説明

粉体吸引回収車

【課題】粉体を効率良くレシーバタンク内に回収することができるとともに、レシーバタンク内からの粉体の排出時に粉体の飛散が生じることがなく、1台の車両で粉体の回収・排出・他車両への積み込みを効率良く行うことが可能であり、メンテナンスも容易である粉体吸引回収車を提供すること。
【解決手段】回収物を収容するレシーバタンク1と、該レシーバタンク内に粉体を導入する吸引力を発生させる吸引装置2とを車両上に備えている粉体吸引回収車であって、前記レシーバタンク1は、内部空間が直列に接続されたサイクロン付きホッパ11とバグフィルタ付きホッパ12とから構成されるとともに、吸引方向の上流側にサイクロン付きホッパが配置され、下流側にバグフィルタ付きホッパが配置されており、各ホッパは、夫々回収物の排出口を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粉体吸引回収車に関し、より詳しくは、粉体を効率良く回収することができるとともに排出時に粉体の飛散が生じず、1台の車両で粉体の回収・排出・他車両への積み込みを効率良く行うことが可能な粉体吸引回収車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工場や発電所等から排出される灰や塵埃などの粉体を回収するための粉体吸引回収車としては、吸引した粉体を内部に収容するレシーバタンクと、該レシーバタンク内に粉体を導入するための吸引力を発生させる吸引装置とを車両上に搭載した粉体吸引回収車が存在している。
このような粉体吸引回収車としては、例えば、下記特許文献1に開示された車両が公知である。
【0003】
特許文献1に記載された車両は、レシーバタンクと吸引装置との間にサイクロンとバグフィルタを備えたものであり、吸引装置で発生した吸引力により吸引された粉体をレシーバタンク内に貯蔵するとともに、レシーバタンクを通過した微細な粉体をサイクロンとバグフィルタにより順次補足するように構成されている。
【0004】
しかしながら、このような従来の粉体吸引回収車では、吸引された粉体のうち、レシーバタンク内には比重の大きいものしか回収されず、比重の小さいものはレシーバタンク外のサイクロンやバグフィルタに回収されるため、レシーバタンク内への粉体の回収効率が低かった。
また、レシーバタンクに回収した粉体を排出するために圧送機構を設けているため、吸引と圧送の切り替え機構を必要とし、装置の複雑化と製造コストの増大を招いていた。
更に、レシーバタンクに回収した粉体を外部に排出する時に粉体が外部に飛散することがあり、周囲を汚染したり作業者の健康にも悪影響を及ぼしたりするおそれがあった。
また、レシーバタンクに回収した粉体を輸送等のために他の車両に積み込む場合には、クレーン車等の別の車両を準備する必要があり、作業効率が悪かった。
【0005】
また、下記特許文献2には、バグフィルタを内部に設置したレシーバタンクが開示されている。
しかしながら、レシーバタンク内にバグフィルタを設置した場合、短時間毎にバグフィルタの除塵作業が必要となり、その度に吸引作業を一旦停止しなければならないため、吸引回収作業の効率が非常に悪かった。
また、フィルタの寿命が短くなり、短期間でフィルタを交換しなければならない上に、レシーバタンク内に設置されたバグフィルタのメンテナンスは困難であった。
【0006】
【特許文献1】特開2007−98989号公報
【特許文献2】実用新案登録第2528608号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記したような従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、粉体を効率良くレシーバタンク内に回収することができるとともに、レシーバタンク内からの粉体の排出時に粉体の飛散が生じることがなく、1台の車両で粉体の回収・排出・他車両への積み込みを効率良く行うことが可能であり、メンテナンスも容易である粉体吸引回収車を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、回収物を収容するレシーバタンクと、該レシーバタンク内に粉体を導入する吸引力を発生させる吸引装置とを車両上に備えている粉体吸引回収車であって、前記レシーバタンクは、内部空間が直列に接続されたサイクロン付きホッパとバグフィルタ付きホッパとから構成されるとともに、吸引方向の上流側にサイクロン付きホッパが配置され、下流側にバグフィルタ付きホッパが配置されており、各ホッパは、夫々回収物の排出口を備えていることを特徴とする粉体吸引回収車に関する。
