説明

管網を自動的に制御する方法

本発明は、特に、醸造システムにおいて、流動媒体を移送する管網を自動的に制御する方法であって、管網が、移送元と移送先との間の複数の移送経路を提供し、管網が、複数の管路セクションもしくは複数の制御モジュールまたはその両方を備えており、移送元、特に所定の移送元と、移送先、特に所定の移送先との間の、流動媒体の移送経路、を自動的に計算する移送経路計算ステップであって、移送元と移送先との間の一連の管路セクションもしくは制御モジュールまたはその両方を計算するステップを含んでいる、移送経路計算ステップ、を含んでいる、方法、に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、醸造所において、流動媒体を移送する管網を自動的に制御する方法と、管網を自動的に制御する制御装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
醸造所は、一般には、複数の管および分岐を有する管網を備えており、これらの管は、流体(すなわち液体もしくは気体またはその両方)を移送する目的で設けられている。醸造工程時、液体または気体が複数の容器の間で移送される。例えば、製品、半製品、原料、およびその他の供給材料が、1つの工程室(process cell)または醸造所の一区画から別の工程室に移送される。移送元から移送先に液体または気体を移送するためには、管網の中でそれに適する移送経路を決定しなければならない。この移送経路は、移送元から移送先に流体を導く一連のラインセクションに対応する。
【0003】
流体を移送する場合、移送経路は、過去に使用した既知の経路として、あらかじめ決定されることが多い。移送時、以前に確定的に定義されたライン接続を、例えばエルボ接続(ヒンジ型エルボ)(bow connections (hinged elbows))によって、管網の中で確立し、この場合、接続の開閉には例えば遮断弁が使用される。場合によっては、バルブ(例えば複座弁の形の漏れ防止型四方弁)を使用してライン接続を確立する。しかしながらこの場合にも、特定の移送元と特定の移送先との間の可能な移送経路はあらかじめ固定される。
【発明の概要】
【0004】
したがって、先行技術から公知の方法および装置は、欠点として、流動媒体(flow media)の移送が複雑であり、移送経路が固定されているため柔軟性に乏しい。したがって、管網を自動的に制御する、柔軟性の高い方法が必要とされている。これを目的として、本発明は、請求項1に記載の方法を提供する。
【0005】
本発明によると、特に、醸造所において、流動媒体を移送する管網を自動的に制御する方法であって、管網が、移送元と移送先との間の複数の移送経路を提供し、管網が、複数のラインセクションおよび複数の制御モジュールを備えており、特に所定の移送元と特に所定の移送先との間の、流動媒体の移送経路、を自動的に計算する移送経路計算ステップであって、移送元と移送先との間の一連のラインセクションもしくは制御モジュールまたはその両方を計算するステップ、を含んでいる、移送経路計算ステップ、を含んでいる、方法、が提供される。
【0006】
本発明に従って自動化される制御方法においては、流動媒体の移送経路または輸送経路が自動的に計算(したがって決定)され、あらかじめ決められた移送経路が使用されないため、本質的に管網の制御の柔軟性が高まる。自動的な計算および決定は、特に、移送時に行う、リアルタイムで行う、または移送時にリアルタイムで行うことができ、すなわち、事前に行う必要がない。本制御方法では、(例えば必要な移送または輸送の工程中の)管網の状態を考慮することができ、すなわち例えば、管網のラインセクションの使用状況、割当て、状態のうちの1つまたは複数を考慮することができる。したがって、連続的な移送または輸送と、並列な移送とを、改良された方式で実行することができる。移送経路は、特に、可変である。
【0007】
管網は、複数のラインセクション、もしくは複数の制御モジュール(例えば、ポンプ、弁、測定装置)、またはその両方、を備えている。したがって、計算の結果として得られる一連のラインセクションもしくは制御モジュールまたはその両方は、要件および状況(例えば管網の現在の状態)に応じて異なる。移送経路の計算は、特に、ラインセクションの間のライン接続の計算を含んでいることができる。この場合、ライン接続は、例えば弁によって提供することができる。
【0008】
ラインセクション(すなわち管路の一部または一区画)は、一端(または開口)あるいは両端を、それぞれ制御モジュール(例えば弁、遮断手段、またはポンプ)あるいは別のラインセクションによって、境界とすることができる。ラインセクションは、特に、その端部のみに制御モジュールを備えていることができる。端部以外にはラインセクションに沿って制御モジュールが設けられることはない。制御モジュールは、例えば、ラインセクションを流体的に分離することができ、この場合、1つのラインセクションは、流体的に分離できる管網の最小単位である。したがって、本発明による方法では、小さいライン単位もしくは制御モジュールまたはその両方から移送経路を組み立てることができ、結果として柔軟性が高い。
【0009】
流動媒体(流体)は、液体もしくは気体またはその両方とすることができる。流動媒体は、特に醸造工程の製品、半製品、原料、またはその他の供給材料とすることができる。流動媒体の移送元は、例えば、工程室(例:フィルタ、遠心分離器など)、供給材料の入口、タンク、または管網の一セクション(例えば1つまたは複数のラインセクション)とすることができる。流動媒体の移送先は、工程室、排出口、タンク、排水桝(gully)、または管網の一セクション(特に、1つまたは複数のラインセクションもしくは制御モジュールまたはその両方の形でのセクション、例えば別の工程室に入るためのセクション)、とすることができる。移送または輸送は、例えば、搬送要素(例:ポンプ)の形の制御モジュールによって、もしくは、流動媒体を(押し込み媒体によって)追い出すことによって、またはその両方によって、行うことができる。このような押し込み媒体を使用することで、流動媒体をラインセクションから押す(押し出す)ことができる。
【0010】
本方法は、個々の移送元と複数の移送先との間の移送経路、複数の移送元と個々の移送先との間の移送経路、もしくは複数の移送元と複数の移送先との間の移送経路、のうちの1つまたは複数を、自動的に計算するステップを含んでいることができる。したがって、複数の移送元の場合、異なる移送元からの流動媒体を使用することができ、オプションとして混合することができる。複数の移送先が使用可能であることによって、流動媒体を複数の異なる移送先に分配することができる。したがって、連続的な移送または並列移送が可能である。さらに、本方法は、移送元もしくは移送先またはその両方を計算するステップを含んでいることができる。移送元もしくは移送先またはその両方の計算は、移送する(所定の)流動媒体、もしくは管網の中に現在存在している流動媒体、またはその両方を考慮して、行うことができる。したがって、例えば、所定の洗浄液について、その好適な移送元を計算することができる。
【0011】
移送経路の計算は、移送する流動媒体、以前に(特に直前に)移送された流動媒体、管網の中に現在存在している流動媒体、のうちの1つまたは複数を考慮して、行うことができる。この場合に計算は、特に、計算する移送経路の少なくとも1つのラインセクションに存在している流動媒体、またはそのようなラインセクションにおいて以前に移送された流動媒体、を考慮することができる。以前に移送された流動媒体の移送経路と、これから移送する流動媒体の、(計算される)移送経路とが、少なくとも部分的に重なる場合、特に直前に移送された流動媒体に依存しての計算が特に重要である。したがって、移送する流動媒体が汚れたり混ざり合うことを回避することができる。このような汚れや混合は、移送経路が、以前に流動媒体が移送されたラインセクションを含んでいる場合に起こりうる。移送される他の流動媒体、または移送中の他の流動媒体を考慮することによって、複数のラインセクションにおいていくつかの流動媒体を並列に(同時に)移送できるのみならず、連続的に移送することができ、洗浄(例えば後者の場合には個々の移送の間の洗浄)も要求されない。
【0012】
上述した方法においては、管網のラインセクションもしくは制御モジュールまたはその両方に、少なくとも1つのステータスを割り当てることができ、移送経路を少なくとも1つのステータスを考慮して計算することができる。特に、管網の各ラインセクションもしくは各制御モジュールまたはその両方に、少なくとも1つのステータスを割り当てることができる。
【0013】
少なくとも1つのステータスは、遮断ステータス、基本ステータス、媒体ステータス、衛生ステータス、割当てステータス、のうちの1つまたは複数とすることができる。
【0014】
遮断ステータスは、対応するラインセクションまたは制御モジュールが遮断されているか遮断されていない(すなわち使用できる)かを示すことができる。この場合、遮断は、例えばオペレータによって(特に、オペレータのみによって)トリガーすることができる。これにより、ラインセクションまたは制御モジュールを手動で遮断または解放することができ、この場合、対応するラインセクションまたは制御モジュールのこの状態を、移送経路の自動計算において考慮に入れなければならない。
【0015】
基本ステータスは、対応する要素が空いている(すなわち基本的に使用できる)か占有されている(すなわち使用中)かを示すことができる。
【0016】
