説明

管継手

【課題】高圧の繰返し入力後であっても、雌側継手と雄側継手とを分離できるようにする。
【解決手段】外周面26に凹部28が形成された雄側継手12と、一端42側から雄側継手12の先端部30を嵌入可能に構成され、内周側から外周側に向かって拡径する貫通孔50が周方向に配列して形成された雌側継手14と、貫通孔50内に配置され、雄側継手12の凹部28に係合することで、該雄側継手12と雌側継手14とを連結状態とする球体16と、雌側継手14の径方向外側に設けられ、凹部28に係合した球体16を該雌側継手14の径方向外側から支持するカラー18と、雌側継手14の一端42側における該雌側継手14の内周面38と貫通孔50との境界部に雄側継手12の外周面26から遠ざかるように設けられ、球体16の接触圧による該境界部の該外周面26側への変形を逃がす変形逃がし部20と、を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
ソケット(雌側継手)とプラグ(雄側継手)が、軸方向移動自在のスライダ(外筒)で硬球(鋼球)がプラグの嵌合凹部と嵌合した状態に拘束されることにより、互いに連結されるクイックコネクタ(迅速継手)の構造が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−218283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した迅速継手のような管継手では、内圧による力を、鋼球に接する雄側継手と、雌側継手と、外筒とで保持している。しかしながら、高圧の繰返し入力にさらされると、雌側継手における鋼球の保持部分が内面方向へ変形し、該雌側継手と雄側継手とが分離不能となるおそれがあった。この状態は、着脱機能の喪失による管継手の寿命とされていたが、耐圧性能には何ら問題がなかった。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、高圧の繰返し入力後であっても、雌側継手と雄側継手とを分離できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、内周面に流路が形成され、外周面に凹部が形成された雄側継手と、内周面に流路が形成され、一端側から前記雄側継手の先端部を嵌入可能に構成され、内周側から外周側に向かって拡径する貫通孔が周方向に配列して形成された雌側継手と、前記貫通孔内に配置され、前記雄側継手の前記凹部に係合することで、該雄側継手と雌側継手とを連結状態とする球体と、前記雌側継手の径方向外側に設けられ、前記凹部に係合した前記球体を該雌側継手の径方向外側から支持するカラーと、前記雌側継手の前記一端側における該雌側継手の前記内周面と前記貫通孔との境界部に前記雄側継手の前記外周面から遠ざかるように設けられ、前記球体の接触圧による該境界部の該外周面側への変形を逃がす変形逃がし部と、を有している。
【0007】
請求項1に記載の管継手では、雌側継手に雄側継手を嵌入した際に、該雌側継手の貫通孔内に配置される球体が該雄側継手の凹部に係合することで、雄側継手と雌側継手とが連結状態となる。この球体を、雌側継手の径方向外側からカラーにより支持することで、雌側継手からの雄側継手の離脱が防止され、互いの連結状態が維持される。
【0008】
この管継手では、雌側継手の一端側における該雌側継手の内周面と貫通孔との境界部に、変形逃がし部が、雄側継手の外周面から遠ざかるように設けられているので、高圧の繰返し入力にさらされた際に、球体の接触圧が該境界部に作用して、該境界部が雄側継手の外周面側に変形しても、該境界部と雄側継手との干渉は抑制される。このため、高圧の繰返し入力後であっても、雌側継手と雄側継手とを分離することが可能である。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載の管継手において、前記雄側継手の前記先端部側における前記凹部と該雄側継手の前記外周面との境界部に前記雌側継手の前記内周面から遠ざかるように設けられ、前記球体の接触圧による該境界部の該内周面側への変形を逃がす第2変形逃がし部を有している。
【0010】
