説明

管端シール自動溶接装置

【課題】溶接トーチ本体と、被シール溶接位置との間の距離を常に一定にして自動的にシール溶接することができる管端シール自動溶接装置を提供する。
【解決手段】本体ケース12内に装着されたモータにより回転する回転筒13と、本体ケース12内から前方外部に延設する回転筒13の外側にブラケット14を介して保持される溶接トーチ本体15と、この前方に設けられ、回転筒13と軸芯を一致するように設けられている管芯出し金具17を有する管端シール自動溶接装置10において、溶接トーチ本体15と被シール溶接位置との間の距離を、溶接トーチ本体15のアーク長に比例するアーク電流値と、設定アーク長に比例する基準アーク電流値との差で検出せしめるアーク電流制御装置23と、アーク電流制御装置23の指示に基づいて溶接トーチ本体15を前、後動せしめる駆動装置24を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、熱交換器を構成する多数本の液体流通管の管端部周縁を、これを支持する管端部支持板に円周溶接するための管端シール自動溶接装置に関し、より詳細には、溶接位置を自動的に補正しながらシール溶接して溶接品質を高めることができる管端シール自動溶接装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、火力発電所や、原子力発電所等の設備を構成するための一つとして設けられる熱交換器は、液体を流通させる多数本の液体流通管を備えている。また、熱交換器は、この多数本の液体流通管を支持するための管端部支持板を備えている。そして、この熱交換器は、それぞれの液体流通管の端部を管端部支持板に穿設されている貫通孔内に挿通保持させた状態で、それぞれの液体流通管の端部周縁と、管端部支持板の貫通孔周縁をシール溶接して、多数本の液体流通管を並列状態にして管端部支持板に支持固定する構成となっている。
【0003】
この多数本の液体流通管を並列状態にして管端部支持板に溶接する手段としては、管端シール自動溶接装置が使用されていた。
ここで、図5を参照しながら、既に知られている従来の管端シール自動溶接装置を説明する。図5に示すように、従来の管端シール自動溶接装置50は、下方にハンドグリップ51を備えた本体ケース52を有し、この本体ケース52内部にはモータが内装されており、このモータによって回転駆動される回転筒53が本体ケース52の前方に延設して回転自在に支持されている。本体ケース52の開口縁より外部に突出する回転筒53の外側には、ブラケット54を介して溶接トーチ本体55が固定されている。
【0004】
また、この管端シール自動溶接装置50は、回転筒53の先端内部に回転筒53の軸芯と同一軸芯にして延設する拡管式芯出し金具56を有している。この拡管式芯出し金具56は、軸芯方向に沿って形成される複数個のスリット57を設けた拡管部材58と、この拡管部材58の内部に設けられているテーパ部材を軸芯方向に変位せしめるための回転筒53の軸芯に貫通形成された軸孔内に設けられた作動軸59を有している。そして、拡管式芯出し金具56は、作動軸59の軸芯方向への前進あるいは後退に伴うテーパ部材の変位で拡管部材58の外径が弾性的に変化することで、拡管及び芯出しを行うことができる構造となっている。
【0005】
この管端シール自動溶接装置50を用いて液体流通管Dの端部周縁と、管端部支持板Eの貫通孔周縁Fである被シール溶接位置をシール溶接するには、先ず、上記の拡管式芯出し金具56を液体流通管Dの内部に差し込んだ後、エアーシリンダーを作動させて作動軸59を軸芯方向へ変位させて拡管部材58の外径を拡張させて液体流通管D内周面に圧接させ、液体流通管Dに対する管端シール自動溶接装置50の位置決めを行っている。これにより、管端シール自動溶接装置50の溶接トーチ本体55は、揺動を規制することができるようになる。
【0006】
次いで、上記の管端シール自動溶接装置50は、溶接トーチ本体55のタングステン電極60の先端と、被シール溶接位置の距離を管端シール自動溶接装置50に設けられている調整ネジで上下、前後を目測して手動で調整した後、タングステン電極60に印加されて溶接が開始されることとなる。更に、溶接の開始と同時に、溶接トーチ本体55と共にタングステン電極60の先端は、回転筒53を回転させることでブラケット54を介して被シール溶接位置周縁に沿って回転している。これにより、溶接トーチ本体55は、液体流通管Dの端部周縁と、管端部支持板Eの貫通孔周縁Fとのシール溶接を行っている。