媒体ステータス(製品の識別情報に対応する)は、ラインセクションを介して最後に移送された流動媒体を示すことができる。移送経路の計算は、例えば、計算する移送経路の各ラインセクションが、移送される流動媒体に対して所定の基準に照らしたとき混合適合性である(compatible)媒体ステータス、もしくは、移送される流動媒体に対してあらかじめ決められた複数の媒体ステータスのいずれか、またはこれらの両方、を有する、という条件下で行うことができる。
【0017】
特に、1つのラインセクションまたは制御モジュールに2つの媒体ステータスを割り当てることができ、第1の媒体ステータスが、現在の流動媒体、または要素内に現在存在している流動媒体を表し、第2の媒体ステータスが、以前に移送された流動媒体を表す。これらの2つの媒体ステータスによって、以前に移送された流動媒体を考慮して移送経路を計算することができ、これは有利である。
【0018】
衛生ステータスは、所定の基準に照らしてのラインセクションの衛生状態を示すことができる。ラインセクションの衛生ステータスは、特に、そのラインセクションを介して以前に移送された1つまたは複数の流動媒体、またはそのラインセクションに現在存在している1つまたは複数の流動媒体、に基づくことができる。さらに、衛生ステータスは、流動媒体それぞれに適用される衛生有効時間を有することができ、衛生有効時間は、衛生ステータスがいつ無効になるかを示す。例えば、移送する流動媒体それぞれに、特に、ラインに存在している流動媒体(媒体ステータス)に依存して、許容される衛生ステータスのリストを割り当てることができ、したがって、流動媒体は、対応するリストからの衛生ステータスを有するラインセクションに沿ってのみ移送させることができる。この場合、移送経路の計算は、この条件下で実行される(「製品の順序」)。さらに、衛生ステータスは、順序付けられた数量(ordered quantity)からの値をとることができ、この場合、移送経路の計算は、計算する移送経路の各ラインセクションが、流動媒体に対応する衛生ステータスを少なくとも1つ有するという条件下で行われる。このようにして、移送する流動媒体における望ましくない不純物や混合、汚れを避けることができる。例えば、互いに異なるが製品の順序に関して類似する媒体をグループにまとめることができ、これらのグループに対して設定を行うことができる。この場合、設定の処理量を最小にすることができる。
【0019】
割当てステータスは、ラインセクションに移送または輸送が割り当てられているか、もしくは、関与している移送、またはその両方を示すことができる。この場合、割り当てられている移送がすでに実行中であるか待機状態にあるかは、必ずしも区別されない。
【0020】
上述した方法では、移送経路の計算は、少なくとも2つの部分経路の計算を含んでいることができ、これら少なくとも2つの部分経路は、流体的に分離させることができる。1つの部分経路は、1つまたは複数のラインセクションを備えていることができる。流体的な分離は、制御モジュール、特に遮断手段(例えば弁または遮断弁)によって行うことができる。このような部分経路を用いることで、使用されない部分経路の準備もしくは後処理またはその両方を行うことができる。例えば、使用されない部分経路をすすぐまたは洗浄することができる。別の方法として、すでに使用された部分経路を、必要な追い出しのためのさらなる媒体を消費することなく、別の流動媒体の移送に利用することができる。これによって時間が節約される。少なくとも2つの部分経路の計算は、特に、2つの部分経路を流体的に分離することのできる分離点の決定もしくは計算またはその両方を含んでいることができる。
【0021】
上述した方法においては、移送する流動媒体を押し込み媒体によって移送することができ、すなわち、流動媒体を押すことができる。押し込み媒体(または追い出し媒体)は、例えば、水、別の製品、または洗浄液とすることができる。押し込み媒体は、特に、押し込み媒体の供給元(例えば水供給点)において提供される。
【0022】
流体的に分離できる部分経路を用いることで、別の部分経路のさらなる使用、準備、後処理のうちの1つまたは複数を単純な方法で行うことができるのみならず、移送のための複数の異なる部分経路において複数の異なる押し込み媒体を使用する、もしくは、異なる供給元からの押し込み媒体を使用する、またはその両方が可能となる。
【0023】
移送経路の計算は、所定の基準に照らして移送元に近い押し込み媒体の供給元を決定するステップを含んでいることができる。さらに、移送経路の計算は、所定の基準に照らして移送先に近い排出点を決定するステップを含んでいることができる。近接性に関する所定の基準は、例えば、移送元または移送先からの最大距離を含んでいることができ、この場合、最大距離は、特に、ラインセクションの最大数として与えることができる。これにより本方法では、移送するべき流動媒体を移送元から移送先に適切に移送する方法を、自動的に、または自動化された方法で計算することができる。排出点は、例えば排水桝とすることができる。
【0024】
押し込み媒体の供給元もしくは排出点またはその両方を決定する上述したステップは、1つまたはいくつかの部分経路について、または部分経路それぞれについて行うことができる。この場合、押し込み媒体の供給元または排出点が近くに位置しているように考慮する移送元または移送先は、部分経路のローカルな移送元またはローカルな移送先(すなわち部分経路の始点または終点)である。部分経路の計算は、押し込み媒体の供給元または排出点が設けられている(または所定の基準に照らしてこれらに近い)分離点を計算するステップを含んでいることができる。特に、計算する移送経路が少なくとも2つの部分経路を含んでいる場合、始点(またはその近く)における押し込み媒体の供給元、もしくは、終点(またはその近く)における排出点、またはその両方を決定するステップを、1つの部分経路、いくつかの部分経路、またはすべての部分経路について行うことができる。
【0025】
例えば、部分経路ごとに、その始点における押し込み媒体の供給元と、その終点における排出点とを決定することができる。したがって、移送する流動媒体を、移送元から移送先まで部分経路を経由して連続的に移送する(追い出す)ことができ、この場合、オプションとして、個々の部分経路において異なる押し込み媒体の供給元もしくは排出点またはその両方を使用することができる。流動媒体がすでに移送された部分経路を別の目的に使用することができる。
【0026】
上述した方法においては、移送経路の計算は、複数の流動媒体に同時に使用できる複数の移送経路を計算するステップを含んでいることができる。これにより、流動媒体の並列移送を単純な方法で行うことができる。この場合、移送経路それぞれを計算するのに、特に、前述したさらなる発展形態を使用することができる。
【0027】
移送経路の計算は、計算される移送経路に、特定のラインセクション、特定の制御モジュールまたは一般的な制御モジュール、特定の測定装置または一般的な測定装置、のうちの1つまたは複数が含まれる、または含まれないように、そのようなラインセクション、そのような制御モジュール、またはそのような測定装置を決定することによって、または避けることによって、行うことができる。例えば、特定のタイプの搬送要素または特定の測定装置(例えば流量計や導電率計)を、望ましい要素または必須要素としてあらかじめ定義しておくことができ、これらは、計算される移送経路に含められる。この場合、いくつかのラインセクション、制御モジュール、測定装置(または一般的なモジュール/装置)のうちの1つまたは複数をあらかじめ定義しておくことができる。流動媒体が例えば洗浄液である場合、洗浄するラインセクション、もしくは制御モジュール、またはその両方を、このようにして示すことができる。これにより、洗浄(例えばCIP処理による)に適する経路が計算される。この場合、使用するラインセクションの数によっては、洗浄媒体に適する往路または復路を探すことができる。特定の製品を移送した後には、特に、移送経路の自動的な洗浄を行うことができる。同様に、計算される移送経路に沿って、例えば特定のタイプの搬送要素または測定装置が存在していないことが要求されることもある。さらには、計算される移送経路に、特定のラインセクション、特定の制御モジュール、特定の測定装置のうちの1つまたは複数が存在するか否かを特に指定せずに、計算を行うこともできる。
【0028】
移送経路の計算は、移送中の開ループ制御もしくは閉ループ制御またはその両方のための測定装置を決定するステップを含んでいることができる。したがって、その後の移送において開ループ制御もしくは閉ループ制御またはその両方における差異比較(variance comparison)を行うのに適する測定装置が、自動的に得られる。
【0029】
移送経路の計算は、管網の準備処理もしくは後処理またはその両方(特にその移送経路)を計算するステップを含んでいることができる。準備処理または後処理は、移送経路の1つ、いくつか、またはすべての部分経路の処理、もしくは、移送経路の1つ、いくつか、またはすべてのラインセクションの処理、またはその両方とすることができる。処理は、特に、流動媒体を移送するのに要求される処理とすることができる。この処理は、例えば、移送経路、1つまたは複数のラインセクション、1つまたは複数の部分経路、(例えば移送元または移送先における)1つまたは複数のタンク、のうちの1つまたは複数の、充填、空化(emptying)、追い出し、すすぎ、洗浄のうちの少なくとも1つとすることができる。充填は、例えば、押し込み媒体によって行うことができる。すすぎまたは洗浄は、洗浄媒体もしくは殺菌媒体またはその両方(例えば液体または気体)によって行うことができる。
