブル類を傷付けるのを防止することができる。
【0012】
請求項2の発明によれば、上記構成によって、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、支持脚部が、開削する管材の径寸法に応じて長さを調節可能な長さ調節機構を有することにより、径寸法の異なる管材に広く対応することが可能となる。
【0013】
請求項3の発明によれば、上記構成によって、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、開削深度規制部が、開削屑の飛散を防止可能な飛散防止部を有することにより、開削作業中に発生した開削屑が飛散して作業員の目に入ったり周辺にいる者にかかったりするのを防止することができる。
【0014】
請求項4の発明によれば、上記構成によって、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、開削深度規制部が透明部材によって構成されたことにより、透明部材を透して加工部分の様子を見ながら作業することができるので、安全かつ確実に開削作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例1にかかる管材開削作業の状態を示す側面図である。
【図2】本発明の実施例2にかかる管材開削作業の状態を示す側面図である。
【図3】図2の管材開削用治具の拡大側面図である。
【図4】図3の分解図である。
【図5】図2の平面図である。
【図6】従来例にかかる管材開削用治具の斜視図である。
【図7】図6の開削後の状況を示す斜視図である。
【図8】図6の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面を用いて詳細に説明する。
【0017】
図1〜図5は、この実施の形態の実施例およびその変形例を示すものである。
【実施例】
【0018】
<構成>以下、構成について説明する。
【0019】
電力ケーブルや通信ケーブルなどのケーブル類21を地中に埋設するために、ケーブル類21を収容可能なケーブル保護管22などの管材を用いる。このようなケーブル保護管22は、本管22aと、この本管22aから分岐された支管などによって構成される。そして、本管22aに対して支管を取付ける際には、本管22aの側面に対して支管取付用の穴23を開削する。
【0020】
そして、ケーブル保護管22に対して支管取付用の穴23を開削する開削作業は、ホールソーなどと称する一般的な回転刃物(開削工具24)を取付けた電動ドリルなどの電動工具25を用いて手作業で行われる。この場合、電動工具25の側面には、把持部25aが突設されているが、把持部25aはなくても良い。
【0021】
なお、管材は、上記したケーブル保護管22が最適であるが、例えば、下水道間などの管材であっても良い。
【0022】
そして、上記したような基本的な構成に対し、この実施例のものでは、以下のような構成を備えるようにしている。
【0023】
ケーブル類21が収容されたケーブル保護管22などの管材に対し、開削工具24を取付けた電動工具25を用いて支管取付用などの穴23を開削する際に、この実施例にかかる管材開削用治具31を用いるようにする。なお、例えば、地中に埋設されたケーブル保護管22は、横向きに置かれており、このようなケーブル保護管22に対して、上方や斜め上方などから電動工具25を用いて穴23が開削されることになる。
【0024】
(構成1)上記管材開削用治具31を、図1に実施例1として示すように、電動工具25に対して装着可能な工具装着部32と、この工具装着部32に取付けられて開削進行方向33へ延びる支持脚部34と、この支持脚部34の先端部分に設けられた開削深度規制部35とを有するものとする。
【0025】
ここで、工具装着部32には、バンドやクランプなどを用いることができる。バンドは、ゴムや布や樹脂や金属などを素材とする帯状体を使用することができる。この場合には、工具装着部32として、電動工具25に対する締付固定が容易なゴムバンドを用いるようにしている。バンドなどの工具装着部32の一端部には、必要に応じて、他端部に対する固定位置を調節可能なバックルなどの調節可能固定部を設けることができる。
【0026】
上記した開削進行方向33は、ケーブル保護管22のほぼ半径方向などとされる。
【0027】
支持脚部34は、開削作業の際に、ケーブル類21を傷付けない位置で開削工具24を停止可能な長さとなるようにする。また、支持脚部34は、開削工具24の側部と干渉しないようなものとされる。支持脚部34は、電動工具25の先端側へ向かって延びる直線状のものや、途中に開削工具24の側面形状に沿って側方へ迂回する側方迂回形状を有するものなどとすることができる。支持脚部34は、電動工具25の周方向に対して1本または数本設けることができる。
【0028】
上記した開削深度規制部35は、横向きに配置したケーブル保護管22の頂部に対して当接し得るものとするのが好ましい。この場合には、開削深度規制部35は、支持脚部34の先端部そのものとされている。よって、支持脚部34および開削深度規制部35は、ケーブル保護管22の頂部を通る軸線上に配置されている。より具体的には、支持脚部34および開削深度規制部35は、電動工具25の片側に1箇所または両側に2箇所設けられる。なお、支持脚部34の先端部には、開削深度規制部35として、ゴムや樹脂などによるキャップや石突部材を取り付けるようにしても良い。
【0029】
また、開削深度規制部35は、ケーブル保護管22の頂部以外の位置に対して当接し得るものとすることもできる。但し、このようにする場合には、ケーブル保護管22の頂部と、ケーブル保護管22に対する開削深度規制部35の当接位置との、開削進行方向33の位置ズレ量の分だけ、電動工具25に対する管材開削用治具31の取付位置や、支持脚部34の長さなどを補正する必要が生じることになる。
【0030】
(構成2)図2〜図5に実施例2として示すように、上記した支持脚部34が、開削するケーブル保護管22の径寸法に応じて長さを調節可能な長さ調節機構41を有するものとする。
【0031】
この場合、長さ調節機構41として、支持脚部34を、上部脚部34aと下部脚部34bとを別々に有するものとする。そして、上部脚部34aと下部脚部34bとの間に、互いに嵌合または重複可能な嵌合部42または重複部を有するものとする。
【0032】
上部脚部34aと下部脚部34bとには、円筒や角筒などの筒状部材を用いることができる。また、上部脚部34aと下部脚部34bとには、Cチャンネル状やL字断面状や平板状などの型材を用いることができる。
