説明

管継手

【課題】プラグがソケットにロックされた状態でのみロック確認を行うことが可能な管継手を提供する。
【解決手段】プラグ20と、ソケット10と、プラグをソケットに対してロックするロック機構と、プラグのソケットに対するロックを確認するためのロック確認機構を備えた管継手1であって、ロック機構は、ロック開始位置Oとオーバーストローク領域でロック状態にあり、バックラッシュ領域を更に有し、ロック確認機構は、ソケットに対して位置が規定されると共に径方向内側に向けて移動可能なロック確認部材36と、プラグに設けられた周溝23bを有し、ロック確認部材36が径方向内側に向けて移動して周溝23bと係合することによりプラグのロックを確認可能に構成され、ロック確認部材36及び周溝23bは、プラグがロック開始位置Oからオーバーストローク位置までの範囲に差し込まれているときに係合するように位置決めされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は管継手に関し、特にソケット内に挿入したプラグがロックされたことを確認可能な管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラグをソケット内に挿入することで、ソケットに設けられたロック機構がプラグをソケットに対して自動的にロックする管継手が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
特許文献1に記載の管継手200では、図15,図16に示すように、ソケット240の先端に略円筒形状のスリーブ260が固定され、このスリーブ260を覆うように外筒270が取り付けられている。スリーブ260と外筒270との間の環状凹部271aには複数の球276が周方向に等間隔で配置され、この球276は、環状凹部271a内においてリング状のカラー部材275を介してコイルバネ274により先端側且つ径方向内側に付勢されている。スリーブ260には、各球276に対応して、球276の直径よりも短い幅を有する長孔262aが軸方向に形成されており、付勢された球276は長孔262aを通してその一部をスリーブ260内に突出させた状態に保持される。
【0004】
プラグ250は、ソケット240のシール部材242bに挿入される小径部251と、小径部251よりも径が大きくスリーブ260の内径と略等しい外径を有する大径部253とを有する。小径部251と大径部253とは、傾斜部252の傾斜面によって連続している。また、大径部253には、傾斜部252に隣接して球が嵌まり込む環状凹部253aが形成されている。
【0005】
特許文献1の管継手200では、図15(a)に示すように、プラグ250をスリーブ260に挿入していくと、傾斜部252に当接した球276が、傾斜部252によって環状凹部271a内で径方向外側に移動させられる。プラグ250をさらに挿入すると、球276は傾斜部252を乗り越え、環状凹部253aに嵌まり込む(図15(b))。これにより、プラグ250はソケット240にロックされる。ロック状態では、球276はさらにコイルバネ274の付勢力によって、環状凹部253a内で先端側に移動する(図15(C))。
【0006】
この管継手200には、プラグ250をロック状態からさらに押し込むことができるオーバーストローク領域が設けられている。オーバーストローク領域では、図16(a)に示すように、傾斜部252がスリーブ260に形成された小径な制限部264と当接することで、プラグ250のそれ以上の挿入が阻止される。また、この管継手200には、プラグ250をロック状態のまま引き抜く方向に移動させることができるバックラッシュ領域が設けられている。バックラッシュ領域では、図16(b)に示すように、プラグ250の環状凹部253aの側面(図中左側の面)と、外筒270の内周面及びスリーブ260の長孔262aの先端側の側面(図中右側の面)との間に球が挟まれることで、プラグ250の引き抜きが阻止される。
なお、オーバーストローク領域は、ロック機構ならびにロック確認機構に関わる部品が寸法公差0で寸分の狂いもない場合には設計上、設ける必要がない。また、バックラッシュ領域もなくせる。
しかしながら、部品を寸法公差0で製作することは現実には不可能であり、それらの部品で構成されたロック機構ならびにロック確認機構も係合位置などにばらつきが生じることになる。このばらつきが、意図せずともオーバーストローク領域を設計上設けざるを得ない要因となり、バックラッシュ領域が生じる要因ともなる。
【0007】
また、プラグ250をソケット240から外す場合には、ロック解除機構としての外筒270を押し込むことで、球276が外筒270の先端部に設けられた凹部271b内で径方向外側に移動することが可能となるので、プラグ250をソケット240から引き抜くことができる。さらに、この管継手200には、ロック状態において、誤って外筒270が押し込まれてプラグ250がソケット240から脱落するのを防ぐため、外筒270の移動を阻止するストッパー部材200aが設けられている。
【0008】
また、特許文献2に記載の管継手300では、図17に示すように、ソケット310の先端側の内周面に環状凹部313aが形成されており、この環状凹部313a内には、周方向に等間隔に配置された複数の球316と、環状のカラー部材315を介して球316を先端側且つ径方向内側に付勢するコイルバネ314とが配置されている。
【0009】
また、ソケット310には環状凹部313aの内周側を塞ぐように略円筒形状のスリーブ330の一部分が先端側から挿入されている。スリーブ330の挿入部分には、各球316に対応して、球316の直径よりも短い幅を有する長孔331が軸方向に延びるように形成されており、スリーブ330は、各球316を、長孔331を通してスリーブ330の内周面に一部を突出させた状態で保持する。スリーブ330の非挿入部分には、ロック確認用の周溝335が形成されており、このロック確認用の周溝335のうち中心角で約180度離れた2箇所の位置では、周溝335の底部がスリーブ330の外壁を貫通して内周面と通じている。
【0010】
さらに、略U字形状のロック確認部材336が、このスリーブ330のロック確認用の周溝335に嵌まり込んだ状態で取り付けられている。図17(a),(b)の状態では、ロック確認部材336は、周溝335に形成された貫通部分からスリーブ330の内周面側に突出しないが、ロック確認部材336を同図(C)のロック確認位置まで差し込むと、貫通部分を介して、ロック確認部材336の一部がスリーブ330の内周面よりも径方向内側に突出するようになっている。
【0011】