【0030】
準備処理または後処理は、第1の流動媒体の計算される移送経路の一部分または全体において、さらなる流動媒体を移送するステップを含んでいることができる。さらなる流動媒体を使用する場合、以下の説明では、第1の流動媒体として、上述した流動媒体が指定される。したがって、さらなる流動媒体は、準備のための媒体(例えば前すすぎ媒体)もしくは第1の流動媒体の後処理のための媒体(例えば後すすぎ媒体)またはその両方とすることができる。言い換えれば、準備処理もしくは後処理またはその両方は、移送経路の少なくとも一部分または移送経路全体を前すすぎ媒体によって前すすぎを行うステップ、移送する流動媒体によってすすぎ媒体を除去または追い出すステップ、移送される流動媒体を、移送経路の少なくとも一部分または移送経路全体から押し込み媒体によって除去するステップ、後すすぎ媒体によって後すすぎを行うステップ、のうちの1つまたは複数を含んでいることができる。
【0031】
本方法では、さらなる流動媒体それぞれを移送する目的で、移送元と移送先との間の移送経路を自動的に検出することができ、この場合、検出には、特に、上述したさまざまな方法を使用することができる。本方法は、例えば、前すすぎ媒体の移送経路、前すすぎ媒体のための追い出し媒体の移送経路、押し込み媒体の移送経路、後すすぎ媒体の移送経路、のうちの1つまたは複数(いずれも、対応する移送元と対応する移送先との間の移送経路)、を自動的に計算するステップ、を含んでいることができる。追い出し媒体もしくは押し込み媒体またはその両方は、第1の流動媒体(例えば、製品、半製品、原料、その他の供給材料(例:水))とすることができる。さらなる流動媒体の移送経路は、特に、第1の流動媒体の移送経路全体を含んでいることができる。
【0032】
上述した方法は、流動媒体の一連の移送のための複数の移送経路を自動的に計算するステップを含んでいることができ、この場合、移送経路ごとに、(上述したように)一連のラインセクションもしくは一連の制御モジュールまたはその両方が自動的に計算される。これら一連のラインセクション/制御モジュールは、移送方法の中で柔軟にモデル化することができる。前すすぎ媒体、追い出し媒体、第1の流動媒体、押し込み媒体、後すすぎ媒体については、例えば対応する移送元および移送先への一連の移送を、特にこの順序において自動的に計算することができる。この場合、特に、すべての媒体の移送(一部分または全体)を、第1の流動媒体の移送経路に沿って行うことができる。代替方法として、洗浄処理(例えばCIP(定置洗浄)処理)用の流動媒体の一連の移送のための複数の移送経路を自動的に計算することができる。この洗浄処理は、管網の一区画、すなわち、1つまたは複数のラインセクションもしくは制御モジュールまたはその両方、あるいは容器またはコンテナ、の洗浄処理とすることができる。
【0033】
特に、容器またはコンテナの洗浄処理において、流動媒体の移送経路の自動的な計算を、容器またはコンテナに割り当てられるプロセッサモジュールによってトリガーすることができる。このプロセスにおいては、プロセッサモジュールは、要求される1つまたは複数の流動媒体、もしくは、要求される流動媒体の順序、またはその両方を、あらかじめ決定することができる。このことは、容器の洗浄が必要であることを、割り当てられているプロセッサモジュールによって容器「自身」が認識する場合には、有利である。
【0034】
移送経路の計算は、特に、流動媒体の移送時に移送経路を新たに計算するステップを含んでいることができる。これによって、例えば、移送経路の変更が必要となりうる管網の状態の変化を考慮して、新しい計算に反映させることができる。
【0035】
本方法においては、移送経路の計算は、第1の移送元と移送先との間の流動媒体の移送経路と、第2の移送元と移送先との間の流動媒体の移送経路とを、第1の移送元から移送先への移送の直後に第2の移送元から移送先への移送が行われるように、計算するステップ、を含んでいることができる。このような同期によって、複数の移送元から移送先への移送を中断なしにスムーズに行うことができる。この場合、後に行われる移送は、例えば、最初の移送から同期信号を受信したときに開始される。第2の移送元の準備ステップを行い、2つの移送の合流点まで製品を送ることができる。最初の部分移送における製品の移送が終了した時点で、第2の部分移送における移送にスムーズに引き継がれる。次いで、第1の移送の後処理ステップを同時に実行することができる。移送元もしくは移送先またはその両方は、特に、容器またはコンテナとすることができる。
【0036】
本方法においては、移送経路の計算は、移送元と第1の移送先との間の流動媒体の移送経路と、移送元と第2の移送先との間の流動媒体の移送経路とを、移送元から第1の移送先への移送の直後に移送元から第2の移送先への移送が行われるように、計算するステップ、を含んでいることができる。これによって、移送元から複数の移送先への移送を中断なしにスムーズに行うことができる。移送元もしくは移送先またはその両方は、特に、容器またはコンテナとすることができる。
【0037】
上記いずれの場合も、3つ以上の移送元または3つ以上の移送先において行うこともできる。
【0038】
移送経路の計算は、計算される移送経路を管網の別の領域から流体的に分離するための制御モジュールを計算するステップを含んでいることができる。移送経路を管網の別の領域から流体的に分離することのできる制御モジュール(例えば、制御式ではなく媒体が単純に通過する遮断弁や複座弁)を計算することによって、移送経路をロックすることができる。したがって、流動媒体が、移送経路に沿って管網内に存在している別の流動媒体と混合することが防止される。これらの計算される制御モジュールにおいて、(例えばラインブロー(line blow)に起因する)アラームの発生を監視することもでき、アラーム発生の場合、その制御モジュールを介して行われる移送を停止することができる。
【0039】
上述した方法においては、管網の各ラインセクションもしくは各制御モジュールまたはその両方を、オブジェクトの形で電子メモリに含めることができる。これにより、移送経路の計算を、電子メモリの中のオブジェクトに基づいて行うことができる。各オブジェクトは、そのオブジェクトのさらなる特性・条件を指定するための1つまたは複数の属性を備えていることができる。可能な属性は、例えば、ラインセクションの公称サイズおよびライン長さ、特定の機能(例:酵母の移送)のためのラインセクションまたは制御モジュールのさらに具体的な必要条件、許容される製品、弁座の制御信号に関する情報、漏れ箇所のすすぎなどである。これらの属性は、ルートを探すときの評価において考慮することができ、言い換えれば、移送経路の計算を、1つまたは複数の属性に基づいて行うことができる。これにより、ルートの探索を、特定の基準(例えば、公称サイズの急激な変化の回避、特定の公称サイズを有するルート、特定の容量/機能/設計を有するポンプ、特定の機能/設計を有する測定装置、ルートのラインセクションにおいて1つまたは複数のレイノルズ数を考慮する)を用いて実行し、これにより、見つかるルートを、望ましい要求条件に基づいて制限することができ、これは有利である。さらには、移送経路の計算は、(例えば追い出しのための)押し込み媒体の必要な量を計算するステップを含んでいることができ、この場合、必要な量は、移送経路全体または部分経路のみに要求される量とすることができる。この計算も、1つまたは複数のオブジェクトに割り当てられる属性を考慮に入れて行うことができる。
【0040】
いくつかのオブジェクトをまとめて1つの(より高位の)オブジェクトにすることができる。オブジェクトは、特に、データベースに含めることができる。管網の要素をこのようなオブジェクトに割り当てることによって、移送経路の計算をコンピュータに容易に実装して実行することができる。結合することによって、計算を高速化することができる。
【0041】
さらには、流動媒体の伝搬、搬送、測定、排出、受け入れのうちの1つまたは複数を行うためのさらなる要素、具体的には、測定手段(例:流量計、導電率計)、工程室(例:フィルタ、遠心分離器、CIPシステム)、部分経路、容器、タンク、入口、出口のうちの1つまたは複数を、それぞれオブジェクトの形で、電子メモリに含めることができる。これにより、移送経路の計算を、これらのオブジェクトに基づいて行うことができる。
【0042】
これらのオブジェクトそれぞれは、オブジェクトのさらなる特性・条件を指定するための1つまたは複数の属性をさらに備えていることができる。工程室、容器、またはタンクの可能な属性は、例えば、充填レベル、含まれている媒体または製品、含める媒体または製品、並列使用(対応する要素をいくつかの異なる移送に同時に使用できるか)、管網の要素、制御モジュール、移送元、移送先、その他の要素のうちの1つまたは複数と組み合わせて使用されるラインセクションに求められる要件または混合適合性、充填、空化、または洗浄の準備状態、工程室が、管網の所定のラインセクション、制御モジュール、その他の要素のうちの1つまたは複数に遮断要素を介して接続されているかの情報、である。これらの属性は、ルートを探すときの評価において考慮することができ、言い換えれば、移送経路の計算を、1つまたはいくつかの属性に基づいて行うことができる。
【0043】
