説明

管継手の受口部構造

【課題】主に、受口部と管部材との接続部分の内部状況を直接目視確認できるようにする。
【解決手段】管部材1を接続可能な管継手2が設けられ、管継手2が、管部材1の端部を摺接嵌合可能及び接着固定可能な受口部4を有する管継手2の受口部構造に関するものである。
管継手2が不透明樹脂部材11によって構成されるようにする。そして、管継手2の不透明な受口部4に、透明樹脂部材12が埋設されるようにする。この透明樹脂部材12が、受口部4の外周面8bから内周面8aに亘る透視用窓部13を有している。
これにより、透視用窓部13を通して前記受口部4の外側から内周面8aの状況を見通し可能としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、管継手の受口部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、住宅やマンションなどの建物における、排水設備などの配管構造物(排水配管)には、複数の管部材を接続するための管継手が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような、管継手は、短管状の継手本体と、この継手本体の端部に設けられた受口部とを有している。そして、この受口部は、管部材の端部を摺接嵌合可能及び接着固定可能な内周面を有している。
【0004】
そして、受口部に管部材を接合する場合、受口部の内部と管部材の端部との両方に接着剤を塗布した後に、管部材の端部を受口部の奥部まで摺接嵌合させて、接着剤が固まるのを待つようにする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−24411号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した受口部と管部材との接着は、通常、缶などの容器に入れられた液状の接着剤を、容器の蓋の裏側に取付けられた刷毛を用いて手作業で塗布するようにして行っている。この接着剤の塗布作業は、現場の狭いスペースや無理な作業姿勢などによって行われることにより、想像以上に手間がかかり、困難で熟練を要するものとなっている。
【0007】
そして、上記した管継手は、通常、不透明樹脂部材で構成されているため、受口部の内周面と管部材の端部との接続部分の内部状況を直接目視確認することができない。
【0008】
そのため、仮に、接着剤の塗布し忘れや、接着剤の塗布ムラなどがあったり、管部材の受口部への挿入が浅かったりすると、十分な接着状態や接続状態が得られないことになる。
【0009】
そこで、管継手を透明樹脂部材で構成することにより、即ち、管継手全体を透明化することにより、受口部の内周面と管部材の端部との接続部分の内部状況を直接目視確認できるようにすることが考えられる。
【0010】
しかし、現存する各種の管継手の全てを透明化するのは難しいという状況があり、また、管継手の中には、機能構造的に透明化できないものも存在している。例えば、特許文献1に記載されている耐火管継手は、樹脂材料に耐火成分を配合することにより耐火性を高めたものであるが、この耐火成分は有色であるため、透明樹脂材料を基材にしたとしても、接続部分の内部状況を直接目視確認できる程度の透明度を達成するのはほぼ不可能である。しかし、耐火管継手は、受口部の内周面と管部材の端部との接続部分が正しく接着されていることが、耐火機能を十分に発揮する上で重要であるため、接続部分の内部状況を直接目視確認したいという要望が最も強いものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、請求項1に記載された発明は、管部材を接続可能な管継手が、前記管部材の端部を摺接嵌合可能及び接着固定可能な受口部を有する管継手の受口部構造において、前記管継手が不透明樹脂部材によって構成され、前記管継手の不透明な前記受口部に、透明樹脂部材が埋設され、該透明樹脂部材が、前記受口部の内周面から外周面に亘る透視用窓部を有することにより、透視用窓部を通して前記受口部の外側から内周面の状況を見通し可能とされたことを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載された発明は、上記において、前記透明樹脂部材が、前記受口部の軸線方向へ延びる透明筒部を有すると共に、前記透視用窓部が、前記透明筒部から少なくとも受口部の内周面または外周面の一方へ達するように一体に突設された窓形成用突状部を有することを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載された発明は、上記において、前記透明筒部と、前記不透明樹脂部材との間に、両者の接触面積を拡大可能な接触面積拡大部を有することを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