【0007】
しかしながら、液体流通管Dと、管端部支持板Eには、液体流通管Dの管端部支持板Eへの突き出し誤差や、管端部支持板E自体の歪みによって、タングステン電極60の先端から、被シール溶接位置周縁の回転に沿っての被シール溶接位置までの距離が変化している。上記の管端シール自動溶接装置50では、シール溶接開始前にタングステン電極60の先端と、被シール溶接位置の距離を目測して手動で一旦調整した後には、シール溶接中の距離の調整を通常行っていない。溶接トーチ本体55の回転中のタングステン電極60の先端と、被シール溶接位置の距離の微妙な変化は、無視されてシール溶接が行われることとなり、溶接ビート寸法が不均一となって溶接欠陥を発生させやすいという問題がある。また、タングステン電極60の先端と、被シール溶接位置の距離をシール溶接中に作業者が目測して調整を行う場合には、タングステン電極60の回転に伴う目視位置が変化するので正確な目視測定ができず、例え、調整を行ったとしても正確ではなく、溶接ビート寸法が不均一となって溶接欠陥を発生させやすいという問題と共に、溶接作業の能率が極めて低くなり、作業コストのコストアップとなっている。
【0008】
そこで上記従来の管端シール自動溶接装置を用いてシール溶接するに際しては、タングステン電極60の先端と、被シール溶接位置との間の距離を検出する変位センサ及び/又は被シール溶接位置の加熱温度を検出する温度センサを設けた管端シール自動溶接装置を使用することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
【特許文献1】特開2003−88956号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前述したような従来の管端シール自動溶接装置は、次のような問題がある。
特開2003−88956号公報で開示されるような管端シール自動溶接装置は、タングステン電極の先端と、被シール溶接位置との間の距離を変位センサや、温度センサで正確に測定できるものの、その測定値を作業者が見て手動で調整を行うこととなり、シール溶接中の調整には、瞬時の調整に熟練の作業者を必要とする。また、例え、熟練者であっても、測定値の見間違いを発生させる場合があるので、溶接ビート寸法が不均一となって溶接欠陥の発生を招くことがある。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、溶接トーチ本体と、被シール溶接位置との間の距離を常に一定にして自動的にシール溶接することができる管端シール自動溶接装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的に沿う本発明に係る管端シール自動溶接装置は、本体ケース内に装着されたモータにより回転する回転筒と、本体ケース内から外部に延設する回転筒の外側にブラケットを介して保持される溶接トーチ本体と、溶接トーチ本体の前方に設けられ、回転筒と軸芯を一致するように設けられている管芯出し金具を有する管端シール自動溶接装置において、溶接トーチ本体と被シール溶接位置との間の距離を、溶接トーチ本体のアーク長に比例するアーク電圧値と、設定アーク長に比例する基準アーク電圧値との差で検出せしめるアーク電圧制御装置と、このアーク電圧制御装置の指示に基づいて溶接トーチ本体を前、後動せしめる駆動装置を具備する。
【0012】
ここで、上記の管端シール自動溶接装置は、アーク電圧制御装置が溶接トーチ本体のアーク発生時の高周波ノイズを防止するための高周波フィルターを有し、高周波フィルターを通してアーク電圧値を計測するのがよい。
【0013】
また、上記の管端シール自動溶接装置は、駆動装置が正逆回転自在の駆動モータと、駆動モータで回転する送りネジと、送りネジの回転で移動するスライドブロックを有し、アーク電圧制御装置の指示に基づいて駆動モータが起動して送りネジが回転し、スライドブロックに連接するブラケットを介して溶接トーチ本体が前、後動するのがよい。
【0014】
