管状成形体の製造方法および金型
【課題】 管状成形体製造のための作業性を向上し得る製造方法および金型の提供。
【解決手段】 雄型42の凸部84の外側面84bと雌型41の凹部54,55の内側面68a,69aとの間に形成される隙間81に、管状成形体1が所望の軸方向長さを有するよう隙間81の軸方向に長さ変更用金型45,46,47を装着し、隙間81に発泡性合成樹脂を充填することで管状成形体1を製造する。
【解決手段】 雄型42の凸部84の外側面84bと雌型41の凹部54,55の内側面68a,69aとの間に形成される隙間81に、管状成形体1が所望の軸方向長さを有するよう隙間81の軸方向に長さ変更用金型45,46,47を装着し、隙間81に発泡性合成樹脂を充填することで管状成形体1を製造する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性合成樹脂からなる管状成形体を製造するための製造方法および金型に関する。
【背景技術】
【0002】
発泡性合成樹脂からなる成形体は、その成形性や加工性が容易なことから様々な形状に形成され、広い分野で利用されている。しかし、発泡性合成樹脂からなる成形体は、成形体の形状や大きさに応じた金型を用いて製造されるため、成形体の種類と同じだけの数の金型が必要となり、製造コストが高くなるとともに、管理が大変になる。
【0003】
そこで、所望の成形体の中間部に同一断面形状を有する成形体を少ない数の金型で成形体を形成する方法として、中間部に同一断面形状を有する成形体を成形して、この成形体の断面形状が同一な部分で複数に分割し、これを別の成形体に接合することで管状成形体を所望の長さに製造するといった技術が提案されている。(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平7−16696号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、成形体の一部を切断することにより所望の長さに調節するようにした場合、その切断面を必要な面精度に切断することが難しい。このため、接合部に別部材等を用いて成形体同士を接合することが必要となる。このように、従来の管状成形体の製造方法では、成形体の切断加工を必要とし、また接合部に別部材を取付けるといった工程が必要となり、したがって、管状成形体製造のための作業性が悪いという問題があった。
【0006】
そこで本発明は、上記従来の問題に鑑み、切断加工をすることなく所望の長さに管状成形体を製造することで接合のための別部材を不要として、管状成形体製造のための作業性を向上し得る製造方法および金型の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、発泡性合成樹脂からなる管状成形体の製造方法において、雄型の凸部の外側面と雌型の凹部の内側面との間に形成される隙間に、管状成形体が所望の軸方向長さを有するよう前記隙間の軸方向に長さ変更用金型を装着し、前記隙間に発泡性合成樹脂を充填することを特徴としている。
【0008】
上記製造方法により、管状成形体は、雌型、雄型および長さ変更用金型といった少ない種類の金型でもって製造でき、所望の軸方向長さに製造することができることから、成形体を切断加工する必要がなく、成形体の端面の面精度を金型の面精度に確保することができる。
【0009】
本発明は、隙間に長さ変更用金型を軸方向に重ねて複数個装着することを特徴とする。上記製造方法により、管状成形体は、長さ変更用金型の様々な組合わせにより、所望の軸方向長さを容易に調節することができる。
【0010】
本発明は、発泡性合成樹脂からなる管状成形体の製造用の金型において、凸部を有する雄型と、該雄型の凸部の外側面との間で内側面が隙間をもって外嵌する凹部を有する雌型と、前記隙間に装着されることで該隙間の軸方向長さを変更する長さ変更用金型とを備えていることを特徴としている。
【0011】
上記金型を用いて管状成形体を製造するには、雄型の凸部に、雌型の凹部が外嵌するよう、且つ雄型の凸部の外側面と凹部の内側面との間に隙間をもって両型を配置し、隙間に長さ変更用金型を装着することで、製造される管状成形体が所望の軸方向長さを有するよう設定して、隙間に発泡性合成樹脂を充填するようにする。この金型の構成によれば、雌型、雄型および長さ変更用金型といった少ない種類の金型でもって管状成形体を製造することができるから、成形体を切断加工する必要がなく、管状成形体の端面の面精度を、金型の面精度に確保することができる。
【0012】
本発明の金型における長さ変更用金型は、隙間の軸方向に重ねて複数個装着されるものであることを特徴としている。このような長さ変更用金型の様々な組合わせにより、管状成形体の所望の軸方向長さを容易に調節することができる。
【0013】
なお、成形体としては、管状であれば、その断面形状は円筒状あるいは角筒状の何れでもかまわない。
【発明の効果】
【0014】
本発明の製造方法によれば、雌型の凹部と雄型の凸部との隙間に長さ変更用金型を装着して管状成形体を所望の長さに成形するので、他の成形体を切断加工する必要がなく、接合時に別部材が不要であるため、作業性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態に係る管状成形体の製造方法および金型を、発泡性合成樹脂を用いて製造した管継手製造用消失模型を例に、図面に基づいて説明する。図1は消失模型の全体断面図、図2は図1におけるE−E線矢視断面図、図3は要部拡大断面図、図4および図5は消失模型の製造用金型および製造方法を示す断面図、図6は一部拡大断面図、図7および図8は長さ変更用金型の拡大図、図9は離型の際の説明図、図10は管継手の全体側面図である。
【0016】
図1乃至図3に基づいて、管継手を製造するための管継手製造用消失模型(以下単に「消失模型」という)1の構成を説明する。消失模型1は、下部模型2と、この下部模型2の上部に接続される上部模型3を有する。下部模型2は、その上下方向中間部に位置にする円錐台筒状の中間模型部4と、この中間模型部4の上部に一体に形成される円筒状の第一集水模型部(一方の胴体模型)5と、中間模型部4の下部に一体に形成される排水模型部6とを有する。前記第一集水模型部5の第一外周側壁7の一部に横開口10が形成され、この横開口10の外周部近傍から下部模型2の軸心2aに垂直な方向(横方向)に突出する環状部11が形成されている。この環状部11に第一横枝管模型部8の基端部11aが内嵌するよう組付けられている。第一横枝管模型部8は、下部模型2の軸心2a方向に鉛直な方向に沿い、第一横枝管模型部8は第一集水模型部5の内部に連通する流入孔14を有する。
【0017】
前記上部模型3は、円筒状の第二集水模型部(他方の胴体模型)20と、第二集水模型部20の上端部に嵌合して組付けられる流入口模型部21とを有する。第二集水模型部20の第二外周側壁22の一部に横開口23が形成され、この横開口23の外周部近傍から前記軸心2a方向に垂直な方向に突出する環状部24が形成されている。この環状部24に第二横枝管模型部25の基端部25aが内嵌するよう組付けられている。第二横枝管模型部25は、前記軸心2a方向に鉛直な方向に沿うよう配置され、第二横枝管模型部25は、第二集水模型部20の内部に連通する流入孔15を中心に有する。前記横開口23は、横開口10に対して所定距離Lだけ上方に配置され、したがって第二横枝管模型部25も第一横枝管模型部8に対して所定距離Lだけ上方に配置されている。この所定距離Lは、消失模型1によって製造される管継手(後述する)を使用する家屋等の配管状態によって決められる距離である。なお横開口10は、第一集水模型部5の長さ方向中心に配置形成され、横開口23は、第二集水模型部20の長さ方向中心から上方にずれた位置に配置形成される。また、第一集水模型部5の軸方向長さH1に比べて、第二集水模型部20の軸方向長さH2の方が長く設定さている。
【0018】
第二集水模型部20は、その下端部外周に、前記第一集水模型部5に比べて大径で第一集水模型部5の上端外周部に外嵌する環状の拡幅部30を有する。第一集水模型部5の上端部と、第二集水模型部20の拡幅部30内径側に形成された環状溝30aとが嵌合するよう、第一集水模型部5の上端面31と環状溝30aの上端面32とが上下方向で当接している。流入口模型部21に、第二集水模型部20の上端部に嵌合する嵌合部33が形成され、嵌合部33の中心に立流入孔35が形成されて、流入口模型部21、第二集水模型部20、第一集水模型部5、第一横枝管模型部8、および第二横枝管模型部25が連通されている。
【0019】