載された発明は、上記において、前記透明筒部が、その内周面と外周面との間を貫通する貫通孔部を有し、受口部が、前記貫通孔部内に密着状態で挿通配置された孔貫通部を有することを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載された発明は、上記において、不透明な前記管継手が、耐火管継手であることことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、上記構成によって、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、不透明な管継手の受口部に埋設された透明樹脂部材が、受口部の内周面から外周面に亘る透視用窓部を有することにより、透視用窓部を通して受口部の外側から内周面の状況を見通すことができるようになる。
【0017】
請求項2の発明によれば、上記構成によって、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、透明樹脂部材を受口部の軸線方向へ延びる透明筒部とし、透明筒部から透視用窓部を突設させることにより、透明筒部を受口部に対し安定した状態で埋設して、受口部に精度良く透視用窓部を設置することが可能となる。
【0018】
請求項3の発明によれば、上記構成によって、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、透明筒部と不透明樹脂部材との間に設けた接触面積拡大部により、両者の接触面積を拡大することが可能となる。これにより、透明筒部と不透明樹脂部材との間の密着性を高めることができる。
【0019】
請求項4の発明によれば、上記構成によって、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、透明筒部の貫通孔部に、受口部の孔貫通部が密着状態で挿通配置されることにより、透明筒部と受口部との間の接合強度を向上することができる。
【0020】
請求項5の発明によれば、上記構成によって、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、受口部の内周面と管部材の端部との接続部分が正しく接着されていることを直接目視確認できることにより、耐火管継手としての機能を有効に発揮させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施例にかかる管継手の斜視図である。
【図2】図1の受口部の縦断面図である。
【図3】図2の透明樹脂部材の斜視図である。
【図4】図2の部分拡大図である。
【図5】筒体側凹部の配置例を示す図4の透明樹脂部材の部分拡大図である。
【図6】図5とは別の筒体側凹部の配置例を示す、図5と同様の透明樹脂部材の部分拡大図である。
【図7】耐火管継手の設置状況を示す図である。
【図8】図7の作動図である。
【図9】図8に続く作動図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、主に、受口部と管部材との接続部分の内部状況を直接目視確認できるようにすることを目的としている。
【0023】
以下、本発明を具体化した実施例について、図示例と共に説明する。
【実施例】
【0024】
図1〜図9は、この発明の実施例およびその変形例を示すものである。
【0025】
<構成>まず、構成について説明する。
【0026】
例えば、住宅やマンションなどの建物における、排水設備などの配管構造物(排水配管)には、図1に示すように、管部材1を接続するための管継手2が用いられている。
【0027】
このような、管継手2は、短管状の継手本体3と、この継手本体3の端部に設けられた受口部4とを有している。そして、この受口部4は、上記した配管構造物を構成する管部材1の端部を摺接嵌合可能及び接着固定可能な構成を有している。
【0028】
この場合、短管状の継手本体3は、主管部6と、この主管部6から分岐された分岐管部7とを有する分岐継手とされている。主管部6および分岐管部7は、管部材1の内径とほぼ等しい内径の内部空間を有している。そして、受口部4は、主管部6の両端部と、分岐管部7の先端部とに対して、それぞれ形成されている(この場合には3箇所)。各受口部4は、管部材1の端部の外径とほぼ等しい内径の内部空間を有する大径筒部8と、この大径筒部8と継手本体3との間をつなぐ段差部9とを有している。大径筒部8は、管部材1の端部の接続に必要な長さを有するものとされている。段差部9は、ほぼ管部材1の肉厚分の段差量を有するものとされている。受口部4は、大径筒部8の内周面8aが、管部材1の端部の外周面に対する接着面とされる。また、段差部9の内面9aが、管部材1の端面の停止位置(停止面)とされると共に、管部材1の端面に対する接着面とされる。
