説明

粉末エアゾール剤

【課題】従来知られている粉末エアゾールの技術で、塩酸テルビナフィンを配合しても製剤の付着性、使用感ともに優れた粉末エアゾールの提供。
【解決手段】塩酸テルビナフィンを配合したエアゾール剤において、粉末成分として炭酸マグネシウム、酸化チタン、コーンスターチ及びメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを配合したことを特徴とする粉末エアゾール剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩酸テルビナフィンを配合した粉末エアゾール剤に関する。
【背景技術】
【0002】
水虫などに代表される表在性真菌症は、患部が比較的乾燥した症状と湿潤した症状とに大きく分けられ、これら患部の状況に適した製剤が必要となっている。近年、単独使用で優れた作用を示す塩酸テルビナフィンなどを配合した製剤が市販されている。
【0003】
一般的に湿潤した症状に対しては、クリーム剤や粉末エアゾール剤などが用いられることが多い。
【0004】
従来、塩酸テルビナフィンを配合したスプレー剤は市販されているものの、湿潤患部に塗布するのに好適な粉末エアゾール(パウダースプレー)は市販されていない。
【0005】
塩酸テルビナフィンを配合した粉末エアゾール剤としては、アリルアミン系坑真菌剤に脂肪酸エステル、粉末成分、アルコール系溶剤および鎮痒成分を配合することにより高い効果を有する抗真菌組成物に関する技術(特許文献1参照)、(A)抗真菌剤、(B)付着補助剤及び(C)粉末成分を含み、(C)粉末成分として、デンプン、撥水性粉末及び酸化チタンを含有することにより使用感が向上した抗真菌性外用組成物に関する技術(特許文献2参照)などが開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開2006−232854
【特許文献2】特開2005−289879
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来知られている粉末エアゾールの技術で塩酸テルビナフィン配合粉末エアゾール剤を製造したところ、付着性、使用感ともに優れたものはなかった。
【0008】
本発明は塩酸テルビナフィンを配合しても製剤の付着性、使用感ともに優れた粉末エアゾールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、課題を解決するために種々検討した結果、塩酸テルビナフィンを含有する粉末エアゾールにおいて、粉末成分として炭酸マグネシウム、酸化チタン、コーンスターチ及びメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを全て配合することにより優れた付着性と、良好な使用感の両立ができることを見出し本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、
(1)塩酸テルビナフィンを配合したエアゾール剤において、粉末成分として炭酸マグネシウム、酸化チタン、コーンスターチ及びメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを配合したことを特徴とする粉末エアゾール剤、
(2)塩酸テルビナフィン、噴射剤、炭酸マグネシウム、酸化チタン、コーンスターチ及びメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを配合したことを特徴とする粉末エアゾール剤、である。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、塩酸テルビナフィンを配合していても付着性、使用感ともに優れた粉末エアゾール剤の提供が可能になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明において、塩酸テルビナフィンの配合量はエアゾール原液中0.1〜5質量%、好ましくは0.5〜2質量%である。この配合量が少な過ぎると、十分な抗真菌効果が発揮されず、多過ぎると安全性が懸念されるからである。
【0013】
本発明で用いる粉末成分である炭酸マグネシウム、酸化チタン、コーンスターチ及びメタケイ酸アルミン酸マグネシウムは、それぞれ医薬品として一般的に配合できる成分を用いることができる。
【0014】
本発明の粉末成分は一般的に粉末エアゾールの粉末成分として用いられるものであるが、これらを全て組み合わせることによってはじめて本発明の効果が生じる。
【0015】
各粉末成分の配合量は原液に対して炭酸マグネシウム2〜4質量%、酸化チタン0.5〜1.5質量%、コーンスターチ10〜30質量%、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム0.5〜1.5質量%である。これらの配合量から外れると、エアゾール剤中で粉末成分が凝固したり、噴射性状が一定でないなどの問題が生じることがあるからである。
