説明

管継手部の離脱防止構造及び管継手部の離脱防止強化方法

【課題】 管内周面側での合理的な改造をもってシール性能の向上と離脱防止力の向上とを図る。
【解決手段】 挿口管部2の外周面2aとこれが挿入接続される受口管部1の大径内周面1aとの対向面間を密封する密封手段Aを設け、挿口管部2の内周面2bと受口管部1の小径内周面1bとにわたって、少なくとも外周面側に密封用の弾性シール層を備えた円環状の内面バンド6を装着し、この内面バンド6の管軸芯X方向一端側を挿口管部2の内周面2bに押し付け固定する第1圧着手段B1と、内面バンド6の管軸芯X方向他端側を受口管部1の小径内周面1bに押し付け固定する第2圧着手段B2とを設けるとともに、内面バンド6で密封される部位において両管部1,2を管軸芯X方向での相対移動を阻止する状態で固定連結する固定連結手段Cを設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、挿口管部の外周面とこれが挿入接続される受口管部の大径内周面との対向面間を密封する密封手段を設けてある管継手部の離脱防止構造及び管継手部の離脱防止強化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
前記密封手段としては種々の構造が提案されているが、例えば、特許文献2に示す場合では、挿口管部の外周面と受口管部の大径内周面との対向面間に円環状の弾性シール材を装着し、この弾性シール材を管軸芯方向から圧縮可能な押圧部を備えた押輪を挿口管部に外装するとともに、前記受口管部の外周面の端部に形成したフランジ部と押輪とを管軸芯方向で引寄せ固定するボルト・ナットを設けて、前記ボルト・ナットによる締付け固定操作に伴う受口管部と押輪との相対近接移動により、弾性シール材を密封状態に圧縮すると同時に、この弾性シール材の圧縮に伴う圧接力により両管部を接続状態で抜止め保持している。
【0003】
また、特許文献1に示す密封手段の場合では、挿口管部の外周面の先端側に漏れ止め用のヤーンを巻回するとともに、受口管部の大径内周面には径方向外方に窪む抜止め用の環状溝を形成して、挿口管部の外周面と受口管部の大径内周面との対向面間に鉛を流し込むことにより、両管部を接続状態で抜止め保持している。
【0004】
そして、上述の密封手段を備えた管継手部の離脱防止構造におけるシール性能及び離脱阻止機能の向上を図る改修方法として、従来では、次の二つの離脱防止構造が提案されている。
(1)特許文献1に示す管継手部の離脱防止構造では、前記挿口管部の内周面と受口管部の小径内周面とにわたって円環状の金属製の内面継ぎ輪を装着し、この内面継ぎ輪の外周面の管軸芯方向一端部と挿口管部の内周面との対向面間、及び内面継ぎ輪の外周面の管軸芯方向他端部と受口管部の小径内周面との対向面間の各々にシール材を装着するとともに、前記内面継ぎ輪の管軸芯方向両端部には、弾性シール材を管軸芯方向から圧縮可能な押圧部を備えた押輪をボルト・ナットを介して取付け、前記ボルト・ナットによる締付け固定操作に伴う内面継ぎ輪と押輪との相対近接移動により、弾性シール材を密封状態に圧縮すると同時に、この弾性シール材の圧縮に伴う圧接力により挿口管部の内周面と受口管部の小径内周面とにわたる所定位置に内面継ぎ輪を保持している。
また、前記挿口管部側に位置する押輪の周方向複数箇所には、挿口管部の内周面に径方向内方側から喰込み可能なボルトが螺合されているとともに、前記受口管部側に位置する押輪の周方向複数箇所には、受口管部の小径内周面に径方向内方側から喰込み可能な抜止め用ボルトが螺合されている。
【0005】
(2)特許文献2に示す管継手部の離脱防止構造では、前記挿口管部の内周面と受口管部の小径内周面とにわたって、両管部の嵌合接続面間の環状隙間を密封可能なゴム製の内面バンドを装着し、この内面バンドの管軸芯方向一端側を挿口管部の内周面に押し付け固定する拡径操作可能な第1圧着手段としての圧着操作金具と、内面バンドの管軸芯方向他端側を受口管部の小径内周面に押し付け固定する拡径操作可能な第2圧着手段としての圧着操作金具とを設けてある。
【0006】
【特許文献1】実開昭59−153793号公報
【特許文献2】実開昭60−65497号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前者(1)による管継手部の離脱防止構造では、内面継ぎ輪の管軸芯方向両端部と挿口管部の内周面及び受口管部の小径内周面との各対向面間に装着したシール材により、両管部の嵌合接続面間の環状隙間を管内側から密封することができるので、シール性能の向上を図ることができる。しかも、前記シール材を押輪で圧縮することに伴う圧接による位置保持力と、挿口管部の内周面と受口管部の小径内周面に対する押輪側の抜止めボルトの喰込みによる位置保持力とによって離脱防止効果を高めることができるものの、前記シール材の圧縮による圧接と抜止めボルトの喰込みとによる位置保持力だけでは、地震等に起因して作用する大きな引張力に対抗するだけの離脱防止力を得ることはできなかった。
【0008】
後者(2)による管継手部の離脱防止構造では、挿口管部の内周面と受口管部の小径内周面とにわたって装着した内面バンドの管軸芯方向両側の各々を、圧着操作金具にて管内周面に押し付け固定することにより、両管部の嵌合接続面間の環状隙間を管内側から密封することができるので、シール性能の向上を図ることができる。
しかし、内面バンドの管軸芯方向両側の各々を圧着操作金具にて管内周面に押し付け固定するだけでは、地震等に起因して作用する大きな引張力に対抗するだけの離脱防止力を得ることはできなかった。
【0009】
