説明

管状体、管状体ユニット、中間転写体、及び画像形成装置

【課題】高離型性が維持される管状体を提供すること。
【解決手段】ポリイミド樹脂とフッ素化ポリイミド樹脂とフッ素樹脂粒子とを含む層の単層体で構成、又は当該層を最外層121として有する2層以上の積層体で構成された管状体101である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管状体、管状体ユニット、中間転写体、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、「フッ素化ポリイミドを主成分とする材料が用いられた定着フィルム」について開示されている。
特許文献2には、「フッ素化ポリイミド樹脂からなる定着フィルム」について開示されている。
特許文献3には、「フッ素含有ポリイミドを含む表面層を有する中間転写体」について開示されている。
特許文献4には、「ラビングされた表面を有するポリイミド系樹脂で構成される基体層と、該基体層の表面にフッ素化ポリアミド酸から形成された配向された部分的フッ素化ポリイミド樹脂で構成される表面層と、を有する無端ベルト」について開示さている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09−274402号公報
【特許文献2】特開2000−137396号公報
【特許文献3】特開2004−191546号公報
【特許文献4】特開2004−251978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、ポリイミド樹脂とフッ素化ポリイミド樹脂とを併用しない場合に比べ、高離型性が維持される管状体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、
ポリイミド樹脂とフッ素化ポリイミド樹脂とフッ素樹脂粒子とを含む層の単層体で構成、又は当該層を最外層として有する2層以上の積層体で構成された管状体。
【0006】
請求項2に係る発明は、
前記フッ素樹脂粒子が、一次粒子、2μm以下の二次粒子径を持つ二次粒子、又はこれらの混合状態で含まれている請求項1に記載の管状体。
【0007】
請求項3に係る発明は、
前記管状体が2層以上の積層体で構成され、
前記最外層と接する下層が、ポリイミド樹脂を含んで構成された層である請求項1又は2に記載の管状体。
【0008】
請求項4に係る発明は、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の管状体と、該管状体を張力がかかった状態で掛け渡す複数のロールと、を備え、画像形成装置本体に対して脱着される管状体ユニット。
【0009】
請求項5に係る発明は、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の管状体からなる中間転写体。
【0010】
請求項6に係る発明は、
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電する帯電手段と、
前記像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成手段と、
前記像保持体の表面の潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記像保持体の表面に形成された前記トナー像が転写される中間転写体であって、請求項5に記載の中間転写体と、
前記像保持体の表面に形成された前記トナー像を前記中間転写体の表面に一次転写する一次転写手段と、
前記中間転写体の表面に転写された前記トナー像を記録媒体に二次転写する二次転写手段と、
前記記録媒体に転写された前記トナー像を定着する定着手段と、
を備えた画像形成装置。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、ポリイミド樹脂とフッ素化ポリイミド樹脂とを併用しない場合に比べ、高離型性が維持される管状体が提供できる。
請求項2に係る発明によれば、フッ素樹脂粒子が上記分散状態で含まれない場合に比べ、高離型性が維持される管状体が提供できる。
請求項3に係る発明によれば、最外層と接する下層がポリイミド樹脂を含んで構成されていない場合に比べ、最外層とその下層との剥離が抑制される管状体が提供できる。
請求項4に係る発明によれば、ポリイミド樹脂とフッ素化ポリイミド樹脂とを併用しない管状体を適用した場合に比べ、高離型性が維持される管状体を持つ管状体ユニットが提供できる。
請求項5、6に係る発明によれば、ポリイミド樹脂とフッ素化ポリイミド樹脂とを併用しない管状体を適用した場合に比べ、高離型性が維持される中間転写体、及びそれを備える画像形成装置が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態に係る管状体を示す概略斜視図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】円形電極の一例を示す概略平面図(A)及び概略断面図(B)である。
【図4】本実施形態に係る管状体ユニットを示す概略斜視図である。
【図5】本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
【図6】他の実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0014】
(管状体)
図1は、実施形態に係る管状体を示す概略斜視図である。図2は、図1のA−A断面図である。
【0015】
本実施形態に係る管状体101(以下、無端ベルトと称する)は、図1及び図2に示すように、例えば、無端状に形成され、例えば厚み30μm以上80μm以下の基材層122と、基材層122の外周面に設けられた例えば厚み5μm以上70μm以下の最外層121と、の積層体で構成されている。
そして、最外層121として、ポリイミド樹脂、フッ素化ポリイミド樹脂、及びフッ素樹脂粒子を含んで構成された層を適用している。
【0016】
本実施形態に係る無端ベルト101では、最外層121を上記構成とすることで、高離型性が維持される。
ここで、ポリイミド樹脂単独の樹脂に対して、フッ素樹脂粒子を含有させると、ポリイミド樹脂に対するフッ素樹脂粒子の濡れ性が小さいことから、成膜する際の乾燥時にフッ素樹脂粒子が離脱してしまったり、空隙が生じ易くなり、層中のフッ素樹脂粒子の保持力が低下することがある。これは、剛性(ヤング率)が高い傾向にあるポリイミド樹脂(例えば3500MPa以上のポリイミド樹脂)を用いた場合に顕著に生じ易い。
これに対して、ポリイミド樹脂と共にフッ素化ポリイミド樹脂を併用することで、ポリイミド樹脂に対するフッ素樹脂粒子の濡れ性が改善され、成膜する際の乾燥時におけるフッ素樹脂粒子の離脱や、空隙が生じ難くなると考えられる。
このため、本実施形態に係る無端ベルト101では、高離型性が維持されるものと考えられる。
なお、フッ素化ポリイミド樹脂単独の樹脂に対して、フッ素樹脂粒子を含有させることで、高離型性の維持が実現されると考えられるが、ポリイミド樹脂とフッ素化ポリイミド樹脂とを併用した場合に比べ、目的とする層自体の強度が得られ難くなる傾向となる。また、強度が求められる基材層には、ポリイミド樹脂で構成することが好適であるが、この場合、最外層121としてフッ素化ポリイミド樹脂とフッ素樹脂粒子とを含む層を適用すると、層間剥離が生じ易くなる傾向となる。
【0017】
以下、本実施形態に係る無端ベルト101の構成材料や特性について説明する。
【0018】
まず、最外層121について説明する。
最外層121は、ポリイミド樹脂、フッ素化ポリイミド樹脂、及びフッ素樹脂粒子を含んで構成される。最外層121は、無端ベルト101の用途に応じて(例えば中間転写体[中間転写ベルト]や、搬送転写体[搬送転写ベルト]等の転写ベルトに適用する場合)、導電剤を含んで構成される。
【0019】
ポリイミド樹脂について説明する。
ポリイミド樹脂としては、例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との重合体であるポリアミド酸のイミド化物が挙げられる。ポリイミド樹脂として具体的には、例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との等モル量を溶媒中で重合反応させてポリアミド酸の溶液として得て、そのポリアミド酸をイミド化して得られたものである。
【0020】
テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、下記の一般式(I)で示されるものが挙げられる。
【0021】
