説明

粉体スラリー組成物

【課題】フッ素系油剤の特性である撥水撥油性を低下することなく、フッ素系油剤と、炭化水素油、シリコーン油等の油剤とを均一に混合した粉体スラリー組成物を提供すること。
【解決手段】次の成分(D)、(E)及び(F):
(D)フッ素系油剤 20〜90重量%、
(E)成分(D)と相溶しない油剤 1〜25重量%、
(F)表面張力が20mN/m未満の粉体を撥水親油化処理した粉体
10〜75重量%
を含有し、動的粘弾性の歪み依存性測定において歪み幅1〜100%に変曲点を有する粉体スラリー組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素系油剤と他の油剤とを均一に混合した粉体スラリー組成物及び化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
フッ素系油剤は撥水撥油性、潤滑特性を有し、かつ化学的に安定なため化粧品、塗料、医薬品など幅広い分野で用いられている。特に、化粧品においては汗や皮脂による化粧崩れを防止する目的でフッ素系油剤が配合される場合が多い(特許文献1、特許文献2)。しかし、これらフッ素系油剤は、炭化水素油、シリコーン油、エステル油、エーテル油等のその他の化粧用油剤との相溶性が悪いために、両者を均一に配合することは難しい。そのため、多くの場合フッ素系界面活性剤、有機フッ素化炭化水素化合物、非イオン界面活性剤等を添加することにより均一な組成物を調製してきた(特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10、特許文献11)。しかしながら、界面活性剤の添加は、フッ素系油剤の特性である撥水撥油性を低下させる傾向があり好ましくない。特に、メイクアップ化粧料においてはその影響は顕著である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63−107911号公報
【特許文献2】特開平2−295912号公報
【特許文献3】特開昭62−223105号公報
【特許文献4】特開昭63−2916号公報
【特許文献5】特開平4−100534号公報
【特許文献6】特開平4−224506号公報
【特許文献7】特開平4−187617号公報
【特許文献8】特開平6−179809号公報
【特許文献9】特開平7−17831号公報
【特許文献10】特開平7−33622号公報
【特許文献11】特開平7−277927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、フッ素系油剤の特性である撥水撥油性を低下することなく、フッ素系油剤と、炭化水素油、シリコーン油等の油剤とを均一に混合した粉体スラリー組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、粉体表面にフッ素系油剤と親和性の高い部分と他の油剤と親和性の高い部分が混在する特定の粉体を、フッ素系油剤及び他の油剤との混合物に加えると、該粉体がフッ素系油剤により造粒し、他の油剤中に分散したスラリーが得られることを見出した。さらに、該スラリーは長時間静置すると次第に沈澱・分離するが、振盪すると容易に再分散することを見出した。
【0006】
本発明は、次の成分(D)、(E)及び(F):
(D)フッ素系油剤 20〜90重量%、
(E)成分(D)と相溶しない油剤 1〜25重量%、
(F)表面張力が20mN/m未満の粉体を撥水親油化処理した粉体
10〜75重量%
を含有し、動的粘弾性の歪み依存性測定において歪み幅1〜100%に変曲点を有する粉体スラリー組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の粉体スラリー組成物は、粉体がネットワーク構造を構築して、スラリー中に分散し、粘弾性を有し、分散安定性に優れ、また振盪すると容易に再分散する。また化粧料とした場合、皮膚への塗布がしやすく、化粧効果の持続性に優れ、また使用感にも優れ、保存安定性もよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】参考例1の動的粘弾性の歪み依存性測定結果を示す図である。
【図2】参考例1の顕微鏡観察を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明において、粉体スラリーとは、粉体がフッ素系油剤によって造粒され、その粉体造粒物がネットワーク状に連なり高次構造を構築しているものである。
本発明の粉体スラリー組成物は、増粘剤、ゲル化剤等を含有していないにもかかわらず、粘弾性を有する粉体スラリー組成物である。
【0010】
本発明で使用する成分(A)のフッ素系油剤としては、25℃で液体のものであって、例えばパーフルオロデカリン、パーフルオロアダマンタン、パーフルオロブチルテトラハイドロフラン、パーフルオロオクタン、パーフルオロノナン、パーフルオロペンタン、パーフルオロデカン、パーフルオロドデカン、フッ素変性シリコーン、次の一般式(1)
【0011】
【化1】