本発明は、上述の実状に鑑みて為されたものであって、その主たる課題は、管内周面側での合理的な改造をもってシール性能の向上と離脱防止力の向上とを図ることのできる管継手部の離脱防止構造及び管継手部の離脱防止強化方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による第1の特徴構成は、挿口管部の外周面とこれが挿入接続される受口管部の大径内周面との対向面間を密封する密封手段を設けるとともに、前記挿口管部の内周面と受口管部の小径内周面とにわたって、少なくとも外周面側に密封用の弾性シール層を備えた円環状の内面バンドを装着し、この内面バンドの管軸芯方向一端側を挿口管部の内周面に押し付け固定する第1圧着手段と、内面バンドの管軸芯方向他端側を受口管部の小径内周面に押し付け固定する第2圧着手段とを設けてある管継手部の離脱防止構造であって、
前記内面バンドで密封される部位において両管部を管軸芯方向での相対移動を阻止する状態で固定連結する固定連結手段を設けてある点にある。
【0011】
上記特徴構成によれば、前記内面バンドを、それの少なくとも外周面側に備えた密封用の弾性シール層を挿口管部の内周面と受口管部の小径内周面とにわたって当て付けた状態で装着し、この内面バンドの管軸芯方向両側の各々を、第1・第2圧着手段にて管内周面に押し付け固定することにより、両管部の嵌合接続面間の環状隙間を管内側からも確実に密封することができる。
【0012】
しかも、地震や不同沈下等に起因して管継手部に引張力等の大きな外力が作用したとき、この外力を、内面バンドで密封される部位において両管部を直接管軸芯方向での相対移動を阻止する状態で固定連結する固定連結手段によっても受止めることができるから、両管部が接続維持範囲を越えて離脱移動することを強力に阻止することができる。
【0013】
従って、両管部の嵌合接続面間でのシール性能を管内側から補強することができるとともに、地震や不同沈下等に起因する引張力等の大きな外力を固定連結手段で確実に受止めることができるので、両管部の離脱防止性能を大幅に改善することができる。しかも、前記両管部の内周面と内面バンドの外周面との対向面間のスペースを利用して、両管部を相対移動阻止状態で固定連結する固定連結手段を設けるので、この固定連結手段が流路側に張り出すことがなく、流動抵抗の増大を抑制することができるとともに、固定連結手段の防錆処理も容易に行うことができる。
【0014】
本発明による第2の特徴構成は、挿口管部の外周面とこれが挿入接続される受口管部の大径内周面との対向面間を密封する密封手段を設けるとともに、前記挿口管部の内周面と受口管部の小径内周面とにわたって円環状の内面継ぎ輪を装着し、この内面継ぎ輪の外周面の管軸芯方向一端部と挿口管部の内周面との対向面間、及び内面継ぎ輪の外周面の管軸芯方向他端部と受口管部の小径内周面との対向面間の各々にシール材を装着してある管継手部の離脱防止構造であって、
前記各シール材を管軸芯方向から密封状態に圧縮することにより前記内面継ぎ輪を両管部の内周面にわたる所定位置に保持する圧縮操作手段と、前記内面継ぎ輪で密封される部位において両管部を管軸芯方向での相対移動を阻止する状態で固定連結する固定連結手段を設けてある点にある。
【0015】
上記特徴構成によれば、内面継ぎ輪の外周面の管軸芯方向両端部と挿口管部の内周面及び受口管部の小径内周面との各対向面間に装着したシール材を、圧縮操作手段で管軸芯方向から密封状態に圧縮することにより、両管部の嵌合接続面間の環状隙間を管内側から密封することができるとともに、前記両シール材の圧縮に伴う圧接力により内面継ぎ輪を両管部の内周面にわたる所定位置に保持することができる。
しかも、地震や不同沈下等に起因して管継手部に引張力等の大きな外力が作用したとき、この外力を、内面継ぎ輪で密封される部位において両管部を管軸芯方向での相対移動を阻止する状態で固定連結する固定連結手段においても受止めることができるから、両管部が接続維持範囲を越えて離脱移動することを強力に阻止することができる。
【0016】
従って、両管部の嵌合接続面間でのシール性能を管内側から補強することができるとともに、地震や不同沈下等に起因する引張力等の大きな外力を固定連結手段で確実に受止めることができるので、両管部の離脱防止性能を大幅に改善することができる。しかも、前記両管部の内周面と内面継ぎ輪の外周面との対向面間のスペースを利用して、両管部を相対移動阻止状態で固定連結する固定連結手段を設けるので、この固定連結手段が流路側に張り出すことがなく、流動抵抗の増大を抑制することができるとともに、固定連結手段の防錆処理も容易に行うことができる。
【0017】
本発明による第3の特徴構成は、前記固定連結手段が、挿口管部と受口管部との重合部分にわたって係合する状態で径方向内方側から設けられた固定部材から構成されている点にある。
【0018】
上記特徴構成によれば、前記挿口管部と受口管部との固定連結機能を、両管部の重合部分にわたって径方向で係合する固定部材が剪断破壊されない限り強力に維持することができるから、両管部の離脱防止性能を更に高めることができる。
【0019】
本発明による第4の特徴構成は、前記固定連結手段が、挿口管部の内周面と受口管部の小径内周面とにわたって配設可能な連結部材と、これの管軸芯方向の一端側を挿口管部の内周面に固着する第1固定部材と、連結部材の管軸芯方向の他端側を受口管部の小径内周面に固着する第2固定部材とから構成されている点にある。
【0020】
上記特徴構成によれば、挿口管部の内周面と受口管部の小径内周面とにわたって配設される連結部材が引張破壊されるか、連結部材の一端側を挿口管部の内周面に固着する第1固定部材又は連結部材の他端側を挿口管部の内周面に固着する第2固定部材が剪断破壊されない限り、前記挿口管部と受口管部との固定連結機能を強力に維持することができるから、両管部の離脱防止性能を更に高めることができる。
【0021】
