管継手
【課題】 コルゲート管の接続施工が完了した状態から、誤ってコルゲート管を管継手に押し込んだ場合においても、管継手を分解する機能を失うことのない管継手を提供する。
【解決手段】 管継手1は、一端からフレキシブル管11が挿入される内孔21を有した継手本体2と、フレキシブル管11が奥まで挿入されると挿入方向とは逆方向にスライドしフレキシブル管11と継手本体2をシールするシール部材5と、シール部材5に隣接しフレキシブル管11に係止される爪部61aを有する抜け止め部材(リテーナ)6とを有する。さらに、シール部材5と抜け止め部材6との間に抜け止め部材再拡径防止手段531とを備え、シール部材5のスライド動作に伴って、抜け止め部材6はフレキシブル管11に係止し、抜け止め部材再拡径防止手段531は抜け止め部材6と継手本体2との間に移動するように作用する。
【解決手段】 管継手1は、一端からフレキシブル管11が挿入される内孔21を有した継手本体2と、フレキシブル管11が奥まで挿入されると挿入方向とは逆方向にスライドしフレキシブル管11と継手本体2をシールするシール部材5と、シール部材5に隣接しフレキシブル管11に係止される爪部61aを有する抜け止め部材(リテーナ)6とを有する。さらに、シール部材5と抜け止め部材6との間に抜け止め部材再拡径防止手段531とを備え、シール部材5のスライド動作に伴って、抜け止め部材6はフレキシブル管11に係止し、抜け止め部材再拡径防止手段531は抜け止め部材6と継手本体2との間に移動するように作用する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛇腹状のコルゲート管の接続に用いる管継手の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
屋内ガス配管等には、金属製の蛇腹状コルゲート管が広く用いられている。また、このコルゲート管とガス栓や鋼管などとを接続するための管継手が種々用いられている。出願人らは、特許文献1及び特許文献2において、コルゲート管を挿入するだけで接続が出来るとともに、この接続作業を確実に行うことが容易な管継手を提案した。
【0003】
これらの管継手は、圧縮した状態のバネを継手内部に装着しており、コルゲート管を挿入すると、コルゲート管の先端が可動部材を継手本体の奥側へ移動させ、バネを圧縮状態から開放させる。バネの付勢力は、シール部材を圧縮してコルゲート管とのシール面圧を向上させると共に、抜け止め部材(以下「リテーナ」とも称する)を縮径させてコルゲート管と係止するものである。
また継手本体の内孔には、係止溝と、これに連なり前記係止溝よりも大径とした回避溝とを形成し、他方、ナット部材の外径側には外周溝を形成し、前記係止溝と前記外周溝とを跨ぐようにストップリングを配置させて前記継手本体と前記ナット部材とを係止すると共に、前記ナット部材の他端側には大径部が形成され、前記大径部と前記継手本体の端部との間に分解用リングを備えることを特徴としている。このことによって、コルゲート管を傷つけることなく分解することが可能としている。
【0004】
【特許文献1】特願2008−220319
【特許文献2】特願2008−220336
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図12に示すように、この従来の管継手では施工完了した状態で、バネ96の伸長分の隙間Lがコルゲート管Tの先端に生じることとなる。そして、この状態からコルゲート管Tを継手本体90奥方向に向かって押し込むと、図13に示すように、コルゲート管Tの1山分押し込むことができる。そうすると、この管継手を分解するために、分解用リング97を取り除き、ナット部材91を継手本体90の奥方向に押し込もうとしても、押し込むことができず、分解することが不可能となってしまうという問題があった。なお92は気密パッキン、93は金属ガイド、94は耐火パッキン、95はリテーナである。
本発明の目的は、コルゲート管の接続施工が完了した状態から、誤ってコルゲート管を管継手に押し込んだ場合においても、管継手を分解する機能を失うことのない管継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明は、一端からフレキシブル管が挿入される内孔を有した継手本体と、前記フレキシブル管が奥まで挿入されると挿入方向とは逆方向にスライドし前記フレキシブル管と前記継手本体をシールするシール部材と、前記シール部材に隣接し前記フレキシブル管に係止される爪部を有する抜け止め部材(リテーナ)と、前記シール部材と前記抜け止め部材との間に介在させた抜け止め部材再拡径防止手段とを備え、前記シール部材のスライド動作に伴って、前記抜け止め部材は前記フレキシブル管に係止し、前記抜け止め部材再拡径防止手段は前記抜け止め部材と前記継手本体との間に移動するように構成された管継手である。
【0007】
本発明において、前記抜け止め部材再拡径防止手段は、前記シール部材とともに前記内孔にスライド可能に設けることが好ましい。
本発明において、前記抜け止め部材再拡径防止手段は、前記シール部材と一体となすことが好ましい。
また本発明において、前記シール部材は、フレキシブル管の外周をシールする気密パッキンと、常温ではフレキシブル管の外周をシールせず、加熱時に熱膨張してフレキシブル管の外周をシールする耐火パッキンとを含み、前記抜け止め部材再拡径防止手段は、前記耐火パッキンと一体となすことが好ましい。
【0008】
あるいは本発明において、前記抜け止め部材再拡径防止手段は、前記継手本体の内孔に内接するC型リングとすることができる。
【0009】
また上記発明において、前記継手本体の前記内孔には圧縮状態に保持された弾性部材を備え、該弾性部材は圧縮バネと、L字形断面を有するガイド部材と、該ガイド部材の内側に接し軸方向に移動可能に設けられる移動部材とからなり、前記移動部材が前記ガイド部材と非接触になる位置に移動することに伴って、圧縮バネが伸長し、前記シール部材が前記フレキシブル管の挿入方向とは逆方向へスライドするように構成することができる。
【0010】
また上記発明において、前記継手本体に対して前記押ナットを所定の位置に保持するストップリングを備え、前記ストップリングは前記フレキシブル管の挿入動作では前記抜け止め部材を前記フレキシブル管に対して係止解除状態に維持する第1の位置と、前記フレキシブル管の挿入確認動作では前記抜け止め部材を前記フレキシブル管に対して係止状態に維持しかつ前記継手本体と前記押ナット部材との間に外周から施工確認が可能なギャップを形成する第2の位置に選択的に移動することができる。
【0011】
さらに本発明において、前記押ナットには前記フレキシブル管の挿入動作では前記継手本体で隠蔽されかつ前記フレキシブル管の挿入確認動作では露出する分解リングが着脱自在に設けられ、前記押ナットから前記分解リングが取り外されると前記ギャップが消滅するとともに前記ストップリングが前記継手本体のみに係止される第3の位置に移動することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る管継手によれば、前記シール部材と前記抜け止め部材(リテーナ)との間に抜け止め部材再拡径防止手段を備え、前記シール部材のスライド動作に伴って、前記抜け止め部材は前記フレキシブル管に係止し、前記抜け止め部材再拡径防止手段は前記抜け止め部材と前記継手本体との間に移動するように構成されているので、フレキシブル管の接続施工が完了した状態から、誤ってフレキシブル管を管継手に押し込もうとした場合においても、抜け止め部材が再び拡径することがなく、フレキシブル管が押し込まれることがない。したがって、管継手の分解機能を失うこともない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明にかかる第一実施例の管継手の半断面図である。
【図2】継手本体を示す半断面図である。
【図3】図1の要部を拡大した断面図であり、(a)はストップリングが第1の位置に保持されている状態を示す図、(b)はストップリングが第2の位置に保持されている状態を示す図である。
【図4】ガイド部材を示す斜視図である。
【図5】本発明にかかる第一実施例の管継手にフレキシブル管を途中まで挿入した状態を示す半断面図である。
【図6】本発明にかかる第一実施例の管継手へフレキシブル管の接続が完了した状態を示す半断面図である。
【図7】本発明にかかる第一実施例の管継手から分解用リングを取外し、押ナットを継手本体奥方向へスライドさせた状態を示す半断面図である。
【図8】本発明にかかる第一実施例の管継手を分解した状態を示す半断面図である。
【図9】本発明にかかる第二実施例の管継手の半断面図である。
【図10】本発明にかかる第三実施例の管継手の半断面図である。
【図11】本発明にかかる第三実施例の管継手へフレキシブル管の接続が完了した状態を示す半断面図である。
【図12】従来の管継手へフレキシブル管の接続が完了した状態を示す半断面図である。
【図13】図12の状態からフレキシブル管をさらに押し込んだ状態を示す半断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
[第一の実施の形態]
本発明の第一の実施の形態を図1から図6を用いて詳細に説明する。図1は本発明の管継手の一実施例の半断面図、図2は継手本体を示す半断面図、図3は図1の要部を拡大した断面図であり、(a)はストップリングが第1の位置に保持されている状態を示す図、(b)はストップリングが第2の位置に保持されている状態を示す図である。