【0012】
〔式中、R1、R3、R4及びR5は同一又は異なって、フッ素原子、パーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルキルオキシ基を示し、R2はフッ素原子又はパーフルオロアルキル基を示し、s、t及びuは分子量が500〜100,000となる0以上の数を示す。ただし、s=t=u=0となることはない。また、ここでカッコ内に示される各パーフルオロ基はこの順に並んでいる必要はなく、またランダム重合でもブロック重合でもかまわない。〕で表わされるパーフルオロポリエーテル、フッ素変性シリコーン等が挙げられる。
【0013】
フッ素変性シリコーンとしては、例えば下記一般式(2)〜(5)で表わされる構造単位の1以上と、下記一般式(6)で表わされる構造単位とを有するものを挙げることができる。
【0014】
【化2】

【0015】
〔式中、Rf及びRf′は、同一又は異なっていてもよく、炭素数1〜20の直鎖又は分岐鎖のパーフルオロアルキル基又は次式:H(CF2b−(bは1〜20の整数を示す)で表されるω−H−パーフルオロアルキル基を示し;R6、R9及びR10は、同一又は異なっていてもよく、炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐鎖の脂肪族炭化水素基又は炭素数5〜10の脂環式若しくは芳香族炭化水素基を示し;R7は、水素原子、炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐鎖の脂肪族炭化水素基、炭素数5〜10の脂環式若しくは芳香族炭化水素基、炭素数1〜20のパーフルオロアルキル基又は次式:H(CF2c−(cは1〜20の整数を示す)で表わされるω−H−パーフルオロアルキル基を示し;R8は、炭素数2〜6の2価の炭化水素基を示し;X及びYは、単結合、−CO−又は炭素数1〜6の2価の炭化水素基を示し;vは2〜16の数を示し、w及びpはそれぞれ1〜16の数を示し、qは1〜200の数を示し、zは0〜5の数を示し、aは0〜200の数を示す〕
【0016】
一般式(2)〜(6)で表わされる構造単位において、Rf及びRf′で示されるパーフルオロアルキル基としては、例えば、CF3−、C25−、C49−、C613−、C817−、C1021−、H(CF22−、H(CF24−、H(CF26−、H(CF28−、(C37)C(CF32−等を挙げることができる。また、H(CF2b−におけるbとしては、6〜20の整数が好ましい。
【0017】
6、R9及びR10で示される炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等の直鎖アルキル基;イソプロピル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ネオペンチル基、1−エチルプロピル基、2−エチルヘキシル基等の分岐鎖アルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基;フェニルナフチル基等の芳香族炭化水素基等を挙げることができる。また、R8で示される2価の炭化水素基としては、炭素数2〜4の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基が好ましく、特にエチレン基、プロピレン基が好ましい。
【0018】
このような構造単位を有するフッ素変性シリコーンとしては、例えば、下記一般式(7);
【0019】
【化3】

【0020】
〔式中、Z1及びZ2は、少なくとも一方は一般式(2)、(3)、(4)及び(5)から選ばれる構造単位を示し、残余は単結合を示し、a、R9及びR10は前記と同じ意味を示す〕で表わされるもの、又は下記一般式(8);
【0021】
【化4】

【0022】
〔式中、Z3は、一般式(2)、(3)、(4)及び(5)から選ばれる構造単位を示し、R11は炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐鎖の脂肪族炭化水素基又は炭素数5〜10の脂環式若しくは芳香族の炭化水素基を示し、dは0〜200の数を示し、a、R9及びR10は前記と同じ意味を示す〕で表わされるものを挙げることができる。
【0023】
更に、フッ素変性シリコーンの好ましい例としては、一般式(3)及び一般式(6)で表わされる構造単位を有する、特開平5−247214号公報に記載された重合度2〜200のフッ素変性シリコーンや、市販品であるFSL−300(旭硝子社製)、X−22−819、X−22−820、X−22−821、X−22−822及びFL−100(以上、信越化学工業社製)、FS1265(東レ・ダウコーニングシリコーン社製)等を挙げることができる。
【0024】
パーフルオロポリエーテルとしては、次の一般式(9)
【0025】
【化5】