【化1】



【0022】
(一般式(I)中、Rは4価の有機基であり、芳香族、脂肪族、環状脂肪族、芳香族と脂肪族を組み合わせたもの、又はそれらの置換された基である。)
【0023】
テトラカルボン酸二無水物として具体的には、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン酸二無水物、ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0024】
一方、ジアミン化合物の具体例としては、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジクロロベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、1,5−ジアミノナフタレン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,3’−ジメチル4,4’−ビフェニルジアミン、ベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、2,4−ビス(β−アミノ第三ブチル)トルエン、ビス(p−β−アミノ−第三ブチルフェニル)エーテル、ビス(p−β−メチル−δ−アミノフェニル)ベンゼン、ビス−p−(1,1−ジメチル−5−アミノ−ベンチル)ベンゼン、1−イソプロピル−2,4−m−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、ジ(p−アミノシクロヘキシル)メタン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ジアミノプロピルテトラメチレン、3−メチルヘプタメチレンジアミン、4,4−ジメチルヘプタメチレンジアミン、2,11−ジアミノドデカン、1,2−ビス−3−アミノプロボキシエタン、2,2−ジメチルプロピレンジアミン、3−メトキシヘキサメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘプタメチレンジアミン、3−メチルヘプタメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、2,17−ジアミノエイコサデカン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,10−ジアミノ−1,10−ジメチルデカン、12−ジアミノオクタデカン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、ピペラジン、HN(CHO(CHO(CH)NH、HN(CHS(CHNH、HN(CHN(CH(CHNH等が挙げられる。
【0025】
テトラカルボン酸二無水物とジアミンを重合反応させる際の溶媒としては、溶解性等の点より極性溶媒(有機極性溶媒)が好適に挙げられる。極性溶媒としては、N,N−ジアルキルアミド類が望ましく、具体的には、例えば、これの低分子量のものであるN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルメトキシアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルトリアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ピリジン、テトラメチレンスルホン、ジメチルテトラメチレンスルホン等が挙げられる。これらは単数又は複数併用してもよい。
【0026】
ポリイミド樹脂の含有量は、例えば、層を構成する成分全体に対して10質量%以上80質量%以下であることがよく、望ましくは20質量%以上75質量%以下より望ましくは40質量%以上70質量%以下である。
ポリイミド樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0027】
フッ素化ポリイミド樹脂について説明する。
フッ素化ポリイミド樹脂は、例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との重合体であるフッ素化ポリアミド酸(分子中にフッ素原子を持つポリアミド酸)のイミド化物が挙げられる。フッ素化ポリイミド樹脂として具体的には、例えば、テトラカルボン酸二無水物及びジアミン化合物の少なくとも1方としてフッ素原子を分子中に持つもの用い、これらテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との等モル量を溶媒中で重合反応させてフッ素化ポリアミド酸の溶液として得て、そのフッ素化ポリアミド酸をイミド化して得られたものである。
【0028】
フッ素原子を分子中に持つテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)へキサフルオロプロパン二無水物、4,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)テトラフルオロベンゼン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)テトラフルオロベンゼン二無水物、(トリフルオロメチル)ビロメリット酸二無水物、ジ(トリフルオロメチル)ピロメリット酸二無水物、ジ(ヘプタフルオロプロピル)ピロメリット酸二無水物等が挙げられる。
【0029】
フッ素原子を分子中に持つジアミン化合物としては、例えば、2,2’−ビス(トリフルオロメトキシ)−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジアミノ−5,5’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,2−ビス(4−アミノフェニル)へキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕へキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)へキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−メチルフェニル)へキサフルオロプロパン、2,2’−ジフルオロベンジジン、4,4’−ビス(アミノオクタフルオロ)ビフェニル、3,5−ジアミノベンゾトリフルオライド、1,3−ジアミノ−2,4,5,6−テトラフルオロベンゼン等を挙げることができる。
【0030】
なお、フッ素原子を分子中に持たないテトラカルボン酸二無水物及びジアミン化合物は、ポリイミド樹脂で説明したテトラカルボン酸二無水物及びジアミン化合物と同様のものが挙げられる。
【0031】
フッ素化ポリイミド樹脂として特に好適には、主鎖にエーテル基を有するフッ素化ポリイミド樹脂が挙げられる。
主鎖にエーテル基を有するフッ素化ポリイミド樹脂は、例えば、テトラカルボン酸二無水物及びジアミン化合物の少なくとも一方にエーテル基を有するものの共重合体であるフッ素化ポリアミド酸のイミド化物が挙げられ、具体的には、例えば、エーテル基を有するテトラカルボン酸二無水物(テトラカルボン酸無水物として好適には1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)テトラフルオロベンゼン二無水物等)とジアミン化合物(ジアミン化合物として好適には1,3−ジアミノ−2,4,5,6−テトラフルオロベンゼン等)との重合体であるフッ素化ポリアミド酸のイミド化物が挙げられる。
主鎖にエーテル基を有するフッ素化ポリイミド樹脂を用いると、フッ素樹脂粒子の分散性が向上し、フッ素樹脂粒子の離脱、空隙の発生が抑制されると考えられ、高離型性が維持され易くなる。
【0032】
フッ素化ポリイミド樹脂の含有量は、例えば、層を構成する成分全体に対して0.1質量%以上50質量%以下であることがよく、望ましくは0.5質量%以上40質量%以下より望ましくは1質量%以上30質量%以下である。
フッ素化ポリイミド樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0033】
ここで、ポリイミド樹脂及びフッ素化ポリイミド樹脂以外にも、高離型性の維持が損なわれない範囲で、他の樹脂を併用してもよい。他の樹脂としては、例えば、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルエーテルエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、補強材を添加してなるポリエステル樹脂などが挙げられる。
【0034】
次に、フッ素樹脂粒子について説明する。
