説明

節度切換式スイッチ装置

【課題】操作スイッチに発生する節度感の切り換えや固定を簡単な処理で行うことができる節度切換式スイッチ装置を提供する。
【解決手段】ヨーク9の内周面に小節度発生部材12を固着し、ダイヤルノブ10の操作軸10bに大節度発生部材16を一体回動可能に取り付ける。また、操作軸10bにプランジャケース20を相対回動可能に取り付け、これに大節度ピース23と小節度ピース22とを取り付ける。ヨーク9に電磁石29を取り付け、これに吸着可能なプランジャ磁性体31をプランジャケース20に固着する。ヨーク9に蓋をする形で永久磁石35を取り付け、電磁石29の通電を通電オフ、逆接通電及び順接通電の間で切り換えることで、この時発生するコイル磁界と永久磁石35の磁石磁界とを協同させ、ヨーク9内に発生する磁気回路を切り換えることで、ダイヤルノブ10の節度を大節度、小節度及び固定の3段階で切り換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作スイッチの操作部に発生する節度感を切り換え可能な節度切換式スイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両には、エアーコンディショナー装置やオーディオ装置の各種車載機器の動作設定を行う際の入力操作系として、各々の機能ごとに他種に亘って操作スイッチが設けられている。その一例を挙げると、エアーコンディショナー装置用の操作スイッチとしては、例えば送風温度設定用の温度設定スイッチや、送風量設定用の送風量設定スイッチや、風向き設定用の風向設定用スイッチ等々がある。これらスイッチ群は、例えば回転操作式のダイヤルノブを操作部位としてダイヤルノブの回転操作により各種機能設定を行う回転操作式スイッチ、いわゆるロータリスイッチが広く一般的に用いられている。
【0003】
また、この種のロータリスイッチには、ダイヤルノブの操作フィーリングを良好にしてダイヤルノブの操作を確実なものにするために、ダイヤルノブに所望の作動力やクリック感を節度として付与し得る節度機構が設けられている。このような節度機構の一例としては、例えば特許文献1に示すようなモータを使用してロータリスイッチのダイヤルノブに節度感を付与するモータ式節度発生機構がある。この開示技術は、ロータリスイッチのダイヤルノブにモータを連結し、ダイヤルノブを回動操作した際に、モータをノブ操作方向と逆側に駆動してダイヤルノブに反力を付与することで、この作動力を節度感として操作者に付与する技術である。
【0004】
ところで、近年においては、操作スイッチの部品点数削減を図るべく、1つのロータリスイッチを複数の選択機能の間で共用する試みがなされてきている。この種の操作スイッチ共用構造の場合、入力操作系のコントロールユニットであるスイッチコントローラは、スイッチ判別初期状態においてスイッチ判別モードが機能選択設定モードとなり、この時にダイヤルノブが操作されると、その際にロータリスイッチから得るスイッチ信号を用いて、その時に操作者が機能設定したい車載機器を選択指定する。スイッチコントローラは、車載機器選択指定後においてスイッチ判別モードを詳細設定モードに切り換え、この時にダイヤルノブが操作されると、その際にロータリスイッチから得るスイッチ信号を用いて、その時に選択指定された車載機器の詳細をスイッチ操作に応じた状態に設定する。
【0005】
操作スイッチ共用構造の場合、ロータリスイッチに生じる節度感は、各々の選択機能ごとに異なることが望ましい。ここで、節度機構として特許文献1に示すモータ式節度発生機構を用いた際、各選択機能でダイヤルノブの節度感を切り換えるには、各選択機能でモータからダイヤルノブに付与される反力の大きさを制御することにより行う。即ち、強節度が必要な場合には、モータの反力を大きく設定してダイヤルノブに強節度を発生させ、弱節度が必要な場合には、モータの反力を小さく設定してダイヤルノブに弱節度を発生させる。
【0006】
また、エアーコンディショナー装置のロータリスイッチは、温度設定や選択機能設定を行う関係上、ダイヤルノブを予め定めた回動操作範囲内で操作する回転操作範囲が限定されたスイッチである場合が多い。このため、この種のロータリスイッチは、その用途に応じて回動操作範囲が例えば120度、180度、270度等の回動範囲内で操作するものがある。ここで、節度機構として特許文献1に示すモータ式節度発生機構を用いた場合、ダイヤルノブを予め定められた停止位置で固定状態とするには、例えばモータに節度発生時よりも大きな反力を発生させることにより、ダイヤルノブのそれ以上の回動操作を規制することで行う。
【特許文献1】特開2006−178861号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、節度機構としてモータ式節度発生機構を用いた場合、この節度機構でダイヤルノブに発生する節度感を切り換えたり、或いはダイヤルノブを固定状態としたりするには、モータに発生する反力を制御する処理が必要となる。従って、この種のモータ制御は複雑な処理が必要となることから、節度機構としてモータ式節度発生機構を用いると、スイッチ系のコントロールユニットが複雑なモータ制御を行う必要が生じることになり、コントロールユニットの処理負担を軽減するためにも、ロータリスイッチの節度切り換え及び固定をできるだけ簡単な処理で行いたい要望があった。
【0008】
本発明の目的は、操作スイッチに発生する節度感の切り換えや固定を簡単な処理で行うことができる節度切換式スイッチ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記問題点を解決するために、本発明では、操作スイッチの操作部を操作することで当該操作スイッチの選択機能操作が行われ、前記操作部が操作される際に当該操作部に発生する節度感を切り換え可能な節度切換式スイッチ装置において、節度山部材及びピース部材が相対回動することで節度が発生し、前記操作スイッチの筐体側に位置する電磁石を用い、その磁気吸着作用によって節度山部材及びピース部材の一方を前記筐体側に固定することで複数の節度の中から特定のものを選択的に発生する節度機構と、前記電磁石が発生する磁気回路に補助磁界を付与可能な補助磁界発生部材と、自身に大きな磁界が付与された際にその時の磁気吸着作用により前記操作部の操作軸を固定し得る磁気吸着部材と、操作者が前記操作部を操作する際に行う操作状態を検出する検出手段と、前記検出手段の検出量を基に前記電磁石を駆動制御することにより、前記電磁石及び前記補助磁界発生部材によって前記筐体内に生じる磁気回路の回路状態を切り換えて前記操作部の節度感や固定状態を切り換える制御手段とを備えたことを要旨とする。