次に、図4乃至図8に基づいて、上記構成の消失模型1における第二集水模型部20を製造するための金型40について説明する。金型40は雌型41と、雄型42と、消失模型1のうち第二集水模型部20の一方端部から他方端部までの軸方向長さH2(図1参照)を所望の値に変更するための長さ変更用金型45,46とを備える。
【0020】
図4に示すように、雌型41は半割で一対の雌型部50,51から構成されて、図5(a)に示すように、これら雌型部50,51の対向合わせ面52,53同士を左右方向で(径方向内方に向けて)当接させることで雌型41を構成するものである。
【0021】
一方側の雌型部50は、図5(b)に示すように、平面視矩形の天壁50Aと、図4および図5(a),(b),(c)に示すように、天壁50Aの径方向他方側の上端部から下方に向けて延長される側面視矩形の当接壁58と、当接壁58の下端部の径方向一方側に形成された前記半円柱状凹部54形成用の平面視半円状の凹部天壁56と、凹部天壁56の径方向外周端部に形成された半筒状の凹部側壁60と、凹部側壁60の下端部に径方向外方に向けて延長形成された底壁62とから一体に設けられている。凹部天壁56と凹部側壁60とで、雌型部50の径方向他方部に半円柱状凹部54が形成されている。
【0022】
凹部天壁56に、上方に向けて窪む半円状溝64が形成されている。半円状溝64の上面64aから底壁62の下面66までは、所定の軸方向長さH3に設定されている。所定の軸方向長さH3とは、後述の凸部84の軸方向長さに等しい長さである。凹部側壁60は、上部すなわち軸方向他方側の小径側壁68と、下部すなわち軸方向一方側の大径側壁70と、小径側壁68と大径側壁70とを径方向で連続する半環状壁72(段部に相当する)とから一体的に形成される。すなわち半環状壁72の径方向長さd1は、小径側壁68と大径側壁70の内径d2,d3の差に等しく設定されている(外径の差でも同様)。
【0023】
径方向他方側の雌型部51が、径方向一方側の雌型部50と異なる部分を説明すると、径方向他方側の雌型部51は、前記消失模型1の横開口23を形成するために先端(径方向内方)に円板部75を有する突起76を有する。また、突起76の外周部近傍に、前記環状部24を形成するための環状溝77が形成されている。他の構成は、一方側の雌型部50と同様の構成であるが、天壁50B、当接壁59、半円柱状凹部55、凹部天壁57、凹部側壁61、底壁63、半円状溝65、底壁63の下面67、小径側壁69、大径側壁71、半環状壁73のように、一方側の雌型部50とは異なる符号を付している。
【0024】
当接壁58,59の端面同士、凹部側壁60,61の端面同士を径方向および長さ方向にずれなく合わせることで、図5に示すような雌型41となり、雌型41の中心に、環状壁72,73を境界として、その上方に配置される小径円柱状の小径凹部49と、下方に配置される大径円柱状の大径凹部79とからなる円柱状の凹部78が形成される。半円状溝64,65同士も合わされて円板状溝80となる。大径凹部79は所定の軸方向長さh4を有する。大径凹部79の軸方向長さh4は、底壁62(63)の下面66(67)から半環状壁72(73)の下面72a(73a)までの距離である。図5において、符号D1は小径凹部49の内径であり、D2は大径凹部79(大径側壁70)の内径を示す。
【0025】
次に、雄型42の構成を説明する。雄型42は、大径筒状の当接部83と、この当接部83の中心に立設するよう一体に形成されるとともに雌型41の凹部78に円筒状の所定の隙間81を介して保持される前記凸部84とを有する。凸部84の外側面84bと小径側壁68,69の内周面68a,69aとの間の隙間81(狭幅隙間)の径方向幅d4は製造しようとする第二集水模型部20の厚みとなる。凸部84はその上先端部に、円板状溝80とほぼ等しい径D3(<D1)に形成されて円板状溝80に嵌合する先端壁85を有する。当接部83は、上部に大径凹部79の内径D2より大きい径D4に形成された平板状の環状当接壁86を有する。凸部84と環状当接壁86(当接部83)との連続部に、環状の膨出部87が一体的に形成されている。図6に示すように、膨出部87の断面は略L型に形成され、その上面87aは環状の平面に形成され、その外周面87bは筒状面に形成されている。凸部84の長さ方向途中、すなわち雌型部51の突起76に対応する位置に、該突起76(円板部75)が径方向から挿入される円形の挿入孔84aが形成されている。
【0026】
次に図6乃至図8を中心に、前記長さ変更用金型45,46の説明をする。この場合、2種類の長さ変更用金型45,46を用いている。すなわち図7(a),(b)に示す第一変更用金型45と、図8(a),(b)に示す第二変更用金型46である。第一変更用金型45および第二変更用金型46はともに半環状に形成され、第一変更用金型45および第二変更用金型46の径方向最大厚みt1,t2は同一に設定され、軸方向長さh1,h2は同一に設定されている。また、外径D5,D6はそれぞれ同一で、これら外径D5,D6は、それぞれ大径凹部79の内径D2にほぼ等しく設定されている。第一変更用金型45および第二変更用金型46の内径D7,D8は、それぞれ小径凹部49の内径D1にほぼ等しく設定されている。すなわち、半環状壁72の径方向長さd1と、第一変更用金型45および第二変更用金型46の径方向最大厚みt1,t2とが等しく設定されることになる。なお、第一変更用金型45は、単純な矩形断面に形成されている。
【0027】
第二変更用金型46の内周面の軸方向一方側(当接部83側となる)に、前記膨出部87より大きな径D9を有し、且つ膨出部87より長い軸方向長さh3を有する環状溝88が形成されている。この環状溝88の外周壁面88aは円環状曲面に形成され、外周壁面88aの上部に軸方向他方側(半環状壁72側となる)に向けて縮小する円錐面88bに形成されている。
【0028】
ところで、前記底壁62(63)の下面66(67)から半環状壁72(73)の下面72a(73a)までの距離である大径凹部79の所定の軸方向長さh4とは、第一変更用金型45(第二変更用金型46)軸方向長さh1,h2の径方向厚みt1(t2)の倍数に設定されている長さ、すなわち複数個の第一変更用金型45および第二変更用金型46が重ねて組付けられる長さである。
【0029】
次に、上記金型40を用いて、図1に示す第二集水模型部20を製造する方法を説明する。上述したように、第二集水模型部20の軸方向長さH2は、第一集水模型部5の軸方向長さH1に比べて高く設定さており、第二集水模型部20の軸方向長さH2は、この金型40で製造可能な最長の場合に対応している。この場合、図4,図5,図9に示すように、雌型50,51それぞれに、第一変更用金型45を4個、第二変更用金型46を1個用いている。
【0030】
まず、雌型41を半割状態としたまま、雌型50,51同士を、少なくとも雄型42の凸部84の径D3に突起76の突出量を加えた距離だけ径方向に離間させて対向させておく。そして、4個の第一変更用金型45,45のうちの1個を、雌型部50,51それぞれの半環状壁72,73の下面72a,73aに当接させ、これに残りの3個の第一変更用金型45,45を軸方向一方側から重ね、さらに第二変更用金型46,46を、環状溝88が軸方向他方側になるようにして軸方向一方側から重ねる。このとき、底壁62,63の下面66,67から半環状壁72,73の下面72a,73aまでの距離である大径凹部79の軸方向長さh4は、第一変更用金型45、第二変更用金型46の、軸方向長さh1,h2の倍数に設定されているから、第二変更用金型46,46は、底壁62,63の下面66,67から突出することはなく、この下面66,67と第二変更用金型46,46の下面46a,46aとは面一となる。
【0031】
続けて、雄型42の凸部84が雌型部50,51の半円柱状凹部54,55に径方向で対向するよう、且つ凸部84の先端壁85が、円板状溝80に嵌合する位置まで雄型42を長さ方向他方側に向けて移動させる。このとき、雄型42をその中心軸回りに回動させることで、挿入孔84aの中心が突起76の中心に径方向で一致するよう設定しておく必要がある。また、大径側壁70,71の内側面70a,71aと、凸部84の外側面84bとの間の隙間81(広幅隙間)の径方向外方側に、第一変更用金型45、第二変更用金型46が配置された状態となって、且つ第一変更用金型45、第二変更用金型46の内周面45a,46bと小径側壁68,69の内周面68a,69aとは面一になっている。このようにして、雌型部50,51同士を径方向に接近させ、雌型部50,51の対向合わせ面52,53同士を径方向に接近させて当接させる。そうすると、凸部84の先端壁85が、円板状溝80に嵌合し、突起76が挿入孔84aに嵌合し、当接部83の環状当接壁86が凹部側壁60,61の底壁62,63の下面66,67に当接して、これらが凸部84の挿入方向、すなわち軸方向一方側で係合する。