フッ素樹脂粒子としては、例えば、4フッ化エチレン樹脂、3フッ化塩化エチレン樹脂、6フッ化プロピレン樹脂、フッ化ビニル樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、2フッ化2塩化エチレン樹脂及びそれらの共重合体の粒子が挙げられる。
これらの中も、フッ素樹脂粒子としては、特に、ポリテトラフルオロエチレン(4フッ化エチレン樹脂「PTFE」)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(「FEP」)、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体(「PFA」)が望ましい。
【0035】
フッ素樹脂粒子は、一次粒子、2μm以下(望ましくは1μm以下、より望ましくは0.5μm以下)の二次粒子径を持つ二次粒子、又はこれの混合状態で含まれていることがよい。
これは、フッ素樹脂粒子が、一次粒子、二次粒子(一次粒子が2つ以上凝集した凝集状態)、又はこれらの混合状態で分散・含有されており、少なくとも凝集粒子の状態での二次粒子径が上記範囲となっていること、つまり、フッ素樹脂粒子が凝集が抑制された状態で分散されていることを意味する。
なお、フッ素樹脂粒子の一次粒子(凝集していない状態の粒子径:一次粒径)は、0.1μm以上0.3μm以下であることがよい。
【0036】
フッ素樹脂粒子の一次粒径及び二次粒径は、感光体の最表面層から試料片を得て、これをSEM(走査型電子顕微鏡)により例えば倍率5000倍以上で観察し、一次粒子、又は凝集粒子の状態のフッ素樹脂粒子のそれぞれの最大径を測定し、これを50個の粒子について行った平均値とする。なお、SEMとして日本電子製JSM-6700Fを使用し、加速電圧5kVの2次電子画像を観察する。
【0037】
フッ素樹脂粒子の含有量は、例えば、層を構成する成分全体に対して1質量%以上50質量%以下であることがよく、望ましくは2質量%以上45質量%以下より望ましくは3質量%以上 40 質量%以下である。
フッ素樹脂粒子は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0038】
ここで、フッ素樹脂粒子を上記分散状態(含有状態)とするには、例えば、分散剤としてフッ素系グラフトポリマーを併用することがよい。
フッ素系グラフトポリマーとしては、分子鎖の片方の末端に重合性の官能基を有するマクロモノマーと、フッ化アルキル基を有する重合性フッ素系モノマーと、の共重合体が挙げられる。
フッ素系グラフトポリマーとして具体的には、例えば、マクロマーとして、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン化合物等の重合体又はそれらの共重合体と、フッ素系モノマーとして、パーフルオロアルキルエチルメタクリレート、パーフルオロアルキルメタクリレート等との、グラフト共重合体が挙げられる。
【0039】
マクロモノマーと重合性フッ素系モノマーとの重合比は、例えば、フッ素系グラフトポリマー中のフッ素含有量として10質量%以上50質量%以下(望ましくは10質量%以上40質量%以下、より望ましくは10質量%以上30質量%以下)となる重合比であることがよい。
フッ素系グラフトポリマーの分子量は、例えば、数平均分子量で5000以上20000以下であることよく、望ましくは5000以上17500以下、より望ましくは5000以上12000以下である。
フッ素系グラフトポリマーの量は、例えば、フッ素樹脂粒子に対して0.1質量%以上10質量%以下であることがよい。
【0040】
次に、導電剤について説明する。
導電剤としては、導電性(例えば体積抵抗率10Ω・cm未満、以下同様である)もしくは半導電性(例えば体積抵抗率10Ω・cm以上1013Ω・cm以下、以下同様である)の粉末(1次粒径が10μm未満の粒子からなる粉末がよく、望ましくは1次粒径が1μm以下の粒子からなる粉末)が挙げられる。
導電剤としては、特に制限はないが、例えば、カーボンブラック(例えばケッチエンブラック、アセチレンブラック、表面が酸化処理されたカーボンブラック等)、金属(例えばアルミニウムやニッケル等)、酸化金属化合物(例えば酸化イットリウム、酸化錫等)、イオン導電性物質(例えばチタン酸カリウム、LiCl等)、導電性高分子(例えばポリアニリン、ポリピロール、ポリサルフォン、ポリアセチレンなど)等が挙げられる。
【0041】
導電剤は、その使用目的により選択されるが、電気抵抗の経時での安定性や、転写電圧による電界集中を抑制する電界依存性の観点から、pH5以下(望ましくはpH4.5以下であり、より望ましくはpH4.0以下)の酸化処理カーボンブラック(例えば表面にカルボキシル基、キノン基、ラクトン基、水酸基等を付与して得られたカーボンブラック)がよく、電気的耐久性付与の観点から、導電性高分子(例えばポリアニリン等)がよい。
【0042】
導電剤の含有量は、例えば、層を構成する成分全体に対して1質量%以上50質量%以下であることがよく、望ましくは2質量%以上40質量%以下より望ましくは4質量%以上30質量%以下である。
導電剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0043】
次に、基材層122について説明する。
基材層122は、樹脂材料を含んで構成される。基材層122も、無端ベルト101の用途に応じて(例えば中間転写体[中間転写ベルト]や、搬送転写体[搬送転写ベルト]等の転写ベルトに適用する場合)、導電剤を含んで構成される。
【0044】
樹脂材料について説明する。
樹脂材料としては、樹脂材料は、そのヤング率が、ベルト厚みによっても異なるが、望ましくは、3500MPa以上、より望ましくは4000MPa以上であればよく、ベルトとしての機械特性が満足される。樹脂としては、上記ヤング率を満たせば、制限はないが、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルエーテルエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、補強材を添加してなるポリエステル樹脂などが挙げられる。
【0045】
なお、ヤング率は、JIS K7127(1999)に準じて引張試験を行い、得られた応力・歪曲線の初期ひずみ領域の曲線に接線を引き、その傾きにより求める。測定条件としては、短冊状試験片(幅6mm、長さ130mm)、ダンベル1号、試験速度500mm/分、厚さはベルト本体の厚さの各設定で測定するものとする。
【0046】
上記樹脂材料の中でも、ポリイミド樹脂が好適である。ポリイミド樹脂は、高ヤング率材料であることから、ベルト回転駆動時の変形が他の樹脂に比べ少なくなる。そして、最外層121がポリイミド樹脂を含んで構成されることから、最外層121と接触する下層に相当する基材層122もポリイミド樹脂を含んで構成させることで、最外層121と下層となる基材層122との密着性が向上すると考えられ、当該層間の剥離が抑制される。
なお、ポリイミド樹脂としては、最外層121を構成するポリイミド樹脂と同様なものが挙げられる。
【0047】
導電剤について説明する。
導電剤についても、最外層121を構成する導電剤と同様なものが挙げられる。
【0048】
次に、本実施形態に係る無端ベルト101の特性について説明する。
本実施形態に係る無端ベルト101が中間転写体(中間転写ベルト)に適用される場合、その外周面の表面抵抗率は、常用対数値で9(LogΩ/□)以上13(LogΩ/□)以下であることが望ましく、10(LogΩ/□)以上12(LogΩ/□)以下であることがより望ましい。電圧印加の30msec後の表面抵抗率の常用対数値が13(LogΩ/□)を超えると、二次転写時に記録媒体と中間転写体とが静電吸着し、記録媒体の剥離ができなくなる場合がある。一方、電圧印加の30msec後の表面抵抗率の常用対数値が9(LogΩ/□)未満であると、中間転写体に一次転写されたトナー像の保持力が不足し画質の粒状性や像乱れが発生する場合がある。尚、前記体積抵抗率の常用対数値は、後述する導電剤の種類、及び導電剤の添加量により制御される。
【0049】