【0029】
なお、管継手2には、上記した分岐継手以外にも各種のものが存在しているが、そのいずれであっても良い。
【0030】
そして、以上のような基本構成に対し、この実施例のものでは、以下のような構成を備えるようにしている。
【0031】
(1)上記した管継手2が不透明樹脂部材11によって構成される。そして、管継手2の不透明な受口部4に、図2に示すように、透明樹脂部材12が埋設される。この透明樹脂部材12が、受口部4の(大径筒部8の)外周面8bから内周面8aに亘る透視用窓部13を有することにより、透視用窓部13を通して受口部4の外側から内周面8aの状況(接続部分の内部状況)を見通し可能とされる。
【0032】
ここで、不透明樹脂部材11は、管継手2の継手本体3と受口部4とを一体に形成するものとされる。不透明樹脂部材11からなる管継手2は、例えば、射出成形によって製造される。また、透明樹脂部材12は、不透明樹脂部材11とは別に、射出成形によって製造される。そして、不透明樹脂部材11からなる管継手2を射出成形する際に、予め作成された透明樹脂部材12を管継手2の成形型内にインサートすることによって、受口部4に透明樹脂部材12が埋設された管継手2が製造される(インサート成形)。
【0033】
そして、透視用窓部13は、受口部4に対し、部分的に設けられるようにする(部分窓部)。また、この部分的な透視用窓部13は、受口部4に対し、少なくとも1個以上設けられるようにする。
【0034】
透視用窓部13は、好ましくは、受口部4の軸線方向14に対し、連続して延びることのないもの(不連続なもの)、または、内部を目視確認可能な最低限の長さを有するもの(短いもの)とする。
【0035】
この場合には、軸線方向14の寸法が短い透視用窓部13を、軸線方向14に分散させて複数設けるようにしている。即ち、先ず、受口部4の軸線方向14の手前側位置と、奥側位置との2箇所に透視用窓部13を設けるようにしている。更に、必要に応じて、手前側位置と奥側位置との間の中間位置に透視用窓部13を設けるようにしている。この3つの位置の透視用窓部13は、それぞれの位置における接着剤15の塗布状況を直接目視確認可能な機能を有するものとする。これらのうち、奥側位置の透視用窓部13は、特に、受口部4における段差部9の内面9aに対する管部材1の端部の嵌合状況を直接目視確認可能なものとすることができる。その場合には、奥側位置の透視用窓部13は、段差部9の内面9aに可能な限り近づけて設けるようにする。なお、目視確認が容易化されるように、好ましくは、青色や燈色などの着色を施された接着剤15(着色接着剤)を用いるようにする。なお、着色接着剤は、予め着色されたものであっても、現場で着色したものであっても良い。
【0036】
また、透視用窓部13は、好ましくは、受口部4の周方向16に対し、連続して延びることのないもの(不連続なもの)、または、内部を目視確認可能な最低限の長さを有するもの(短いもの)とする。透視用窓部13は、必要に応じて、周方向16に、1箇所、または、複数箇所に分散させて設けるようにする。
【0037】
例えば、透視用窓部13は、全周に対して均等に設けるようにしても良い。または、図1に示すように、透視用窓部13は、全周に対して不均等に設けるようにしても良い。なお、全周に対して不均等に設ける場合、設置のし易さや目視確認の必要性などを考慮して、例えば、透視用窓部13を、成形型の分割ライン17上の位置に集中させて設けることや(透視用窓部13A)、成形型の型開方向18に面した部分に集中させて設けること(透視用窓部13B)などができる。
【0038】
この場合には、透視用窓部13Aを、成形型の分割ライン17上における、軸線方向14の手前側位置と奥側位置との2箇所の位置に配置している。また、透視用窓部13Bを、成形型の型開方向18に面した部分における、軸線方向14の手前側位置と奥側位置とにそれぞれ2箇所ずつ、また、これらの中間位置に1箇所の、合計5箇所の位置に設けると共に、これらを、矩形形状の各頂点と、対角線の交点(各頂点に対して周方向16の位相をズラした位置)とに相当する位置にそれぞれ配置している。なお、これらは、少なくともどちらかにしても良い。
【0039】
以上をまとめると、透視用窓部13は、管継手2の本来の機能に与える影響を最小限に抑えることが可能な大きさの小窓を、設置個数が最小限となるよう、内部の目視確認にとって重要な箇所に重点的に配置するのが好ましい。但し、受口部4に対する透視用窓部13の配置は、このような考え方に基づくものに限るものではない。
【0040】
そして、透視用窓部13は、好ましくは、角などの応力が集中し易い部位を有しない、いわゆる応力非集中形状として、応力集中による受口部4を構成する不透明樹脂部材11の割れを防止し得るようにする。この場合には、透視用窓部13を円形などの応力非集中形状としている。なお、応力非集中形状には、上記した円形以外にも、長円形や楕円形やコーナー面取りを施した矩形などの形状が考えられる。