プラグ320は、シール部材312bに挿入される小径部321と、小径部321よりも径が大きくスリーブ330の内径と略等しい外径を有する大径部323とを有する。小径部321と大径部323とは、傾斜部322の傾斜面によって連続している。また、大径部323には、傾斜部322に隣接して球316が嵌まり込む環状凹部323aが形成され、さらに、環状凹部323aから軸方向に離間してロック確認用の周溝323bが形成されている。
【0012】
この管継手300では、図17(a),(b)に示すように、プラグ320をスリーブ330に挿入していくと、傾斜部322に当接した球316は、傾斜部322によって環状凹部313a内で径方向外側に移動させられる。プラグ320がさらに挿入されると、球316は傾斜部322を乗り越え環状凹部323aに嵌まり込む(図17(C))。これにより、プラグ320は、ソケット310に固定される。
【0013】
この管継手300には、プラグ320をロック状態からさらに押し込むことができるオーバーストローク領域が設けられている。オーバーストローク領域では、傾斜部322がスリーブ330の先端部に形成された小径な制限部334と当接することで、プラグ320のそれ以上の挿入が阻止される。また、プラグ320をロック状態から引き抜くように引っ張ると、プラグ320の環状凹部323aの側面(図中左側の面)とソケット310の環状凹部313aの側面(図中右側の面)との間に球316が挟まれることで、プラグ320の引き抜きが阻止される。また、プラグ320をソケット310から外す場合には、ロック解除機構としてのスリーブ330をソケット310側に押し込むことで、球316が環状凹部313a内に押し込まれるので、プラグ320をソケット310から引き抜くことができる。
【0014】
また、図17(C)に示すように、この管継手300では、プラグ320がソケット310にロックされた状態では、スリーブ330の周溝335とプラグ320の周溝323bの軸方向位置が一致するので、ロック確認部材336をスリーブ330の周溝335のロック確認位置まで差し込むことができ、これによりロック状態を確認することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平2003−254486号公報
【特許文献2】特開平2006−38070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、一般に管継手では、上述のようにオーバーストローク領域やバックラッシュ領域を設けることで、関係部品の寸法ばらつきを吸収するように設計されており、製造寸法には所定の寸法誤差、または製造公差が許容されている。このため、特許文献1の管継手では、プラグ250がロック直前位置にある場合(図15(a))と、プラグ250がバックラッシュ領域にある場合(図16(b))とでは、外見上区別がつかない。これにより、使用者が、プラグ250がロック直前位置にある状態を、プラグ250がバックラッシュ領域にある状態であると勘違いしてしまうおそれがあった。
【0017】
また、特許文献2の管継手では、使用者がロック状態を確認できるように、ロック確認部材336が設けられているが、図17(b)に示すように、周溝335内でのロック確認部材336のガタや、プラグ320側の周溝323bの製造誤差によって、ロック直前、すなわち球316が傾斜部322を乗り越える前においても、ロック確認部材336をプラグ320の周溝323bに差し込み可能となってしまう場合があった。このため、ロックしていない状態であっても、ロック確認部材336がプラグ320の周溝323bに差し込まれてしまうと、使用者はロックされたものと勘違いしてしまうおそれがあった。
【0018】
このように、従来の管継手では、ロック状態でないにもかかわらず、外見上はロック状態と勘違いしてしまう場合があり、このようなロックされていない状態で管継手を使用してしまうと、水圧によってプラグにソケットから抜ける方向の外力が加わったときに、プラグが抜けて漏水してしまうという問題があった。また、このとき、ロック確認部材やスリーブを破損させてしまうという問題があった。
【0019】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、プラグがソケットにロックされた状態でのみロック確認を行うことが可能な管継手を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上述した課題を解決するために、本発明は、流路を内部に有するプラグと、このプラグが差し込まれるソケットと、プラグをソケットに対してロックするロック機構と、このロック機構によりプラグがソケットに対してロックされていることを確認するためのロック確認機構と、を備えた管継手であって、ロック機構は、プラグがソケットのロック開始位置まで差し込まれたときにプラグを前記ソケットに対してロックすると共に、ロック開始位置を越えて所定の距離だけ更に差し込み方向へ差し込み可能なオーバーストローク位置までの間のオーバーストローク領域でロック状態にあり、ロック機構は、プラグがソケットに対してロックされた状態で、プラグをロック開始位置から差し込み方向とは反対方向に所定距離だけ移動可能なバックラッシュ領域を更に有し、ロック確認機構は、ソケットに対して差し込み方向の位置が規定されると共にソケットの径方向内側に向けて移動可能な係合部と、プラグに設けられた被係合部と、を有し、係合部が、ソケットの径方向内側に向けて移動して被係合部と係合することによりプラグのロックを確認可能に構成され、係合部及び被係合部は、プラグがロック開始位置まで差し込まれていないときには係合せず、プラグがロック開始位置からオーバーストローク位置までの範囲に差し込まれているときに係合するように位置決めされていることを特徴としている。
【0021】
このように構成された本発明においては、プラグがロック開始位置まで差し込まれた状態でないと、ロック確認機構の係合部が被係合部に係合しないように構成されている。この構成により、プラグがソケットに十分差し込まれなかったことにより、プラグがソケットに対してロックされていないが外見上はロックされているように見える場合には、ロック確認機構の係合部が被係合部に係合しない。
【0022】
すなわち、一般に、バックラッシュ領域を有するプラグ及びソケットでは、プラグがロック開始位置まで差し込まれてロックされた後にバックラッシュ領域に引き戻されているのか、単にプラグがロック開始位置まで差し込まれずに外見上ロックされているように見えるのかを判断することができない。しかしながら、本発明においては、ロック確認機構によりロック確認できる状態までプラグを差し込むことで、ロック機構によってプラグをソケットに対して確実にロックすることができる。したがって、プラグが完全にロックされていないのに、バックラッシュ領域にあると使用者が誤認してしまうことを未然に防止することができる。
