説明

管路内周側構造体および管路内周面裏打工法

【課題】光ファイバの摩耗や断線などの損傷を防止した管路内周側構造体を提供する。
【解決手段】地中に埋設された延在する管路20の内周面を樹脂が含浸された裏打材11で裏打ちした管路内周側構造体10において、管路内周側構造体10は、裏打材11と管路20の内周面との間で管路20の延在方向に延びる光ファイバ12、および光ファイバ12と管路20の内周面との間で管路20の延在方向に延びた保護部材13とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に埋設された延在する管路の内周面を熱硬化性樹脂もしくは光硬化性樹脂が含浸された裏打材または熱可塑性樹脂からなる裏打材で裏打ちした管路内周側構造体および管路内周面裏打工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下水を流す下水管路や電力ケーブルが収容された地中電線管路等の地中に埋設された管路が存在する。この管路は、地震や老朽化等により、ひび割れたり継ぎ手部分が離間して隙間を生じたり、あるいは継ぎ手部分がずれて段差を生じることがある。また、老朽化しなくても、管路を新たに敷設した際に、継ぎ手部分に隙間や段差が生じてしまうこともある。ひび割れ、隙間または段差が管路に存在すると、管路内の下水等が外に漏れ出る虞があり、また管路内に雨水や土砂等が浸入する虞もある。
【0003】
このひび割れや隙間が存在する管路を補修する技術として、熱硬化性樹脂を含浸した裏打材を管路の内周面に押し付けて裏打ちする技術が提案されている(例えば特許文献1)。
【0004】
また、光ファイバを裏打材とともに管路内に引き込んで、裏打材外周面と管路内周面の間に光ファイバを配置して裏打材の温度を光ファイバを用いて測定する技術、および裏打材に生じた変形を光ファイバを用いて検出する技術が提案されている(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−1818号公報
【特許文献2】特開2010−38829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、裏打材や管路と比較すると光ファイバは許容引張荷重および許容曲げ応力が格段に小さい。この為、光ファイバを管路に引き込む際に、管路と光ファイバとの間で生じる摩擦により光ファイバに引張荷重が生じて光ファイバが断線してしまうことがある。また、この摩擦により光ファイバが摩耗してしまうこともある。
【0007】
さらに、隙間部分や段差部分が生じた管路の内周面の縁が角部になっていることがある。この管路の内周面に裏打材を押し付ける場合、管路の隙間部分または段差部分に存在する角部に光ファイバが押し付けられて光ファイバが断線してしまうこともある。
【0008】
本発明は上記事情に鑑み、光ファイバの摩耗や断線などの損傷を低減することができる管路内周側構造体および管路内周面裏打工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を解決する本発明の管路内周側構造体は、地中に埋設された延在する管路の内周面を熱硬化性樹脂もしくは光硬化性樹脂が含浸された裏打材または熱可塑性樹脂からなる裏打材で裏打ちした管路内周側構造体において、
前記裏打材と前記内周面との間で前記管路の延在方向に延びる光ファイバ、および
前記光ファイバと前記内周面との間で前記管路の延在方向に延びた保護部材とを有することを特徴とする。
【0010】
本発明の管路内周側構造体によれば、光ファイバと管路の間に上記保護部材が存在するので、光ファイバと管路との摩擦による光ファイバの摩耗や引張荷重を軽減することができる。また、管路の隙間部分または段差部分に角部が存在していても、角部と光ファイバとの間に上記保護部材があるので、光ファイバが断線し難くなる。
【0011】
ここで、前記光ファイバは、温度測定用のものであってもよいし、前記裏打材の変形測定用のものであってもよい。
【0012】
また、前記裏打材は、熱硬化性樹脂を含浸したものであってもよいし、熱可塑性樹脂からなるものであってもよい。また、前記裏打材は、光硬化性樹脂を含浸したものであってもよい。
【0013】
また、本発明の管路内周側構造体において、前記保護部材が、シート状のものであってもよい。
【0014】
上記保護部材がシート状であるので、管路内周側構造体の作成が容易である。すなわち、上記保護部材を円筒状とした場合、円筒内に裏打材と光ファイバとを挿入する手間がかかる。上記保護部材をシート状にすることで、この手間が削減される。
