説明

管継手および管継手を用いた配管構造

【課題】自重が作用するような立て管であっても、施工時に熱伸縮を吸収する伸縮代を確実に確保して管を接続する。
【解決手段】一端部に受け口2が形成される一方、他端部に挿し口3が形成され、また、受け口2の端部に環状パッキン4が配設されたソケット状の管継手において、受け口2の内部に管の未挿入代に相当する長さの水溶性材料からなるスペーサー5が配設されて構成される。これにより、受け口2に管を挿入すれば、挿入した管の端面がスペーサー5に当接し、それ以上の管の挿入が規制される。施工が終了し、管内を水が流れると、水溶性材料からなるスペーサー5が溶解し、下流に流出する。このため、受け口2の内奥部と管の端面との間にスペーサー5の長さに相当する間隔の未挿入代を確保でき、管の伸縮を吸収することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、熱伸縮を吸収する管継手および管継手を用いた配管構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、外気温の変化や内部を流れる流体の温度変化によって管に熱伸縮(熱応力)が発生し、それによって管路が破損するのを防止するため、熱伸縮を吸収できる管継手が提案されている。このような管継手100としては、図9および図10に示すように、一端部に受け口101が形成される一方、他端部に挿し口102が形成され、また、受け口101の端部に、挿入される管Pを止水する環状パッキン103が配設されて構成され、受け口101に管Pを挿入した後、受け口101に固定バンド(図示せず)を装着して管Pを固定するようにしている。このようなソケット状の管継手100の受け口101に接続対象の管Pの一端部を挿入する際には、熱膨張による伸縮を考慮して、受け口101の内奥部までの間に設定された未挿入代L1を確保して管Pの端面が位置するように管Pを挿入する。これにより、管Pの伸びを管Pの端面から受け口101の内奥部までの距離(未挿入代)L1で吸収する一方、管Pの縮みを管Pの端面から環状パッキン103までの距離(挿入代)L2で吸収するようにしている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
このような管継手100においては、受け口101に接続対象の管Pを挿入する際、受け口101の内奥部から挿入した管Pの端面との間に適正な未挿入代L1を確保したか否かを外部から把握することができない。このため、管Pの端面から受け口101の内奥部までの間に未挿入代L1に相当する間隔を確保できるように、作業者は、施工現場において、接続対象の管Pの一端部外周面に未挿入代L1を確保する長さの挿入標線を記入し、受け口101の端縁と管Pに記入した挿入標線とが合致する位置まで管Pを挿入することにより、管継手100に対する管Pの適正な未挿入代L1を確保し、その後、受け口101に固定バンドを装着して挿入した管Pを固定するようにしている。
【特許文献1】実公昭62−24157号公報
【特許文献2】特開昭58−54291号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、集合住宅において、オール電化住宅の普及が進み、給湯方式として、CO2 冷媒ヒートポンプ給湯機や、潜熱回収型給湯機の普及が進んでいるが、貯湯槽内で昇温したお湯は、膨張水となって排水されるため、貯湯槽には、膨張水やドレン排水を排水する排水横枝管が接続されている。そして、集合住宅などにおいて、バルコニーに貯湯槽を設置した場合には、排水横枝管、管継手とともに専用の立て管が上階から下階にわたってバルコニーに配設され、また、メーターボックス内に貯湯槽を設置した場合には、排水横枝管、管継手とともに専用の立て管が上階から下階にわたってメーターボックスに配設される。
【0005】
ここで、貯湯槽から排水される膨張水やドレン排水の温度は、高温となるおそれがあるため、膨張水やドレン排水が流れる排水横枝管や立て管は熱膨張することになる。この場合、排水横枝管や立て管は熱膨張に伴う伸びを許容させる必要がある。
【0006】
上階から下階にわたって立て管を接続するに際して、管継手を利用して接続する場合、作業者が立て管に挿入標線を記入し、管継手の受け口にその端縁と挿入標線が合致する位置まで立て管を挿入したとしても、固定バンドで管を固定するまでの間に、立て管が自重によって降下し、受け口の内奥部まで入りすぎてしまうことがあった。このように、立て管が自重によって挿入標線を超えて降下した場合、熱膨張による立て管の伸びを吸収することができなくなり、立て管を含む管路系が破損するおそれがある。