各オブジェクト、特に、各ラインセクションもしくは各制御モジュールまたはその両方に、少なくとも1つのステータスパラメータを割り当てることができる。このステータスパラメータは、遮断ステータスパラメータ、基本ステータスパラメータ、媒体ステータスパラメータ、衛生ステータスパラメータ、割当てステータスパラメータ、のうちの1つまたは複数とすることができる。これらのパラメータは、ラインセクションまたは制御モジュールの上述したステータスを識別する。例えば、第1の媒体ステータスパラメータおよび第2の媒体ステータスパラメータをオブジェクトに割り当てることができる。ステータスパラメータは、英数字データの形で指定することができる。ステータスパラメータは、例えば、順序付けられた数量からの値をとることができる。
【0044】
上述した方法のステップすべては、自動的に(すなわち自動化された方法で)行うことができる。
【0045】
上述した方法は、計算された1つまたは複数の移送経路に従って管網を自動的に制御するステップをさらに含んでいることができる。このようにして、移送経路の計算のみならず、移送の実行も、自動化された方法で行われる。制御は、特に、計算された移送経路に従ってラインセクションが接続されるように実施することができる。この接続は、例えば、対応して制御される弁もしくは遮断手段またはその両方によって行うことができる。
【0046】
管網の制御は、計算された移送経路に沿って流動媒体が移送されるように実施されるのみならず、オプションとして計算される管網の準備処理もしくは後処理またはその両方が、特に、移送経路に沿って行われるように、実施することができる。さらには、自動的に制御するステップは、要求される制御モジュール(例えば弁や搬送要素)を制御するステップを含んでいることができ、特に、要求される押し込み媒体が提供されるように、制御を実施することができる。
【0047】
特に、第1の移送元と移送先との間の流動媒体の移送と、第2の移送元と移送先との間の流動媒体の移送とが、第1の移送元から移送先への移送の直後に第2の移送元から移送先への移送が続くように実施されるように、管網を制御することができる。さらに、移送元と第1の移送先との間の流動媒体の移送と、移送元と第2の移送先との間の流動媒体の移送とが、移送元から第1の移送先への移送の直後に移送元から第2の移送先への移送が続くように実施されるように、管網を制御することができる。
【0048】
さらに、例えば2つ(またはそれ以上)の移送元と1つの移送先との間の流動媒体の移送が、これらの移送元から移送先への移送が同時に行われるように、管網を制御することができる。これによって、移送元の媒体の混合を達成することができる。この場合、制御は、移送元からの媒体の所定の混合比に従って実施することができる。第1の移送元から移送先への移送の直後に、さらなる移送元から移送先への移送を行うことも可能である。さらに、移送元を、移送の必須(compulsory)メンバーとすることも可能である。したがって、このような必須の移送元が媒体を移送先に移送しない場合、他のすべての移送元からの移送も停止される。
【0049】
計算される移送経路の制御モジュールは、所定の基準(例えば、経路要素、移送元の出口弁、移送先の入口弁、搬送要素、計時要素)に従って、機能グループに割り当てることができる。この場合、制御モジュールの制御は、対応する機能グループの定義済みの制御または作動によって実施することができる。定義済みの制御または作動は、制御または作動させる特定の一連の機能グループの形とすることができる。特定の一連の機能グループは、機能グループを制御または作動させるための特定の時間間隔を含んでいることもできる。このような定義済みの制御によって、特定のタイプの移送のための制御モジュールの基本的な作動に関して、抽象的なプログラミングを行うことができ(すなわち機能グループを介する)、このプログラミングは、計算された移送経路に基づいて個々の場合に実際に使用される制御モジュールとは無関係に行うことができる。例えば、特定の流動媒体の移送と、各準備ステップあるいは各後処理ステップのための移送を行う前に制御されるべき一連の機能グループを、あらかじめ定義する、またはプログラムすることができる。
【0050】
さらには、例えば、移送グループと二次移送グループとを区別することができる。移送グループは、それぞれの移送におけるアクティブな搬送要素を示し、これらの搬送要素は、移送に実際に関与する。二次移送グループは、許可される受動型の(すなわちアクティブには関与しない)搬送要素、または移送グループと比較して異なる制御を目的として動作する搬送要素を示す。
【0051】
上述した方法においては、管網の自動制御は、自動的に決定される測定装置を使用して実施することができ、この場合、測定装置を使用して差異比較が行われる。差異比較の結果を、制御モジュールの開ループ制御もしくは閉ループ制御またはその両方において使用することができる。
【0052】
上述した方法は、計算された移送経路が管網の別の領域から流体的に分離されるように、管網を自動的に制御するステップ、をさらに含んでいることができる。したがって、移送する流動媒体が、移送経路の外側の、管網の(「許可されていない」)ラインセクションまたは制御モジュールに入り込むこと、または、別の流動媒体が移送経路に入り込むことが、防止される。さらに、流体的な分離の役割を担う制御モジュールにおいて、(例えばラインブローに起因する)アラームの発生を監視することができ、アラーム発生の場合、その制御モジュールを介して行われる移送を停止することができる。
【0053】
上述した方法においては、移送経路の計算もしくは管網の制御またはその両方は、移送元もしくは移送先またはその両方のステータスパラメータに基づくことができる。ステータスパラメータとしては、例えば、充填レベル、障害パラメータ(障害が起きたか否か)、緊急性または優先度パラメータ、ライフサイクル(life cycle)、含まれている媒体または製品、含める媒体または製品、中止パラメータ、前述したステータスのいずれか1つ以上、のうちの1つまたは複数が可能である。
【0054】
移送元もしくは移送先またはその両方は、特に、管網を自動的に制御する制御装置に、ステータスパラメータの値を送信することができる。このようにして、移送元または移送先が移送の挙動を制御することができる。移送経路を計算するとき、すでに送信されたステータスパラメータを考慮に入れることができ、すでに計算された移送経路を、送信されたステータスパラメータに基づいて修正もしくは再計算またはその両方を行うことができる。これに代えて、またはこれに加えて、管網の制御において、送信された1つまたは複数のステータスパラメータの値に基づいて制御を決定または修正することができる。
【0055】
上述した方法は、計算された移送経路を記録するステップ、もしくは管網を制御するステップ、またはその両方を、さらに含んでいることができる。
【0056】
さらには、本発明は、コンピュータプログラム製品であって、命令を有する1つまたは複数の機械可読媒体を備えており、命令が、コンピュータまたはプロセッサに、上述した方法の1つを実行させるように設計されている、コンピュータプログラム製品、を提供する。したがって、本方法は、コンピュータに実装されるように具体化することができる。
【0057】
さらには、本発明は、特に、醸造所において、流動媒体を移送する管網を自動的に制御する制御装置であって、管網が、移送元と移送先との間の複数の移送経路を提供し、管網が、複数のラインセクションおよび複数の制御モジュールを備えており、制御装置が、特に所定の移送元と特に所定の移送先との間の、流動媒体の移送経路、を自動的に計算するように設計されており、移送経路の計算が、移送元と移送先との間の一連のラインセクションもしくは制御モジュールまたはその両方を計算するステップ、を含んでいる、制御装置、を提供する。
【0058】
制御装置は、特に、上述した方法に対応して設計することができる。制御装置は、特に、コンピュータまたはコンピュータシステムを備えていることができる。
【0059】
以下では、本発明のさらなる利点および特徴について図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】流動媒体を移送する管網のさまざまな状態の例を示している。
【図2】流動媒体を移送する管網のさまざまな状態の例を示している。
【図3】流動媒体を移送する管網のさまざまな状態の例を示している。
【図4】流動媒体を移送する管網のさまざまな状態の例を示している。
【図5】流動媒体を移送する管網のさまざまな状態の例を示している。
【図6】管網の別の例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0061】
図1は、醸造所の管網の単純化した例を示しており、例えば、発酵室もしくは貯蔵室(storage cellar)またはその両方に敷設されている管網である。管網101は、複数の管路またはラインセクション102を備えている。2本の管の交点に、弁103(例えば、複座弁の形の漏れ防止型三方弁または四方弁)が設けられている。したがって、2つの隣り合う交点または弁の間にラインセクションが設けられており、隣り合うラインセクションは、交点における弁を対応して調整することで、流体的に接続または分離することができる。
【0062】
なお、本発明は、醸造所に限定されず、他の液体または気体の流動媒体の移送にも適していることを理解されたい。
【0063】
管網は、4基のタンク104〜107に接続されている。これらのタンクは、管網101を通じて移送される液体(製品)を受け入れるように意図されている。液体は、例えば、麦汁または若ビールとすることができる。
【0064】
管網は、タンクへの麦汁を供給する醸造室108に接続されている。さらには、管網に水を供給するための給水口109が設けられている。