本発明による第5の特徴構成は、前記固定部材が、挿口管部の内周面に形成されているライニング層を剥離した部位に固定されている点にある。
【0022】
上記特徴構成によれば、ライニング層が剥離された挿口管部の内周面を基準にして両管部の重合部分に対する固定部材の係合深さを決めることができるので、例えば、ライニング層の内周面を基準とする場合のようなバラツキがなく、所期の離脱防止性能を確実に発揮させることができる。
【0023】
本発明による第6の特徴構成は、挿口管部の外周面とこれが挿入接続される受口管部の大径内周面との対向面間を密封手段で密封してある管継手部の離脱防止強化方法であって、以下の1)、2)のステップを備えていることを特徴とする。
1)少なくとも外周面側に密封用の弾性シール層を備えた円環状の内面バンドが装着される挿口管部の内周面と受口管部の小径内周面とにわたるバンド装着領域において、固定連結手段で両管部を管軸芯方向での相対移動を阻止する状態で固定連結する。
2)前記挿口管部の内周面と受口管部の小径内周面とにわたって、前記固定連結手段を覆う状態で内面バンドを装着し、この内面バンドの管軸芯方向一端側に設けた拡径操作可能な第1圧着手段により、内面バンドの管軸芯方向一端側を挿口管部の内周面に押し付け固定するとともに、内面バンドの管軸芯方向他端側に設けた拡径操作可能な第2圧着手段により、内面バンドの管軸芯方向他端側を受口管部の小径内周面に押し付け固定する。
【0024】
上記特徴構成によれば、前記内面バンドを、それの少なくとも外周面側に備えた密封用の弾性シール層を挿口管部の内周面と受口管部の小径内周面とにわたって当て付けた状態で装着し、この内面バンドの管軸芯方向両側の各々を、圧着手段にて管内周面に押し付け固定することにより、両管部の嵌合接続面間の環状隙間を管内側からも確実に密封することができる。
【0025】
しかも、地震や不同沈下等に起因して管継手部に引張力等の大きな外力が作用したとき、この外力を、内面バンドで密封される部位において両管部を管軸芯方向での相対移動を阻止する状態で固定連結する固定連結手段においても受止めることができるから、両管部が接続維持範囲を越えて離脱移動することを強力に阻止することができる。
【0026】
従って、両管部の嵌合接続面間でのシール性能を管内側から補強することができるとともに、地震や不同沈下等に起因する引張力等の大きな外力を固定連結手段で確実に受止めることができるので、両管部の離脱防止性能を大幅に改善することができる。しかも、前記両管部の内周面と内面バンドの外周面との対向面間のスペースを利用して、両管部を管軸芯方向での相対移動を阻止する状態で固定連結する固定連結手段を設けるので、この固定連結手段が流路側に張り出すことがなく、流動抵抗の増大を抑制することができるとともに、固定連結手段の防錆処理も容易に行うことができる。
【0027】
本発明による第7の特徴構成は、挿口管部の外周面とこれが挿入接続される受口管部の大径内周面との対向面間を密封手段で密封してある管継手部の離脱防止強化方法であって、以下の1)〜3)のステップを備えていることを特徴とする。
1)円環状の内面継ぎ輪が装着される挿口管部の内周面と受口管部の小径内周面とにわたるバンド装着領域において、固定連結手段で両管部を管軸芯方向での相対移動を阻止する状態で固定連結する。
2)前記固定連結手段を覆う状態で挿口管部の内周面と受口管部の小径内周面とにわたる部位には円環状の内面継ぎ輪を装着する。
3)前記内面継ぎ輪の外周面の管軸芯方向一端部と挿口管部の内周面との対向面間、及び内面継ぎ輪の外周面の管軸芯方向他端部と受口管部の小径内周面との対向面間の各々にシール材を装着し、前記内面継ぎ輪の両端部に設けた圧縮操作手段により、各シール材を管軸芯方向から密封状態に圧縮するとともに、前記内面継ぎ輪を両管部の内周面にわたる所定位置に保持する。
上記特徴構成によれば、内面継ぎ輪の外周面の管軸芯方向両端部と挿口管部の内周面及び受口管部の小径内周面との各対向面間に装着したシール材を、圧縮操作手段で管軸芯方向から密封状態に圧縮することにより、両管部の嵌合接続面間の環状隙間を管内側から密封することができるとともに、前記両シール材の圧縮に伴う圧接力により内面継ぎ輪を両管部の内周面にわたる所定位置に保持することができる。
しかも、地震や不同沈下等に起因して管継手部に引張力等の大きな外力が作用したとき、この外力を、内面継ぎ輪で密封される部位において両管部を管軸芯方向での相対移動を阻止する状態で固定連結する固定連結手段においても受止めることができるから、両管部が接続維持範囲を越えて離脱移動することを強力に阻止することができる。
【0028】
従って、両管部の嵌合接続面間でのシール性能を管内部側から補強することができるとともに、地震や不同沈下等に起因する引張力等の大きな外力を固定連結手段で確実に受止めることができるので、両管部の離脱防止性能を大幅に改善することができる。しかも、前記両管部の内周面と内面継ぎ輪の外周面との対向面間のスペースを利用して、両管部を管軸芯方向での相対移動を阻止する状態で固定連結する固定連結手段を設けるので、この固定連結手段が流路側に張り出すことがなく、流動抵抗の増大を抑制することができるとともに、固定連結手段の防錆処理も容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
〔第1実施形態〕
図1〜図4は、水道管やガス管等の流体管の配管系に用いられる管継手部の離脱防止構造及び離脱防止強化方法を示し、一方の流体管Pの受口管部1に挿入接続された他方の流体管Pの挿口管部2に、前記受口管部1の大径内周面1aと挿口管部2の外周面2aとの間を密封可能な合成ゴム製(例えば、スチレンブタジエンゴム)のシール材3と、挿口管部2に外嵌する状態で受口管部1の端部に固定連結される環状部材の一例で、シール材3を管軸芯X方向から押圧して密封状態(水密状態)にまで圧縮可能な鋳鉄製の押輪4とが外装されているとともに、前記押輪4の連結フランジ部4Aと受口管部1の連結フランジ部1Aとの間には、押輪4と受口管部1とを管軸芯X方向から相対的に引寄せながら締付け固定する締結具5が設けられ、前記シール材3と押輪4及び締結具5をもって、挿口管部2の外周面2aと受口管部1の大径内周面1aとの対向面間を密封する密封手段Aが構成されている。
