説明

籾及びワラの合理的収穫・移送・利用方法

【課題】籾ないしワラを食用用途、工業用途、飼料用途等に無駄なく効率よく利用することができ、米の食用用途のみならず、工業用途、飼料用途等に関する事業化を可能にし、また、農村における水田の余剰対策に貢献し得る、籾及びワラの合理的収穫・移送・利用方法を提供することを課題とする。
【解決手段】圃場でイネを立毛乾燥させる工程と、前記立毛乾燥させたイネをコンバインで刈り取り、脱穀すると共にカッターでワラを細断処理する工程と、前記細断処理したワラをそのまま圃場に堆積放置して、半日程度自然乾燥させる工程と、前記自然乾燥させたワラの上層部をロールベーラーで拾い上げてベール梱包する工程と、前記自然乾燥させたワラの下層部を圃場還元用に残す工程と、前記ベール梱包したワラをバイオマスプラントに搬送すると共に、前記脱穀により得た乾燥籾を直接又はカントリーエレベーターを介して籾処理・備蓄工場に搬送する工程とから成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、籾及びワラを工業用用途及び食用用途に無駄なく効率よく利用するための、籾及びワラの合理的収穫・移送・利用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来排ワラは、主に畜産用に用いられており、排ワラを畜産用、飼料用として収集する技術は種々提案され、実施されてきているが、排ワラを工業用用途に利用するための好適な収集技術は提唱されていない。排ワラの収集は一般に、ロールベーラーと呼ばれる農業機械を用いて行われている。このロールベーラーは、長ワラ状態で刈り取って寄せ集めた排ワラを、圧縮して円柱状に梱包するものである。
【0003】
このローラーベーラーは、ワラを拾い上げるピックアップ部と、拾い上げたワラを切断する切断部と、切断部で切断されたワラをロール状のベールに成形するベール成形部とから成るが、ピックアップ部から切断部に送られるワラの量が過剰となると、ワラが切断部に詰まって切断部が故障しやすい。そこで、切断部の上流側に、切断部に送られてくるワラの量を規制するための規制部材を設置する提案がなされている(特許文献1:特開平6−181625号公報)。
【0004】
しかし、この規制部材を設けたものにおいても、長ワラ状態にて切り落とし、反転集草して収集することに変わりはなく、その場合、テッダー等による集草作業に手間を要し、また、全量拾い上げようとするため、ローラーベーラー機体内においてワラ詰まりや結束ミスが起こりやすく、更に、梱包が大きく重くなるため、その移送にグローブ等の機械が必要であった。
【0005】
一方、圃場に還元するためにワラは、コンバイン収穫時に圃場に全量切り落とされるが、その大半がコンバインによって踏み潰され、拾い上げ困難な状態になる。また、圃場に還元し切れない分が余ってゴミ化し、それが温室効果の原因となるメタンガスを発生するという問題がある。
【0006】
また、収穫後も籾は、呼吸して自ら品質を劣化させるので、速やかに乾燥する必要があるが、生産者ごとの小型乾燥機ではコストがかかり過ぎるため、共同化してカントリーエレベーター等の大型施設に収納して冷却・乾燥するのが一般である。食用米の場合は、その後、カントリーエレベーターにおいて連続して籾摺りして玄米にし、精米工場へ出荷する。
【0007】
そして、食用以外の工業米や飼料用米、長期備蓄米は籾備蓄の必要性があるが、カントリーエレベーターからは玄米出荷しかできず、また、大型サイロは、食用米と混合するために備蓄用に使用することができない。更に、備蓄米等、乾燥籾で長期フレコン(フレキシブルコンテナ、即ち、袋)保管するための技術は提唱されているが(特許文献2:特開2005−328807号公報)、大量の籾を乾燥して出荷し得る施設がなかった。
【0008】