【0015】
ここで、前記保護部材が、金属製のシート状のものであってもよい。
【0016】
また、前記裏打材は、前記管路の内周面における少なくとも下半分以下の所定領域を裏打ちするものであり、前記光ファイバおよび前記保護部材それぞれは、前記裏打材と、前記所定領域との間に配置されたものであってもよい。より具体的には、前記裏打材は、前記管路の内周面における少なくとも底部を裏打ちするものであり、前記光ファイバおよび前記保護部材それぞれは、前記裏打材と、前記底部との間に配置されたものであってもよい。
【0017】
また、前記光ファイバは、前記裏打材に接したものであってもよい。
【0018】
また、本発明の管路内周面裏打工法は、地中に埋設された延在する管路の内周面を熱硬化性樹脂もしくは光硬化性樹脂が含浸された筒状裏打材または熱可塑性樹脂からなる筒状裏打材で裏打ちする管路内周面裏打工法において、
前記筒状裏打材を前記管路内に進出させる進出工程と、
前記管路内に進出した筒状裏打材の外周面を前記内周面に向けて押し付ける押付工程とを有し、
前記進出工程は、光ファイバおよび保護シートを前記筒状裏打材とともに前記管路内に進出させ、該筒状裏打材の外周面と該管路の内周面との間における、該筒状裏打材の外周面側に該光ファイバを配置するとともに該管路の内周面側に該保護シートを配置する工程であることを特徴とする。
【0019】
本発明の管路内周面裏打工法によれば、光ファイバと管路の間に保護シートを設けて光ファイバおよび保護シートを裏打材とともに管路内に進出させるので、光ファイバと管路との摩擦による光ファイバの摩耗や引張荷重を軽減することができる。また、管路の隙間部分または段差部分に角部が存在していても、角部と光ファイバとの間に上記保護部材があるので、光ファイバが断線し難くなる。
【0020】
ここで、進出とは引き込んでもよいし、送り出してもよい。
【0021】
また、前記押付工程が、前記熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂に熱を加えながら前記筒状裏打材の外周面を前記管路の内周面に向けて押し付ける工程であってもよい。
【0022】
また、本発明の管路内周面裏打工法において、前記進出工程が、長手方向につづら折りされた筒状裏打材を前記管路内に進出させる工程であることを特徴とする。
【0023】
筒状裏打材をつづら折りにすることで進出前における筒状裏打材をコンパクトに収容することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の管路内周側構造体および管路内周面裏打工法によれば、光ファイバと管路との間に保護部材を設けているので光ファイバの損傷を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】管路の内周面に形成された本発明の一実施形態である管路内周側構造体を表す概略図である。
【図2】図1に示したA−A線で管路内周側構造体および管路を切断した断面図である。
【図3】筒状裏打材と光ファイバと保護シートとをマンホールの入り口近傍に準備した様子を表す概略図である。
【図4】筒状裏打材と光ファイバと保護シートとを管路に進出させる行程を表す概略図である。
【図5】筒状裏打材を管路の内周面に押し付ける行程を表す概略図である。
【図6】変形例の管路内周側構造体を切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0027】
図1(a)は、管路の内周面に形成された本発明の一実施形態である管路内周側構造体を表す概略図である。図1(b)は管路に生じた隙間部分を誇張して表す図であり、図1(c)は管路に生じた段差部分を誇張して表す図である。
【0028】
地中21に埋められた下水管等の管路20には、管路20と地表とを繋ぐ複数のマンホール23が所定間隔で設けられている。この管路20には、図1(a)に示すひび割れ20aが生じたものがある。また、管路20には、図1(b)に示す隙間部分20bや図1(c)に示す段差部分20cが生じたものもある。この隙間部分20bや段差部分20cは、管路20を新たに敷設した時に生じることもあるし、敷設後の地震などが原因で生じることもある。隙間部分20bや段差部分20cが生じていると、管路20の内周面の縁は角部20dになってしまう。
【0029】
