説明

粉体分散装置、分級装置及び分級方法、並びにトナー製造方法

【課題】長期間に亘って分級装置内に粉体材料の付着が無く、分級精度の向上と安定を達成し得、必要とする大きさの範囲の粒子を高収率で分離することができる粉体分級装置及び分級方法、並びにトナーの製造方法を提供すること。
【解決手段】粉体凝集物を分散させるための粉体分散装置であって、粉体凝集物を含む粉体を供給するための供給口及び粉体を排出するための排出口を有する分散室と、分散室内に設けられた気体噴出手段と、を備え、気体噴出手段により発生させた気流のせん断力によって粉体凝集物を分散させることで上記課題を達成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体分散装置、分級装置及び分級方法、並びにトナー製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ミクロンオーダーの粉体材料を粗粉と微粉に分離させるための回転式機械分級装置が知られている。このような回転式機械分級装置は、粉体材料を回転する回転ロータの遠心力を用いて遠心分離する機構で構成されている。前記回転式機械分級装置においては、複数の羽根が円環状に配置された回転可能な回転ロータと、該ロータの外周部から粉体材料を分散、分級するための流体を供給するために、複数の羽根が該ロータ外周部に配置されたルーバーと、該回転ロータ及びルーバーの隙間に供給された粉体材料を微粉と粗粉とに遠心分級する円筒形状の分級室とから構成されている。そして、回転ロータとルーバーの隙間の分級室に供給された粉体材料は、複数の羽根が円環状に配置された回転ロータの内側から吸引される流れと、該回転ロータの流れによって作用を受け、粉体粒子が受ける力のバランスによって、該回転ロータ内側へ導かれる粉体材料と、該回転ロータ外側へ導かれる粉体材料とに分離され、微粉排出口又は粗粉排出口へと排出され、粉体材料が粗粉と微粉とに分離される。
【0003】
ここで、図1に基づいて、従来の回転式機械分級装置の構成、及び動作について詳しく説明する。
図1は、従来の回転式機械分級装置の断面図である。図1において、1は、粉体材料が供給される供給口、2は、供給された粉体材料を効率よく分級するためのエアーの供給口、3は、分級された粉体材料のうち粗粉を排出する粗粉排出口、4は、分級された粉体材料のうち微粉を排出する微粉排出口、5は、回転ロータをそれぞれ示す。なお、分級装置本体全体は略円筒状の筐体からなる。
【0004】
図1に示す従来の分級装置においては、まず、粉体材料供給口1から一定量の粉体材料が供給され、次に、供給された粉体材料は、回転ロータ5の上面から放射状に回転ロータ5の外周部に導かれ、分級室7に到達する。このとき、分級エアー供給口2からは、供給された粉体材料を分級室7へ導くためのエアーが供給されている。一方、微粉排出口4と連通する吸引ファン等の吸引器(不図示)により吸引を行うと、供給された粉体材料は、回転ロータ5内側の貫通孔13から微粉排出室9を経て、微粉排出口4に向かう。このとき、回転ロータ5が回転しているので、所望の粒径以下の微粉は微粉排出口4より排出されるが、所望の粒径よりも大きな粉体材料は回転ロータ5の遠心力によって回転ロータ5の外側に導かれ粗粉排出室8を経て、粗粉排出口3から排出される。分級室7内部の粉体材料の量は減少することから、粉体材料供給口1より粉体材料を供給し、常に分級室7内部の粉体材料の量が一定になるように設定すれば連続分級をすることができる。
【0005】
このように、従来の回転式機械分級装置において連続分級は可能である。所望の粒径を分級するためには、分級室で粉体材料に対して、常に均等な力のバランスを与えることが必要であるが、現実的には、粉体材料の一つ一つに均等な力のバランスを与えることは困難であり、分級効率を低下させる原因の一つになっている。
【0006】
ところで、近年、トナーに関しては、高画質の要請から現像工程及び転写工程でドット変動が少ないドット再現性に優れる小粒径分布なトナーが求められている。このため、トナー製造装置として、粒径2μm以下のトナーを精度よく分級して粒径3〜4μmのトナーを製品側に効率よく回収し、平均粒径5μm程度のトナーを高い収率で得ることができる装置が求められている。
また、近年では、次のような要請により、付着及び融着し易いトナーが用いられている。即ち、(1)消費エネルギー低減の観点からトナーの低温定着化、(2)カラートナーにおいては混色性の要請から低軟化点のバインダー樹脂を使用すること、(3)オイルレス定着に対応した離型剤を含有したトナー、が求められている。
これらのトナー分布のうち、特に、粒径2μm以下のトナーは耐熱保存性、地肌汚れ、感光体へのフィルミング等の副作用を発生させ、トナー中への混入削減が課題となっている。このため、粒径2μm以下のトナーを取り除いたシャープな分級分布を有するトナーが求められている。
【0007】
このようにトナーのような付着性の高い小粒径分布の粉体材料を精度よく分級するためには、分級室で粉体材料に対して、常に均等な力のバランスを与えることが必要であるが、分級装置内の粉体材料の付着によって、エアーがスムースに流れなくなることから、分級室で粉体材料に均等な力のバランスを与えることが困難となり、分級精度を低下させる原因の一つになっている。
【0008】
分級効率を向上させるための装置としては、例えば、特許文献1に開示されている回転式機械分級装置においては、羽根車型の分級ロータを例えば垂直方向軸芯回りに回転して原料粉体を旋回させるとともに、分級ロータの外周側に形成される分級空間から分級ロータの半径方向内側に向けて分級空気を流すことにより、原料粉体中の微粉は回転に伴う遠心力よりも気流による搬送力が大きいために分級空気流に乗って分級羽根を通過し、一方、粗粉は回転に伴う遠心力の方が大きいために外側に飛ばされて分級羽根を通過できず、これにより原料粉体を微粉と粗粉とに分級している。
【0009】
また、特許文献2に開示されている回転式機械分級装置においては、1つのケーシング内に前記羽根車型の分級ロータを2つ同軸状に配置し、原料粉体を2つの分級ロータのそれぞれの外周側の分級空間に順番に通流させて、前段側の分級ロータの微粉排出部から排出された微粉を微粉とし、後段側の分級ロータの微粉排出部から排出された微粉を中粉とし且つ粗粉排出部から排出された粗粉を粗粉として、トナー等の原料粉体を微粉、中粉、粗粉の3区分に分級し、この中粉をトナー製品とするトナー用分級機が提案されている。