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、自重が作用するような立て管であっても、施工時に熱伸縮を吸収する伸縮代を確実に確保して管を接続することのできる管継手を提供するものである。また、本発明は、外気温の変化や内部を流れる流体の温度変化によって立て管に熱伸縮が発生したとしても、立て管の伸び縮みを吸収して配管系統の破損を確実に防止することのできる管継手を用いた配管構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の管継手は、一端部に受け口が形成される一方、他端部に挿し口が形成され、また、受け口の端部に環状パッキンが配設されたソケット状の管継手において、受け口の内部に管の未挿入代に相当する長さの水溶性材料からなるスペーサーが配設されてなり、受け口に対する管の挿入を管に当接するスペーサーによって規制することを特徴とするものである。
【0009】
本発明によれば、受け口に管を挿入した際、挿入した管の端面がスペーサーに当接し、それ以上の管の挿入が規制される。施工が終了し、管内を水が流れると、水溶性材料からなるスペーサーが溶解して流出する。したがって、受け口の内奥部と管の端面との間にスペーサーに相当する空間(未挿入代)を確保することができる。
【0010】
この結果、長手方向に管をソケット状の管継手によって接続する際において、外気温の変化や内部を流れる流体の温度変化によって管に熱伸縮が発生したとしても、管の伸びを管の端面から受け口の内奥部までの未挿入代によって確実に吸収することができ、また、管の縮みを管の端面から環状パッキンまでの挿入代によって確実に吸収することができる。
【0011】
本発明の管継手は、両端部に受け口が形成された曲管状本管部からなるエルボ状の管継手において、本管部の一端部側受け口に請求項1記載の管継手の挿し口が挿入されて一体に接着されることを特徴とするものである。
【0012】
本発明によれば、エルボ状の管継手における曲管状本管部の一端部側受け口に接着された請求項1記載の管継手の受け口に管を挿入した際、挿入した管の端面がスペーサーに当接し、それ以上の管の挿入が規制される。施工が終了し、管内を水が流れると、水溶性材料からなるスペーサーが溶解して流出する。したがって、エルボ状の管継手における曲管状本管部の一端部側受け口に接着された請求項1記載の管継手の受け口の内奥部と管の端面との間にスペーサーに相当する空間(未挿入代)を確保することができる。
【0013】
この結果、管をエルボ状の管継手によって方向を変えて接続する際において、外気温の変化や内部を流れる流体の温度変化によって管に熱伸縮が発生したとしても、管の伸びを管の端面から請求項1記載の管継手の受け口の内奥部までの未挿入代によって確実に吸収することができ、また、管の縮みを管の端面から環状パッキンまでの挿入代によって確実に吸収することができる。しかも、エルボ状の管継手と熱伸縮を吸収可能なソケット状の管継手を接着することによって熱伸縮を吸収可能なエルボ状の管継手を簡単に製造することができる。
【0014】
本発明の管継手は、両端部に受け口が形成された曲管状本管部からなり、本管部の一端部側受け口の端部に環状パッキンが配設されたエルボ状の管継手において、本管部の一端部側受け口の内部に管の未挿入代に相当する長さの水溶性材料からなるスペーサーが配設されてなり、一端部側受け口に対する管の挿入を管に当接するスペーサーによって規制することを特徴とするものである。
【0015】
本発明によれば、曲管状本管部の一端部側受け口に管を挿入した際、挿入した管の端面がスペーサーに当接し、それ以上の管の挿入が規制される。施工が終了し、管内を水が流れると、水溶性材料からなるスペーサーが溶解して流出する。したがって、一端部側受け口の内奥部と管の端面との間にスペーサーに相当する空間(未挿入代)を確保することができる。
【0016】
