説明

米粉パンの製造方法および米粉パン

【課題】増粘多糖類などの食品添加物を使用せずとも、硬くなりにくく、劣化もしにくい米粉パンおよび米粉パンの製造方法を提供することにある。
【解決手段】米粉100g、膨化米1〜20g、砂糖0.5〜10g、塩0.5〜2.5g、酵母1〜5g、温水50〜100g及び裏ごしした野菜種5〜30gを良く混ぜ合わせ、生地の温度が30〜35℃がなるようにしてパン生地を作り、ケースに入れて発酵させ、蓋をして、100〜250℃で10〜40分、蓋をとって160〜250℃で、10〜30分焼く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小麦粉や小麦由来のグルテンを使用しない、米粉からなる米粉パン及び米粉パンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、小麦粉に対しアレルギー(以下「小麦粉アレルギー」と言う)を引き起こす人が急増している。小麦粉にはアレルギーを引き起こすタンパク質が含まれているからであり、小麦粉アレルギーを引き起こす人はパンを食べることが出来ない。
【0003】
そこで、パンを食べると小麦粉アレルギーを引き起こす人のために、小麦粉や小麦由来のグルテンを使用せず、米粉から作った米粉パンなるものが開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この特許文献1に記載の米粉パンは、小麦粉を100%米粉に置き換えて製造される米粉パンであり、小麦粉や小麦由来のグルテンを使用していないので、小麦粉アレルギーの人でも食することが出来る。
【0005】
しかしながら、このような従来の小麦粉や小麦由来のグルテンを使用しないノングルテンの米粉パンは、米の性質上硬くなり、劣化も速いという問題がある。出来立てであれば米粉パンも柔らかいが、翌日になるとどうしても硬くなってしまう。
【0006】
硬くなるのを防止する技術としては、従来、増粘多糖類、具体的には、海藻から取れるカラギーナン・寒天、かんきつ類に含まれるペクチン、キャベツに含まれるキサンタンガムなどを添加する手法がある。増粘多糖類は、今のところ安全性において問題視はされていない食品添加物であるが、食品添加物が加えられていることを嫌がる消費者も少なくない。
【0007】
【特許文献1】特開2006―288377号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、増粘多糖類などの食品添加物を使用せずとも、硬くなりにくく、劣化もしにくい米粉パンおよび米粉パンの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、小麦粉や小麦由来のグルテンを含有しない米粉パンの製造方法であって、少なくとも、生の野菜を加熱調理してα化した野菜種と、米粉と、を混合してパン生地を作成するパン生地作成工程と、該パン生地を発酵させる発酵工程と、該発酵させたパン生地を加熱調理する加熱工程と、を有することを特徴とする。
【0010】
「米粉パン」とは、従来からある小麦粉使用のパンではなく、米の粉を主原料とし、かつ小麦粉や小麦由来のグルテンなどを使用せずに作られたパン、厳密に言うとパンのような形態をした食品である。また、米粉とは、生米の粉であり、例えば、玄米又はうるち米を洗って水に浸漬した後乾燥させてから粉末化した米粉や、無洗米をそのまま粉砕した米粉など任意の品種や性状の生米を任意の方法で粉末化した生米粉が使用できる。
【0011】
また、「生の野菜を加熱調理してα化」とは、生の野菜をすりおろした後、煮たり、そのままを蒸したり、茹でたりすることによって、生の野菜に対し熱を加えて調理し、最終的にα化することを意味し、このα化したものをここでは「野菜種」と称している。なお、加熱調理する際には、水分の多い野菜である場合には、加水する必要はないが、水分の少ない野菜の場合には少量の水分を加えると好適である。
【0012】
前記野菜種は、裏ごしした後、米粉と混合されるようにしてもよい。野菜種を裏ごしして加えると舌触りがよくなるし、混ざり易くもなる。
【0013】
前記生の野菜は、じゃがいも、さつまいも、かぼちゃ、やまいもあるいはレンコンなどの澱粉の含有率が高い野菜であってもよい。
【0014】
前記パン生地作成工程は、更に、膨化米を混合してパン生地を作成するようにしてもよい。ここで、膨化米を混合させることで、より良好なパン生地が製造できる。
【0015】
前記加熱工程は、前記発酵させたパン生地を、蒸す工程あるいは炊飯器により炊飯処理する工程であってもよい。
【0016】
また、本発明は、小麦粉や小麦由来のグルテンを含有しない米粉パンであって、少なくとも、生の野菜を加熱調理してα化した野菜種と、米粉と、を混合してパン生地を作成し、該作成されたパン生地を発酵させ、該発酵させたパン生地を加熱調理してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように本発明によれば、少なくとも、生の野菜を加水・加熱調理してα化した野菜種と、米粉と、を混合してパン生地を作成するようにした。これにより、米粉パンが、増粘多糖類などの食品添加物を使用せずとも、硬くなりにくく、劣化もしにくくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態に係る米粉パンの製造方法について説明するが、以下に記載する米粉パンの製造方法及び材料は1つの実施形態に過ぎずこれに限定されるものではない。なお、本発明の米粉パンの実施形態については、下記米粉パンの製造方法を実施すれば製造することが出来るので詳細な説明は省略する。
【0019】
<パン生地の材料>
パン生地の材料として以下の材料を用意する。


