説明

管状体の塗装装置および塗装方法

【課題】塗装時における管状体先端への塗料の付着および管状体内部への塗料の侵入を防止できる管状体の塗装装置を提供する。
【解決手段】本発明の管状体の塗装装置は、管状体の周面を塗料により塗装するものであり、前記管状体を摺動させながら挿入可能な管状体挿入孔11aが形成された弾性部材製の側面部11を有し、側面部11が下方を向くように回転する塗料用容器10と、管状体挿入孔11aに挿入した管状体を引き抜いた際に管状体挿入孔11aに形成される塗料の膜を破裂させる膜破裂機20とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管状体の周面を塗装する塗装装置および塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフクラブシャフト、釣竿等に用いられる管状体の周面には、主に意匠性の向上を目的として各種塗装が施される。
塗装方法としては、特許文献1に、弾性部材製の一対のダイス31,31を備えた塗料用容器30に塗料32を充填し、管状体Aをダイス31に通して、余剰の塗料をしごき落としながら塗装する方法(図5参照)が開示されている。
【特許文献1】特開2002−336393号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の塗装方法では、管状体の先端に塗料が付着したり、管状体の内部に塗料が侵入したりするため、塗装後に管状体を吊した際に塗料が床に落下して汚すことがあった。
また、管状体の用途によっては、管状体の内部におもり等の部材を貼り付けることがあるが、管状体の内部に侵入した塗料をそのまま硬化させた場合には、おもり等を貼り付ける前に、硬化させた塗料を剥がさなければならず、作業が煩雑になりがちであった。
本発明は、前記事情を鑑みてなされたものであり、塗装時における管状体先端への塗料の付着および管状体内部への塗料の侵入を防止できる管状体の塗装装置および塗装方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、以下の態様を包含する。
[1] 管状体の周面を塗料により塗装する管状体の塗装装置であって、
前記管状体を摺動させながら挿入可能な管状体挿入孔が形成された弾性部材製の側面部を有し、前記側面部が下方を向くように回転する塗料用容器と、
前記管状体挿入孔に挿入した管状体を引き抜いた際に管状体挿入孔に形成される塗料の膜を破裂させる膜破裂機とを具備する管状体の塗装装置。
[2] 膜破裂機が、前記管状体挿入孔に向けて気体を噴射する気体噴射機である[1]に記載の管状体の塗装装置。
[3] [1]に記載の管状体の塗装装置を用いて、管状体の周面を塗装する管状体の塗装方法であって、
塗料を充填した塗料用容器内に、側面部の管状体挿入孔から管状体の一部を挿入する工程と、
管状体の一部を挿入した状態で、前記側面部が下方を向くように塗料用容器を回転させる工程と、
塗料用容器から管状体を引き抜きながら、前記側面部が側方を向くように塗料用容器を回転させる工程と、
管状体挿入孔から管状体を引き抜いた際に該管状体挿入孔に形成された塗料の膜を、膜破裂機によって破裂させる工程とを有する管状体の塗装方法。
【発明の効果】
【0005】
本発明の管状体の塗装装置および塗装方法によれば、塗装時における管状体先端への塗料の付着および管状体内部への塗料の侵入を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
<管状体の塗装装置>
本発明の管状体の塗装装置(以下、塗装装置と略す。)の一実施形態例について説明する。
図1に、本実施形態例の塗装装置を示す。本実施形態例の塗装装置は、塗料が充填される塗料用容器10と、膜破裂機20とを具備し、管状体の周面を塗装する装置である。
【0007】
(塗料用容器)
本実施形態例における塗料用容器10は、管状体挿入孔11aが形成された弾性部材製の第1の側面部11を有する断面U字状の容器である。また、塗料用容器10は、第1の側面部11に対して垂直に管状体を管状体挿入孔11aから挿入した際に、第1の側面部11に対向する第2の側面部12に管状体が当らないように、第2の側面部12側の上部が開放されている。さらに、第1の側面部11と第2の側面部12との間の第3の側面部13に回転軸14が取り付けられ、塗料用容器10は回転軸14を中心として第1の側面部11が下方を向くように回転する。
【0008】
塗料用容器10の第1の側面部11を構成する弾性部材の材質としては、例えば、天然ゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴムなどが挙げられる。
第1の側面部11以外の部分(第2の側面部12、第3の側面部13、上面部15)の材質は特に制限されず、例えば、金属、プラスチック、ゴム、ガラス等が使用される。
【0009】
第1の側面部11の厚さは0.5〜2.0mmであることが好ましい。第1の側面部11の厚さが0.5mm以上であれば、破断しにくくなり、2.0mm以下であれば、充分な弾性を確保できる。
【0010】
第1の側面部11に形成された管状体挿入孔11aの孔径は、管状体を摺動させながら挿入可能な径である。具体的には、塗装する管状体の外径より小さい径である。