また、従来、大規模に収穫籾を精米するには、乾燥・籾摺り・精米の順の手段と大規模施設や多大のエネルギーが必要であった。また、食用米からの食味や形状などの規制を気にし過ぎるがために、合理的な乾燥調製として玄米乾燥を行うことが取り上げられず、米の中小規模の工業用途、飼料用途等の食料用以外に用いられる米に関する事業化の妨げとなっていた。
【0009】
更に、農村においては水田の余剰対策に、生産調整品目として大豆、野菜、果樹等との輪作や水田放置が交互に行われ、米を作るべき水田は非水田化、放棄化の傾向にあり、水田に米を植えられない状況が起こっている。また、食用米の消費減退や低価格化のため、農村における経済状況も芳しくない方向にある。そして更に、籾米備蓄の必要性はあるものの、倉庫や、籾摺り精米して副産物を有効利用するための設備がないため、地域で有効な籾米備蓄を行ったり、それを回転流通させる方法を実施することが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平6−181625号公報
【特許文献2】特開2005−328807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来、食用用途、工業用途、飼料用途等の籾、並びに、排ワラの処理に際しては、上述したように種々の問題があった。そこで本発明は、そのような問題がなく、籾ないしワラを食用用途、工業用途、飼料用途等に無駄なく効率よく利用することができ、米の食用用途のみならず、工業用途、飼料用途等に関する事業化を可能にし、また、農村における水田の余剰対策に貢献し、延いては農村における経済状況の向上にも寄与し得る、籾及びワラの合理的収穫・移送・利用方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、圃場でイネを立毛乾燥させる工程と、前記立毛乾燥させたイネをコンバインで刈り取り、脱穀すると共にカッターでワラを細断処理する工程と、前記細断処理したワラをそのまま圃場に堆積放置して、半日程度自然乾燥させる工程と、前記自然乾燥させたワラの上層部をロールベーラーで拾い上げてベール梱包する工程と、前記自然乾燥させたワラの下層部を圃場還元用に残す工程と、前記ベール梱包したワラをバイオマスプラントに搬送すると共に、前記脱穀により得た乾燥籾を直接又はカントリーエレベーターを介して籾処理・備蓄工場に搬送する工程とを含むことを特徴とする、籾及びワラの合理的収穫・移送・利用方法である。
【0013】
一実施形態においては、前記カントリーエレベーターに搬入された前記乾燥籾の少なくとも一部は、フレコン収納して前記籾処理・備蓄工場へ搬送され、また、前記籾処理・備蓄工場において、前記フレコン収納された乾燥籾を備蓄する工程を更に含む。
【0014】
また、一実施形態においては、前記籾処理・備蓄工場において、前記カントリーエレベーターを経ることなく搬入された前記乾燥籾をインペラー型籾摺り機を用いて籾摺りすると共に、前記フレコン収納備蓄された乾燥籾をロール式籾摺り機を用いて籾摺りし、得られた精米及び籾殻をそれぞれ前記バイオマスプラントに搬入する工程を更に含む。
【0015】
また、一実施形態においては、前記カントリーエレベーター内に、サイロを経ずに貯留庫と計量機タンクとを直結するバイパス路を設け、食用籾以外の乾燥籾を前記バイパス路を通して出荷可能にする。
【発明の効果】
【0016】
本発明は上述したとおりであって、本発明に係る方法は、全地域圃場に適応でき、イネ種・圃場を選ばずに適用可能であって、籾ないしワラを食用用途、工業用途、飼料用途等に無駄なく効率よく利用することができ、米の食用用途のみならず、工業用途、飼料用途等に関する事業化を可能にし、また、農村における水田の余剰対策に貢献し、延いては農村における経済状況の向上にも寄与し得る効果がある。
【0017】
