説明

粉末充填された溶接管、たとえばフラックス入り溶接ワイヤの製造方法

【課題】粉末充填された含む溶接管、フラックス入り溶接ワイヤを製造する方法を提供する。
【解決手段】長い薄い金属シートを連続的に供給して溝の形状にし、その中に充填成分を導入する。次に、こうして充填したシートを、2つの長手エッジをともにそれらが互いに接触するかほとんど接触するまで近づけることによって、実質的に管の形状にする。管を鉛直に対して45°ないし110°の角度で軸回転させ、管の前記2つの長手エッジをレーザービームによってともに溶接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管(これらは充填成分、特に粉末または顆粒材料で予備充填された後に溶接され、あるいはこれらの使用径まで圧延および/または伸線される)、特にフラックス入りアーク溶接ワイヤを形成することを意図している管の連続製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、アーク溶接に用いられるシールされたフラックス入りワイヤを製造するには、通常2つの方法が用いられる。
第1の公知の方法によれば、管を型で連続的に製造し、これを離れたら管を高周波数(HF)溶接させる。この溶接管を環の形状にした後、振動させることによって充填成分たとえば粉末および/または顆粒で充填する。管を充填している間に粉末成分の均質性を維持するために顆粒化が推奨される。
しかし、この充填段階は、プロセスのうち長くてこつのいる段階であり、これは均質性、したがって最終製品の品質を決定する。この充填段階が必ずしも完全に制御下にないか、またはこの段階の間に問題が生じる場合、それによって得られる製品が損なわれる。
第2の公知のプロセスによれば、管を型で連続的に製造し、粉末状および/または顆粒状の充填成分をプレチューブに導入してから、たとえばHF溶接、アーク溶接、レーザー溶接などにより、管の長手エッジをともに溶接する。
しかし、HF溶接は一般的に強磁性材料には非常に適しているけれども、実際には、管が完全に非磁性の粉末材料をも含んでいる場合には、これらがHF溶接電流により作り出される非常に強力な磁場の効果で「吸い出され」、製造の間に管の溶接を汚染し、溶接シームの欠陥または少なくとも高いもろさをもたらし、破壊なしに、これが受けるべき次の変換操作たとえば通常の伸線および圧延工程に耐えることができない、ということがわかっている。
HF溶接で発生する上述した欠点および問題の克服を試みるために、管が磁性粉末材料を含む場合には、たとえば多極TIGプロセスまたはレーザービームによって管の長手エッジのアーク溶接を行うことが提案されている。
しかし、これらのプロセスは他の問題または制限をもたらす。
こうして、溶接の間に完全溶込みを得ることが望ましい場合、多極TIG溶接は比較的遅いプロセスになる。こうして、作るべき溶接シーム面に沿って並んだ8個のTIG電極の同時使用にもかかわらず、2.2mmの溶接厚さでやっと3.5m/minの溶接速度が得られる。もちろん、工業的観点からは、このような速度は全く不十分である。
発生する高いエネルギー密度のために、レーザー溶接は、管を溶接する場合に、多極TIG溶接プロセスで得られる溶接速度より3から4倍高速の溶接速度で完全溶込みを得ることを可能にする。
しかし、レーザービームで完全溶込みを得るためには、レーザービーム(溶接に垂直に当たる)が管の内側に現れることが必要である。
このことは、管の内側の粉末に影響する、すなわち、レーザービームの経路に沿って位置することが直ちに理解されるであろう。これは、レーザービームが必然的に管に入り、管に含まれている充填成分の表面をたたき、これらを損傷するためである。これは、ビームが前記充填成分上に鉛直に達するためである。したがって、このプロセスは、溶接する前に充填成分で予備充填した管を溶接するには適しておらず、空の管でのみ有効に用いることができる。
ここで、たとえばベルトシステムによって、管を溶接する前に充填成分を導入することは、上で説明したように、溶接後に管を充填する場合に必要な顆粒化をなくすという利点をもち、特に粉末で充填した溶接管をフラックス入り溶接ワイヤとして用いることを意図している場合には、粉末混合物の非常に良好な均質性と充填率の持続性(これらは許容可能な品質の最終製品を達成するために必要な条件である)をもたらす。
そのようなプロセスは、たとえば文献US−A−5 192 0161、EP−A−812 648、EP−A−489 167、EP−A−589 470に記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、生じる課題は、特に粉末などの充填成分を含む管の連続的な工業生産のための改善されたプロセスをどのようにして提供するかということである。その管は、充填成分で充填した後、2つの長手エッジに沿った溶接により閉じられる。そのプロセスは、従来のレーザー溶接で得られる程度の速度で、前記管の全厚さにわたって完全溶込み溶接を行うことを可能にするが、管の中に含まれる充填成分に損傷を与えるという上述した問題を引き起こすことがない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
解決策は、充填成分を含む溶接金属管を製造する方法であって、以下の連続工程:
a)2つの長手エッジを有する長い薄い金属シートを連続的に供給し、
b)2つの長手エッジの一方を他方に近づけることによって、前記の長い薄い金属シートの少なくとも一部を溝の形状にし、
c)充填成分を溝形金属シートに導入し、