【0041】
(2)図2、図3に示すように、透明樹脂部材12が、受口部4の軸線方向14へ延びる透明筒部21を有するものとされる。そして、透視用窓部13が、透明筒部21から少なくとも受口部4の内周面8aまたは外周面8bの一方へ達するように一体に突設された窓形成用突状部22,23を有するものとされる。
【0042】
ここで、透明筒部21は、受口部4と同心のものとする。また、透明筒部21は、奥側の端部が、受口部4における段差部9の位置またはその近傍に位置し、手前側の端部が、受口部4の手前側の端部よりも僅かに奥側に位置する長さに形成されている。そして、窓形成用突状部22,23は、先端に、受口部4の内周面8aまたは外周面8bと面一の窓面を有するものとする。
【0043】
この場合、透明筒部21は、受口部4の肉厚の半分程度以下となる肉厚を有して、受口部4の内周面8aと外周面8bとの間に完全に埋設されるものとしている。なお、透明筒部21は、受口部4に完全に埋設されるものとするのが機能上最も好ましいが、構造的には、透明筒部21は、受口部4の内周面8aまたは外周面8bに露出するようなものとすることも考えられる。
【0044】
そして、透明筒部21を、受口部4に完全に埋設させるようにしたことに伴い、窓形成用突状部22,23は、透明筒部21の内周面と外周面との両方からそれぞれ突出するようにしている。透明筒部21の内周面の窓形成用突状部22と、外周面の窓形成用突状部23とは、同じ位置に対を成すように設けられている。窓形成用突状部22,23は、側方から見て、縮径形状(先細形状、円錐台形状)や、平行形状(円柱形状)や、拡径形状(末広形状、逆円錐台形状)などとすることができる。窓形成用突状部22,23を縮径形状とすることにより、透明樹脂部材12の成形性を向上することが可能となる。窓形成用突状部22,23を平行形状とすることにより、透明樹脂部材12の成形性をあまり低下させずに、窓面積を広げることが可能となる。窓形成用突状部22,23を拡径形状とすることにより、最も広い窓面積を確保すると共に、不透明樹脂部材11に対するアンカー効果を得ることが可能となる。この場合には、縮径形状としている。
【0045】
(3)図3(〜図6)に示すように、透明筒部21と、不透明樹脂部材11との間に、両者の接触面積を拡大可能な接触面積拡大部25が設けられる。
【0046】
ここで、上記した窓形成用突状部22,23も、接触面積拡大部25として機能するものとなる。窓形成用突状部22,23以外の接触面積拡大部25は、窓形成用突状部22,23を避けた位置に均等に分散配置するのが好ましい。
【0047】
この(窓形成用突状部22,23以外の)接触面積拡大部25は、透明筒部21の端面、内周面、外周面の少なくともいずれかの位置に形成された筒体側凹部26または筒体側凸部を有している。これらの筒体側凹部26または筒体側凸部は、透明筒部21を貫通しない大きさ、または、不透明樹脂部材11の表面に突出しない大きさとする。
【0048】
また、接触面積拡大部25は、不透明樹脂部材11に形成された継手側凸部27または継手側凹部を有している。この継手側凸部27または継手側凹部は、管継手2の射出成形時に、不透明樹脂部材11が筒体側凹部26の内部に入り込んだり、筒体側凸部の周囲を取囲むことによって互いに密着状態となるように形成される。
【0049】
ここで、筒体側凹部26または筒体側凸部と、継手側凸部27または継手側凹部とは、透明筒部21の周方向16または軸線方向14に対して、連続する突条または凹溝などとしても良いし、或いは、不連続な(または部分的な)凸部または凹部などとしても良い。不連続な凸部または凹部などとする場合には、周方向16または軸線方向14に対し、一箇所または複数箇所設けることができる。筒体側凹部26と筒体側凸部、および、継手側凸部27と継手側凹部は、どちらか一方または両方を設けることができる。この場合には、筒体側凹部26および継手側凸部27のみとしている。
【0050】
そして、この場合には、透明筒部21の端面に、透明筒部21の周方向16に対し連続して延びる凹溝を形成して筒体側凹部26としている。また、透明筒部21の内周面または外周面に、点在するように複数の凹部を形成して筒体側凹部26としている。
【0051】
(4)図3、図4に示すように、透明筒部21が、その内周面と外周面との間を貫通する貫通孔部31を有するようにしている。これに対し、受口部4が、貫通孔部31内に密着状態で挿通配置された孔貫通部32を有するようにしている。
【0052】