【0009】
請求項2に係る発明は、前記レシーバタンクを傾斜させるダンプアップ機構を備えているとともに、前記サイクロン付きホッパとバグフィルタ付きホッパは、前記車両の幅方向に並設され且つ前記排出口を後端部に備えていることを特徴とする請求項1記載の粉体吸引回収車に関する。
【0010】
請求項3に係る発明は、前記サイクロン付きホッパ及びバグフィルタ付きホッパの排出口に夫々取り付けられるコンテナバッグを備えていることを特徴とする請求項2記載の粉体吸引回収車に関する。
【0011】
請求項4に係る発明は、前記ダンプアップ機構は、前記レシーバタンクを地面に対して垂直な角度まで傾斜可能であることを特徴とする請求項3記載の粉体回収車に関する。
【0012】
請求項5に係る発明は、回収物を収容した前記コンテナバッグを吊り下げ可能なクレーンを備えており、該クレーンのアームは、前記サイクロン付きホッパとバグフィルタ付きホッパとの間の空間に沿って延びていることを特徴とする請求項2又は3記載の粉体吸引回収車に関する。
【0013】
請求項6に係る発明は、前記サイクロン付きホッパは、粉体用吸引口と液体用吸引口とを備えており、該サイクロン付きホッパの内部において、前記粉体用吸引口に接続された管はサイクロン内部に開口し、前記液体用吸引口に接続された管はサイクロン外部に開口していることを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載の粉体吸引回収車に関する。
【0014】
請求項7に係る発明は、前記サイクロン付きホッパから前記吸引装置へと繋がる経路において、前記バグフィルタ付きホッパを経由する粉体用経路と、バグフィルタ付きホッパを経由しない液体用経路を備えており、これら両経路の切り替えが可能とされていることを特徴とする請求項6記載の粉体吸引回収車に関する。
【0015】
請求項8に係る発明は、前記バグフィルタ付きホッパの外殻部分は分離可能な複数の部分から構成されており、該バグフィルタ付きホッパ内部に配設されたバグフィルタは、前記複数の部分のうちの1つと共に該ホッパ内から取り出し可能に構成されていることを特徴とする請求項1乃至7いずれかに記載の粉体吸引回収車に関する。
【0016】
請求項9に係る発明は、前記吸引装置を覆うカバーを備えており、該カバーの内部には、該吸引装置の上部に吸引用ホースを収容可能な空間が形成されていることを特徴とする請求項1乃至8いずれかに記載の粉体吸引回収車に関する。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る発明によれば、レシーバタンクが、内部空間が直列に接続されたサイクロン付きホッパとバグフィルタ付きホッパとから構成されるともに、吸引方向の上流側にサイクロン付きホッパが配置され、下流側にバグフィルタ付きホッパが配置されていることにより、サイクロン付きホッパ内に比重の大きい粉体やフィルタに悪影響を及ぼす夾雑物を回収した後、バグフィルタ付きホッパ内に比重の小さい粉体を回収することができる。
そのため、レシーバタンク内への粉体の回収効率を高めることができ、フィルタの寿命を大幅に延ばすことも可能となる。
また、各ホッパが夫々粉体の排出口を備えていることにより、各ホッパに回収された粉体を別々の排出口から排出することができ、ホッパに回収された粉体を漏れなく効率的にコンテナバッグ等に移し替えることが可能となる。
【0018】