【0026】
〔式中、f及びgは分子量が500〜100,000となる数を示し、f/gは0.2〜2である〕で表わされるFOMBLIN HC−04(平均分子量1,500)、同HC−25(同3,200)及び同HC−R(同6,600)(以上、アウジモント社製)や、次の一般式(10)
【0027】
【化6】

【0028】
〔式中、hは4〜500の数を示す〕
で表わされるデムナムS−20(重量平均分子量2,500)、同S−65(同4,500)、同S−100(同5,600)及び同S−200(同8,400)(以上、ダイキン工業社製)などの市販品が挙げられる。
【0029】
成分(A)としては、フッ素変性シリコーン、パーフルオロポリエーテルが好ましく、特にパーフルオロポリエーテルが、撥水撥油性が高く、化粧崩れが起きにくい点及び皮膚に塗布するときの使用感に優れる点で特に好ましい。
【0030】
成分(A)は、2種以上を併用してもよい。本発明の粉体スラリー組成物中には、成分(A)は1〜25重量%(以下単に%と記載する)含有するが、好ましくは5〜20%、特に5〜15%含有するのが、化粧効果の持続性と仕上がりの点で好ましい。
【0031】
本発明で使用する成分(B)は、成分(A)と相溶しない油剤である。ここで相溶しないとは、成分(A)と成分(B)を混合しただけでは均一溶液とならないことをいう。
【0032】
成分(B)は、液体油、固体脂のいずれでもよく、固体脂の場合は、溶解、溶融させて用いる。成分(B)の具体例としては、例えば油脂、ロウ、炭化水素油、エステル油、エーテル油、高級アルコール、高級脂肪酸、シリコーン油等が挙げられる。油脂としては、例えばヒマシ油、オリーブ油、アボガド油、パーム油、カカオ油等;ロウとしては、例えば木ロウ、ラノリン、ミツロウ、カルナウバロウ、キャンデリラロウ等;炭化水素油としては例えばペトロラクタム、流動パラフィン、固形パラフィン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、スクワラン等;エステル油としては、例えばステアリン酸ブチルエステル、ミリスチン酸オクチルドデシルエステル、ミリスチン酸イソプロピルエステル、ラノリン脂肪酸イソプロピルエステル、ステアリン酸ブチルエステル、ラノリン酸ヘキシルエステル、オレイン酸オレイルエステル、アジピン酸ジイソプロピルエステル、セバチン酸ジイソプロピルエステル等;エーテル油としては、ポリオキシエチレン等;高級アルコールとしては、例えばステアリルアルコール、オレイルアルコール等;高級脂肪酸としては、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸、ラノリン脂肪酸等;シリコーン油としては、例えばジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジメチルシクロポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等が挙げられる。
【0033】
成分(B)としては、炭化水素、エーテル油、エステル油、シリコーン油が好ましく、特にシリコーン油が化粧料の使用感の点で好ましい。
【0034】
シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン、メチルシクロポリシロキサンが好ましい。
【0035】
成分(B)は、2種以上を併用してもよい。本発明の粉体スラリー組成物中には、成分(B)は2〜95%含有するが、皮膚に塗布したときの感触及び保存安定性の点で好ましくは20〜80%、特に50〜60%含有するのが好ましい。
【0036】
本発明のスラリー組成物の第1の態様においては、粉体がフッ素系油剤(A)を介して造粒され、(A)と相溶しない油剤(B)内に、高次ネットワーク構造を形成する。その場合、撥水親油性粉体を基材としてその表面に、適度な撥水撥油処理を行い、粉体表面を(A)及び(B)両方の油剤に対して親和性の高い部分を混在させることによって、フッ素系油剤(A)を介して粉体(C)が造粒され、(A)と相溶しない油剤(B)相中に高次ネットワーク構造が得られる。
本発明の成分(C)の基材としては、シリコーン樹脂、ナイロン樹脂、アクリル酸樹脂、ポリエチレン樹脂、ウレタン樹脂等の樹脂粉体、界面活性剤多価金属塩、アミノ酸系粉体等の有機粉体等が挙げられる。
【0037】
シリコーン樹脂の具体例としては、表面張力が20mN/mであるトスパール105、120、130、145、3120、200B(以上、東芝シリコーン社製)等、X−52−590E(信越シリコーン社製)、トレフィルE−506(東レ・ダウコーニング社製)等が挙げられる。
【0038】
ナイロン樹脂の具体例としては、表面張力が32〜49mN/mのナイロンSP500(東レ社製)、ダイアミドT430P61、メタルカラーWNP−609B(以上、ダイセル化学社製)、ナイロンパウダーHK−5000(シオノケミカル社製)、オルガノール1002、2002(以上、エレファクトケム(elfactochem)社製)等が挙げられる。
【0039】
アクリル樹脂としては、表面張力が30〜40mN/mのマイクロスフェアM503(マツモト油脂社製)、ガンツバール(ガンツ化成社製)、テクノポリマーMB−2、モオリテックスPM−2700M(以上、積水化成社製)、MP1400(綜研化学社製)等が挙げられる。
【0040】
ポリエチレン樹脂としては、表面張力が30〜40mN/mのフロービーズ、SF−H(製鉄化学社製)等が挙げられる。
ウレタン樹脂としては、表面張力が36〜39mN/mのプラスチックパウダーD800(松本工業社製)等が挙げられる。
【0041】
界面活性剤多価金属塩としては、表面張力が30〜40mN/mのモノアルキルリン酸亜鉛塩、アルキルベンゼンスルホン酸カルシウム塩、アシルタウリンカルシウム塩、アルキル硫酸エステルカルシウム塩等(例えば、特開平4-18011、特開平3-294210)が挙げられる。
【0042】
アミノ酸系粉体としては、表面張力が30〜40mN/mのN−アシルリジン(特開昭60-67406)、α−アミノ脂肪酸(特開昭62-4211)、アミホープLL(味の素社製)等が挙げられる。
【0043】
なお、粉体の表面張力は、接触角法(日本化学会編「新実験化学講座18 界面とコロイド」、P104、丸善(株)1977年発行)にて測定されたものである。
粉体をペレット状に成形し、20℃で表面にヨウ化メチル(γ=50.8 mN/m、20℃)を滴下し、接触角θを測定(例えば、協和界面科学:CA−X型接触角測定装置)し、次式により表面張力δ(mN/m、20℃)を算出する。
【0044】
γ=12.7(1+cosθ)2
【0045】
粉体の平均粒子径は、レーザー回折/散乱法で測定し、0.01〜100μm、好ましくは0.1〜30μm、特に0.1〜10μmであるのが好ましい。
【0046】
成分(C)の粉体の撥水撥油化処理剤としては、ポリフルオロアルキルリン酸エステルジエタノールアミン塩等のパーフルオロアルキル基を有する高分子、フルオロアルキルジ(オキシエチル)アミンリン酸塩エステル、フッ素変性シリコーン、フッ素ポリエーテル共変性シリコーン等が挙げられる。
【0047】
フッ素変性シリコーンとしては、前記成分(A)で挙げられたフッ素変性シリコーンや特開平6−184312に記載のものが挙げられる。
【0048】
フッ素ポリエーテル共変性シリコーンとしては、例えば特開平7−126126号記載のパーフルオロアルキル基及びポリオキシアルキレン基を側鎖に持つシリコーンであって、次式
【0049】
【化7】