【0010】
しかし、上記分級機では、分級後の微粉中に粗粉が混入し、あるいは粗粉中に微粉が混入すると、分級精度並びに製品収率が低下するので、かかる混入を極力少なくする必要がある。
【0011】
また、特許文献3に開示されている分級機においては、出口配管の引圧を分級機内圧よりも低くすることで排出管での付着がなくなり、その結果、分級機内にトナーの付着がなく安定して優れた分級精度が得られるとされている。
しかし、上記構成の分級機を用いると、分級機内のトナーの付着が減少し、長時間の稼動においても安定した分級精度が得られるものの、分級精度並びに製品収率の向上という点においては不十分である。
【0012】
また、上記分級機において、分級後の微粉中に粗粉が混入し、あるいは粗粉中に微粉が混入すると、分級精度並びに製品収率が低下するので、かかる混入を極力少なくするために、分級装置に供給される前に粉体材料の凝集物を分散させることが提案されている。
例えば、特許文献4に開示されている粉体分散装置においては、粉体分散容器内に設けられた衝突部材に、側壁に設けられた複数の気体噴射手段によって、供給口から供給される粉体に対して衝突部材に向う方向に気体を噴射することで、粉体凝集物を含む粉体材料を衝突部材に衝突させて、十分に分散させることができるとされている。
しかし、上記構成の粉体分散装置を用いると、粉体材料の分散性が向上し、粉体凝集物は減少することで分級精度ならびに製品収率が向上するものの、長期の運転においては衝突部材に粉体材料が付着し、粉体材料が衝突部材に衝突する際の衝突力が減少するため、分散能力が不十分となり、分級精度ならびに製品収率の向上を長期にわたって維持することができない。
【0013】
また、特許文献5に開示されている粉体分散装置においては、旋回流形成手段で形成される粉体分散容器内の気体の旋回流によって、供給された粉体が分散容器内で旋回し、旋回によって付与された遠心力によって、分散容器の内周面に粉体凝集物が衝突し、その衝突力によって分散し、さらに衝突した粉体は、分散容器の内周面に接触した状態で旋回流によって排出部側に移動するため、分散容器の内周面から粉体凝集物に対して動摩擦力が付与され、分散容器の内周面への衝突によって分散されなかった粉体凝集物も分散できるとされている。
しかしながら、上記構成の粉体分散装置を用いても旋回流によって分散容器の内周面への粉体材料の付着は減少するものの、分級精度並びに製品収率を向上させるには不十分である。なぜなら、粉体材料の供給量を増やしていくと、内周面と接触せずに分散容器の内側を旋回しながら排出部側に移動する粉体の割合が増加し、内周面から付与される動摩擦力が十分に得られず、なおかつ一度分散容器の内周面との衝突によって分散された粉体材料においても、粉体材料同士の接触確率が増加するため、再び凝集してしまい分散の効果が得られない。したがって、上記構成では長期にわたり安定した分級精度並びに製品収率を得ることは難しく、改善の余地がある。
したがって、上記構成では粉体材料の付着により長期にわたり安定した分級精度、及び製品収率を得ることは難しく、未だ改善の余地を残しているのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、従来における前記問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、長期間に亘って分級装置内に粉体材料の付着が無く、分級精度の向上と安定を達成し得、必要とする大きさの範囲の粒子を高収率で分離することができる粉体分散装置、分級装置及び分級方法、並びにトナーの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 粉体凝集物を分散させるための粉体分散装置であって、前記粉体凝集物を含む粉体を供給するための供給口及び粉体を排出するための排出口を有する分散室と、前記分散室内に設けられた気体噴出手段と、を備え、前記気体噴出手段により発生させた気流のせん断力によって前記粉体凝集物を分散させることを特徴とする粉体分散装置である。
<2> 気体噴出手段は、気流同士の衝突が生じるように配置されている前記<1>に記載の粉体分散装置である。
<3> 気流として、対流が発生するように気体噴出手段を配置する前記<1>から<2>のいずれかに記載の粉体分散装置である。
<4> 気体噴出手段は、供給口を有する壁面に設けられている前記<1>から<3>のいずれかに記載の粉体分散装置である。
<5> 排出口は、供給口に対向する位置に設けられている前記<1>から<4>のいずれかに記載の粉体分散装置である。
<6> 排出口から気体噴出手段の気体噴出口に向かって、内径が連続的に大きくなる傾斜面を備える前記<1>から<5>のいずれかに記載の粉体分散装置である。
<7> 気体噴出手段は、供給口が設けられている分散室の壁面上に設けられており、前記壁面に対して垂直方向に伸びる管状構造である前記<1>から<6>のいずれかに記載の粉体分散装置である。
<8> 傾斜面に向かって気体噴出手段から気流を噴出させる前記<6>から<7>のいずれかに記載の粉体分散装置である。
<9> 傾斜面と排出口の開口部とのなす角αは、40度〜60度である前記<6>から<8>のいずれかに記載の粉体分散装置である。
<10> 分散室内部に設けられる複数の気体噴出手段が、ノズル状に形成されている前記<1>から<9>のいずれかに記載の粉体分散装置である。
<11> 分散室内部に設けられる複数の気体噴出手段の気体噴出口が、分散室の内側に向いて形成されている前記<1>から<10>のいずれかに記載の粉体分散装置である。
<12> 気体噴出手段の長手方向に沿った軸線と前記気体噴出手段の気体噴出口とのなす角βは、90度〜180度である前記<1>から<11>のいずれかに記載の粉体分散装置である。
<13> 分散室内部に設けられる複数の気体噴出手段の気体噴出口が、任意の位置に調整可能な機構を有している前記<1>から<12>のいずれかに記載の粉体分散装置である。
<14> 分散室内部の内壁面を多孔質部材で形成し、その多孔質部材から微量の気体を噴出する前記<1>から<13>のいずれかに記載の粉体分散装置である。
<15> 気体噴出手段は、複数有する前記<1>から<14>のいずれかに記載の粉体分散装置である。