これらの管路20の補修の目的で、筒状裏打材11と光ファイバ12と保護シート13とから構成された管路内周側構造体10が形成される。本実施の形態における筒状裏打材11は、本発明の裏打材の一例に相当する。また、本実施の形態における保護シート13は、本発明の保護部材の一例に相当する。
【0030】
筒状裏打材11は、隣り合うマンホール23間の全長に渡って管路20の内周面を裏打ちしている。また、光ファイバ12および保護シート13も、隣り合うマンホール23間の全長に渡って延在している。筒状裏打材11は、熱硬化性樹脂を含浸した不織布と、この不織布の内周面および外周面に設けられた不透過性のフィルムとから構成されている。不透過性のフィルムは、気体や液体を透過しないフィルムである。
【0031】
図2は図1に示したA−A線で管路内周側構造体を切断した断面図である。この図2に示す様に、筒状裏打材11は管路20の内周面にほぼ沿った筒状に形成されている。
【0032】
光ファイバ12は、石英ガラスでできたコアおよびクラッドと、このコアおよびクラッドを覆うポリエチレン等の樹脂でできた被覆材とから構成されている。この光ファイバ12は、管路20の内周面における底部と筒状裏打材11の間に配置されている。また、光ファイバ12は、筒状裏打材11に接触し、管路内周面とは非接触で管路20の延在方向に延在している。
【0033】
保護シート13は、管路20の内周面と光ファイバ12との間で管路20の延在方向に延在している。また、保護シート13は、管路20の底部を中心として管路20の内周面における約120°の領域を覆っている。この保護シート13は、硬質塩化ビニルでできたシート状の部材である。保護シート13の厚みは、裏打ち後の管路20の流下能力を考慮すると薄い方が好ましく、少なくとも1mm以下が好ましい。本実施の形態では保護シート13の剛性も考慮して0.4mmとしている。なお、保護シート13は、硬質塩化ビニルシートでなくとも、摩擦係数が低く、硬度が高く、延び難く、かつ剛性の高い部材であればよい。この様な部材として例えば、布、熱可塑性樹脂シート、金属シート、または繊維補強被覆コーティングシート等が挙げられる。ただし、コストと入手性の観点から硬質塩化ビニルシートが好ましい。
【0034】
次に、図3から図5を用いて管路20の内周面に筒状裏打材11を裏打ちする管路内周面裏打工法について説明する。ここで説明する管路内周面裏打工法は、進出工程と押付工程を有する。図3は、筒状裏打材11と光ファイバ12と保護シート13とをマンホール23の入り口近傍に準備した様子を表す概略図である。なお、後で詳細に説明する、図4は進出行程を表す概略図であり、図5は押付行程を表す概略図である。
【0035】
図3に示すように、まず裏打ちする管路20に接続している一方のマンホール23(以下、挿入側マンホール231と称する)の入り口近傍に、光ファイバ12が巻かれた光ファイバロール12aと、保護シート13が巻かれた保護シートロール13aと、筒状裏打材11とを輸送する。また、裏打ちする管路20に接続している他方のマンホール23(以下、引込側マンホール232と称する)の入り口上にウインチ29(図4参照)を設置する。さらに、引込側マンホール232と管路20の接続部に滑車30(図4参照)を設置する。続いて、滑車30を介してウインチ29に巻かれている引込ワイヤ28の先端を引込側マンホール232に挿入し、挿入側マンホール231まで引込ワイヤ28を貫通させる。
【0036】
筒状裏打材11は、後述する温水供給ホース34(図5参照)を内包したものが事前に工場で作成される。その後、筒状裏打材11は、外気温によって硬化しないように保冷車24によって保冷されながら、挿入側マンホール231の入り口近傍に輸送される。輸送から挿入側マンホール231に引き込まれる迄の間、筒状裏打材11は長手方向につづら折りの状態で地上の保冷車24の車内に置かれている。つづら折りにして置くことで筒状裏打材11をコンパクトに収容することができ、保冷車での輸送が容易になる。
【0037】
光ファイバ12は、筒状裏打材11とは分離して挿入側マンホール231の近傍に輸送される。分離して輸送するのは、光ファイバ12に許容される曲げ半径では筒状裏打材11のように長手方向につづら折りすることができないからである。保護シート13も、筒状裏打材11および光ファイバ12とは分離して挿入側マンホール231の近傍に輸送される。
【0038】
