説明

管継手

【課題】挿入脚部の外周面にOリングを嵌着するプラグ部材であっても、Oリング溝の外周面にパーティングを有しない管継手を提供する。
【解決手段】一端にプラグ部材1を受け入れる受け口部10が形成されているソケツト部材2と、このソケツト部材2の受け口部10に挿入可能な挿入脚部6を有するプラグ部材1とからなる管継手であって、プラグ部材1の挿入脚部6の先端部分にOリング溝7の先端寄り壁面を形成するフランジ21を一体に装着することで挿入脚部6の先端にOリング溝7を形成し、Oリング溝7の溝底壁にパーティングラインを有しないようにして、シール性能の低下を抑制した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給水・給湯、冷温水、冷却水等の配管、消火配管などに用いられ、それらの配管の一端部同士を接続するのに用いられる管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
給水・給湯等の配管に用いられる管継手として、例えば、図6に示すような管継手が提案されている(特許文献1)。この管継手は、給水栓やヘッダー等の器具に配置されるプラグ部材(51)と、このプラグ部材(51)に嵌着するソケット部材(52)とで構成されており、ソケツト部材(52)は、一端に前記プラグ部材(51)を受け入れる受け口(53)を形成するとともに、他端にパイプ材(54)が接続されるようになっている。また、プラグ部材(51)はソケツト部材(52)の受け口部(53)に挿入される脚部(55)にシール用のOリング(56)を外嵌装着するためのOリング溝(57)とソケツト部材(52)に形成されている係止具(58)を受け入れる係止溝(59)とが形成してある。そして、この管継手は、プラグ部材(51)をソケツト部材(52)に差込むだけて連結可能なクイックカップリングになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−92100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記した管継手にあっては、プラグ部材(51)の外周面にOリング溝(57)を形成し、このOリング溝(57)に装着したOリング(56)をソケツト部材(52)の受け口部(53)の内周面に圧接することにより、シール機能を持たせるようにしているが、プラグ部材(51)を合成樹脂や金属で型形成した場合には、図6に示すように、成型の合わせ面部分にパーティングライン(P)が突出形成されるが、このパーティングライン(P)は前記したプラグ部材(51)の場合には、外周面にプラグ部材軸芯と平行にあらわれる。このため、このパーティングライン(P)がOリング(56)の内側接触部分を少し押し上げる状態となることから、Oリング(56)が部分的に異常変形することになり、Oリング溝(57)の底面部分へOリング(56)の接触圧力が低下する。しかも、この部分は、外部空間へ連通する部分でのシール個所となることから、シール性能が低下する要因になっていた。
【0005】
本発明はこのような点に鑑み提案されたもので、挿入脚部の外周面にOリングを嵌着するプラグ部材であっても、Oリング溝の外周面にパーティングを有しない管継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明は、一端にプラグ部材を受け入れる受け口部が形成されているソケツト部材と、このソケツト部材の受け口部に挿入可能な挿入脚部を有するプラグ部材とからなり、プラグ部材の挿入脚部の先端寄り部分にシール用のOリングを外嵌装着するためのOリング溝を形成するとともに、挿入脚部の中間部分にソケツト部材に設けられている係止具を受け入れる係止溝が形成してある管継手であって、挿入脚部の先端部分にOリング溝の先端寄り壁面を形成するフランジを一体に装着することで挿入脚部の先端にOリング溝を形成するようにしたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、プラグ部材の挿入脚部先端にOリング溝の先端寄り壁面を形成するフランジを一体に装着することで挿入脚部の先端部にOリング溝を形成するようにしていることから、Oリング溝の底壁部分にパーティングラインを生じさせることなくプラグ部材を構成することができる。これにより、プラグ部材をソケット部材に接合した際にOリングが溝底壁に確実に当接することができことになり、確実にシールすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態を示す管継手の半欠截断面図である。