ここで、表面抵抗率の測定方法は、次の通り行う。円形電極(例えば、三菱油化(株)製ハイレスターIPの「URプローブ」)を用い、JIS K6911に従って測定する。表面抵抗率の測定方法を、図を用いて説明する。図3は、円形電極の一例を示す概略平面図(A)及び概略断面図(B)である。図3に示す円形電極は、第一電圧印加電極Aと板状絶縁体Bとを備える。第一電圧印加電極Aは、円柱状電極部Cと、該円柱状電極部Cの外径よりも大きい内径を有し、且つ円柱状電極部Cを一定の間隔で囲む円筒状のリング状電極部Dとを備える。第一電圧印加電極Aにおける円柱状電極部C及びリング状電極部Dと板状絶縁体Bとの間にベルトTを挟持し、第一電圧印加電極Aにおける円柱状電極部Cとリング状電極部Dとの間に電圧V(V)を印加したときに流れる電流I(A)を測定し、下記式により、ベルトTの転写面の表面抵抗率ρs(Ω/□)を算出する。ここで、下記式中、d(mm)は円柱状電極部Cの外径を示し、D(mm)はリング状電極部Dの内径を示す。
式:ρs=π×(D+d)/(D−d)×(V/I)
なお、表面抵抗率は、円形電極(三菱油化(株)製ハイレスターIPのURプローブ:円柱状電極部Cの外径Φ16mm、リング状電極部Dの内径Φ30mm、外径Φ40mm)を用い、22℃/55%RH環境下、電圧500V、10秒印加後の電流値を求め算出する。
【0050】
本実施形態に係る無端ベルト10が中間転写体(中間転写ベルト)に適用される場合、その全体の体積抵抗率は、常用対数値で8(LogΩcm)以上13(LogΩcm)以下であることが望ましい。前記体積抵抗率の常用対数値が8(LogΩcm)未満であると、像保持体から中間転写体に転写された未定着トナー像の電荷を保持する静電的な力が働きにくくなるため、トナー同士の静電的反発力や画像エッジのフリンジ電界の力によって、画像の周囲にトナーが飛散してしまい、ノイズの大きい画像が形成される場合がある。一方、前記体積抵抗率の常用対数値が13(LogΩcm)を超えると、電荷の保持力が大きいために、1次転写での転写電界で中間転写体表面が帯電するために除電機構が必要となる場合がある。尚、前記体積抵抗率の常用対数値は、後述する導電剤の種類、及び導電剤の添加量により制御される。
【0051】
ここで、体積抵抗率の測定は、円形電極(例えば、三菱油化(株)製ハイレスターIPのURプローブ)を用い、JIS K6911に従って測定する。前記体積抵抗率の測定方法を、図を用いて説明する。測定は表面抵抗率と同一の装置で測定する。但し、図3に示す円形電極において、表面抵抗率測定時の板状絶縁体Bに代えて第二電圧印加電極B’とを備える。そして、第一電圧印加電極Aにおける円柱状電極部C及びリング状電極部Dと第二電圧印加電極B’との間にベルトTを挟持し、第一電圧印加電極Aにおける円柱状電極部Cと第二電圧印加電極Bとの間に電圧V(V)を印加した時に流れる電流I(A)を測定し、下記式により、ベルトTの体積抵抗率ρv(Ωcm)を算出する。ここで、下記式中、tは、ベルトTの厚さを示す。
式ρv=19.6×(V/I)×t
なお、体積抵抗率は、円形電極(三菱油化(株)製ハイレスターIPのURプローブ:円柱状電極部Cの外径Φ16mm、リング状電極部Dの内径Φ30mm、外径Φ40mm)を用い、22℃/55%RH環境下、電圧500V、10秒印加後の電流値を求め算出する。
【0052】
また、上記式に示される19.6は、抵抗率に変換するための電極係数であり、円柱状電極部の外径d(mm)、試料の厚さt(cm)より、πd/4tとして算出される。また、ベルトTの厚さは、サンコー電子社製渦電流式膜厚計CTR−1500Eを使用し測定する。
【0053】
以下、本実施形態に係る無端ベルト101の製造方法について説明する。
なお、無端ベルト101として、基材層122の樹脂材料とポリイミド樹脂、基材層122及び最外層121に導電剤としてカーボンブラックを含ませた形態の製造方法について説明するが、これに限られるわけではない。
【0054】
まず、芯体を準備する。準備する芯体としては、円筒状金型等が挙げられる。芯体の素材としては、例えば、アルミニウム、ステンレス、ニッケル等の金属が挙げられる。芯体の長さは、目的とする無端ベルト以上の長さが必要であるが、目的とする無端ベルトの長さより、10%以上40%以下長いことが望ましい。
【0055】
次に、基材層形成用塗布液として、カーボンブラックを分散させたポリアミド酸溶液を準備する。
具体的には、例えば、有機極性溶媒中にテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物を溶解させ、これにカーボンブラックを分散させた後、重合してカーボンブラックを分散させたポリアミド酸溶液を準備する。
この際、ポリアミド酸溶液における、モノマー濃度(溶媒中におけるテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物の濃度)は種々の条件により設定されるが、5質量%以上30質量%以下が望ましい。また、重合反応温度は80℃以下に設定することが望ましく、特に望ましくは5℃以上50℃以下であり、重合反応時間は5時間以上10時間以下である。
【0056】
次に、基材層形成用塗布液を芯材としての円筒状金型に塗布し、基材層形成用塗布液の塗膜を形成する。
塗布液の円筒状金型への塗布方法は、特に制限はなく、例えば、円筒状金型の外周面に浸漬する方法や、円筒状金型の内周面に塗布する方法、軸を水平にして円筒状金型を回転させながら、その外周面又は内周面に「らせん塗布方法」や「ダイ方式塗布方法」により塗布する方法等が挙げられる。
【0057】
次に、基材層形成用塗布液の塗膜を乾燥させ、基材層となる皮膜(乾燥したイミド化前の塗膜)を形成する。乾燥条件は、例えば80℃以上200℃以下の温度で10分間以上60分間以下がよく、温度が高いほど加熱時間は短くてよい。加熱の際、熱風を当てることも有効である。加熱時は、温度を段階的に上昇させたり、速度を変化させずに上昇させてもよい。芯体の軸方向を水平にして、芯体を5rpm以上60rpm以下で回転させるのがよい。乾燥後は芯体を垂直にしてもよい。
【0058】
次に、最外層形成用塗布液として、ポリアミド酸、フッ素化ポリアミド酸、フッ素樹脂粒子、カーボンブラックを含む混合溶液を準備する。
具体的には、有機極性溶媒中にテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物を溶解させ、これにカーボンブラックを分散させた後、重合してカーボンブラックを分散させたポリアミド酸溶液を準備する。
一方で、有機極性溶媒中にテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物を溶解させ、これに必要に応じて分散剤(フッ素系グラフトポリマー)と共にフッ素樹脂粒子を分散させた後、重合してフッ素樹脂粒子を分散させたフッ素化ポリアミド酸溶液を準備する。
そして、カーボンブラックを分散させたポリアミド酸溶液とフッ素樹脂粒子を分散させたフッ素化ポリアミド酸溶液を混合することで、最外層形成用塗布液としての混合溶液を準備する。
なお、混合溶液におけるモノマー濃度、重合反応温度、重合反応時間は、基材層形成用塗布液としてのポリアミド酸溶液と同様である。
【0059】
ここで、予め、カーボンブラックをポリアミド酸溶液(非フッ素化のポリアミド酸溶液)に分散させる一方で、フッ素樹脂粒子をフッ素化ポリアミド酸溶液に分散させることで、カーボンブラックとフッ素樹脂粒子の双方の分散性が確保され易く、形成される最外層121の抵抗低下や、膜減りによる抵抗変動が抑制される。
これは、カーボンブラックは、ポリアミド酸溶液(非フッ素化のポリアミド酸溶液)に比べ、フッ素化ポリアミド酸溶液に分散させると凝集し易くなるためであると考えられる。
【0060】
次に、最外層形成用塗布液を形成した基材層となる皮膜上に塗布して、最外層形成用塗布液の塗膜を形成する。
塗布液の円筒状金型への塗布方法は、特に制限はなく、基材層形成用塗布液の塗布方法と同様である。
【0061】
次に、最外層形成用塗布液の塗膜を乾燥させ、最外層となる皮膜(乾燥したイミド化前の塗膜)を形成する。乾燥条件等は、基材層形成用塗布液の塗膜と同様である。
【0062】
次に、基材層及び最外層となる皮膜に対してイミド化処理(焼成)を行って、皮膜を芯体から抜き取る。これにより、基材層122及び最外層121の積層体である無端ベルト101が得られる。
ここで、イミド化の処理(焼成)条件としては、例えば250℃以上450℃以下(望ましくは300℃以上350℃以下)で、20分間以上60分間以下加熱することで、イミド化反応が起こり、ポリイミド樹脂の皮膜が形成される。加熱反応の際、加熱の最終温度に達する前に、温度を段階的、又は一定速度で徐々に上昇させて加熱することがよい。
なお、基材層122と最外層121との密着性の観点から、基材層及び最外層となる皮膜に対して同時にイミド化処理(焼成)を行うことからよいが、基材層となる皮膜に対してイミド化処理(焼成)を行って基材層を形成した後、最外層形成用塗布液を塗布し、基材層を形成してもよい。
【0063】