請求項2に係る発明によれば、レシーバタンクを傾斜させるダンプアップ機構を備えているとともに、サイクロン付きホッパとバグフィルタ付きホッパは、車両の幅方向に並設され且つ排出口を後端部に備えていることにより、ダンプアップ機構にてサイクロン付きホッパとバグフィルタ付きホッパを同時に傾斜させて後端部の排出口から粉体を排出することができ、粉体の排出作業を効率良く行うことが可能となる。また、レシーバタンクの役割を持たせた2つのホッパを車両上に小スペースで搭載することができる。
【0019】
請求項3に係る発明によれば、サイクロン付きホッパ及びバグフィルタ付きホッパの排出口に夫々取り付けられるコンテナバッグを備えているため、2つのホッパに収容された粉体を別々にコンテナバッグへと排出することが可能となり、ホッパに回収された粉体を漏れなく効率的にコンテナバッグに移し替えることが可能となる。
【0020】
請求項4に係る発明によれば、ダンプアップ機構がレシーバタンクを地面に対して垂直な角度まで傾斜可能であることにより、圧送機構を設けることなく、レシーバタンクに回収された粉体のほぼ全量を確実にコンテナバッグへと移し替えることができる。
【0021】
請求項5に係る発明によれば、粉体を収容したコンテナバッグを吊り下げ可能なクレーンを備えており、該クレーンのアームはサイクロン付きホッパとバグフィルタ付きホッパとの間の空間に沿って延びていることにより、粉体を移し替えたコンテナバッグをクレーンを使用して他の車両へと積載することができ、他のクレーン車を使用することなく1台の車両で粉体の回収・排出・他車両への積み込みを効率良く行うことが可能となる。また、クレーンのアームを2つのホッパの間に収容できるため、車両上にアーム収容のためのスペースを別途必要とせず、車両のコンパクト化が可能となる。
【0022】
請求項6に係る発明によれば、サイクロン付きホッパは粉体用吸引口と液体用吸引口とを備えており、該サイクロン付きホッパの内部において、粉体用吸引口に接続された管はサイクロン内部に開口し、液体用吸引口に接続された管はサイクロン外部に開口していることにより、粉体用吸引口から吸引された比重の小さい粉体はサイクロンを経てバグフィルタ付きホッパに回収し、比重の大きい液体等はサイクロン内に導入せずにサイクロン付きホッパ内に回収することができ、吸引物の分別回収が可能となる。
【0023】
請求項7に係る発明によれば、バグフィルタ付きホッパを経由する粉体用経路と、バグフィルタ付きホッパを経由しない液体用経路を備えており、これら両経路の切り替えが可能とされているため、回収対象物が粉体の場合と液体の場合とで経路を切り替えることで、1台の車両で粉体と液体の両方を確実に回収することが可能となる。
【0024】
請求項8に係る発明によれば、バグフィルタ付きホッパの外殻部分は分離可能な複数の部分から構成されており、該バグフィルタ付きホッパ内部に配設されたバグフィルタは、複数の部分のうちの1つと共に該ホッパ内から取り出し可能に構成されていることにより、バグフィルタのメンテナンスを容易に行うことができる。
【0025】
請求項9に係る発明によれば、吸引装置を覆うカバーを備えており、該カバーの内部には該吸引装置の上部に吸引用ホースを収容可能な空間が形成されていることにより、吸引装置から発生する騒音を抑制することができるとともに、粉体の外部への飛散も確実に防止することが可能となる。また、車両上のスペースを有効利用して吸引用ホースを収容することができ、車両をコンパクトに構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明に係る粉体吸引回収車の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は本発明に係る粉体吸引回収車の平面図であり、図2は本発明に係る粉体吸引回収車の左側面図である。
本発明に係る粉体吸引回収車は、粉体を収容するレシーバタンク(1)と、該レシーバタンク内に粉体を導入する吸引力を発生させる吸引装置(2)とを車両上に搭載している。
【0027】
レシーバタンク(1)は、サイクロン付きホッパ(11)とバグフィルタ付きホッパ(12)とから構成されている。尚、本明細書において、レシーバタンク(1)との文言は、サイクロン付きホッパ(11)とバグフィルタ付きホッパ(12)の両方を含む概念として使用している。