次に、光ファイバ12の先端を筒状の鋼管14の内部に差し込み、光ファイバ12を鋼管14に固定する。その後、その鋼管14を保護シート13の先端と筒状裏打材11の先端とで挟みこみ結束ワイヤ15で結束する。以下、先端が結束された筒状裏打材11と光ファイバ12と保護シート13とを内張材Mと称する。結束により、筒状裏打材11の先端に保護シート13の先端が固定され、鋼管14を介して光ファイバ12の先端も筒状裏打材11に固定される。なお、鋼管14は、結束による締め付け圧力から光ファイバ12の先端を保護するためのものである。結束が完了したら、引込ワイヤ28の先端を筒状裏打材11の先端に縛り付ける。
【0039】
続いて、図4を用いて進出行程を説明する。図4は、内張材Mを管路20に進出させる進出行程を表す概略図である。引き込み工程では、引込側マンホール232の入口上に設置したウインチ29で引込ワイヤ28を巻き取り、内張材Mを裏打ちする管路20内に引き込む。この引き込みの際、保護シート13は、管路内周面における底部に沿って引き込まれる。また、光ファイバ12も、保護シート13を介して管路内周面における底部に沿って引き込まれる。
【0040】
管路20への引き込みの間、光ファイバ12は、その先端のみが鋼管14を介して筒状裏打材11に固定されている。先端以外は固定されていないので、筒状裏打材11と光ファイバ12とは延在方向には互いに拘束されずに自由に伸縮する。筒状裏打材11を管路20に引き込む際、筒状裏打材11は延在方向に伸びる場合がある。この場合でも、筒状裏打材11は光ファイバ12とは独立して自由に伸縮可能であるので、光ファイバ12に筒状裏打材11の伸縮による引張荷重が働くことがない。
【0041】
裏打ちする管路20の、引込側マンホール232との接続部分まで、内張材Mの先端を引き込んだらウインチ29を停止して引き込みを完了する。引き込みの完了時、保護シート13は、筒状裏打材11の外周面と管路20の内周面との間であって管路20の下側部分で、管路20の長手方向に延在している。また、光ファイバ12は、保護シート13を介して管路20の底部で、管路20の長手方向に延在している。引き込みが完了した内張材Mの後端は、挿入側マンホール231の入口よりも上部に位置している。次に、内張材Mから結束ワイヤ15および引込ワイヤ28を取り外して光ファイバ12の先端から鋼管14を引き抜く。
【0042】
次に、図5を用いて押付工程を説明する。図5は、筒状裏打材11を管路20の内周面に押し付ける押付行程を表す概略図である。押付工程では筒状裏打材11の内部に温水を供給する。
【0043】
先ず、図5に示すように、筒状裏打材11の後端を後端側栓体31で塞ぐ。さらに、筒状裏打材11から気体や液体が漏れないように、筒状裏打材11の両端部に締付バンド32を取り付ける。その後、挿入側マンホール231の真上に支持フレーム33を組んで、後端側栓体31を支持フレーム33に固定する。また、光ファイバ12の端部をボイラ車35に設けられた、温水の温度を計測する温度計測器351に繋ぐ。そして、作業者が光ファイバの温度測定結果を判定してから、図示しない温度調節機に目標加熱温度を入力し、さらに加熱時間の調整を行う。なお、目標加熱温度を入力した後の加熱媒体の温度制御については、温度調節機と循環系統に設置した図示しない温度センサによってフィードバック制御による自動制御を行う。
【0044】
続いて、工場で筒状裏打材11内に配置しておいた温水供給ホース34に、ボイラ車35から温水を供給する。
【0045】
供給された温水は、温水供給ホース34の先端に設けられたホース先端孔34aから放出される。内部に温水を供給することで筒状裏打材11は拡径し、筒状裏打材11よりも外側にある光ファイバ12および保護シート13は筒状裏打材11とともに管路20の内周面に押し付けられる。
【0046】
後端側栓体31内には温水回収ホース37の先端が設置されている。ホース先端孔34aから供給された温水は、その温水回収ホース37の先端を通して回収される。図5における矢印は、温水の流れを示している。また、ホース先端孔34aから供給された温水は、温水回収ホース37まで循環する間に筒状裏打材11に熱を奪われて温度が低下する。温度が低下した温水は、温水回収ホース37で回収された後にボイラ車35で再度加熱されて温水供給ホース34に供給される。一方、筒状裏打材11は、温水の熱を吸収することで、管路20に押し付けられた状態で徐々に加熱される。筒状裏打材11の温度が所定温度に達すると筒状裏打材11の内部に存在する熱硬化性樹脂の硬化が始まる。
【0047】
この硬化は筒状裏打材11全体で均一に進行することが望ましい。しかし、ホース先端孔34aから供給された温水は、温度が低下すると密度差が生じ筒状裏打材内の低い位置に移動する特性がある。
【0048】