また図4はガイド部材を示す斜視図、図5は本発明にかかる第一実施例の管継手にフレキシブル管を途中まで挿入した状態を示す半断面図、図6は本発明にかかる第一実施例の管継手へフレキシブル管の接続が完了した状態を示す半断面図、図7は本発明にかかる第一実施例の管継手から分解用リングを取外し、押ナットを継手本体奥方向へスライドさせた状態を示す半断面図、図8は本発明にかかる第一実施例の管継手を分解した状態を示す半断面図である。
【0015】
<管継手1>
図1に示すように、管継手1は、一端から図示しないフレキシブル管(例えば樹脂被覆が施された金属コルゲート管)が挿入される内孔21を有し、他端側におねじ部22が形成された継手本体2と、その一部が継手本体2に挿入される押ナット3と、圧縮状態に保持され、継手本体2の内部に装着される弾性部材4と、内孔21にスライド可能に配置されたシール部材5と、図示しないフレキシブル管の外周に係合するリテーナ6(抜け止め部材)を有する。また8aは押ナット3と継手本体2をシールするためのOリング、8bは押ナット3とフレキシブル管をシールするためのリップパッキンである。
【0016】
(継手本体)
上記の継手本体2は、図2に示すように、一端から他端に向かって内径が段階的に減少する形状を有し、弾性部材4の一部を受容するインロー部23と、弾性部材4の他の部分を受容しかつシール部材5がスライド可能に入り込む第1段部24と、リテーナ6と押ナット3がスライド可能に入り込む第2段部25と、一端部に形成された環状溝29(図1における分解リング9が入り込んでいる部分)を有する。またインロー部23と第1段部24の間には、環状に係合溝241が形成されている。
【0017】
第2段部25には、詳細は後述するが、ストップリング7が軸方向に移動可能に装着される係止溝27と、その奥側に位置しかつそれより深い保持溝28が設けられている。
【0018】
(押ナット)
押ナット3は、リテーナ6に当接し、断面が楔状に形成されてテーパ面31aを有する先端部31を有するとともに、外周面にストップリング7の一部が進入する外周溝32が形成されている。押ナット3には、2つのOリング8a、リップパッキン8bが嵌装されるとともに、継手本体2の一端側に対向する位置に、外気と連通する通気孔(例えば円孔)が設けられ、そこに選択透過性部材10が装着される。そして押ナット3の外周面は滑らかな円筒状で、人の手では把持しにくい形状となっている。誤って押ナット3をスライドさせてしまわないためである。
【0019】
(弾性部材)
弾性部材4は、フレキシブル管が継手本体の奥まで挿入されたときに、シール部材5をフレキシブル管の挿入方向と逆方向に押圧することにより、リテーナ6を押ナット2の先端部に当接させかつシール性を向上させる機能を有する部材である。この弾性部材4は、圧縮コイルばね41(図1は圧縮された状態を示す。)と、L字形断面を有する略円筒状のガイド部材42と、ガイド部材42の内径側に軸方向に移動可能に設けられる略円筒状の移動部材44を有する。ガイド部材42は、図3に示すように中空円板状の支持部421と、そこから軸方向に延出する(円周方向に沿って配置された)複数の円弧部422を有し、その先端は斜め上方に折曲げられて折曲部422aが形成されている。
【0020】
そして、支持部421と継手本体2の第1段部24の奥端との間に圧縮コイルばね41を圧縮させた状態で挟持し、折曲部422aを継手本体2の係合溝241に係止させるとともに、折曲部422aの内周面を移動部材44で支持して、折曲部422aが開かないようにして、圧縮コイルばね41が圧縮された状態を保っている。言い換えると、移動部材44が、継手本体の奥側に移動(スライド)して、折曲部422aの内周面から離脱すると、折曲部422aが縮径して、折曲部422aが係合溝241から離脱し、圧縮コイルばね41が伸長するように構成されている。ガイド部材42は、強度の点から金属材料で形成することが好ましい。移動部材44は、移動を円滑に行うために、例えばエンジニアリングプラスチックのような比重の小さい材料からなり、ガイド部材42(円弧部422の内径面)に当接するフランジ部441を有する。
【0021】
(シール部材)
シール部材5は、金属ゴルゲート管の先端側をシールするために、例えばゴム材料からなる気密パッキン51と、このパッキンに固着されたL字形の断面形状を有する金属製ガイド52に固設された耐火パッキン53を有する。気密パッキン51の外径側は、継手本体2の第1段部24の内径よりも大きく設定し、この第1段部24に密着するように圧入されている。ただし、気密パッキン51は、金属コルゲート管の外径よりもやや小さい内径を有するとともに、金属コルゲート管の例えば2山分をシールできるような長さを有し、金属コルゲート管の外周側を気密にシールすることができる。このパッキンは、特に長期間にわたってシール性能を保持する必要性から、耐ガス透過性に優れているジェン系特殊ゴム(例えばNBR)で形成することができる。
【0022】
(耐火パッキン)
管継手1が火災等で高温に曝されて、通常のゴム材料からなる気密パッキン51が焼失した場合でも、ガス漏れを防止できるようにするために、シール部材5は高温に曝されると熱膨張する耐火パッキン53を有する。気密パッキン51が焼失した場合、耐火パッキン53が熱膨張して、継手本体2と金属コルゲート管12との隙間に充填される。また弾性部材4が軸方向に伸長することによりガイド部材42に当接するので、熱膨張した耐火パッキン53の移動が規制されて、耐火パッキン53は、継手本体2の内周面と金属コルゲート管12の外周面をシールすることができる。
【0023】
そして耐火パッキン53には、リテーナ6に向かって突出する抜け止め部材再拡径防止部531が一体的に形成されている。抜け止め部材再拡径防止部531の外径は、第2段部25に内接し、内径はリテーナ6が縮径して金属コルゲート管12の谷部に係止されたときの外径よりもやや大きい寸法に設定している。また金属ガイド52の内径は、図1に示すように、金属コルゲート管12を挿入する前の無負荷状態でのリテーナ6の爪部61aの内径とほぼ同一に設定している。
【0024】
(リテーナ)
リテーナ6は、弾性変形可能な材料(例えばエンジニアリングプラスチック)からなり、ナットに当接するテーパ面61bが形成された基部61を有するリング状部材である。このリテーナは一端側が円周方向に形成された複数の軸方向溝62によって複数のセグメントに分割されるとともに、各セグメントの先端の内径側には、継手本体2の奥までコルゲート管12が挿入されたときに、金属コルゲート管12の谷部に係止される金属材料(例えば黄銅)からなる爪部61aが設けられている。ただしこれらの爪部61aは、無負荷状態では金属コルゲート管12の外径よりも大なる内径を有し、金属コルゲート管12が挿入されるときには、その山部に引っ掛からないような寸法に設定される。
【0025】
(ストップリング)
ストップリング7は、弾性変形可能なC字状部材であり、施工作業の状態に応じて継手本体2に対して押ナット3を複数の位置に切換える位置切換機能と所望の位置に押ナット3をロックしておくロック機能を有する。このストップリング7は、これらの機能を具有するために、例えばオーステナイト系ステンレス鋼のようなばね性を有する金属材料からなる線材で形成することができる。ストップリング7については後述する係止溝の項でも説明する。
【0026】
(分解リング)
フレキシブル管11が挿入施工された管継手を分解する場合に、その作業を速やかに行うために、例えばSUS304−WPBからなるC型形状の分解リング9が押ナット3に着脱自在に装着される。この分解リング9は、押ナット3への装着と取り外しを容易に行えるような形状を有し、押ナット3の外周面に形成された円周溝29に嵌着される。分解リング9を取外すときにはC型形状のスリット部に鍵バリ状の工具を引っ掛けて分解リング9を引っ張る。すると押しナットの円周溝から分解リング9を取外することができる。また、この分解リングは、挿入確認動作を目視で確認できるようにするために、少なくともその外周面を継手本体及び押ナットと異なる色相に着色することができる。
【0027】
(選択透過性部材)
選択透過性部材10は、配管施工時にコルゲート管に誤って釘が打ち込まれるなどしてガスがコルゲート管と樹脂被覆との間隙から漏出する(ガス漏れ)を検出するために設けられる。例えば配管施工時にコルゲート管に誤って釘が打ち込まれるなどしてガスがコルゲート管と樹脂被覆との間隙から漏出するガスを継手本体の外部に導き、内封圧力の降下を検知すること、あるいはガス漏れセンサ等を利用することによって、ガス漏れの有無を検知し得るようにしている。
【0028】
(係止溝)
本発明の管継手は、継手本体に特定の形状を有する係止溝を設ける。その詳細を図3により説明する。係止溝27は、フレキシブル管11の挿入前及び挿入途中でストップリング7が保持される第1の位置(図3(a))と、フレキシブル管11の挿入完了時にストップリング7が保持される第2の位置(図3(b))とに切換が行えるようにするために、例えばストップリング7の線径dの2倍以上の長さL1を有しかつ線径dよりも浅い係止溝27の中央部に、内径側に突出した断面が山形の突出部272(長さLb)を設けた形状を有する。この突出部272は、フレキシブル管11の挿入方向(図3の右側)に向って下り勾配のテーパ面(長さ:Lb1、テーパ角:α1)とフレキシブル管11の引き抜き方向(図3の左側)に向って下り勾配のテーパ面(長さ:Lb2、テーパ角:α2)を有する。
【0029】