サイクロン付きホッパ(11)とバグフィルタ付きホッパ(12)は、ほぼ同じ外形を有しており、図1に示す如く車両の幅方向に左右に並んで配置されて一体的にダンプアップが可能なように連結されている。サイクロン付きホッパ(11)とバグフィルタ付きホッパ(12)の内部空間は、後に詳述するように直列に接続されており、吸引方向の上流側にサイクロン付きホッパ(11)が配置され、下流側にバグフィルタ付きホッパ(12)が配置されている。
【0028】
また、車両上には油圧駆動のクレーン(3)が備えられている。
クレーン(3)の基部はレシーバタンク(1)の前方において車両に固定されており、クレーン(3)のアームはサイクロン付きホッパ(11)とバグフィルタ付きホッパ(12)の間に形成された空間に沿って延びている。より具体的には、空間の上方に沿って延びている。
【0029】
吸引装置(2)の側方及び上方は、略直方体形状のカバー(4)により覆われている。
これにより、騒音を低減することができるとともに、粉体が外部に飛散することを確実に防止できる。
また、カバー(4)の内部には吸引装置(2)の上部に独立した空間(41)が形成されており、この空間(41)内に吸引用ホースを収容することが可能となっている。
【0030】
図3乃至図6はサイクロン付きホッパ(11)を示す図であって、図3は平面図、図4は左側面図、図5は底面図、図6は図4のA方向矢視図である。
サイクロン付きホッパ(11)は、前方部分は略直方体状に形成され、後方部分は下面が後端部に向かうにつれて高くなる傾斜面に形成されており(図4参照)、後端部には開閉可能な蓋(5)が取り付けられている。この蓋(5)を開放した時に表れる開口は、ホッパ(11)内に回収された粉体等の回収物を排出する時の排出口となる。
【0031】
サイクロン付きホッパ(11)の外殻部分は、3つの部分を組み合わせることによって構成されている(図4参照)。
第一の部分(11a)は蓋(5)を備えた後端部分(フード)であって、図4は後端部分を取り付けている状態を示しており、図3及び図5は後端部分を取り外した状態を示している。
第二の部分(11b)は略直方体状に形成された前方部分の前方寄り部分、第三の部分(11c)は残りの部分であり、第二の部分と第三の部分は複数のボルトにより連結されている。また、第二の部分(11b)の前端部には、ワンタッチ式固定用金具により蓋(8)が取り付けられている。
【0032】
このような構成を採用していることにより、サイクロン付きホッパ(11)の中心にある第三の部分(11c)から、第一の部分(11a)と第二の部分(11b)を分離することができ、また蓋(8)を取り外すことができる。
そのため、サイクロン付きホッパ(11)内部に収容されたサイクロン(後述する)のメンテナンスを容易に行うことが可能である。
【0033】
サイクロン付きホッパ(11)の内部にはサイクロン(9)が配設されている。
サイクロン(9)は、内筒(91)と外筒(92)を有し、外筒(92)は下端部が絞られたコーン状に形成された公知の構造のものであって、外筒(92)の下端部がサイクロン付きホッパ(11)の後端部に向くように配置されている。
尚、後述するように、粉体の吸引回収作業時においては、サイクロン付きホッパ(11)は地面に対して垂直にダンプアップされて後端部が下になり、このときサイクロン(9)の外筒下端部が下になる。
【0034】
サイクロン付きホッパ(11)には、粉体等の比重の小さいものを吸引するための粉体用吸引口(13)と、液体等の比重の大きいものを吸引するための液体用吸引口(14)が設けられている。
粉体用吸引口(13)はサイクロン付きホッパ(11)の底面に開口されており、粉体用吸引口(13)に接続された管(15)はサイクロン(9)の吸入口としてサイクロン内部に開口している。
液体用吸引口(14)はサイクロン付きホッパ(11)の側面に開口されており、液体用吸引口(9)に接続された管(16)はサイクロン(9)の外部に開口されている。