【0023】
したがって、本発明では、使用者は、プラグがソケットに対してロック機構によって確実にロックされていることを、ロック確認機構を用いることで把握することができる。これにより、プラグをソケットに対してロックし損なうことを防止することができ、水圧等がプラグにかかって、漏水や、プラグ及びソケット等の破損が生じてしまうことを防止することが可能となる。
【0024】
また、本発明において好ましくは、係合部及び被係合部は、プラグがロック開始位置を越えて、オーバーストローク領域まで差し込まれたときにのみ、互いに係合するように位置決めされている。
【0025】
このように構成された本発明においては、オーバーストローク領域でのみ係合部が被係合部に係合するように構成される。これにより、製造公差等による寸法バラツキ等に起因して、プラグがロック開始位置に差し込まれる前、すなわちロック機能によってプラグがソケットにロックされる前に、係合部が被係合部に係合可能となってしまうことを防止することができる。
【0026】
また、本発明において好ましくは、ロック機構は、ロック解除操作を行うためのロック解除機構を更に備え、ロック確認機構は、少なくとも係合部と被係合部が係合、またはプラグがソケットに対してロックされた状態において、ロック解除機構によるロック解除操作が行われることを防ぐように、ロック解除機構を覆うカバー部材を有する。
【0027】
このように構成された本発明においては、係合部と被係合部が係合されている状態で、ロック確認機構のカバー部材によりロック解除機構が覆われるので、誤ってロック解除がされることを防止することができる。
【0028】
また、本発明において好ましくは、ロック確認機構は、プラグがソケットに対してロックされた状態において、プラグをソケットから引き抜く方向に外力が加わったときに、この外力によって被係合部から係合部に加わる力を低減する緩衝部を更に備える。
【0029】
このように構成された本発明においては、プラグに水圧等によってプラグを引き抜く方向に大きな外力が発生したとしても、プラグ側からソケット側へ伝わる力が緩衝部によって低減されるので、管継手が破損することを防止することができる。
【0030】
また、本発明において好ましくは、緩衝部は、係合部をプラグ差し込み方向へ付勢し、ソケットに対する係合部の差し込み方向位置を位置決めする付勢手段を備えている。
【0031】
このように構成された本発明においては、緩衝部によって係合部を差し込み方向へ付勢することで、係合部を差し込み方向について位置決めする機能と、プラグ側からソケット側へ伝わる力を緩和する機能とを兼ねることができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明の管継手によれば、プラグがソケットにロックされた状態でのみロック確認を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1実施形態における管継手の全体図である。
【図2】本発明の第1実施形態におけるスリーブの断面図である。
【図3】図1のIII−III矢視図である。
【図4】本発明の第1実施形態におけるロック確認部材の説明図である。
【図5】本発明の第1実施形態における付勢部材の説明図である。
【図6】本発明の第1実施形態における管継手の動作説明図である。
【図7】本発明の第2実施形態における管継手の断面図である。
【図8】本発明の第2実施形態におけるカバー部材の説明図である。
【図9】本発明の第2実施形態におけるカバー部材の断面図である。
【図10】本発明の第2実施形態における管継手の動作説明図である。
【図11】本発明の第3実施形態における管継手の断面図である。
【図12】本発明の第3実施形態におけるロック確認部材の説明図である。
【図13】本発明の第3実施形態における付勢部材の説明図である。
【図14】本発明の第3実施形態における管継手の動作説明図である。
【図15】従来技術に係る管継手の動作説明図である。
【図16】従来技術に係る管継手の動作説明図である。
【図17】従来技術に係る管継手の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
次に、添付図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
図1乃至図6を参照して、本発明の第1実施形態による管継手を説明する。図1は管継手の全体図、図2はスリーブの断面図、図3は図1のIII−III矢視図、図4はロック確認部材の説明図、図5は付勢部材の説明図、図6は管継手の動作説明図である。
【0035】
第1実施形態による管継手1は、図17で示した従来技術に係る管継手と、ソケット,スリーブ及びプラグの基本的構成については同様である。図1に示すように、第1実施形態による管継手1は、図示しない配管に螺合する雌ねじ部11を有するソケット10と、ソケット10に挿入されロックされるプラグ20とを備えている。ソケット10及びプラグ20には内部に貫通路が形成されており、これらが一体にロックされることにより、連続した流路を形成する。
【0036】
ソケット10は、略円筒形状の部材であり、内周面に、雌ねじ部11と、雌ねじ部11に隣接して形成された小径部12と、小径部12よりも内径が大きい大径部13とを備えている。小径部12には、シール部材としてのOリング12bを配置する内周溝12aが形成されている。また、大径部13には、環状凹部13aが形成されている。この環状凹部13aは、底部と、この底部の軸方向の両側から延びる傾斜面で形成されている。
【0037】
大径部13には、付勢部材としてのコイルバネ14と、コイルバネ14の先端部に取り付けられたリング状のカラー部材15と、カラー部材15を介してコイルバネ14によって先端方向且つ内径方向に付勢される複数の球16(本例では4個)が配置されている。コイルバネ14の基端部は、大径部13と小径部12との間に形成される段部に当接している。
【0038】
ソケット10の大径部13側には、略円筒形状のスリーブ30の一部が挿入されて取り付けられている。図2に示すように、スリーブ30は、内周面の内径寸法が、先端側(図中左側)及び基端側(図中右側)を除いて軸方向にわたって一定に形成されている。また、スリーブ30は、外周面の外形寸法は、先端部分30aが小径であり、基端部分30cが大径であり、中間部分30bがそれらの中間の大きさの寸法に形成されている。中間部分30bの外形寸法が、ソケット10の大径部13側の開口部分の内径と略一致している。
【0039】