係止溝27はこのような形状を有するので、ストップリング7は第1環状溝271(長さ:La1)に内接する第1の位置から第2環状溝273(長さ:La2)に内接する第2の位置に移動することができるし、また第2の位置から第1の位置に移動することもできる。図3では、テーパ角α1とα2は同じであるが、異なる角度でもよい。これらの角度は、大きすぎると第1の位置(第2の位置)から第2の位置(第1の位置)への移動が困難となり、小さすぎるとストップリングを第1の位置又は第2の位置に保持しがたくなるので、20〜50°の範囲で設定することが好ましい。また第1環状溝271の長さLa1とテーパ面の長さLb1の合計は、ストップリング7の線径dと同等であり、かつ第2環状溝273の長さLa2とテーパ面の長さLb2の合計はストップリングの線径dよりも長いことが好ましい。さらにテーパ角α1=α2としかつテーパ面の長さLb1=Lb2とした場合、ストップリング7の移動を円滑に行いかつ上記各位置でストップリング7を保持して動作をより確実に実行するために、第2環状溝273の長さLa2は、第1環状溝271の長さLa1の1.2〜1.6倍の範囲に設定することが好ましい。
【0030】
さらに、係止溝27に隣接して線径dよりも深くかつ線径dよりもやや長い長さL2を有する保持溝28を設けることにより、ストップリング7を第3の位置に保持することが可能となり、後述の分解作業を行うことができる。
【0031】
<配管作業>
上記の管継手とフレキシブル管を接続する作業又はフレキシブル管が接続された管継手を分解する作業は、例えば図5〜8に示す手順で行うことができる。
【0032】
(フレキシブル管の挿入動作)
図1に示す管継手1にフレキシブル管11を挿入すると、挿入の途中では図5に示す状態が現出する。例えばフレキシブル管11の先端部(数山)の被覆樹脂13を引き剥がして金属コルゲート管12の外周面を露出させてから、この先端部を継手本体2に挿入して押ナット3、リテーナ6及び第1のシール部材5の内周を通過させる。この挿入動作により、金属コルゲート管12の先端(端面)が移動部材44に突き当たり、その移動部材44のフランジ部441はインロー部23側に押し込まれる。この挿入途中では、ストップリング7は、継手本体2の第1環状溝271と押ナット3の外周溝32に係止されている。
【0033】
(フレキシブル管の挿入完了及びその確認動作)
フレキシブル管11を図5の位置からさらに継手本体2の奥まで押し込み、移動部材44のフランジ部441がインロー部23側に押し込まれることにより、フレキシブル管11の挿入が完了し、継手本体2と押ナット3の両者間にギャップg(図6参照)が形成される。フレキシブル管11の挿入が完了すると同時に、図6に示すように、ガイド部材42の折曲部422の自由端が継手本体2の係合溝241から離脱する。したがって圧縮コイルばね41が開放されると、その復元力によりシール部材5は図6の矢印方向にスライドし、リテーナ6の爪部61aは金属製ガイド52に押されてリテーナ6のテーパ面61bが押ナット3のテーパ面31に密着するとともに、爪部62は縮径して金属コルゲート管12の谷部に係止される(リテーナ6については図1も参照)。
【0034】
このとき同時に、金属コルゲート管12の先端と移動部材44との間に間隙Lが生じる。しかしながら、耐火パッキン53に形成された抜け止め部材再拡径防止部531が縮径したリテーナ6の基部61の外周面と継手本体2の第2段部25との間にスライドするので、この状態からフレキシブル管11を誤って押し込んだとしても、リテーナ6が拡径することがなく、間隙Lは維持される。したがって、後述する管継手の分解機能を失うことがない。
【0035】
フレキシブル管11の挿入が完了した時点では、押ナット3は挿入方向と逆方向に押圧されるので、ストップリング7は、押ナット3の外周溝32に係止された状態で継手本体2の第2環状溝273に移動し、その位置で保持される。すなわち、ストップリング7は第1環状溝271(第1の位置、図3(a)及び図5参照)から第2環状溝273(第2の位置、図3(b)及び図6参照)に移動しかつその位置で継手本体2と押ナット3にまたがって係止される。このようにフレキシブル管11はリテーナ6を介して押ナット3に連結された状態となり、しかも継手本体2と押ナット3とが機械的に結合されてこれらの相対移動が阻止されるので、フレキシブル管11に矢印方向の引き抜き力が作用した場合でも、フレキシブル管11が管継手1から抜け出すことができず、フレキシブル管11の挿入(管継手1との接続)が完了したと判断される。
【0036】
図6に示すように、フレキシブル管11の挿入が完了すると、継手本体2の端面と押ナット3との間にギャップgが形成され、継手本体2で隠蔽されていた分解リング9はギャップgに現出するので挿入確認動作を実行することができる。すなわち、継手本体2の外周面に手を触れると、施工現場が狭く、また暗所であってもギャップgが現出したことが認識されるので、施工管理者が挿入確認を行うことができる。また分解リング9の少なくとも外周面を継手本体2及び押ナット3と異なる色相に着色しておくと、ある程度の明るい場所では目視でフレキシブル管11が挿入されたことを容易に確認できる。
【0037】
上記の挿入完了段階では、圧縮コイルばね41の復元力により第1のシール部材5はリテーナ6側に圧縮されるので、継手本体2とフレキシブル管11のシール性を向上することができる。したがってフレキシブル管11(コルゲート管12)に多少の変形(例えば真円度が小(扁平)あるいは曲がり)があっても継手本体2とフレキシブル管11を気密にシールすることができる。
【0038】
またフレキシブル管11が継手本体2に挿入されると、シール部材5が軸方向に圧縮されることによって半径方向には膨張する力が発生するので、継手本体2とフレキシブル管11とのシール性が確保される。またOリング8aは押ナット3に密着し、リップパッキン8bはフレキシブル管11の外周面に密着するので、実用上十分なシール性を確保することができる。ここで火災により、気密パッキン51が消失した場合でも、例えば圧縮コイルばね41のばね定数を適切な値に設定して、弾性部材4により耐火パッキン53が圧縮されるようにしておくことにより、ガス漏れなどの不具合が防止される。
【0039】
(管継手の分解)
図6に示す管継手1から上述した分解リング9を除去し、次いでフレキシブル管11を図7に示すように矢印方向に押し込むことにより、押ナット3が継手本体2の円周溝29に入り込むようにスライドし、ストップリング7は、第2環状溝273(第2の位置)から保持溝28(第3の位置)に移動しかつ拡径してそこに保持されるので、継手本体2と押ナット3との接続が解除される。したがってフレキシブル管11を継手本体2から引き抜くことができる。
【0040】
(再使用)
フレキシブル管11を継手本体2から引き抜いた状態を図8に示す。同図に示すように、管継手1は、フレキシブル管11を損傷せずに、継手本体2と、シール部材5、リテーナ6及び押ナット3が装着されたフレキシブル管11と、弾性部材4(圧縮コイルばね41、ガイド部材42、移動部材44)とに分解することができる。またフレキシブル管11からシール部材5、リテーナ6及び押ナット3を取り外すことができる。したがってコルゲート管11はそのままの状態で(切断せずに)再使用することができる。また各部品を材質別に分別・回収して、リサイクルする(再資源化する)ことができる。
【0041】
[第二の実施の形態]
本発明の第二の実施の形態を図9を用いて説明する。図9は本発明にかかる第二実施例の管継手の半断面図である。なお、図1から図8を用いて説明した第一の実施の形態と同一の構成は同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0042】
<管継手1A>
図9に示すように、管継手1Aは管継手1と比較して、弾性部材4Aにスペーサ部材43を有し、継手本体2Aに係合溝241が形成されていない点、及びシール部材5Aに金属ガイド52を有しない点が相違する。
【0043】
(弾性部材)
弾性部材4Aは、フレキシブル管11が継手本体の奥まで挿入されたときに、シール部材5Aをフレキシブル管11の挿入方向と逆方向に押圧することにより、リテーナ6を押ナット2の先端部に当接させかつシール性を向上させる機能を有する部材である。この弾性部材4Aは、圧縮コイルばね41(図9は圧縮された状態を示す。)と、L字形断面を有する略円筒状のガイド部材42と、圧縮コイルばね41とともにガイド部材42に支持される中空円板状のスペース部材43と、ガイド部材42の内径側に軸方向に移動可能に設けられる略円筒状の移動部材44を有する。ガイド部材42は、中空円板状の支持部421と、そこから軸方向に延出する(円周方向に沿って配置された)複数の円弧部422を有し、その先端は斜め上方に折曲げられて折曲部422aが形成されている。
【0044】
そして、支持部421とスペース部材43との間に圧縮コイルばね41を圧縮させた状態で挟持し、スペーサ部材43を折曲部422aに係止させるとともに、折曲部422aの内周面を移動部材44で支持して、折曲部422aが開かないようにして、圧縮コイルばね41が圧縮された状態を保っている。言い換えると、移動部材44が、継手本体の奥側に移動(スライド)して、折曲部422aの内周面から離脱すると、折曲部422aが縮径して、スペース部材43が折曲部422aから離脱し、圧縮コイルばね41が伸長するように構成されている。移動部材44は、移動を円滑に行うために、例えばエンジニアリングプラスチックのような比重の小さい材料からなり、ガイド部材42(円弧部422の内径面)に当接するフランジ部441を有する。
【0045】
そして、この弾性部材4Aは各部品が予め一体化された状態で継手本体2Aの内部に装着することができる。したがって、組み立てられた弾性部材4Aを継手本体2Aに挿入すればよいので管継手1Aの組み立てが容易となる。