【0032】
これら雌型42(雌型部50,51)および雄型42の関係を保持した状態で、小径側壁68,69の内周面68a,69a、4個の第一変更用金型45、1個の第二変更用金型46、天壁56の一部、膨出部87、環状当接壁86、突起76で囲まれる略円筒状の隙間81が雄型42と雌型41とで形成される。この隙間81に発泡性の熱可塑性樹脂粒子(以下、樹脂粒子と称する)を充填し、予め金型40に対して水蒸気によって樹脂粒子の発泡に充分な熱を付与しておき、この金型40の温度を所定時間保持し、樹脂粒子を充分に加熱・発泡させて樹脂粒子同士を融着させて、金型40を冷却する。その後、離型を行うが、この場合、図9(a)に示すように、雄型42を保持した状態で、例えば雌型部50に対して(雌型部50を固定しておき)、雌型部51を径方向に離間させ、突起76を挿入孔84aから離型し、続いて図9(b)に示すように、雄型42を雌型部50から挿入した方向と反対側である抜き方向に離型し、第二集水模型部20を雌型部50から取外す。このように、雌型41と雄型42と、複数の第一変更用金型45、第二変更用金型46を用いて長さの長い第二集水模型部20を製造することが可能となる。
【0033】
ところで、消失模型1の第二集水模型部20以外の部分は、従来のこれまで用いられている金型(図示しない)を用いて製造し、第一集水模型部5の上端部に第二集水模型部20の拡幅部30が外嵌するよう組付け、第二集水模型部20の軸方向他方側の上端部に流入口模型部21の嵌合部33が嵌合するよう組付け、横開口10,23それぞれの外周部近傍に形成した環状部11,24に第一横枝管模型部8の基端部11a、第二横枝管模型部25の基端部25aがそれぞれ嵌合するよう組付けることで、管継手用の消失模型1とする。このような消失模型1を用いて管継手を製造するには、消失模型1全面を塗型剤で被覆し、乾燥固化した後に消失模型1周囲を乾燥したバラ砂で固めて鋳型を形成し、消失模型1部分に金属溶湯(溶融金属)を流し込む。
【0034】
このようにすることにより、金属溶湯によって消失模型1が熱分解して金属溶湯と置換されるようになるから、消失模型1の代わりにこれと同じ形状の前記管継手94を容易に製造することができる。すなわち図10に示すように、軸方向長さH4を有する集水部90と、流入口部91と、所定距離Lだけ上下に離間した第一横枝管口部92および第二横枝管口部93とが一体となった管継手94となる。特に、図のように長さの長い集水部90であっても、第二変更用金型46の環状溝88と、雄型42の膨出部87との隙間82(図6参照)によって形成される消失模型1の拡幅部30は、消失模型1から管継手94を製造する際に、消失模型1の第一集水模型部5の端部と一体となってリブ状の拡径部90aとなるから、管継手94として所定の強度を確保することができる。
【0035】
なお、発泡性合成樹脂成形体の材料としての上記樹脂粒子として、例えばポリメチルメタクリレート樹脂等のポリメタクリル系樹脂、ポリスチレン樹脂、ハイインパクトポリスチレン樹脂等のポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂等からなる粒子、あるいはこれら合成樹脂の混合物やモノマーの共重合体からなる粒子に発泡剤を含浸させ、所定倍率に予備発泡させたものが用いられる。これらの樹脂粒子は、耐熱温度が低く、金属溶湯の熱により容易に分解可能なことや、消失時に発生する分解ガス等が溶融金属に悪影響を及ぼさないので好ましい。そして、これら樹脂粒子は、例えば水蒸気による加熱で発泡させて所定形状の発泡性合成樹脂からなる成形体とすることができる。
【0036】
なお、上記の発泡剤としては、沸点が熱可塑性樹脂の軟化点以下であって、常圧でガス状もしくは液状の有機化合物が適しており、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサンなどの炭化水素、ジクロロフルオロメタン等のハロゲン化炭化水素、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル等の低沸点のエーテル化合物等が用いられる。これらの発泡剤は、一種類のみを使用してもよいし、また二種類以上併用してもよい。さらに、予備発泡の発泡倍率は、例えば樹脂粒子の材質等に応じた最適の倍率とすればよい。
【0037】
なお、第二集水模型部20を製造する際、図11に示すようにする方法が考えられる。図1乃至図10では、雄型42の凸部84の長さ方向途中に、雌型部51の突起76が挿入される挿入孔84aを形成した。しかし、第二集水模型部20の所定位置に横開口23を形成するためには、隙間81のうち、横開口23の相当部を埋めればよいことになる。そこで、図11に示す例では、雄型42の凸部84を、挿入孔84aを有しない単なる円筒状(先端壁85は有する)に形成し、雌型部51の突起76に円板部75に代えて凸部84の外周面に沿って当接する湾曲板部76aを形成している。他の金型40の構成は同一であるから、同一の符号を一部付してその説明を省略する。
【0038】
このような金型40を用いて第二集水模型部20を製造する場合、図11(a)に示すように、雌型部50,51の対向合わせ面52,53同士を左右径方向で合わせてから、図11(b)に示すように、雄型42の凸部84を、雌型41の凹部78に挿入することが可能となり、円筒状の隙間81を形成することができ、且つ隙間81のうち、横開口23の相当部が突起76によって埋まる。そして隙間81に発泡性の樹脂粒子を充填し、上記と同様にして第二集水模型部20を製造する。また、雌型41の凹部78へ雄型42の挿抜を行うのに邪魔する部材がないので、雌型部50,51を離型する前であっても雄型42を離型することが可能となる。
【0039】
次に、上記実施形態の消失模型1の第二集水模型部20の高H2を変更する場合の製造方法を説明する。これは、図12に示すように、軸方向長さH2の低い第二集水模型部20を製造する製造方法である。なお図12では、図1の消失模型1に比べて第二集水模型部20の軸方向長さH2が低く設定されている。他の構成は同様であることから、図1と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0040】
この場合、上記とは異なる形状の長さ変更用金型、すなわち第三変更用金型47を併せて使用する。この第三変更用金型47は、図13および図14(a)(b)に示すように、半割状で、外径D10が大径側壁70(大径凹部79)の内径D2にほぼ等しく、内径D11が凸部84の外径D3にほぼ等しく設定されている。第三変更用金型47は、前記膨出部87に嵌合する半環状溝100を長さ方向一方側の径方向内方に有し、半環状溝100を形成してある分だけ、該半環状溝100の断面と同一の断面を有する半環状突起101を長さ方向他方側の径方向内方に有している。この半環状突起101は、膨出部87に代わる部分となる。なお、第三変更用金型47の軸方向長さh5は他の長さ変更用金型45,46と同一である。
【0041】
図13では、第一変更用金型45,45を、雌型部50,51それぞれの半環状壁72,73の下面72a,73aに当接させ、さらに第二変更用金型46,46を、環状溝88が下方になるようにして重ねてある。また、第三変更用金型47のうち、最下位置のものを、その半環状溝100が膨出部87に嵌合するよう嵌込んであり、この第三変更用金型47の半環状突起101に別の第三変更用金型47の半環状溝100が嵌込まれるよう片側計3個の第三変更用金型47が用いられている。最上位の第三変更用金型47の上環状平面102に、第二変更用金型46の下面46a,46aが当接している。この状態では、第二変更用金型46の溝88と、第三変更用金型47の半環状突起101によって隙間82(図14参照)が形成され、この隙間82によって、消失模型1の拡幅部30が形成される。すなわち、上記実施形態の消失模型1の第二集水模型部20の軸方向長さH2に比べて、拡幅部30の位置が上がった分だけ、第二集水模型部20の軸方向長さH2が低く形成されることになる。
【0042】
第一変更用金型45,45を用いず、第二変更用金型46を、雌型部50,51それぞれの半環状壁72,73の下面72a,73aに当接させ、第三変更用金型47を片側で1個ずつ増やし、最上位の第三変更用金型47の上環状平面102に、第二変更用金型46の下面46aを当接させるようにすれば、さらに隙間82の位置は上方へと移動するから、さらに長さの短い第二集水模型部20を製造することができる。他の構成および第二集水模型部20の製造手順は、上記図1乃至図10に示した実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0043】