<16> 気体噴出手段は、分散室の供給口が設けられている壁面の同心円上に4つ備えており、かつ、前記4つの気体噴出手段を結ぶ直線が正方形となるように備える前記<1>から<15>のいずれかに記載の粉体分散装置である。
<17> 粉体凝集物を含む粉体を分散させるための分散手段と、前記分散手段で分散処理された粉体を分級するための分級手段と、を備える分級装置であって、前記分散手段が前記<1>から<16>のいずれかに記載の粉体分散装置であることを特徴とする分級装置である。
<18> 前記<17>に記載の分級装置を用いたことを特徴とする分級方法である。
<19> 前記<17>に記載の分級装置を用いて粉体を分級する工程を少なくとも含むことを特徴とするトナーの製造方法である。
<20> 分散室の供給口が設けられている壁面から傾斜面までの長さをH1とし、気体噴出手段の長手方向の長さをH2とした際、H2/H1が0.7〜1.0である前記<1>から<16>のいずれかに記載の粉体分散装置である。
<21> 分散室の直径D1とし、複数の気体噴出手段との距離D2とした際、D1/D2が1.2〜2.0である前記<1>から<16>のいずれかに記載の粉体分散装置である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、従来における前記問題を解決することができ、長期間に亘って分級装置内に粉体材料の付着が無く、分級精度の向上と安定を達成し得、必要とする大きさの範囲の粒子を高収率で分離することができる粉体分散装置、分級装置及び分級方法、並びにトナーの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、分級装置の一例を示す概略断面図である。
【図2】図2は、本発明の粉体分散装置の一例を示す立体図である。
【図3】図3は、本発明の粉体分散装置の一例を示す断面図である。
【図4】図4は、本発明の粉体分散装置の他の実施形態の一例を示す断面図である。
【図5】図5は、本発明の粉体分散装置の他の実施形態の一例を示す断面図である。
【図6】図6は、気流の速度差で粉体凝集物がせん断される場合の一例を示した模式図である。
【図7】図7は、気流の方向が異なることで粉体凝集物がせん断される一例を示した模式図である。
【図8】図8は、本発明の粉体分散装置の他の実施形態の一例を示す断面図である。
【図9】図9は、本発明の粉体分散装置の他の実施形態の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(粉体分散装置)
本発明の粉体分散装置は、粉体凝集物を含む粉体を供給するための供給口及び粉体を排出するための排出口を有する分散室と、分散室内に設けられた気体噴出手段とを備えており、分散室は、排出口から気体噴出手段の気体噴出口に向かって、内径が連続的に大きくなる傾斜面を備えることが好ましい。
【0019】
図2は、第1実施形態の前記粉体分散装置の立体図であり、図3は、図2に示す前記粉体分散装置の切断面線A−A´の鉛直方向の断面図である。
前記粉体分散装置は、粉体材料が供給される供給口20と、供給された粉体材料を効率良く分散するための分散室21と、分散室21内部に設けられた気体噴出手段22と、分散された粉体を排出し、供給口20と対向する位置に設けられた排出口23とを有する。各気体噴出手段22は、供給口20を有する壁面に設けられており、傾斜面211側に気流を噴出し対流が発生するとともに気流同士が衝突するように配置され、供給口20が設けられている分散室内の壁面に対して垂直方向に伸びる管状構造となっている。
分散室21は、図2、図3に示すように、排出口23から気体噴出手段20の気体噴出口に向かって、内径が連続的に大きくなる傾斜面211を備える。傾斜面211を設けることで、気流として分散室21内に対流を発生させることができる。
【0020】
傾斜面211と排出口23の開口部231とのなす角α(傾斜角度)は、特に制限されず、使用目的に応じて適宜変更することができるが、なす角αは、40度〜60度であることが好ましく、45度〜60度であることがより好ましく、50度〜60度であることが特に好ましい。前記なす角αが、40度未満であると、装置内に供給された粉体材料が傾斜面に滞留し付着してしまうことがあり、60度を超えると、気流を分散室内に効率よく対流させることができないことがある。
【0021】
前記分散室21の供給口20が設けられている壁面から傾斜面211までの長さH1と気体噴出手段22の長手方向の長さH2との関係としては、特に制限されず、使用目的に応じて適宜変更することができるが、H2/H1が0.70〜1.00であることが好ましく、0.80〜0.95であることがより好ましく、0.85〜0.90であることが特に好ましい。前記H2/H1が、0.70未満であると、排出口23から遠くなるため一度分散された粉体凝集物が、再凝集してしまうことがあり、1.00を超えると、傾斜面211に近づき過ぎるため、粉体凝集物同士を衝突させる気流速度が低下してしまうことがある。
【0022】
前記粉体分散装置における供給口20、分散室21、気体噴出手段22及び排出口23の形状としては、特に制限はなく、円形状、楕円形状、多角形状などが挙げられる。連続運転時に流れの淀みによる前記粉体分散装置内部への粉体材料の付着を防止する観点と、加工が容易であるという観点から、円形状であることが特に好ましい。
【0023】
前記気体噴出手段22としては、分散させる粉体材料の種類や時間当たりの供給量によって、分散室21内に複数設置することができる。前記気体噴出手段22を供給口20が設けられている壁面に複数設置することにより、気体噴出手段22によって発生させた気流によるせん断力を最適な条件に変更することができるため、より一層確実に粉体凝集物を分散させることができる。
【0024】
前記分散室21の直径D1と複数の気体噴出手段22との距離D2との関係としては、特に制限されず、使用目的に応じて適宜変更することができるが、D1/D2が1.2〜2.0が好ましく、1.5〜2.0がより好ましく、1.8〜2.0が特に好ましい。前記D1/D2が、1.2未満であると、気体噴出手段22同士が離れてしまうため、粉体凝集物同士を衝突させる気流速度が低下してしまうことがあり、2.0を超えると、気体噴出手段22から供給口20に向かう気流が大きくなり、スムーズに粉体材料を供給できないことがある。