これにより、粉体用吸引口(13)から吸引された比重の小さい粉体はサイクロン(9)内に導入してバグフィルタ付きホッパ(12)へと送り、液体用吸引口(14)から吸引された比重の大きい液体等はサイクロン内に導入せずにサイクロン付きホッパ(11)内に回収することができ、吸引物を比重に応じて分別回収することが可能となる。
【0035】
サイクロン付きホッパ(11)の右側面にはサイクロン(9)の排出口(10)が開口しており、この排出口(10)はサイクロン付きホッパ(11)の右側に並んで配置されたバグフィルタ付きホッパ(12)の入口と接続されている。
これにより、サイクロン(9)を通過した粉体は、バグフィルタ付きホッパ(12)の内部へと導入される。
【0036】
図7乃至図10はバグフィルタ付きホッパ(12)を示す図であって、図7は平面図、図8は右側面図、図9は底面図、図10は図8のA方向矢視図である。
バグフィルタ付きホッパ(12)は、サイクロン付きホッパ(11)とほぼ同じ外形を有している。具体的には、前方部分は略直方体状に形成され、後方部分は下面が後端部に向かうにつれて高くなる傾斜面に形成されており(図8参照)、後端部には開閉可能な蓋(30)が取り付けられている。この蓋(17)を開放した時に表れる開口は、ホッパ(12)内に回収された粉体等の回収物を排出する時の排出口となる。
【0037】
バグフィルタ付きホッパ(12)の内部にはバグフィルタ(18)が配設されている。
バグフィルタ(18)は、多数の袋状濾布を備えた公知の構造のものであって、濾布の下端部がバグフィルタ付きホッパ(12)の後端部に向くように配置されている。
尚、後述するように、粉体の吸引回収作業時においては、バグフィルタ付きホッパ(12)は地面に対して垂直にダンプアップされて後端部が下になり、このときバグフィルタ(18)の濾布の下端部が下になる。
【0038】
バグフィルタ付きホッパ(12)の外殻部分も、サイクロン付きホッパ(11)と同様に3つの部分を組み合わせることによって構成されている(図8参照)。
第一の部分(12a)は蓋(17)を備えた後端部分(フード)であって、図8は後端部分を取り付けている状態を示しており、図7及び図9は後端部分を取り外した状態を示している。
第二の部分(12b)は略直方体状に形成された前方部分の前方寄り部分、第三の部分(12c)は残りの部分であり、第二の部分と第三の部分とは複数のボルトにより連結されている。また、第二の部分(12b)の前端部には、ワンタッチ式固定用金具により蓋(30)が取り付けられている。
【0039】
このような構成を採用していることにより、バグフィルタ付きホッパ(12)の中心にある第三の部分(12c)から、第一の部分(12a)と第二の部分(12b)を分離することができ、また蓋(30)を取り外すことができる。
尚、第二の部分(12b)にはバグフィルタ(18)が固定されており、第二の部分(12b)を分離すると、バグフィルタ(18)をホッパ(12)から取り外すことができるようになっている。
そのため、バグフィルタ付きホッパ(12)内部に収容されたバグフィルタ(18)のメンテナンスを非常に容易に行うことが可能である。
【0040】
バグフィルタ付きホッパ(12)の左側面には、サイクロン付きホッパ(11)のサイクロン(9)の排出口(10)から排出された気体を取り入れる入口(31)が開口している。
また、バグフィルタ付きホッパ(12)の右側面には、バグフィルタ(18)を通過した気体を取り出す出口(32)が開口している。
【0041】
また、本発明に係る粉体吸引回収車は、レシーバタンク(1)を傾斜させるダンプアップ機構を備えている。
ダンプアップ機構は、図11に示すように、レシーバタンク(1)を地面に対して垂直な角度まで傾斜させることが可能である。このとき、サイクロン付きホッパ(11)とバグフィルタ付きホッパ(12)は一体的に傾斜するため、後述するように両方のホッパ内の回収物を同時にコンテナバッグ内に排出することができ、作業性に非常に優れている。
【0042】
図12は本発明に係る粉体吸引回収車のフローシートである。