この結果、管をエルボ状の管継手によって方向を変えて接続する際において、外気温の変化や内部を流れる流体の温度変化によって管に熱伸縮が発生したとしても、管の伸びを管の端面から一端部側受け口の内奥部までの未挿入代によって確実に吸収することができ、また、管の縮みを管の端面から環状パッキンまでの挿入代によって確実に吸収することができる。しかも、熱伸縮を吸収可能なエルボ状の管継手をコンパクトな大きさに製造することができ、設置スペースの制約を減少させることができる。
【0017】
本発明の管継手は、両端部に受け口が形成された直管状本管部および該本管部から分岐されて端部に受け口が形成された分岐管部からなるT字状の管継手において、本管部の一端部側受け口に請求項1記載の管継手の挿し口が挿入されて一体に接着されることを特徴とするものである。
【0018】
本発明によれば、T字状の管継手における直管状本管部の一端部側受け口に接着された請求項1記載の管継手の受け口に管を挿入した際、挿入した管の端面がスペーサーに当接し、それ以上の管の挿入が規制される。施工が終了し、管内を水が流れると、水溶性材料からなるスペーサーが溶解して流出する。したがって、T字状の管継手における直管状本管部の一端部側受け口に接着された請求項1記載の管継手の受け口の内奥部と管の端面との間にスペーサーに相当する空間(未挿入代)を確保することができる。
【0019】
この結果、管をT字状の管継手によって、例えば、上下方向と横方向とを合流するように接続する際において、外気温の変化や内部を流れる流体の温度変化によって管に熱伸縮が発生したとしても、管の伸びを管の端面から請求項1記載の管継手の受け口の内奥部までの未挿入代によって確実に吸収することができ、また、管の縮みを管の端面から環状パッキンまでの挿入代によって確実に吸収することができる。しかも、T字状の管継手と熱伸縮を吸収可能なソケット状の管継手を接着することによって熱伸縮を吸収可能なT字状の管継手を簡単に製造することができる。
【0020】
本発明の管継手は、両端部に受け口が形成された直管状の本管部および該本管部から分岐されて端部に受け口が形成された分岐管部からなり、本管部の一端部側受け口の端部に環状パッキンが配設された管継手において、本管部の一端部側受け口の内部に管の未挿入代に相当する長さの水溶性材料からなるスペーサーが配設されてなり、一端部側受け口に対する管の挿入を管に当接するスペーサーによって規制することを特徴とするものである。
【0021】
本発明によれば、直管状本管部の一端部側受け口に管を挿入した際、挿入した管の端面がスペーサーに当接し、それ以上の管の挿入が規制される。施工が終了し、管内を水が流れると、水溶性材料からなるスペーサーが溶解して流出する。したがって、一端部側受け口の内奥部と管の端面との間にスペーサー相当する空間(未挿入代)を確保することができる。
【0022】
この結果、管をT字状の管継手によって、例えば、上下方向と横方向とを合流するように接続する際において、外気温の変化や内部を流れる流体の温度変化によって管に熱伸縮が発生したとしても、管の伸びを管の端面から一端部側受け口の内奥部までの未挿入代によって確実に吸収することができ、また、管の縮みを管の端面から環状パッキンまでの挿入代によって確実に吸収することができる。しかも、熱伸縮を吸収可能なT字状の管継手をコンパクトな大きさに製造することができ、設置スペースの制約を減少させることができる。
【0023】
本発明の管継手を用いた配管構造は、請求項4記載の管継手がT字状の管継手における直管状本管部の一端部側受け口に接続された請求項1記載の管継手の受け口を上方に向けて床に固定され、T字状の管継手における分岐管部の受け口に横管が接続される一方、請求項1記載の管継手の受け口およびT字状の管継手における直管状本管部の他端部側受け口にそれぞれ立て管が接続されることを特徴とするものである。
【0024】
本発明によれば、請求項4記載の管継手をT字状の管継手における直管状本管部の一端部側受け口に接続された請求項1記載の管継手の受け口を上方に向けて床に固定し、T字状の管継手における分岐管部の受け口に横管を接続する一方、請求項1記載の管継手の受け口およびT字状の管継手における直管状本管部の他端部側受け口にそれぞれ立て管を接続することにより、横方向に流下する流体を上下方向に流出させることができる。そして、T字状の管継手における直管状本管部の一端部側受け口に接続された請求項1記載の管継手の受け口には、スペーサーが配設されていることにより、該受け口に立て管を接続する際、立て管をスペーサーによって確実に支持することができ、立て管を固定するまでの間、立て管が自重で降下することを防止できる。しかも、立て管を水が流下すると、スペーサーは溶解して流出することから、立て管の下端面と、立て管の下端部が挿入された受け口の内奥部との間にはスペーサーに相当する空間(未挿入代)を確保することができる。したがって、外気温の変化や内部を流れる流体の温度変化によって立て管に熱伸縮が発生したとしても、立て管の伸び縮みを吸収して配管系統の破損を確実に防止することができる。