請求項2に記載の管継手では、雄側継手の先端部側における凹部と該雄側継手の外周面との境界部に、第2変形逃がし部が、雌側継手の内周面から遠ざかるように設けられているので、高圧の繰返し入力にさらされた際に、球体の接触圧が該境界部に作用して、該境界部が雌側継手の内周面側に変形しても、該境界部と雌側継手との干渉は抑制される。このため、高圧の繰返し入力後であっても、雌側継手と雄側継手とを分離することが可能である。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明に係る請求項1に記載の管継手によれば、高圧の繰返し入力後であっても、雌側継手と雄側継手とを確実に分離することができる、という優れた効果が得られる。
【0012】
請求項2に記載の管継手によれば、高圧の繰返し入力後であっても、更に確実に雌側継手と雄側継手とを分離することができる、という優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】管継手において、雌側継手と雄側継手とが分離した状態を示す半断面図である。
【図2】雄側継手と雌側継手との連結状態を示す拡大断面図である。
【図3】(A)平面状の面取りとされた変形逃がし部を示す拡大断面図である。(B)曲面状の面取りとされた変形逃がし部を示す拡大断面図である。
【図4】貫通孔に対する変形逃がし部の配置例を示す拡大平面図である。
【図5】球体が、内圧作用時に発生する軸力により、雄側継手の凹部、雌側継手の貫通孔及びカラーの3箇所に接触している状態を示す拡大断面図である。
【図6】図5において、雄側継手に第2変形逃がし部を設けた例を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づき説明する。図1において、本実施形態に係る管継手10は、カプラーと称される迅速継手であり、例えば油圧機器等に用いられる。この管継手10は、雄側継手12と、雌側継手14と、球体16と、カラー18と、変形逃がし部20と、を有している。
【0015】
雄側継手12は、内周面22に流路24が形成され、外周面26に凹部28が形成されている。凹部28は、例えば外周面26の全周に延びる環状溝である。図2に示されるように、凹部28の断面形状は、例えば円弧形であるが、これに限られず、矩形状や台形状等であってもよい。また凹部28は環状溝には限られず、外周面26の周方向に配列された断続的な溝や窪みであってもよい。
【0016】
雄側継手12の外径は、先端部30側が小径に構成され、後端部32側が大径に形成されている。先端部30には、小径部30Aと大径部30Bとが設けられており、凹部28は、該大径部30Bに形成されている。後端部32の内周面22には、例えば管用テーパ雌ねじ36が形成されている。この管用テーパ雌ねじ36への配管接続作業時に、後端部32に工具を掛けられるように、該後端部32には六角部34が設けられている。
【0017】
図1において、雌側継手14は、内周面38に流路40が形成され、一端42側から雄側継手12の先端部30を嵌入可能に構成されている。雌側継手14の他端44側の内周面38には、例えば管用テーパ雌ねじ45が形成されている。図2に示されるように、雌側継手14には、内周側から外周側に向かって拡径する貫通孔50が周方向に配列して形成されている。内周面38における貫通孔50の直径は、球体16の直径よりも小さく設定されている。これは、雄側継手12と雌側継手14とが連結状態にないときに、球体16が雌側継手14内に脱落することを防止するためである。
【0018】
雌側継手14の内周面38には環状溝48が設けられており、該環状溝48内にはOリング46が設けられている。このOリング46の内径は、雄側継手12の先端部30における例えば小径部30Aの外形よりもわずかに小さく設定されている。これにより、雄側継手12を雌側継手14に連結する際に、雄側継手12の先端部30が雌側継手14に嵌入され、流路24,40内の流体(図示せず)が、雄側継手12と雌側継手14との間から漏れることを防止している。
【0019】
図1,図2において、球体16は、貫通孔50内に夫々配置され、雄側継手12の凹部28に係合することで、該雄側継手12と雌側継手14とを連結状態とする、例えば鋼球である。雌側継手14において貫通孔50が位置する部位の肉厚は、球体16の直径よりも小さく設定されており、雄側継手12を雌側継手14に連結する際、球体16が、雌側継手14の径方向において貫通孔50より内側(雄側継手12の外周面26側)に突出し、雄側継手12の凹部28に係合するようになっている。
【0020】