吸引装置(2)は、直列に接続された2台のルーツブロワ(21)と、ルーツブロワ(21)の吸気口側に接続された水槽からなる3次キャッチャ(22)と、ルーツブロワ(21)の吐出口側に吐出サイレンサ(23)を介して接続された水槽からなる4次キャッチャ(24)とから構成されている。
図12中の(25)は逆止弁、(26)は熱交換器、(27)は負荷開放弁、(28)はバキュームブレーカである。また、図12中の矢印は吸引作業時の空気の流れ方向を示している。
【0043】
バグフィルタ付きホッパ(12)の出口(32)は、3次キャッチャ(22)の吸気口側に接続されており、3次キャッチャ(22)はバグフィルタ(18)が破損したときに粉塵を捕捉し、ルーツブロワ(21)への粉塵の廻り込みを防止する。
【0044】
図12において、サイクロン付きホッパ(11)が2つ示されているが、これは吸引回収物の経路を表すための図示の都合上である。つまり、回収物の経路を図示するために、サイクロン付きホッパ(11)を2種類の向きで描いている。
【0045】
図12中に仮想線で示されているのは液体用経路(33)であり、この経路はサイクロン付きホッパ(11)の排出口(10)と3次キャッチャ(22)の吸気口とをバグフィルタ付きホッパ(12)を介さずに直接接続している。
本発明では、切り替えバルブ(39)により、図12中に実線で示されているサイクロン付きホッパ(11)の排出口(10)と3次キャッチャ(22)の吸気口とをバグフィルタ付きホッパ(12)を介して接続する経路(粉体用経路)(34)と、上記液体用経路(33)とを選択的に切り替えることが可能とされている。
【0046】
以下、図11及び図12を参照しながら、本発明に係る粉体吸引回収車における粉体等の回収物の吸引回収時の作用について説明する。
先ず、図11に示すように、アウトリガー(37)を車両の左右両側に張り出して、レシーバタンク(1)を地面に対して垂直となるまでダンプアップする。
次いで、サイクロン付きホッパ(11)及びバグフィルタ付きホッパ(12)の後端部に夫々コンテナバッグ(35)を取り付けて吸引作業を開始する。このとき、両ホッパ後端部の蓋(5)(17)は閉じておく。
【0047】
本発明に係る粉体吸引回収車においては、レシーバタンク(1)の底面に、レシーバタンク(1)がダンプアップされていない状態で自動的に開放して該タンク内部と外部とを連通させ、レシーバタンク(1)がダンプアップされると自動的に閉鎖するバルブを取り付けることが好ましい。
このようなバルブを取り付けると、レシーバタンク(1)がダンプアップされていない状態では吸引作業が不可能となるため、サイクロンやバグフィルタが正常な向きになっていない状態(横向きになった状態)で吸引作業が行われることを確実に防止できる。
【0048】
ここで、吸引時の作用について具体的に説明する。
先ず、回収物が乾燥粉体である場合について説明する。
この場合、吸引用ホース(36)をサイクロン付きホッパ(11)の粉体用吸引口(13)に接続し、サイクロン付きホッパ(11)と3次キャッチャ(22)との間の経路を粉体用経路(34)側に切り替えた状態でルーツブロワ(21)を駆動させる。
【0049】
ルーツブロワ(21)を駆動させると、回収物は吸引ホース(36)の先端から吸引され、サイクロン付きホッパ(11)内部に配設されたサイクロン(9)内に導入される。
サイクロン(9)内に導入された回収物のうち、比重が大きい夾雑物等は外筒(92)を通って下方に落下してサイクロン付きホッパ(11)内に回収される。一方、比重が小さい粉体は内筒(91)を通って上昇して、経路(42)を通ってバグフィルタ付きホッパ(12)内に導入される。
【0050】
バグフィルタ付きホッパ(12)内に導入された回収物のうち、比重が大きい粉体は下方に落下し、比重が小さい粉体はバグフィルタ(18)により捕捉される。
バグフィルタ(18)を通過した気体は、3次キャッチャ(22)に導入され、2台のルーツブロワ(21)を通って4次キャッチャ(24)へと導入され、4次キャッチャ(24)により大気中に放出される。
【0051】