【0010】
この構成によれば、制御手段は検出手段の検出量を基に電磁石の通電状態を切り換え制御することによって電磁石が発生する磁界を切り換え、この時に電磁石が発生する駆動磁界と補助磁界発生部材が補助的に発生する補助磁界とを協同させて、操作スイッチ内に生じる磁気回路を切り換える。操作スイッチ内の磁気回路を切り換わると、例えば電磁石が発生する駆動磁界と補助磁界発生部材が発生する補助磁界との磁界バランスが変わることから、この磁界変化によって複数の節度機構の中から駆動するものを選び出して節度機構の切り換えを行ったり、或いは筐体内に強い磁界を発生させて操作部を筐体に固定して操作部を操作不可能な固定状態にしたりする。
【0011】
ところで、背景技術で述べたように、仮に節度機構としてモータを利用した構造の場合、操作部の節度感や固定状態を切り換えるに際しては、モータの電流量を逐次切り換えるなどの複雑な制御処理が必要となる。しかし、本構成においては、操作部の節度感を切り換えたり操作部の固定状態を切り換えたりするに際して、これは電磁石の通電を制御することにより行われるので、この種の電磁石制御はただ単に電磁石に流れる電流のオンオフを切り換えるだけの制御処理で済むことから、簡単な制御処理で操作部の節度感切り換えや固定切り換えを行うことが可能となる。
【0012】
本発明では、前記節度機構は、前記操作軸と同一可動する連動部材と、前記操作軸に対して相対可動可能な状態で取り付けられた取付部材と、前記筐体側に固定された支持部材とを備え、前記連動部材及び取付部材の間に大節度用の部品群が位置し、前記取付部材及び支持部材の間に小節度用の部品群が位置し、しかも前記電磁石に磁気吸着可能な磁性体が前記取付部材に一体取り付けされた構造であって、前記制御手段は、前記電磁石の駆動状態を非通電、逆接通電及び順接通電の間で切り換えることにより、前記電磁石及び前記磁性体間の磁気吸着状態と前記磁気吸着部材及び前記筐体間の磁気吸着状態と各々異なる状態に変更して前記節度感及び固定状態の切り換えを行うことを要旨とする。
【0013】
この構成によれば、例えば電磁石が非通電状態となると、操作スイッチには補助磁界発生部材の補助磁界による磁気回路が生じた状態となるが、補助磁界発生部材は補助的な磁界を発生するものであるため、操作部に取着した磁気吸着部材は筐体に磁気吸着する状態にはならず、操作部は無理なく操作可能な状態となる。このとき、電磁石は非通電であることから取付部は筐体側に固定されてはおらず、この状態で操作部が操作されると、大節度部品群の摺動抵抗は小節度部品群のそれよりも大きいことから、取付部材はこの摺動抵抗関係から連動部材と共に操作部に連れ動きし、取付部材が筐体側の支持部材に対して動く状態をとる。このため、連動部材及び取付部材の間にある大節度機構は働かず、一方で取付部材及び支持部材の間にある小節度機構が利く状態となり、操作部に小節度が発生する。
【0014】
また、電磁石が逆接通電状態となると、電磁石が発生する電磁石磁界と補助磁界発生部材の補助磁界とが互いに逆向きをとることから、操作部に取着した磁気吸着部材には大きな磁界はかからずに筐体には磁気吸着せず、操作部の操作が許容される。このとき、電磁石が通電状態となっているので、電磁石と磁性体とが磁気吸着することから、この磁性体と一体になっている取付部は筐体側に固定された状態となる。この状態で操作部が操作されると、この時の取付部材は支持部材側に固定状態となっているので、連動部材が取付部材に対して動く状態をとる。このため、取付部材及び支持部材の間にある小節度機構は働かず、一方で連動部材及び取付部材の間にある大節度機構が利く状態となり、操作部に大節度が発生する。
【0015】
さらに、電磁石が順接通電状態となると、電磁石が発生する電磁石磁界と補助磁界発生部材の補助磁界とが同じ向きをとることになる。この時は、電磁石磁界及び補助磁界の合算磁界が操作スイッチに生じるので、この磁界によって磁気吸着部材が筐体に磁気吸着する状態をとって、操作部はそれ以上の操作が制限された固定状態をとることになる。従って、以上の動作状態をとる本構成においては、部品構成を見た場合、取付部品が大節度機構及び小節度発生機構の間で共用部品として使用される形体がとられることになるので、これは操作スイッチ部品の部品点数削減に効果が高い。
【0016】
本発明では、前記補助磁界発生部材は、磁性体から成る前記筐体及び前記操作軸を磁気経路として前記補助磁界を生成し、前記電磁石は、自身の電磁石磁界が前記補助磁界の磁気経路に沿う向きをとるように配置され、前記制御手段は、前記操作部を固定状態に切り換えるに際し、前記電磁石を駆動制御することによって前記筐体及び前記操作軸に生じる前記磁気回路の磁界を切り換えることで行うことを要旨とする。
【0017】
この構成によれば、電磁石が発生する電磁石磁界は、補助磁界発生部材が発生する補助磁界に沿う向きをとることから、操作部の発生節度を切り換えるべく駆動磁界と補助磁界とを重畳するに際して、駆動磁界を補助磁界に利かせ易くなる。このため、節度発生手段及び磁気吸着部材に発生する磁気回路の回路状態をより確実に切り換えることが可能となり、ひいては節度感切り換えをより確実に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、操作スイッチに発生する節度感の切り換えや固定を簡単な処理で行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を具体化した節度切換式スイッチ装置の一実施形態を図1〜図10に従って説明する。