スリーブ30には、各球16に対応して、小径な先端部分30aの周方向の4箇所に軸方向に延びるように長孔31が形成されている。この長孔31は、幅(周方向の長さ)が球16の直径よりも小さく形成されている。したがって、球16は長孔31を通ってスリーブ30内に落ち込むことがなく、図3に示すように、球16の一部がスリーブ30の内周面から径方向内側に突出した状態となる。
【0040】
また、先端部分30aから中間部分30bにかけて、隣接する長孔31の間には、それぞれ1つのスリット32が軸方向に延びるように形成されている。
スリーブ30の先端部分30aと中間部分30bとの間には、長孔31及びスリット32に隣接して径方向外側に突出する突出部33が、スリット32及び長孔31によって周方向に分離された状態で8箇所に形成されている。この突出部33がソケット10の環状凹部13aの傾斜面と当接することで、差し込み方向および引き抜き方向の移動が制限される。
【0041】
また、スリーブ30の先端部分30aの内周面には、隣接する長孔31およびスリット32を繋ぐ環状部34が径方向内側に突出するように形成されている。したがって、環状部34がスリーブ30の内周面で最も内径寸法が小さくなっている。
さらに、スリーブ30の基端部分30cには、周溝35が形成されている。この周溝35は、周方向で180度離間した2箇所において、内周面と貫通する貫通部35aが形成されている。
【0042】
この周溝35には、図4に示すように略U字形状に形成された板状のロック確認部材36と、図5に示す付勢部材37が挿入されている。
このロック確認部材36は、2本の脚部36aとこれらを連結する連結部36bで構成されている。脚部36aには、仮想線で示されたスリーブ30の内周面と略沿うように凹部36cが形成されている。したがって、ロック確認部材36の凹部36cがスリーブ30の内周面と一致する位置(挿入操作位置A)では、脚部36aはスリーブ30の内周側に現れないが、ロック確認部材36を挿入操作位置よりも周溝35に対して差し込んだ位置(ロック確認位置B)では、係合部としての脚部36aが実質的に径方向内側に移動してスリーブ30の内周側に現れる。
付勢部材37は、図5に示すような略環状の板バネとして機能する部材である。
【0043】
これらロック確認部材36と付勢部材37を周溝35に配置することで、付勢部材37は、ロック確認部材36の基準面36d(図1の左側の面)を周溝35の基準壁35b(図2で左側に位置する径方向に沿った壁部)に対して押し付けた状態に保持している。これにより、ロック確認部材36は、周溝35内でガタつくことなく、軸方向に正確に位置決めされる。
なお、ロック確認部材36を周溝35の左側壁部に押し付けるように配置する。
【0044】
プラグ20は、ソケット10の小径部12の内径と略同一外径寸法の小径部21と、小径部21よりも径寸法が大きく、スリーブ30の内周面と略同一外径寸法の大径部23と、小径部21と大径部23を繋ぐ傾斜面を有する傾斜部22とを備えている。大径部23が流体配管本体に連結される。
【0045】
大径部23には、傾斜部22に隣接して、環状凹部23aが形成されている。この環状凹部23aに球16が嵌まり込むことで、プラグ20がソケット10に連結される。また、大径部23には、環状凹部23aよりも配管本体側にロック確認部材36が嵌まり込むロック確認用の周溝23bが形成されている。被係合部としての周溝23bの環状凹部23a側の径方向に延びる壁部は、後述のように位置決めされた基準壁23cとして形成されている。
【0046】
次に、図6を参照して、本発明の第1実施形態による管継手1の作用を説明する。
図6(a)は、プラグ20を先端側からソケット10内に挿入していき、プラグ20の傾斜部22が球16と当接した状態を示している。
【0047】
図6(a)からプラグ20をさらにソケット10内に押し込んでいくと、傾斜部22がコイルバネ14の付勢力に抗して、球16を環状凹部13a内で径方向外側に移動させる(図6(b))。図6(b)では、球16が傾斜部22の頂部に達している。なお、このとき、プラグ20がロック開始位置Oまで達していないので、ロック確認部材36の基準面36dがプラグ20の周溝23bの基準壁23cよりも手前側(図6で左側)に位置する。したがって、この状態でロック確認部材36を押し込んでも脚部36aがプラグ20の大径部23と当接し、ロック確認部材36をロック確認位置まで差し込むことができない(x1>0)。すなわち、図6(b)に示すロック直前状態では、プラグ20は、ロック開始位置Oよりも距離x1だけ手前に位置している。
【0048】
図6(c)は、さらにプラグ20をロック開始位置Oまで押し込んだことにより、球16が傾斜部22を乗り越えた状態を示している。このとき、球16は、コイルバネ14の付勢力によって環状凹部13a内で右側に移動し、プラグ20の環状凹部23aに落ち込んだ状態となる。これにより、ロック開始位置Oでプラグ20は、ソケット10,スリーブ30,球16,プラグ20の環状凹部23a等からなるロック機構によって、ソケット10に対してロックされる。
【0049】
本実施形態では、プラグ20がロック開始位置Oまで挿入されたときに、プラグ20の周溝23bの基準壁23cとスリーブ30の周溝35の基準壁35bとが軸方向(差し込み方向)で一致するように位置決めされて形成されている。また、付勢部材37によってロック確認部材36が基準壁35bに押し付けられているので、ロック確認部材36の基準面36dがスリーブ30の基準壁35b及びプラグ20の基準壁23cと一致する。
【0050】
これにより、図6(c)に示すように、ロック開始位置Oにおいて、ロック確認部材36をロック確認位置まで差し込むことが可能となり、使用者はロック状態を確認することができる。すなわち、本実施形態では、プラグ20がロック開始位置Oに至るまで(したがって、ロックされるまで)は、ロック確認部材36をロック確認位置まで差し込むことができない。これにより、本実施形態では、ロック前に、使用者が誤ってロック状態であると誤認することを防止することができる。
【0051】
本実施形態の管継手1は、図6(c)の状態から、さらにプラグ20を挿入方向に押し込むオーバーストローク領域を有している。すなわち、ロック状態において、図6(c)の状態から、傾斜部22がスリーブ30の環状部34と当接するまでプラグ20をさらに押し込むことができる。
【0052】
なお、本実施形態では、ロック状態で球16を挟持する環状凹部13a,23aの傾斜面が平行となるように構成されているので、ロック開始位置Oで、球16がプラグ20の環状凹部23aの傾斜面と、ソケット10の環状凹部13aの傾斜面との間に挟まれた状態となる。したがって、一旦ロック状態となった後は、プラグ20を引き抜く方向に移動させることができなくなる。すなわち、ロック機構が全て製造公差0の部品で構成されている場合には、本実施形態の管継手1は、バックラッシュ領域を有していない。しかし、前記の通り、製造公差が存在する場合にはバックラッシュ領域が発生する。