【0016】
本発明では通常用いられる噴射剤を使用することができる。好ましい噴射剤としてはプロパン、i-ブタン、n-ペンタン、i-ペンタン、ネオペンタン、ジメチルエーテルまたはそれらの混合物(液化石油ガスなど)などがあげられ、その際、噴射剤は粉末成分の噴出を良好に行うために35℃での圧力が0.2〜0.8Mpaとなるように調整されることが好ましい。
【0017】
粉末を一定に噴出するために原液と噴射剤との配合比率は1:99〜40:60が好ましい。
【0018】
本発明の粉末エアゾール剤には、保存剤、防腐剤、滑沢剤、キレート剤、香料、溶剤、溶解補助剤、pH調整剤、酸化防止剤、保湿剤、保型剤などの添加成分や、抗炎症剤、清涼化剤、殺菌剤、収斂剤、血行促進剤、皮膚保護剤、組織修復剤などの他の有効成分を必要に応じて配合してもよい。
【0019】
本発明のエアゾール剤は、適当な基剤を用いて慣用の方法により粉末エアゾール剤形に製剤化することができる。
【0020】
以下、実施例及び試験例により本発明をさらに詳細に説明する。
【実施例1】
【0021】
炭酸マグネシウム0.525g、酸化チタン0.15g、コーンスターチ4.16g、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム0.165gを混合して粉末成分を調製した。塩酸テルビナフィン0.15g、リドカイン0.3g、l-メントール0.15g、グリチルレチン酸0.075g、セスキオレイン酸ソルビタン0.15g、ミリスチン酸オクチルドデシル0.3g、無水エタノール8.875gを混合して液体成分を調製した。粉末成分4.5g、液体成分9.0gを液化石油ガス76.5gと共にエアゾール缶に充填してエアゾール剤を得た。
【実施例2】
【0022】
炭酸マグネシウム0.315g、酸化チタン0.09g、コーンスターチ2.43g、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム0.165gを混合して粉末成分を調製した。塩酸テルビナフィン0.15g、リドカイン0.3g、l-メントール0.15g、グリチルレチン酸0.075g、セスキオレイン酸ソルビタン0.15g、ミリスチン酸オクチルドデシル0.3g、無水エタノール10.875gを混合して液体成分を調製した。粉末成分2.7g、液体成分10.8gを液化石油ガス76.5gと共にエアゾール缶に充填してエアゾール剤を得た。
【実施例3】
【0023】
炭酸マグネシウム0.525g、酸化チタン0.15g、コーンスターチ2.16g、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム0.165gを混合して粉末成分を調製した.塩酸テルビナフィン0.15g、リドカイン0.3g、l-メントール0.15g、グリチルレチン酸0.075g、セスキオレイン酸ソルビタン0.15g、ミリスチン酸オクチルドデシル0.3g、無水エタノール10.875gを混合して液体成分を調製した。粉末成分2.7g、液体成分10.8gを液化石油ガス76.5gと共にエアゾール缶に充填してエアゾール剤を得た。
【実施例4】
【0024】
炭酸マグネシウム0.525g、酸化チタン0.09g、コーンスターチ2.22g、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム0.165gを混合して粉末成分を調製した.塩酸テルビナフィン0.15g、リドカイン0.3g、l-メントール0.15g、グリチルレチン酸0.075g、セスキオレイン酸ソルビタン0.15g、ミリスチン酸オクチルドデシル0.3g、無水エタノール10.875gを混合して液体成分を調製した。粉末成分2.7g、液体成分10.8gを液化石油ガス76.5gと共にエアゾール缶に充填してエアゾール剤を得た。
【実施例5】
【0025】
炭酸マグネシウム0.315g、酸化チタン0.09g、コーンスターチ2.495g、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム0.1gを混合して粉末成分を調製した.塩酸テルビナフィン0.15g、リドカイン0.3g、l-メントール0.15g、グリチルレチン酸0.075g、セスキオレイン酸ソルビタン0.15g、ミリスチン酸オクチルドデシル0.3g、無水エタノール10.875gを混合して液体成分を調製した。粉末成分2.7g、液体成分10.8gを液化石油ガス76.5gと共にエアゾール缶に充填してエアゾール剤を得た。
【0026】
比較例1