【0065】
容器110〜113は、CIPシステム(定置洗浄)の一部であり、対応する液体(例えば、腐食剤、酸、殺菌剤)を含んでいる。管網の出口は濾過手段114に通じている。さらには、排水桝115の形の排出口が設けられている。
【0066】
一例として、図1に示した状態から開始して、タンク104(移送元)からタンク107(移送先)までの製品の移送経路または輸送経路を、自動的に計算する。製品は、上述した第1の流動媒体に対応し、その移送のため、さらなる流動媒体を使用して準備ステップおよび後処理ステップが行われる。
【0067】
図示した例では、この計算は、管網101の制御装置(コンピュータを備えている)において行われる。コンピュータには、管網のさまざまな要素(ラインセクション、遮断手段、弁、ポンプ、測定装置(例えば流量計や導電率計)、容器、タンク、入口、出口、工程室(例えばフィルタ、遠心分離器)、部分経路)が、個々のオブジェクトとして格納されている。さらに、個々のオブジェクトそれぞれの間の接続も格納されている。格納は、例えば、データベースに行うことができる。
【0068】
オブジェクトはさまざまなステータスパラメータを有し、ステータスパラメータによって、要素のさまざまな特性が示される。例えば、1つまたはいくつかの媒体ステータスパラメータを、ラインセクションオブジェクトあるいは弁オブジェクトに割り当てることができる。媒体ステータスパラメータは、製品の識別情報に相当し、管網の対応する要素(例えばラインセクション)に現在存在している流動媒体(この例では製品)を示す。さらに、第2の媒体ステータスパラメータをオブジェクトに割り当てることができ、このパラメータは、対応するラインセクションに以前に存在していた製品を示すことができる。
【0069】
さらなるステータスパラメータとして、衛生ステータスパラメータをオブジェクトに割り当てることができる。このパラメータは、例えば、値として「汚れ」、「清浄」、「滅菌済」をとることができる。他の値、または追加の値も可能である。流動媒体または製品それぞれに対して、ラインに存在している媒体に依存して衛生ステータスパラメータの許容される値のセットを、例えばテーブルに示すことができる。例えば、流動媒体M1には、ラインセクションに存在している媒体M3との関連において、許容される衛生ステータスパラメータとして値「滅菌済」のみを示すことができ、別の流動媒体M2には、許容される値「清浄」および「滅菌済」を示すことができる。したがって、流動媒体M1は、衛生ステータスが「滅菌済」である、媒体M3が存在するラインセクションを通じて移送できるのみであり、流動媒体M2は、「滅菌済」および「清浄」のラインセクションを通じて移送することができる。この場合、例えば、互いに異なるが製品の順序に関して類似する媒体をグループにまとめて、これらのグループに対して設定を行う。これによって、設定の処理量を最小にすることができる。基本的には、衛生ステータスは、流動媒体それぞれに適用される衛生有効時間を有することができ、衛生有効時間は、衛生ステータスが無効になるときを示す。衛生有効時間に達すると、例えば対応するフラグ(「有効時間経過フラグ」)がセットされる。
【0070】
代替方法によると、衛生ステータスパラメータは、例えば、「ラインセクションは製品を含んでいる」(すなわち媒体ステータスの評価では、現在含まれている媒体が評価される)、「ラインセクションは追い出し媒体を含んでいる」(すなわち媒体ステータスの評価では、現在含まれている媒体および以前の媒体が評価される)、「洗浄済」(ラインセクションは洗浄されており、追い出し媒体を含んでおり、以前の媒体は関連しない)、「CIP未洗浄」(CIPが稼動しており、ラインセクションはCIP媒体を含んでおり、以前の媒体は関連しない)、「すすぎ済」(ラインセクションはすすぎが行われており、すなわち媒体ステータスの評価では、現在含まれている媒体および以前の媒体が評価される)、「滅菌済」(ラインセクションは追い出し媒体を含んでおり滅菌済である、すなわちすべての用途に使用できる)、および「殺菌済」(ラインセクションは追い出し媒体を含んでおり殺菌済である、すなわちすべての用途に使用できる)、を値としてとることができる。
【0071】
さらには、遮断ステータスパラメータを指定することができ、このパラメータは、対応するラインセクションまたは制御モジュールが遮断されている、または遮断されていない(すなわち使用可能である)ことを示す。この場合、遮断は、オペレータによってトリガーすることができる。使用されたばかりのラインセクションが遮断される場合、遮断の予約のみが記録される。この場合、このように指定されたラインセクションは、移送経路の自動計算において使用されないが、そのラインセクションを介して現在行われている移送には影響しない。
【0072】
さらには、基本ステータスパラメータは、対応する要素が「空き」か「使用中」かを示すことができる。したがって、基本ステータスパラメータ「空き」は、製品および衛生ステータスが既知であり、ラインが汚れていないことを意味する。基本ステータスパラメータ「使用中」は、ラインセクションにおいて媒体移送が行われており、製品および衛生ステータスが現時点において遷移状態であることを意味する。このことは、衛生ステータスまたは媒体ステータスを利用できないことを意味する。基本ステータスのさらなる可能な値は、例えば、「未定義」(制御装置またはコンピュータシステムが実際の状態を認識していない)、「汚れ」(遮断弁が例えば圧力ブローによって押し開かれた)、および「中止」(後処理ステップを行わずに移送が中止された)である。この場合、衛生ステータスまたは媒体ステータスを利用することができない(利用する必要もない)。
【0073】
さらなるステータスパラメータは、割当てステータスパラメータであり、このパラメータは、例えば、移送の識別情報や、実行された移送または実行される移送を表す。
【0074】
さらには、管網の特定の要素において、どの流動媒体または製品を別のどの流動媒体または製品の後に移送できるかを、テーブルに示すことができる。例えば、特定のタイプのビールは、同じタイプのビールの後、または水の後にのみ移送できることを示すことができる。例えば、さらなる特定のタイプのビールは、別のタイプのビールの後にも移送することができる。したがって、媒体または製品の所定の順序が確立される。これに関連して、衛生ステータスも考慮に入れることができる。例えば、ビールB2の後にビールB1を移送する場合、衛生ステータスが「洗浄済」のときにのみ許可されることを示すことができる。ビールB1の後にビールB2を移送する場合、衛生ステータスが「洗浄済」かつ「追い出し済」のときにのみ許可されることを示すことができる。
【0075】
制御装置は、第1の流動媒体(製品)を特定の移送元から特定の移送先に移送するために要求される一連の移送経路(準備ステップおよび後処理ステップを含む)を、基本的には自動的に計算する。準備のための移送は、例えば、「水で前すすぎを行う」および「製品で水を追い出す」である。次いで、実際の製品の移送(主移送)が行われる。後処理ステップは、例えば、「水で製品を押す」および「水で後すすぎを行う」である。これら個々の移送それぞれにおいて、移送元と移送先との間の接続がそれぞれ確立される。主移送においては、(製品の)移送元が(製品の)移送先に直接接続され、「水で前すすぎを行う」においては、例えば、移送元に近い水供給口が、移送先に近い排水桝接続部に接続され、「製品で水を追い出す」においては、移送元が、例えば移送先に近い排水桝接続部に接続され、「水で製品を押す」においては、例えば移送元に近い水供給口が移送先に接続され、「水で後すすぎを行う」においては、例えば移送元に近い水供給口が、例えば移送先に近い排水桝接続部に接続される。すべての準備ステップおよび後処理ステップは、主移送の経路を含んでいることが好ましい。上述した移送元と移送先の関係は、特に、準備/後処理ステップで、分離点において再び分離することができる。移送元に近い水供給口と、移送先に近い排水桝接続部は、各場合において新たに決定する代わりに、これらを固定することもできる。
【0076】
タンク104からタンク107への移送経路を計算するとき、制御装置は、さまざまなファクターを考慮に入れる。記載した例においては、計算は、第一に、対応するラインセクションまたは対応する弁において移送される流動媒体に基づく。液体の移送後に移送経路が洗浄されない場合、対応するセクションは、移送された流動媒体によって汚れた状態にある。特定の製品の順序が許容されるか否かは、前に移送された流動媒体と、これから移送する流動媒体とによって決まる。したがって、その移送に使用可能なラインセクションおよび弁が制限される。特定の流動媒体において許容される、以前に移送された流動媒体による汚れを、電子的に(例えば1つまたはいくつかのテーブルに)格納しておくことができる。制御装置は、移送経路の計算において、許容されるラインセクションや弁を、これらのテーブルと、移送する流動媒体とに基づいて決定する。
【0077】
制御装置が考慮する別のファクターは、管網の要素の衛生ステータスである。この場合も、使用するラインセクションもしくは弁またはその両方において、どの流動媒体がどの衛生ステータスを必要とするかを、テーブルに格納しておくことができる。これに対応して、制御装置は、移送する流動媒体用として許容される管網の要素を、このテーブルを参照して調べる。衛生ステータスによっては、媒体の識別情報パラメータの評価を省くことができる(例えば、衛生ステータスCIPの場合)。
【0078】