【0053】
また、環状凹部13a,23aの傾斜面の関係を、例えば、図中右側に向けて拡がるように形成することで、バックラッシュ領域を設けてもよい。また、図中左側に向けて拡がるように形成してもよい。このように、バックラッシュ領域を設ける場合であっても、プラグ20がロック開始位置Oまで押し込まれたときに、ロック確認部材36がプラグ20の周溝23bに差し込み可能となるように、製造公差などによるバックラッシュ量を考慮して、周溝23bの基準壁23cと周溝35の基準壁35bの軸方向位置を設定すればよい。
【0054】
また、図6(d)は変形例を示している。この例では、プラグ20を最大オーバーストローク位置まで挿入したときに、ロック確認部材36が周溝23bに差し込み可能となるように形成されている。すなわち、ロック開始位置Oよりもさらに距離x2だけ、プラグ20を押し込んだ位置で、はじめてロック確認部材36がロック確認位置まで差し込み可能となる。この距離x2は前記寸法公差による係合位置のばらつきを吸収する量にするのが望ましい。この例では、最大オーバーストローク位置でロック確認が可能となるが、これに限らず、ロック開始位置Oから最大オーバーストローク位置の間で、ロック確認が可能となるように形成することができる。
【0055】
図6(c)のようにロック開始位置Oでロック確認可能となるように形成した場合、製造公差分を考慮すると、ロック開始位置Oにおいて基準壁35bと基準壁23cとがわずかに軸方向にずれてしまうおそれがある。このため、ロック確認部材36が付勢部材37によって軸方向位置を特定するように付勢されていたとしても、プラグ20がロック開始位置Oに至る前にロック確認部材36がロック確認位置まで差し込むことが可能となってしまう可能性がある。
【0056】
しかしながら、図6(d)のように、製造公差を考慮して、オーバーストローク領域でロック確認可能に構成すると、確実にロック状態となった後でのみロック確認を行うことができるように設定することができる。
【0057】
また、本実施形態では、プラグ20を引き抜く方向に水圧又は水撃による外力がプラグ20に加わった場合、この外力は、ロック確認部材36を介してスリーブ30に伝わる。本実施形態では、ロック確認部材36とスリーブ30との間には付勢部材37が介在しているので、緩衝部としての付勢部材37の緩衝作用により、ロック確認部材36からスリーブ30(正確には、周溝35の側壁)へは直接的にはその力が伝達されない。このため、スリーブ30及びプラグ20の破損を防止することができる。
【0058】
なお、本実施形態では、係合部としてのロック確認部材36の脚部36aが、被係合部としてのプラグ20の周溝23bに嵌まり込む構成であるが、これに限らず、以下の実施形態でも同様に、係合部に被係合部が嵌まり込むように構成してもよい。例えば、脚部36aに凹部を設け、この凹部と係合する凸部を周溝23bの代わりに設けてもよい。
【0059】
次に、図7乃至図10を参照して、本発明の第2実施形態の管継手を説明する。図7は管継手の断面図、図8はカバー部材の説明図、図9はカバー部材の断面図、図10は管継手の動作説明図である。
第2実施形態による管継手2は、図15で示した従来技術に係る管継手と、ソケット,スリーブ,外筒及びプラグの基本的構成について同様であるので、重複する説明は省略する。図7に示すように、第2実施形態による管継手2は、雌ねじ部41を有するソケット40と、ソケット40に挿入されロックされるプラグ50とを備えている。
【0060】
ソケット40は、略円筒形状の部材であり、内周面に、雌ねじ部41と、雌ねじ部41とは逆の端部側に形成された小径部42とを備えている。小径部42には、Oリング42bを配置する内周溝42aが形成されている。
【0061】
ソケット40には、小径部42を外側から覆うように円筒形状のスリーブ60が嵌合固定されている。スリーブ60は、小径部42を覆う圧入嵌合部61と、圧入嵌合部61から図7中右側に突出する延出部62とを備えている。圧入嵌合部61よりも延出部62の方が、外径が小径となっており、全体として、スリーブ60は階段状に形成されている。
【0062】
スリーブ60には、略円筒形状の外筒70が軸方向に移動可能に取り付けられている。この外筒70の図7中右側端部付近には、内周面から径方向内側に突出する環状凸部71が形成されている。この環状凸部71により、その図中左側にはスリーブ60との間に環状凹部71aが形成され、さらに、環状凸部71の図中右側にはスリーブ60との間に環状凹部71bが形成される。
【0063】
環状凹部71aには、コイルバネ74と、コイルバネ74の先端部に取り付けられたリング状のカラー部材75と、カラー部材75を介してコイルバネ74によって先端方向且つ内径方向に付勢される複数の球76(本例では4個)が配置されている。コイルバネ74の基端部は、スリーブ60の圧入嵌合部61に形成された段部に当接している。
【0064】
スリーブ60の延出部62には、各球76に対応した周方向の4箇所で軸方向に延びる長孔62aが形成されている。この長孔62aは、幅(周方向の長さ)が球76の直径よりも小さく形成されている。したがって、球76は長孔62aを通ってスリーブ60内に落ち込むことがなく、球76の一部がスリーブ60の内周面から径方向内側に突出した状態となる。
【0065】
また、スリーブ60の延出部62は、内周面の内径寸法が、圧入嵌合部61側の端部を除いて軸方向にわたって一定に形成されている。延出部62の内周面のうち、圧入嵌合部61側の端部には、半径方向内側に突出する制限部64が形成されている。
【0066】
プラグ50は、ソケット40の小径部42と略同一径寸法の小径部51と、小径部51よりも外径寸法が大きく、スリーブ60の延出部62の内周面と略同一外径寸法の大径部53と、小径部51と大径部53を繋ぐ傾斜面を有する傾斜部52とを備えている。
【0067】
大径部53には、傾斜部52に隣接して、環状凹部53aが形成されている。また、大径部53には、環状凹部53aよりも配管本体側に係合部としてのロック確認部材82a,85aが嵌まり込むロック確認用の被係合部としての周溝53bが形成されている。周溝53bの図7中左側の径方向に延びる壁部は、位置決めされた基準壁53cとして形成されている。
【0068】
さらに、本実施形態の管継手2は、外筒70のまわりを覆う樹脂製の略円筒形状のカバー部材80を備えている。このカバー部材80は、図8に示すように、2つの半円筒状部材81,84を備えている。半円筒状部材81,84は、ヒンジ部80aによって開閉可能に支持され、完全に閉じた状態でそれぞれに設けられた開閉ロック部材80b,80cによってロックすることが可能となっている。