管状体が、一端から他端に向かって外径が漸次拡径するような一定でない管状体である場合には、管状体挿入孔11aの孔径は、管状体の最小の外径に対して50%程度が好ましく、具体的には、3〜7mmが好ましい。孔径が3mm以上7mm以下であれば、ゴルフクラブシャフトや釣竿等に使用される管状体を容易に塗装できる。
【0011】
(膜破裂機)
膜破裂機20は、管状体挿入孔11aから管状体を引き抜いた際に形成する塗料の膜を破裂させるものである。本実施形態例の膜破裂機20は、管状体を挿入する側から管状体挿入孔11aに向けて気体を噴射する気体噴射機である。
本実施形態例の膜破裂機20は気体を連続的に噴射してもよいし、管状体挿入孔11aに管状体を挿入する直前のみに噴射してもよい。しかし、管状体挿入孔11aに管状体を挿入している際には気体を噴射させる必要がないから、管状体を挿入する直前のみに気体を噴射することが好ましい。
噴射する気体としては、例えば、空気、窒素などが挙げられるが。コストの点では、空気が好ましい。
【0012】
上述した塗装装置における塗料用容器10の第1の側面部11は弾性部材製であり、管状体挿入孔11aを拡げることができるため、管状体挿入孔11aの孔径より大きい外径の管状体を管状体挿入孔11aに挿入できる。
また、塗料用容器10内に塗料を充填した上で、管状体挿入孔11aから管状体の一部を挿入し、第1の側面部11が下方を向くように塗料用容器10を回転させた後、塗料用容器10から管状体を引き抜くことにより、管状体の周面を塗装できる。さらに、塗料用容器10から管状体を引き抜く際に第1の側面部11が側方に向くように塗料用容器10を回転させることにより、塗料16が塗料用容器10から漏れ出ないようにできる。
ところで、一般に塗料は粘度が高いため、管状体挿入孔11aから管状体を引き抜くと、管状体挿入孔11aに塗料の膜が形成される。管状体挿入孔11aに塗料の膜が形成されたまま、新たな管状体を挿入すると、管状体先端に塗料が付着したり、管状体内部に塗料が侵入したりする。しかし、上述した塗装装置では、膜破裂機20によって、塗料用容器10の第1の側面部11に形成された管状体挿入孔11aに向けて気体を噴射して、管状体挿入孔11aに形成された塗料の膜を破裂させることができる。そのため、管状体挿入孔11aに管状体を新たに挿入しても、管状体の先端に塗料が付着しにくく、また、管状体の内部に塗料が侵入しにくい。
【0013】
なお、本発明の塗装装置は、上述した実施形態例に限定されない。上述した実施形態例では、管状体Aを挿入する側から気体を噴射したが、その反対側から気体を噴射してもよい。
また、塗料用容器10の形状は円筒状、直方体状、立方体状などであってもよい。さらに、塗装する部分が短い場合あるいは塗料用容器10を長尺とした場合には、塗料用容器10の第2の側面部12側が開放されていなくても構わない。
また、膜破裂機20は気体噴射機でなくてもよく、管状体挿入孔11aに向けて液体を噴射する液体噴射機であってもよいし、管状体挿入孔11aに針や棒等の貫通体を貫通させる膜破裂機などであってもよい。しかし、簡便で作業性に優れる点で、気体噴射機が好ましい。
【0014】
<管状体の塗装方法>
本発明の管状体の塗装方法(以下、塗装方法と略す。)の一実施形態例について説明する。
本実施形態例の塗装方法は、上述した塗装装置を用いた方法であり、塗料を充填した塗料用容器10内に管状体の一部を挿入する工程(以下、挿入工程という。)と、管状体の一部を挿入した状態で、第1の側面部11が下方を向くように塗料用容器10を回転させる工程(以下、第1回転工程という。)と、塗料用容器10から管状体Aを引き抜きながら、第1の側面部11が側方に向くように回転させる工程(以下、第2回転工程という。)と、管状体挿入孔11aに向けて膜破裂機20より気体を噴射する工程(以下、噴射工程という。)とを有する方法である。
【0015】
(挿入工程)
挿入工程では、具体的には、図2に示すように、塗料16が充填された塗料用容器10内に、第1の側面部11の管状体挿入孔11aから管状体Aの一部を、第1の側面部11に対して垂直に挿入する。このとき、塗料用容器10内の塗料に管状体Aは接触しない。
【0016】
ここで、管状体Aの長さ、外径は、管状体Aの用途によって適宜選択されるが、例えば、ゴルフクラブシャフトに用いる場合には、長さが850〜1200mm、最大の外径が13〜22mm、最小の外径が8.0〜9.5mmであることが好ましい。長さまたは外径が前記範囲を外れる管状体Aはゴルフクラブシャフトの用途に適さない。
管状体Aの材質としては、例えば、繊維強化樹脂、繊維強化樹脂以外の樹脂、金属などが挙げられる。これらの中でも、管状体Aをゴルフクラブシャフトに用いる場合には、剛性および強度に優れることから、繊維強化樹脂が好ましい。
繊維強化樹脂における繊維としては、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、高強度ポリエステル繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維、窒化珪素繊維、ナイロン繊維などが挙げられる。これらの中でも、比強度および比弾性に優れることから、炭素繊維が好ましい。
樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、ベンゾオキサジン樹脂などが挙げられる。これらの中でも、強度を高くできることから、エポキシ樹脂が好ましい。