【0046】
(シール部材)
シール部材5Aは、気密パッキン51と耐火パッキン53Aとを一体化して形成することができる。耐火パッキン53Aには、リテーナ6に向かって突出する抜け止め部材再拡径防止部531が一体的に形成されている。そして耐火パッキン53Aの内径は、金属コルゲート管が挿入する前の無負荷状態でのリテーナ6の爪部61aの内径とほぼ同一に設定している。このような内径に設定することにより、フレキシブル管を管継手に挿入する途中で引抜こうとした場合に、リテーナ6の爪部61aがフレキシブル管の外径に係り合うことなく引抜くことができ、再度フレキシブル管を接続施工することができる。
【0047】
なお、シール部材5Aのリテーナ6側の端部が、金属コルゲート管が挿入する前の無負荷状態でのリテーナ6の爪部61aの内径とほぼ同一に設定されていれば良く、たとえば気密パッキン51の内径側をリテーナ6の方向に突出延長させても良い。
【0048】
(フレキシブル管の挿入完了)
フレキシブル管11を継手本体2の奥まで押し込み、移動部材44のフランジ部441がインロー部23側に押し込まれることにより、フレキシブル管11の挿入が完了し、押ナット3の外周面と継手本体2の端部との間にギャップgが形成される。フレキシブル管11の挿入が完了すると同時に、ガイド部材42の折曲部422の自由端が継手本体2及びスペーサ部材43から離脱し、スペーサ部材43が継手本体2に当接する。したがって圧縮コイルばね41が開放されると、その復元力によりシール部材5がフレキシブル管11の挿入方向とは逆の方向にスライドし、リテーナ6の爪部61aは金属製ガイド52に押されてリテーナ6のテーパ面61bが押ナット3のテーパ面31に密着するとともに、爪部62は縮径して金属コルゲート管12の谷部に係止される(図11を参照)。
【0049】
フレキシブル管の挿入が完了した時点では、押ナット3は挿入方向と逆方向に押圧されるので、ストップリング7は、押ナット3の外周溝32に係止された状態で継手本体2の第2環状溝273に移動し、その位置で保持される。すなわち、ストップリング7は第1環状溝271(第1の位置、図3(a))から第2環状溝273(第2の位置、図3(b))に移動しかつその位置で継手本体2と押ナット3にまたがって係止される。このようにフレキシブル管11はリテーナ6を介して押ナット3に連結された状態となり、しかも継手本体2と押ナット3とが機械的に結合されてこれらの相対移動が阻止されるので、フレキシブル管11に矢印方向の引き抜き力が作用した場合でも、フレキシブル管11が管継手1から抜け出すことができず、フレキシブル管11の挿入(管継手1との接続)が完了したと判断される。
【0050】
[第三の実施の形態]
本発明の第三の実施の形態を図10及び図11を用いて説明する。図10は本発明にかかる第三実施例の管継手の半断面図、図11は本発明にかかる第三実施例の管継手へフレキシブル管の接続が完了した状態を示す半断面図である。なお、図1から図8を用いて説明した第一の実施の形態及び図9を用いて説明した第二の実施の形態と同一の構成は同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0051】
<管継手1B>
図10に示すように、管継手1Bは管継手1と比較して、弾性部材4Aにスペース部材43を有し、継手本体2Bに係合溝241が形成されていない点、及び抜け止め部材再拡径防止部が耐火パッキンと一体化されていない点が相違する。
【0052】
図10に図示するように、シール部材5Bは、気密パッキン51と、この気密パッキン51に固着されたL字形の断面形状を有する金属製ガイド52に固設された耐火パッキン53Bを有する。
そして、耐火パッキン53Bとリテーナ6との間には抜け止め部材再拡径防止部材532が介在している。この抜け止め部材再拡径防止部材532は断面L型の金属製環状部材で外径は継手本体2Bの第2段部25に内接し、内径は耐火パッキン53Bの外径よりも小さく設定されており、耐火パッキン53Bのスライドに伴って、第2段部25の内径に沿って移動可能になっている。
【0053】
管継手1Bにフレキシブル管11を挿入すると、図11に示すように、移動部材44のフランジ部441がインロー部23側に押し込まれることにより、フレキシブル管11の挿入が完了し、押ナット3の外周面と継手本体2の端部との間にギャップgが形成される。フレキシブル管11の挿入が完了すると同時に、ガイド部材42の折曲部422の自由端が継手本体2及びスペーサ部材43から離脱し、スペーサ部材43が継手本体2に当接する。したがって圧縮コイルばね41が開放されると、その復元力によりシール部材5がフレキシブル管11の挿入方向とは逆の方向にスライドし、リテーナ6の爪部61aは金属製ガイド52に押されてリテーナ6のテーパ面61bが押ナット3のテーパ面31に密着するとともに、爪部61aは縮径して金属コルゲート管12の谷部に係止される。
【0054】
このとき同時に、金属コルゲート管12の先端と移動部材44との間に間隙Lが生じる。しかしながら、耐火パッキン53Bに隣接した抜け止め部材再拡径防止部材532が耐火パッキン53Bに押されて、縮径したリテーナ6の基部61の外周面と継手本体2の第2段部25との間にスライドするので、この状態からフレキシブル管11を誤って押し込んだとしても、リテーナ6が拡径することがなく、間隙Lは維持される。したがって、上述した管継手の分解機能を失うことがない。
【0055】
分解リング9は、図11に示すように、継手本体2Bの円周溝29内部に残存させても良い。このときにはギャップgが生じせしめた押ナット3の外周面に着色を施すことができる。
【0056】
本発明に係る管継手の形状は一端に雄ねじ部を有する片ねじソケットに限らず、両ソケット、エルボ、ティー、または雌ねじを有するものであってもよい。またガス栓やガスメータなどの機器の端部に本発明の継手構造を一体的に設けることもできる。
【符号の説明】
【0057】
1、1A、1B:管継手、
2、2A、2B:継手本体、21:内孔、22:おねじ部、23:インロー部、24:第1段部、241:係合溝、25:第2段部、27:係止溝、271:第1環状溝、272:第2環状溝、28:保持溝、29:円周溝
3:押ナット、31:先端部、31a:テーパ面、32:保持溝、33:突条部、34:着色層
4:弾性部材、41:圧縮コイルばね、42:ガイド部材、43:スペーサ部材、
44:移動部材、441:フランジ部
5:シール部材、51:気密パッキン、52:金属ガイド、53、53A、53B:耐火パッキン、531:抜け止め部材再拡径防止部、532:抜け止め部材再拡径防止部材
6:抜け止め部材(リテーナ)、61:基部、61a:爪部、61b:テーパ面、
62:分割部
7:ストップリング、
8a:Oリング、8b:リップパッキン、
9:分解リング、
10:選択性透過部材
11:フレキシブル管、12:金属コルゲート管、13:樹脂被覆
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛇腹状のコルゲート管の接続に用いる管継手の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
屋内ガス配管等には、金属製の蛇腹状コルゲート管が広く用いられている。また、このコルゲート管とガス栓や鋼管などとを接続するための管継手が種々用いられている。出願人らは、特許文献1及び特許文献2において、コルゲート管を挿入するだけで接続が出来るとともに、この接続作業を確実に行うことが容易な管継手を提案した。
【0003】
これらの管継手は、圧縮した状態のバネを継手内部に装着しており、コルゲート管を挿入すると、コルゲート管の先端が可動部材を継手本体の奥側へ移動させ、バネを圧縮状態から開放させる。バネの付勢力は、シール部材を圧縮してコルゲート管とのシール面圧を向上させると共に、抜け止め部材(以下「リテーナ」とも称する)を縮径させてコルゲート管と係止するものである。
また継手本体の内孔には、係止溝と、これに連なり前記係止溝よりも大径とした回避溝とを形成し、他方、ナット部材の外径側には外周溝を形成し、前記係止溝と前記外周溝とを跨ぐようにストップリングを配置させて前記継手本体と前記ナット部材とを係止すると共に、前記ナット部材の他端側には大径部が形成され、前記大径部と前記継手本体の端部との間に分解用リングを備えることを特徴としている。このことによって、コルゲート管を傷つけることなく分解することが可能としている。
【0004】
【特許文献1】特願2008−220319
【特許文献2】特願2008−220336
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図12に示すように、この従来の管継手では施工完了した状態で、バネ96の伸長分の隙間Lがコルゲート管Tの先端に生じることとなる。そして、この状態からコルゲート管Tを継手本体90奥方向に向かって押し込むと、図13に示すように、コルゲート管Tの1山分押し込むことができる。そうすると、この管継手を分解するために、分解用リング97を取り除き、ナット部材91を継手本体90の奥方向に押し込もうとしても、押し込むことができず、分解することが不可能となってしまうという問題があった。なお92は気密パッキン、93は金属ガイド、94は耐火パッキン、95はリテーナである。