このように、本発明の上記実施形態によれば、雌型41、雄型42、長さ変更用金型45,46,47といった少ない種類の金型でもって第二集水模型部20を製造することができる。特に、高さの低い第二集水模型部20を製造する場合、用いる長さ変更用金型45,46,47の個数を調整するだけで実施できるので、高さの低い第二集水模型部20を製造する場合では、大きな金型を必要とした従来に比べて楽に、且つ効率よく第二集水模型部20を製造することができる。さらに、第二集水模型部20は長さ変更用金型45,46,47を用いることで所望の長さに製造できるので、第二集水模型部20を切断する必要がなく、第二集水模型部20の端面には金型の面精度が転写されるから、第二集水模型部20の端面の面精度を確保できる。このため、第二集水模型部20を第一集水模型部5に接続した際に、第一集水模型部5の上端面31と環状溝30aの上端面32とが上下方向で確実に当接するから、金属溶湯によって消失模型1が熱分解して金属溶湯と置換されることで消失模型1の代わりに管継手94が製造される。さらに、第二集水模型部20を切断する必要がないから、材料の無駄をほとんど抑えることができる。さらに、第二集水模型部20は長さ変更用金型45,46,47を用いることで所望の長さに製造できるので、横開口23と横開口10との間の所定距離Lも自由に変更可能であり、設計の自由度が向上する。
【0044】
図15乃至図19に別の実施形態を示す。これらの図に示す実施形態では、これら図の順で軸方向長さH2が低くなる消失模型1の第二集水模型部20の製造方法の概略を示す。さらに、図15乃至図18に示す方法で製造される第二集水模型部20では、第一横枝管模型部8、第二横枝管模型部25を接続しないタイプであるため、前記突起76と挿入孔84aを省略している。
【0045】
この実施形態に示す消失模型1の第二集水模型部20の製造方法では、雌型41Aは半割りではなく雌型部50,51同士を合わせた状態として、対向合わせ面52,53は有せず一体物として形成されている。なお雄型42の形状は上記各実施形態と同一である。さらに、長さ変更用金型45A,46A,47Aは半割りではなく、一体物として環状に形成されている。但し、断面形状は半割りの長さ変更用金型45,46,47と同一である。特に、長さ変更用金型45A,46A,47Aのうち、第三変更用金型47Aのみ図19(a)の断面図、図19(b)の底面図に示している。第三変更用金型47Aは、外径D12が大径側壁70の内径D2にほぼ等しく、内径D13が凸部84の外径D3にほぼ等しく設定されている。前記膨出部87に嵌合する環状溝105を長さ方向一方側の径方向内方に有し、環状溝105を形成してある分だけ、環状溝105の断面と同一の断面を有する環状突起106を長さ方向他方側の径方向内方に有している。この環状突起106は、膨出部87に代わる部分である。なお、第三変更用金型47Aの軸方向長さh6は他の長さ変更用金型45A,46Aと同一である。
【0046】
図15では、第二集水模型部20を製造する際、3個の第一変更用金型45A、1個の第二変更用金型46Aを予め雌型41Aの大径凹部79Aに装着し、1個の第三変更用金型47Aを、その環状溝105が膨出部87に嵌合するよう雄型42の凸部84に上方から嵌込んである。第三変更用金型47Aを環状に形成して雄型42に嵌込むことで、雄型42と第三変更用金型47Aとを組品110として一体に扱うことができる。そして、雌型41Aの中心と雄型42の中心とを位置合わせして、雄型42と第三変更用金型47Aとの組品110を、雄型42の凸部84を雌型41Aの凹部78Aに挿入すると、大径凹部79Aの軸方向長さh4は、長さ変更用金型45A,46A,47Aの軸方向長さh6の倍数に設定されているから、第三変更用金型47Aが最下位置にある第二変更用金型46Aに当接し、環状当接壁86が雌型41Aの底壁62Aの下面66Aに当接する。この状態を保持して、小径側壁68Aの内周面68B、第一変更用金型45A、第二変更用金型46A、天壁56A、第三変更用金型47Aで囲まれる円筒状の隙間81に樹脂粒子を充填する。
【0047】
そして、樹脂粒子を充分に加熱・発泡させて樹脂粒子同士を融着させ、金型40を冷却し、離型する。この場合、雄型42は長さ方向一方側(軸方向一方側)に移動させることで簡単に離型することができ、その後、第二集水模型部20を雌型41Aから取外す。
【0048】
図16では、雌型41A側に2個の第一変更用金型45A、1個の第二変更用金型46Aを配置し、雄型42側に2個の第三変更用金型47Aを設置している。この金型40によって製造される第二集水模型部20は、図15の金型40で製造される第二集水模型部20よりも長さが短いものとなる。
【0049】
図17では、雌型41A側に1個の第一変更用金型45A、1個の第二変更用金型46Aを配置し、雄型42側に3個の第三変更用金型47Aを設置している。この金型40によって製造される第二集水模型部20は、図16の金型40で製造される第二集水模型部20よりも長さが短いものとなる。
【0050】
図18では、雌型41A側に第一変更用金型45Aを配置せず、1個の第二変更用金型46Aを配置し、雄型42側に4個の第三変更用金型47Aを設置している。この金型40によって製造される第二集水模型部20は、図17の金型40で製造される第二集水模型部20よりもさらに長さが短いものとなる。
【0051】
これらの場合も、上記実施形態と同様、雌型41および雄型42を共用して、第一変更用金型45A,第二変更用金型46A,第三変更用金型47Aの数を選択しそれら配置を考慮することで、消失模型2の第二集水模型部20の長さを、必要に応じて容易に変更することが可能となり、また、金型の管理も容易になる。他の作用効果は上記実施形態と同様である。なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記各実施形態では、長さ変更用金型の径方向厚みは同一としたがこれに限定されず、これら長さ変更用金型の外径を同一として異なる径方向厚みに設定し、径方向厚みの異なる長さ変更用金型を必要に応じて雄型の凸部と雌型の凹部との隙間に装着することで、成形品の断面形状を変更することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施形態を示す消失模型の全体断面図。
【図2】同じく図1におけるE−E線矢視断面図。
【図3】同じく要部拡大断面図。
【図4】同じく消失模型の第二集水模型部の製造方法を示す断面図。
【図5】同じく消失模型の製造用金型および第二集水模型部の製造方法を示す断面図。
【図6】同じく一部拡大断面図。
【図7】同じく第一変更用金型の拡大構成図。
【図8】同じく第二変更用金型の拡大構成図。
【図9】同じく離型手順の説明図。
【図10】同じく管継手の全体側面図。
【図11】別の雌型形状を示す消失模型の第二集水模型部の製造方法の説明図。
【図12】長さの短い他の消失模型の全体断面図。
【図13】図12に示す消失模型の第二集水模型部の製造方法および金型を示す断面図。
【図14】本発明の第三変更用金型の拡大構成図。
【図15】他の実施形態を示す消失模型の第二集水模型部の製造方法を示す概略断面説明図。
【図16】同じく消失模型の第二集水模型部の製造方法を示す概略断面説明図。
【図17】同じく消失模型の第二集水模型部の製造方法を示す概略断面説明図。
【図18】同じく消失模型の第二集水模型部の製造方法を示す概略断面説明図。
【図19】他の実施形態を示す第三変更用金型の拡大構成図。
【符号の説明】
【0053】
1…消失模型、11…環状部、20…第二集水模型部、30…拡幅部、30a…環状溝、40…金型、41…雌型、42…雄型、45…第一変更用金型、46…第二変更用金型、47…第三変更用金型、50,51…雌型部、52,53…対向合わせ面、83…当接部、78…雌型の凹部、81…隙間、84…凸部、85…先端壁、86…環状当接壁、87…膨出部
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性合成樹脂からなる管状成形体を製造するための製造方法および金型に関する。
【背景技術】
【0002】
発泡性合成樹脂からなる成形体は、その成形性や加工性が容易なことから様々な形状に形成され、広い分野で利用されている。しかし、発泡性合成樹脂からなる成形体は、成形体の形状や大きさに応じた金型を用いて製造されるため、成形体の種類と同じだけの数の金型が必要となり、製造コストが高くなるとともに、管理が大変になる。
【0003】