【0020】
<野菜種の作り方>
まず、下準備として、野菜種を作る。野菜種としては、じゃがいも,サツマイモ,かぼちゃ,やまいも,レンコンなどの澱粉が多い生の野菜を用いる。すりおろした後野菜種1に対し、0〜1の水を加えて加熱調理しα化する。野菜種に用いる生の野菜が水分を多く含んでいる場合には、水を加えず調理してよいが、通常は水分を加えて調理することが好適である。また、生の野菜は、細かく刻んで加熱調理してもよいし、例えば、じゃがいもであれば皮を剥いた状態でそのまま蒸し器で蒸したり、茹でたりした後、マッシュしてもよい。なお、上記方法により作られた野菜種をそのまま米粉に混合してもよいが、裏ごし後に混合した方がパン生地のキメが細かくなるので好適である。
【0021】
<パン生地の作り方>
上記分量の材料である、米粉,膨化米,野菜種,砂糖,塩,酵母及び温水を良く混ぜ合わせて、生地の温度が25〜40℃、より好適には30〜35℃になるようにしてパン生地を作成する。
【0022】
上記のようにしてパン生地は作成されるが、このパン生地を用いてどのようなパンを作るかによって、これ以降の工程が若干異なる。ここでは、極普通のパンタイプ、蒸しパンタイプ及び炊飯器により作るタイプの米粉パンの作り方を以下に説明する。
【0023】
<普通のパンタイプの米粉パンの作り方>
(1)発酵工程
上記パン生地を焼成用ケースに入れて発酵させる。発酵の温度は25〜40℃(より好ましくは30〜35℃)、湿度70〜95%(より好ましくは85〜90%)とし、25〜50分(より好ましくは30〜35分)間発酵させる。発酵の温度、湿度及び時間は、季節によっても異なるし、気温によっても異なるので、パンを作る者が適宜調整する必要がある。
(2)焼成工程
上記焼成用ケースに入った発酵後のパン生地を蓋をした状態で、オーブンに入れて、100〜250℃で10〜40分、更に、蓋をとって160〜250℃で10〜30分焼くと、普通のパンタイプの米粉パンが出来上がる。
【0024】
<蒸しパンタイプの米粉パンの作り方>
上記発酵工程は同様であり、発酵完了後のパン生地を蒸し器に入れて、蒸気が上がってから5〜20分蒸すと蒸しパンタイプの米粉パンが出来上がる。
【0025】
<炊飯器で作るタイプの米粉パンの作り方>
上記発酵工程は同様であるが、炊飯器でご飯を炊くように作るため、発酵工程においては、ケースの代わりに、炊飯器の内釜に入れて発酵させる。そして、パン生地が2倍〜2.5倍に発酵したら、発酵したパン生地が入った状態の内釜を炊飯器に戻してスイッチを入れる。通常の炊飯モード、好ましくは早炊きモードでご飯を炊くようにして炊飯すると当該米粉パンが出来上がる。なお、出来具合や焦げ目を更につけるために、二度焚きをしてもよい。
【0026】
上記のようにして作った米粉パンは、いずれも、作った直後はもちろん、翌日も硬くならず美味しく食することが出来た。また、本発明者においては、じゃがいも,かぼちゃなどを粉砕し粉末状にしたものを使用して米粉パンを作ってみたが、該米粉パンは作った直後は柔らかく美味しく食することが出来たものの、翌日には硬くなってしまい、美味しく食することが出来なかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小麦粉や小麦由来のグルテンを含有しない米粉パンの製造方法であって、
少なくとも、生の野菜を加熱調理してα化した野菜種と、米粉と、を混合してパン生地を作成するパン生地作成工程と、
該パン生地を発酵させる発酵工程と、
該発酵させたパン生地を加熱調理する加熱工程と、を有すること
を特徴とする米粉パンの製造方法。
【請求項2】
前記野菜種は、裏ごしした後、米粉と混合されることを特徴とする請求項1に記載の米粉パンの製造方法。
【請求項3】
前記生の野菜は、じゃがいも、さつまいも、かぼちゃ、やまいもあるいはレンコンなどの澱粉の含有率が高い野菜であることを特徴とする請求項1あるいは2に記載の米粉パンの製造方法。
【請求項4】
前記パン生地作成工程は、更に、膨化米を混合してパン生地を作成することを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載の米粉パンの製造方法。
【請求項5】
前記加熱工程は、前記発酵させたパン生地を、蒸す工程あるいは炊飯器により炊飯処理する工程であることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項に記載の米粉パンの製造方法。
【請求項6】
小麦粉や小麦由来のグルテンを含有しない米粉パンであって、
少なくとも、生の野菜を加熱調理してα化した野菜種と、米粉と、を混合してパン生地を作成し、該作成されたパン生地を発酵させ、該発酵させたパン生地を加熱調理してなること
を特徴とする米粉パン。

【公開番号】特開2010−104306(P2010−104306A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−280656(P2008−280656)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(508327180)株式会社 サラ秋田白神 (1)
【出願人】(503064497)
【Fターム(参考)】