図1に示すように、車両1のセンタークラスター2には、エアーコンディショナー装置、オーディオ装置、カーナビゲーション装置等の各種車載機器の操作系として操作スイッチ装置3が設けられている。本例の操作スイッチ装置3は、ボタン選択操作時における視認性や操作性の向上を目的としてグラフィカルユーザインターフェース(Graphical User Interface:GUI)が使用されている。グラフィカルユーザインターフェース式の操作スイッチ装置3は、センタークラスター2に設けたディスプレイ4に項目ボタン5やアイコン6等をグラフィック表示し、同じくセンタークラスター2に設けた操作スイッチ7でディスプレイ4の項目ボタン5やアイコン6等を選択指定しつつ、その隣の決定スイッチ7aや戻りスイッチ7bを用いて入力操作が行われる。
【0020】
図3に示すように、センタークラスター2のクラスターパネル8の内側には、操作スイッチ7の各種スイッチ部品を収納するスイッチケースとしてヨーク9が取り付け固定されている。ヨーク9は、例えば上部が開口した円筒形状を成し、本例においては磁性体を材質として形成されている。操作スイッチ7がダイヤル操作式の場合、ヨーク9には、スイッチ操作時の操作箇所としてダイヤルノブ10が回動操作可能な状態で取り付けられている。ダイヤルノブ10は、スイッチ操作時の把持部分である略円柱形状のノブ部10aと、そのノブ部10aの底面において同軸位置から垂直方向に一体に伸びるシャフト10bとから成り、ヨーク9の底壁に貫設された挿通孔9aからシャフト10bがその回動動作が許容された状態で外部に突出している。なお、ヨーク9が筐体に相当し、ダイヤルノブ10が操作部に相当する。
【0021】
図3及び図4に示すように、ヨーク9の内部には、ダイヤルノブ10を回動操作した際にそのダイヤルノブ10に節度感を多段で発生可能な多段節度機構11が設けられている。本例の多段節度機構11は、ダイヤルノブ10の小節度(多クリック感)が生じる小節度発生状態と、ダイヤルノブ10に大節度(少クリック感)が生じる大節度発生状態と、ダイヤルノブ10の回動動作が停止つまりダイヤルノブ10が固定となるダイヤルノブ固定状態との3状態の間で、ダイヤルノブ10の節度感を切り換える機構となっている。
【0022】
多段節度機構11を以下に説明すると、ヨーク9の内部には、ダイヤルノブ10に小節度を発生する際に働く小節度発生部材12が、ヨーク9の内周壁面に固着された状態で取り付け固定されている。小節度発生部材12は、例えば樹脂から成るとともに上端が開口した開口円筒形状を成し、常にヨーク9に固定状態をとっている。小節度発生部材12の開口部内周面には、複数の凹凸から成る小節度凹凸パターン13が形成されている。小節度凹凸パターン13は、複数の節度山14及び節度谷15がダイヤルノブ10の回動操作方向に沿って交互に配置された形状パターンをとり、節度山14の突出量が低く設定されている。小節度発生部材12は、その中央位置に平面円形状の挿通孔12aが形成され、この挿通孔12aにシャフト10bが回動可能に挿通されている。なお、小節度発生部材12が支持部材に相当し、小節度凹凸パターン13が節度山部材を構成する。
【0023】
一方、シャフト10bのノブ部寄りの位置には、ダイヤルノブ10に大節度を発生する際に働く大節度発生部材16が、シャフト10bと一体回動可能に取り付け固定されている。大節度発生部材16は、例えば樹脂から成るとともに底面側が開口した片側無底円筒形状を成し、シャフト10bに対して同一軸心位置に配置されている。大節度発生部材16の内周面には、小節度発生部材12と同様に複数の凹凸から成る大節度凹凸パターン17が形成されている。大節度凹凸パターン17は、自身の節度山18の節度谷19に対する高さが小節度凹凸パターン13のそれよりも高く設定されるとともに、節度山18の間隔が小節度凹凸パターン13のそれよりも大きく設定されている。なお、大節度発生部材16が連動部材に相当し、大節度凹凸パターン17が節度山部材を構成する。
【0024】
シャフト10bには、例えば樹脂から成り略円柱形状を成すプランジャケース20が、シャフト10bに対して相対回動可能な状態で連結されている。このプランジャケース20は、小節度発生部材12の開口部と大節度発生部材16の凹部との間にできる収納空間21(図3参照)に配置された取り付け状態をとっている。プランジャケース20には、その中央部に平断面円形状の挿通孔20aが貫設され、この挿通孔20aにシャフト10bが相対回動可能に挿通されている。
【0025】
プランジャケース20には、小節度発生部品として働く小節度ピース22と、大節度発生部品として働く大節度ピース23とが取り付けられている。プランジャケース20の側部において反ノブ部寄りの位置には、小節度凹凸パターン13に向かって開口する第1収納部24が形成されている。この第1収納部24には、小節度発生部品として働く小節度ピース22が、第1付勢部材25の付勢力によってその付勢方向(本例はシャフト直交方向:図4の矢印Ra方向)に相対移動可能で、しかも小節度凹凸パターン13に弾接する状態で収納されている。なお、プランジャケース20が取付部材に相当し、小節度ピース22及び大節度ピース23がピース部品を構成する。
【0026】
一方、プランジャケース20の側部においてそのノブ部寄りの位置には、大節度凹凸パターン17に向かって開口する第2収納部26が形成されている。この第2収納部26には、大節度発生部品として働く大節度ピース23が、第2付勢部材27の付勢力によってその付勢方向(本例はシャフト直交方向:図4の矢印Ra方向)に相対移動可能で、しかも大節度凹凸パターン17に弾接する状態で収納されている。なお、本例においては、小節度凹凸パターン13及び小節度ピース22等の小節度用部品群から成る節度機構を1段目節度機構11aとし、大節度凹凸パターン17及び大節度ピース等の大節度用部品群から成る節度機構を2段目節度機構11bとする。
【0027】
小節度発生部材12の内部には、周囲にコイル磁界を発生可能なコイル部材28が、小節度発生部材12の内部に収納された状態で取り付け固定されている。このコイル部材28は、例えば銅線等を多数回に亘り巻回することにより形成されたコイル29と、鉄やニッケル等の磁性体から成りコイル29の巻付箇所となるコイル磁性体30とから成るとともに、小節度発生部材12つまりはヨーク9に対して常に固定状態をとっている。コイル部材28は、その中央位置に平断面円形状の挿通孔28aが貫設され、この挿通孔28aにシャフト10bが相対回動可能な状態で挿通されている。コイル29は、巻線の巻回方向がシャフト10bの軸心回りとなっているとともに、自身に電流が流された際には操作スイッチ7の内部にコイル磁界Hb(図7〜図9参照)を発生する。