【0025】
図3中の矢印で示したように、分散室21内の気体噴出手段22の気体噴出口24から噴出される気流30は対流しているので、分散室21内で気流30同士が衝突したり接触したりする。そのとき、気流のせん断力が発生する。その分散室内で衝突する気流30によって、供給口20から供給される粉体凝集物同士が衝突し、その際の気流のせん断力(衝突力)によって分散される。さらに、衝突した粒子は、気流によって排出口23側に移動し、このときの排出口23での気流により付与されるせん断力によって、粉体凝集物同士の衝突によって分散されなかった粒子も分散される。また、衝突した一部の粒子は、衝突した気流によって供給口側へと舞い上げられた後、再び気流が衝突する気流によって、粉体同士の衝突で分散されるため、より確実に粉体凝集物を分散させることができる。さらに、前記粉体分散装置は、傾斜面211を備えるので分散室21内での気体の対流が促進され、効果的に粉体凝集物を分散させることができる。
前記気流のせん断力としては、対向する気流30が衝突することによるせん断力と、図6に示すように速度が異なる気流30の接触によるせん断力と、図7に示すように進行方向が異なる気流30の接触によるせん断力が挙げられる。
【0026】
前記気体噴出口24から噴出される気流の噴出速度としては、10m/s〜40m/sが好ましく、10m/s〜30m/sがより好ましく、10m/s〜20m/sが特にが好ましい。前記噴出速度が、10m/s未満であると、粉体材料同士の衝突力が小さくなるので、粉体凝集物を十分に分散させることができなく、分級効率が低下するおそれがあり、40m/sを超えると、分散室21内で衝突した気流によって舞い上げられる粉体材料の量が増加し、分散室21内での滞留時間が長くなることで、粉体材料同士の接触確率が増加するので、再凝集し分級効率が低下するおそれがある。
なお、気体噴出手段22の気体噴出口24から噴出される気体としては、供給口20から供給される粉体凝集物を含む粉体と反応しなければ特に制限されず、例えば、空気、窒素などが挙げられるが、特に空気であることが好ましい。
【0027】
また、図4に示すように、前記粉体分散装置においては、気体噴出手段22の気体噴出口24を分散室21の内側に向けて設置するようにしてもよい。このようにすることで、噴出された気体により形成される衝突する気流速度を大きくすることができ、粉体凝集物同士の衝突力を大きくすることができ、より一層確実に粉体凝集物を分散させることができる。
前記気体噴出手段22の長手方向に沿った軸線と気体噴出口24とのなす角βとしては、使用目的に応じて適宜変更することができるが、90度〜180度が好ましく、90度〜150度がより好ましく、90度〜120度が特に好ましい。前記なす角βが、90度未満であると、気体噴出手段から投入口に向かう気流が大きくなり、スムーズに粉体材料を供給できないことがあり、180度を超えると、気体噴出手段の噴出口同士が対向しなくなるため、粉体凝集物同士を衝突させる気流速度が低下してしまうことがある。
【0028】
また、図5に示すように、分散室21内部の壁面を多孔質部材25で形成し、その多孔質部材25から微量の気体を噴出させることによって、壁面に付着・堆積した粉体凝集物が分散されずに分散室21から排出されてしまうことを防ぐことができるため、より一層確実に粉体凝集物を分散させることができる。
【0029】
なお、気流のせん断力が発生する条件があれば、前記粉体分散装置の形態は特に限定されず、例えば、図8及び図9に示すような形態であってもよい。
【0030】
(分級装置)
図1に示すように、本発明の分級装置は、複数の羽根が円環状に配置された回転可能な回転ロータ5と、前記回転ロータ5の内側に設けられ、微粉排出室4と連通して微粉を吸引する貫通孔13と、前記回転ロータ5の外周部から粉体材料を分散し、分級するための流体を供給するために、複数の羽根が該回転ロータ5の外周部に配置されたルーバー6とを備え、更に必要に応じてその他の部材を備えてなる。
前記分級装置は、前記粉体分散装置の排出口23と前記分級装置の粉体供給部とが連結されるので、分級する粉体材料に含まれる粉体凝集物が分散された状態で、分級装置内に投入される。したがって、分級する粉体材料に含まれる粉体凝集物が分散された状態で、分級装置内に投入され、再凝集することなく分級室7に到達するため、分級室7で粉体材料に均等な力のバランスを与えることができ、長期にわたって効率よく粗粉と微粉とに遠心分級することができる。なお、排出口23の下部に連結管(図示せず)を設けて分級装置と粉体分散装置とを連結するようにしてもよい。
【0031】
分級室7、粗粉排出室8、及び微粉排出室9の形状については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、通常円形状であるが、楕円形状、多角形状であっても構わない。ただし、回転ロータ5から放射状に遠心分離される粗粉を旋回させながら流れのよどみがなく効率的に回収させるという観点、連続運転時に流れのよどみによる分級装置内部への粉体材料の付着を防止する観点と、加工が容易であるという観点から、円形状であることが好ましい。
【0032】
(分級方法)
本発明の分級方法は、前記分級装置を用いて行われる。
図1に示す分級装置においては、まず、粉体材料供給口1から一定量の粉体材料が供給され、次に供給された粉体材料は、回転ロータ5の上面から放射状に回転ロータ5の外周部に導かれ、分級室7に到達する。このとき、分級エアー供給口2からは、供給された粉体材料を分級室7へ導くためのエアーが供給されている。一方、微粉排出口4と連通する吸引ファン等の吸引器(不図示)により吸引を行うと、供給された粉体材料は、回転ロータ5内側の貫通孔13から微粉排出室9を経て、微粉排出口4に向かう。このとき、回転ロータ5が回転しているので、所望の粒径以下の微粉は微粉排出口4より排出されるが、所望の粒径よりも大きな粉体材料は回転ロータ5の遠心力によって回転ロータ5の外側に導かれ粗粉排出室8を経て、粗粉排出口3から排出される。分級室7内部の粉体材料の量は減少することから、粉体材料供給口1より粉体材料を供給し、常に分級室7内部の粉体材料の量が一定になるように設定すれば連続分級をすることができる。
【0033】