【0025】
本発明の管継手を用いた配管構造は、請求項5記載の管継手が直管状本管部の一端部側受け口を上方に向けて床に固定され、その分岐管部の受け口に横管が接続される一方、直管状本管部の一端部側受け口および他端部側受け口にそれぞれ立て管が接続されることを特徴とするものである。
【0026】
本発明によれば、請求項5記載の管継手を直管状本管部の一端部側受け口を上方に向けて床に固定し、分岐管部の受け口に横管を接続する一方、本管部の一端部側受け口および他端部側受け口にそれぞれ立て管を接続することにより、横方向に流下する流体を上下方向に流出させることができる。そして、本管部の一端部側受け口には、スペーサーが配設されていることにより、該受け口に立て管を接続する際、立て管をスペーサーによって確実に支持することができ、立て管を固定するまでの間、立て管が自重で降下することを防止できる。しかも、立て管を水が流下すると、スペーサーは溶解して流出することから、立て管の下端面と、立て管の下端部が挿入された受け口の内奥部との間にはスペーサーに相当する空間(未挿入代)を確保することができる。したがって、外気温の変化や内部を流れる流体の温度変化によって立て管に熱伸縮が発生したとしても、立て管の伸び縮みを吸収して配管系統の破損を確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の管継手によれば、自重が作用するような立て管であっても、施工時に熱伸縮を吸収する伸縮代を確実に確保することができる。
【0028】
また、本発明の管継手を用いた配管構造によれば、外気温の変化や内部を流れる流体の温度変化によって立て管に熱伸縮が発生したとしても、管の伸び縮みを吸収して配管系統の破損を確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0030】
図1には、本発明の管継手の第1実施形態が示されている。
【0031】
この管継手1は、前述した管継手100と同様に、一端部に受け口2が形成されるとともに、他端部に挿し口3が形成され、また、受け口2の端部に、挿入される管Pを止水する環状パッキン4が配設される他、受け口2の内部に、未挿入代L1に相当する長さのリング状のスペーサー5が配設されて構成されている。そして、スペーサー5は、水溶性材料、例えば、PVAなどの水溶性樹脂や紙などによって形成され、管継手1の受け口2の内奥部に当接して位置決めされる外径および挿入される管Pの端面と当接して管Pを支持できる厚みとなるような内径を有している。
【0032】
したがって、このようなソケット状の管継手1を利用して管Pを接続する場合は、図2に示すように、管継手1の受け口2の内部にスペーサー5を挿入してその内奥部に当接させた後、接続対象の管Pを受け口2に挿入すればよい。この場合、挿入した管Pの端面がスペーサー5の端面に当接し、それ以上の管Pの挿入が規制される。次いで、管継手1の受け口2の外周面に固定バンドを装着すれば、挿入した管Pの端面と管継手1の受け口2の内奥部との間には、スペーサー5の長さ、すなわち、設定された未挿入代L1に相当する間隔を確保することができるとともに、その状態で管継手1に管Pが固定されることになる。また、管継手1の挿し口3は、他の管Pに挿入される。
【0033】
施工が終了し、管P内に水が流れれば、流下する水によってスペーサー5が溶解して水とともに流出することから、挿入した管Pの端面と管継手1の受け口2の内奥部との間には、設定された未挿入代L1に相当する長さの空間が確保されることになる。
【0034】
この結果、外気温の変化や内部を流れる流体の温度変化によって管Pに熱伸縮が発生した際には、管Pの伸びを管Pの端面から受け口2の内奥部までの未挿入代L1によって吸収することができ、また、管Pの縮みを管Pの端面から環状パッキン4までの挿入代L2によって吸収することができる。
【0035】