【0028】
プランジャケース20の底面には、例えば鉄やニッケル等の磁性体から成るプランジャ磁性体31が、プランジャケース20と一体回動可能に固着されている。このプランジャ磁性体31は、コイル部材28と接触する位置に配置され、コイル部材28が通電状態となって磁界を発生すると、この磁界によりコイル部材28に吸着してプランジャケース20の回動動作を規制する。プランジャ磁性体31は、その中央位置に平断面円形状の挿通孔31aが貫設され、この挿通孔31aにシャフト10bが相対回動可能な状態で挿通されている。プランジャ磁性体31の側部には、ダイヤルノブ10の回動操作方向全域に亘り抜止片32が突設され、小節度発生部材12及びコイル部材28の間にできた溝部33(図3参照)にこの抜止片32を相対回動可能な状態で係止することによってプランジャケース20の抜け止めがなされている。なお、コイル29が電磁石に相当し、プランジャ磁性体31が磁性体に相当する。
【0029】
シャフト10bの反ノブ部側の端部には、例えば鉄やニッケル等の磁性体から成るシャフト磁性体34が、シャフト10bと一体回動可能に取り付け固定されている。シャフト磁性体34は、シャフト10bと同一軸心をとるように取り付けられ、ヨーク9の内壁底面に接触する取り付け状態をとっている。シャフト磁性体34は、ヨーク9に強い磁力が発生した際にこれに吸着することでシャフト10bの回動動作を規制する部材である。このため、シャフト磁性体34は、大径部34a及び小径部34bから成る段を有した形状を成し、このような形状をとることによって、シャフト磁性体34とヨーク9の内壁底面との間の接触面S(図3参照)の充分な接触面積が確保されている。なお、シャフト磁性体34が磁気吸着部材に相当する。
【0030】
また、ヨーク9の開口端部位置には、略平板形状を成す永久磁石35が、ヨーク9の開口端部を閉じるように取り付け固定されている。この永久磁石35は、半径方向外側がN極で中央側がS極となった磁石であって、例えば鉄、ニッケル、コバルト等の磁性体を材質として形成されている。永久磁石35は、その中央位置に平面円形状の挿通孔35aが貫設され、この挿通孔35aにシャフト10bが回動可能に挿通されている。永久磁石35の磁石磁界Ha(図7〜図9参照)は、ヨーク9、シャフト10b及びシャフト磁性体34が磁性体であることから、これら部品が磁界発生時の磁気経路となっている。なお、永久磁石35が補助磁界発生部材に相当する。
【0031】
なお、本例のダイヤルノブ10に生じる節度の切り換えは、広い意味においてダイヤルノブ10を回動操作した際にダイヤルノブ10に生じるクリック感の変更や、ダイヤルノブ10を回動操作する際の操作重さに相当する節度強度の変更を含む。即ち、節度を大きくすると記載した場合は、クリック感や節度強度を大きくすることを意味し、節度を小さくすると記載した場合は、クリック感や節度強度を小さくすることを意味する。また、クリック感変更は主に隣同士に位置する節度山14(18)の間隔が関係し、節度強度変更は主に節度山14(18)の高さ、節度ピース22(23)の大きさ、付勢部材25(27)の付勢力が関係してくる。
【0032】
図2及び図3に示すように、ダイヤルノブ10のシャフト10bにおいてその下端には、ダイヤルノブ10の回転量(回転数)を検出するエンコーダ36が取り付けられている。エンコーダ36は、例えば回転検出出力値をパルス信号で出力するパルスエンコーダから成り、ダイヤルノブ10の回転を検出するに際し、その時のダイヤルノブ10の回転量に応じたパルス数の検出信号を出力可能である。なお、決定スイッチ7a、戻りスイッチ7b及びエンコーダ36が検出手段を構成する。
【0033】
図2に示すように、操作スイッチ装置3には、操作スイッチ装置3のコントロールユニットとしてスイッチコントローラ37が設けられている。スイッチコントローラ37は、同スイッチコントローラ37を統括制御するCPU38や、各種プログラム及びデータ群が格納されたROM39や、プログラム動作時の作業領域として使用されるRAM40等から成り、ROM39内の制御プログラムにより動作する。スイッチコントローラ37には、電気配線を通じてエンコーダ36が接続されている。スイッチコントローラ37は、エンコーダ36から取得する検出信号を用いてダイヤルノブ10の回動操作量を算出し、この回動操作量が必要な他のコントロールユニットにその操作量情報を供給したり、或いはディスプレイ4の表示画面を表示制御したりする。
【0034】
スイッチコントローラ37は、ダイヤルノブ10の操作時に操作者が行う各種操作に基づきコイル29の通電状態を制御することにより、コイル29から発生する磁界の発生方向や発生有無を切り換えることで、ダイヤルノブ10に発生する節度感を切り換え制御する。即ち、スイッチコントローラ37は、コイル29に非通電、逆接通電及び順接通電の何れかの通電状態を取らせることにより、この時にコイル29から生成されるコイル磁界Hbと永久磁石35が発生する磁石磁界Haとを協同させて、ダイヤルノブ10に生じる節度感を、小節度発生状態、大節度発生状態及び固定状態の3状態の間で切り換える。なお、スイッチコントローラ37が制御手段に相当する。
【0035】
次に、本例の操作スイッチ装置3の作用を説明する。
車両1のイグニッションスイッチ(図示略)がACC位置やIG位置に操作されると、スイッチコントローラ37は起動状態となって自身の作動モードを項目ボタン選択モードに設定し、ディスプレイ4に初期動作画面として図6に示すメニュー画面41を表示するとともに、操作スイッチ7を項目ボタン選択スイッチとして認識する。メニュー画面41には、車両1に搭載された各種車両機器の機能設定を行う際に選択指定される複数の項目ボタン5,5…が割り付け表示されている。メニュー画面41に表示される項目ボタン5,5…としては、例えばエアーコンディショナー装置の各種機能を設定する際に選択されるエアーコンディショナー機能設定ボタン5a、カーナビゲーション装置の各種機能を設定する際に選択されるカーナビゲーションボタン5b、オーディオ装置の各種機能を設定する際に選択されるオーディオボタン5c等がある。
【0036】