ここで、貫通孔部31および孔貫通部32は、上記とは別の接触面積拡大部25としての機能も備えることになるが、貫通孔部31は、主に、射出形成時に不透明樹脂部材11が通る樹脂通路部として機能するものとして設けられる。この貫通孔部31および孔貫通部32は、透視用窓部13や上記した接触面積拡大部25を避けた位置に設けるようにする。この貫通孔部31および孔貫通部32は、透明筒部21および受口部4の周方向16または軸線方向14に対して一箇所または複数箇所設けることができる。この場合には、貫通孔部31および孔貫通部32は、複数箇所設けられるようにしている。
【0053】
より具体的には、貫通孔部31および孔貫通部32は、透明筒部21および受口部4における、軸線方向14の手前側位置と奥側位置とに設けられた透視用窓部13の中間位置などに設けられている。但し、貫通孔部31および孔貫通部32の設置位置は、これ以外であっても良い。
【0054】
(5)そして、図7〜図9に示すように、不透明な管継手2が、耐火管継手35とされる。
【0055】
ここで、耐火管継手35は、上記した特許文献1に記載されているようなものである。簡単に説明すると、耐火管継手35は、例えば、ポリ塩化ビニル系樹脂などの硬質樹脂性の基材に、耐火成分として熱処理乾燥された非熱膨張性黒鉛(有色)を配合して成る不透明樹脂部材11によって形成され、この不透明樹脂部材11に配合された有色の非熱膨張性黒鉛により、安定した耐火性能を発揮し得るようにしたものである。
【0056】
この耐火管継手35は、上階と下階とを仕切る横耐火区画壁36の上側(直上部)に設置されると共に、上階および下階に配設された縦方向へ延びる管部材1(立管)に対して接続可能な上下の受口部4と、上階に配設された横方向へ延びる管部材1(横枝管)に対して接続可能な側部の受口部4とを有する分岐継手などとされている。そして、立管(管部材1)および横枝管(管部材1)には、熱膨張性黒鉛が配合された樹脂部材の層の内外面を硬質ポリ塩化ビニル系樹脂の層で覆った三層構造の耐火管部材37が用いられる。下階の立管(耐火管部材37)は、上記した横耐火区画壁36に貫通配置され、横枝管(耐火管部材37)は、上階を左右に仕切る縦耐火区画壁38に貫通配置される。
【0057】
そして、火災時に、火炎41に接した立管(耐火管部材37)または横枝管(耐火管部材37)が(この場合には、下階の立管となっている)、横耐火区画壁36または縦耐火区画壁38の貫通部分で膨張することにより、横耐火区画壁36または縦耐火区画壁38の貫通部分を閉塞させ(閉塞部42)、他の階への延焼を防止し得るように構成されている。
【0058】
<作用>次に、この実施例の作用について説明する。
【0059】
受口部4に管部材1を接合する場合、受口部4の内部(段差部9の内面9aおよび大径筒部8の内周面8a)と管部材1の端部(の端面と外周面8b)との両方に接着剤15を塗布した後に、管部材1の端部を受口部4の奥部まで摺接嵌合させて、接着剤15が固まるのを待つようにする。
【0060】
上記した受口部4と管部材1との接着は、例えば、缶などの容器に入れられた液状の接着剤15を、容器の蓋の裏側に取付けられた刷毛を用いて手作業で塗布することによって行われる。この際、好ましくは、青色や燈色などの着色を施された接着剤15(着色接着剤)を用いるようにする。
【0061】
この実施例によれば、以下のような作用効果を得ることができる。
【0062】
(1)不透明な管継手2の受口部4に埋設された透明樹脂部材12が、受口部4の外周面8bから内周面8aに亘る透視用窓部13を有することにより、透視用窓部13を通して受口部4の外側から内周面8aの状況を見通すことができるようになる。これにより、受口部4の内周面8aに対する管部材1の端部の嵌合状況や、受口部4の内周面8aや管部材1の端部に対する接着剤15の塗布状況などを実際に目視確認することができ、受口部4の内周面8aに対して管部材1の端部を確実に嵌合し接着することが可能となる。即ち、現場での接合作業を確実に行わせることができる。よって、現場の狭いスペースや無理な作業姿勢での作業であっても、熟練度を要せずに、安定して良好な接合状態を得ることが可能となる。
【0063】
(2)透明樹脂部材12を受口部4の軸線方向14へ延びる透明筒部21とし、透明筒部21から透視用窓部13を突設させることにより、透明筒部21を受口部4に対し安定した状態で埋設して、受口部4に精度良く透視用窓部13を設置することが可能となる。これにより、受口部4の内周面8aの状況を最も見通したい位置を狙って、正確且つ確実に透視用窓部13を配置することができる。
【0064】
(3)透明筒部21と受口部4または継手本体3との間に設けた接触面積拡大部25により、両者の接触面積を拡大することが可能となる。これにより、透明筒部21と不透明樹脂部材11(管継手2)との間の密着性を高めることができる。
【0065】