前記目的に沿う本発明に係る他の管端シール自動溶接装置は、本体ケース内に装着されたモータにより回転する回転筒と、本体ケース内から前方外部に延設する回転筒の外側にブラケットを介して保持される溶接トーチ本体と、溶接トーチ本体の前方に設けられ、回転筒と軸芯を一致するように設けられている管芯出し金具を有する管端シール自動溶接装置において、溶接トーチ本体と被シール溶接位置との間の距離を、溶接トーチ本体のアーク長に比例するアーク電流値と、設定アーク長に比例する基準アーク電流値との差で検出せしめるアーク電流制御装置と、このアーク電流制御装置の指示に基づいて溶接トーチ本体を前、後動せしめる駆動装置を具備する。
【0015】
ここで、上記の他の管端シール自動溶接装置は、アーク電流制御装置が溶接トーチ本体のアーク発生時の高周波ノイズを防止するための高周波フィルターを有し、高周波フィルターを通してアーク電流値を計測するのがよい。
【0016】
また、上記の他の管端シール自動溶接装置は、駆動装置が正逆回転自在の駆動モータと、駆動モータで回転する送りネジと、送りネジの回転で移動するスライドブロックを有し、アーク電流制御装置の指示に基づいて駆動モータが起動して送りネジが回転し、スライドブロックに連接するブラケットを介して溶接トーチ本体が前、後動するのがよい。
【発明の効果】
【0017】
請求項1又はこれに従属する請求項2又は3記載の管端シール自動溶接装置は、溶接トーチ本体と被シール溶接位置との間の距離を、溶接トーチ本体のアーク長に比例するアーク電圧値と、設定アーク長に比例する基準アーク電圧値との差で検出せしめるアーク電圧制御装置と、アーク電圧制御装置の指示に基づいて溶接トーチ本体を前、後動せしめる駆動装置を具備するので、溶接電流が一定で、各部の内部接触抵抗値や、アーク現象等が一定環境の場合のアーク電圧値の変化はアーク長変化に比例することで、予め設定した基準電圧値と、現在のアーク電圧値の差が計測でき、この値を基準電圧値に戻すように指示するアーク電圧制御によって、溶接トーチ本体が自動的に前、後動する駆動で溶接トーチ本体の先端と被シール溶接位置との間の距離を常に一定にしてシール溶接ができ、溶接ビート寸法を均一にして溶接欠陥を発生させないと共に、溶接作業の能率を向上させることができる管端シール自動溶接装置を提供できる。
【0018】
特に、請求項2記載の管端シール自動溶接装置は、アーク電圧制御装置が溶接トーチ本体のアーク発生時の高周波ノイズを防止するための高周波フィルターを有し、高周波フィルターを通してアーク電圧値を計測するので、アーク発生時の高周波ノイズを除去することができ、基準電圧値と、現在のアーク電圧値の正確な差が計測でき、溶接トーチ本体と被シール溶接位置との距離を正確に一定にしてシール溶接ができ、溶接ビート寸法を均一にして溶接欠陥を発生させないと共に、溶接作業の能率を向上させることができる管端シール自動溶接装置を提供できる。
【0019】
また、特に、請求項3記載の管端シール自動溶接装置は、駆動装置が正逆回転自在の駆動モータと、駆動モータで回転する送りネジと、送りネジの回転で移動するスライドブロックを有し、アーク電圧制御装置の指示に基づいて駆動モータが起動して送りネジが回転し、スライドブロックに連接するブラケットを介して溶接トーチ本体が前、後動するので、比較的簡単な駆動装置で迅速且つ正確に溶接トーチ本体と被シール溶接位置との距離を一定にすることができ、溶接ビート寸法を均一にして溶接欠陥を発生させないシール溶接が可能であると共に、溶接作業の能率を向上させることができる管端シール自動溶接装置を提供できる。
【0020】
請求項3又はこれに従属する請求項4又は5記載の管端シール自動溶接装置は、溶接トーチ本体と被シール溶接位置との間の距離を、溶接トーチ本体のアーク長に比例するアーク電流値と、設定アーク長に比例する基準アーク電流値との差で検出せしめるアーク電流制御装置と、アーク電流制御装置の指示に基づいて溶接トーチ本体を前、後動せしめる駆動装置を具備するので、溶接電流が一定で、各部の内部接触抵抗値や、アーク現象等が一定環境の場合のアーク電流値の変化はアーク長変化に比例することで、予め設定した基準電流値と、現在のアーク電流値の差が計測でき、この値を基準電流値に戻すように指示するアーク電流制御によって、溶接トーチ本体が自動的に前、後動する駆動で溶接トーチ本体の先端と被シール溶接位置との間の距離を常に一定にしてシール溶接ができ、溶接ビート寸法を均一にして溶接欠陥を発生させないと共に、溶接作業の能率を向上させることができる管端シール自動溶接装置を提供できる。