ここで、メニュー画面41で項目ボタン5を選択指定するに際しては、ダイヤルノブ10でディスプレイ4上の選択座標位置Pxを移動させてボタンフォーカス42を所望の項目ボタン5に位置させ、その位置合わせの後、センタークラスター2に設置された決定スイッチ7a(図1及び図2参照)を押下操作することにより行う。スイッチコントローラ37は、決定スイッチ7aの選択操作を認識すると、決定スイッチ7aが操作される直前に選択座標位置Pxが位置していた項目ボタン5を操作要求ボタンとして認識し、その操作要求ボタンが有する機能に応じた各種処理を車両1に実施させる。
【0037】
ところで、1つの操作スイッチ7を複数の選択機能間で共用する本例の操作スイッチ装置3では、各々の選択機能(表示画面やノブ回動操作位置も含む)で選択対象や選択項目が異なることから、各選択機能に応じてダイヤルノブ10に発生する節度強さを変えることでこれに対応することが好ましい。そこで、本例の操作スイッチ7には、ダイヤルノブ10に節度感を多段で発生し得る節度機構11が設けられているが、この種の節度機構11においては、各節度機構11a,11bごとに発生節度が異なることから、スイッチ操作時に所望の節度機構11a,11bを駆動状態とすることによりこれに対応する。
【0038】
例えば、ディスプレイ4にメニュー画面41が表示されている時はダイヤルノブ10に小節度が発生すると設定されている場合、スイッチコントローラ37は、ディスプレイ4にメニュー画面41を表示する際、この画面表示とともにコイル29を非通電状態にする。この時の操作スイッチ7には、図7(a)に示すように、永久磁石35が発生する磁石磁界Haのみが作用する磁気回路が生じる状態となり、この磁石磁界Haがヨーク9、シャフト磁性体34及びシャフト10bを至って永久磁石35に戻る磁気経路をとることになる。
【0039】
ところで、コイル29が非通電の際、ヨーク9及びシャフト磁性体34との間の接触面Sには、コイル磁界Hbに起因する吸引力が発生するが、永久磁石35はそれ単独では弱い磁界しか発生できない磁石を用いていることから、この場合は接触面Sに磁石磁界Haによる吸引力が発生するものの、これは非常に弱い吸引力であることから、シャフト10bの回動操作は無理なく許容される。また、コイル29が非通電の場合は、プランジャ磁性体31がコイル部材28に磁力で吸着する動作はとらないことから、プランジャケース20のヨーク9に対する回動動作が許容される。よって、この時は、図7(b)に示すように、ダイヤルノブ10、大節度発生部材16、プランジャケース20及びプランジャ磁性体31の部品群が回動動作の許容された部品群となり、これ以外がヨーク9側に固定された部品群(図7の点で示す部品群)となる。
【0040】
また、大節度ピース23及び大節度凹凸パターン17の間の噛合抵抗は、小節度ピース22及び小節度凹凸パターン13の間のそれよりも大きいことから、コイル29の非通電時にダイヤルノブ10が回動操作された際には、プランジャケース20(プランジャ磁性体31も含む)がダイヤルノブ10(シャフト10b)と一体回動する動きをとる。よって、ダイヤルノブ10の回動操作に伴って小節度ピース22が小節度凹凸パターン13の節度山14を順次乗り越える動きをとることから、1段目節度機構11aが駆動状態となるので、ダイヤルノブ10には1段目節度機構11aが持つ小節度の節度感が発生する。
【0041】
一方、ディスプレイ4にメニュー画面41が表示されている時はダイヤルノブ10に大節度が発生すると設定されている場合、スイッチコントローラ37は、ディスプレイ4にメニュー画面41を表示する際、この画面表示とともにコイル29を逆接通電状態にする。なお、ここで記載した逆接通電とは、コイル通電時にコイル29に発生するコイル磁界Hbが、永久磁石35の磁石磁界Haとは反対向きをとる状態にコイル29を通電することからこのように言う。この場合は、図8(a)に示すように、コイル29には磁石磁界Haと反対の磁界向きを持つコイル磁界−Hbが発生するので、この時の操作スイッチ7には、永久磁石35の磁石磁界Haからコイル磁界Hbを減算した減算磁界H1が発生する磁気回路が生じ、この減算磁界H1が接触面Sに作用する状態となる。
【0042】
ところで、この時も接触面Sには磁界発生に起因する吸引力が生じる状態となるが、この時に接触面Sに生じる発生磁界は永久磁石35の磁石磁界Haとコイル29のコイル磁界Hbとを減算した磁界強度の低い減算磁界H1が付与されることになるので、この時も接触面Sには磁界発生による吸引力が発生するものの、これは非常に弱い吸引力であることから、シャフト10bの回動操作は無理なく許容される。また、コイル29が通電状態(ここでは逆接通電)となった際は、プランジャ磁性体31がコイル部材28にその磁力で吸着する動作をとるので、プランジャケース20がヨーク9側に固定状態となる。よって、この時は、図8(b)に示すように、ダイヤルノブ10及び大節度発生部材16の部品群が回動動作の許容された部品群となり、これ以外がヨーク9側に固定された部品群(図8(b)の点で示す部品群)となる。
【0043】
よって、コイル29が逆接通電された際にダイヤルノブ10が回動操作されると、その回動操作に伴って大節度発生部材16がプランジャケース20に対して相対回動する動きをとる。このため、ダイヤルノブ10の回動操作に伴って大節度ピース23が大節度凹凸パターン17の節度山18を順次乗り越える動きをとることから、2段目節度機構11bが駆動状態となるので、ダイヤルノブ10には2段目節度機構11bが持つ大節度の節度感が発生する。
【0044】
メニュー画面41でエアーコンディショナー機能設定ボタン5aが選択決定操作されると、スイッチコントローラ37は、自身の作動モードをエアーコンディショナー機能設定モードとし、ディスプレイ4にエアーコンディショナー装置の詳細機能設定画面として図6に示すエアーコンディショナー機能設定画面43を表示するとともに、操作スイッチ7をエアーコンディショナー機能スイッチとして認識する。このエアーコンディショナー機能設定画面43には、エア吹出口を切り換える際に選択されるブロアボタン44と、エアの風量設定時に選択される風量設定ボタン45と、エアの送風温度設定時に選択される送風温度設定ボタン46とが割り付けられている。なお、これらボタン44〜46の選択決定操作は、メニュー画面41の項目ボタン5の選択決定時と同じであり、この時にダイヤルノブ10に発生される節度は大小の何れかの節度に設定される。