カラー18は、雌側継手14の径方向外側に設けられ、雄側継手12の凹部28に係合した球体16を該雌側継手14の径方向外側から支持する、例えば円筒部材である。このカラー18は、雄側継手12の同軸上に、軸方向に移動可能に設けられている。カラー18と雌側継手14との間には、例えばコイルスプリング状の付勢部材52が設けられており、例えばカラー18を常時一端42側へ付勢している。カラー18の一端42側への移動限界は、雌側継手14の一端42側に設けられたストッパ56により定められている。このストッパ56は、例えば環状のリングや、複数のボール部材等で構成されるが、図2に示されるように、雌側継手14の一部をストッパ56としてもよい。
【0021】
付勢部材52の付勢力によりカラー18が一端42側へ移動している状態(通常状態)では、雌側継手14の径方向外側への球体16の移動が規制されるようになっている。カラー18の内径は、一端42側において拡大しており、付勢部材52の付勢力に抗して、カラー18を他端44側へ移動させた状態では、雌側継手14の径方向外側への球体16の移動が許容され、雄側継手12の着脱が可能となっている。
【0022】
図1,図2において、変形逃がし部20は、雌側継手14の一端42側における該雌側継手14の内周面38と貫通孔50との境界部に、雄側継手12の外周面26から遠ざかるように設けられ、球体16の接触圧による該境界部の該外周面26側への変形を逃がす部位である。この変形逃がし部20は、雌側継手14からの雄側継手12の抜止めを目的とするものではなく、逆に雄側継手12に対する雌側継手14の干渉を抑制して、例えば20MPa〜200MPa程度の高圧の繰返し入力後であっても、管継手10の着脱機能を維持できるようにすることを目的としている。
【0023】
この変形逃がし部20は、例えば欠肉部である。変形逃がし部20の断面形状は、矩形の切欠き(図1,図2)の他、平面状の面取り(図3(A))や曲面状の面取り(図3(B))等が考えられる。
【0024】
図5に示されるように、球体16は、内圧作用時に発生する軸力F(雄側継手12が雌側継手14から離脱しようとする力)により、雄側継手12の凹部28、雌側継手14の貫通孔50及びカラー18の3箇所に接触する。このとき、球体16は、貫通孔50における雌側継手14の一端42側(図1)の内壁に接触する。変形逃がし部20の上端は、この接触状態の球体16の中心Oよりも雌側継手14の径方向内側に位置することが望ましい。球体16と貫通孔50の内壁との接触状態が面接触となり、接触面圧の集中を抑制できるからである。変形逃がし部20を、平面状の面取りとした場合(図3(A))や、曲面状の面取りとした場合(図3(B))も同様である。
【0025】
また図4に示されるように、貫通孔50の直径をDとし、雌側継手14の軸方向Aにおいて雌側継手14の一端42側(図1)における内周面38と貫通孔50との境界部から該一端42側における変形逃がし部20の幅をW1とし、該境界部から貫通孔50の中心O側における変形逃がし部20の幅をW2とすると、例えばW1=0.2D、W2=0.2Dであり、W1≦1.0D、W2≦0.5Dが好ましい。これは、貫通孔50の内壁において、内圧作用時の軸力F(図5)の発生時に球体16(図5)からの力を受ける部分を十分に確保するためである。
【0026】
この他、変形逃がし部20の寸法は、雄側継手12、雌側継手14、球体16及びカラー18の材質や硬さ、該球体16の配置や流路24,40の径寸法、使用圧力等によって適宜設定することが可能である。管継手10の強度確保のためには、変形逃がし部20を、可能な範囲で小さく設けることが好ましい。
【0027】
図1,図4に示されるように、矩形の切欠きである変形逃がし部20は、加工の容易性のため、雌側継手14の内周面38の周方向に連続して形成されている。平面状の面取り(図3(A))や曲面状の面取り(図3(B))の場合には、個々の貫通孔50に対して変形逃がし部20が夫々設けられる。
【0028】
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。図1において、本実施形態に係る管継手10では、カラー18を、付勢部材52の付勢力に抗して、雌側継手14の他端44側へ移動させることで、雌側継手14の径方向外側への球体16の移動が許容されるので、雄側継手12の着脱が可能となる。図2に示されるように、該雄側継手12を雌側継手14に嵌入した際には、該雌側継手14の貫通孔50内に配置される球体16が該雄側継手12の凹部28に係合することで、雄側継手12と雌側継手14とが連結状態となる。
【0029】