本発明の目的は、コルゲート管の接続施工が完了した状態から、誤ってコルゲート管を管継手に押し込んだ場合においても、管継手を分解する機能を失うことのない管継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明は、一端からフレキシブル管が挿入される内孔を有した継手本体と、前記フレキシブル管が奥まで挿入されると挿入方向とは逆方向にスライドし前記フレキシブル管と前記継手本体をシールするシール部材と、前記シール部材に隣接し前記フレキシブル管に係止される爪部を有する抜け止め部材(リテーナ)と、前記シール部材と前記抜け止め部材との間に介在させた抜け止め部材再拡径防止手段とを備え、前記シール部材のスライド動作に伴って、前記抜け止め部材は前記フレキシブル管に係止し、前記抜け止め部材再拡径防止手段は前記抜け止め部材と前記継手本体との間に移動するように構成された管継手である。
【0007】
本発明において、前記抜け止め部材再拡径防止手段は、前記シール部材とともに前記内孔にスライド可能に設けることが好ましい。
本発明において、前記抜け止め部材再拡径防止手段は、前記シール部材と一体となすことが好ましい。
また本発明において、前記シール部材は、フレキシブル管の外周をシールする気密パッキンと、常温ではフレキシブル管の外周をシールせず、加熱時に熱膨張してフレキシブル管の外周をシールする耐火パッキンとを含み、前記抜け止め部材再拡径防止手段は、前記耐火パッキンと一体となすことが好ましい。
【0008】
あるいは本発明において、前記抜け止め部材再拡径防止手段は、前記継手本体の内孔に内接するC型リングとすることができる。
【0009】
また上記発明において、前記継手本体の前記内孔には圧縮状態に保持された弾性部材を備え、該弾性部材は圧縮バネと、L字形断面を有するガイド部材と、該ガイド部材の内側に接し軸方向に移動可能に設けられる移動部材とからなり、前記移動部材が前記ガイド部材と非接触になる位置に移動することに伴って、圧縮バネが伸長し、前記シール部材が前記フレキシブル管の挿入方向とは逆方向へスライドするように構成することができる。
【0010】
また上記発明において、前記継手本体に対して前記押ナットを所定の位置に保持するストップリングを備え、前記ストップリングは前記フレキシブル管の挿入動作では前記抜け止め部材を前記フレキシブル管に対して係止解除状態に維持する第1の位置と、前記フレキシブル管の挿入確認動作では前記抜け止め部材を前記フレキシブル管に対して係止状態に維持しかつ前記継手本体と前記押ナット部材との間に外周から施工確認が可能なギャップを形成する第2の位置に選択的に移動することができる。
【0011】
さらに本発明において、前記押ナットには前記フレキシブル管の挿入動作では前記継手本体で隠蔽されかつ前記フレキシブル管の挿入確認動作では露出する分解リングが着脱自在に設けられ、前記押ナットから前記分解リングが取り外されると前記ギャップが消滅するとともに前記ストップリングが前記継手本体のみに係止される第3の位置に移動することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る管継手によれば、前記シール部材と前記抜け止め部材(リテーナ)との間に抜け止め部材再拡径防止手段を備え、前記シール部材のスライド動作に伴って、前記抜け止め部材は前記フレキシブル管に係止し、前記抜け止め部材再拡径防止手段は前記抜け止め部材と前記継手本体との間に移動するように構成されているので、フレキシブル管の接続施工が完了した状態から、誤ってフレキシブル管を管継手に押し込もうとした場合においても、抜け止め部材が再び拡径することがなく、フレキシブル管が押し込まれることがない。したがって、管継手の分解機能を失うこともない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明にかかる第一実施例の管継手の半断面図である。
【図2】継手本体を示す半断面図である。
【図3】図1の要部を拡大した断面図であり、(a)はストップリングが第1の位置に保持されている状態を示す図、(b)はストップリングが第2の位置に保持されている状態を示す図である。
【図4】ガイド部材を示す斜視図である。
【図5】本発明にかかる第一実施例の管継手にフレキシブル管を途中まで挿入した状態を示す半断面図である。
【図6】本発明にかかる第一実施例の管継手へフレキシブル管の接続が完了した状態を示す半断面図である。
【図7】本発明にかかる第一実施例の管継手から分解用リングを取外し、押ナットを継手本体奥方向へスライドさせた状態を示す半断面図である。
【図8】本発明にかかる第一実施例の管継手を分解した状態を示す半断面図である。
【図9】本発明にかかる第二実施例の管継手の半断面図である。
【図10】本発明にかかる第三実施例の管継手の半断面図である。
【図11】本発明にかかる第三実施例の管継手へフレキシブル管の接続が完了した状態を示す半断面図である。
【図12】従来の管継手へフレキシブル管の接続が完了した状態を示す半断面図である。
【図13】図12の状態からフレキシブル管をさらに押し込んだ状態を示す半断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
[第一の実施の形態]
本発明の第一の実施の形態を図1から図6を用いて詳細に説明する。図1は本発明の管継手の一実施例の半断面図、図2は継手本体を示す半断面図、図3は図1の要部を拡大した断面図であり、(a)はストップリングが第1の位置に保持されている状態を示す図、(b)はストップリングが第2の位置に保持されている状態を示す図である。
また図4はガイド部材を示す斜視図、図5は本発明にかかる第一実施例の管継手にフレキシブル管を途中まで挿入した状態を示す半断面図、図6は本発明にかかる第一実施例の管継手へフレキシブル管の接続が完了した状態を示す半断面図、図7は本発明にかかる第一実施例の管継手から分解用リングを取外し、押ナットを継手本体奥方向へスライドさせた状態を示す半断面図、図8は本発明にかかる第一実施例の管継手を分解した状態を示す半断面図である。
【0015】
<管継手1>
図1に示すように、管継手1は、一端から図示しないフレキシブル管(例えば樹脂被覆が施された金属コルゲート管)が挿入される内孔21を有し、他端側におねじ部22が形成された継手本体2と、その一部が継手本体2に挿入される押ナット3と、圧縮状態に保持され、継手本体2の内部に装着される弾性部材4と、内孔21にスライド可能に配置されたシール部材5と、図示しないフレキシブル管の外周に係合するリテーナ6(抜け止め部材)を有する。また8aは押ナット3と継手本体2をシールするためのOリング、8bは押ナット3とフレキシブル管をシールするためのリップパッキンである。
【0016】
(継手本体)
上記の継手本体2は、図2に示すように、一端から他端に向かって内径が段階的に減少する形状を有し、弾性部材4の一部を受容するインロー部23と、弾性部材4の他の部分を受容しかつシール部材5がスライド可能に入り込む第1段部24と、リテーナ6と押ナット3がスライド可能に入り込む第2段部25と、一端部に形成された環状溝29(図1における分解リング9が入り込んでいる部分)を有する。またインロー部23と第1段部24の間には、環状に係合溝241が形成されている。
【0017】
第2段部25には、詳細は後述するが、ストップリング7が軸方向に移動可能に装着される係止溝27と、その奥側に位置しかつそれより深い保持溝28が設けられている。
【0018】
(押ナット)
押ナット3は、リテーナ6に当接し、断面が楔状に形成されてテーパ面31aを有する先端部31を有するとともに、外周面にストップリング7の一部が進入する外周溝32が形成されている。押ナット3には、2つのOリング8a、リップパッキン8bが嵌装されるとともに、継手本体2の一端側に対向する位置に、外気と連通する通気孔(例えば円孔)が設けられ、そこに選択透過性部材10が装着される。そして押ナット3の外周面は滑らかな円筒状で、人の手では把持しにくい形状となっている。誤って押ナット3をスライドさせてしまわないためである。
【0019】
(弾性部材)
弾性部材4は、フレキシブル管が継手本体の奥まで挿入されたときに、シール部材5をフレキシブル管の挿入方向と逆方向に押圧することにより、リテーナ6を押ナット2の先端部に当接させかつシール性を向上させる機能を有する部材である。この弾性部材4は、圧縮コイルばね41(図1は圧縮された状態を示す。)と、L字形断面を有する略円筒状のガイド部材42と、ガイド部材42の内径側に軸方向に移動可能に設けられる略円筒状の移動部材44を有する。ガイド部材42は、図3に示すように中空円板状の支持部421と、そこから軸方向に延出する(円周方向に沿って配置された)複数の円弧部422を有し、その先端は斜め上方に折曲げられて折曲部422aが形成されている。
【0020】
そして、支持部421と継手本体2の第1段部24の奥端との間に圧縮コイルばね41を圧縮させた状態で挟持し、折曲部422aを継手本体2の係合溝241に係止させるとともに、折曲部422aの内周面を移動部材44で支持して、折曲部422aが開かないようにして、圧縮コイルばね41が圧縮された状態を保っている。言い換えると、移動部材44が、継手本体の奥側に移動(スライド)して、折曲部422aの内周面から離脱すると、折曲部422aが縮径して、折曲部422aが係合溝241から離脱し、圧縮コイルばね41が伸長するように構成されている。ガイド部材42は、強度の点から金属材料で形成することが好ましい。移動部材44は、移動を円滑に行うために、例えばエンジニアリングプラスチックのような比重の小さい材料からなり、ガイド部材42(円弧部422の内径面)に当接するフランジ部441を有する。
【0021】
(シール部材)