【図2】プラグ部材の半欠截断面図である。
【図3】プラグ部材の別の実施形態を示す半欠截断面図である。
【図4】プラグ部材の異なる別の実施形態を示す半欠截断面図である。
【図5】従来技術の一例を示す図1対応図である。
【図6】従来技術のプラク部材を示し、図6aは外観図、図6bは図6aのB−B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る管継手は、図1および図2に示すように、ストレート型のプラグ部材(1)、ストレート型のソケツト部材(2)、係止具(3)、シール用Oリング(4)、およびソケットカバー(5)を主要構成部材としている。
【0010】
プラグ部材(1)は、ポリブテン、ポリエチレン、塩化ビニル等の樹脂材料で構成されており、その一端を挿入脚部(6)に形成し、この挿入脚部(6)の先端部分の外周にシール用Oリング(4)が収容されるOリング溝(7)を形成するとともに、挿入脚部(6)の中間部分での外周に、ソケット部材(2)に装着されている係止具(3)が嵌り込む環状の係止溝(8)が形成してある。そして、このプラグ部材(1)の他端部は、給水栓やバルブ、あるいはヘッダー等の器具にとりつけられる。
【0011】
係止具(3)はポリオキシメチレン(POM)等の合成樹脂や金属材料で開離両端部を有するC形状に形成されて弾性で拡縮変形自在なリング本体部(3a)と、このリング本体部(3a)の内周部分に内向きに一体突設した複数個の係止爪(3b)とを有する形状に形成してある。
【0012】
ソケット部材(2)は、ポリブテン、ポリエチレン、塩化ビニル等の樹脂材料で短管状に構成されており、その一端に前述のプラグ部材(1)の挿入脚部(6)を挿嵌する受け口部(10)を開口形成してある。また、ソケット部材(2)の受け口部(10)を形成してある部分に前記した係止具(3)を嵌着する係止具収容溝(11)が設けてある。この係止具収容溝(11)の溝底には、係止具(3)の前記係合爪(3b)に対応する係合爪挿通孔が形成してある。がその内端部を受け口部(10)の内部に突出する状態で装着してある。ソケツト部材(2)の他端には、前記受け口部(10)の外径よりも小径の小径管部を受け口部(10)に段部を介して連接している。このソケツト部材(2)の小径管部は、ソケツト部材(2)と同様、ポリブテン、ポリエチレン、塩化ビニル等の樹脂材料からなるパイプ材(12)の一端部が挿入されて、熱融着または電気融着等で接合できるようになっている。なお、このソケツト部材(2)とパイプ材(12)との接合手段としては、熱融着・電気融着以外に、接着手段で接合するようにしてもよい。
【0013】
係止具(3)は、ソケツト部材(2)の係止具収容溝(11)にはめ込まれると、図1から明らかなように、係止具(3)の係合爪(3b)が係止爪挿通孔を通してその先端部が受け口部(10)内へ突出するとともに、係止具(3)の外周面がソケツト部材(2)の受け口部での外周面と略面一となるように収められるように構成してある。そして、プラグ部材(1)の挿入脚部(6)がソケツト部材(2)の受け口部(10)に所定深さまで挿嵌されると、係止具収容溝(11)が挿入脚部(6)に形成した係止溝(8)の外周に対応して、係止爪挿通孔から突出する係止具(3)の係止爪(3b)の先端がプラグ部材(1)の挿入脚部(6)に形成した係止溝(8)に嵌係合してプラグ部材(1)とソケット部材(2)とを組み付けられるように構成してある。
【0014】