以上説明した本実施形態に係る無端ベルト101は、基材層122及び最外層121の2層の積層体で構成された形態を説明したが、これに限られず、ポリイミド樹脂とフッ素化ポリイミド樹脂とフッ素樹脂粒子とを含む層を最外層121をして有していれば、2層以上の積層体(例えば、最外層121と基材層122との間に中間層を設けた形態、基材層122自体が2層以上の積層体で構成された形態等)で構成されていてもよい。
また、本実施形態に係る無端ベルト101は、ポリイミド樹脂とフッ素化ポリイミド樹脂とフッ素樹脂粒子とを含む層の単層体で構成された形態であってもよい。
【0064】
(管状体ユニット)
図4は、本実施形態に係る管状体ユニットを示す概略斜視図である。
本実施形態に係る管状体ユニット130(以下、無端ベルトユニットと称する)は、図4に示すように、上記本実施形態に係る無端ベルト101を備えており、例えば、無端ベルト101は対向して配置された駆動ロール131及び従動ロール132により張力がかかった状態で掛け渡されている(以下、「張架」という場合がある。)。
ここで、本実施形態に係る無端ベルトユニット130は、無端ベルト101を中間転写体として適用させる場合、無端ベルト101を張架するロールとして、感光体(像保持体)表面のトナー像を無端ベルト101上に1次転写させるためのロールと、無端ベルト101上に転写されたトナー像をさらに記録媒体に2次転写させるためのロールが配置される。
なお、無端ベルト101を張架するロールの数は限定されず、使用態様に応じて配置すればよい。このような構成の無端ベルトユニット130は、装置に組み込まれて使用され、駆動ロール131,従動ロール132の回転に伴って無端ベルト101も張架した状態で回転する。
【0065】
(画像形成装置)
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体と、像保持体表面を帯電する帯電手段と、像保持体表面に潜像を形成する潜像形成手段と、潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、トナー像を前記記録媒体に定着する定着手段と、を有し、転写手段が、上記本実施形態に係る無端ベルトを備えるものである。
【0066】
具体的には、本実施形態に係る画像形成装置は、例えば、転写手段が中間転写体と像保持体に形成されたトナー像を中間転写体に一次転写する一次転写手段と中間転写体に転写されたトナー像を記録媒体に二次転写する二次転写手段とを備え、当該中間転写体として上記本実施形態に係る無端ベルトを備える構成が挙げられる。
【0067】
また、本実施形態に係る画像形成装置は、例えば、転写手段が記録媒体を搬送するための搬送転写体(搬送転写ベルト)と像保持体に形成されたトナー像を用紙転写体により搬送された記録媒体に転写するための転写手段とを備え、当該記録媒体転写体として上記本実施形態に係る無端ベルトを備える構成が挙げられる。
【0068】
本実施形態に係る画像形成装置は、例えば、現像装置内に単色のトナーのみを収容する通常のモノカラー画像形成装置、像保持体上に保持されたトナー像を中間転写体に順次一次転写を繰り返すカラー画像形成装置、各色毎の現像器を備えた複数の像保持体を中間転写体上に直列に配置したタンデム型カラー画像形成装置が挙げられる。
【0069】
以下、本実施形態に係る画像形成装置を、図面を参照しつつ説明する。図5は、実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。図6は、他の実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。図5は、中間転写体(中間転写ベルト)を備える画像形成装置であり、図6は、記録媒体搬送転写体(記録媒体搬送転写ベルト)を備える画像形成装置である。
【0070】
図5に示す画像形成装置は、色分解された画像データに基づくイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を出力する電子写真方式の第1乃至第4の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10K(画像形成手段)を備えている。これらの画像形成ユニット(以下、単に「ユニット」と称する)10Y、10M、10C、10Kは、水平方向に互いに特定距離離間して並設されている。なお、これらユニット10Y、10M、10C、10Kは、画像形成装置本体に対して脱着可能なプロセスカートリッジであってもよい。
【0071】
各ユニット10Y、10M、10C、10Kの図面における上方には、各ユニットを通して中間転写体としての中間転写ベルト20が延設されている。中間転写ベルト20は、図における左から右方向に互いに離間して配置された駆動ロール22及び中間転写ベルト20内面に接する支持ロール24に巻回されて張架して設けられ、第1ユニット10Yから第4ユニット10Kに向う方向に走行されるように、画像形成装置用の転写ユニットを構成している。
なお、支持ロール24は、図示しないバネ等により駆動ロール22から離れる方向に付勢されており、両者に巻回された中間転写ベルト20に特定の張力が与えられている。また、中間転写ベルト20の像保持体側面には、駆動ロール22と対向して中間転写体クリーニング装置30が備えられている。
また、各ユニット10Y、10M、10C、10Kの現像装置(現像手段)4Y、4M、4C、4Kのそれぞれには、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kに収容されたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナーが供給可能である。
【0072】
上述した第1乃至第4ユニット10Y、10M、10C、10Kは、同等の構成を有しているため、ここでは中間転写ベルト走行方向の上流側に配設されたイエロー画像を形成する第1ユニット10Yについて代表して説明する。尚、第1ユニット10Yと同等の部分に、イエロー(Y)の代わりに、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)を付した参照符号を付すことにより、第2乃至第4ユニット10M、10C、10Kの説明を省略する。
【0073】
第1ユニット10Yは、像保持体として作用する感光体1Yを有している。感光体1Yの周囲には、感光体1Yの表面を特定の電位に帯電させる帯電ロール2Y、帯電された表面を色分解された画像信号に基づくレーザ光線3Yよって露光して静電荷像を形成する露光装置3、静電荷像に帯電したトナーを供給して静電荷像を現像する現像装置(現像手段)4Y、現像したトナー像を中間転写ベルト20上に転写する1次転写ロール5Y(1次転写手段)、及び1次転写後に感光体1Yの表面に残存するトナーを、クリーニングブレードにて除去する感光体クリーニング装置(クリーニング手段)6Yが順に配設されている。
尚、1次転写ロール5Yは、中間転写ベルト20の内側に配置され、感光体1Yに対向した位置に設けられている。更に、各1次転写ロール5Y、5M、5C、5Kには、1次転写バイアスを印加するバイアス電源(図示せず)がそれぞれ接続されている。各バイアス電源は、図示しない制御部による制御によって、各1次転写ロールに印加する転写バイアスを可変する。
【0074】
以下、第1ユニット10Yにおいてイエロー画像を形成する動作について説明する。まず、動作に先立って、帯電ロール2Yによって感光体1Yの表面が−600V以上−800V以下程度の電位に帯電される。
感光体1Yは、導電性(20℃における体積抵抗率:1×10Ωcm以下)の基体上に感光層を積層して形成されている。この感光層は、通常は高抵抗(一般の樹脂程度の抵抗)であるが、レーザ光線3Yが照射されると、レーザ光線が照射された部分の比抵抗が変化する性質を持っている。そこで、帯電した感光体1Yの表面に、図示しない制御部から送られてくるイエロー用の画像データに従って、露光装置3を介してレーザ光線3Yを出力する。レーザ光線3Yは、感光体1Yの表面の感光層に照射され、それにより、イエロー印字パターンの静電荷像が感光体1Yの表面に形成される。
【0075】
静電荷像とは、帯電によって感光体1Yの表面に形成される像であり、レーザ光線3Yによって、感光層の被照射部分の比抵抗が低下し、感光体1Yの表面の帯電した電荷が流れ、一方、レーザ光線3Yが照射されなかった部分の電荷が残留することによって形成される、いわゆるネガ潜像である。
このようにして感光体1Y上に形成された静電荷像は、感光体1Yの走行に従って特定の現像位置まで回転される。そして、この現像位置で、感光体1Y上の静電荷像が、現像装置4Yによって可視像(現像像)化される。
【0076】