シール部材5は、金属ゴルゲート管の先端側をシールするために、例えばゴム材料からなる気密パッキン51と、このパッキンに固着されたL字形の断面形状を有する金属製ガイド52に固設された耐火パッキン53を有する。気密パッキン51の外径側は、継手本体2の第1段部24の内径よりも大きく設定し、この第1段部24に密着するように圧入されている。ただし、気密パッキン51は、金属コルゲート管の外径よりもやや小さい内径を有するとともに、金属コルゲート管の例えば2山分をシールできるような長さを有し、金属コルゲート管の外周側を気密にシールすることができる。このパッキンは、特に長期間にわたってシール性能を保持する必要性から、耐ガス透過性に優れているジェン系特殊ゴム(例えばNBR)で形成することができる。
【0022】
(耐火パッキン)
管継手1が火災等で高温に曝されて、通常のゴム材料からなる気密パッキン51が焼失した場合でも、ガス漏れを防止できるようにするために、シール部材5は高温に曝されると熱膨張する耐火パッキン53を有する。気密パッキン51が焼失した場合、耐火パッキン53が熱膨張して、継手本体2と金属コルゲート管12との隙間に充填される。また弾性部材4が軸方向に伸長することによりガイド部材42に当接するので、熱膨張した耐火パッキン53の移動が規制されて、耐火パッキン53は、継手本体2の内周面と金属コルゲート管12の外周面をシールすることができる。
【0023】
そして耐火パッキン53には、リテーナ6に向かって突出する抜け止め部材再拡径防止部531が一体的に形成されている。抜け止め部材再拡径防止部531の外径は、第2段部25に内接し、内径はリテーナ6が縮径して金属コルゲート管12の谷部に係止されたときの外径よりもやや大きい寸法に設定している。また金属ガイド52の内径は、図1に示すように、金属コルゲート管12を挿入する前の無負荷状態でのリテーナ6の爪部61aの内径とほぼ同一に設定している。
【0024】
(リテーナ)
リテーナ6は、弾性変形可能な材料(例えばエンジニアリングプラスチック)からなり、ナットに当接するテーパ面61bが形成された基部61を有するリング状部材である。このリテーナは一端側が円周方向に形成された複数の軸方向溝62によって複数のセグメントに分割されるとともに、各セグメントの先端の内径側には、継手本体2の奥までコルゲート管12が挿入されたときに、金属コルゲート管12の谷部に係止される金属材料(例えば黄銅)からなる爪部61aが設けられている。ただしこれらの爪部61aは、無負荷状態では金属コルゲート管12の外径よりも大なる内径を有し、金属コルゲート管12が挿入されるときには、その山部に引っ掛からないような寸法に設定される。
【0025】
(ストップリング)
ストップリング7は、弾性変形可能なC字状部材であり、施工作業の状態に応じて継手本体2に対して押ナット3を複数の位置に切換える位置切換機能と所望の位置に押ナット3をロックしておくロック機能を有する。このストップリング7は、これらの機能を具有するために、例えばオーステナイト系ステンレス鋼のようなばね性を有する金属材料からなる線材で形成することができる。ストップリング7については後述する係止溝の項でも説明する。
【0026】
(分解リング)
フレキシブル管11が挿入施工された管継手を分解する場合に、その作業を速やかに行うために、例えばSUS304−WPBからなるC型形状の分解リング9が押ナット3に着脱自在に装着される。この分解リング9は、押ナット3への装着と取り外しを容易に行えるような形状を有し、押ナット3の外周面に形成された円周溝29に嵌着される。分解リング9を取外すときにはC型形状のスリット部に鍵バリ状の工具を引っ掛けて分解リング9を引っ張る。すると押しナットの円周溝から分解リング9を取外することができる。また、この分解リングは、挿入確認動作を目視で確認できるようにするために、少なくともその外周面を継手本体及び押ナットと異なる色相に着色することができる。
【0027】
(選択透過性部材)
選択透過性部材10は、配管施工時にコルゲート管に誤って釘が打ち込まれるなどしてガスがコルゲート管と樹脂被覆との間隙から漏出する(ガス漏れ)を検出するために設けられる。例えば配管施工時にコルゲート管に誤って釘が打ち込まれるなどしてガスがコルゲート管と樹脂被覆との間隙から漏出するガスを継手本体の外部に導き、内封圧力の降下を検知すること、あるいはガス漏れセンサ等を利用することによって、ガス漏れの有無を検知し得るようにしている。
【0028】
(係止溝)
本発明の管継手は、継手本体に特定の形状を有する係止溝を設ける。その詳細を図3により説明する。係止溝27は、フレキシブル管11の挿入前及び挿入途中でストップリング7が保持される第1の位置(図3(a))と、フレキシブル管11の挿入完了時にストップリング7が保持される第2の位置(図3(b))とに切換が行えるようにするために、例えばストップリング7の線径dの2倍以上の長さL1を有しかつ線径dよりも浅い係止溝27の中央部に、内径側に突出した断面が山形の突出部272(長さLb)を設けた形状を有する。この突出部272は、フレキシブル管11の挿入方向(図3の右側)に向って下り勾配のテーパ面(長さ:Lb1、テーパ角:α1)とフレキシブル管11の引き抜き方向(図3の左側)に向って下り勾配のテーパ面(長さ:Lb2、テーパ角:α2)を有する。
【0029】
係止溝27はこのような形状を有するので、ストップリング7は第1環状溝271(長さ:La1)に内接する第1の位置から第2環状溝273(長さ:La2)に内接する第2の位置に移動することができるし、また第2の位置から第1の位置に移動することもできる。図3では、テーパ角α1とα2は同じであるが、異なる角度でもよい。これらの角度は、大きすぎると第1の位置(第2の位置)から第2の位置(第1の位置)への移動が困難となり、小さすぎるとストップリングを第1の位置又は第2の位置に保持しがたくなるので、20〜50°の範囲で設定することが好ましい。また第1環状溝271の長さLa1とテーパ面の長さLb1の合計は、ストップリング7の線径dと同等であり、かつ第2環状溝273の長さLa2とテーパ面の長さLb2の合計はストップリングの線径dよりも長いことが好ましい。さらにテーパ角α1=α2としかつテーパ面の長さLb1=Lb2とした場合、ストップリング7の移動を円滑に行いかつ上記各位置でストップリング7を保持して動作をより確実に実行するために、第2環状溝273の長さLa2は、第1環状溝271の長さLa1の1.2〜1.6倍の範囲に設定することが好ましい。
【0030】
さらに、係止溝27に隣接して線径dよりも深くかつ線径dよりもやや長い長さL2を有する保持溝28を設けることにより、ストップリング7を第3の位置に保持することが可能となり、後述の分解作業を行うことができる。
【0031】
<配管作業>
上記の管継手とフレキシブル管を接続する作業又はフレキシブル管が接続された管継手を分解する作業は、例えば図5〜8に示す手順で行うことができる。
【0032】
(フレキシブル管の挿入動作)
図1に示す管継手1にフレキシブル管11を挿入すると、挿入の途中では図5に示す状態が現出する。例えばフレキシブル管11の先端部(数山)の被覆樹脂13を引き剥がして金属コルゲート管12の外周面を露出させてから、この先端部を継手本体2に挿入して押ナット3、リテーナ6及び第1のシール部材5の内周を通過させる。この挿入動作により、金属コルゲート管12の先端(端面)が移動部材44に突き当たり、その移動部材44のフランジ部441はインロー部23側に押し込まれる。この挿入途中では、ストップリング7は、継手本体2の第1環状溝271と押ナット3の外周溝32に係止されている。
【0033】
(フレキシブル管の挿入完了及びその確認動作)
フレキシブル管11を図5の位置からさらに継手本体2の奥まで押し込み、移動部材44のフランジ部441がインロー部23側に押し込まれることにより、フレキシブル管11の挿入が完了し、継手本体2と押ナット3の両者間にギャップg(図6参照)が形成される。フレキシブル管11の挿入が完了すると同時に、図6に示すように、ガイド部材42の折曲部422の自由端が継手本体2の係合溝241から離脱する。したがって圧縮コイルばね41が開放されると、その復元力によりシール部材5は図6の矢印方向にスライドし、リテーナ6の爪部61aは金属製ガイド52に押されてリテーナ6のテーパ面61bが押ナット3のテーパ面31に密着するとともに、爪部62は縮径して金属コルゲート管12の谷部に係止される(リテーナ6については図1も参照)。
【0034】
このとき同時に、金属コルゲート管12の先端と移動部材44との間に間隙Lが生じる。しかしながら、耐火パッキン53に形成された抜け止め部材再拡径防止部531が縮径したリテーナ6の基部61の外周面と継手本体2の第2段部25との間にスライドするので、この状態からフレキシブル管11を誤って押し込んだとしても、リテーナ6が拡径することがなく、間隙Lは維持される。したがって、後述する管継手の分解機能を失うことがない。
【0035】
フレキシブル管11の挿入が完了した時点では、押ナット3は挿入方向と逆方向に押圧されるので、ストップリング7は、押ナット3の外周溝32に係止された状態で継手本体2の第2環状溝273に移動し、その位置で保持される。すなわち、ストップリング7は第1環状溝271(第1の位置、図3(a)及び図5参照)から第2環状溝273(第2の位置、図3(b)及び図6参照)に移動しかつその位置で継手本体2と押ナット3にまたがって係止される。このようにフレキシブル管11はリテーナ6を介して押ナット3に連結された状態となり、しかも継手本体2と押ナット3とが機械的に結合されてこれらの相対移動が阻止されるので、フレキシブル管11に矢印方向の引き抜き力が作用した場合でも、フレキシブル管11が管継手1から抜け出すことができず、フレキシブル管11の挿入(管継手1との接続)が完了したと判断される。