【0045】
エアーコンディショナー機能設定画面43でブロアボタン44が選択指定された場合、このボタン選択決定操作を検出したスイッチコントローラ37は、自身の作動モードをブロア機能設定モードとし、ディスプレイ4に図6に示すブロア設定画面47を表示するとともに、操作スイッチ7をブロア機能設定スイッチとして認識する。このブロア設定画面47には、各ブロア機能に対応したブロア機能画像47a,47a…が画像表示され、その時に選択状態にあるブロア機能は画面上のブロア機能画像47aが矢印47bで指定表示されることによって通知されている。このとき、ダイヤルノブ10の回動操作によりブロア機能の選択状態が切り換えられると、ブロア設定画面47上の矢印47bの表示位置もその選択指定後のブロア機能位置に応じて切り換え表示される。
【0046】
エアーコンディショナー機能設定画面43で風量設定ボタン45が選択指定された場合、このボタン選択決定操作を検出したスイッチコントローラ37は、自身の作動モードを風量設定モードとし、ディスプレイ4に図6に示す風量設定画面48を表示するとともに、操作スイッチ7を風量設定スイッチとして認識する。この風量設定画面48には、風量をイメージした風量画像48aが画像表示され、その時に選択状態にあるエア風量は風量画像48aがその設定風量位置で矢印48bにより指定表示されることによって通知されている。このとき、ダイヤルノブ10の回動操作によりエア風量の選択状態が切り換えられると、風量設定画面48上の矢印48bの表示位置もその選択指定後の風量に応じて切り換え表示される。
【0047】
エアーコンディショナー機能設定画面43で送風温度設定ボタン46が選択指定された場合、このボタン選択決定操作を検出したスイッチコントローラ37は、自身の作動モードを送風温度設定モードとし、ディスプレイ4に図6に示す送風温度設定画面49を表示するとともに、操作スイッチ7を送風温度設定スイッチとして認識する。この送風温度設定画面49には、エア送風温度をイメージした送風温度画像49aが画像表示され、その時に選択状態にある送風温度は送風温度画像49aがその送風温度設定位置で矢印49bにより指定表示されることによって通知されている。このとき、ダイヤルノブ10の回動操作によりエア送風温度の選択状態が切り換えられると、送風温度設定画面49上の矢印49bの表示位置もその選択指定後の送風温度に応じて切り換え表示される。
【0048】
スイッチコントローラ37は、ディスプレイ4にこれら各種画面47〜49を表示する際も、ダイヤルノブ10に発生する節度感をこれら画面47〜49に応じた節度強さに設定する。例えば、この種のブロア機能は選択項目数が比較的少ないことから、ディスプレイ4にブロア設定画面47を表示する際には、1段目節度機構11aを駆動状態にしてダイヤルノブ10に小節度を発生させる。この時は、ブロア機能を隣の機能に切り換える度に、ダイヤルノブ10に1クリックの操作感が生じる状態となり、ブロア選択機能段数とダイヤルノブ10のクリック数とが対応する状態となる。また、風量設定機能や送風温度設定機能はブロア機能に比べて選択項目数が多いことから、この場合は2段目節度機構11bを駆動状態にして、これに対応する。
【0049】
また、ディスプレイ4の表示画面がダイヤルノブ10の回動操作を禁止する画面となった場合、スイッチコントローラ37は、ディスプレイ4にこの種の表示画面を表示する際、この画面表示ととともにコイル29を順接通電状態にする。なお、ここで記載した順接通電とは、コイル通電時にコイル29に発生するコイル磁界Hbが、永久磁石35の磁石磁界Haと同じ向きをとる状態に通電することを言い、逆接通電の時とは正負逆向きで同量の電流をコイル29に流すことによって実施される。この時の操作スイッチ7には、図9(a)に示すように、コイル29が発生する順接向きのコイル磁界Hbと永久磁石35の磁石磁界Haとを合算した合算磁界H2が発生する磁気回路が生じ、この合算磁界H2が接触面Sに作用する状態となる。
【0050】
よって、コイル順接通電時、接触面Sには磁石磁界Ha及びコイル磁界Hbが重畳した合算磁界H2という非常に強い磁界が発生することから、この合算磁界H2による吸引力でシャフト磁性体34がヨーク9に非常に強い力で吸着し、ダイヤルノブ10がヨーク9に固定状態となる。このため、図9(b)に示すように、ダイヤルノブ10を含むほぼ全ての部品がヨーク9側に固定された部品群(図9(b)の点で示す部品群)となる。これにより、コイル29が順接通電された際にダイヤルノブ10を回動操作しようとしても、この時はダイヤルノブ10がヨーク9に固定状態となっていることから、ダイヤルノブ10を回動操作することはできず、操作スイッチ7は操作禁止状態となる。
【0051】
また、一般的なブロア機能設定スイッチは、ダイヤルノブ部分が所定範囲内でのみ回動操作可能な回動操作範囲限定スイッチであることが多く、本例の操作スイッチ7がブロア機能設定用として用いられる際は、一般的な使用形態から見ても、操作スイッチ7に回動操作制限を持たせることが好ましい。よって、スイッチコントローラ37は、ダイヤルノブ10の回動操作方向の一端位置にあるブロア機能(前面吹出口)と、同じくその回動操作方向の他端位置にあるブロア機能(除湿機能位置)との各々を、ダイヤルノブ停止位置として認識し、ダイヤルノブ10がこれらダイヤルノブ停止位置に位置した際にはダイヤルノブ10をそれ以上回動操作できなくする。
【0052】
即ち、スイッチコントローラ37は、ダイヤルノブ10がこれらダイヤルノブ停止位置に位置した際、このタイミングでコイル29を順接通電することにより、ダイヤルノブ10を固定状態にしてダイヤルノブ10の回動操作を禁止する。これにより、ダイヤルノブ10がそれ以上回動操作できなくなることから、操作スイッチ7が回動操作範囲限定スイッチとして機能することになる。また、これは風量設定系や送風温度設定系の時も同様に言える事である。
【0053】