管網の特定の要素が(例えばオペレータによって)遮断されている、あるいは遮断予約(「使用ステータス」)が存在する、基本ステータスパラメータに基づいて要素がすでに使用されている、要素が「未定義」、「汚れ」、または「中止」である、またはこれらの要素が別の移送によってすでに割り当てられている場合、制御装置は、移送経路のさらなる計算においてこれらの要素を考慮に入れない。
【0079】
制御装置は、与えられるさまざまな基本条件に基づいて、この場合にはタンク104から交点A、B、C、Dを経てタンク107に達する移送経路を計算する。この移送経路の計算は、管網の状態によっては、例えば、選択されるラインセクションおよび制御モジュールの準備処理の計算をさらに含んでいることができる。この準備処理は、例えば、CIP洗浄あるいは現在の液体の追い出しである。
【0080】
ルートが探索されると、そのルートに要求されるラインセクションおよび制御モジュールが判明する。これらはいわゆる機能グループまたは制御グループに割り当てられる(例えば、機能グループにおいて「経路要素」は、経路を導く役割を担うすべての制御モジュールであり、機能グループにおいて「搬送要素」は、媒体を移送する役割を担うすべての制御モジュールである。さらなる機能グループとしては、例えば、移送元の出口弁、移送先の入口弁、例えば弁座リフト(valve seat lifting)やすすぎに関して計時される要素、ロックまたは監視される要素、搬送要素、機器モジュール(例:クーラー、圧力保持システム、遠心分離器)である。ルート上に位置する制御モジュールをさまざまな機能グループに割り当てる処理は、オブジェクトのタイプ(およびそのオブジェクトがとりうる上述した属性)のみならず、ルート内の位置にも基づく(例えば、ルート上の最初に位置する弁は移送元タンクの後ろの移送元出口弁として扱われる)。
【0081】
さらに、移送に関する特定のパラメータを定義することができる。これらのパラメータは、それぞれの移送の挙動を制御する役割を果たす(例:体積流量、温度、圧力、量)。移送中、それぞれの望ましい値および実際の値が示され(差異比較器モジュール)、リアルタイムで変更することができる。ルートを探索するとき、これらの値の測定装置を差異比較器に自動的に割り当てることができる。差異比較器の結果は、移送ステップの中でステッピング条件または別の制御基準として使用することができる(すなわち、移送工程の中での具体的な移送元/移送先の組合せ)。
【0082】
したがって、制御装置は、機能グループを介してのみプログラムできることが好ましい。すなわち、アクチュエータはプログラムによって直接制御されるのではなく、機能グループを介して間接的に制御される。例えば、立ち上がり遅延時間またはターンオフ遅延を各機能グループにさらに渡すことができる。したがって、グループに含まれている要素の作動または終了は、パラメータとして渡される時間が経過した後に実施される(例えばラインブローを避けるため)。別の基準(例:ある体積流量を下回る)によって、1つのグループに含まれている要素の作動または終了を制御することもできる。以下は、1つの可能なコマンドシーケンスである。
【0083】
移送元出口弁を開く
移送先入口弁を開く
方向弁を開く
(時間遅延の後)搬送要素をオンにする
【0084】
すなわち、制御装置のプログラムの作成時には、どの制御モジュールが制御されるか判明していない。この情報は、実行時に機能グループを介して制御装置に伝えられる。
【0085】
さらに、漏れ箇所のすすぎ、弁座リフト、および排水桝の制御グループも存在する。ラインの洗浄時には、これらの制御要素を計時しなければならない。管網の対応する設定をデータベースレベルで行うことによって、ルート探索の完了後、これらの要素を対応するグループ(排水桝、漏れ箇所のすすぎ、弁座リフト)に渡すこともできる。したがって、この場合には弁の計時を明示的にプログラムする必要がない。対応するグループを時計回りに制御するのみでよい(グループまたは見つかった制御モジュールにおいてパルス/アイドル時間を格納しておくことができる)。
【0086】
さらに、ルート探索時に、例えば、計算される移送経路上に特定のタイプの搬送要素を配置しなければならない、または配置を避けるべきことを指定する特定のパラメータが渡される。
【0087】
一般的には、例えば、移送グループと二次移送グループとを区別することができる。移送グループは、それぞれの移送のためのアクティブな搬送要素を示し、これらの要素は、移送に実際に関与する。移送グループには、さまざまな演算子(例えば、「要素なし」(これは例えば指示情報「=0」に対応する)、「ただ1つの要素」(「=1」)、および「0または1つの要素」(「<=1」))を格納することができる。すなわち、移送グループには、0(なし)、ただ1つ、または最大で1つの搬送要素を配置することができる。同様に、対応する要素の位置(例えば「最初の要素」または「最後の要素」)と、オプションとして要素のタイプを設定することができる。二次移送グループは、許可される受動型の(すなわちアクティブには関与しない)搬送要素、または移送グループと比較して異なる制御を目的として動作する搬送要素を示す(例えば、移送グループが体積流量を制御し、二次グループが圧力を制御する)。この場合、さまざまな演算子(例えば、「要素なし」(例:指示情報「=0」)、「ただ1つの要素」(「=1」)、「0または1つまたはいくつかの要素」(「>=0」)、または「少なくとも1つの要素」(「>=1」))も存在する。したがって、移送グループが演算子「ただ1つの要素」を備えており、二次移送グループが演算子「少なくとも1つの要素」を備えている場合、移送経路には、ただ1つのアクティブな搬送要素と、少なくとも1つの受動型の搬送要素とが含まれていなければならない。このように、両方のグループの演算子を組み合わせることによって、搬送要素の存在を明確に定義する、搬送要素を割り当てる、および制御することができる。搬送要素のグループに加えて、他のアクティブな要素(例えば、クーラー、圧力保持システム、遠心分離器)のグループも可能である。
【0088】
移送経路の計算もしくは管網の制御またはその両方は、特に、制御装置に送られる、移送元もしくは移送先またはその両方のステータスパラメータ、に基づいて行うことができる。ステータスパラメータとしては、例えば、充填レベル、障害パラメータ(障害が起きたか否か)、緊急性または優先度パラメータ、ライフサイクル、含まれている媒体または製品、含める媒体または製品、前述したステータスのいずれか1つ以上、のうちの1つまたは複数が可能である。このようにして、移送元/移送先がそのステータスを通じて移送の挙動を制御することができる。
【0089】
したがって、現時点で利用できる製品が存在しないこと、あるいは例えば移送元に障害が起きていることを、制御装置に伝えることができる。制御装置は、例えば実行中の移送のための対応する搬送要素をオフに切り替えることができる。
【0090】
工程室からは、どれくらい「緊急に」移送が要求されているかを、優先度パラメータあるいはライフサイクルによって伝えることができる。これによって、もっとも長いライフサイクルまたはより高い優先度値を有する移送元が、より短いライフサイクルまたはより低い優先度値を有する移送元よりも早く空になるようにすることができる。例えば、移送先の優先度を、最後の洗浄以降に徐々に高くすることができる。
【0091】
中止パラメータを使用すると、移送に関与する要素(例えば移送先)が、移送工程を取り消すように要求することができる。この場合、主移送を例えば終了させ、場合によっては、現在実行中の準備ステップまたは後処理ステップを完了させなければならない(例えば、タンクの切替えが準備中である場合)。後者のステップを完了させることで、移送の完了後にラインシステムが確実に稼動可能な状態になる。
【0092】
さらに、移送元および移送先からは、自身に含まれている製品、あるいは充填、空化、または洗浄の準備がなされているかを伝えることができる。さらには、移送元および移送先は、管網の別の要素の要件や望ましい混合適合性を伝えることができる。この要件または混合適合性は、特定の移送工程を対象に(例えば、それぞれの移送元/移送先リストに)格納することもできる。この場合、要件または混合適合性を満たす移送元または移送先のみによってその工程を行うことができることが指定される。例えば、発酵タンクから「すすぎ済」または「洗浄済」が送信される場合、その発酵タンクでは、「すすぎ済」または「洗浄済」が指定された工程のみを行うことができる。
【0093】
これによって、オペレータは、技術的にも適合する移送のみを行う、または移送元および移送先のみを選択できる。さらに、完全な自動運転においては、例えば移送元が特定の移送を要求することができる。対応するデータ(要件、移送先および移送工程の混合適合性、製品情報、充填/空化/洗浄の準備状態に関する情報)から、条件に合う移送方法および移送先を決定することができる。
【0094】
さらに、利用可能な工程室のオブジェクトの属性として、オブジェクトを例えばいくつかの独立した移送に並列に使用できるか(例えば、タンク内容物を充填ラインに移送すると同時に、同じタンクを別の充填ラインに移送する)を、格納することができる。
【0095】
別の属性として、工程室が管網の所定の要素(例えばラインセクション)に遮断要素を介して接続されているか否かを示すことができる。接続されていない場合、ルートの計算においてその要素を考慮に入れることはできない。
【0096】