現像装置4Y内には、例えば、イエロートナーが収容されている。イエロートナーは、現像装置4Yの内部で攪拌されることで摩擦帯電し、感光体1Y上に帯電した帯電荷と同極性(負極性)の電荷を有して現像剤ロール(現像剤保持体)上に保持されている。そして感光体1Yの表面が現像装置4Yを通過していくことにより、感光体1Y表面上の除電された潜像部にイエロートナーが静電的に付着し、潜像がイエロートナーによって現像される。イエローのトナー像が形成された感光体1Yは、引続き特定速度で走行され、感光体1Y上に現像されたトナー像が特定の1次転写位置へ搬送される。
【0077】
感光体1Y上のイエロートナー像が1次転写へ搬送されると、1次転写ロール5Yに特定の1次転写バイアスが印加され、感光体1Yから1次転写ロール5Yに向う静電気力がトナー像に作用され、感光体1Y上のトナー像が中間転写ベルト20上に転写される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(−)と逆極性の(+)極性であり、例えば第1ユニット10Yでは制御部に(図示せず)よって+10μA程度に制御されている。
一方、感光体1Y上に残留したトナーはクリーニング装置6Yで除去されて回収される。
【0078】
また、第2ユニット10M以降の1次転写ロール5M、5C、5Kに印加される1次転写バイアスも、第1ユニットに準じて制御されている。
こうして、第1ユニット10Yにてイエロートナー像の転写された中間転写ベルト20は、第2乃至第4ユニット10M、10C、10Kを通して順次搬送され、各色のトナー像が重ねられて多重転写される。
【0079】
第1乃至第4ユニットを通して4色のトナー像が多重転写された中間転写ベルト20は、中間転写ベルト20と中間転写ベルト20内面に接する支持ロール24と中間転写ベルト20の像保持面側に配置された2次転写ロール(2次転写手段)26とから構成された2次転写部へと至る。一方、記録媒体Pが供給機構を介して2次転写ロール26と中間転写ベルト20とが圧接されている隙間に特定のタイミングで給紙され、特定の2次転写バイアスが支持ロール24に印加される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(−)と同極性の(−)極性であり、中間転写ベルト20から記録媒体Pに向う静電気力がトナー像に作用され、中間転写ベルト20上のトナー像が記録媒体P上に転写される。尚、この際の2次転写バイアスは2次転写部の抵抗を検出する抵抗検出手段(図示せず)により検出された抵抗に応じて決定されるものであり、電圧制御されている。
【0080】
この後、記録媒体Pは定着装置(定着手段)28へと送り込まれトナー像が加熱され、色重ねしたトナー像が溶融されて、記録媒体P上へ定着される。カラー画像の定着が完了した記録媒体Pは、排出部へ向けて搬出され、一連のカラー画像形成動作が終了される。
なお、上記例示した画像形成装置は、中間転写ベルト20を介してトナー像を記録媒体Pに転写する構成となっているが、この構成に限定されるものではなく、感光体から直接トナー像が記録媒体Pに転写される構造であってもよい。
【0081】
一方、図6に示す画像形成装置は、画像形成ユニットY、M、C、BKは、矢印の時計方向に特定の周速度(プロセススピード)をもって回転可能に、それぞれ感光体ドラム201Y、201M、201C、201BKが備えられる。感光体ドラム201Y、201M、201C、201BKの周囲には、帯電ロール202Y、202M、202C、202BKと、露光器203Y、203M、203C、203BKと、各色現像装置(イエロー現像装置204Y、マゼンタ現像装置204M、シアン現像装置204C、ブラック現像装置204BK)と、感光体ドラム清掃部材205Y、205M、205C、205BKとがそれぞれ配置されている。
【0082】
画像形成ユニットY、M、C、BKは、記録媒体搬送転写ベルト206に対して4つ並列に、画像形成ユニットBK、C、M、Yの順に配置されているが、画像形成ユニットBK、Y、C、Mの順等、画像形成方法に合わせて適当な順序を設定する。
【0083】
記録媒体搬送転写ベルト206は、ベルト支持ロール210、211、212、213によって内面側から張架され、画像形成装置用の転写ユニットを形成している。該記録媒体搬送転写ベルト206は、矢印の反時計方向に感光体ドラム201Y、201M、201C、201BKと同じ周速度をもって回転可能になっており、ベルト支持ロール212、213の中間に位置するその一部が感光体ドラム201Y、201M、201C、201BKとそれぞれ接するように配置されている。記録媒体搬送転写ベルト206は、ベルト用清掃部材214が備えられている。
【0084】
転写ロール207Y、207M、207C、207BKは、記録媒体搬送転写ベルト206の内側であって、記録媒体搬送転写ベルト206と感光体ドラム201Y、201M、201C、201BKとが接している部分に対向する位置にそれぞれ配置され、感光体ドラム201Y、201M、201C、201BKと、記録媒体搬送転写ベルト206を介してトナー画像を記録媒体216に転写する転写領域を形成している。転写ロール207Y、207M、207C、207BKは、感光体ドラム201Y、201M、201C、201BKの直下に配置していても、直下からずれた位置に配置してもよい。
【0085】
定着装置209は、記録媒体搬送転写ベルト206と感光体ドラム201Y、201M、201C、201BKとのそれぞれの転写領域を通過した後に搬送するように配置されている。
【0086】
記録媒体搬送ロール208により、記録媒体216は記録媒体搬送転写ベルト206に搬送される。
【0087】
画像形成ユニットBKにおいては、感光体ドラム201BKを回転駆動させる。これと連動して帯電ロール202BKが駆動し、感光体ドラム201BKの表面を特定の極性・電位に帯電させる。表面が帯電された感光体ドラム201BKは、次に、露光器203BKによって像様に露光され、その表面に静電潜像が形成される。
【0088】
続いて該静電潜像は、ブラック現像装置204BKによって現像される。すると、感光体ドラム201BKの表面にトナー画像が形成される。なお、このときの現像剤は一成分系のものでもよいし二成分系のものでもよい。
【0089】
このトナー画像は、感光体ドラム201BKと記録媒体搬送転写ベルト206との転写領域を通過し、記録媒体216が静電的に記録媒体搬送転写ベルト206に吸着して転写領域まで搬送され、転写ロール207BKから印加される転写バイアスによって形成される電界により、記録媒体216の表面に順次転写される。
【0090】
この後、感光体ドラム201BK上に残存するトナーは、感光体ドラム清掃部材205BKによって清掃・除去される。そして、感光体ドラム201BKは、次の画像転写に供される。
【0091】
以上の画像転写は、画像形成ユニットC、M及びYでも上記の方法によって行われる。
【0092】
転写ロール207BK、207C、207M及び207Yによってトナー画像を転写された記録媒体216は、さらに定着装置209に搬送され、定着が行われる。
以上により記録媒体上に画像が形成される。
【実施例】
【0093】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0094】
[実施例1]
(基材層形成用塗布液の調整)
まず、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)とp−フェニレンジアミン(PDA)を含むポリアミド酸N−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液(ユニチカ社製UイミドKX/固形分濃度20質量%)中にカーボンブラック(SPECIAL Black 4、エボニックデグサジャパン社製)を固形分質量比で8質量%投入し、ジェトミル分散機(ジーナス社製:GeanusPY)で分散処理(200N/mm、5パス)を行った。得られたカーボンブラック分散ポリアミド酸溶液を、ステンレス製20μmメッシュに通過させて、異物及びカーボンブラック凝集物を取り除いた。更に、攪拌しながら真空脱泡を15分間行い、最終的な溶液を作製した。これを基材層形成用塗布液とした。
【0095】
(最外層形成用塗布液の調整)
−カーボンブラック分散ポリアミド酸溶液の調製−