また、筒状裏打材11の外周面は、温水から最も離れているので内周面と比較して温水による加熱が遅延し、さらに加熱温度自体も低くなる。
【0049】
さらに、管路20にひび割れまたは隙間等があると、外部から雨水等が浸入して筒状裏打材11の底部に溜まり、底部の温度上昇が阻害されてしまう。これらの理由で、筒状裏打材11の底部付近の外周面は特に温度が低くなり、硬化が遅れる傾向にある。
【0050】
そこで、本実施の形態では、温水供給の際に光ファイバ12を測定手段として筒状裏打材11の温度を測定する。この測定においては、筒状裏打材11の長手方向全長に延在している光ファイバ12を測定手段にすることで、筒状裏打材11の長手方向全長にわたる温度を測定する。その測定した温度に応じて、温水供給ホース34に供給する温水の温度と供給時間を調整する。
【0051】
また、光ファイバ12は、管路20の内周面における底部で筒状裏打材11の外周面に接して配置されているので、筒状裏打材11の最も低温部分の温度を測定する。筒状裏打材11の最も低温部分の温度を測定することで、温度調節機を用いて温度と供給時間を調整する。
【0052】
筒状裏打材11の全ての部分が所定温度以上となり、その状態で硬化に必要な時間が経過すると筒状裏打材11全体が硬化して筒状裏打材11による裏打ちが完了する。裏打ちが完了したら、筒状裏打材11両端部の締付バンド32を取り外し、後端側栓体31を筒状裏打材11から取り外す。次に、管路20よりも延出している余分な筒状裏打材11、光ファイバ12および保護シート13を切り取る。切り取りが終わった状態は、図1および図2に示すように管路内周側構造体10が管路20に形成された状態である。
【0053】
管路内周側構造体10が管路20に形成された後は、光ファイバ12を測定手段として用いて筒状裏打材11の状態管理を行う。管路内周側構造体10が管路20に形成された時の状態を光ファイバ12を用いて測定して測定結果を記録しておく。記録された測定結果と形成後の測定結果とを比較することで、形成後の変形状態を診断し、補修が必要か否かおよび補修が必要な位置を把握することができる。
【0054】
本実施の形態の構成によれば、管路20と光ファイバ12の間に保護シート13を設けているので、管路20に光ファイバ12を引き込む際に光ファイバ12が管路20と接触して摩耗することがない。さらに、光ファイバ12に引張荷重が作用することもない。
【0055】
また、本実施の形態では、管路20と光ファイバ12の間に保護シート13を設けているので、角部20dと光ファイバ12とは直接接触することがない。筒状裏打材11の拡径時に光ファイバ12が管路20の内周面に押し付けられても角部20dと光ファイバ12とが接触しないので、角部20dによる光ファイバ12の断線の可能性を大幅に軽減することができる。
【0056】
また、管路内周側構造体10が管路20に形成された後に管路20に段差などの変形が生じた場合も角部20dと光ファイバ12とが接触していないので光ファイバ12が断線し難くなる。
【0057】
本発明は上述の実施の形態に限られることなく特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形を行うことが出来る。例えば図6に示すように管路内周側構造体10を変形することが考えられる。図6は、変形例の管路内周側構造体10を切断した断面図である。この変形例の管路内周側構造体10では、筒状裏打材11の外周面と光ファイバ12の間に金属製の案内シート40を設けている。この案内シート40は、摩擦係数が所定値以下のものである。この変形例では、まず案内シート40と光ファイバ12と保護シート13を管路20内に配置する。その後、筒状裏打材11を引き込む。摩擦係数の低い案内シート40を設けることで、筒状裏打材11よりも先に光ファイバ12を管路20内に配置していても、筒状裏打材11を管路20に引き込む際に筒状裏打材11と光ファイバ12との摩擦による光ファイバ12の摩耗や引張荷重の発生が抑制される。また、筒状裏打材11の引き込みにより光ファイバ12に引張荷重が発生することもない。なお、保護シート13は、筒状裏打材11の温度を光ファイバ12に効率よく伝えることができ、かつ摩擦係数の低い材料であれば金属製でなくてもよい。
【0058】