殊に本発明に係る方法においては、圃場に切り落としたワラは、一定時間天日乾燥させてから収集してベール梱包するので、梱包密度が高くて乾燥したベールとすることができ、該ベールは軽量で搬送が便利な上、積み上げ保管しても、高水分による炭化火災が起きるおそれがないという利点がある。
【0018】
また、短寸に切り落とされるワラは、それを拾い上げるタインから定量が滑り落ちるため、走行速度の遅速によって拾い上げ量を調節することができ、その調節をすることにより、ワラ詰まりや結束ミスを解消することができ、拾い上げ時に地表面に接地し湿潤した排ワラは、滑り落ちて圃場の堆肥となるので、圃場の肥沃化、クリーン化に寄与し得る効果がある。
【0019】
更に、請求項4に係る発明においては、籾状態にてのコメ備蓄が可能であり、請求項5に係る発明においては、食用籾とそれ以外の籾とを混合することなく効率よく処理することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る方法を実施するための全体システム例を示す図である。
【図2】本発明に係る方法において使用するカントリーエレベーターの構成例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明を実施するための形態につき、添付図面を参照しつつ、詳細に説明する。本発明に係る籾の合理的収穫・移送・利用方法は、図1に示されるように、圃場でイネを立毛乾燥させる工程S1と、前記立毛乾燥させたイネをコンバインで刈り取り、脱穀すると共にカッターでワラを細断処理する工程S2と、前記細断処理したワラをそのまま圃場に堆積放置して、半日程度自然乾燥させる工程S3と、前記自然乾燥させたワラの上層部をロールベーラーで拾い上げてベール梱包する工程S4と、前記自然乾燥させたワラの下層部を圃場還元用に残す工程と、前記ベール梱包したワラをバイオマスプラントに搬送すると共に、前記脱穀により得た乾燥籾を直接又はカントリーエレベーター10を介して籾処理・備蓄工場20に搬送する工程S5とを含むことを特徴とするものである。
【0022】
そして、一実施形態においては、カントリーエレベーター10に搬入された乾燥籾の少なくとも一部は、フレコン収納して籾処理・備蓄工場20へ搬送され、また、籾処理・備蓄工場20において、フレコン収納された乾燥籾を備蓄する工程S6を更に含む。以下に、各工程についてより詳細に説明する。
【0023】
立毛乾燥工程
収穫期(出穂後、早稲で約35〜40日、中生で40〜45日、晩生で46〜50日後)になると、籾と枝梗の結部に離層が発達し、茎から籾への水分補給が減少した状態で、籾や茎が自然乾燥(立毛乾燥)する(バイオエタノール用水稲の場合、1ヶ月程度遅らせれば、15%程度まで乾燥する。)が、集落の収穫の共同作業等の関係から、早稲種の晩期刈り等、立毛乾燥を行うためには集落の機械利用組合等の作業日程を一致させる必要がある。出穂から刈取り適期までに、早稲・中生間及び中生・晩生間で5日、早稲・晩生間で10日程度の期間の差を利用することにより、成熟後の立毛乾燥期間が5〜10日は得られる。
【0024】
刈り取り・細断・自然乾燥工程
上記期間立毛乾燥させたイネをコンバインで刈り取り、脱穀すると共にコンバイン内のカッターでワラを、好ましくは、5〜10cmの長さに細断し、落下ガイドで、コンバインのクローラーが通過しない中間位置に落下させる。コンバインは多条刈(4〜5条以上)のものを用い、細断して圃場上に落下させた排ワラを、そのクローラーで踏まないようにする。圃場上に放出した排ワラは、その堆積状態のまま半日程度自然乾燥させる。そして、脱穀して収穫した籾は、後述するように、カントリーエレベーターに送られて処理される。
【0025】
ベール梱包工程