なお、前述した実施形態においては、スペーサー5としてリング状に形成したものを例示したが、挿入した管Pを支持できる強度を有すればよく、リング状に限定されるものではない。例えば、図3(a)に示すように、外周面から内周面にかけて貫通する任意形状の複数個の穴5aを周方向に形成したり、図3(b),(c)に示すように、一端部および他端部にそれぞれ周方向に間隔をおいて任意形状の切欠5bを互い違いとなるように、あるいは、任意形状の切欠5cを左右対称となるように対向して形成したものであっても構わない。このように、スペーサー5に穴5aや切欠5b,5cを形成すると、水との接触面積が増大することから、スペーサー5を短時間に溶解させ、あるいは、複数個に分割して流出させることが可能となり、伸縮代を早急に確保することができる。
【0036】
また、スペーサー5は、管継手1の受け口2および挿し口3の成形時に一体に成形してもよく、管継手1の成形とは別個に成形し、管継手1の受け口2に挿入することで配設してもよい。
【0037】
ところで、前述した実施形態においては、一端部に受け口2を形成する一方、他端部に挿し口3を形成したソケット状の管継手1を例示したが、T字状の管継手やエルボ状の管継手であってもよく、以下、これらの実施形態について説明する。
【0038】
図4には、本発明の管継手の第2実施形態が示されている。
【0039】
この管継手6は、直管状本管部11および該本管部11から分岐された分岐管部12からなるT字状の管継手10に、前述したソケット状の管継手1を接続して構成されている。すなわち、管継手6は、直管状本管部11の両端部に受け口13が形成されるとともに、分岐管部12の端部に受け口14が形成されたT字状の管継手10における本管部11の一端部側受け口13に前述した管継手1の挿し口3が挿入され、接着剤を介して接続されて構成されている。
【0040】
なお、ソケット状の管継手1については、先に説明したことにより、同一部材に同一符号を付して説明を省略する。
【0041】
このような管継手6を利用して管Pを接続する場合も、管継手6を構成する管継手1の受け口2に接続対象の管Pを挿入すればよい。この場合、挿入した管Pの端面がスペーサー5の端面に当接し、それ以上の管Pの挿入が規制される。次いで、管継手6を構成する管継手1の受け口2の外周面に固定バンドを装着すれば、挿入した管Pの端面と管継手1の受け口2の内奥部との間にスペーサー5の長さ、すなわち、設定された未挿入代L1に相当する間隔を確保することができ、その状態で管Pを固定することができる。さらに、管継手6を構成する管継手10における直管状本管部11の他端部側受け口13および分岐管部12の受け口14にそれぞれ管Pを接続して施工を終了する。
【0042】
具体例として、バルコニーに貯湯槽が設置された場合において、膨張水やドレン排水などを導くための管継手6を用いた配管構造について説明する。
【0043】
図5に示すように、各階のバルコニーBの床Fに上階から下階にわたって貫通する貫通穴Faを形成し、貫通穴Faに臨んで管継手6を各床Fにそれぞれ固定する。この場合、管継手1の受け口2が上方を向くように管継手6を固定する。次いで、貯湯槽Hから膨張水やドレン排水などを導く排水管(横管)P1の一端部を貯湯槽Hの排水トラップに接続するとともに、その他端部を管継手6を構成する管継手10における分岐管部12の受け口14に接続する。さらに、立て管P2の上端部を上階の床F上に固定された管継手6を構成する管継手10における直管状本管部11の他端部側受け口13に貫通穴Faを通して挿入した後、立て管P2の下端部を管継手6を構成する管継手1の受け口2に挿入する。ここで、管継手6を構成する管継手1の受け口2に挿入された立て管P2は、その受け口2に配設されたスペーサー5に支持され、それ以上降下することが規制されており、挿入した立て管P2の端面と、管継手6を構成する管継手1の受け口2の内奥部との間には、スペーサー5の長さ、すなわち、未挿入代L1に相当する間隔が確保されている。その後、管継手6を構成する管継手1の受け口2に固定バンドを装着して立て管P2を固定すればよい。
【0044】
なお、バルコニーBの床Fに形成された貫通穴Faが区画貫通部となる場合には、立て管P2を接続する際、その防火区画貫通部に区画貫通処置を施す必要がある。このような区画貫通部の処置方法としては、例えば、積水化学工業株式会社の製造販売に係る熱膨張耐火材、製品名称:フィブロック(登録商標)を挙げることができる。
【0045】