そこで、所望の成形体の中間部に同一断面形状を有する成形体を少ない数の金型で成形体を形成する方法として、中間部に同一断面形状を有する成形体を成形して、この成形体の断面形状が同一な部分で複数に分割し、これを別の成形体に接合することで管状成形体を所望の長さに製造するといった技術が提案されている。(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平7−16696号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、成形体の一部を切断することにより所望の長さに調節するようにした場合、その切断面を必要な面精度に切断することが難しい。このため、接合部に別部材等を用いて成形体同士を接合することが必要となる。このように、従来の管状成形体の製造方法では、成形体の切断加工を必要とし、また接合部に別部材を取付けるといった工程が必要となり、したがって、管状成形体製造のための作業性が悪いという問題があった。
【0006】
そこで本発明は、上記従来の問題に鑑み、切断加工をすることなく所望の長さに管状成形体を製造することで接合のための別部材を不要として、管状成形体製造のための作業性を向上し得る製造方法および金型の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、発泡性合成樹脂からなる管状成形体の製造方法において、雄型の凸部の外側面と雌型の凹部の内側面との間に形成される隙間に、管状成形体が所望の軸方向長さを有するよう前記隙間の軸方向に長さ変更用金型を装着し、前記隙間に発泡性合成樹脂を充填することを特徴としている。
【0008】
上記製造方法により、管状成形体は、雌型、雄型および長さ変更用金型といった少ない種類の金型でもって製造でき、所望の軸方向長さに製造することができることから、成形体を切断加工する必要がなく、成形体の端面の面精度を金型の面精度に確保することができる。
【0009】
本発明は、隙間に長さ変更用金型を軸方向に重ねて複数個装着することを特徴とする。上記製造方法により、管状成形体は、長さ変更用金型の様々な組合わせにより、所望の軸方向長さを容易に調節することができる。
【0010】
本発明は、発泡性合成樹脂からなる管状成形体の製造用の金型において、凸部を有する雄型と、該雄型の凸部の外側面との間で内側面が隙間をもって外嵌する凹部を有する雌型と、前記隙間に装着されることで該隙間の軸方向長さを変更する長さ変更用金型とを備えていることを特徴としている。
【0011】
上記金型を用いて管状成形体を製造するには、雄型の凸部に、雌型の凹部が外嵌するよう、且つ雄型の凸部の外側面と凹部の内側面との間に隙間をもって両型を配置し、隙間に長さ変更用金型を装着することで、製造される管状成形体が所望の軸方向長さを有するよう設定して、隙間に発泡性合成樹脂を充填するようにする。この金型の構成によれば、雌型、雄型および長さ変更用金型といった少ない種類の金型でもって管状成形体を製造することができるから、成形体を切断加工する必要がなく、管状成形体の端面の面精度を、金型の面精度に確保することができる。
【0012】
本発明の金型における長さ変更用金型は、隙間の軸方向に重ねて複数個装着されるものであることを特徴としている。このような長さ変更用金型の様々な組合わせにより、管状成形体の所望の軸方向長さを容易に調節することができる。
【0013】
なお、成形体としては、管状であれば、その断面形状は円筒状あるいは角筒状の何れでもかまわない。
【発明の効果】
【0014】
本発明の製造方法によれば、雌型の凹部と雄型の凸部との隙間に長さ変更用金型を装着して管状成形体を所望の長さに成形するので、他の成形体を切断加工する必要がなく、接合時に別部材が不要であるため、作業性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態に係る管状成形体の製造方法および金型を、発泡性合成樹脂を用いて製造した管継手製造用消失模型を例に、図面に基づいて説明する。図1は消失模型の全体断面図、図2は図1におけるE−E線矢視断面図、図3は要部拡大断面図、図4および図5は消失模型の製造用金型および製造方法を示す断面図、図6は一部拡大断面図、図7および図8は長さ変更用金型の拡大図、図9は離型の際の説明図、図10は管継手の全体側面図である。
【0016】
図1乃至図3に基づいて、管継手を製造するための管継手製造用消失模型(以下単に「消失模型」という)1の構成を説明する。消失模型1は、下部模型2と、この下部模型2の上部に接続される上部模型3を有する。下部模型2は、その上下方向中間部に位置にする円錐台筒状の中間模型部4と、この中間模型部4の上部に一体に形成される円筒状の第一集水模型部(一方の胴体模型)5と、中間模型部4の下部に一体に形成される排水模型部6とを有する。前記第一集水模型部5の第一外周側壁7の一部に横開口10が形成され、この横開口10の外周部近傍から下部模型2の軸心2aに垂直な方向(横方向)に突出する環状部11が形成されている。この環状部11に第一横枝管模型部8の基端部11aが内嵌するよう組付けられている。第一横枝管模型部8は、下部模型2の軸心2a方向に鉛直な方向に沿い、第一横枝管模型部8は第一集水模型部5の内部に連通する流入孔14を有する。
【0017】
前記上部模型3は、円筒状の第二集水模型部(他方の胴体模型)20と、第二集水模型部20の上端部に嵌合して組付けられる流入口模型部21とを有する。第二集水模型部20の第二外周側壁22の一部に横開口23が形成され、この横開口23の外周部近傍から前記軸心2a方向に垂直な方向に突出する環状部24が形成されている。この環状部24に第二横枝管模型部25の基端部25aが内嵌するよう組付けられている。第二横枝管模型部25は、前記軸心2a方向に鉛直な方向に沿うよう配置され、第二横枝管模型部25は、第二集水模型部20の内部に連通する流入孔15を中心に有する。前記横開口23は、横開口10に対して所定距離Lだけ上方に配置され、したがって第二横枝管模型部25も第一横枝管模型部8に対して所定距離Lだけ上方に配置されている。この所定距離Lは、消失模型1によって製造される管継手(後述する)を使用する家屋等の配管状態によって決められる距離である。なお横開口10は、第一集水模型部5の長さ方向中心に配置形成され、横開口23は、第二集水模型部20の長さ方向中心から上方にずれた位置に配置形成される。また、第一集水模型部5の軸方向長さH1に比べて、第二集水模型部20の軸方向長さH2の方が長く設定さている。
【0018】
第二集水模型部20は、その下端部外周に、前記第一集水模型部5に比べて大径で第一集水模型部5の上端外周部に外嵌する環状の拡幅部30を有する。第一集水模型部5の上端部と、第二集水模型部20の拡幅部30内径側に形成された環状溝30aとが嵌合するよう、第一集水模型部5の上端面31と環状溝30aの上端面32とが上下方向で当接している。流入口模型部21に、第二集水模型部20の上端部に嵌合する嵌合部33が形成され、嵌合部33の中心に立流入孔35が形成されて、流入口模型部21、第二集水模型部20、第一集水模型部5、第一横枝管模型部8、および第二横枝管模型部25が連通されている。
【0019】
次に、図4乃至図8に基づいて、上記構成の消失模型1における第二集水模型部20を製造するための金型40について説明する。金型40は雌型41と、雄型42と、消失模型1のうち第二集水模型部20の一方端部から他方端部までの軸方向長さH2(図1参照)を所望の値に変更するための長さ変更用金型45,46とを備える。
【0020】
図4に示すように、雌型41は半割で一対の雌型部50,51から構成されて、図5(a)に示すように、これら雌型部50,51の対向合わせ面52,53同士を左右方向で(径方向内方に向けて)当接させることで雌型41を構成するものである。
【0021】
一方側の雌型部50は、図5(b)に示すように、平面視矩形の天壁50Aと、図4および図5(a),(b),(c)に示すように、天壁50Aの径方向他方側の上端部から下方に向けて延長される側面視矩形の当接壁58と、当接壁58の下端部の径方向一方側に形成された前記半円柱状凹部54形成用の平面視半円状の凹部天壁56と、凹部天壁56の径方向外周端部に形成された半筒状の凹部側壁60と、凹部側壁60の下端部に径方向外方に向けて延長形成された底壁62とから一体に設けられている。凹部天壁56と凹部側壁60とで、雌型部50の径方向他方部に半円柱状凹部54が形成されている。
【0022】
凹部天壁56に、上方に向けて窪む半円状溝64が形成されている。半円状溝64の上面64aから底壁62の下面66までは、所定の軸方向長さH3に設定されている。所定の軸方向長さH3とは、後述の凸部84の軸方向長さに等しい長さである。凹部側壁60は、上部すなわち軸方向他方側の小径側壁68と、下部すなわち軸方向一方側の大径側壁70と、小径側壁68と大径側壁70とを径方向で連続する半環状壁72(段部に相当する)とから一体的に形成される。すなわち半環状壁72の径方向長さd1は、小径側壁68と大径側壁70の内径d2,d3の差に等しく設定されている(外径の差でも同様)。