【0030】
前記密封手段Aの締結具5は、受口管部1の連結フランジ部1Aの周方向複数箇所に形成されたボルト挿通孔5a、及び、押輪4の連結フランジ部4Aの周方向複数箇所に形成されたボルト挿通孔5bのうち、管軸芯X方向で相対向するボルト挿通孔5a,5bにわたって挿入されるT字状のボルト5cと、該ボルト5cの突出ネジ部に螺合されるナット5dから構成されていて、前記ボルト5c・ナット5dの締付け操作に伴う押輪4と受口管部1との管軸芯X方向での相対近接移動により、押輪4の管軸芯X方向の一端部に形成されたシール押圧部4aでシール材3を圧縮変形させ、挿口管部2の外周面2aと受口管部1の大径内周面1aとの対向面間を密封すると同時に、このシール材3の圧縮に伴う圧接力によって受口管部1と挿口管部2とを接続状態で抜止め保持している。
【0031】
そして、前記挿口管部2の内周面2bと受口管部1の小径内周面1bとにわたって、全体が密封用の弾性シール層に構成されている円環状の内面バンド6を装着し、この内面バンド6の管軸芯X方向一端側を挿口管部2の内周面に押し付け固定する第1圧着手段B1と、内面バンド6の管軸芯X方向他端側を受口管部1の小径内周面1bに押し付け固定する第2圧着手段B2とを設けるとともに、前記内面バンド6で密封される部位において両管部1,2を管軸芯X方向での相対移動を阻止する状態で固定連結する固定連結手段Cを設けてある。
【0032】
前記内面バンド6は、挿口管部2の内周面2b及び受口管部1の小径内周面1bの各内径と同一寸法の外径で円環状に成形されており、この内面バンド6の外周面のうち、挿口管部2の内周面2bに形成されたモルタルライニング層8及び受口管部1の小径内周面1bに形成されたモルタルライニング層8と接触する部位の各々には、径方向外方に突出する多数の円環状突条6aが管軸芯方向に所定ピッチで一体形成されているとともに、前記円環状突条6a群に対応する内面バンド6の内周面の管軸芯方向両側部分には、第1圧着手段B1及び第2圧着手段B2を装着するための環状凹部6bが形成されている。
【0033】
前記内面バンド6を構成する粘弾性高分子材料としては、天然ゴム、イソプロピレンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム等を挙げることができる。
【0034】
前記第1圧着手段B1及び第2圧着手段B2の各々は、内面バンド6の環状凹部6bの内径と同一寸法の外径で円環状に湾曲形成され、かつ、その周方向一箇所が切断された径方向(拡径側と縮径側)に弾性変形可能な金属製の圧着帯状体10の両端部近くに、径方向外方に突出する連結片10Aを固着し、両連結片10Aにわたって、圧着帯状体10の設定最大拡径範囲にまで拡径操作可能な連結ボルト11を挿通するとともに、前記連結ボルト11には、両連結片10Aの内面側を押圧する拡径用操作ナット12と両連結片10Aの外面側を押圧するロックナット13とを螺合して構成されている。
【0035】
前記固定連結手段Cは、挿口管部2の内周面2bのうち、モルタルライニング層8が剥離されている領域の端部近傍箇所の周方向複数箇所と、これに径方向で相対向する受口管部1の大径内周面1aの周方向複数箇所に、管内部に搬入した穿孔装置及びネジ形成装置によって径方向で連通するネジ孔15,16を形成し、各径方向で連通するネジ孔15,16にわたって六角穴等の回転操作部17aを備えた固定ネジ17を螺合固定することにより、内面バンド6で密封される部位において両管部1,2を固定連結するように構成されている。
【0036】
そして、地震や不同沈下等に起因して管継手部に引張力が作用したとき、この引張力を、内面バンド6で密封される部位において両管部1,2を管軸芯X方向での相対移動を阻止する状態で固定連結する固定連結手段Cによっても受止めることができるから、両管部1,2が接続維持範囲を越えて離脱移動することを強力に阻止することができる。
【0037】
次に、上述の如く構成された管継手部の離脱防止強化方法について説明する。
(1)人が入り込んで作業可能な口径を有する一方の流体管Pの受口管部1に他方の流体管Pの挿口管部2が挿入接続され、挿口管部2の外周面2aと受口管部1の大径内周面1aとの対向面間が密封手段Aで密封されている管継手部において、断水された管内に作業者が入り込み、前記挿口管部2の内周面2b及び受口管部1の小径内周面1bに形成されているモルタルライニング層8のうち、挿口管部2側のモルタルライニング層8における挿口管部2の一端から密封手段Aのシール材3までの所定領域を全周にわたって剥離する。
(2)挿口管部2の内周面2bのうち、ライニング層剥離領域の端部近傍箇所の周方向複数箇所と、これに径方向で相対向する受口管部1の大径内周面1aの周方向複数箇所に、管内部に搬入した穿孔装置及びネジ形成装置によって径方向で連通するネジ孔15,16を形成するとともに、各径方向で連通するネジ孔15,16にわたって六角穴等の回転操作部17aを備えた固定ネジ17を螺合固定し、このネジ孔15,16と固定ネジ17とをもって構成される固定連結手段Cにより、内面バンド6で密封される部位において両管部1,2を管軸芯X方向での相対移動を阻止する状態で固定連結する。