炭酸マグネシウム0.525g、酸化チタン0.15g、コーンスターチ4.16gを混合して粉末成分を調製した.塩酸テルビナフィン0.15g、リドカイン0.3g、l-メントール0.15g、グリチルレチン酸0.075g、セスキオレイン酸ソルビタン0.15g、ミリスチン酸オクチルドデシル0.3g、無水エタノール9.04gを混合して液体成分を調製した。粉末成分4.5g、液体成分9.0gを液化石油ガス76.5gと共にエアゾール缶に充填してエアゾール剤を得た。
【0027】
比較例2
炭酸マグネシウム0.525g、酸化チタン0.15g、コーンスターチ4.325gを混合して粉末成分を調製した.塩酸テルビナフィン0.15g、リドカイン0.3g、l-メントール0.15g、グリチルレチン酸0.075g、セスキオレイン酸ソルビタン0.15g、ミリスチン酸オクチルドデシル0.3g、無水エタノール8.875gを混合して液体成分を調製した。粉末成分4.5g、液体成分9.0gを液化石油ガス76.5gと共にエアゾール缶に充填してエアゾール剤を得た。
【0028】
比較例3
炭酸マグネシウム0.525g、酸化チタン0.15g、コーンスターチ4.16g、タルク0.165gを混合して粉末成分を調製した.塩酸テルビナフィン0.15g、リドカイン0.3g、l-メントール0.15g、グリチルレチン酸0.075g、セスキオレイン酸ソルビタン0.15g、ミリスチン酸オクチルドデシル0.3g、無水エタノール8.875gを混合して液体成分を調製した。粉末成分4.5g、液体成分9.0gを液化石油ガス76.5gと共にエアゾール缶に充填してエアゾール剤を得た。
【0029】
比較例4
炭酸マグネシウム0.525g、酸化チタン0.15g、コーンスターチ4.16g、ステアリン酸マグネシウム0.165gを混合して粉末成分を調製した.塩酸テルビナフィン0.15g、リドカイン0.3g、l-メントール0.15g、グリチルレチン酸0.075g、セスキオレイン酸ソルビタン0.15g、ミリスチン酸オクチルドデシル0.3g、無水エタノール8.875gを混合して液体成分を調製した。粉末成分4.5g、液体成分9.0gを液化石油ガス76.5gと共にエアゾール缶に充填してエアゾール剤を得た。
【0030】
比較例5
炭酸マグネシウム0.525g、酸化チタン0.15g、コーンスターチ4.16g、含水二酸化ケイ素0.165gを混合して粉末成分を調製した.塩酸テルビナフィン0.15g、リドカイン0.3g、l-メントール0.15g、グリチルレチン酸0.075g、セスキオレイン酸ソルビタン0.15g、ミリスチン酸オクチルドデシル0.3g、無水エタノール8.875gを混合して液体成分を調製した.粉末成分4.5g、液体成分9.0gを液化石油ガス76.5gと共にエアゾール缶に充填してエアゾール剤を得た。
【0031】
試験例
実施例1、比較例1〜5のエアゾール剤を調製し、検体とした。下記に示す2試験を行い、合計点により検体を評価した。
(1)粉の付着性試験
検体を10回振とうし、模造紙に10cm離れた位置から約1秒噴射した。噴射5分後に紙を振り、粉の付着性を評価した。試験は3回繰り返し行った。評価は、振っても粉が落ちない:2点、振ると粉が多少落ちる:1点、振ると粉が塊で落ちる:0点、で評価した。
【0032】
(2)使用感
検体を10回振とうし、腕に噴射して使用感を評価した。試験は同一被験者が6回繰り返し行った。評価は、乾燥後サラサラ感がある:1点、乾燥後サラサラ感がない:0点、で評価した。
【0033】
結果を表1に示した。
【0034】
【表1】

【0035】
本発明の粉末エアゾールでは、粉の付着性、使用感共に高いスコアを示した。一方、本発明の組成から外れる処方の比較例では粉の付着性、使用感が劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は塩酸テルビナフィンを配合した粉末エアゾールとして、医薬品などに利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩酸テルビナフィンを配合したエアゾール剤において、粉末成分として炭酸マグネシウム、酸化チタン、コーンスターチ及びメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを配合したことを特徴とする粉末エアゾール剤。
【請求項2】
塩酸テルビナフィン、噴射剤、炭酸マグネシウム、酸化チタン、コーンスターチ及びメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを配合したことを特徴とする粉末エアゾール剤。

【公開番号】特開2010−6709(P2010−6709A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−164073(P2008−164073)
【出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【出願人】(000002819)大正製薬株式会社 (437)
【Fターム(参考)】