前記回転ロータ5の回転周速度は、20m/s〜70m/sが好ましい。前記回転周速度がかかる範囲内であれば、所望する分級効率を得られる。前記回転周速度が、20m/s未満であると、分級効率が低下するおそれがあり、70m/sを超えると、回転ロータ5による遠心力が大きくなりすぎ、吸引手段により回収されるべき粉体材料が粗粉排出口3へ導かれ微粉が分級されない状態になるおそれがある。
【0034】
本発明の分級装置及び分級方法は、簡易な設備変更により分級効率の安定化を図ることができ、所望の粒径範囲であって、誤差の少ない、分級精度のよい粒子を長期にわたって高効率で分級することができるので、例えばトナー、樹脂、農薬、化粧品、顔料等の粒径がミクロン単位の微粉状製品の製造用に、極めて有効に適用できるものである。これらの中でも、以下に説明するトナーの製造方法に好適である。
【0035】
(トナーの製造方法)
本発明のトナーの製造方法は、少なくとも分級工程を含み、溶融混練工程、粉砕工程、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
前記分級工程は、上述した本発明の前記分級装置を用いて行われる。
【0036】
<溶融混練工程>
前記溶融混練工程は、前記溶融混練工程では、トナー材料を混合し、該混合物を溶融混練機に仕込んで溶融混練する。該溶融混練機としては、例えば、一軸又は二軸の連続混練機や、ロールミルによるバッチ式混練機を用いることができる。例えば、神戸製鋼所製のKTK型二軸押出機、東芝機械株式会社製のTEM型押出機、浅田鉄工株式会社製のKCK混練機、池貝鉄工所製のPCM型二軸押出機、Buss社製のコニーダー等が好適に用いられる。この溶融混練は、結着樹脂の分子鎖の切断を招来しないような適正な条件で行うことが好ましい。具体的には、溶融混練温度は、結着樹脂の軟化点を参考にして行われ、該軟化点より高温過ぎると切断が激しく、低温すぎると分散が進まないことがある。
【0037】
前記トナー材料は、少なくとも結着樹脂、着色剤、離型剤、及び帯電制御剤を含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0038】
−結着樹脂−
前記結着樹脂としては、例えばスチレン、クロロスチレン等のスチレン類;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソプレン等のモノオレフィン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ドデシル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類、などの単独重合体、又は共重合体などが挙げられる。
これらの中でも、代表的な結着樹脂としては、例えばポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン−アクリル共重合体、スチレン−アクリル酸アルキル共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0039】
−着色剤−
前記着色剤としては、特に制限はなく、公知の染料及び顔料の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミュウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミュウムレッド、カドミュウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ピグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0040】
前記着色剤の色としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、黒色用のもの、カラー用のもの、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記黒色用のものとしては、例えばファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料、などが挙げられる。
マゼンタ用着色顔料としては、例えばC.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、41、48、48:1、49、50、51、52、53、53:1、54、55、57、57:1、58、60、63、64、68、81、83、87、88、89、90、112、114、122、123、163、177、179、202、206、207、209、211;C.I.ピグメントバイオレット19;C.I.バットレッド1、2、10、13、15、23、29、35などが挙げられる。
シアン用着色顔料としては、例えばC.I.ピグメントブルー2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17、60;C.I.バットブルー6;C.I.アシッドブルー45、又フタロシアニン骨格にフタルイミドメチル基を1〜5個置換した銅フタロシアニン顔料、グリーン7、グリーン36などが挙げられる。
イエロー用着色顔料としては、例えばC.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、15、16、17、23、55、65、73、74、83、97、110、151、154、180;C.I.バットイエロー1、3、20、オレンジ36などが挙げられる。
【0041】
前記着色剤の前記トナーにおける含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1質量%〜15質量%が好ましく、3質量%〜10質量%がより好ましい。前記含有量が、1質量%未満であると、トナーの着色力の低下が見られ、15質量%を超えると、トナー中での顔料の分散不良が起こり、着色力の低下、及びトナーの電気特性の低下を招くことがある。
【0042】
前記着色剤は、樹脂と複合化されたマスターバッチとして使用してもよい。該樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、スチレン又はその置換体の重合体、スチレン系共重合体、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリブチルメタクリレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0043】