【0023】
径方向他方側の雌型部51が、径方向一方側の雌型部50と異なる部分を説明すると、径方向他方側の雌型部51は、前記消失模型1の横開口23を形成するために先端(径方向内方)に円板部75を有する突起76を有する。また、突起76の外周部近傍に、前記環状部24を形成するための環状溝77が形成されている。他の構成は、一方側の雌型部50と同様の構成であるが、天壁50B、当接壁59、半円柱状凹部55、凹部天壁57、凹部側壁61、底壁63、半円状溝65、底壁63の下面67、小径側壁69、大径側壁71、半環状壁73のように、一方側の雌型部50とは異なる符号を付している。
【0024】
当接壁58,59の端面同士、凹部側壁60,61の端面同士を径方向および長さ方向にずれなく合わせることで、図5に示すような雌型41となり、雌型41の中心に、環状壁72,73を境界として、その上方に配置される小径円柱状の小径凹部49と、下方に配置される大径円柱状の大径凹部79とからなる円柱状の凹部78が形成される。半円状溝64,65同士も合わされて円板状溝80となる。大径凹部79は所定の軸方向長さh4を有する。大径凹部79の軸方向長さh4は、底壁62(63)の下面66(67)から半環状壁72(73)の下面72a(73a)までの距離である。図5において、符号D1は小径凹部49の内径であり、D2は大径凹部79(大径側壁70)の内径を示す。
【0025】
次に、雄型42の構成を説明する。雄型42は、大径筒状の当接部83と、この当接部83の中心に立設するよう一体に形成されるとともに雌型41の凹部78に円筒状の所定の隙間81を介して保持される前記凸部84とを有する。凸部84の外側面84bと小径側壁68,69の内周面68a,69aとの間の隙間81(狭幅隙間)の径方向幅d4は製造しようとする第二集水模型部20の厚みとなる。凸部84はその上先端部に、円板状溝80とほぼ等しい径D3(<D1)に形成されて円板状溝80に嵌合する先端壁85を有する。当接部83は、上部に大径凹部79の内径D2より大きい径D4に形成された平板状の環状当接壁86を有する。凸部84と環状当接壁86(当接部83)との連続部に、環状の膨出部87が一体的に形成されている。図6に示すように、膨出部87の断面は略L型に形成され、その上面87aは環状の平面に形成され、その外周面87bは筒状面に形成されている。凸部84の長さ方向途中、すなわち雌型部51の突起76に対応する位置に、該突起76(円板部75)が径方向から挿入される円形の挿入孔84aが形成されている。
【0026】
次に図6乃至図8を中心に、前記長さ変更用金型45,46の説明をする。この場合、2種類の長さ変更用金型45,46を用いている。すなわち図7(a),(b)に示す第一変更用金型45と、図8(a),(b)に示す第二変更用金型46である。第一変更用金型45および第二変更用金型46はともに半環状に形成され、第一変更用金型45および第二変更用金型46の径方向最大厚みt1,t2は同一に設定され、軸方向長さh1,h2は同一に設定されている。また、外径D5,D6はそれぞれ同一で、これら外径D5,D6は、それぞれ大径凹部79の内径D2にほぼ等しく設定されている。第一変更用金型45および第二変更用金型46の内径D7,D8は、それぞれ小径凹部49の内径D1にほぼ等しく設定されている。すなわち、半環状壁72の径方向長さd1と、第一変更用金型45および第二変更用金型46の径方向最大厚みt1,t2とが等しく設定されることになる。なお、第一変更用金型45は、単純な矩形断面に形成されている。
【0027】
第二変更用金型46の内周面の軸方向一方側(当接部83側となる)に、前記膨出部87より大きな径D9を有し、且つ膨出部87より長い軸方向長さh3を有する環状溝88が形成されている。この環状溝88の外周壁面88aは円環状曲面に形成され、外周壁面88aの上部に軸方向他方側(半環状壁72側となる)に向けて縮小する円錐面88bに形成されている。
【0028】
ところで、前記底壁62(63)の下面66(67)から半環状壁72(73)の下面72a(73a)までの距離である大径凹部79の所定の軸方向長さh4とは、第一変更用金型45(第二変更用金型46)軸方向長さh1,h2の径方向厚みt1(t2)の倍数に設定されている長さ、すなわち複数個の第一変更用金型45および第二変更用金型46が重ねて組付けられる長さである。
【0029】
次に、上記金型40を用いて、図1に示す第二集水模型部20を製造する方法を説明する。上述したように、第二集水模型部20の軸方向長さH2は、第一集水模型部5の軸方向長さH1に比べて高く設定さており、第二集水模型部20の軸方向長さH2は、この金型40で製造可能な最長の場合に対応している。この場合、図4,図5,図9に示すように、雌型50,51それぞれに、第一変更用金型45を4個、第二変更用金型46を1個用いている。
【0030】
まず、雌型41を半割状態としたまま、雌型50,51同士を、少なくとも雄型42の凸部84の径D3に突起76の突出量を加えた距離だけ径方向に離間させて対向させておく。そして、4個の第一変更用金型45,45のうちの1個を、雌型部50,51それぞれの半環状壁72,73の下面72a,73aに当接させ、これに残りの3個の第一変更用金型45,45を軸方向一方側から重ね、さらに第二変更用金型46,46を、環状溝88が軸方向他方側になるようにして軸方向一方側から重ねる。このとき、底壁62,63の下面66,67から半環状壁72,73の下面72a,73aまでの距離である大径凹部79の軸方向長さh4は、第一変更用金型45、第二変更用金型46の、軸方向長さh1,h2の倍数に設定されているから、第二変更用金型46,46は、底壁62,63の下面66,67から突出することはなく、この下面66,67と第二変更用金型46,46の下面46a,46aとは面一となる。
【0031】
続けて、雄型42の凸部84が雌型部50,51の半円柱状凹部54,55に径方向で対向するよう、且つ凸部84の先端壁85が、円板状溝80に嵌合する位置まで雄型42を長さ方向他方側に向けて移動させる。このとき、雄型42をその中心軸回りに回動させることで、挿入孔84aの中心が突起76の中心に径方向で一致するよう設定しておく必要がある。また、大径側壁70,71の内側面70a,71aと、凸部84の外側面84bとの間の隙間81(広幅隙間)の径方向外方側に、第一変更用金型45、第二変更用金型46が配置された状態となって、且つ第一変更用金型45、第二変更用金型46の内周面45a,46bと小径側壁68,69の内周面68a,69aとは面一になっている。このようにして、雌型部50,51同士を径方向に接近させ、雌型部50,51の対向合わせ面52,53同士を径方向に接近させて当接させる。そうすると、凸部84の先端壁85が、円板状溝80に嵌合し、突起76が挿入孔84aに嵌合し、当接部83の環状当接壁86が凹部側壁60,61の底壁62,63の下面66,67に当接して、これらが凸部84の挿入方向、すなわち軸方向一方側で係合する。
【0032】
これら雌型42(雌型部50,51)および雄型42の関係を保持した状態で、小径側壁68,69の内周面68a,69a、4個の第一変更用金型45、1個の第二変更用金型46、天壁56の一部、膨出部87、環状当接壁86、突起76で囲まれる略円筒状の隙間81が雄型42と雌型41とで形成される。この隙間81に発泡性の熱可塑性樹脂粒子(以下、樹脂粒子と称する)を充填し、予め金型40に対して水蒸気によって樹脂粒子の発泡に充分な熱を付与しておき、この金型40の温度を所定時間保持し、樹脂粒子を充分に加熱・発泡させて樹脂粒子同士を融着させて、金型40を冷却する。その後、離型を行うが、この場合、図9(a)に示すように、雄型42を保持した状態で、例えば雌型部50に対して(雌型部50を固定しておき)、雌型部51を径方向に離間させ、突起76を挿入孔84aから離型し、続いて図9(b)に示すように、雄型42を雌型部50から挿入した方向と反対側である抜き方向に離型し、第二集水模型部20を雌型部50から取外す。このように、雌型41と雄型42と、複数の第一変更用金型45、第二変更用金型46を用いて長さの長い第二集水模型部20を製造することが可能となる。
【0033】
ところで、消失模型1の第二集水模型部20以外の部分は、従来のこれまで用いられている金型(図示しない)を用いて製造し、第一集水模型部5の上端部に第二集水模型部20の拡幅部30が外嵌するよう組付け、第二集水模型部20の軸方向他方側の上端部に流入口模型部21の嵌合部33が嵌合するよう組付け、横開口10,23それぞれの外周部近傍に形成した環状部11,24に第一横枝管模型部8の基端部11a、第二横枝管模型部25の基端部25aがそれぞれ嵌合するよう組付けることで、管継手用の消失模型1とする。このような消失模型1を用いて管継手を製造するには、消失模型1全面を塗型剤で被覆し、乾燥固化した後に消失模型1周囲を乾燥したバラ砂で固めて鋳型を形成し、消失模型1部分に金属溶湯(溶融金属)を流し込む。