【0036】
図6に示すように、フレキシブル管11の挿入が完了すると、継手本体2の端面と押ナット3との間にギャップgが形成され、継手本体2で隠蔽されていた分解リング9はギャップgに現出するので挿入確認動作を実行することができる。すなわち、継手本体2の外周面に手を触れると、施工現場が狭く、また暗所であってもギャップgが現出したことが認識されるので、施工管理者が挿入確認を行うことができる。また分解リング9の少なくとも外周面を継手本体2及び押ナット3と異なる色相に着色しておくと、ある程度の明るい場所では目視でフレキシブル管11が挿入されたことを容易に確認できる。
【0037】
上記の挿入完了段階では、圧縮コイルばね41の復元力により第1のシール部材5はリテーナ6側に圧縮されるので、継手本体2とフレキシブル管11のシール性を向上することができる。したがってフレキシブル管11(コルゲート管12)に多少の変形(例えば真円度が小(扁平)あるいは曲がり)があっても継手本体2とフレキシブル管11を気密にシールすることができる。
【0038】
またフレキシブル管11が継手本体2に挿入されると、シール部材5が軸方向に圧縮されることによって半径方向には膨張する力が発生するので、継手本体2とフレキシブル管11とのシール性が確保される。またOリング8aは押ナット3に密着し、リップパッキン8bはフレキシブル管11の外周面に密着するので、実用上十分なシール性を確保することができる。ここで火災により、気密パッキン51が消失した場合でも、例えば圧縮コイルばね41のばね定数を適切な値に設定して、弾性部材4により耐火パッキン53が圧縮されるようにしておくことにより、ガス漏れなどの不具合が防止される。
【0039】
(管継手の分解)
図6に示す管継手1から上述した分解リング9を除去し、次いでフレキシブル管11を図7に示すように矢印方向に押し込むことにより、押ナット3が継手本体2の円周溝29に入り込むようにスライドし、ストップリング7は、第2環状溝273(第2の位置)から保持溝28(第3の位置)に移動しかつ拡径してそこに保持されるので、継手本体2と押ナット3との接続が解除される。したがってフレキシブル管11を継手本体2から引き抜くことができる。
【0040】
(再使用)
フレキシブル管11を継手本体2から引き抜いた状態を図8に示す。同図に示すように、管継手1は、フレキシブル管11を損傷せずに、継手本体2と、シール部材5、リテーナ6及び押ナット3が装着されたフレキシブル管11と、弾性部材4(圧縮コイルばね41、ガイド部材42、移動部材44)とに分解することができる。またフレキシブル管11からシール部材5、リテーナ6及び押ナット3を取り外すことができる。したがってコルゲート管11はそのままの状態で(切断せずに)再使用することができる。また各部品を材質別に分別・回収して、リサイクルする(再資源化する)ことができる。
【0041】
[第二の実施の形態]
本発明の第二の実施の形態を図9を用いて説明する。図9は本発明にかかる第二実施例の管継手の半断面図である。なお、図1から図8を用いて説明した第一の実施の形態と同一の構成は同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0042】
<管継手1A>
図9に示すように、管継手1Aは管継手1と比較して、弾性部材4Aにスペーサ部材43を有し、継手本体2Aに係合溝241が形成されていない点、及びシール部材5Aに金属ガイド52を有しない点が相違する。
【0043】
(弾性部材)
弾性部材4Aは、フレキシブル管11が継手本体の奥まで挿入されたときに、シール部材5Aをフレキシブル管11の挿入方向と逆方向に押圧することにより、リテーナ6を押ナット2の先端部に当接させかつシール性を向上させる機能を有する部材である。この弾性部材4Aは、圧縮コイルばね41(図9は圧縮された状態を示す。)と、L字形断面を有する略円筒状のガイド部材42と、圧縮コイルばね41とともにガイド部材42に支持される中空円板状のスペース部材43と、ガイド部材42の内径側に軸方向に移動可能に設けられる略円筒状の移動部材44を有する。ガイド部材42は、中空円板状の支持部421と、そこから軸方向に延出する(円周方向に沿って配置された)複数の円弧部422を有し、その先端は斜め上方に折曲げられて折曲部422aが形成されている。
【0044】
そして、支持部421とスペース部材43との間に圧縮コイルばね41を圧縮させた状態で挟持し、スペーサ部材43を折曲部422aに係止させるとともに、折曲部422aの内周面を移動部材44で支持して、折曲部422aが開かないようにして、圧縮コイルばね41が圧縮された状態を保っている。言い換えると、移動部材44が、継手本体の奥側に移動(スライド)して、折曲部422aの内周面から離脱すると、折曲部422aが縮径して、スペース部材43が折曲部422aから離脱し、圧縮コイルばね41が伸長するように構成されている。移動部材44は、移動を円滑に行うために、例えばエンジニアリングプラスチックのような比重の小さい材料からなり、ガイド部材42(円弧部422の内径面)に当接するフランジ部441を有する。
【0045】
そして、この弾性部材4Aは各部品が予め一体化された状態で継手本体2Aの内部に装着することができる。したがって、組み立てられた弾性部材4Aを継手本体2Aに挿入すればよいので管継手1Aの組み立てが容易となる。
【0046】
(シール部材)
シール部材5Aは、気密パッキン51と耐火パッキン53Aとを一体化して形成することができる。耐火パッキン53Aには、リテーナ6に向かって突出する抜け止め部材再拡径防止部531が一体的に形成されている。そして耐火パッキン53Aの内径は、金属コルゲート管が挿入する前の無負荷状態でのリテーナ6の爪部61aの内径とほぼ同一に設定している。このような内径に設定することにより、フレキシブル管を管継手に挿入する途中で引抜こうとした場合に、リテーナ6の爪部61aがフレキシブル管の外径に係り合うことなく引抜くことができ、再度フレキシブル管を接続施工することができる。
【0047】
なお、シール部材5Aのリテーナ6側の端部が、金属コルゲート管が挿入する前の無負荷状態でのリテーナ6の爪部61aの内径とほぼ同一に設定されていれば良く、たとえば気密パッキン51の内径側をリテーナ6の方向に突出延長させても良い。
【0048】
(フレキシブル管の挿入完了)
フレキシブル管11を継手本体2の奥まで押し込み、移動部材44のフランジ部441がインロー部23側に押し込まれることにより、フレキシブル管11の挿入が完了し、押ナット3の外周面と継手本体2の端部との間にギャップgが形成される。フレキシブル管11の挿入が完了すると同時に、ガイド部材42の折曲部422の自由端が継手本体2及びスペーサ部材43から離脱し、スペーサ部材43が継手本体2に当接する。したがって圧縮コイルばね41が開放されると、その復元力によりシール部材5がフレキシブル管11の挿入方向とは逆の方向にスライドし、リテーナ6の爪部61aは金属製ガイド52に押されてリテーナ6のテーパ面61bが押ナット3のテーパ面31に密着するとともに、爪部62は縮径して金属コルゲート管12の谷部に係止される(図11を参照)。
【0049】
フレキシブル管の挿入が完了した時点では、押ナット3は挿入方向と逆方向に押圧されるので、ストップリング7は、押ナット3の外周溝32に係止された状態で継手本体2の第2環状溝273に移動し、その位置で保持される。すなわち、ストップリング7は第1環状溝271(第1の位置、図3(a))から第2環状溝273(第2の位置、図3(b))に移動しかつその位置で継手本体2と押ナット3にまたがって係止される。このようにフレキシブル管11はリテーナ6を介して押ナット3に連結された状態となり、しかも継手本体2と押ナット3とが機械的に結合されてこれらの相対移動が阻止されるので、フレキシブル管11に矢印方向の引き抜き力が作用した場合でも、フレキシブル管11が管継手1から抜け出すことができず、フレキシブル管11の挿入(管継手1との接続)が完了したと判断される。
【0050】
[第三の実施の形態]
本発明の第三の実施の形態を図10及び図11を用いて説明する。図10は本発明にかかる第三実施例の管継手の半断面図、図11は本発明にかかる第三実施例の管継手へフレキシブル管の接続が完了した状態を示す半断面図である。なお、図1から図8を用いて説明した第一の実施の形態及び図9を用いて説明した第二の実施の形態と同一の構成は同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0051】
<管継手1B>
図10に示すように、管継手1Bは管継手1と比較して、弾性部材4Aにスペース部材43を有し、継手本体2Bに係合溝241が形成されていない点、及び抜け止め部材再拡径防止部が耐火パッキンと一体化されていない点が相違する。
【0052】
図10に図示するように、シール部材5Bは、気密パッキン51と、この気密パッキン51に固着されたL字形の断面形状を有する金属製ガイド52に固設された耐火パッキン53Bを有する。
そして、耐火パッキン53Bとリテーナ6との間には抜け止め部材再拡径防止部材532が介在している。この抜け止め部材再拡径防止部材532は断面L型の金属製環状部材で外径は継手本体2Bの第2段部25に内接し、内径は耐火パッキン53Bの外径よりも小さく設定されており、耐火パッキン53Bのスライドに伴って、第2段部25の内径に沿って移動可能になっている。
【0053】