前記スチレン又はその置換体の重合体としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリp−クロロスチレン樹脂、ポリビニルトルエン樹脂などが挙げられる。前記スチレン系共重合体としては、例えば、スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体などが挙げられる。
【0044】
前記マスターバッチは、前記マスターバッチ用樹脂と、前記着色剤とを高せん断力をかけて混合又は混練させて製造することができる。この際、着色剤と樹脂の相互作用を高めるために、有機溶剤を添加することが好ましい。また、いわゆるフラッシング法も着色剤のウエットケーキをそのまま用いることができ、乾燥する必要がない点で好適である。前記フラッシング法は、着色剤の水を含んだ水性ペーストを樹脂と有機溶剤とともに混合又は混練し、着色剤を樹脂側に移行させて水分及び有機溶剤成分を除去する方法である。前記混合又は混練には、例えば三本ロールミル等の高せん断分散装置が好適に用いられる。
【0045】
−離型剤−
前記離型剤としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、カルボニル基含有ワックス、ポリオレフィンワックス、長鎖炭化水素等のワックス類が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0046】
前記カルボニル基含有ワックスとしては、例えば、ポリアルカン酸エステル、ポリアルカノールエステル、ポリアルカン酸アミド、ポリアルキルアミド、ジアルキルケトンなどが挙げられる。前記ポリアルカン酸エステルとしては、例えば、カルナバワックス、モンタンワックス、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18−オクタデカンジオールジステアレートなどが挙げられる。前記ポリアルカノールエステルとしては、例えば、トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエートなどが挙げられる。前記ポリアルカン酸アミドとしては、例えば、ジベヘニルアミドなどが挙げられる。前記ポリアルキルアミドとしては、例えば、トリメリット酸トリステアリルアミドなどが挙げられる。前記ジアルキルケトンとしては、例えば、ジステアリルケトンなどが挙げられる。これらカルボニル基含有ワックスの中でも、ポリアルカン酸エステルが特に好ましい。
前記ポリオレフィンワッックスとしては、例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどが挙げられる。
前記長鎖炭化水素としては、例えば、パラフィンワッックス、サゾールワックスなどが挙げられる。
【0047】
前記離型剤の前記トナーにおける含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、40質量%以下が好ましく、3質量%〜30質量%がより好ましい。前記含有量が、40質量%を超えると、トナーの流動性が悪化することがある。
【0048】
−帯電制御剤−
前記帯電制御剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができるが、有色材料を用いると色調が変化することがあるため、無色乃至白色に近い材料が好ましく、例えば、トリフェニルメタン系染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体又はその化合物、タングステンの単体又はその化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸の金属塩、サリチル酸誘導体の金属塩などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0049】
前記帯電制御剤は、市販品を使用してもよく、該市販品としては、例えば、第四級アンモニウム塩のボントロンP−51、オキシナフトエ酸系金属錯体のE−82、サリチル酸系金属錯体のE−84、フェノール系縮合物のE−89(いずれもオリエント化学工業社製)、第四級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP−302、TP−415(いずれも保土谷化学工業株式会社製)、第四級アンモニウム塩のコピーチャージPSY VP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、第四級アンモニウム塩のコピーチャージ NEG VP2036、コピーチャージ NX VP434(いずれもヘキスト社製);LRA−901、ホウ素錯体であるLR−147(日本カーリット株式会社製);キナクリドン、アゾ系顔料;スルホン酸基、カルボキシル基、四級アンモニウム塩等を有する高分子系の化合物などが挙げられる。
前記帯電制御剤は、前記マスターバッチと共に溶融混練させた後、溶解乃至分散させてもよく、前記トナーの各成分と共に前記有機溶剤に直接、溶解乃至分散させる際に添加してもよく、あるいはトナー粒子製造後にトナー表面に固定させてもよい。
【0050】
前記帯電制御剤の前記トナーにおける含有量としては、前記結着樹脂の種類、添加剤の有無、分散方法等により異なり、一概に規定することができないが、例えば、前記結着樹脂100質量部に対し、0.1質量部〜10質量部が好ましく、0.2質量部〜5質量部がより好ましい。前記含有量が、0.1質量部未満であると、帯電制御性が得られないことがあり、10質量部を超えると、トナーの帯電性が大きくなりすぎ、主帯電制御剤の効果を減退させて、現像ローラとの静電的吸引力が増大し、現像剤の流動性低下や画像濃度の低下を招くことがある。
【0051】
−その他の成分−
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、外添剤、流動性向上剤、クリーニング性向上剤、磁性材料、金属石鹸などが挙げられる。
【0052】