(3)前記挿口管部2の内周面2bを覆うモルタルライニング層8と受口管部1の小径内周面1bを覆うモルタルライニング層8とにわたって、全体が密封用の弾性シール層に構成されている円環状の内面バンド6を、それの外周面の管軸芯X方向両側に所定ピッチで一体的に突出形成された複数の円環状突条6aを両モルタルライニング層8に当て付け、かつ、前記固定連結手段Cを密封する状態で装着する。
(4)前記内面バンド6の内周面の管軸芯X方向両側部分に形成された環状凹部6b内に、拡径操作可能な第1圧着手段B1及び拡径操作可能な第2圧着手段B2の構成部材で、周方向一箇所が切断された径方向(拡径側と縮径側)に弾性変形可能な金属製の圧着帯状体10を外装し、各圧着帯状体10の両端部近くに径方向外方に突出する状態で固着された連結片10Aにわたって、圧着帯状体10の設定最大拡径範囲にまで拡径操作可能な連結ボルト11を挿通するとともに、前記連結ボルト11のうち、両連結片10A間に位置する部位に螺合されている両拡径用操作ナット12を拡径側に操作して両連結片10Aの内面側を押圧することにより、拡径された第1圧着手段B1の圧着帯状体10によって内面バンド6の管軸芯X方向一端側を挿口管部2の内周面2bに押し付け固定するとともに、拡径された第2圧着手段B2の圧着帯状体10によって内面バンド6の管軸芯X方向他端側を受口管部1の小径内周面1bに押し付け固定する。
前記内面バンド6の管軸芯X方向両側部での押し付け固定が完了すると、連結ボルト11の両端部に螺合されているロックナット13を操作して、両連結片10Aの外面側を押圧するロック状態にセットする。
【0038】
〔第2実施形態〕
上述の第1実施形態では、前記挿口管部2の内周面2bに形成されているモルタルライニング層8のうち、固定連結手段Cの固定ネジ17で固定連結する部位、つまり、モルタルライニング層8における挿口管部2の一端から密封手段Aのシール材3までの所定領域を全周にわたって剥離したが、図5に示すように、前記挿口管部2の内周面2b及び受口管部1の小径内周面1bに形成されているモルタルライニング層8のうち、固定連結手段Cの固定ネジ17で固定連結する部位と内面バンド6を装着する部位とにわたる領域を全周にわたって剥離してもよい。
【0039】
そして、モルタルライニング層8が剥離された挿口管部2の内周面2bを基準にして両管部1,2の重合部分に対する固定ネジ17の係合深さを決めることができるので、例えば、モルタルライニング層8の内周面を基準とする場合のようなバラツキがなく、所期の離脱防止性能を確実に発揮させることができると同時に、内面バンド6の管軸芯X方向両側部に形成されている円環状突条6aを、モルタルライニング層8が剥離された挿口管部2の内周面2b及び受口管部1の小径内周面1bに直接圧接させることによって、両管部1,2の嵌合接続面間の環状隙間に対する管内部側からのシールをモルタルライニング層8の影響を受けずに長期間にわたって確実、良好に行うことができる。
尚、その他の構成は、第1実施形態で説明した構成と同一であるから、同一の構成箇所には、第1実施形態と同一の番号を付記してそれの説明は省略する。
【0040】
〔第3実施形態〕
図6〜図8に示す管継手部の離脱防止構造では、前記一方の流体管Pの受口管部1に挿入接続された他方の流体管Pの挿口管部2に、前記受口管部1の大径内周面1aと挿口管部2の外周面2aとの間を密封可能な合成ゴム製(例えば、スチレンブタジエンゴム)のシール材3と、挿口管部2に外嵌する状態で受口管部1の端部に固定連結される環状部材の一例で、シール材3を管軸芯X方向から押圧して密封状態(水密状態)にまで圧縮可能な鋳鉄製の押輪4とが外装されているとともに、前記押輪4の連結フランジ部4Aと受口管部1の連結フランジ部1Aとの間には、押輪4と受口管部1とを管軸芯X方向から相対的に引寄せながら締付け固定する締結具5が設けられ、前記シール材3と押輪4及び締結具5をもって、挿口管部2の外周面2aと受口管部1の大径内周面1aとの対向面間を密封する密封手段Aが構成されている。
【0041】
そして、前記挿口管部2の内周面2bと受口管部1の小径内周面1bとにわたって金属製の円環状の内面継ぎ輪20を装着し、この内面継ぎ輪20の外周面20aの管軸芯X方向一端部と挿口管部2の内周面2bとの対向面間、及び内面継ぎ輪20の外周面20aの管軸芯X方向他端部と受口管部1の小径内周面1bとの対向面間の各々にシール材21を装着するとともに、前記各シール材21を管軸芯X方向から密封状態に圧縮することにより前記内面継ぎ輪20を両管部1,2の内周面1b,2bにわたる所定位置に保持する圧縮操作手段Dと、前記内面継ぎ輪20で密封される部位において両管部1,2を管軸芯X方向での相対移動を阻止する状態で固定連結する固定連結手段Cを設けてある。
【0042】
前記内面継ぎ輪20の外周面20aの管軸芯方向両側には、シール材21の構成部材であるOリング21A及びゴム輪21Bと当接する外方側ほど小径となるテーパー面20cと、前記Oリング21Aに管軸芯X方向から当接する環状規制突起20dが形成され、前記テーパー面20cと挿口管部2の内周面2b及び受口管部1の小径内周面1bとの対向面間、若しくは、挿口管部2の内周面2b及び受口管部1の小径内周面1bに形成されているモルタルライニング層8とテーパー面20cとの対向面間に円環状のシール装着空間が構成されているとともに、前記内面継ぎ輪20の内周面20bの管軸芯方向両端部には、径方向内方に突出する円環状の連結フランジ部20eが一体形成されている。
【0043】
また、前記内面継ぎ輪20は、周方向で二分割された半円弧状の分割内面継ぎ輪体20A,20Bから構成されているとともに、両分割内面継ぎ輪体20A,20Bの内周面の周方向両端部で、かつ、管軸芯X方向の両側部には、径方向内方に向かって突出する連結片20fが固着され、周方向で相対向する両連結片20fにわたって挿通された連結ボルト22には、両連結片20fの外面側を押圧して、分割内面継ぎ輪体20A,20Bの隣接端面同士をシートパッキン等を介装した密封状態で接合固定する連結ナット23と、両連結片20fの内面側を押圧するロックナット24が螺合されている。