まず、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)とp−フェニレンジアミン(PDA)を含むポリアミド酸N−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液(ユニチカ社製UイミドKX/固形分濃度20質量%)中にカーボンブラック(SPECIAL Black 4、エボニックデグサジャパン社製)を固形分質量比で15質量%投入し、ジェトミル分散機(ジーナス社製:GeanusPY)で分散処理(200N/mm、5パス)を行った。得られたカーボンブラック分散ポリアミド酸溶液を、ステンレス製20μmメッシュに通過させて、異物及びカーボンブラック凝集物を取り除いた。更に、攪拌しながら真空脱泡を15分間行い、最終的な溶液を作製した。
【0096】
−フッ素樹脂粒子分散ポリアミド酸溶液の調製−
まず、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)テトラフルオロベンゼン二無水物(10FEDA)と1,3−ジアミノ−2,4,5,6−テトラフルオロベンゼン(4FMPD)を含むフッ素化ポリアミック酸N−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液を準備した。
次に、このフッ素化ポリアミド酸溶液(固形分濃度20質量%)と、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)及びp−フェニレンジアミン(PDA)を含むポリアミド酸N−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液(ユニチカ社製UイミドKX/固形分濃度20質量%)と、を1:3の比率で混合した。
得られた混合液に、一次粒径0.2μmのPTFE粒子を固形分質量比で50質量%と、フッ素樹脂粒子分散剤(AGCセイミケミカル社製S−386)を固形分質量比で2質量%と、を混合し、ジェトミル分散機(ジーナス社製:GeanusPY)で分散処理(200N/mm、5パス)を行った。
得られたフッ素樹脂粒子分散ポリアミド酸溶液を、ステンレス製20μmメッシュに通過させて、異物及びPTFE凝集物を取り除いた。更に、攪拌しながら真空脱泡を15分間行い、最終的な溶液を作製した。
【0097】
−混合溶液の調整−
カーボンブラック分散ポリアミド酸溶液500質量部と、フッ素樹脂粒子分散ポリアミド酸溶液500質量部と、を回転式攪拌機により混合して、混合溶液を調製した。
これを最外層形成用塗布液とした。
【0098】
(無端ベルトの作製)
外径600mm、肉厚8mm、長さ900mmのSUS304製円筒を用意し、保持板として厚さ8mm、外径が上記円筒に嵌まる径、150mm径の通風孔を4つ設けた円板を同じSUS材で作製し、上記円筒の両端に嵌めて溶接し、芯体とした。芯体の外周面は、アルミナ粒子によるブラスト処理によりRa0.4μmに粗面化した。
【0099】
次に、芯体の外周面には、シリコーン系離型剤(商品名:セパコート、信越化学製)を塗布して、300℃で1時間、焼き付け処理を施した。
【0100】
次に、基材層形成用塗布液を芯体の外周面に塗布して、第1皮膜形成樹脂溶液の塗膜を形成した。
ここで、基材層形成用塗布液の塗布は、らせん塗布方法を適用して行った。
塗布条件は、15リットルの基材層形成用塗布液が入った容器にモーノポンプを連結した流下装置のノズルから毎分20mlの基材層形成用塗布液の吐出を行い、芯体を20rpmで回転させ、吐出された基材層形成用塗布液が芯体に付着後、その表面にブレードを押し当て、芯体軸方向に210mm/分の速度で移動させて行った。ブレードは、厚さ0.2mmのステンレス板を幅20mm、長さ50mmに加工したものを適用した。また、塗布幅は芯体の軸方向の端部10mmの位置から、他端部10mmの位置までとした。塗布後、そのまま5分間回転を続けることで、塗膜表面のらせん筋は消失した。
【0101】
これにより、膜厚が160μmの基材層形成用塗布液の塗膜が形成された。この厚さは、でき上がり膜厚33μmに相当する。
その後、芯体を10rpmで回転させながら180℃の乾燥炉に入れ、基材層形成用塗布液の塗膜を20分間乾燥させた。これにより、基材層となる皮膜を形成した。
【0102】
次に、最外層形成用塗布液を基材層となる皮膜の外周面に塗布して、最外層形成用塗布液の塗膜を形成した。
ここで、最外層形成用塗布液の塗布は、基材層形成用塗布液の塗布と同様にして行った。但し、塗布条件は、ノズルから吐出量を毎分40mlとし、塗布幅はやはり芯体の軸方向における端部10mmの位置から、他端部10mmの位置までとした。そして、塗布後、そのまま5分間回転を続けることで、塗膜表面のらせん筋は消失した。
【0103】
これにより、膜厚が300μmの最外層形成用塗布液の塗膜が形成された。この厚さは、でき上がり膜厚67μmに相当する。
その後、芯体を10rpmで回転させながら185℃の乾燥炉に入れ、最外層形成用塗布液の塗膜を30分間乾燥させた。これにより、最外層となる皮膜を形成した。
【0104】
次に、芯体を回転台からおろして垂直にして加熱炉に入れ、200℃で30分、300℃で30分加熱反応させ、基材層及び最外層となる皮膜膜の残留溶剤の乾燥とイミド化反応を同時に行った。
【0105】
その後、基材層及び最外層からなる積層体を芯体から抜き取り、無端ベルトを得た。
この無端ベルトの幅方向の中央を切断し、さらに不要部分を両端から切断して、幅360mmの2本の無端ベルトを得た軸方向について5箇所、周方向について10箇所の計50箇所について、その平均膜厚をダイヤルゲージで測定すると、総厚みは100μmであった。
【0106】
[実施例2]
実施例1のフッ素樹脂粒子分散ポリアミド酸溶液の調製において、フッ素化ポリアミド酸溶液(固形分濃度20質量%)とポリアミド酸溶液(ユニチカ社製UイミドKX/固形分濃度20質量%)とを1:1の比率で混合したこと以外は実施例1と同様にして無端ベルトを得た。
【0107】
[実施例3]
実施例1のフッ素樹脂粒子分散ポリアミド酸溶液の調製において、PTFE樹脂粒子の代わりに一次平均粒径0.2μmのPFA樹脂粒子を使用すること以外は実施例1と同様にして無端ベルトを得た。
【0108】
[実施例4]
実施例1のフッ素樹脂粒子分散ポリアミド酸溶液の調製において、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)テトラフルオロベンゼン二無水物(10FEDA)の代わりに2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)、1,3−ジアミノ−2,4,5,6−テトラフルオロベンゼン(4FMPD)の代わりに2,2′−ビス(トリフルオロメチル)−4,4′−ジアミノビフェニル(TFDB)を使用すること以外は実施例1と同様にして無端ベルトを得た。
【0109】
[比較例1]
実施例1のフッ素樹脂粒子分散ポリアミド酸溶液の調製において、ポリアミド酸成分としてフッ素化ポリアミド酸溶液を使用せず、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)とp−フェニレンジアミン(PDA)を含むポリアミド酸N−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液(ユニチカ社製UイミドKX/固形分濃度20質量%)のみ使用すること以外は実施例1と同様にして無端ベルトを得た。
【0110】
[実施例5]
実施例1のカーボンブラック分散ポリアミド溶液の調製において、カーボンブラックの代わりにPTFE粒子を実施例1のフッ素樹脂粒子分散ポリアミド酸溶液の調製と同様にして分散した溶液を調製する一方で、実施例1のフッ素樹脂粒子分散ポリアミド酸溶液の調製において、PTFE粒子の代わりにカーボンブラックを実施例1のカーボンブラック分散ポリアミド溶液の調製と同様にして分散した溶液を調整した。
そして、これら2つの溶液を用いて、最外層形成用塗布液となる混合溶液を調整した以外は、実施例1と同様にして無端ベルトを得た。
【0111】
[実施例6]
実施例1の基材層形成用塗布液の調整において、ポリアミド酸N−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液(ユニチカ社製UイミドKX/固形分濃度20質量%)の代わりにポリアミドイミド樹脂溶液(東洋紡製、バイロマックス16NN、溶媒N-メチルピロリドン(NMP)、固形分率17質量%)を使用すること以外は実施例1と同様にして無端ベルトを得た。
[評価]
得られた無端ベルトについて、以下の評価を行った。
【0112】
(最外層の空隙)
最外層の空隙について、次のようにして調べた。
日本電子社製電界放射型走査型電子顕微鏡JSM 6700Fで、ベルト本体Aの内面の周方向6点、軸方向3点の合計18点で加速電圧5kV、20000倍で観察し、下記評価基準によりグレード評価を行った。
評価基準は以下の通りである。