【0033】
嵌合部42は、例えば、口径の異なる筒状部材(42a、42b)によって構成することができる。この場合、上部脚部34aと下部脚部34bとの一方を大口径のものとし、他方を小口径のものとして、両者を直接嵌合し得るようにしても良い。また、上部脚部34aと下部脚部34bとを同一口径のものとして、嵌合部42のみに部分的な大口径部分または小口径部分などを設けるようにしても良い。
【0034】
重複部については、実質的に重複させることができれば、断面形状や断面の大きさは問わない。
【0035】
また、長さ調節機構41は、上部脚部34aと下部脚部34bとの嵌合部42または重複部の嵌合深さまたは重複長さを調節・変更して固定可能な可変固定部43を備えている。この場合、可変固定部43は、上部脚部34aと下部脚部34bとに対してそれぞれ設けられた位置固定孔43a,43bと、これらの位置固定孔43a,43bの間に挿通されて両者を連結固定可能な連結ピン43cや締結固定可能な締結ボルトなどの固定部材とを有するものとされる。そして、少なくとも一方の位置固定孔43a,43b(この場合には43aとしているが、43bであっても良い)が、支持脚部34の長手方向へケーブル保護管22の管径に対応可能な間隔を有して形成された複数孔や、支持脚部34の長手方向へ伸びる長孔(締結ボルトを用いる場合)などとされる。この場合には、位置固定孔43aが複数孔とされている。位置固定孔43aは、2個設定されているが、3個以上としても良い。なお、長さ調節機構41は、上記以外のものとしても良い。
【0036】
(構成3)図5に示すように、上記した開削深度規制部35が、開削屑の飛散を防止可能な飛散防止部を有するものとする。
【0037】
ここで、飛散防止部を有する開削深度規制部35は、開削工具24よりも径の大きいフランジ状部材45などとすることができる。この開削深度規制部35は、好ましくは、ケーブル保護管22の頂部に当接した状態で、ケーブル保護管22の接線方向へ延びる平板状のものなどとする。フランジ状部材45の外形は、円形や矩形状や多角形状などとすることができる。この場合には円形とされている。フランジ状部材45の中心には、開削工具24を通すことが可能な開口部が形成される。
【0038】
(構成4)上記した開削深度規制部35が、透明部材46によって構成されるようにする。
【0039】
この場合、フランジ状部材45が透明樹脂などによって形成されている。
【0040】
<作用効果>この実施例によれば、以下のような作用効果を得ることができる。
【0041】
(作用効果1)
開削工具24を取付けた電動工具25に対して工具装着部32を装着することによって管材開削用治具31がセットされる。これにより、工具装着部32に取付られて開削進行方向33へ延びる支持脚部34を介して、支持脚部34先端の開削深度規制部35が、開削工具24による開削深度を規制する。以て、開削工具24が勢い余ってケーブル保護管22(本管22a)などの管材の奥まで落ち込むことによりケーブル類21を傷付けるのを防止することができる。
【0042】
(作用効果2)
支持脚部34が、開削するケーブル保護管22などの管材の径寸法に応じて長さを調節可能な長さ調節機構41を有することにより、径寸法の異なるケーブル保護管22などの管材に広く対応することが可能となる。
【0043】
(作用効果3)
開削深度規制部35が、開削屑の飛散を防止可能な飛散防止部(飛散防止部)を有することにより、開削作業中に発生した開削屑が飛散して作業員の目に入ったり周辺にいる者にかかったりするのを防止することができる。これにより、作業の快適性を向上することができる。
【0044】
(作用効果4)
開削深度規制部35が透明部材46によって構成されたことにより、透明部材46を透して加工部分の様子を見ながら作業することができるので、安全かつ確実に開削作業を行うことができる。
【0045】
以上、この発明の実施例を図面により詳述してきたが、実施例はこの発明の例示にしか過ぎないものであるため、この発明は実施例の構成にのみ限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれることは勿論である。また、例えば、各実施例に複数の構成が含まれている場合には、特に記載がなくとも、これらの構成の可能な組合せが含まれることは勿論である。また、複数の実施例や変形例が示されている場合には、特に記載がなくとも、これらに跨がった構成の組合せのうちの可能なものが含まれることは勿論である。また、図面に描かれている構成については、特に記載がなくとも、含まれることは勿論である。更に、「等」の用語がある場合には、同等のものを含むという意味で用いられている。また、「ほぼ」「約」「程度」などの用語がある場合には、常識的に認められる範囲や精度のものを含むという意味で用いられている。
【符号の説明】
【0046】
21 ケーブル類
22 ケーブル保護管(管材)
23 穴
24 開削工具
25 電動工具
31 管材開削用治具
32 工具装着部
33 開削進行方向
34 支持脚部
35 開削深度規制部
41 長さ調節機構
46 透明部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管材に対し、開削工具を取付けた電動工具を用いて穴を開削する際に用いられる管材開削用治具であって、
電動工具に対して装着可能な工具装着部と、該工具装着部に取付けられて開削進行方向へ延びる支持脚部と、該支持脚部の先端部分に設けられた開削深度規制部とを有することを特徴とする管材開削用治具。
【請求項2】
前記支持脚部が、開削する管材の径寸法に応じて長さを調節可能な長さ調節機構を有することを特徴とする請求項1記載の管材開削用治具。
【請求項3】
前記開削深度規制部が、開削屑の飛散を防止可能な飛散防止部を有することを特徴とする請求項1または請求項2記載の管材開削用治具。
【請求項4】
前記開削深度規制部が、透明部材によって構成されたことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の管材開削用治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−66966(P2013−66966A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206692(P2011−206692)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】