【0021】
特に、請求項4記載の管端シール自動溶接装置は、アーク電流制御装置が溶接トーチ本体のアーク発生時の高周波ノイズを防止するための高周波フィルターを有し、高周波フィルターを通してアーク電流値を計測するので、アーク発生時の高周波ノイズを除去することができ、基準電流値と、現在のアーク電流値の正確な差が計測でき、溶接トーチ本体と被シール溶接位置との距離を正確に一定にしてシール溶接ができ、溶接ビート寸法を均一にして溶接欠陥を発生させないと共に、溶接作業の能率を向上させることができる管端シール自動溶接装置を提供できる。
【0022】
また、特に、請求項5記載の管端シール自動溶接装置は、駆動装置が正逆回転自在の駆動モータと、駆動モータで回転する送りネジと、送りネジの回転で移動するスライドブロックを有し、アーク電流制御装置の指示に基づいて駆動モータが起動して送りネジが回転し、スライドブロックに連接するブラケットを介して溶接トーチ本体が前、後動するので、比較的簡単な駆動装置で迅速且つ正確に溶接トーチ本体と被シール溶接位置との距離を一定にすることができ、溶接ビート寸法を均一にして溶接欠陥を発生させないシール溶接が可能であると共に、溶接作業の能率を向上させることができる管端シール自動溶接装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態について説明し、本発明の理解に供する。
ここに、図1は本発明の一実施の形態に係る管端シール自動溶接装置の説明図、図2は同管端シール自動溶接装置の高周波フィルター取り付け状態の説明図、図3は同管端シール自動溶接装置の駆動装置の説明図、図4は本発明の他の実施の形態に係る管端シール自動溶接装置の説明図である。
【0024】
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係る管端シール自動溶接装置10は、下方に作業者が把持して操作するためのハンドグリップ11を備えた本体ケース12を有している。この本体ケース12内部には、図示しないが回転筒13を駆動するためのモータが内装されており、このモータによって回転駆動される回転筒13が本体ケース12の前方に延設して回転自在に支持されている。本体ケース12の前方開口縁より外部に突出して延設する回転筒13の外側には、ブラケット14を介して溶接トーチ本体15が保持されている。
【0025】
また、この管端シール自動溶接装置10は、溶接トーチ本体15の前方に延設して設けられ、回転筒13の先端内部に回転筒13の軸芯と、軸芯を一致するように設けられている作動軸16の先端部に拡管式芯出し金具17を有している。また、この管端シール自動溶接装置10は、作動軸16の本体ケース12の後方に延設する尾端部に、外部から挿入される圧縮空気で作動するエアーシリンダー18を連結させて有している。このエアーシリンダー18の作動によって、拡管式芯出し金具17は、作動軸16が軸芯方向に前進動してテーパ部材の変位で拡管部材19の外径が拡大動作し、シール溶接すべき液体流通管Aの内周面に圧接することで固定されるようになっている。また、これとは逆に、拡管式芯出し金具17は、エアーシリンダー18の停止による作動軸16の軸芯方向の後退による拡管部材19の外径が収縮動作し、液体流通管Aの内部から引き出すことができるようになっている。
【0026】
なお、この拡管式芯出し金具17の機構は、管端シール自動溶接装置10を液体流通管Aに対して位置決めするためのものであって、上記のようなエアーシリンダー18で拡管部材19の外径を拡大させる方式以外に、例えば、レバーで拡管部材19の外径を拡大させる方式等があり、その方式は既に従来から公知であるので、詳細な構造等の説明は省略する。また、上記の管端シール自動溶接装置10には、回転筒13を所望する設定で駆動させたり、溶接トーチ本体15を所望条件で作動させたりするため等の装置をまとめて格納させたシール溶接制御盤20を本体ケース12のハンドグリップ11下方に設ける制御ケーブル接続部21にケーブルで電気的に連結させて設けているが、これらは既に従来から公知であるので、詳細な説明は省略する。更に、上記の管端シール自動溶接装置10には、シール溶接制御盤20からの指示で、本体ケース12内をラジエータ強制空冷するための冷却水を循環させるための冷却水循環装置(図示せず)や、溶接トーチ本体15にガスを供給するためのガス供給装置(図示せず)をハンドグリップ11前方に設けるパワーケーブル接続部22にケーブル管で連結させて設けているが、これらは既に従来から公知であるので、詳細な説明は省略する。