ソケットカバー(5)は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニールサルフォン(PPSU)等の合成樹脂材料で形成してあり、ソケット部材(2)の受け口部(10)での外径と略同一の内径を有する筒状に形成している。特に、ソケツトカバー(5)がポリエチレン樹脂で形成される場合は、補強機能を確保するために、その軸方向一端の開口端の内周に黄銅等の金属製の補強リング(13)をインサート成型するか、あるいは嵌合固定する。ソケツトカバー(5)が機械的強度に優れるポリプロピレンやポリフェニールサルフォン(PPSU)等で成形される場合は、敢えて補強リングを一体にインサート成形または、嵌合固定する必要はない。ソケットカバー(5)の軸方向他端の開口端には、ソケット部材(2)の小径管部の外径と略同一の内径を有する位置決め機能用の内向き鍔(14)を設けている。内向き鍔(14)の内周縁には、内向き鍔(14)を拡縮変形自在とするための切欠き(15)を円周方向に列設している。
【0015】
そして、このソケツトカバー(5)は、ソケツト部材(2)の外周に少なくとも係止具(3)のリング本体部(3a)の外周を覆うように被覆嵌合される。すなわち、ソケット部材(2)において、小径管部の先端の外周に第1の環状リブ(16)を設け、この第1環状リブ(16)と段部(2a)との間に第2の環状リブ(17)、第3の環状リブ(18)を設ける。かくして、ソケットカバー5をこれの軸方向一端の開口端をソケット部材(2)の小径管部の先端から第1の環状リブ(16)を乗り越えて小径管部の外周に嵌合し、内向き鍔(14)を第1環状リブ(16)と第2環状リブ(17)との間に停止させた状態(待機姿勢)に装着する。この状態では、図1に示すように、係止具(3)はソケットカバー(5)により覆われず露出する状態にあり、係止具(3)はソケット部材(2)の係止具収容溝(11)に対して着脱操作可能になっている。
【0016】
管継手の接続時には、プラグ部材(1)をソケツト部材(2)に挿入した状態で、ソケツトカバー(5)を前述の待機姿勢からソケツト部材(2)の受け口部(10)の方向へ押し動かして、第2の環状リブ(17)、第3の環状リブ(18)を順次乗り越えるまで、スライド移動させ、内向き鍔(14)が段部(2a)に当接係合するように、第3環状リブ(18)と段部(2a)との間に停止させる。これにより、ソケットカバー(5)が補強リング(13)で係止具(3)の外周を覆う状態を維持することになる。なお、ソケツトカバー(5)は、内向き鍔(14)の周縁部に切欠き(15)を設けているので、内向き鍔(14)が第1・第2・第3の環状リブ(16)・(17)・(18)を乗り越える際に弾性によって拡開変形することから、該環状リブ(16)・(17)・(18)を乗り越えやすくなる。
【0017】
ソケットカバー(5)を補強リング(13)が係止具(3)のリング本体部(3a)の外周を覆う状態に嵌合下後においても、係止具(3)が係止具収容溝(11)に装着されているか否かを該ソケットカバー(5)の外部から容易に確認することができるようにソケットカバー(5)は透明若しくは半透明に形成しておくことが望ましい。この場合、ソケットカバー(5)は、係止具(3)に施した色彩とは識別しやすい色彩に着色した透明または半透明に形成しておくことが、視認性の面でより好ましい。
【0018】
また、プラグ部材(1)の挿入脚部(6)は、図2に示すように脚部本体(19)の先端部外径を小径に形成して、Oリング溝(7)の溝底壁部分を形成するとともに、脚部本体(19)の先端部にOリング溝(7)の先端寄り壁面(20)を形成するフランジ(21)を有する挿嵌体(22)を嵌着して形成してある。
【0019】
この挿嵌体(22)は青銅で形成してあり、前記フランジ(21)と脚部本体(19)の内部通路(23)に内嵌する筒状部(24)とを一体に形成してある。この筒状部(24)は、その内径は内部通路(23)の内径と等しく形成してあり、脚部本体(19)の内部通路(23)の先端部に形成した拡径部分(23a)に圧入して嵌着固定するように構成してある。また、フランジ(21)の外径は脚部本体(19)の外径と等しく形成してある。
【0020】