【0044】
前記圧縮操作手段Dは、シール材21のゴム輪21Bを管軸芯X方向から押圧して密封状態(水密状態)にまで圧縮可能な鋳鉄製もしくは鋼板製の押輪25と、該押輪25の連結フランジ部25aと内面継ぎ輪20の連結フランジ部20eとの間には、押輪25と内面継ぎ輪20とを管軸芯X方向から相対的に引寄せながら締付け固定する締結具26が設けられている。
【0045】
前記圧縮操作手段Dの押輪25は、周方向で二分割された半円弧状の分割押輪体25A,25Bから構成されているとともに、両分割押輪体25A,25Bの内周面の周方向両端部には、管軸芯X方向に沿って突出する連結片25bが固着され、周方向で相対向する両連結片25b同士がそれぞれボルト18・ナット19にて固定連結されている。
【0046】
前記圧縮操作手段Dの締結具26は、内面継ぎ輪20の連結フランジ部20eの周方向複数箇所に形成されたボルト挿通孔26a、及び、押輪25の連結フランジ部25aの周方向複数箇所に形成されたボルト挿通孔26bのうち、管軸芯X方向で相対向するボルト挿通孔26a,26bにわたって挿入されるT字状のボルト26cと、該ボルト26cの突出ネジ部に螺合されるナット26dから構成されている。
【0047】
そして、前記ボルト26c・ナット26dの締付け操作に伴う押輪25の連結フランジ部25aと内面継ぎ輪20の連結フランジ部20eとの管軸芯X方向での相対近接移動により、押輪25の管軸芯X方向の一端部に形成されたシール押圧部25cでシール材21のゴム輪21Bを圧縮変形させ、挿口管部2の内周面2b及び受口管部1の小径内周面1bに形成されているモルタルライニング層8と内面継ぎ輪20の外周面20aとの対向面間、若しくは、モルタルライニング層8における内面継ぎ輪20及び押輪25の装着領域が剥離されている場合には、内面継ぎ輪20の外周面20aと挿口管部2の内周面2b及び受口管部1の小径内周面1bとの対向面間を密封すると同時に、このシール材21のゴム輪21Bの圧縮に伴う圧接力によって挿口管部2の内周面2b及び受口管部1の小径内周面1bに対して内面継ぎ輪20を所定位置で固定保持するとともに、受口管部1及び挿口管部2とを接続状態で抜止め保持している。
【0048】
前記固定連結手段Cは、挿口管部2の内周面2bのうち、モルタルライニング層8が剥離されている領域の端部近傍箇所の周方向複数箇所と、これに径方向で相対向する受口管部1の大径内周面1aの周方向複数箇所に、管内部に搬入した穿孔装置及びネジ形成装置によって径方向で連通するネジ孔15,16を形成し、各径方向で連通するネジ孔15,16にわたって六角穴等の回転操作部17aを備えた固定ネジ(挿口管部2と受口管部1との重合部分にわたって係合する状態で径方向内方側から設けられる固定部材の一例)17を螺合固定することにより、内面バンド6で密封される部位において両管部1,2を固定連結するように構成されている。
【0049】
尚、前記密封手段Aの締結具5は、第1実施形態で説明した構成と同一であるから、同一の構成箇所には、第1実施形態と同一の番号を付記してそれの説明は省略する。
【0050】
次に、上述の如く構成された管継手部の離脱防止強化方法について説明する。
(1)人が入り込んで作業可能な口径を有する一方の流体管Pの受口管部1に他方の流体管Pの挿口管部2が挿入接続され、挿口管部2の外周面2aと受口管部1の大径内周面1aとの対向面間が密封手段Aで密封されている管継手部において、断水された管内に作業者が入り込み、前記挿口管部2の内周面2b及び受口管部1の小径内周面1bに形成されているモルタルライニング層8のうち、挿口管部2側のモルタルライニング層8における挿口管部2の一端から密封手段Aのシール材3までの所定領域を全周にわたって剥離する。
(2)挿口管部2の内周面2bのうち、ライニング層剥離領域の端部近傍箇所の周方向複数箇所と、これに径方向で相対向する受口管部1の大径内周面1aの周方向複数箇所に、管内部に搬入した穿孔装置及びネジ形成装置によって径方向で連通するネジ孔15,16を形成するとともに、各径方向で連通するネジ孔15,16にわたって六角穴等の回転操作部17aを備えた固定ネジ17を螺合固定し、このネジ孔15,16と固定ネジ17とをもって構成される固定連結手段Cにより、内面継ぎ輪20で密封される部位において両管部1,2を管軸芯X方向での相対移動を阻止する状態で固定連結する。
【0051】
(3)前記挿口管部2の内周面2bを覆うモルタルライニング層8と受口管部1の小径内周面を覆うモルタルライニング層8とにわたる所定位置に、周方向で二分割された半円弧状の分割内面継ぎ輪体20A,20Bからなる金属製の内面継ぎ輪20を内装し、この内面継ぎ輪20の両分割内面継ぎ輪体20A,20Bを連結片20fにより仮固定した後溶接等で一体化する。
この内面継ぎ輪20の外周面20aの管軸芯方向両側に形成されたテーパー面20cと、挿口管部2側及び受口管部1側のモルタルライニング層8との対向面間に形成されている円環状のシール装着空間内に、シール材21の構成部材であるOリング21A及びゴム輪21Bを装着する。
【0052】
(4)次に、挿口管部2側のモルタルライニング層8と受口管部1側のモルタルライニング層8における内面継ぎ輪20の両端部に対向する部位に、周方向で二分割された半円弧状の分割押輪体25A,25Bからなる押輪25を内装し、この押輪25の連結フランジ部25Aの周方向複数箇所に形成されたボルト挿通孔26bと内面継ぎ輪20の連結フランジ部20eの周方向複数箇所に形成されたボルト挿通孔26aのうち、管軸芯X方向で相対向するボルト挿通孔26a,26bにわたって締結具26のT字状ボルト26cを挿通し、該ボルト26cの突出ネジ部に螺合された締結具26のナット26dを締め付け操作する。