【0027】
上記の管端シール自動溶接装置10は、溶接トーチ本体15と、液体流通管Aの端部周縁と管端部支持板Bの貫通孔周縁Cである被シール溶接位置との間の距離を、溶接トーチ本体15のアーク長に比例するアーク電圧値と、予めシール溶接制御盤20で設定する設定アーク長に比例する基準アーク電圧値との差で検出することができるアーク電圧制御装置23をシール溶接制御盤20に連結させて有している。
【0028】
また、上記の管端シール自動溶接装置10は、アーク電圧制御装置23の指示に基づいて、アーク電圧制御装置23と、パワーケーブル接続部22を介して電気的に接続された溶接トーチ本体15を、ブラケット14を介して前、後動させることができる駆動装置24を有している。この駆動装置24は、溶接トーチ本体15のアーク長に比例するその時のアーク電圧値を読み取って、予めシール溶接制御盤20で設定する設定アーク長に比例する基準アーク電圧値になるように溶接トーチ本体15を前、後動させることで、溶接トーチ本体15と、被シール溶接位置との間の距離を設定アーク長になるように自動的に、且つ迅速に駆動するようになっている。
【0029】
上記の管端シール自動溶接装置10は、溶接トーチ本体15で被シール溶接位置を溶接するために、本体ケース12の後部に取り付けられている溶接ワイヤ巻き取りドラム25の溶接ワイヤ26をワイヤ送りモータ27で送り出している。そして、溶接ワイヤ26は、図示しないが、回転筒13と連動できるように本体ケース12の内部を通過して本体ケース12の前方の回転筒13の外側に取り出し、更に、先端部を液体流通管Aの端部周縁と管端部支持板Bの貫通孔周縁Cである被シール溶接位置の近傍まで延設させている。
【0030】
ここで、図2を参照しながら、本発明の一実施の形態に係る管端シール自動溶接装置10の高周波フィルター取り付け状態を説明する。図2は管端シール自動溶接装置10の高周波フィルター取り付け状態の概念図である。
図2に示すように、上記の管端シール自動溶接装置10においては、アーク電圧制御装置23が溶接トーチ本体15のアーク発生時の高周波ノイズで本来のアーク電圧値と異なる数値を示すことを防止するために、アーク発生時の高周波ノイズを防止するための高周波フィルター28を有するのがよい。この高周波フィルター28は、アーク電圧制御装置23と結線し、高周波フィルター28のプラス端子を溶接トーチ本体15と結線し、高周波フィルター28のマイナス端子をアースさせている。これにより、アーク長に比例するその時のアーク電圧値は、この高周波フィルター28を通して計測しているので、アーク長に比例する正確なアーク電圧値をアーク電圧制御装置23で計測できる。そして、この正確なアーク電圧値は、アーク電圧制御装置23から駆動装置24に正確な前、後動の距離を指示することができる。なお、この計測のためには、本体ケース12と、管端部支持板Bとの間を結線させて電圧調整が計れるようにしている。
【0031】
次に、図3を参照しながら、本発明の一実施の形態に係る管端シール自動溶接装置10の駆動装置24を説明する。
図3に示すように、上記の管端シール自動溶接装置10においては、駆動装置24が正逆回転自在の駆動モータ29と、この駆動モータ29で回転する送りネジ30と、この送りネジ30の回転で移動するスライドブロック31を有している。送りネジ30は、駆動モータ29の回転軸方向に延設して設けられている。スライドブロック31は、中央部に送りネジ30のネジ山に対応するネジ溝が設けられた貫通孔を有すると共に、貫通孔の両側のそれぞれにガイドブッシュを備えた挿通孔を設けている。そして、このスライドブロック31には、ネジ溝を設けた貫通孔に送りネジ30が通されると共に、ガイドブッシュを備えた挿通孔にガイドポスト32が通される。更に、送りネジ30の先端部分と、根本部分は、それぞれベアリングを介して回動自在に支持板33で支持すると共に、それぞれのガイドポスト32の両端を支持板33にナットで締め付けて固定している。
【0032】