上記自然乾燥の際、地面に近い下層部は湿潤して比重も大きくなるが、その下層部はそのまま残し、天日で乾燥した上層部のみを、通例、クローラータイプの小型自走ロールベーラーを用いて拾い上げる。ここで、排ワラが10cm以上の長ワラである場合は、タイン(排ワラを拾い上げるためのツメ)の集草抵抗が大きくなるために、拾い上げ量が多くなる。即ち、長ワラの場合は、その長さがタイン間の間隙より長く、ピックアップ途中タイン間に跨るために滑り落ちにくい。そのため、ベール成形部への供給量が過剰となって、ワラ詰まりが起きやすくなる。
【0026】
これに対し、本発明の場合の排ワラは、タイン間の間隙より短い5〜10cmの単寸にカットされるため、ワラの端がタインに掛かっても、回転に伴って傾斜状態となって当該タインから外れやすくなるため、ベール成形部への供給量が過剰となることがなく、ワラ詰まりが起きるおそれもない。
【0027】
即ち、タインとワラの接触時間は両者の摩擦力に比例し、力が小さい場合は次のタインに掛かる前に滑り落ちる。タイン先端の周速度が同じであれば、走行速度を上げるほどワラに対する相対周速度Vは速くなり、両者の衝撃力は大きくなる。そして、これに比例して両者の摩擦力も大きくなり、ワラが次のタインに掛かるまで接触している時間が長くなり、斜めになった又は空中に半分浮いた状態で次のタインに掛かることになり、その状態でベール成形部へ送り込まれることになる。ベール成形部へのワラ送り込み量は走行速度に比例するので、走行速度を調整することにより、ベール成形部へのワラの供給量を調節することが可能となる。
【0028】
このように本発明に係る方法においては、短寸にカットしたワラを圃場に放置し、一定時間天日乾燥させてからその上層部のみを収集してベール梱包するので、梱包密度が高くて十分に乾燥したベールができる。そのため、軽量で搬送が便利な上、ベールを積み上げ保管しても、高水分での炭化火災を起こさないという利点がある。また、走行速度の遅速でワラの拾い上げ量を調節し、ベール成形部への供給量を調節することができるので、ベール成形部における詰まりや結束ミスが起きるおそれがない。
【0029】
圃場還元工程
拾い落としたワラは、圃場の堆肥還元物として還元される。このシステムは食用米栽培圃場のほとんどに適用でき、拾い上げ量の不足をカバーできる。拾い上げ時に地表面に接地し湿潤したものは滑り落ち圃場堆肥化するので、全地域圃場に適応でき、圃場クリーン化もできる。イネ種・圃場を選ばず、そして反転・集草作業せずに広範囲に収集でき、圃場面に接し吸湿した部分は堆肥等の圃場還元用に残される。天日乾燥した表層部のみ収集し軽量ベール化するので、水分が低めに安定(60%以下)し、ワラ発酵による燻炭火災の心配がなく、貯蔵性・保管性もよいワラベールとなる。
【0030】
また、上述したように従来は、食用以外の工業米や飼料用米、長期備蓄米は籾備蓄の必要性があるが、カントリーエレベーター等においては玄米出荷しかできず、また、大型サイロは、食用米と混合するために備蓄用に使用することができないという問題があり、更に、備蓄米等、乾燥籾で長期フレコン保管するための技術はあっても、大量の籾を乾燥して出荷し得る施設がなかった。
【0031】
そこで本発明に係る方法においては、図2に示されるように、カントリーエレベーター10内に、サイロ11を経ずに貯留庫12と計量機タンク13とを直結するバイパス路14を設け、食用籾以外の乾燥籾をバイパス路14を通して出荷することを可能にした(図2参照)。即ち、コンバイン収穫した乾燥籾は、直ちにカントリーエレベーター10内に搬入し、そこにおいて、粗選機15で粗選別して入荷量や圃場・水分等を検知し、乾燥させた後、バイパス路14を通して計量機タンク13に送り込み、計量後フレコンに収納する。フレコン収納された乾燥籾は、その状態で長期保管・調製のために、籾処理・備蓄工場20に送られる。
【0032】
このように本発明に係る方法においては、圃場からカントリーエレベーター10に搬入された乾燥籾は、サイロ11を通さずにバイパス路14を経由させて計量機タンク13へ導入するので、乾燥中の食用米と混合することなく計量機タンク13で計量してフレコン収納し、出荷することが可能となる。なお、サイロ11をバイパス路14に連通させて、サイロ11内に乾燥貯留されている食用籾の一部をバイパス路14に導入させ、備蓄用に回すようにすることもできる。