媒体の混合が行われる方法においては、特定の混合比を監視する必要が生じうる。このため、関与する移送元の数に応じて、そのような工程の特定の混合比を格納しておくことができる。さらには、移送元が必須メンバーかオプションのメンバーかを示すことができる。
【0097】
この場合、必須メンバーは、自身の対応する割合を必ず提供しなければならない。必須メンバーが製品を移送先に移送しない場合、関与する他のすべての移送元も停止しなければならない(後者の移送元が必須であるかオプションであるかにかかわらず)。オプションメンバーが媒体を移送先に移送しない場合、対応する混合比が調整されるのみであり、移送は続行される。図示した例においては、移送経路が計算されると、それに応じて、実行される一連のステップと、自動計算の過程において制御装置によって決定された管網の対応する制御とが決まる。以下では、これらのステップについて、図2〜図4を参照しながらさらに詳しく説明する。
【0098】
図2に示したように、最初のステップにおいては、排水桝115までの移送経路201に沿って移送される流動媒体によって、ライン内の媒体を追い出す。これを目的として、制御装置は、要求される弁およびポンプの対応する制御を決定し、これに対応して、これらの弁およびポンプが自動的に制御される。追い出すとき、関与するラインセクションおよび制御モジュールのステータスパラメータが現在の値にセットされる。したがって、現在の媒体の識別情報パラメータは、移送される流動媒体に対応する値をとり、衛生ステータスは、例えば「ラインは製品を含んでいる」にセットされ、基本ステータスパラメータが「使用中」にセットされる。このため、点A,B,Cにおける制御モジュール(弁)およびポンプ202と、移送元出口弁203と、排水桝弁204とが作動している。
【0099】
追い出しの後、図3に示したように、流動媒体を、移送元タンクから移送経路301に沿って移送先に送り込む。このステップにおいても、管網内の関与する要素のステータスパラメータを、対応して調整する。このステップにおいては、制御装置は、点A,B,C,Dにおける弁およびポンプ202と、移送元出口弁203と、移送先入口弁302の対応する作動を決定し、これに対応して、これらの要素が自動的に作動する。
【0100】
次いで、図4に示したように、タンクまでの移送経路401に沿ったラインにおいて水を押し込む。この場合も、対応するステータスパラメータがセットされる。使用する水の量は、例えば、対応するラインの属性を評価することによって計算することができる。
【0101】
最後のステップにおいては、図5に示したように、出口(すなわち排水桝)までの移送経路501に沿って、ラインの少なくとも一部において水によるすすぎを行う。
【0102】
この単純化した例においては、主移送経路のすべてのラインセクションのうち準備ステップおよび後処理ステップが行われていない部分がある。しかしながら、多くの場合、主移送経路全体に沿ってこれらのステップを行う必要がある。
【0103】
この例から理解できるように、制御装置は、移送経路を自動的に計算し、この場合、関与する要素の制御は、時間的に正しい順序で自動的に決定される。後処理ステップの移送経路と、水による押し込みもしくはすすぎまたはその両方の移送経路と、要素の制御完了までの時間間隔は、自動的に決定される。後処理ステップのためのラインセクションおよび制御モジュールの割当ては、通常ではそれより長時間を要する主移送が終了するまで管網の一部が不必要に占有されないように、主移送中の特定のタイミングにおいてのみ行われ、これは有利である。計算もしくは管網の制御またはその両方において、ロギングを行うことができる。
【0104】
媒体を移送している間、関与するラインセクションを外側から(すなわち管網の残りの部分から)流体的に分離しなければならない。すなわち、移送される流動媒体が移送経路からはずれる、あるいは外側から流動媒体が移送経路に入り込むことを防止するため、関与するラインセクションをロックしなければならない。最初の例によると、制御モジュールごとに、隣接する各ラインセクションのロック情報を含んだロックテーブルを格納しておくことができる。ロック情報は、例えば、特に媒体移送の識別情報に対応する整数値をとることができる。値0の場合、対応するラインセクションへのアクセスはロックされない。値が0以外になった(すなわち媒体移送IDが含まれている)時点で、対応するラインセクションがロックされる。
【0105】
別の例によると、計算されたルートに基づいて制御モジュールを分析した後、そのルートを外側から流体的に分離する制御モジュールを決定することができる。これらの制御モジュールは、ロックの機能グループに含まれる。その後、これらの制御モジュールは、外側から制御される(すなわち開かれる)ことはない。したがって、こうして計算された制御モジュールにおいて、アラーム信号をさらに監視することができる。アラーム発生の場合、そのような制御モジュールを通過する移送をただちに停止することができる。
【0106】
特に、まだ割り当てられていない(したがって占有されていない)またはロックされていない制御モジュールは、基本的には、手動操作にセットすることで、手動で操作することができる。この場合、対応するステータスパラメータを有する、データベース内のステータスモデルが、これに対応して更新される。手動制御される制御モジュールは、制御装置による移送経路の自動計算において使用されない。
【0107】
移送元から移送先への製品の移送時、またはラインの洗浄時には、制御装置は、第1の流動媒体の主移送と、要求される準備および後処理のための移送とを計算し、対応するラインセクションを割り当てる。しかしながら、容器の洗浄時には、容器の洗浄に要求される流動媒体およびそれらを適用する順序を認識するプロセッサモジュールを、容器に割り当てることができる。例えば、容器は、洗浄ステップそれぞれにおいて、CIPシステムからの特定の流動媒体を必要とする。したがって、プロセッサモジュールは、自身があらかじめ決定した必要な流動媒体を提供するように制御装置に要求する。この要求によって、制御モジュールは、必要な流動媒体のための対応する移送経路の計算を開始する。
【0108】
図6は、管網の別の例を示している。2つのタンク室601,602があり、それぞれが複数のタンク603(タンクライン604に対応する)を備えている。各タンク室は、製品入口605、水供給口606、およびCIP供給口607を備えている。
【0109】
これら3つの入口は、12本のラインセクションおよび4つの方向弁を有するマトリックス型充填装置(filling matrix)に通じている。製品供給口605は醸造室に接続されており、醸造室はタンク室に麦汁を供給する。
【0110】
3本のタンクラインそれぞれは、3基のタンクを通ってマトリックス型空化装置(emptying matrix)609に通じている。1つまたは複数の製品出口と、酵母室への1つの出口と、CIP出口とが、タンク室の外に通じている。さらに、上側のタンク室のマトリックス型空化装置は、水供給口610と、対応する排水桝への3つの出口611とを備えている。
【0111】
2つのタンク室の製品ラインはマトリックス型転換装置(mutation matrix)612に導かれており、マトリックス型転換装置612の中で製品を混合することができる。マトリックス型転換装置は、水供給口613、CIP供給口614、およびいくつかの排水桝への出口615を備えている。マトリックス型転換装置から濾過手段616にラインが通じている。
【0112】
これらのさまざまなマトリックス型装置では、分離可能な部分経路を有する移送経路を決定することができ、これによって、特に、準備ステップおよび後処理ステップにおいて、移送および処理を連続的に行うことができ、これは有利である。例えば、最上列の最後のタンクに存在している液体を濾過手段616の一方に移送するとき、複数の部分経路に沿って行うことができる。この場合、(準備のための移送と同時に)特にタンクの内容物をマトリックス型空化装置609を用いて空にし、水によって追い出す。水による追い出しには、水供給口606を使用する。マトリックス型空化装置609の中の右上に位置する弁は、第1の部分経路と第2の部分経路との間の分離点としての役割を果たす。
【0113】
マトリックス型空化装置の中に追い出した後、この弁をタンクライン604に対して閉じ、したがって製品は、タンクラインから流体的に分離されたマトリックス型空化装置の中と、隣接するラインセクションの中とに存在している。これによって、マトリックス型空化装置は、分離可能な部分経路の分離点を形成している。製品をマトリックス型転換装置に送るため、ポンピングおよび水による追い出しを行い、この場合には水供給口610を使用する。タンクライン604は流体的に分離されているため、このラインセクションは、(例えば洗浄目的に)ただちに再使用することができる。
【0114】
同様に、マトリックス型空化装置609とマトリックス型転換装置612との間のラインを、マトリックス型転換装置の先に通じているラインから流体的に分離することができる。したがって、この場合も、製品をマトリックス型転換装置に完全に移送し、水供給口613を用いて濾過手段616に押し込むことができる。
【0115】
マトリックス型転換装置612においては、流動媒体を混合することができる。これを目的として、混合する製品と、混合によって得られる最終製品とを示す対応する情報を、適するデータ構造の中に格納しておくことができる。
【0116】
これらの3つの部分経路に沿って移送するため、制御装置は、個別の部分経路の移送元および移送先(例えば水供給口や排水桝)それぞれを決定することができ、これに対応して、管網の要素それぞれが制御される。部分経路に沿って移送するとき、その部分経路を、特に、外側から(すなわち供給ラインおよび排出ラインから)分離することもできる。