【0053】
このボルト26c・ナット26dの締付け操作に伴う押輪25の連結フランジ部25Aと内面継ぎ輪20の連結フランジ部20eとの管軸芯X方向での相対近接移動により、押輪25の管軸芯X方向の一端部に形成されたシール押圧部25cでシール材21のゴム輪21Bを圧縮変形させ、挿口管部2側及び受口管部1側のモルタルライニング層8と内面継ぎ輪20の外周面20aとの対向面間を密封すると同時に、このシール材21のゴム輪21Bの圧縮に伴う圧接力によって挿口管部2の内周面2b及び受口管部1の小径内周面1bに対して内面継ぎ輪20を所定位置で固定保持するとともに、受口管部1及び挿口管部2とを接続状態で抜止め保持している。
【0054】
〔第4実施形態〕
上述の第1〜第3実施形態では、前記固定連結手段Cを、両管部1,2のうち、内面継ぎ輪20で密封される部位の重合部分にわたって係合する状態で挿口管部2の内周面2b側から螺合される複数本の固定ネジ(固定部材の一例)17から構成したが、図9〜図11に示すように、前記挿口管部2の内周面2bと受口管部1の小径内周面1bとにわたって配設可能な金属製の連結部材27と、これの管軸芯X方向の一端側を挿口管部2の内周面2bに固着する第1固定部材28と、連結部材27の管軸芯X方向の他端側を受口管部1の小径内周面1bに固着する第2固定部材29とから構成してもよい。
【0055】
前記連結部材27は、受口管部1の小径内周面1b及び挿口管部2の内周面2bの内径と同一寸法の外径で円弧状に形成された一対の分割連結体27A,27Bから構成されていて、この両分割連結体27A,27Bの管軸芯X方向の一端側には、挿口管部2の内周面2bの周方向複数箇所に形成された第1ネジ孔30に径方向で連通する第1取付け孔31が形成されているとともに、前記両分割連結体27A,27Bの管軸芯X方向の他端側には、受口管部1の小径内周面1bの周方向複数箇所に形成された第2ネジ孔32に径方向で連通する第2取付け孔33が形成されている。
【0056】
前記第1固定部材28は、両分割連結体27A,27Bの第1取付け孔31を通して挿口管部2の内周面2b側の第1ネジ孔30に螺合固定される固定ネジから構成されているとともに、前記第2固定部材29は、両分割連結体27A,27Bの第2取付け孔33を通して受口管部1の小径内周面1b側の第2ネジ孔32に螺合固定される固定ネジから構成されている。
【0057】
前記両固定ネジ28,29の頭部28a,29aには、六角穴等の回転操作部28b,29bが形成されているとともに、両分割連結体27A,27Bの第1取付け孔31及び第2取付け孔33は、固定ネジ28,29の頭部28a,29aが両分割連結体27A,27Bの内周面と面一になる状態にまで入り込み可能に構成されている。
【0058】
尚、その他の構成は、第3実施形態で説明した構成と同一であるから、同一の構成箇所には、第3実施形態と同一の番号を付記してそれの説明は省略する。
【0059】
〔その他の実施形態〕
(1)上述の第1・第2実施形態では、前記内面バンド6として、全体が密封用の弾性シール層に構成されているものを用いたが、金属製の円環状の取付け基材の外周面に密封用の弾性シール層を形成してあるものを用いてもよい。
前記内面バンド6としては、少なくとも外周面側に密封用の弾性シール層を備えた円環状のものであればよい。
【0060】
(2)上述の第4実施形態では、挿口管部2の内周面2bと受口管部1の小径内周面1bとにわたって配設された金属製の連結部材27を、両固定ネジ28,29の螺合操作によって締付け固定したが、この金属製の連結部材27を、挿口管部2の内周面2b及び受口管部1の小径内周面1bに溶接で固定してもよい。
要するに、前記固定連結手段Cとしは、内面バンド6又は内面継ぎ輪20で密封される部位において両管部1,2を管軸芯X方向での相対移動を阻止する状態で固定連結できるものであればよい。
【0061】
(3)前記密封手段Aとしは、受口管部1の大径内周面1aとこれに管軸芯X方向から挿入接続される挿口管部2の外周面2aとの対向面間を密封することのできるものであれば、如何なる密封構造を採用してもよい。
【0062】
(4)前記第1圧着手段B1としは、内面バンド6の管軸芯X方向一端側を挿口管部2の内周面2bに押し付け固定することのできるものであれば、如何なる圧着構造を採用してもよく、また、前記第2圧着手段B2も、内面バンド6の管軸芯X方向他端側を受口管部1の小径内周面1bに押し付け固定することのできるものであれば、如何なる圧着構造を採用してもよい。
【0063】
(5)上述の第1〜第3実施形態では、両管部1,2を固定連結するにあたって、挿口管部2の内周面2b及び受口管部1の大径内周面1aにネジ孔15,16を形成して、各径方向で連通するネジ孔15,16にわたって固定ネジ17を螺合固定したが、受口管部1の大径内周面1aにのみネジ孔16を形成し、挿口管部2の内周面2bにはネジ孔16よりも少し大径の貫通孔(バカ穴)を形成して、この貫通孔(バカ穴)に挿通された固定ネジ17を受口管部1のみネジ孔16に螺合操作することにより、両管部1,2を固定連結してもよい。
【0064】
(6)上述の第3・第4実施形態では、前記内面継ぎ輪20を周方向で二分割したが、三分割以上に構成してもよく、また、円環状に一体形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明による管継手部の離脱防止構造及び離脱防止強化方法の第1実施形態を示す要部の分解斜視図
【図2】施工完了時の上半側と下半側とで断面位置を変えた断面側面図
【図3】図2のIII−III線断面図
【図4】要部の拡大断面側面図