【0069】
カバー部材80は、開閉ロック部材80b,80cによってロックされた状態では、ロック解除機構としての外筒70が覆われることにより、誤って外筒70を解除方向に移動できないように構成されている。
【0070】
図9に示すように、半円筒状部材81,84は内部にプラグ50及びソケット40の結合体を収容する空間部を有し、半円形状の頂部82,85及びその反対側に位置する底部83,86には、それぞれプラグ50及びソケット40を通過させるための開口が形成されている。
【0071】
頂部82,85には、半円筒状部材81,84が閉じた状態でスリーブ60の環状の先端面60aに当接すると共にプラグ50の周溝53bに嵌まり込むロック確認部材82a,85aが形成されている。
【0072】
また、図7に示すように、ロック確認部材82a,85aは、閉状態でプラグ50の周溝53bの外径と略同一の内径を有する半円形開口を形成する。ロック確認部材82a,85aによって形成される軸方向を向く面のうち、ソケット40側に形成される環状面82b,85bは、後述するようにロック開始位置Oに対して位置決めされている。
【0073】
また、底部83,86には、それぞれ底部83,86から頂部側に湾曲して延びる付勢部材83a,86aが一体的に形成されている。この付勢部材83a,86aは、閉状態で、先端面60aとは反対に位置するフランジ部60bでスリーブ60と弾性的に当接するように構成されている。したがって、付勢部材83a,86aがフランジ部60bと当接することにより、スリーブ60の先端面60aに向けて環状面82b,85bが押圧され、これにより、環状面82b,85bの軸方向位置が位置決めされる。
なお、本実施形態では、付勢部材83a,86aが半円筒状部材81,84と一体成形された構成であるが、これに限らず、板バネ等の別部材である付勢部材を半円筒状部材81,84に組み付けた構成としてもよい。
【0074】
次に、図10を参照して、本発明の第2実施形態による管継手2の作用を説明する。
図10(a)は、プラグ50をソケット40に挿入していき、球76が傾斜部52を乗り越える直前、すなわちロック直前の状態を示しており、従来技術の図15(a)の状態に相当する。したがって、プラグ50はロック開始位置Oまで挿入されておらず、ロック開始位置Oよりも距離x3だけ手前に位置している。
【0075】
本実施形態では、プラグ50がロック開始位置Oに位置するときに、スリーブ60の先端面60aの軸方向位置と、プラグ50の周溝53bの基準壁53cの軸方向位置とが一致するように、プラグ50の周溝53bの基準壁53cがスリーブ60の先端面60aに対して位置決めされている。したがって、図10(a)の状態では、カバー部材80を閉じようとしても、環状面82b,85bがスリーブ60の先端面60aと同じ軸方向位置にあるので、ロック確認部材82a,85aはプラグ50の周溝53bに嵌まり込むことができない。
【0076】
図10(b)は、図10(a)の状態からロック開始位置Oまでプラグ50を挿入した状態を示しており、従来技術の図15(c)の状態に相当する。この状態では、球76が環状凹部53aに嵌まり込み、プラグ50は、ソケット40,スリーブ60,球76,プラグ50の環状凹部53a等からなるロック機構によって、ソケット40に対してロックされる。
【0077】
また、このとき、スリーブ60の先端面60a及び環状面82b,85bの軸方向位置と、プラグ50の周溝53bの基準壁53cの軸方向位置とが一致する。したがって、図10(b)の状態では、カバー部材80を閉じようとすると、ロック確認部材82a,85aがプラグ50の周溝53bに嵌まり込み、半円筒状部材81,84を完全に閉じることができる。
【0078】
図10(a)の位置は、従来技術に関して説明したように、バックラッシュ領域と外見上区別がつかないので、使用者は、プラグ50がロックされているものと勘違いするおそれがある。しかしながら、本実施形態の管継手2では、バックラッシュ領域では、構造的にロック確認部材82a,85aが周溝53bに嵌まり込むことができないので、半円筒状部材81,84を完全に閉じることができない。したがって、本実施形態では、使用者は、プラグ50がソケット40に対して完全にロックされたことを、カバー部材80の完全閉止可否によって確認することができる。
【0079】
また、本実施形態では、プラグ50を引き抜く方向に外力が加わった場合、この外力は、ロック確認部材82a,85aを介してスリーブ60に伝わる。本実施形態では、ロック確認部材82a,85aとスリーブ60との間に付勢部材83a,86aが介在しており、付勢部材83a,86aの弾性変形によりロック確認部材82a,85aのプラグ50の引き抜き方向(図10(b)の右方向)への所定距離の移動をすることができる。この距離は、ロック確認部材82a,85aをロック確認位置まで差し込むことのできる位置から、バックラッシュ領域の最長位置(図10(b)の右端位置)までの距離以上とすることが望ましい。
このようにすることで、プラグ50の一部である周溝53bの移動に、ロック確認部材82a,85aが追随することができ、緩衝作用により、ロック確認部材82a,85aからスリーブ60へは直接的にはその力が伝達されない。このため、スリーブ60及びプラグ50の破損を確実に防止することができる。
【0080】
また、付勢部材83a,86aの付勢力をシール用0リング(242b相当)とプラグ50との摺動抵抗ならびにソケット40とプラグ50との摺動抵抗やコイルバネ(274相当)の付勢力より十分に大きく設計しておけば、ロックが完了する前に誤ってカバー部材80を持ってプラグ引き抜き方向に移動させ、ロック確認部材82a,85aを周溝53bに嵌まり込ませた場合でも、カバー部材80を持つ手を放したときにロックを完了させることができる。
【0081】
なお、本実施形態では、ロック開始位置Oで、スリーブ60の先端面60aの軸方向位置と、周溝53bの基準壁53cの軸方向位置とが一致するように形成されているが、これに限らず、先端面60aの軸方向位置に対して基準壁53cの軸方向位置が位置決めされていればよい。したがって、例えば、ロック開始位置Oで、基準壁53cが先端面60aに対して軸方向に所定距離だけ図中右側に位置するように構成してもよい。
【0082】
また、本実施形態では、プラグ50がロック開始位置Oに位置するときに、スリーブ60の先端面60aの軸方向位置と、周溝53bの基準壁53cの軸方向位置とが一致するように形成されているが、これに限らず、部品公差を吸収して、よりロック確認の信頼性を向上させるため、プラグ50がオーバーストローク領域に位置するときに、先端面60aの軸方向位置と、基準壁53cの軸方向位置とが一致するように構成してもよい。