次に、回収物が液体や湿潤物である場合について説明する。
この場合、吸引用ホース(36)をサイクロン付きホッパ(11)の液体用吸引口(14)に接続し、サイクロン付きホッパ(11)と3次キャッチャ(22)との間の経路を液体用経路(33)側に切り替えた状態でルーツブロワ(21)を駆動させる。
【0052】
ルーツブロワ(21)を駆動すると、回収物は吸引ホース(36)の先端から吸引され、サイクロン付きホッパ(11)内部のサイクロン(9)外に導入される。ここで、大部分の回収物はサイクロン付きホッパ(11)内に回収されるが、回収物中に含まれている比重が小さい粉体等はサイクロン(9)の内部を通ってサイクロン付きホッパ(11)から排出される。
【0053】
サイクロン付きホッパ(11)から排出された気体は、液体用経路(33)を通って3次キャッチャ(22)に導入されて気体中に含まれる粉塵が捕捉された後、2台のルーツブロワ(21)を通って4次キャッチャ(24)へと導入され、4次キャッチャ(24)により残存する微細成分が捕捉された後、大気中に放出される。
【0054】
以上説明した作用により回収物がレシーバタンク内に回収される。
ここで、上記した如く、粉体用経路(34)と液体用経路(33)を切り替えることによって、比重が大きいものをサイクロン付きホッパ(11)に、比重が小さいものをバグフィルタ付きホッパ(12)にと、分別回収することができる。
具体的には、ガラスカレットを回収する場合、比重の大きいカレットはサイクロン付きホッパ(11)に回収し、比重の小さい粉体はバグフィルタ付きホッパ(12)に回収することができる。バグフィルタ付きホッパ(12)に回収される微粉はカレットのリサイクルに悪影響を与えるので、このように回収と同時に分別ができるとリサイクルが非常に容易となる。
また、原油タンク等の錆や塗膜の除去に用いるショットブラストの廃砂を回収する場合、ショット材はサイクロン付きホッパ(11)に回収し、比重の小さい錆や塗膜はバグフィルタ付きホッパ(12)に回収することができるため、ショット材を繰り返し再利用することが可能となる。
【0055】
レシーバタンク(1)に取り付けた満量センサが満量を検知すると吸引作業を停止し、手動レバーを操作して満量になった側のホッパ(11又は12)の蓋(5又は17)を開放する。
すると、ホッパ(11又は12)内に回収された粉体は全量滑り落ち、コンテナバッグ(35)に回収される。このとき、図13に示すように、上部が開口された升状部を有する台車(38)を地面に設置して、コンテナバッグ(35)の下方部分を台車(38)の升状部に収容した状態で作業を行うと、コンテナバッグが安定するとともに台車を利用してコンテナバッグを移動させることができるため好ましい。
粉体が収容されたコンテナバッグ(35)は、クレーン(3)により吊り上げられて、カーゴトラック等の別の運搬用の車両(40)へと積み込まれ(図14参照)、処分場等へと輸送される。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明に係る粉体吸引回収車は、工場等の濾過装置内の粉体物をその現場にて回収して袋詰めする場合に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明に係る粉体吸引回収車の平面図である。
【図2】本発明に係る粉体吸引回収車の左側面図である。
【図3】サイクロン付きホッパの平面図である。
【図4】サイクロン付きホッパの左側面図である。
【図5】サイクロン付きホッパの底面図である。
【図6】図4のA方向矢視図である。
【図7】バグフィルタ付きホッパの平面図である。
【図8】バグフィルタ付きホッパの右側面図である。
【図9】バグフィルタ付きホッパの底面図である。
【図10】図8のA方向矢視図である。
【図11】レシーバタンクをダンプアップした状態を示す図である。
【図12】本発明に係る粉体吸引回収車のフローシートである。
【図13】レシーバタンクからコンテナバッグへ回収物を移し替えている状態を示す図であって、(a)は側面図、(b)は作業時のレシーバタンクを後方から見た図である。