前記外添剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、シリカ微粒子、疎水化されたシリカ微粒子、脂肪酸金属塩(例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウムなど);金属酸化物(例えばチタニア、アルミナ、酸化錫、酸化アンチモンなど)又はこれらの疎水化物、フルオロポリマーなどが挙げられる。これらの中でも、疎水化されたシリカ微粒子、チタニア粒子、疎水化されたチタニア微粒子が特に好ましい。
【0053】
<粉砕工程>
前記粉砕工程は、少なくとも1つの粉砕機と、場合によっては少なくとも1つの粗粉分級工程を用いて微粉砕を行う工程であり、前記粉砕工程で用いられる該粉砕機としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、気流式粉砕機、流動層式粉砕機、機械式粉砕機などが挙げられる。
前記気流式粉砕機としては、例えば日本ニューマチック工業株式会社製の超音速ジェット粉砕機、日清エンジニアリング株式会社製のスーパージェットミル、ホソカワミクロン株式会社製のミクロンジェットなどが挙げられる。
前記流動層式粉砕機としては、例えば、ホソカワミクロン株式会社製のカウンタージェット粉砕機、栗本鐵工所社製のクロスジェットミルなどが挙げられる。
前記機械式粉砕機としては、例えば、株式会社アーステクニカ社製のクリプトロン、日清エンジニアリング株式会社製のスーパーローター、ターボ工業株式会社製のターボミルなどが挙げられる。
【0054】
(トナー)
前記トナーは、本発明の前記トナーの製造方法により製造される。
前記トナーの粒径4.0μm以下の微粉含有率としては、15個数%以下が好ましく、10個数%以下がより好ましい。また、粒径12.7μm以上の粗粉含有率としては、5.0質量%以下が好ましく、0質量%〜2.0質量%がより好ましい。前記トナーの体積平均粒径は、5.0μm〜12.0μmが好ましい。
ここで、前記粒度分布及び体積平均粒径は、例えば、粒度測定器粒度測定器(コールターカウンターTA−II、コールターマルチサイザーII、又はコールターマルチサイザーIII、ベックマンコールター社製)を用いて測定することができる。
【実施例】
【0055】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0056】
本実施例においては、スチレン−アクリル共重合体85質量部、及びカーボンブラック15質量部の混合物を溶融混練、冷却し、これをハンマーミルで粗粉砕し、流動層式粉砕機にて、微粉砕した粉体材料を、図1に示す分級装置によって分級を行った例を以下に示す。
以下の実施例及び比較例において、粒子の粒度分布及び体積平均粒径は、以下のようにして測定した。
【0057】
(実施例1)
図4に示すように、気体噴出手段が同心円上に4本90度間隔で、かつ、4本の気体噴出手段を結ぶ直線が正方形となるように設置し、粉体分散装置を構成しているD1及びD2との関係をD1:D2=3:2とし、H1及びH2との関係をH1:H2=1:0.95とした。また、傾斜角度αを45度、なす角βを180°とした。
各噴射口からの噴射圧力を0.1MPaに設定して、図1に示した分級装置の回転ロータの回転周速度を約60m/sに設定して、100kgの粉体材料を分級した。得られた粗粉は、体積平均粒径6.8μm(コールターカウンタによる測定)、4μm以下の微粉含有率(個数%)8.5%、12.7μm以上の粗粉含有率(重量%)0.0%であり、投入した粉体材料に対する分級後の粗粉の割合、すなわち分級歩留りは約63%であった。
【0058】
<体積平均粒径及び粒度分布の測定>
コールターカウンタ法による粒子の体積平均粒径及び粒度分布の測定装置としては、コールターカウンタTA−II、コールターマルチサイザーII、又はコールターマルチサイザーIII(いずれも、ベックマンコールター社製)があり、これらを用いて粒径及び粒度分布を測定した。
まず、電解水溶液100〜150mL中に分散剤として界面活性剤(アルキルベンゼンスルフォン酸塩)を0.1〜5mL加えた。ここで、電解液として1級塩化ナトリウムを用いて1質量%NaCl水溶液を調製したもので、例えばISOTON−II(コールター社製)が使用できる。次いで、測定試料を2〜20mg加えた。試料を懸濁した電解液は、超音波分散器で1〜3分間分散処理を行い、前記測定装置により、アパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、粉体の体積を測定して、体積分布を算出した。得られた分布から、粉体の体積平均粒径及び粒度分布を求めた。
チャンネルとしては、2.00〜2.52μm未満;2.52〜3.17μm未満;3.17〜4.00μm未満;4.00〜5.04μm未満;5.04〜6.35μm未満;6.35〜8.00μm未満;8.00〜10.08μm未満;10.08〜12.70μm未満;12.70〜16.00μm未満;16.00〜20.20μm未満;20.20〜25.40μm未満;25.40〜32.00μm未満;32.00〜40.30μm未満の13チャンネルを使用し、粒径2.00μm以上乃至40.30μm未満の粒子を対象とした。
【0059】
(実施例2)
図4に示す態様の粉体分散装置を構成し、なす角αを55°とした以外は、実施例1と同様の装置を用いたところ、得られた粗粉は、体積平均粒径6.7μm(コールターカウンタによる測定)、4μm以下の微粉含有率(個数%)8.7%、12.7μm以上の粗粉含有率(重量%)0.0%であり、投入した粉体材料に対する分級後の粗粉の割合、すなわち分級歩留りは約64%であった。
【0060】
(実施例3)
図4に示す態様の粉体分散装置を構成し、なす角βを90°とした以外は、実施例2と同様の装置を用いたところ、得られた粗粉は、体積平均粒径6.9μm(コールターカウンタによる測定)、4μm以下の微粉含有率(個数%)8.3%、12.7μm以上の粗粉含有率(重量%)0.0%であり、投入した粉体材料に対する分級後の粗粉の割合、すなわち分級歩留りは約67%であった。
【0061】
(実施例4)
図4に示す態様の粉体分散装置を構成し、D1及びD2との関係をD1:D2=2:1とした以外は、実施例3と同様の装置を用いたところ、得られた粗粉は、体積平均粒径6.9μm(コールターカウンタによる測定)、4μm以下の微粉含有率(個数%)8.5%、12.7μm以上の粗粉含有率(重量%)0.0%であり、投入した粉体材料に対する分級後の粗粉の割合、すなわち分級歩留りは約69%であった。
【0062】