図3は、プラグ部材(1)の別実施形態を示すもので、これは、前実施形態と同様に脚部本体(19)の先端部外径を小径に形成して、Oリング溝(7)の溝底壁部分を形成するとともに、脚部本体(19)の先端部にOリング溝(7)の先端寄り壁面(20)を形成するフランジ(21)を有する挿嵌体(22b)を嵌着して形成してある。
【0021】
この挿嵌体(22b)はポリブテン樹脂で形成してあり、フランジ(21)の内端部分に係着リング部(25)を突出し、この係着リング部(25)を脚部本体(19)の内部通路(23)の先端部に形成した切欠き部に嵌着して、高周波により脚部本体(19)と挿嵌体(22b)とを融着して一体化したものである。
【0022】
図4は、プラグ部材(1)の更に別実施形態を示すもので、これは、上記各実施形態と同様に脚部本体(19)の先端部外径を小径に形成して、Oリング溝(7)の溝底壁部分を形成するとともに、脚部本体(19)の先端部にOリング溝(7)の先端寄り壁面(20)を形成するフランジ(21)を嵌着して形成してある。
【0023】
この実施形態では、フランジ(21)をポリブテン樹脂で形成し、脚部本体(19)の先端部をOリング溝(7)の溝底壁部分から更に段落ち状に形成してリング体(26)となし、このリング体(26)部分にフランジ(21)を外嵌して、超音波により脚部本体(19)とフランジ(21)とを融着して一体化したものである。
【0024】
フランジ(21)を有する挿嵌体(22)(22a)をプラグ部材(1)と同様に樹脂材料で形成した場合には、前記した高周波融着や超音波融着のほか、熱融着や他の接合手段を採用してもよい。
【0025】
このように、プラグ部材(1)の挿入脚部(6)の先端にフランジ(21)を装着して、Oリング溝(7)の先端寄り壁面(20)を形成するようにすると、成形金型をプラグ部材(1)の軸芯に沿って外すことが、でき、Oリング溝(7)部分に金型分離に基き形成されるパーティングラインが生じなくなるから、この、Oリング溝(7)に用Oリング(4)を挿嵌した際に、Oリング(4)がOリング溝(7)の溝底壁に全周に亘って均等に当接することになる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、プラグとソケツトとで構成される管継手に利用することができる。
【符号の説明】
【0027】
1…プラグ部材、2…ソケット部材、3…係止具、4…Oリング、6…プラグ部材の挿入脚部、7…Oリング溝、8…係止溝、10…受け口部、21…フランジ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端にプラグ部材(1)を受け入れる受け口部(10)が形成されているソケツト部材(2)と、このソケツト部材(2)の受け口部(10)に挿入可能な挿入脚部(6)を有するプラグ部材(1)とからなり、プラグ部材(1)の挿入脚部(6)の先端寄り部分にシール用のOリング(4)を外嵌装着するためのOリング溝(7)を形成するとともに、挿入脚部(6)の中間部分にソケツト部材(2)に設けられている係止具(3)を受け入れる係止溝(8)が形成してある管継手であって、挿入脚部(6)の先端部分にOリング溝(7)の先端寄り壁面を形成するフランジ(21)を一体に装着することで挿入脚部(6)の先端にOリング溝(7)を形成するようにしたことを特徴とする管継手。
【請求項2】
プラグ部材(1)が合成樹脂製である請求項1に記載の管継手。
【請求項3】
フランジ(21)を挿入脚部(6)の先端部に嵌着接合してある請求項1または2に記載の管継手。
【請求項4】
フランジ(21)が挿入脚部(6)の先端に圧嵌固定してある請求項3に記載の管継手。
【請求項5】
フランジ(21)を挿入脚部(6)の先端に高周波融着してある請求項3に記載の管継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−281382(P2010−281382A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−135084(P2009−135084)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(000231121)JFE継手株式会社 (140)
【Fターム(参考)】