【図14】コンテナバッグをクレーンにより吊り上げて別の運搬用車両へと積み込んでいる状態を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
1 レシーバタンク
11 サイクロン付きホッパ
12 バグフィルタ付きホッパ
2 吸引装置
3 クレーン
4 カバー
41 カバー内の空間
5 蓋(サイクロン付きホッパ)
9 サイクロン
13 粉体用吸引口
14 液体用吸引口
15 管(粉体用)
16 管(液体用)
17 蓋(バグフィルタ付きホッパ)
18 バグフィルタ
33 液体用経路
34 粉体用経路
35 コンテナバッグ
36 吸引用ホース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回収物を収容するレシーバタンクと、該レシーバタンク内に粉体を導入する吸引力を発生させる吸引装置とを車両上に備えている粉体吸引回収車であって、
前記レシーバタンクは、内部空間が直列に接続されたサイクロン付きホッパとバグフィルタ付きホッパとから構成されるとともに、吸引方向の上流側にサイクロン付きホッパが配置され、下流側にバグフィルタ付きホッパが配置されており、
各ホッパは、夫々回収物の排出口を備えていることを特徴とする粉体吸引回収車。
【請求項2】
前記レシーバタンクを傾斜させるダンプアップ機構を備えているとともに、
前記サイクロン付きホッパとバグフィルタ付きホッパは、前記車両の幅方向に並設され且つ前記排出口を後端部に備えている
ことを特徴とする請求項1記載の粉体吸引回収車。
【請求項3】
前記サイクロン付きホッパ及びバグフィルタ付きホッパの排出口に夫々取り付けられるコンテナバッグを備えていることを特徴とする請求項2記載の粉体吸引回収車。
【請求項4】
前記ダンプアップ機構は、前記レシーバタンクを地面に対して垂直な角度まで傾斜可能であることを特徴とする請求項3記載の粉体回収車。
【請求項5】
回収物を収容した前記コンテナバッグを吊り下げ可能なクレーンを備えており、
該クレーンのアームは、前記サイクロン付きホッパとバグフィルタ付きホッパとの間の空間に沿って延びていることを特徴とする請求項2又は3記載の粉体吸引回収車。
【請求項6】
前記サイクロン付きホッパは、粉体用吸引口と液体用吸引口とを備えており、
該サイクロン付きホッパの内部において、前記粉体用吸引口に接続された管はサイクロン内部に開口し、前記液体用吸引口に接続された管はサイクロン外部に開口している
ことを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載の粉体吸引回収車。
【請求項7】
前記サイクロン付きホッパから前記吸引装置へと繋がる経路において、
前記バグフィルタ付きホッパを経由する粉体用経路と、バグフィルタ付きホッパを経由しない液体用経路を備えており、これら両経路の切り替えが可能とされていることを特徴とする請求項6記載の粉体吸引回収車。
【請求項8】
前記バグフィルタ付きホッパの外殻部分は分離可能な複数の部分から構成されており、
該バグフィルタ付きホッパ内部に配設されたバグフィルタは、前記複数の部分のうちの1つと共に該ホッパ内から取り出し可能に構成されていることを特徴とする請求項1乃至7いずれかに記載の粉体吸引回収車。
【請求項9】
前記吸引装置を覆うカバーを備えており、
該カバーの内部には、該吸引装置の上部に吸引用ホースを収容可能な空間が形成されていることを特徴とする請求項1乃至8いずれかに記載の粉体吸引回収車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−1282(P2009−1282A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−160908(P2007−160908)
【出願日】平成19年6月19日(2007.6.19)
【出願人】(596149958)矢野口自工株式会社 (2)
【出願人】(000165343)兼松エンジニアリング株式会社 (23)
【Fターム(参考)】