施工が終了し、立て管P2内に排水が流れれば、流下する排水によってスペーサー5が溶解して排水とともに流出することから、挿入した立て管P2の端面と管継手6を構成する管継手1の受け口2の内奥部との間には、設定された未挿入代L1に相当する長さの空間が確保される。この状態で、貯湯槽Hから膨張水やドレン排水などが流出すると、排水管P1および管継手6を経て立て管P2を流下する。そして、立て管P2を流下する膨張水やドレン排水などによって立て管P2に伸びが発生した場合には、立て管P2の伸びを、立て管P2の端面から受け口2の内奥部までの未挿入代L1によって吸収することができる。また、外気温の低下によって立て管P2に縮みが発生した場合には、立て管P2の縮みを立て管P2の端面から環状パッキン4までの挿入代L2によって吸収することができる。
【0046】
ところで、前述した管継手6の実施形態においては、管継手10に管継手1を接着して形成したことにより、既存のソケット状の管継手1およびT字状の管継手10を利用して簡単に製造できる利点があるが、相対的に大きくなることを避けることができず、設置場所に制約を受けるおそれがある。したがって、熱伸縮を吸収可能なT字状の管継手としてコンパクトな大きさに設計することが好ましい。このようなコンパクトな管継手7としては、図6に示すように、両端部に受け口13が形成された直管状本管部11および該本管部11から分岐されて端部に受け口14が形成された分岐管部12からなり、本管部11の一端部側受け口13の端部に環状パッキン4が配設され、また、その一端部側受け口13の内部にスペーサー5が配設されて構成されている。
【0047】
この際、スペーサー5は、管継手7の本管部11および分岐管部12の成形時に一体に成形してもよく、また、本管部11および分岐管部12の成形とは別個に成形し、管継手7における本管部11の一端部側受け口13に挿入することで配設してもよい。
【0048】
さらに、図7には、本発明の管継手の第3実施形態が示されている。
【0049】
この管継手8は、曲管状本管部21からなるエルボ状の管継手20に、前述したソケット状の管継手1を接続して構成されている。すなわち、管継手8は、両端部に受け口22が形成された曲管状本管部21からなるエルボ状の管継手20における本管部21の一端部側受け口22に前述した管継手1の挿し口3が挿入され、接着剤を介して接続されて構成されている。
【0050】
このような管継手8を利用して管Pを接続する場合も、管継手8を構成する管継手1の受け口2に接続対象の管Pを挿入すればよい。この場合、挿入した管Pの端面がスペーサー5の端面に当接し、それ以上の管Pの挿入が規制される。次いで、管継手8を構成する管継手1の受け口2の外周面に固定バンドを装着すれば、挿入した管Pの端面と管継手1の受け口2の内奥部との間にスペーサー5の長さ、すなわち、設定された未挿入代L1に相当する間隔を確保することができ、その状態で管Pを固定することができる。さらに、管継手8を構成する管継手20における曲管状本管部21の他端部側受け口22に管Pを接続する。
【0051】
施工が終了し、管P内に水が流れれば、流下する水によってスペーサー5が溶解して水とともに流出することから、挿入した管Pの端面と管継手1の受け口2の内奥部との間には、設定された未挿入代L1に相当する長さの空間が確保されることになる。
【0052】
この結果、外気温の変化や内部を流れる流体の温度変化によって管Pに熱伸縮が発生した際には、管Pの伸びを管Pの端面から受け口2の内奥部までの未挿入代L1によって吸収することができ、また、管Pの縮みを管Pの端面から環状パッキン4までの挿入代L2によって吸収することができる。
【0053】
前述した管継手8の実施形態においては、既存のエルボ状の管継手20にソケット状の管継手1を接着して形成した場合を説明したが、熱伸縮を吸収可能なエルボ状の管継手としてコンパクトな大きさに設計することもできる。このようなコンパクトな管継手9としては、図8に示すように、両端部に受け口22が形成された曲管状本管部21からなり、本管部21の一端部側受け口22の端部に環状パッキン4が配設され、また、その一端部側受け口22の内部にスペーサー5が配設されて構成されている。
【0054】
この際、スペーサー5は、管継手9の本管部21の成形時に一体に成形してもよく、また、本管部21の成形とは別個に成形し、管継手9における本管部21の一端部側受け口22に挿入することで配設してもよい。