G3:最外層の空隙がフッ素樹脂粒子ほぼ全てのまわりにあり
G2:最外層の空隙がわずかにあり(許容レベル内)
G1:最外層の空隙なし
【0113】
(最外層のフッ素樹脂粒子の分散状態)
最外層のフッ素樹脂粒子の分散状態について、次のようにして調べた。
日本電子社製電界放射型走査型電子顕微鏡JSM 6700Fで、ベルト本体Aの内面の周方向6点、軸方向3点の合計18点で加速電圧5kV、20000倍で観察し、分散状態を下記評価基準にて評価した。
評価基準は以下の通りである。
G3:フッ素樹脂粒子が1次粒子の状態で分散している割合が90%未満で、最大2次粒子径が2μm以上
G2:フッ素樹脂粒子が1次粒子の状態で分散している割合が90%未満で、最大2次粒子径が2μm未満(許容レベル内)
G1:フッ素樹脂粒子が1次粒子の状態で分散している割合が90%以上
【0114】
(最外層の離型性)
最外層の離型性について、次のようにして調べた。
協和界面科学社製の水接触角計DM−501により、水接触角を測定した。
評価基準は以下の通りである。
G3:水接触角が90°未満
G2:水接触角が90°以上、100°未満(許容レベル内)
G1:水接触角が100°以上
【0115】
(最外層の抵抗特性)
最外層の抵抗特性(膜減りよる抵抗低下)について、次のようにして調べた。
体積抵抗率は、円形電極(三菱油化(株)製ハイレスターIPのURプローブ:円柱状電極部Cの外径Φ16mm、リング状電極部Dの内径Φ30mm、外径Φ40mm)を用い、22℃/55%RH環境下、電圧500V、10秒印加後の電流値を求め算出する。 そして、フルカラー複合機(DocuColor 8000 Digital Press:富士ゼロックス社製)にて1万枚プリント前後の抵抗変化率を算出した。
評価基準は以下の通りである。
G3:変化量が0.5LogΩcm以上
G2:変化量が0.2LogΩcm以上、0.5LogΩcm未満(許容レベル内)
G1:変化量が0.2LogΩcm未満
【0116】
(基材層と最外層の剥離性)
基材層と最外層の剥離性について、次のようにして調べた。
フルカラー複合機(DocuColor 8000 Digital Press:富士ゼロックス社製)にて1万枚プリント後のベルト上を観察し、ハガレの有無を確認した。
評価基準は以下の通りである。
G3:幅5mm以上の明らかなハガレ発生
G2: 幅5mm未満のわずかなハガレ発生(許容レベル内)
G1:ハガレ発生なし
【0117】
(画質)
無端ベルトを中間転写体(中間転写ベルト)として利用し、次のようにして、画質について評価した。
図1に示す基本構成を有するフルカラー複合機(DocuColor 8000 Digital Press:富士ゼロックス社製)を改造した画像評価機(2次転写ロールを評価機本体内蔵の電源から切り離して、外部電源(TRek社製 MODEL 610D)に接続し、2次転写ロールに外部から直接電圧を印加できるように改造)に、前記中間転写ベルトを搭載した。プリント時に二次転写ロールに印加される転写電圧を4.0kVに設定した。Cyanベタ(濃度100%)画像で微小白点および転写不良を、Cyanハーフトーン(濃度70%)でウロコ状濃度ムラを、Cyanハーフトーン(濃度30%)でHTムラをグレード評価し、最もグレード悪い画質故障を評価グレードとした。
評価基準は以下の通りである。
G3:発生が顕著になり許容レベルを大きく超える
G2:発生が見られる(許容レベル内)
G1:発生が無い
【0118】
以下、各例で得られた無端ベルトの特徴を表1に示すと共に、評価結果を表2に示す。
【0119】
【表1】

【0120】
【表2】

【0121】
上記結果から、本実施例は、比較例に比べ、最外層の空隙、最外層の離型性、画質について良好な結果が得られたことがわかる。また、本実施例では、比較例1と同等に、最外層の磨耗性について良好な結果が得られたことがわかる。
また、フッ素化ポリイミド樹脂として、主鎖にエーテル基を有するフッ素化ポリアミド酸のイミド化物を適用した実施例1は、主鎖にエーテル基を有さないフッ素化ポリイミド樹脂を適用した実施例4等に比べ、最後層のフッ素樹脂粒子の分散状態、最外層の離型性、最外層の磨耗性、画質について良好な結果が得られたことがわかる。
また、基材層の樹脂種としてポリイミド樹脂を適用した実施例1は、基材層の樹脂種としてポリイミド樹脂以外の樹脂を用いた実施例6に比べ、基材層と最外層との剥離性について良好な結果が得られたことがわかる。
また、最外層形成用塗布液として、予め、カーボンブラック分散ポリアミド酸溶液(フッ素化ポリアミド酸を含まない溶液)とフッ素樹脂粒子分散ポリアミド酸溶液(フッ素化ポリアミド酸を含む)とを調製し、その後、混合した混合溶液を適用した実施例1は、予め、フッ素樹脂粒子分散ポリアミド酸溶液(フッ素化ポリアミド酸を含まない溶液)とカーボンブラック分散ポリアミド酸溶液(フッ素化ポリアミド酸を含む溶液)とを調製し、その後、混合した混合溶液を適用した実施例5に比べ、最後層のフッ素樹脂粒子の分散状態、最外層の抵抗特性について良好な結果が得られたことがわかる。
【符号の説明】
【0122】
1Y、1M、1C、1K 感光体
2Y、2M、2C、2K 帯電ロール
3Y、3M、3C、3K レーザ光線
3 露光装置
4Y、4M、4C、4K 現像装置
5Y、5M、5C、5K 1次次転写ロール
6Y、6M、6C、6K クリーニング装置
8Y、8M、8C、8K トナーカートリッジ
10Y、10M、10C、10K 画像形成ユニット
20 中間転写ベルト
22 駆動ロール
24 支持ロール
26 2次転写ロール
30 中間転写体クリーニング装置
101 管状体(無端ベルト)
130 管状体ユニット(無端ベルトユニット)
131 駆動ロール
132 従動ロール
201Y、201M、201C、201BK 感光体ドラム
202Y、202M、202C、202BK 帯電ロール
203Y、203M、203C、203BK 露光器
204Y、204M、204C、204BK 現像装置
205Y、205M、205C、205BK 感光体ドラム清掃部材
206 記録媒体搬送転写ベルト
207Y、207M、207C、207BK 転写ロール
208 記録媒体搬送ロール
209 定着装置
210 ベルト支持ロール
212 ベルト支持ロール
214 ベルト用清掃部材
216 記録媒体
Y、M、C、BK 画像形成ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミド樹脂とフッ素化ポリイミド樹脂とフッ素樹脂粒子とを含む層の単層体で構成、又は当該層を最外層として有する2層以上の積層体で構成された管状体。
【請求項2】
前記フッ素樹脂粒子が、一次粒子、2μm以下の二次粒子径を持つ二次粒子、又はこれらの混合状態で含まれている請求項1に記載の管状体。
【請求項3】
前記管状体が2層以上の積層体で構成され、
前記最外層と接する下層が、ポリイミド樹脂を含んで構成された層である請求項1又は2に記載の管状体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の管状体と、該管状体を張力がかかった状態で掛け渡す複数のロールと、を備え、画像形成装置本体に対して脱着される管状体ユニット。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の管状体からなる中間転写体。
【請求項6】
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電する帯電手段と、
前記像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成手段と、
前記像保持体の表面の潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記像保持体の表面に形成された前記トナー像が転写される中間転写体であって、請求項5に記載の中間転写体と、
前記像保持体の表面に形成された前記トナー像を前記中間転写体の表面に一次転写する一次転写手段と、
前記中間転写体の表面に転写された前記トナー像を記録媒体に二次転写する二次転写手段と、
前記記録媒体に転写された前記トナー像を定着する定着手段と、
を備えた画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−47960(P2012−47960A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189793(P2010−189793)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】