【0083】
次に、図11乃至図14を参照して、本発明の第3実施形態の管継手を説明する。図11は管継手の断面図、図12はロック確認部材の説明図、図13は付勢部材の説明図、図14は管継手の動作説明図である。
第3実施形態による管継手3は、第2実施形態による管継手2と類似した構造を有している。すなわち、ソケット40,プラグ50及び外筒70は同一である。また、スリーブ160及びカバー部材180も第2実施形態のものと基本構造は同一であるので、以下では相違点のみ説明する。
【0084】
本実施形態のスリーブ160は、図11及び図14に示すように、第2実施形態の先端面60aに相当する先端面160aの一部分から配管本体側(図11の右側)に向けて保持部161が延出するように設けられている。
【0085】
保持部161は、中心角で180度離間した所定の角度範囲の部位から先端に向けて所定長さだけ延出する延出部162と、2つの延出部162の先端部を繋ぐリング状の環状部163とを備えている。延出部162及び環状部163の内径は、プラグ50の大径部53の外径寸法と略同じ寸法に設定されている。
【0086】
この保持部161及び延出部162には、図12に示すロック確認部材166と、図13に示す付勢部材169が取り付けられている。
ロック確認部材166は、所定の厚みを有する中心角で約130度の2つの略扇形形状のロック部材167と、これらを弾性的に連結する結合部168とを備えている。2つのロック部材167は、外力が加わらない状態では、凹部167bの間にプラグ50の大径部53が通過可能な空間を形成している(図14(a)参照)。また、ロック部材167は、結合部168により、互いに近づく方向に移動可能となっている。
【0087】
ロック部材167は、略扇形形状に形成された板状の本体部167aと、プラグ50の周溝53bの外径と略同一の曲率半径を有する凹部167bと、その両側に形成された切欠部167cと、本体部167aの円周状縁部から軸方向(本体部分と略垂直な方向)に延びるフランジ部167dとを有している。凹部167bは、扇形の中心に周溝53bの外径を有する円を描いたときに切り欠かれるような曲面を有している。また、切欠部167cは、2つの凹部167bで周溝53bを挟み込んだ状態で、ロック部材167の間に延出部162を通過させ、延出部162がロック部材167と干渉しないようにするために設けられている(図14(b)参照)。
【0088】
付勢部材169は、板バネとして機能するように例えば金属材料で形成されており、リング部169aと、リング部169aの周方向に互いに90度離間した4箇所の部位から径方向外側に延出した後、軸方向に所定角度で屈曲すると共に円周方向に約60度延びる押え部169bとを有している。なお、リング部169aは、取付け易いように円周方向の一部が切断されていてもよい。
【0089】
ロック確認部材166は、スリーブ160の延出部162を2つのロック部材167で挟み込んで、ロック部材167の一方側の面である基準面167eがスリーブ160の先端面160aと当接するようにして、保持部161に配置されている。一方、付勢部材169は、リング部169a内にスリーブ160の延出部162を貫通させ、リング部169aを環状部163と軸方向に接触させると共に、押え部169bでロック部材167をソケット40側に付勢するように、保持部161に配置されている。
【0090】
このように配置することにより、ロック部材167の基準面167eが、スリーブ160の先端面160aに対して軸方向に位置決めされる。なお、この状態で、ロック確認部材166は、ロック部材167を径方向に弾性的に移動させることが可能である。
【0091】
カバー部材180は、第2実施形態と同様に2つの半円筒状部材181,184で形成されている。カバー部材180は、半円筒状部材181,184を閉じて開閉ロック部材180a,180bによりロックしたときに、ソケット40,スリーブ160,外筒70及びプラグ50を貫通させるように頂部及び底部に開口が形成される。また、カバー部材180は、閉状態において、外筒70が覆われることにより、誤って外筒70を解除方向に移動できないように構成されている。
【0092】
また、カバー部材180は、閉状態において、半円筒状部材181,184を形成する周壁181a,184aの内周面181b,184bによって平面視で略円形の空間を形成する。この略円形の空間の直径は、ロック確認部材166がプラグ50の周溝53bを挟み込んだときにフランジ部167dによって形成される円の外径と略等しくなるように設定されている。したがって、ロック確認部材166が完全に閉じないと、カバー部材180を完全に閉じることができないようになっている。
【0093】
次に、図14を参照して、本発明の第3実施形態による管継手3の作用を説明する。
プラグ50をソケット40内に挿入していくと、プラグ50がロック開始位置Oに到達する手前では、プラグ50の周溝53bの基準壁53cがスリーブ160の先端面160aよりも軸方向で手前に位置する。したがって、ロック確認部材166の各ロック部材167の基準面167eは、スリーブ160の先端面160aと軸方向位置が一致しているので、ロック確認部材166を閉じようとすると、凹部167bがプラグ50の大径部53と当接してしまうので、ロック確認部材166を完全に閉じるることができない(図14(a)参照)。
【0094】
ロック確認部材166が完全に閉じないと、カバー部材180を閉じようとしても内周面181b,184bがロック確認部材166のフランジ部167dと干渉してしまうので、カバー部材180を完全に閉じることができない。
【0095】
一方、プラグ50がロック開始位置Oに到達すると、このときにプラグ50の周溝53bの基準壁53cとスリーブ160の先端面160aの軸方向位置が一致する。したがって、ロック確認部材166の各ロック部材167の基準面167eとプラグ50の基準壁53cの軸方向位置が一致する。これにより、ロック確認部材166を完全に閉じて、係合部としてのロック部材167を被係合部としての周溝53bに嵌めこむことができる。
【0096】
ロック部材167を周溝53bに嵌めこむことができると、ロック確認部材166を完全に閉じることが可能であるので、内周面181b,184bがフランジ部167dと干渉してしまうことなく、カバー部材180を完全に閉じることができる。
【0097】
第3実施形態においても、第2実施形態と同様に、バックラッシュ領域では、構造的にロック確認部材166が周溝53bに嵌まり込むことができないので、ロック確認部材166を完全に閉じることができない。したがって、本実施形態においても、使用者は、プラグ50がソケット40に対して完全にロックされたことを、カバー部材80の完全閉止可否によって確認することができる。