【0117】
さらに、制御装置は、タンクの自動切替えを自動的に計算することができる。この計算は、移送先のタンクが満杯であり、さらなる移送先タンクに変更するときに行うことができる。移送元の側についても、例えば第1の移送元タンクを空にした後、第2の移送元タンクに切り替えることができる。これを目的として、少なくとも部分的に並列に行われる2つの部分移送(準備ステップおよび後処理ステップを含む)を計算することができる。このとき、同期メカニズムを採用して、さまざまな部分移送を同期させることができる。この場合、第2の移送は、例えば第1の移送から同期信号を受け取ったときに開始する。次いで、第2の移送元のための準備ステップを行い、2つの移送の合流点(通常では分離点)まで製品を送ることができる。第1の部分移送において製品の移送が終了した時点で、第2の部分移送の移送にスムーズに引き継がれる(次のタンク)。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に、醸造所において、流動媒体を移送する管網を自動的に制御する方法であって、前記管網が、移送元と移送先との間の複数の移送経路を提供し、前記管網が、複数のラインセクションもしくは複数の制御モジュールまたはその両方を備えており、
特に所定の移送元と特に所定の移送先との間の、流動媒体の移送経路、を自動的に計算する移送経路計算ステップであって、前記移送元と前記移送先との間の一連のラインセクションもしくは制御モジュールまたはその両方を計算するステップ、を含んでいる、移送経路計算ステップ、
を含んでいる、方法。
【請求項2】
前記移送経路計算ステップが、移送される前記流動媒体、その前に移送された流体媒体、前記管網の中に存在している流動媒体、のうちの1つまたは複数に依存して行われる、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つのステータス、特に、遮断ステータス、基本ステータス、媒体ステータス、衛生ステータス、割当てステータス、のうちの1つまたは複数が、ラインセクションもしくは制御モジュールまたはその両方に割り当てられ、移送経路の前記計算が少なくとも1つのステータスに依存して行われる、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記移送経路計算ステップが、少なくとも2つの部分経路を計算するステップを含んでおり、前記少なくとも2つの部分経路が、互いに流体的に分離され得る、
請求項1から請求項3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
移送される前記流動媒体が押し込み媒体によって押され、前記移送経路計算ステップが、所定の基準に照らして前記移送元に近い押し込み媒体の供給元を決定する決定ステップ、を含んでいる、
請求項1から請求項4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記移送経路計算ステップが、所定の基準に照らして前記移送先に近い出口点を決定する決定ステップ、を含んでいる、
請求項1から請求項5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記決定ステップが、部分経路それぞれに対して行われる、
請求項5または請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記移送経路計算ステップが、複数の流動媒体に同時に使用できる複数の移送経路を計算するステップ、を含んでいる、
請求項1から請求項7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記移送経路計算ステップが、前記管網の準備処理もしくは後処理またはその両方を計算するステップ、を含んでいる、
請求項1から請求項8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記準備処理もしくは前記後処理またはその両方が、
前記移送経路の少なくとも一部分をすすぎ媒体によって前すすぎを行うステップ、移送される前記流動媒体によって前記すすぎ媒体を除去するステップ、移送される前記流動媒体を、前記移送経路の少なくとも一部分から押し込み媒体によって除去するステップ、すすぎ媒体によって後すすぎを行うステップ、のうちの1つまたは複数、
を含んでいる、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
流動媒体の移送経路の前記自動的な計算が、容器またはコンテナに割り当てられているプロセッサモジュールによってトリガーされる、
請求項1から請求項10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記移送経路計算ステップが、
計算される前記移送経路に、特定のラインセクション、特定の制御モジュール、特定の測定装置、のうちの1つまたは複数が含まれる、または含まれないように、そのようなラインセクション、そのような制御モジュール、またはそのような測定装置を決定することによって、または避けることによって、
行われる、
請求項1から請求項11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記移送経路計算ステップが、
第1の移送元と移送先との間の流動媒体の移送経路と、第2の移送元と前記移送先との間の流動媒体の移送経路とを、前記第1の移送元から前記移送先への移送の直後に前記第2の移送元から前記移送先への移送が行われるように、計算するステップ、
を含んでいる、
請求項1から請求項12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記移送経路計算ステップが、計算される前記移送経路を前記管網の別の領域から流体的に分離するための制御モジュール、を計算するステップ、を含んでいる、
請求項1から請求項13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記管網の各ラインセクションもしくは各制御モジュールまたはその両方が、オブジェクトの形で電子メモリに格納され、特に、移送経路の前記計算が前記オブジェクトに基づいて行われる、
請求項1から請求項14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
少なくとも1つのステータスパラメータが各オブジェクトに割り当てられ、前記少なくとも1つのステータスパラメータが、遮断ステータスパラメータ、基本ステータスパラメータ、媒体ステータスパラメータ、衛生ステータスパラメータ、割当てステータスパラメータ、のうちの1つまたは複数である、
請求項15に記載の方法。
【請求項17】
計算された前記移送経路に従って前記管網を自動的に制御するステップ、
をさらに含んでいる、請求項1から請求項16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
計算される前記移送経路の前記制御モジュールが、所定の基準に従って機能グループに割り当てられ、制御モジュールの制御が、対応する前記機能グループの定義済みの制御によって実施される、
請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記移送経路の前記計算もしくは前記管網の前記制御またはその両方が、前記移送元もしくは前記移送先またはその両方のステータスパラメータに基づく、
請求項1から請求項18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記移送元もしくは前記移送先またはその両方が、特に、前記管網を自動的に制御する制御装置に、ステータスパラメータの値を送信する、
請求項19に記載の方法。
【請求項21】
コンピュータプログラム製品であって、命令を有する1つまたは複数の機械可読媒体を備えており、前記命令によって、コンピュータが、請求項1から請求項20のいずれかに記載の方法を実行する、コンピュータプログラム製品。
【請求項22】
特に、醸造所において、流動媒体を移送する管網を自動的に制御する制御装置であって、前記管網が、移送元と移送先との間の複数の移送経路を提供し、前記管網が、複数のラインセクションおよび複数の制御モジュールを備えており、
前記制御装置が、特に所定の移送元と特に所定の移送先との間の、流動媒体の移送経路、を自動的に計算するように設計されており、移送経路の前記計算が、前記移送元と前記移送先との間の一連のラインセクションもしくは制御モジュールまたはその両方を計算するステップ、を含んでいる、
制御装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−532294(P2012−532294A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518797(P2012−518797)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【国際出願番号】PCT/EP2010/004001
【国際公開番号】WO2011/003549
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(506040652)クロネス アクティェンゲゼルシャフト (55)
【Fターム(参考)】