(実施例5)
図4に示す態様の粉体分散装置を構成し、H1及びH2との関係をH1:H2=1:0.85とした以外は、実施例4と同様の装置を用いたところ、得られた粗粉は、体積平均粒径6.8μm(コールターカウンタによる測定)、4μm以下の微粉含有率(個数%)8.6%、12.7μm以上の粗粉含有率(重量%)0.0%であり、投入した粉体材料に対する分級後の粗粉の割合、すなわち分級歩留りは約70%であった。
【0063】
(実施例6)
図5に示すように、分散室の内壁面を多孔質部材で形成し、微量のエアーを噴出する機構を設けた以外は実施例5と同様の装置を用いたところ、得られた粗粉は、体積平均粒径6.8μm(コールターカウンタによる測定)、4μm以下の微粉含有率(個数%)8.8%、12.7μm以上の粗粉含有率(重量%)0.0%であり、投入した粉体材料に対する分級後の粗粉の割合、すなわち分級歩留りは約71%であった。
【0064】
(比較例1)
粉体材料を粉体分散装置で分散させないで分級した以外は実施例1と同様に行った。得られた粗粉は、体積平均粒径6.5μm(コールターカウンタによる測定)、4μm以下の微粉含有率(個数%)14.2%、12.7μm以上の粗粉含有率(重量%)0.0%であり、投入した粉体材料に対する分級後の粗粉の割合、すなわち分級歩留りは約59%であった。
【0065】
実施例1〜6及び比較例1の結果を表1にまとめて示す。
【表1】

表中「α」はなす角α、「β」はなす角βを示す。
【0066】
表1から、実施例1〜実施例6の歩留まりは、63%〜71%であるのに対し、比較例1の歩留まりは、59%と実施例1〜実施例6の歩留まりよりも低いことがわかる。このことから、本発明の粉体分散装置を使用することで、分級精度の向上と安定を達成し得、必要とする大きさの範囲の粒子を高収率で分離することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 粉体材料供給口
2 分級エアー供給口
3 粗粉排出口
4 微粉排出口
5 回転ロータ
6 ルーバー
7 分級室
8 粗粉排出室
9 微粉排出室
13 貫通孔
20 供給口
21 分散室
211 傾斜面
22 気体噴出手段
23 排出口
231 開口部
24 気体噴出口
25 多孔質部材
26 粉体凝集物
30 気流
【先行技術文献】
【特許文献】
【0068】
【特許文献1】特許第4010625号公報
【特許文献2】特開2001−293438号公報
【特許文献3】特開2008−26457号公報
【特許文献4】特開2007−75681号公報
【特許文献5】特開2007−187736号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体凝集物を分散させるための粉体分散装置であって、
前記粉体凝集物を含む粉体を供給するための供給口及び粉体を排出するための排出口を有する分散室と、
前記分散室内に設けられた気体噴出手段と、を備え、
前記気体噴出手段により発生させた気流のせん断力によって前記粉体凝集物を分散させることを特徴とする粉体分散装置。
【請求項2】
気体噴出手段は、気流同士の衝突が生じるように配置されている請求項1に記載の粉体分散装置。
【請求項3】
気流として、対流が発生するように気体噴出手段を配置する請求項1から2のいずれかに記載の粉体分散装置。
【請求項4】
気体噴出手段は、供給口を有する壁面に設けられている請求項1から3のいずれかに記載の粉体分散装置。
【請求項5】
排出口は、供給口に対向する位置に設けられている請求項1から4のいずれかに記載の粉体分散装置。
【請求項6】
排出口から気体噴出手段の気体噴出口に向かって、内径が連続的に大きくなる傾斜面を備える請求項1から5のいずれかに記載の粉体分散装置。
【請求項7】
気体噴出手段は、供給口が設けられている分散室の壁面上に設けられており、前記壁面に対して垂直方向に伸びる管状構造である請求項1から6のいずれかに記載の粉体分散装置。
【請求項8】
傾斜面に向かって気体噴出手段から気流を噴出させる請求項6から7のいずれかに記載の粉体分散装置。
【請求項9】
傾斜面と排出口の開口部とのなす角αは、40度〜60度である請求項6から8のいずれかに記載の粉体分散装置。
【請求項10】
分散室内部に設けられる複数の気体噴出手段が、ノズル状に形成されている請求項1から9のいずれかに記載の粉体分散装置。
【請求項11】
分散室内部に設けられる複数の気体噴出手段の気体噴出口が、分散室の内側に向いて形成されている請求項1から10のいずれかに記載の粉体分散装置。
【請求項12】
気体噴出手段の長手方向に沿った軸線と前記気体噴出手段の気体噴出口とのなす角βは、90度〜180度である請求項1から11のいずれかに記載の粉体分散装置。
【請求項13】
分散室内部に設けられる複数の気体噴出手段の気体噴出口が、任意の位置に調整可能な機構を有している請求項1から12のいずれかに記載の粉体分散装置。
【請求項14】
分散室内部の内壁面を多孔質部材で形成し、その多孔質部材から微量の気体を噴出する請求項1から13のいずれかに記載の粉体分散装置。
【請求項15】
気体噴出手段は、複数有する請求項1から14のいずれかに記載の粉体分散装置。
【請求項16】
気体噴出手段は、分散室の供給口が設けられている壁面の同心円上に4つ備えており、かつ、前記4つの気体噴出手段を結ぶ直線が正方形となるように備える請求項1から15のいずれかに記載の粉体分散装置。
【請求項17】
粉体凝集物を含む粉体を分散させるための分散手段と、前記分散手段で分散処理された粉体を分級するための分級手段と、を備える分級装置であって、前記分散手段が請求項1から16のいずれかに記載の粉体分散装置であることを特徴とする分級装置。
【請求項18】
請求項17に記載の分級装置を用いたことを特徴とする分級方法。
【請求項19】
請求項17に記載の分級装置を用いて粉体を分級する工程を少なくとも含むことを特徴とするトナーの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−110512(P2011−110512A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270159(P2009−270159)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】