【0098】
また、本実施形態では、プラグ50を引き抜く方向に外力が加わった場合、この外力は、ロック確認部材166を介してスリーブ160(正確には、スリーブ160の環状部163)に伝わる。本実施形態では、ロック確認部材166とスリーブ160との間に付勢部材169が介在しており、付勢部材169の弾性変形によりロック確認部材166のプラグ50の引き抜き方向(図11の右方向)への所定距離の移動をすることができる。この距離は、ロック確認部材166をロック確認位置まで差し込むことのできる位置から、バックラッシュ領域の最長位置(図11の右側端部)までの距離以上とすることが望ましい。
このようにすることで、プラグ50の一部である周溝53bの移動に、ロック確認部材166が追随することができ、緩衝作用により、ロック確認部材166からスリーブ160へは直接的にはその衝撃が伝達されない。このため、スリーブ160及びプラグ50の破損を確実に防止することができる。
【0099】
また、付勢部材169の付勢力をシール用0リング(242b相当)とプラグ50との摺動抵抗ならびにソケット40とプラグ50との摺動抵抗やコイルバネ(274相当)の付勢力より十分に大きく設計しておけば、ロックが完了する前に誤ってロック確認部材166を持ってプラグ引き抜き方向に移動させ、ロック部材167を周溝53bに嵌まり込ませた場合でも、ロック確認部材166を持つ手を放したときにロックを完了させることができる。
【0100】
なお、本実施形態においても、ロック開始位置Oで、スリーブ160の先端面160aの軸方向位置と、周溝53bの基準壁53cの軸方向位置とが一致するように形成されているが、これに限らず、先端面160aの軸方向位置に対して基準壁53cの軸方向位置が位置決めされていればよい。したがって、例えば、ロック開始位置Oで、基準壁53cと先端面160aに代わる部分が一致する関係を保つ場合は、それらが軸方向に所定距離だけ図11中右側に位置するように構成してもよい。
【0101】
また、本実施形態では、プラグ50がロック開始位置Oに位置するときに、スリーブ160の先端面160aの軸方向位置と、周溝53bの基準壁53cの軸方向位置とが一致するように形成されているが、これに限らず、プラグ50がオーバーストローク領域に位置するときに、先端面160aの軸方向位置と、基準壁53cの軸方向位置とが一致するように構成してもよい。
【0102】
また、本発明に関する前記ロック機構は、球を用いたロック機構で説明したが、球を用いないロック機構、例えば、特開2006−226532号公報に記載されているような、プレス加工の部品や切削加工の部品を用いたロック機構にも適用できる。
【符号の説明】
【0103】
1,2,3,200,300 管継手
10,40,240,310 ソケット
13a 環状凹部
20,50,250,320 プラグ
22 傾斜部
23a 環状凹部
23b 周溝
23c 基準壁
30,60,160,260,330 スリーブ
35 周溝
35b 基準壁
36 ロック確認部材
36d 基準面
52 傾斜部
53a 環状凹部
53b 周溝
53c 基準壁
60a 先端面
70 外筒
71a 環状凹部
80 カバー部材
82a,85a ロック確認部材
82b,85b 環状面
160a 先端面
161 保持部
166 ロック確認部材
167e 基準面
180 カバー部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路を内部に有するプラグと、このプラグが差し込まれるソケットと、前記プラグを前記ソケットに対してロックするロック機構と、このロック機構により前記プラグが前記ソケットに対してロックされていることを確認するためのロック確認機構と、を備えた管継手であって、
前記ロック機構は、前記プラグが前記ソケットのロック開始位置まで差し込まれたときに前記プラグを前記ソケットに対してロックすると共に、前記ロック開始位置を越えて所定の距離だけ更に差し込み方向へ差し込み可能なオーバーストローク位置までの間のオーバーストローク領域でロック状態にあり、
前記ロック機構は、前記プラグが前記ソケットに対してロックされた状態で、前記プラグを前記ロック開始位置から差し込み方向とは反対方向に所定距離だけ移動可能なバックラッシュ領域を更に有し、
前記ロック確認機構は、前記ソケットに対して差し込み方向の位置が規定されると共に前記ソケットの径方向内側に向けて移動可能な係合部と、前記プラグに設けられた被係合部と、を有し、前記係合部が、前記ソケットの径方向内側に向けて移動して前記被係合部と係合することにより前記プラグのロックを確認可能に構成され、
前記係合部及び被係合部は、前記プラグが前記ロック開始位置まで差し込まれていないときには係合せず、前記プラグが前記ロック開始位置から前記オーバーストローク位置までの範囲に差し込まれているときに係合するように位置決めされていることを特徴とする管継手。
【請求項2】
前記係合部及び被係合部は、前記プラグが前記ロック開始位置を越えて、前記オーバーストローク領域まで差し込まれたときにのみ、互いに係合するように位置決めされていることを特徴とする請求項1に記載の管継手。
【請求項3】
前記ロック機構は、ロック解除操作を行うためのロック解除機構を更に備え、
前記ロック確認機構は、少なくとも前記係合部と前記被係合部が係合、または前記プラグが前記ソケットに対してロックされた状態において、前記ロック解除機構によるロック解除操作が行われることを防ぐように、前記ロック解除機構を覆うカバー部材を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の管継手。
【請求項4】
前記ロック確認機構は、前記プラグが前記ソケットに対してロックされた状態において、前記プラグを前記ソケットから引き抜く方向に外力が加わったときに、この外力によって前記被係合部から前記係合部に加わる力を低減する緩衝部を更に備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の管継手。
【請求項5】
前記緩衝部は、前記係合部をプラグ差し込み方向へ付勢し、前記ソケットに対する前記係合部の差し込み方向位置を位置決めする付勢手段を備えていることを特徴とする請求項4に記載の管継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−230077(P2010−230077A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−77998(P2009−77998)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】