【0034】
このようにすることにより、金属溶湯によって消失模型1が熱分解して金属溶湯と置換されるようになるから、消失模型1の代わりにこれと同じ形状の前記管継手94を容易に製造することができる。すなわち図10に示すように、軸方向長さH4を有する集水部90と、流入口部91と、所定距離Lだけ上下に離間した第一横枝管口部92および第二横枝管口部93とが一体となった管継手94となる。特に、図のように長さの長い集水部90であっても、第二変更用金型46の環状溝88と、雄型42の膨出部87との隙間82(図6参照)によって形成される消失模型1の拡幅部30は、消失模型1から管継手94を製造する際に、消失模型1の第一集水模型部5の端部と一体となってリブ状の拡径部90aとなるから、管継手94として所定の強度を確保することができる。
【0035】
なお、発泡性合成樹脂成形体の材料としての上記樹脂粒子として、例えばポリメチルメタクリレート樹脂等のポリメタクリル系樹脂、ポリスチレン樹脂、ハイインパクトポリスチレン樹脂等のポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂等からなる粒子、あるいはこれら合成樹脂の混合物やモノマーの共重合体からなる粒子に発泡剤を含浸させ、所定倍率に予備発泡させたものが用いられる。これらの樹脂粒子は、耐熱温度が低く、金属溶湯の熱により容易に分解可能なことや、消失時に発生する分解ガス等が溶融金属に悪影響を及ぼさないので好ましい。そして、これら樹脂粒子は、例えば水蒸気による加熱で発泡させて所定形状の発泡性合成樹脂からなる成形体とすることができる。
【0036】
なお、上記の発泡剤としては、沸点が熱可塑性樹脂の軟化点以下であって、常圧でガス状もしくは液状の有機化合物が適しており、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサンなどの炭化水素、ジクロロフルオロメタン等のハロゲン化炭化水素、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル等の低沸点のエーテル化合物等が用いられる。これらの発泡剤は、一種類のみを使用してもよいし、また二種類以上併用してもよい。さらに、予備発泡の発泡倍率は、例えば樹脂粒子の材質等に応じた最適の倍率とすればよい。
【0037】
なお、第二集水模型部20を製造する際、図11に示すようにする方法が考えられる。図1乃至図10では、雄型42の凸部84の長さ方向途中に、雌型部51の突起76が挿入される挿入孔84aを形成した。しかし、第二集水模型部20の所定位置に横開口23を形成するためには、隙間81のうち、横開口23の相当部を埋めればよいことになる。そこで、図11に示す例では、雄型42の凸部84を、挿入孔84aを有しない単なる円筒状(先端壁85は有する)に形成し、雌型部51の突起76に円板部75に代えて凸部84の外周面に沿って当接する湾曲板部76aを形成している。他の金型40の構成は同一であるから、同一の符号を一部付してその説明を省略する。
【0038】
このような金型40を用いて第二集水模型部20を製造する場合、図11(a)に示すように、雌型部50,51の対向合わせ面52,53同士を左右径方向で合わせてから、図11(b)に示すように、雄型42の凸部84を、雌型41の凹部78に挿入することが可能となり、円筒状の隙間81を形成することができ、且つ隙間81のうち、横開口23の相当部が突起76によって埋まる。そして隙間81に発泡性の樹脂粒子を充填し、上記と同様にして第二集水模型部20を製造する。また、雌型41の凹部78へ雄型42の挿抜を行うのに邪魔する部材がないので、雌型部50,51を離型する前であっても雄型42を離型することが可能となる。
【0039】
次に、上記実施形態の消失模型1の第二集水模型部20の高H2を変更する場合の製造方法を説明する。これは、図12に示すように、軸方向長さH2の低い第二集水模型部20を製造する製造方法である。なお図12では、図1の消失模型1に比べて第二集水模型部20の軸方向長さH2が低く設定されている。他の構成は同様であることから、図1と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0040】
この場合、上記とは異なる形状の長さ変更用金型、すなわち第三変更用金型47を併せて使用する。この第三変更用金型47は、図13および図14(a)(b)に示すように、半割状で、外径D10が大径側壁70(大径凹部79)の内径D2にほぼ等しく、内径D11が凸部84の外径D3にほぼ等しく設定されている。第三変更用金型47は、前記膨出部87に嵌合する半環状溝100を長さ方向一方側の径方向内方に有し、半環状溝100を形成してある分だけ、該半環状溝100の断面と同一の断面を有する半環状突起101を長さ方向他方側の径方向内方に有している。この半環状突起101は、膨出部87に代わる部分となる。なお、第三変更用金型47の軸方向長さh5は他の長さ変更用金型45,46と同一である。
【0041】
図13では、第一変更用金型45,45を、雌型部50,51それぞれの半環状壁72,73の下面72a,73aに当接させ、さらに第二変更用金型46,46を、環状溝88が下方になるようにして重ねてある。また、第三変更用金型47のうち、最下位置のものを、その半環状溝100が膨出部87に嵌合するよう嵌込んであり、この第三変更用金型47の半環状突起101に別の第三変更用金型47の半環状溝100が嵌込まれるよう片側計3個の第三変更用金型47が用いられている。最上位の第三変更用金型47の上環状平面102に、第二変更用金型46の下面46a,46aが当接している。この状態では、第二変更用金型46の溝88と、第三変更用金型47の半環状突起101によって隙間82(図14参照)が形成され、この隙間82によって、消失模型1の拡幅部30が形成される。すなわち、上記実施形態の消失模型1の第二集水模型部20の軸方向長さH2に比べて、拡幅部30の位置が上がった分だけ、第二集水模型部20の軸方向長さH2が低く形成されることになる。
【0042】
第一変更用金型45,45を用いず、第二変更用金型46を、雌型部50,51それぞれの半環状壁72,73の下面72a,73aに当接させ、第三変更用金型47を片側で1個ずつ増やし、最上位の第三変更用金型47の上環状平面102に、第二変更用金型46の下面46aを当接させるようにすれば、さらに隙間82の位置は上方へと移動するから、さらに長さの短い第二集水模型部20を製造することができる。他の構成および第二集水模型部20の製造手順は、上記図1乃至図10に示した実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0043】
このように、本発明の上記実施形態によれば、雌型41、雄型42、長さ変更用金型45,46,47といった少ない種類の金型でもって第二集水模型部20を製造することができる。特に、高さの低い第二集水模型部20を製造する場合、用いる長さ変更用金型45,46,47の個数を調整するだけで実施できるので、高さの低い第二集水模型部20を製造する場合では、大きな金型を必要とした従来に比べて楽に、且つ効率よく第二集水模型部20を製造することができる。さらに、第二集水模型部20は長さ変更用金型45,46,47を用いることで所望の長さに製造できるので、第二集水模型部20を切断する必要がなく、第二集水模型部20の端面には金型の面精度が転写されるから、第二集水模型部20の端面の面精度を確保できる。このため、第二集水模型部20を第一集水模型部5に接続した際に、第一集水模型部5の上端面31と環状溝30aの上端面32とが上下方向で確実に当接するから、金属溶湯によって消失模型1が熱分解して金属溶湯と置換されることで消失模型1の代わりに管継手94が製造される。さらに、第二集水模型部20を切断する必要がないから、材料の無駄をほとんど抑えることができる。さらに、第二集水模型部20は長さ変更用金型45,46,47を用いることで所望の長さに製造できるので、横開口23と横開口10との間の所定距離Lも自由に変更可能であり、設計の自由度が向上する。
【0044】
図15乃至図19に別の実施形態を示す。これらの図に示す実施形態では、これら図の順で軸方向長さH2が低くなる消失模型1の第二集水模型部20の製造方法の概略を示す。さらに、図15乃至図18に示す方法で製造される第二集水模型部20では、第一横枝管模型部8、第二横枝管模型部25を接続しないタイプであるため、前記突起76と挿入孔84aを省略している。