【0055】
なお、この管継手9に対する管Pの施工要領も、先に説明した管継手8に対する施工要領と基本的に同一であり、説明を省略する。
【0056】
また、前述した実施形態において、管、管継手の材質としては、90℃以上の耐熱性を有する合成樹脂が望ましく、特に、塩素化塩化ビニル樹脂で製造されたものが経済的にはより好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の管継手の一実施形態を示す半断面図である。
【図2】図1の管継手、スペーサーおよび管の半断面図である。
【図3】スペーサーの変形例を説明する斜視図である。
【図4】本発明の管継手の他の実施形態を示す断面図である。
【図5】図4の管継手を用いた配管構造の一例として貯湯槽の配管構造を示す説明図である。
【図6】図4の管継手の変形例を示す断面図である。
【図7】本発明の管継手のもう一つの実施形態を示す断面図である。
【図8】図7の管継手の変形例を示す断面図である。
【図9】従来の管継手を示す半断面図である。
【図10】従来の管継手に未挿入代を確保して挿入された管の伸縮状態を説明する半断面図である。
【符号の説明】
【0058】
1,6,7,8,9,10,20 管継手
2,13,14,22 受け口
3 挿し口
4 環状パッキン
5 スペーサー
11 直管状本管部
12 分岐管部
21 曲管状本管部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端部に受け口が形成される一方、他端部に挿し口が形成され、また、受け口の端部に環状パッキンが配設されたソケット状の管継手において、受け口の内部に管の未挿入代に相当する長さの水溶性材料からなるスペーサーが配設されてなり、受け口に対する管の挿入を管に当接するスペーサーによって規制することを特徴とする管継手。
【請求項2】
両端部に受け口が形成された曲管状本管部からなるエルボ状の管継手において、本管部の一端部側受け口に請求項1記載の管継手の挿し口が挿入されて一体に接着されることを特徴とする管継手。
【請求項3】
両端部に受け口が形成された曲管状本管部からなり、本管部の一端部側受け口の端部に環状パッキンが配設されたエルボ状の管継手において、本管部の一端部側受け口の内部に管の未挿入代に相当する長さの水溶性材料からなるスペーサーが配設されてなり、一端部側受け口に対する管の挿入を管に当接するスペーサーによって規制することを特徴とする管継手。
【請求項4】
両端部に受け口が形成された直管状本管部および該本管部から分岐されて端部に受け口が形成された分岐管部からなるT字状の管継手において、本管部の一端部側受け口に請求項1記載の管継手の挿し口が挿入されて一体に接着されることを特徴とする管継手。
【請求項5】
両端部に受け口が形成された直管状本管部および該本管部から分岐されて端部に受け口が形成された分岐管部からなり、本管部の一端部側受け口の端部に環状パッキンが配設されたT字状の管継手において、本管部の一端部側受け口の内部に管の未挿入代に相当する長さの水溶性材料からなるスペーサーが配設されてなり、一端部側受け口に対する管の挿入を管に当接するスペーサーによって規制することを特徴とする管継手。
【請求項6】
請求項4記載の管継手がT字状の管継手における直管状本管部の一端部側受け口に接続された請求項1記載の管継手の受け口を上方に向けて床に固定され、T字状の管継手における分岐管部の受け口に横管が接続される一方、請求項1記載の管継手の受け口およびT字状の管継手における直管状本管部の他端部側受け口にそれぞれ立て管が接続されることを特徴とする管継手を用いた配管構造。
【請求項7】
請求項5記載の管継手が直管状本管部の一端部側受け口を上方に向けて床に固定され、その分岐管部の受け口に横管が接続される一方、直管状本管部の一端部側受け口および他端部側受け口にそれぞれ立て管が接続されることを特徴とする管継手を用いた配管構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−106862(P2008−106862A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−290995(P2006−290995)
【出願日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】