また、本実施の形態では、管路内周側構造体10に光ファイバ12を1本のみ備える例としたが、2本以上備えていてもよく、保護シート13も2枚以上備えてもよい。また、温度測定または変形検出の一方のみに光ファイバ12を用いても良い。また、光ファイバ12は、低温部分の温度を測定する意味で管路20の内周面における底部に配置することが好ましいものの、管路20の内周面の下半分であれば他の位置に配置しても良い。さらに、筒状裏打材11の変形を検出する目的であれば管路20の内周面における周方向のどの位置に配置しても良い。また、本実施の形態ではシート状の保護シート13を用いる例を挙げたが、円筒状であってもよい。ただし、円筒状にした場合は、円筒状の保護シート13の内側に筒状裏打材11と光ファイバ12を納める手間が生じる。シート状の場合は、単に筒状裏打材11と光ファイバ12とともに保護シート13を管路20内に引き込むだけですむため作業性がよい。また、シート状の場合、保護シート13の幅方向の長さは、管路20の内周面の下半分を覆う長さであってもよいし、管路20の内側全周にわたる長さであってもよい。さらに、保護シート13の幅方向の長さは、管路20の内側全周を超えて保護シート13の幅方向両端がラップする長さであってもよい。また、筒状裏打材11と保護シート13の間に光ファイバ12を配置し、保護シート13の幅方向の端部を筒状裏打材11に接着したものを工場で作成してもよい。ただし、接着した場合は、筒状裏打材11をつづら折りにすることができなくなるので、筒状裏打材をコンパクトに収容することができなくなり、輸送の際に大型の収容スペースを有する保冷車が必要になる。また、筒状裏打材11と光ファイバ12と保護シート13とを、挿入側マンホール231側から送り出すことで管路20に進出させてもよい。また、筒状裏打材11に含浸される樹脂は、光硬化性樹脂であってもよく、さらに、筒状裏打材11自体を熱可塑性樹脂で構成してもよい。
【0059】
熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂の場合には、樹脂を暖める手段として蒸気や温風を用いてもよい。光硬化性樹脂の場合には可視光や紫外線を用いてもよい。また、本実施の形態では、マンホールの入り口近傍に、光ファイバ12と保護シート13とを準備したが、これらをマンホール内に準備しても良い。さらに、押付工程で筒状裏打材11の内部に供給するのは温水に限らず、空気と蒸気を混ぜた混合蒸気でも良い。なお、これらの変形を適宜組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0060】
10 管路内周側構造体
11 筒状裏打材
12 光ファイバ
13 保護シート
20 管路
20a ひび割れ
20b 隙間部分
20c 段差部分
20d 角部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に埋設された延在する管路の内周面を熱硬化性樹脂もしくは光硬化性樹脂が含浸された裏打材または熱可塑性樹脂からなる裏打材で裏打ちした管路内周側構造体において、
前記裏打材と前記内周面との間で前記管路の延在方向に延びる光ファイバ、および
前記光ファイバと前記内周面との間で前記管路の延在方向に延びた保護部材とを有することを特徴とする管路内周側構造体。
【請求項2】
前記保護部材が、シート状のものであることを特徴とする請求項1記載の管路内周側構造体。
【請求項3】
地中に埋設された延在する管路の内周面を熱硬化性樹脂もしくは光硬化性樹脂が含浸された筒状裏打材または熱可塑性樹脂からなる筒状裏打材で裏打ちする管路内周面裏打工法において、
前記筒状裏打材を前記管路内に進出させる進出工程と、
前記管路内に進出した筒状裏打材の外周面を前記内周面に向けて押し付ける押付工程とを有し、
前記進出工程は、光ファイバおよび保護シートを前記筒状裏打材とともに前記管路内に進出させ、該筒状裏打材の外周面と該管路の内周面との間における、該筒状裏打材の外周面側に該光ファイバを配置するとともに該管路の内周面側に該保護シートを配置する工程であることを特徴とする管路内周面裏打工法。
【請求項4】
前記進出工程が、長手方向につづら折りされた筒状裏打材を前記管路内に進出させる工程であることを特徴とする請求項3記載の管路内周面裏打工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−101407(P2012−101407A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−250666(P2010−250666)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【出願人】(508165490)アクアインテック株式会社 (51)
【Fターム(参考)】