【0045】
この実施形態に示す消失模型1の第二集水模型部20の製造方法では、雌型41Aは半割りではなく雌型部50,51同士を合わせた状態として、対向合わせ面52,53は有せず一体物として形成されている。なお雄型42の形状は上記各実施形態と同一である。さらに、長さ変更用金型45A,46A,47Aは半割りではなく、一体物として環状に形成されている。但し、断面形状は半割りの長さ変更用金型45,46,47と同一である。特に、長さ変更用金型45A,46A,47Aのうち、第三変更用金型47Aのみ図19(a)の断面図、図19(b)の底面図に示している。第三変更用金型47Aは、外径D12が大径側壁70の内径D2にほぼ等しく、内径D13が凸部84の外径D3にほぼ等しく設定されている。前記膨出部87に嵌合する環状溝105を長さ方向一方側の径方向内方に有し、環状溝105を形成してある分だけ、環状溝105の断面と同一の断面を有する環状突起106を長さ方向他方側の径方向内方に有している。この環状突起106は、膨出部87に代わる部分である。なお、第三変更用金型47Aの軸方向長さh6は他の長さ変更用金型45A,46Aと同一である。
【0046】
図15では、第二集水模型部20を製造する際、3個の第一変更用金型45A、1個の第二変更用金型46Aを予め雌型41Aの大径凹部79Aに装着し、1個の第三変更用金型47Aを、その環状溝105が膨出部87に嵌合するよう雄型42の凸部84に上方から嵌込んである。第三変更用金型47Aを環状に形成して雄型42に嵌込むことで、雄型42と第三変更用金型47Aとを組品110として一体に扱うことができる。そして、雌型41Aの中心と雄型42の中心とを位置合わせして、雄型42と第三変更用金型47Aとの組品110を、雄型42の凸部84を雌型41Aの凹部78Aに挿入すると、大径凹部79Aの軸方向長さh4は、長さ変更用金型45A,46A,47Aの軸方向長さh6の倍数に設定されているから、第三変更用金型47Aが最下位置にある第二変更用金型46Aに当接し、環状当接壁86が雌型41Aの底壁62Aの下面66Aに当接する。この状態を保持して、小径側壁68Aの内周面68B、第一変更用金型45A、第二変更用金型46A、天壁56A、第三変更用金型47Aで囲まれる円筒状の隙間81に樹脂粒子を充填する。
【0047】
そして、樹脂粒子を充分に加熱・発泡させて樹脂粒子同士を融着させ、金型40を冷却し、離型する。この場合、雄型42は長さ方向一方側(軸方向一方側)に移動させることで簡単に離型することができ、その後、第二集水模型部20を雌型41Aから取外す。
【0048】
図16では、雌型41A側に2個の第一変更用金型45A、1個の第二変更用金型46Aを配置し、雄型42側に2個の第三変更用金型47Aを設置している。この金型40によって製造される第二集水模型部20は、図15の金型40で製造される第二集水模型部20よりも長さが短いものとなる。
【0049】
図17では、雌型41A側に1個の第一変更用金型45A、1個の第二変更用金型46Aを配置し、雄型42側に3個の第三変更用金型47Aを設置している。この金型40によって製造される第二集水模型部20は、図16の金型40で製造される第二集水模型部20よりも長さが短いものとなる。
【0050】
図18では、雌型41A側に第一変更用金型45Aを配置せず、1個の第二変更用金型46Aを配置し、雄型42側に4個の第三変更用金型47Aを設置している。この金型40によって製造される第二集水模型部20は、図17の金型40で製造される第二集水模型部20よりもさらに長さが短いものとなる。
【0051】
これらの場合も、上記実施形態と同様、雌型41および雄型42を共用して、第一変更用金型45A,第二変更用金型46A,第三変更用金型47Aの数を選択しそれら配置を考慮することで、消失模型2の第二集水模型部20の長さを、必要に応じて容易に変更することが可能となり、また、金型の管理も容易になる。他の作用効果は上記実施形態と同様である。なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記各実施形態では、長さ変更用金型の径方向厚みは同一としたがこれに限定されず、これら長さ変更用金型の外径を同一として異なる径方向厚みに設定し、径方向厚みの異なる長さ変更用金型を必要に応じて雄型の凸部と雌型の凹部との隙間に装着することで、成形品の断面形状を変更することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施形態を示す消失模型の全体断面図。
【図2】同じく図1におけるE−E線矢視断面図。
【図3】同じく要部拡大断面図。
【図4】同じく消失模型の第二集水模型部の製造方法を示す断面図。
【図5】同じく消失模型の製造用金型および第二集水模型部の製造方法を示す断面図。
【図6】同じく一部拡大断面図。
【図7】同じく第一変更用金型の拡大構成図。
【図8】同じく第二変更用金型の拡大構成図。
【図9】同じく離型手順の説明図。
【図10】同じく管継手の全体側面図。
【図11】別の雌型形状を示す消失模型の第二集水模型部の製造方法の説明図。
【図12】長さの短い他の消失模型の全体断面図。
【図13】図12に示す消失模型の第二集水模型部の製造方法および金型を示す断面図。
【図14】本発明の第三変更用金型の拡大構成図。
【図15】他の実施形態を示す消失模型の第二集水模型部の製造方法を示す概略断面説明図。
【図16】同じく消失模型の第二集水模型部の製造方法を示す概略断面説明図。
【図17】同じく消失模型の第二集水模型部の製造方法を示す概略断面説明図。
【図18】同じく消失模型の第二集水模型部の製造方法を示す概略断面説明図。
【図19】他の実施形態を示す第三変更用金型の拡大構成図。
【符号の説明】
【0053】
1…消失模型、11…環状部、20…第二集水模型部、30…拡幅部、30a…環状溝、40…金型、41…雌型、42…雄型、45…第一変更用金型、46…第二変更用金型、47…第三変更用金型、50,51…雌型部、52,53…対向合わせ面、83…当接部、78…雌型の凹部、81…隙間、84…凸部、85…先端壁、86…環状当接壁、87…膨出部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡性合成樹脂からなる管状成形体の製造方法において、雄型の凸部の外側面と雌型の凹部の内側面との間に形成される隙間に、管状成形体が所望の軸方向長さを有するよう前記隙間の軸方向に長さ変更用金型を装着し、前記隙間に発泡性合成樹脂を充填することを特徴とする管状成形体の製造方法。
【請求項2】
隙間に長さ変更用金型を軸方向に重ねて複数個装着することを特徴とする請求項1記載の管状成形体の製造方法。
【請求項3】
発泡性合成樹脂からなる管状成形体の製造用の金型において、凸部を有する雄型と、該雄型の凸部の外側面との間で内側面が隙間をもって外嵌する凹部を有する雌型と、前記隙間に装着されることで該隙間の軸方向長さを変更する長さ変更用金型とを備えていることを特徴とする金型。
【請求項4】
長さ変更用金型は、隙間の軸方向に重ねて複数個装着されるものであることを特徴とする請求項3記載の金型。
【請求項1】
発泡性合成樹脂からなる管状成形体の製造方法において、雄型の凸部の外側面と雌型の凹部の内側面との間に形成される隙間に、管状成形体が所望の軸方向長さを有するよう前記隙間の軸方向に長さ変更用金型を装着し、前記隙間に発泡性合成樹脂を充填することを特徴とする管状成形体の製造方法。
【請求項2】
隙間に長さ変更用金型を軸方向に重ねて複数個装着することを特徴とする請求項1記載の管状成形体の製造方法。
【請求項3】
発泡性合成樹脂からなる管状成形体の製造用の金型において、凸部を有する雄型と、該雄型の凸部の外側面との間で内側面が隙間をもって外嵌する凹部を有する雌型と、前記隙間に装着されることで該隙間の軸方向長さを変更する長さ変更用金型とを備えていることを特徴とする金型。
【請求項4】
長さ変更用金型は、隙間の軸方向に重ねて複数個装着されるものであることを特徴とする請求項3記載の金型。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2006−102946(P2006−102946A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−288260(P2004−288260)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】
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