【図5】本発明による管継手部の離脱防止構造及び離脱防止強化方法の第2実施形態を示す要部の拡大断面側面図
【図6】本発明による管継手部の離脱防止構造及び離脱防止強化方法の第3実施形態を示す要部の分解斜視図
【図7】施工完了時の上半側と下半側とで断面位置を変えた断面側面図
【図8】要部の拡大断面側面図
【図9】本発明による管継手部の離脱防止構造及び離脱防止強化方法の第4実施形態を示す要部の分解斜視図
【図10】施工完了時の上半側と下半側とで断面位置を変えた断面側面図
【図11】要部の拡大断面側面図
【符号の説明】
【0066】
A 密封手段
B1 第1圧着手段
B2 第2圧着手段
C 固定連結手段
D 圧縮操作手段
1 受口管部
1a 大径内周面
1b 小径内周面
2 挿口管部
2a 外周面
2b 内周面
6 内面バンド
8 ライニング層(モルタルライニング層)
17 固定部材(固定ネジ)
20 内面継ぎ輪
21 シール材
27 連結部材
28 第1固定部材
29 第2固定部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿口管部の外周面とこれが挿入接続される受口管部の大径内周面との対向面間を密封する密封手段を設けるとともに、前記挿口管部の内周面と受口管部の小径内周面とにわたって、少なくとも外周面側に密封用の弾性シール層を備えた円環状の内面バンドを装着し、この内面バンドの管軸芯方向一端側を挿口管部の内周面に押し付け固定する第1圧着手段と、内面バンドの管軸芯方向他端側を受口管部の小径内周面に押し付け固定する第2圧着手段とを設けてある管継手部の離脱防止構造であって、
前記内面バンドで密封される部位において両管部を管軸芯方向での相対移動を阻止する状態で固定連結する固定連結手段を設けてある管継手部の離脱防止構造。
【請求項2】
挿口管部の外周面とこれが挿入接続される受口管部の大径内周面との対向面間を密封する密封手段を設けるとともに、前記挿口管部の内周面と受口管部の小径内周面とにわたって円環状の内面継ぎ輪を装着し、この内面継ぎ輪の外周面の管軸芯方向一端部と挿口管部の内周面との対向面間、及び内面継ぎ輪の外周面の管軸芯方向他端部と受口管部の小径内周面との対向面間の各々にシール材を装着してある管継手部の離脱防止構造であって、
前記各シール材を管軸芯方向から密封状態に圧縮することにより前記内面継ぎ輪を両管部の内周面にわたる所定位置に保持する圧縮操作手段と、前記内面継ぎ輪で密封される部位において両管部を管軸芯方向での相対移動を阻止する状態で固定連結する固定連結手段を設けてある管継手部の離脱防止構造。
【請求項3】
前記固定連結手段が、挿口管部と受口管部との重合部分にわたって係合する状態で径方向内方側から設けられた固定部材から構成されている請求項1又は請求項2記載の管継手部の離脱防止構造。
【請求項4】
前記固定連結手段が、挿口管部の内周面と受口管部の小径内周面とにわたって配設可能な連結部材と、これの管軸芯方向の一端側を挿口管部の内周面に固着する第1固定部材と、連結部材の管軸芯方向の他端側を受口管部の小径内周面に固着する第2固定部材とから構成されている請求項1又は請求項2記載の管継手部の離脱防止構造。
【請求項5】
前記固定部材が、挿口管部の内周面に形成されているライニング層を剥離した部位に固定されている請求項1又は請求項2記載の管継手部の離脱防止構造。
【請求項6】
挿口管部の外周面とこれが挿入接続される受口管部の大径内周面との対向面間を密封手段で密封してある管継手部の離脱防止強化方法であって、以下の1)、2)のステップを備えていることを特徴とする。
1)少なくとも外周面側に密封用の弾性シール層を備えた円環状の内面バンドが装着される挿口管部の内周面と受口管部の小径内周面とにわたるバンド装着領域において、固定連結手段で両管部を管軸芯方向での相対移動を阻止する状態で固定連結する。
2)前記挿口管部の内周面と受口管部の小径内周面とにわたって、前記固定連結手段を覆う状態で内面バンドを装着し、この内面バンドの管軸芯方向一端側に設けた拡径操作可能な第1圧着手段により、内面バンドの管軸芯方向一端側を挿口管部の内周面に押し付け固定するとともに、内面バンドの管軸芯方向他端側に設けた拡径操作可能な第2圧着手段により、内面バンドの管軸芯方向他端側を受口管部の小径内周面に押し付け固定する。
【請求項7】
挿口管部の外周面とこれが挿入接続される受口管部の大径内周面との対向面間を密封手段で密封してある管継手部の離脱防止強化方法であって、以下の1)〜3)のステップを備えていることを特徴とする。
1)円環状の内面継ぎ輪が装着される挿口管部の内周面と受口管部の小径内周面とにわたる内面継ぎ輪装着領域において、固定連結手段で両管部を管軸芯方向での相対移動を阻止する状態で固定連結する。
2)前記固定連結手段を覆う状態で挿口管部の内周面と受口管部の小径内周面とにわたる部位には円環状の内面継ぎ輪を装着する。
3)前記内面継ぎ輪の外周面の管軸芯方向一端部と挿口管部の内周面との対向面間、及び内面継ぎ輪の外周面の管軸芯方向他端部と受口管部の小径内周面との対向面間の各々にシール材を装着し、前記内面継ぎ輪の両端部に設けた圧縮操作手段により、各シール材を管軸芯方向から密封状態に圧縮するとともに、前記内面継ぎ輪を両管部の内周面にわたる所定位置に保持する。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−113643(P2007−113643A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−304409(P2005−304409)
【出願日】平成17年10月19日(2005.10.19)
【出願人】(397012923)大成機工株式会社 (16)
【出願人】(500529676)名古屋市 (8)
【Fターム(参考)】