特に、接触面積拡大部25を、透明筒部21に形成された筒体側凹部26または筒体側凸部と、受口部4または継手本体3に形成された継手側凸部27または継手側凹部とすることにより、確実に透明筒部21と受口部4または継手本体3との接触面積を拡大して密着性を高めることが可能となる。また、上記した筒体側凹部26または筒体側凸部を有する透明筒部21を成形型にインサートして管継手2を射出成形することにより、管継手2の射出成形と同時に上記筒体側凹部26または筒体側凸部の内部や周囲に溶融樹脂が充填されて継手側凸部27または継手側凹部を作ることができる。
【0066】
(4)透明筒部21の貫通孔部31に、受口部4の孔貫通部32が密着状態で挿通配置されることにより、透明筒部21と受口部4との間の接合強度を向上することができる。また、管継手2の射出形成時に、成形型にインサートした透明筒部21の貫通孔部31を溶融樹脂が通ることにより、管継手2の隅々にまで溶融樹脂を行き渡らせることができ、以って、管継手2の製品品質を向上することができる。
【0067】
(5)耐火管継手35は、耐火成分が配合されており、耐火成分が有色であることから、それ自体の透明化が困難なものであるが、上記した透視用窓部13を設けることにより、受口部4の内周面8aと管部材1の端部との接続部分が正しく接着されていることなどを直接目視確認できるようになるので、確実な接着性が得られ、耐火管継手35としての機能を有効に発揮させることが可能となる。特に、透視用窓部13を、上記したように最小限の大きさとすることにより、透視用窓部13が耐火管継手35の機能に与える影響を少なくすることができる。
【0068】
以上、この発明の実施例を図面により詳述してきたが、実施例はこの発明の例示にしか過ぎないものであるため、この発明は実施例の構成にのみ限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれることは勿論である。また、例えば、各実施例に複数の構成が含まれている場合には、特に記載がなくとも、これらの構成の可能な組合せが含まれることは勿論である。また、複数の実施例や変形例が示されている場合には、特に記載がなくとも、これらに跨がった構成の組合せのうちの可能なものが含まれることは勿論である。また、図面に描かれている構成については、特に記載がなくとも、含まれることは勿論である。更に、「等」の用語がある場合には、同等のものを含むという意味で用いられている。また、「ほぼ」「約」「程度」などの用語がある場合には、常識的に認められる範囲や精度のものを含むという意味で用いられている。
【産業上の利用可能性】
【0069】
この実施例では、住宅やマンションなどの建物における排水配管に用いられる管継手とされているが、上記以外にも、建物の給水配管やその他の配管用の管継手などとして、広い用途が期待できる。
【符号の説明】
【0070】
1 管部材
2 管継手
3 継手本体
4 受口部
8a 内周面
8b 外周面
11 不透明樹脂部材
12 透明樹脂部材
13 透視用窓部
14 軸線方向
21 透明筒部
22 窓形成用突状部
23 窓形成用突状部
25 接触面積拡大部
31 貫通孔部
32 孔貫通部
35 耐火管継手

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管部材を接続可能な管継手が設けられ、
該管継手が、短管状の継手本体と、該継手本体の端部に設けられた受口部とを有し、
該受口部が、前記管部材の端部を摺接嵌合可能及び接着固定可能に構成された管継手の受口部構造において、
前記管継手が不透明樹脂部材によって構成され、
前記管継手の不透明な前記受口部に、透明樹脂部材が埋設され、
該透明樹脂部材が、前記受口部の内周面から外周面に亘る透視用窓部を有することにより、透視用窓部を通して前記受口部の外側から内周面の状況を見通し可能とされたことを特徴とする管継手の受口部構造。
【請求項2】
前記透明樹脂部材が、前記受口部の軸線方向へ延びる透明筒部を有すると共に、
前記透視用窓部が、前記透明筒部から少なくとも受口部の内周面または外周面の一方へ達するように一体に突設された窓形成用突状部を有することを特徴とする請求項1記載の管継手の受口部構造。
【請求項3】
前記透明筒部と、前記不透明樹脂部材との間に、両者の接触面積を拡大可能な接触面積拡大部を有することを特徴とする請求項2記載の管継手の受口部構造。
【請求項4】
前記透明筒部が、その内周面と外周面との間を貫通する貫通孔部を有し、受口部が、前記貫通孔部内に密着状態で挿通配置された孔貫通部を有することを特徴とする請求項2または請求項3記載の管継手の受口部構造。
【請求項5】
不透明な前記管継手が、耐火管継手であることことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の管継手の受口部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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