なお、実際のダイヤルノブ停止位置は、図10に示すように、節度ピース22(23)が節度山14(18)の斜面を登る途中位置Xaに設定されている。これは、ダイヤルノブ10が固定状態となった後に、節度ピース22(23)が付勢部材25(27)の付勢力により節度山14(18)の斜面を滑り落ちて、ダイヤルノブ10を若干量だけ戻し回動させることにより、ダイヤルノブ10の位置をダイヤルノブ停止位置である途中位置Xaからずらさせて、ダイヤルノブ10を非固定状態に復帰させるためである。このようにすれば、ダイヤルノブ10がダイヤルノブ停止位置に到達して固定状態となった後も、問題なく固定状態の解除が行え、ダイヤルノブ10の続き回動操作が可能となる。
【0054】
従って、本例においては、操作スイッチ7のケース部品を一部を成す永久磁石35の磁石磁界Haを利用し、この磁石磁界Haと節度感切換用のコイル29が発生するコイル磁界Hbとを協同させて、ダイヤルノブ10に発生する節度感とその固定との切り換えを行う。よって、ダイヤルノブ10に発生する節度を、大節度、小節度及び固定状態との3段階の間で自由に切り換えることが可能となり、本例のように1つのダイヤルノブ10を複数の選択機能間で共用する場合であっても、機能ごとに異なる節度を発生させれば、操作スイッチ7が各々の選択機能に対応した操作スイッチとなり、これはスイッチ操作感向上に効果が高い。
【0055】
また、本例の多段節度機構11は、ダイヤルノブ10に発生する節度を大節度、小節度及び固定状態の3段階で切り換えるに際し、永久磁石35が発生する磁界をアシスト磁界(補助磁界)として利用して節度を切り換える機構である。従って、この種の永久磁石35についてはスイッチコントローラ37による制御は不要であり、しかもダイヤルノブ10の節度感を切り換えるに際しては、コイル29の通電方向を変えたり、又は電流を流さなくしたりするだけの制御処理で済むことになるので、簡単な制御処理でダイヤルノブ10の節度の切り換えが可能となる。
【0056】
本実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)本例の多段節度機構11は、永久磁石35が発生する磁界をアシスト磁界として利用して、ダイヤルノブ10に発生する節度を大節度、小節度及び固定状態の3段階で切り換える節度を切り換える機構である。従って、節度切り換えに際してはコイル29の通電方向を変えたり電流を流さなくしたりするだけの制御処理で済むことになるので、簡単な制御処理でダイヤルノブ10の節度を切り換えることができる。
【0057】
(2)本例の多段節度機構11は、小節度を発生する1段目節度機構11aと大節度を発生する2段目節度機構11bとでプランジャケース20を共用する機構をとっているので、この種のケース部品に必要は部品数が少なく済ますことができ、装置サイズ小型化や部品コスト削減を図ることができる。
【0058】
(3)永久磁石35の磁石磁界Haが通る磁気経路として操作スイッチ7のヨーク9及びシャフト10bを用い、コイル29から発生するコイル磁界Hbが磁石磁界Haの磁気経路に沿う向きをとるようにコイル29を配置した。このため、永久磁石35の磁石磁界Haとコイル29のコイル磁界Hbとを重畳するに際して、コイル磁界Hbを磁石磁界Haに利かせ易くなるので、ダイヤルノブ10の回動操作の許可や不許可をより確実に行うことができる。
【0059】
(4)ダイヤルノブ10が回動操作される際、その回動操作位置がダイヤルノブ10の回動操作を規制するノブ回動停止位置に到達した時に、それまで回動操作が許容されていたダイヤルノブ10を固定状態にする節度切り換えを行えば、そのノブ回動停止位置でダイヤルノブ10に壁のような感覚を持たせることができる。これにより、この種の回動操作範囲無制限の操作スイッチ7を回動操作範囲が限定された回動操作範囲限定スイッチとして使用することもできる。
【0060】
(5)本例の操作スイッチ装置3は、各種項目ボタン5をディスプレイ4上に表示して、これをダイヤルノブ10を用いて選択操作することによりボタン選択決定操作を行うGUIが使用されている。このため、1つのダイヤルノブ10を複数のスイッチ選択機能の間で共用する構造をとっても、この場合はその時に稼働状態となっている選択機能ではダイヤルノブ10をどの操作量範囲や選択項目の中で選択可能なのかを操作者に通知することができる。よって、操作者は操作スイッチ7を操作する際にどの操作位置に操作してよいのかを認識することができ、操作スイッチ7の高い操作性を確保することができる。
【0061】
なお、実施形態はこれまでの構成に限定されず、以下の態様に変更してもよい。
・ 多段節度切換機構は、必ずしも複数の節度感で1つのプランジャケース20を共用する構造に限定されない。例えば、各節度機構11…が各々ケースを持った独立したユニットとして形成され、これを各々専用のコイルで吸着有無を切り換えることで駆動状態を切り換える構造でもよい。また、この構造を用いた場合は、節度機構の段数は必ずしも2段に限らず、これを3段以上としてもよい。
【0062】
・ ダイヤルノブ10側に凹凸パターン13(17)が形成され、ヨーク9側に節度ピース22(23)が形成されることに限定されず、この組み合わせを逆にしてもよい。
・ 凹凸パターン13(17)と節度ピース22(23)の位置関係は、ダイヤルノブ10の半径方向内側に節度ピース22(23)が位置し、半径方向外側に凹凸パターン13(17)が位置することに限定されず、この配置関係を逆としてもよい。
【0063】
・ 操作スイッチ7はその操作箇所であるダイヤルノブ10を回動方向に操作する回動操作式スイッチに限定されず、例えば操作箇所を横方向に操作するスライド操作式スイッチでもよい。
【0064】
・ 操作スイッチ7の節度感の切り換えは、例えばディスプレイ4がタッチパネル式の場合、このパネルタッチ操作に基づき行われるものでもよいし、或いはダイヤルノブ10の回転操作量をエンコーダ36で見ているので、この回転操作量に基づき行われるものでもよい。
【0065】
・ 各節度機構11a,11bの節度山14(18)の形状及び間隔や、節度ピース22(23)の大きさや、付勢部材25(27)の付勢力等の節度感に関する項目値は適宜自由に設定変更可能である。
【0066】
・ 補助磁界発生部材は、必ずしも永久磁石35に限らず、例えばこれは電磁石でもよい。
・ 節度ピース22(23)は、必ずしも球形状であることに限定されず、例えばプランジャケース20からの脱落を防ぐ抜止部を持つ形状でもよい。