【0033】
上記方法を採用することにより、カントリーエレベーター10の稼働率を高めることが可能となり、大型コンバイン(4条刈り程度)を使用しての工業米等の地域の大規模化が可能となる。即ち、食用米と混合することなくカントリーエレベーター10等の大型乾燥施設を使用して工業米(飼料米、バイオマス用等の籾出荷必要な米)を生産者、圃場毎に乾燥出荷管理し、カントリーエレベーターの稼働率を高め、籾のフレコンによる長期保管と調製が可能となる。籾調製に際しては、籾摺り精米し、籾殻、玄米、精米及び副産物としての糠を同時に得ることができる。
【0034】
従来、籾米備蓄の必要性はあるものの、倉庫や、籾摺り精米して副産物を有効利用するための設備がないため、地域で有効な籾米備蓄を行ったり、それを回転流通させる方法を実施することが困難であったが、上記方法の採用によりこれらが実現可能となり、また、農村に水稲由来のバイオマス資材や燃料工場を設置し、食用米以外に工業米(飼料用米)や立毛乾燥米を集団の生産調整品目として栽培することで、食用米とのブロックローテーション化を実現することが可能となる。
【0035】
この点について、図1、2を参照しつつ説明すると、このシステムは、多収量米栽培用田圃1及びこれに近接して設置されるカントリーエレベーター10の組み合わせと、一般食用米を栽培する食用米栽培用田圃2及びこれらに近接して設置されるカントリーエレベーター10aの組み合わせを含んで構成される。前者のカントリーエレベーター10には、籾摺り工程をバイパスするバイパス路14が付加され、各田圃で栽培される籾出荷用の多収量米は、カントリーエレベーター10へ出荷され、そこで乾燥処理された籾は、籾のまま出荷される。
【0036】
籾出荷された多収量米は、籾処理・備蓄工場(イネ・リファイナリー・プラント)20に送られて籾摺り・精米され、籾殻及び精米はそれぞれバイオマスプラント3のバイオプラスチック製造工場4へ回され、糠はバイオ燃料製造工場5へ回される。カントリーエレベーター10で籾摺りされて食用玄米と籾殻とに分けられた食用玄米は、一般流通に供され、籾殻はバイオプラスチック製造工場4へ回される。立毛乾燥米田圃1における刈り取りは適期より遅く行われ、人工乾燥することなく籾処理・備蓄工場20に搬入されて、インペラー型籾摺機6で籾摺られ、玄米乾燥、精米化され、同じく、籾殻及び精米はバイオプラスチック製造工場4へ、また、糠はバイオ燃料製造工場5へそれぞれ回される。ワラは、各圃場で立毛乾燥後の収穫時に切り落として数時間から数日放置後、小型自走ロールベーラーで収集梱包し、軽トラックで籾処理・備蓄工場20へ送られて保管される。
【0037】
籾処理・備蓄工場20内には、カントリーエレベーター10を経ずに送られてくる半生籾を処理するための、インペラー型籾摺り機6と籾用循環型乾燥機7を設置することで、入荷されてくる立毛乾燥した水分15〜20%程度の半生籾をインペラー型籾摺り機6で籾摺りした玄米を、籾用循環型乾燥機7を使用して15%程度に乾燥することで、従来の必要エネルギーと手間及び設備を半減した省力低コストの精米が可能となる。この精米は、フレコン保管することで、籾調製よりも省エネで低コストの乾燥・保管が可能となる。なお、インペラ型籾摺り機が高水分籾に有効であることは、公知である(インペラ型籾摺り機の場合は、従来型のゴムロール型籾摺り機では困難であった高水分籾(15〜20%含水率)の脱ぷが可能であるが、籾の胴割れ等の問題が起こるため、食用米用途での普及は進んでいない。)。
【0038】