【0050】
(式中、r1、r2、r3は整数であって、r1=0〜500、r2=1〜500、r3=1〜500であり、R12は同種又は異種の非置換又は置換の炭素数1〜20のアルキル基又はアリール基、R13は炭素数1〜10のフッ素置換アルキル基であり、R14は−Ck2kO(C24O)l(C36O)m16で示されるポリオキシアルキレン基であり、R15はR12又はR13又はR14のいずれかであり、R16は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基又はアセチル基であり、p、q、kは整数であって、l=0〜100、m=0〜100、l+mは1以上であり、k=2〜6である。)で表わされる化合物が例示される。
【0051】
これらの撥水撥油化処理剤のうち、ポリフルオロアルキルリン酸エステルジエタノールアミン塩等が好ましい。
【0052】
表面張力が20〜50mN/mの粉体の撥水撥油化処理法としては、特開昭62−250074記載の方法が挙げられる。
この際、粉体と撥水撥油化処理剤の重量比率は、粉体/撥水撥油化処理剤の値が、100/1〜100/7、好ましくは100/2〜100/7、特に100/3〜100/5であるのが好ましい。
【0053】
成分(C)の表面張力が20〜50mN/mの粉体を撥水撥油化処理した粉体としては、粉体/撥水撥油化処理剤が100/5の比率でポリフルオロアルキルリン酸エステルジエタノールアミン塩で処理したシリコーン樹脂及びナイロン樹脂等が好ましい。
【0054】
成分(C)は、2種以上を併用してもよい。本発明の粉体スラリー組成物中には、成分(C)は10〜75%含有するが、組成物の保存安定性及び皮膚に塗布したときの使用感の点で好ましくは15〜60%、特に20〜40%含有するのが好ましい。
【0055】
本発明で、動的粘弾性の歪み依存性測定において歪み幅1〜100%に変曲点を有するとは、複素弾性率G*の対数(log10G*)と歪み幅γの対数(log10γ)の比log10G*/log10γが50%以上変動する点が存在することをいう。動的粘弾性の歪み依存性測定は、Rheometrics社RFS-II液体粘弾性測定装置を用い、以下の条件で行うものとする。測定温度:25℃、Frequency:0.1Hz、歪み幅:0.1-400%、Euqipment:Cone plate 25mm 0.1rad、Sample volume:0.41mL、Delay:300s。
【0056】
次に、本発明のスラリー組成物の第2の態様について説明する。
第2番目の本発明の粉体スラリー組成物で使用する成分(D)のフッ素系油剤は、前記成分(A)で挙げられるたと同じフッ素系油剤が使用される。
成分(D)は、本発明の粉体スラリー組成物中に20〜95%含有するが、皮膚に塗布したときの感触及び保存安定性の点で好ましくは30〜70%、特に35〜60%含有するのが好ましい。
【0057】
第2番目の本発明の粉体スラリー組成物で使用する成分(E)の成分(D)と相溶しない油剤としては、前記成分(B)で挙げられたと同じ油剤が使用される。
成分(E)は、本発明の粉体スラリー組成物中に1〜25%含有するが、好ましくは5〜20%、特に5〜15%含有するのが、化粧効果の持続性と仕上がりの点で好ましい。
【0058】
本発明のスラリー組成物の第2の態様においては、粉体がフッ素系油剤と相溶しない油剤(E)を介して造粒され、フッ素系油剤(D)内に、高次ネットワーク構造を形成する。その場合、撥水撥油性粉体を基材としてその表面に、適度な撥水親油処理を行い、粉体表面の(D)及び(E)両方の油剤に対して親和性の高い部分を混在させることによって、(D)と相溶しない油剤(E)介して粉体(F)が造粒され、フッ素系油剤(D)中に高次ネットワーク構造が得られる。
本発明の成分(F)の基材としては、四フッ化エチレン樹脂等が挙げられる。
【0059】
四フッ化エチレン樹脂としては、表面張力17mN/mのルブロンL−2、10(ダイキン工業社製)等が挙げられる。