【0067】
・ 本例の操作スイッチ装置3は、必ずしも車両に搭載されるスイッチ装置に限らず、例えば電化製品などの操作系を有するスイッチ装置であれば、その搭載対象は特に限定されない。
【0068】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
(1)請求項1〜3のいずれか一項において、前記検出手段の検出量を基に前記操作部の選択機能を切り換える機能切換手段と、当該機能切換手段が設定した選択機能に基づき前記制御手段が前記操作部の操作可否を制御する際に、当該選択機能に応じた表示画面を表示手段に画像表示する表示制御手段とを備えた。この場合、表示手段にはその時々に選択指定された選択機能に応じた表示画面が画像表示されるので、本発明のように1つの操作部を複数の選択機能の間で共用したとしても、その時に選択指定されている選択機能では操作部をどの操作量範囲や選択項目で選択操作可能かを表示手段に表示することが可能となり、操作部で操作可能な詳細を各々の選択機能ごとに操作者に通知することが可能となる。よって、操作者は操作部を操作する際にどの操作位置に操作してよいのかを認識できない状況にならずに済み、これは操作部の操作性確保に効果が高い。
【0069】
(2)請求項1〜3及び前記技術的思想(1)のいずれか一項において、前記補助磁界発生部材は永久磁石である。この場合、例えば補助磁界発生部材として電磁石を用いた場合、この電磁石の通電制御が必要となるが、本構成のように電磁石を用いれば、この種の通電制御は不要となり、操作部の節度感や固定状態の切り換えを行う際の制御処理の簡素化に効果が高い。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】一実施形態における車内の斜視図。
【図2】操作スイッチ装置の装置構成を示す概略構成図。
【図3】節度切換機構を持った操作スイッチの内部構成を示す縦断面図。
【図4】節度切換機構を持った操作スイッチの部品群を示す分解斜視図。
【図5】ディスプレイに表示されるメニュー画面の画面図。
【図6】ディスプレイに表示されるエアーコンディショナー機能設定画面の画面図。
【図7】(a),(b)は操作スイッチに小節度を発生する際の動作説明図。
【図8】(a),(b)は操作スイッチに大節度を発生する際の動作説明図。
【図9】(a),(b)は操作スイッチを固定状態とする際の動作説明図。
【図10】ダイヤルノブの回動操作を停止する際の動作説明図。
【符号の説明】
【0071】
7…操作スイッチ、7a…検出手段を構成する決定スイッチ、7b…検出手段を構成する戻りスイッチ、9…筐体としてのヨーク、10…操作部としてのダイヤルノブ、10b…操作軸、11…節度機構(多段節度機構)、11a…1段目節度機構、11b…2段目節度機構、12…支持部材としての小節度発生部材、13…節度山部材としての小節度凹凸パターン、16…連動部材としての大節度発生部材、17…節度山部材としての大節度凹凸パターン、20…取付部材としてのプランジャケース、22…ピース部材としての小節度ピース、23…ピース部材としての大節度ピース、29…電磁石としてのコイル、31…磁性体としてのプランジャ磁性体、34…磁気吸着部材としてのシャフト磁性体、35…補助磁界発生部材としての永久磁石、36…検出手段を構成するリニアエンコーダ、37…制御手段としてのスイッチコントローラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作スイッチの操作部を操作することで当該操作スイッチの選択機能操作が行われ、前記操作部が操作される際に当該操作部に発生する節度感を切り換え可能な節度切換式スイッチ装置において、
節度山部材及びピース部材が相対回動することで節度が発生し、前記操作スイッチの筐体側に位置する電磁石を用い、その磁気吸着作用によって節度山部材及びピース部材の一方を前記筐体側に固定することで複数の節度の中から特定のものを選択的に発生する節度機構と、
前記電磁石が発生する磁気回路に補助磁界を付与可能な補助磁界発生部材と、
自身に大きな磁界が付与された際にその時の磁気吸着作用により前記操作部の操作軸を固定し得る磁気吸着部材と、
操作者が前記操作部を操作する際に行う操作状態を検出する検出手段と、
前記検出手段の検出量を基に前記電磁石を駆動制御することにより、前記電磁石及び前記補助磁界発生部材によって前記筐体内に生じる磁気回路の回路状態を切り換えて前記操作部の節度感や固定状態を切り換える制御手段と
を備えたことを特徴とする節度切換式スイッチ装置。
【請求項2】
前記節度機構は、前記操作軸と同一可動する連動部材と、前記操作軸に対して相対可動可能な状態で取り付けられた取付部材と、前記筐体側に固定された支持部材とを備え、前記連動部材及び取付部材の間に大節度用の部品群が位置し、前記取付部材及び支持部材の間に小節度用の部品群が位置し、しかも前記電磁石に磁気吸着可能な磁性体が前記取付部材に一体取り付けされた構造であって、
前記制御手段は、前記電磁石の駆動状態を非通電、逆接通電及び順接通電の間で切り換えることにより、前記電磁石及び前記磁性体間の磁気吸着状態と前記磁気吸着部材及び前記筐体間の磁気吸着状態と各々異なる状態に変更して前記節度感及び固定状態の切り換えを行うことを特徴とする請求項1に記載の節度切換式スイッチ装置。
【請求項3】
前記補助磁界発生部材は、磁性体から成る前記筐体及び前記操作軸を磁気経路として前記補助磁界を生成し、
前記電磁石は、自身の電磁石磁界が前記補助磁界の磁気経路に沿う向きをとるように配置され、
前記制御手段は、前記操作部を固定状態に切り換えるに際し、前記電磁石を駆動制御することによって前記筐体及び前記操作軸に生じる前記磁気回路の磁界を切り換えることで行うことを特徴とする請求項2に記載の節度切換式スイッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−198370(P2008−198370A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−29190(P2007−29190)
【出願日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】