本発明に係る方法によれば、従来、都市の消費地近くにしかなかった精米工場を、イネ産地の近くに配置しての産地精米が可能となり、地域での精米を利用したバイオマス・飼料事業が可能となる。そして、当該精米工場は、搬送・乾燥・調製等を省エネルギー下で実施し得る省設備の精米工場となし得、究極的には、地域経済の活性化と共に日本全土に亘る農業振興につながることが期待される。また、農村での集落営農が活発になり、米の生産とそれを原料にしたバイオマス製品の製造・販売等、農業の六次産業化が実践され、農村の経済振興が確立し、水田保全が確保され、更に、米の備蓄が地域単位で確立し、食料自給率、食料安保の確保につながるものである。
【0039】
なお、バイオ燃料には、ワラにも木質にも適した技術を選択することができ、同一工場で籾調製すれば、バイオマスプラスチック(ワラ、精米、籾殻)原料と、バイオマス液化燃料(糠、ワラ)原料をやり取りしながら、資材、燃料を製造することが可能となる。
【0040】
この発明をある程度詳細にその最も好ましい実施形態について説明してきたが、この発明の精神と範囲に反することなしに広範に異なる実施形態を構成することができることは明白なので、この発明は添付請求の範囲において限定した以外はその特定の実施形態に制約されるものではない。
【符号の説明】
【0041】
1 多収量米栽培用田圃
2 食用米栽培用田圃
3 バイオマスプラント
4 プラスチック製造工場
5 バイオ燃料製造工場
6 インペラー型籾摺り機
7 籾用循環型乾燥機
10 カントリーエレベーター
11 サイロ
12 貯留庫
13 計量器タンク
14 バイパス路
15 粗選機
20 籾処理・備蓄工場

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場でイネを立毛乾燥させる工程と、
前記立毛乾燥させたイネをコンバインで刈り取り、脱穀すると共にカッターでワラを細断処理する工程と、
前記細断処理したワラをそのまま圃場に堆積放置して、半日程度自然乾燥させる工程と、
前記自然乾燥させたワラの上層部をロールベーラーで拾い上げてベール梱包する工程と、
前記自然乾燥させたワラの下層部を圃場還元用に残す工程と、
前記ベール梱包したワラをバイオマスプラントに搬送すると共に、前記脱穀により得た乾燥籾を直接又はカントリーエレベーターを介して籾処理・備蓄工場に搬送する工程と、
を含むことを特徴とする、籾及びワラの合理的収穫・移送・利用方法。
【請求項2】
前記カントリーエレベーターに搬入された前記乾燥籾の少なくとも一部は、フレコン収納して前記籾処理・備蓄工場へ搬送される、請求項1に記載の籾及びワラの合理的収穫・移送・利用方法。
【請求項3】
前記籾処理・備蓄工場において、前記フレコン収納された乾燥籾を備蓄する工程を更に含む、請求項2に記載の籾及びワラの合理的収穫・移送・利用方法。
【請求項4】
前記籾処理・備蓄工場において、前記カントリーエレベーターを経ることなく搬入された前記乾燥籾をインペラー型籾摺り機を用いて籾摺りすると共に、前記フレコン収納備蓄された乾燥籾をロール式籾摺り機を用いて籾摺りし、得られた精米及び籾殻をそれぞれ前記バイオマスプラントに搬入する工程を更に含む、請求項2又は3に記載の籾及びワラの合理的収穫・移送・利用方法。
【請求項5】
前記カントリーエレベーター内に、サイロを経ずに貯留庫と計量機タンクとを直結するバイパス路を設け、食用籾以外の乾燥籾を前記バイパス路を通して出荷可能にした、請求項1乃至4のいずれかに記載の籾及びワラの合理的収穫・移送・利用方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−19711(P2012−19711A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−158619(P2010−158619)
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【出願人】(302063787)
【Fターム(参考)】