【0060】
これらの粉体としては、平均粒子径が、0.01〜100μm、好ましくは0.1〜30μm、特に0.1〜10μmであるのが好ましい。
【0061】
表面張力が20mN/m未満の粉体の撥水親油化処理剤としては、シリコーン、アルキルシリル化剤、親油性高分子、金属石鹸等が挙げられる。
【0062】
シリコーンとしては、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルビニルポリシロキサン等が挙げられる。
【0063】
アルキルシリル化剤としては、アルキルシラン、アルキルクロロシラン、ジアルキルジクロロシランが挙げられる。
【0064】
親油性高分子としては、ポリエチレン、ポリスチレン、アクリル及びその誘導体、ポリアミド、ポリイソブチレン、純塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート、エチレンビニルアセテート共重合物、芳香族炭化水素樹脂等が挙げられる。
【0065】
金属石鹸としては、ラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸等の炭素数10〜24の脂肪酸のアルミニウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛等の塩が挙げられる。
【0066】
これら撥水親油化処理剤のうち、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等が好ましい。
【0067】
表面張力が20mN/m未満の粉体の撥水親油化処理法としては、特開昭63−250311記載の焼き付け法が挙げられる。
この際、粉体と撥水親油化処理剤の重量比率は、粉体/撥水親油化処理剤の値が、100/1〜100/7、好ましくは100/2〜100/7、特に100/3〜100/5であるのが好ましい。
【0068】
本発明において成分(C)の撥水親油化処理した粉体としては、粉体/撥水親油化処理剤及び100/5の比率でメチルハイドロジェンポリシロキサンで処理したフッ素系樹脂等が特に好ましい。
【0069】
成分(F)は2種以上を併用してもよい。成分(F)は、本発明の粉体スラリー組成物中に10〜75%含有するが、乳化物の保存安定性及び皮膚に塗布したときの使用感の点で好ましくは20〜45%、特に25〜40%含有するのが好ましい。
【0070】
本発明のこれらの2種の粉体スラリー組成物は、化粧料とするのが好ましく、その際これらの成分の他に、非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン性界面活性剤等の界面活性剤、無機及び有機顔料、有機染料等の色剤、防腐剤、酸化防止剤、色素、増粘剤、pH調整剤、香料、紫外線吸収剤、保湿剤、血行促進剤、冷感剤、制汗剤、殺菌剤、皮膚賦活剤等を適宜含有させることができる。
【0071】
本発明のこれらの2種の粉体スラリー組成物は、通常の乳化組成物と同様の方法に従って製造することができる。
【0072】
本発明の粉体スラリー組成物を化粧料とする場合は、アイシャドー、ファンデーション、化粧下地、化粧水、乳液等とすると、フッ素系油剤による撥水撥油性が十分に発揮され、汗や皮脂による化粧崩れが起きにくい、化粧効果が長時間持続する点で好ましい。
【実施例】
【0073】
参考例1、比較例1〜4
表1に示す組成の粉体スラリー組成物を、次法に従って調製した。
調製法:F相中に粉体を添加、ディスパーで混合した後、撹拌しながらO相成分を添加、更に水相を添加して目的物を得た。
得られた組成物の顕微鏡観察を行い、ネットワーク構造を構築しているものに○印、そうでないものに×印を付けた。
更に、図1に参考例1の動的粘弾性の歪み依存性の測定結果を示す。歪み幅約10%のところに、変曲点があらわれた。
【0074】
【表1】