そして、この駆動装置24は、アーク電圧制御装置23の指示に基づき、駆動モータ29が起動して送りネジ30が回転し、この送りネジ30のネジ山に嵌合するネジ溝を設けたスライドブロック31を前動、あるいは後動するようになっている。上記のスライドブロック31は、ガイドブッシュを介して摺動自在のガイドポスト32に支持されているので、送りネジ30の回転開始から正確な移動を確保することができるようになっている。溶接トーチ本体15は、このスライドブロック31を前動、あるいは後動することによって、スライドブロック31に連接するブラケット14を介して正確で、精度よく、且つ迅速に前動、あるいは後動することができるようになっている。
【0033】
次いで、図4を参照しながら、本発明の他の実施の形態に係る管端シール自動溶接装置10aを説明する。
図4に示すように、管端シール自動溶接装置10aは、機構的には管端シール自動溶接装置10と同様の構成からなっている。この管端シール自動溶接装置10aは、管端シール自動溶接装置10と同様に、ハンドグリップ11を備えた本体ケース12内に装着されたモータにより回転する回転筒13と、本体ケース12内から前方外部に延設する回転筒13の外側にブラケット14を介して保持される溶接トーチ本体15と、この溶接トーチ本体15の前方に設けられ、回転筒13と軸芯を一致するように設けられている芯出し金具17を有している。
【0034】
上記の管端シール自動溶接装置10aは、溶接トーチ本体15と、液体流通管Aの端部周縁と管端部支持板Bの貫通孔周縁Cである被シール溶接位置との間の距離を、溶接トーチ本体15のアーク長に比例するアーク電流値と、予めシール溶接制御盤20aで設定する設定アーク長に比例する基準アーク電流値との差で検出することができるアーク電流制御装置34をシール溶接制御盤20aに連結させて有している。また、上記の管端シール自動溶接装置10aは、アーク電流制御装置34の指示に基づいて、アーク電流制御装置34と、パワーケーブル接続部22を介して電気的に接続された溶接トーチ本体15を、ブラケット14を介して前、後動させることができる駆動装置24を有している。
【0035】
この駆動装置24は、溶接トーチ本体15のアーク長に比例するその時のアーク電流値を読み取って、予めシール溶接制御盤20aで設定する設定アーク長に比例する基準アーク電流値になるように溶接トーチ本体15を前、後動させることで、溶接トーチ本体15と、被シール溶接位置との間の距離を設定アーク長になるように自動的に、且つ迅速に駆動するようになっている。なお、管端シール自動溶接装置10aは、前記の管端シール自動溶接装置10と異なる部分がアーク電圧制御装置23をアーク電流制御装置34としていることであるので、その他の部分の説明を省略する。
【0036】
上記の管端シール自動溶接装置10aにおいては、アーク電流制御装置32が管端シール自動溶接装置10のアーク電圧制御装置23と同様に、溶接トーチ本体15のアーク発生時の高周波ノイズを防止するための高周波フィルター28(図2参照)を有し、高周波フィルター28を通してアーク電流値を計測するのがよい。
また、上記の管端シール自動溶接装置10aにおいては、駆動装置24が管端シール自動溶接装置10の駆動装置24と同様に、図3に示すように、正逆回転自在の駆動モータ29と、駆動モータ29で回転する送りネジ30と、送りネジ30の回転で移動するスライドブロック31を有し、アーク電流制御装置34の指示に基づいて駆動モータ29が起動して送りネジ30が回転し、スライドブロック31に連接するブラケット14を介して溶接トーチ本体15が前、後動するのがよい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の管端シール自動溶接装置は、火力発電用、原子力発電用、ボイラー用等の熱交換器のために、液体流通管と管端部支持板をシール溶接するのに好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施の形態に係る管端シール自動溶接装置の説明図である。
【図2】同管端シール自動溶接装置の高周波フィルター取り付け状態の説明図である。
【図3】同管端シール自動溶接装置の駆動装置の説明図である。
【図4】本発明の他の実施の形態に係る管端シール自動溶接装置の説明図である。
【図5】従来の管端シール自動溶接装置の説明図である。
【符号の説明】