管継手1Bにフレキシブル管11を挿入すると、図11に示すように、移動部材44のフランジ部441がインロー部23側に押し込まれることにより、フレキシブル管11の挿入が完了し、押ナット3の外周面と継手本体2の端部との間にギャップgが形成される。フレキシブル管11の挿入が完了すると同時に、ガイド部材42の折曲部422の自由端が継手本体2及びスペーサ部材43から離脱し、スペーサ部材43が継手本体2に当接する。したがって圧縮コイルばね41が開放されると、その復元力によりシール部材5がフレキシブル管11の挿入方向とは逆の方向にスライドし、リテーナ6の爪部61aは金属製ガイド52に押されてリテーナ6のテーパ面61bが押ナット3のテーパ面31に密着するとともに、爪部61aは縮径して金属コルゲート管12の谷部に係止される。
【0054】
このとき同時に、金属コルゲート管12の先端と移動部材44との間に間隙Lが生じる。しかしながら、耐火パッキン53Bに隣接した抜け止め部材再拡径防止部材532が耐火パッキン53Bに押されて、縮径したリテーナ6の基部61の外周面と継手本体2の第2段部25との間にスライドするので、この状態からフレキシブル管11を誤って押し込んだとしても、リテーナ6が拡径することがなく、間隙Lは維持される。したがって、上述した管継手の分解機能を失うことがない。
【0055】
分解リング9は、図11に示すように、継手本体2Bの円周溝29内部に残存させても良い。このときにはギャップgが生じせしめた押ナット3の外周面に着色を施すことができる。
【0056】
本発明に係る管継手の形状は一端に雄ねじ部を有する片ねじソケットに限らず、両ソケット、エルボ、ティー、または雌ねじを有するものであってもよい。またガス栓やガスメータなどの機器の端部に本発明の継手構造を一体的に設けることもできる。
【符号の説明】
【0057】
1、1A、1B:管継手、
2、2A、2B:継手本体、21:内孔、22:おねじ部、23:インロー部、24:第1段部、241:係合溝、25:第2段部、27:係止溝、271:第1環状溝、272:第2環状溝、28:保持溝、29:円周溝
3:押ナット、31:先端部、31a:テーパ面、32:保持溝、33:突条部、34:着色層
4:弾性部材、41:圧縮コイルばね、42:ガイド部材、43:スペーサ部材、
44:移動部材、441:フランジ部
5:シール部材、51:気密パッキン、52:金属ガイド、53、53A、53B:耐火パッキン、531:抜け止め部材再拡径防止部、532:抜け止め部材再拡径防止部材
6:抜け止め部材(リテーナ)、61:基部、61a:爪部、61b:テーパ面、
62:分割部
7:ストップリング、
8a:Oリング、8b:リップパッキン、
9:分解リング、
10:選択性透過部材
11:フレキシブル管、12:金属コルゲート管、13:樹脂被覆
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端からフレキシブル管が挿入される内孔を有した継手本体と、前記フレキシブル管が奥まで挿入されると挿入方向とは逆方向にスライドし前記フレキシブル管と前記継手本体をシールするシール部材と、前記シール部材に隣接し前記フレキシブル管に係止される爪部を有する抜け止め部材と、前記シール部材と前記抜け止め部材との間に介在させた抜け止め部材再拡径防止手段とを備え、
前記シール部材のスライド動作に伴って、前記抜け止め部材は前記フレキシブル管に係止し、前記抜け止め部材再拡径防止手段は前記抜け止め部材と前記継手本体との間に移動することを特徴とする管継手。
【請求項2】
前記抜け止め部材再拡径防止手段は、前記シール部材とともに前記内孔にスライド可能に設けたことを特徴とする請求項1に記載の管継手。
【請求項3】
前記抜け止め部材再拡径防止手段は、前記シール部材と一体となしたことを特徴とする請求項1または2に記載の管継手。
【請求項4】
前記シール部材は、フレキシブル管の外周をシールする気密パッキンと、常温ではコルゲート管の外周をシールせず、加熱時に熱膨張してフレキシブル管の外周をシールする耐火パッキンとを含み、前記抜け止め部材再拡径防止手段は、前記耐火パッキンと一体となしたことを特徴とする請求項1または2に記載の管継手。
【請求項5】
前記抜け止め部材再拡径防止手段は、前記継手本体の内孔に内接するC型リングであることを特徴とする請求項1または2に記載の管継手。
【請求項6】
前記継手本体の前記内孔には圧縮状態に保持された弾性部材を備え、該弾性部材は圧縮バネと、L字形断面を有するガイド部材と、該ガイド部材の内側に接し軸方向に移動可能に設けられる移動部材とからなり、前記移動部材が前記ガイド部材と非接触になる位置に移動することに伴って、圧縮バネが伸長し、前記シール部材が前記フレキシブル管の挿入方向とは逆方向へスライドするように構成したことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の管継手。
【請求項7】
前記継手本体に対して前記押ナットを所定の位置に保持するストップリングを備え、前記ストップリングは前記フレキシブル管の挿入動作では前記抜け止め部材を前記フレキシブル管に対して係止解除状態に維持する第1の位置と、前記フレキシブル管の挿入確認動作では前記抜け止め部材を前記フレキシブル管に対して係止状態に維持しかつ前記継手本体と前記押ナット部材との間に外周から施工確認が可能なギャップを形成する第2の位置に選択的に移動することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の管継手。
【請求項8】
前記押ナットには前記フレキシブル管の挿入動作では前記継手本体で隠蔽されかつ前記フレキシブル管の挿入確認動作では露出する分解リングが着脱自在に設けられ、前記押ナットから前記分解リングが取り外されると前記ギャップが消滅するとともに前記ストップリングが前記継手本体のみに係止される第3の位置に移動することを特徴とする請求項7に記載の管継手。
【請求項1】
一端からフレキシブル管が挿入される内孔を有した継手本体と、前記フレキシブル管が奥まで挿入されると挿入方向とは逆方向にスライドし前記フレキシブル管と前記継手本体をシールするシール部材と、前記シール部材に隣接し前記フレキシブル管に係止される爪部を有する抜け止め部材と、前記シール部材と前記抜け止め部材との間に介在させた抜け止め部材再拡径防止手段とを備え、
前記シール部材のスライド動作に伴って、前記抜け止め部材は前記フレキシブル管に係止し、前記抜け止め部材再拡径防止手段は前記抜け止め部材と前記継手本体との間に移動することを特徴とする管継手。
【請求項2】
前記抜け止め部材再拡径防止手段は、前記シール部材とともに前記内孔にスライド可能に設けたことを特徴とする請求項1に記載の管継手。
【請求項3】
前記抜け止め部材再拡径防止手段は、前記シール部材と一体となしたことを特徴とする請求項1または2に記載の管継手。
【請求項4】
前記シール部材は、フレキシブル管の外周をシールする気密パッキンと、常温ではコルゲート管の外周をシールせず、加熱時に熱膨張してフレキシブル管の外周をシールする耐火パッキンとを含み、前記抜け止め部材再拡径防止手段は、前記耐火パッキンと一体となしたことを特徴とする請求項1または2に記載の管継手。
【請求項5】
前記抜け止め部材再拡径防止手段は、前記継手本体の内孔に内接するC型リングであることを特徴とする請求項1または2に記載の管継手。
【請求項6】
前記継手本体の前記内孔には圧縮状態に保持された弾性部材を備え、該弾性部材は圧縮バネと、L字形断面を有するガイド部材と、該ガイド部材の内側に接し軸方向に移動可能に設けられる移動部材とからなり、前記移動部材が前記ガイド部材と非接触になる位置に移動することに伴って、圧縮バネが伸長し、前記シール部材が前記フレキシブル管の挿入方向とは逆方向へスライドするように構成したことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の管継手。
【請求項7】
前記継手本体に対して前記押ナットを所定の位置に保持するストップリングを備え、前記ストップリングは前記フレキシブル管の挿入動作では前記抜け止め部材を前記フレキシブル管に対して係止解除状態に維持する第1の位置と、前記フレキシブル管の挿入確認動作では前記抜け止め部材を前記フレキシブル管に対して係止状態に維持しかつ前記継手本体と前記押ナット部材との間に外周から施工確認が可能なギャップを形成する第2の位置に選択的に移動することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の管継手。
【請求項8】
前記押ナットには前記フレキシブル管の挿入動作では前記継手本体で隠蔽されかつ前記フレキシブル管の挿入確認動作では露出する分解リングが着脱自在に設けられ、前記押ナットから前記分解リングが取り外されると前記ギャップが消滅するとともに前記ストップリングが前記継手本体のみに係止される第3の位置に移動することを特徴とする請求項7に記載の管継手。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−52762(P2011−52762A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−202506(P2009−202506)
【出願日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【出願人】(000106298)株式会社サンコー (39)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【出願人】(000106298)株式会社サンコー (39)
【Fターム(参考)】
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