【0075】
実施例1、比較例5〜8
表2に示す組成の粉体スラリー組成物を、次法に従って調製した。
調製法:O相中に粉体を添加、ディスパーで混合した後、撹拌しながらF相成分を添加、更に水相を添加して目的物を得た。
得られた組成物の顕微鏡観察を行い、ネットワーク構造を構築しているものに○印、そうでないものに×印を付けた。
【0076】
【表2】

【0077】
参考例1、及び実施例1の組成は、顕微鏡観察の結果ネットワーク構造を構築し、安定であった(図2)。
【0078】
参考例2、比較例9〜10
表3に示すリキッドファンデーションを次法に従って調製した。
調製法:O相中に、粉体及びその他の成分を添加し、ディスパーで混合した後、撹拌しながらF相成分、水相を準じ添加して目的物を得た。
【0079】
【表3】

【0080】
実施例2
表4に示すリキッドファンデーションを次法に従って調製した。
調製法:F相中に、粉体及びその他の成分を添加し、ディスパーで混合した後、撹拌しながらO相成分、水相を準じ添加して目的物を得た。
【0081】
【表4】

【0082】
評価法
パネル5名が、各リキッドファンデーションを使用して、次の評価基準に従って、塗布のしやすさ、化粧持ちを判断した結果を総合評価した。
◎:良い
○:やや良い
△:どちらともいえない
×:やや悪い
××:悪い
【0083】
本発明のリキッドファンデーションは、ネットワーク構造を構築し、安定であって、塗布しやすさ、化粧持ちが極めて優れていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(D)、(E)及び(F):
(D)フッ素系油剤 20〜90重量%、
(E)成分(D)と相溶しない油剤 1〜25重量%、
(F)表面張力が20mN/m未満の粉体を撥水親油化処理した粉体
10〜75重量%
を含有し、動的粘弾性の歪み依存性測定において歪み幅1〜100%に変曲点を有する粉体スラリー組成物。
【請求項2】
粉体スラリー組成物が化粧料である請求項1記載の粉体スラリー組成物。
【請求項3】
成分(D)がパーフルオロポリエーテル、成分(E)がシリコーン油及び成分(F)がフッ素樹脂をシリコーン樹脂で表面処理した粉体である請求項1又は2記載の粉体スラリー組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−299072(P2009−299072A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−211985(P2009−211985)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【分割の表示】特願2001−272338(P2001−272338)の分割
【原出願日】平成13年9月7日(2001.9.7)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】