【0039】
10、10a:管端シール自動溶接装置、11:ハンドグリップ、12:本体ケース、13:回転筒、14:ブラケット、15:溶接トーチ本体、16:作動軸、17:芯出し金具、18:エアーシリンダー、19:拡管部材、20、20a:シール溶接制御盤、21:制御ケーブル接続部、22:パワーケーブル接続部、23:アーク電圧制御装置、24:駆動装置、25:溶接ワイヤ巻き取りドラム、26:溶接ワイヤ、27:ワイヤ送りモータ、28:高周波フィルター、29:駆動モータ、30:送りネジ、31:スライドブロック、32:ガイドポスト、33:支持板、34:アーク電流制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体ケース内に装着されたモータにより回転する回転筒と、前記本体ケース内から前方外部に延設する前記回転筒の外側にブラケットを介して保持される溶接トーチ本体と、該溶接トーチ本体の前方に設けられ、前記回転筒と軸芯を一致するように設けられている管芯出し金具を有する管端シール自動溶接装置において、
前記溶接トーチ本体と被シール溶接位置との間の距離を、前記溶接トーチ本体のアーク長に比例するアーク電圧値と、設定アーク長に比例する基準アーク電圧値との差で検出せしめるアーク電圧制御装置と、該アーク電圧制御装置の指示に基づいて前記溶接トーチ本体を前、後動せしめる駆動装置を具備することを特徴とする管端シール自動溶接装置。
【請求項2】
請求項1記載の管端シール自動溶接装置において、前記アーク電圧制御装置が前記溶接トーチ本体のアーク発生時の高周波ノイズを防止するための高周波フィルターを有し、該高周波フィルターを通して前記アーク電圧値を計測することを特徴とする管端シール自動溶接装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の管端シール自動溶接装置において、前記駆動装置が正逆回転自在の駆動モータと、該駆動モータで回転する送りネジと、該送りネジの回転で移動するスライドブロックを有し、前記アーク電圧制御装置の指示に基づいて前記駆動モータが起動して前記送りネジが回転し、前記スライドブロックに連接する前記ブラケットを介して前記溶接トーチ本体が前、後動することを特徴とする管端シール自動溶接装置。
【請求項4】
本体ケース内に装着されたモータにより回転する回転筒と、前記本体ケース内から前方外部に延設する前記回転筒の外側にブラケットを介して保持される溶接トーチ本体と、該溶接トーチ本体の前方に設けられ、前記回転筒と軸芯を一致するように設けられている管芯出し金具を有する管端シール自動溶接装置において、
前記溶接トーチ本体と被シール溶接位置との間の距離を、前記溶接トーチ本体のアーク長に比例するアーク電流値と、設定アーク長に比例する基準アーク電流値との差で検出せしめるアーク電流制御装置と、該アーク電流制御装置の指示に基づいて前記溶接トーチ本体を前、後動せしめる駆動装置を具備することを特徴とする管端シール自動溶接装置。
【請求項5】
請求項4記載の管端シール自動溶接装置において、前記アーク電流制御装置が前記溶接トーチ本体のアーク発生時の高周波ノイズを防止するための高周波フィルターを有し、該高周波フィルターを通して前記アーク電流値を計測することを特徴とする管端シール自動溶接装置。
【請求項6】
請求項4又は5記載の管端シール自動溶接装置において、前記駆動装置が正逆回転自在の駆動モータと、該駆動モータで回転する送りネジと、該送りネジの回転で移動するスライドブロックを有し、前記アーク電流制御装置の指示に基づいて前記駆動モータが起動して前記送りネジが回転し、前記スライドブロックに連接する前記ブラケットを介して前記溶接トーチ本体が前、後動することを特徴とする管端シール自動溶接装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−113102(P2009−113102A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−291426(P2007−291426)
【出願日】平成19年11月9日(2007.11.9)
【出願人】(507193939)有限会社 エルアンドダブル (1)
【出願人】(507371607)シナジーエンジニアリング株式会社 (1)
【Fターム(参考)】