付勢部材52の付勢力によりカラー18が一端42側へ復帰し、通常状態になると、球体16は、該カラー18により雌側継手14の径方向外側から支持されるため、該雌側継手14の径方向外側への移動が規制される。これにより、雌側継手14からの雄側継手12の離脱が防止され、互いの連結状態が維持される。
【0030】
図5に示されるように、管継手10に内圧が作用すると、該管継手10には、雄側継手12が雌側継手14から離脱しようとする軸力Fが発生する。これにより、球体16は、点P1において雄側継手12の凹部28に接触し、点P2において雌側継手14の貫通孔50に接触し、点P3においてカラー18に接触する。即ち、球体16が点P1,P2,P3の3箇所に当接することで、軸力Fが該点P1,P2,P3において受け止められる。
【0031】
ここで、点P2は、貫通孔50における雌側継手14の一端42側(図1)の内壁であり、球体16は該内壁に接触するが、本実施形態では、雌側継手14の一端42側における該雌側継手14の内周面38と貫通孔50との境界部に、変形逃がし部20が、雄側継手12の外周面26から遠ざかるように設けられているので、例えば20MPa〜200MPa程度の高圧の繰返し入力にさらされた際に、球体16の接触圧が該境界部に作用して、該境界部が雄側継手12の外周面26側に変形しても、該境界部と雄側継手12との干渉は抑制される。このため、高圧の繰返し入力後であっても、雌側継手14と雄側継手12とを分離することが可能である。
【0032】
(変形例)
図6に示される例では、雄側継手12の先端部30側における凹部28と該雄側継手12の外周面26との境界部に、第2変形逃がし部60が設けられている。第2変形逃がし部60は、雌側継手14の内周面38から遠ざかるように設けられ、球体16の接触圧による該境界部の該内周面22側への変形を逃がすようになっている。第2変形逃がし部60の形状等については、雌側継手14における変形逃がし部20と同様である。
【0033】
本変形例では、雄側継手12の先端部30側における凹部28と該雄側継手12の外周面26との境界部に、第2変形逃がし部が、雌側継手14の内周面38から遠ざかるように設けられているので、高圧の繰返し入力にさらされた際に、球体16の接触圧が該境界部に作用して、該境界部が雌側継手14の内周面38側に変形しても、該境界部と雌側継手14との干渉は抑制される。このため、高圧の繰返し入力後であっても、更に確実に雌側継手14と雄側継手12とを分離することが可能である。
【0034】
(他の実施形態)
上記実施形態において、変形逃がし部20や第2変形逃がし部60と関係しない部位の構成は、適宜変更することが可能である。例えば管継手10内に弁機構(図示せず)を設けてもよい。
【符号の説明】
【0035】
10 管継手
12 雄側継手
14 雌側継手
16 球体
18 カラー
20 変形逃がし部
22 内周面
24 流路
26 外周面
28 凹部
30 先端部
32 後端部
38 内周面
40 流路
42 一端
50 貫通孔
60 第2変形逃がし部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面に流路が形成され、外周面に凹部が形成された雄側継手と、
内周面に流路が形成され、一端側から前記雄側継手の先端部を嵌入可能に構成され、内周側から外周側に向かって拡径する貫通孔が周方向に配列して形成された雌側継手と、
前記貫通孔内に配置され、前記雄側継手の前記凹部に係合することで、該雄側継手と雌側継手とを連結状態とする球体と、
前記雌側継手の径方向外側に設けられ、前記凹部に係合した前記球体を該雌側継手の径方向外側から支持するカラーと、
前記雌側継手の前記一端側における該雌側継手の前記内周面と前記貫通孔との境界部に前記雄側継手の前記外周面から遠ざかるように設けられ、前記球体の接触圧による該境界部の該外周面側への変形を逃がす変形逃がし部と、
を有する管継手。
【請求項2】
前記雄側継手の前記先端部側における前記凹部と該雄側継手の前記外周面との境界部に前記雌側継手の前記内周面から遠ざかるように設けられ、前記球体の接触圧による該境界部の該内周面側への変形を逃がす第2変形逃がし部を有する請求項1に記載の管継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−154400(P2012−154400A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−13333(P2011−13333)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】