【0017】
管状体Aに塗布される塗料16としては、例えば、アクリル樹脂系塗料、エポキシ樹脂系塗料、ウレタン樹脂系塗料、ポリエステル系塗料などが使用される。
塗料用容器10における塗料16の充填量は、挿入工程において液面が管状体挿入孔11aより下になる量である。
【0018】
(第1回転工程)
第1回転工程において、図3に示すように、回転軸14を中心として第1の側面部11が下方を向くように回転させることにより、第1の側面部11の内面の全面に塗料16を行き渡らせることができ、塗料16を管状体Aの周面に接触させることができる。なお、このとき、管状体挿入孔11aが下方を向いているが、管状体Aにより塞がれているため、管状体挿入孔11aより塗料が漏れ出すことはない。
第1の回転工程における塗料用容器10の回転角αは、確実に塗料16を管状体Aの周面に接触させることができる点で、0°〜90°であることが好ましい。
【0019】
(第2回転工程)
第2回転工程では、図4に示すように、塗料用容器10から管状体Aを引き抜きながら、回転軸14を中心として第1の側面部11が側方に向くように回転させて、管状体Aの塗料用容器10内に挿入した部分の周面に塗料を付着させて塗装する。また、管状体Aを引き抜いた後に管状体挿入孔11aから塗料が流れ落ちないようにする。
ここで、管状体挿入孔11aの孔径は管状体Aの外径より小さく、管状体Aを摺動させながら挿入可能であるから、管状体Aを管状体挿入孔11aから引き抜いた際には、管状体Aに余剰に付着した塗料を、管状体挿入孔11aの縁によりしごき落とすことができる。
【0020】
(噴射工程)
噴射工程における気体の噴射時間は、管状体挿入孔11aに形成された塗料の膜が破裂する程度であればよく、具体的には、0.01〜1.0秒であることが好ましい。噴射時間が0.01以上であれば、確実に塗料の膜を破裂させることができる。しかし、1.0秒以下で塗料の膜は確実に破裂するから、1.0秒を超えて噴射させても無益である。
噴射圧力は5〜20kPaであることが好ましい。噴射圧力が5kPa以上であれば、確実に塗料の膜を破裂させることができ、20kPa以下であれば、塗料の膜は確実に破裂するから、20kPaを超えて噴射させても無益である。
【0021】
上記挿入工程、第1回転工程、第2回転工程および噴射工程を繰り返すことで、多数の管状体Aを連続的に塗装する。
【0022】
上記実施形態例の塗装方法では、上記挿入工程、第1回転工程、第2回転工程により、管状体Aを塗装できる。
第2回転工程後には、管状体挿入孔11aに塗料の膜が形成されることがあるが、噴射工程によって、管状体挿入孔11aに形成された塗料の膜を破裂させることができる。したがって、管状体挿入孔11aに新たな管状体Aを挿入しても、管状体Aの先端に塗料が付着しにくく、また、管状体Aの内部に塗料が侵入しにくい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の管状体の塗装装置の一実施形態例を示す斜視図である。
【図2】本発明の管状体の塗装方法の一実施形態例における一工程を説明する図である。
【図3】本発明の管状体の塗装方法の一実施形態例における一工程を説明する図である。
【図4】本発明の管状体の塗装方法の一実施形態例における一工程を説明する図である。
【図5】従来の管状体の塗装方法の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0024】
10 塗料用容器
11 第1の側面部
11a 管状体挿入孔
12 第2の側面部
13 第3の側面部
14 回転軸
15 上面部
16 塗料
20 膜破裂機
A 管状体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状体の周面を塗料により塗装する管状体の塗装装置であって、
前記管状体を摺動させながら挿入可能な管状体挿入孔が形成された弾性部材製の側面部を有し、前記側面部が下方を向くように回転する塗料用容器と、
前記管状体挿入孔に挿入した管状体を引き抜いた際に管状体挿入孔に形成される塗料の膜を破裂させる膜破裂機とを具備する管状体の塗装装置。
【請求項2】
膜破裂機が、前記管状体挿入孔に向けて気体を噴射する気体噴射機である請求項1に記載の管状体の塗装装置。
【請求項3】
請求項1に記載の管状体の塗装装置を用いて、管状体の周面を塗装する管状体の塗装方法であって、
塗料を充填した塗料用容器内に、側面部の管状体挿入孔から管状体の一部を挿入する工程と、
管状体の一部を挿入した状態で、前記側面部が下方を向くように塗料用容器を回転させる工程と、
塗料用容器から管状体を引き抜きながら、前記側面部が側方を向くように塗料用容器を回転させる工程と、
管状体挿入孔から管状体を引き抜いた際に該管状体挿入孔に形成された塗料の膜を、膜破裂機によって破裂させる工程とを有する管状体の塗装方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−90232(P2009−90232A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−264411(P2007−264411)
【出願日】平成19年10月10日(2007.10.10)
【出願人】(506266746)エムアールシーコンポジットプロダクツ株式会社 (35)
【Fターム(参考)】