d)その2つの長手エッジの一方を他方に、前記2つの長手エッジが互いに接触するかほとんど接触するまで、近づけつづけることによって、工程c)で充填された前記長い薄い金属シートの少なくとも一部を実質的に管の形状にする
ことを行い、工程d)の後、
e)充填成分を含む管を、鉛直に対して45°ないし110°の角度で軸回転させ、
f)工程d)において互いに接触させた管の前記2つの長手エッジをレーザービームによって溶接する
ことを特徴とする方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
場合に応じて、本発明の方法は、以下の特徴の1以上を含んでいてもよい。
−管は完全溶込み溶接またはほぼ完全溶込み溶接を受ける。
−工程e)において、管を鉛直に対して60°ないし105°の角度で軸回転させる。
−工程e)において、管を鉛直に対して80°ないし100°の角度で軸回転させる。
−工程e)において、管を鉛直に対して85°ないし95°の角度で軸回転させる。
−工程e)において、管を鉛直に対してほぼ90°の角度で軸回転させる。
−工程(a)から(f)の間に、金属シートを、たとえばモーターつきの回転駆動ローラーにより、さらに連続並進変位運動させる。
−充填成分は管の内部容積の50%までを占める。
−工程(f)の後に、得られた溶接管を伸線および/または圧延する。
−得られた溶接管はフラックス入りアーク溶接ワイヤである。
−管のシースはスチールからなる。しかし、本発明は、スチールシートの溶接に限定されず、あらゆる鉄系または非鉄系の溶接可能な金属、たとえばアルミニウムまたはその合金に適用してもよい。
また、本発明は、粉末状および/または顆粒状の充填成分を含む外側金属シース(特にスチール)から形成されたフラックス入りアーク溶接ワイヤ(前記金属シースは完全溶込み長手溶接シームを有する)であって、本発明に係る方法によって直接得られることを特徴とするフラックス入りワイヤに関する。
含まれる充填成分の、好ましくは2%未満、より好ましくは1%未満、さらにより好ましくは0.6%未満が、前記管の溶接の間に損傷を受ける。
有利には、これは充填成分としてルチルを含む。
言い換えれば、本発明は、管、特にフラックス入り溶接ワイヤを製造するための連続方法を改善することを提案する。本発明においては、たとえば計量コンベアなどを用い、粉末状または顆粒状の粉末で管を充填するのを、管の外側シースを作るために用いられる金属シートの長手エッジを互いに溶接する前に行い、その後、本発明においては、予め導入した粉末に影響したり損傷したりすることなく、レーザービームによって完全溶込みで溶接を行う。
これをするために、まず、互いに平行な2つの長手エッジを有する、たとえばスチールからなる金属シートを、それ自体公知のやり方で、機械的変形手段たとえばプレスロールや成形ロールを用い、2つの長手エッジをともに近づけるように機械的に変形させることによって、溝すなわち(断面において)実質的にU字形の形にする。
また、金属シートをその長手軸の方向に並進運動させ、連続製造プロセスを行うようにする。このことは、シートの機械的変形と成形は、それが前進するにつれ、すなわちそれが駆動手段たとえばモーターつき回転駆動ローラーによって駆動されるにつれ、漸次行われることを意味する。
図1に模式的に示したように、いったん溝または管1をUの形にして、鉛直にある、すなわち管1の頂部に位置するその開口3を介して、それを充填成分2たとえば金属粉末で充填する(矢印10)。
次に、図1に見られるように、管1を、別の組のローラーによって、その長手軸の周りに予め規定した角度、好ましくはほぼ90°の回転角で回動させ、レーザービーム5を用いた水平位置の溶接によって2つの長手エッジ4をともに溶接できるようにする(先行技術のように鉛直ではない)。言い換えれば、本発明によれば、レーザービームは、先行技術で実施されているように鉛直ではなく、横から管に達する。
ワイヤ1の中に含まれている粉末の上面を、振動系によって水平面のままにさせる。この振動は長手方向の分離を起こさず、したがって製品の均一性を損なわない。
その後、管1のエッジを、それらが互いに接触するかほとんど接触するまでともに近づけ、すなわち2つのエッジの間に非常に小さなスペースしか残さないか全く空間を残さないようにし、こうして溶接シーム面を形成する。このエッジをいっしょにする動作は、たとえばプレスローラーにより、または金属シートを機械的に変形する任意の他の手段により達成することができ、これに(断面で見て)O字形、すなわち円形、卵形、楕円形または同様の形を与えることができる。しかし、他の形も可能である。
通常用いられる粉末の密度と充填率により、粉末の上面が管1の水平中央面の下にあることを確実にし、ビーム5が内部に現れるが完全溶込み溶接の間に粉末2に影響しないように注意する。
言い換えれば、図1に示されるように、管を充填するときに管1に導入する充填粉末2の量は、その最高面または高い面が、管のエッジ4によって形成される溶接シーム面の下になるように選択する。
本発明方法により、管1の中に粉末2が存在することは、もはやレーザービーム5を用いて完全溶込み溶接によってそれを溶接すること(これは次の圧延操作の間の応力に耐えるために必須である)を妨げない。これは、所定の角度、好ましくはほぼ90°での管1の回転Rのおかげである。
さらに、本発明の方法は、レーザービームのパラメーターを設定することをかなり容易にするという利点をも有する。というのは、先行技術のように、ビームを「現れる溶込みの限界」(これは制御が困難であり、溶接での膨れの原因である)に設定する必要がもはやないからである。したがって、本発明の方法は、工業的観点から遥かに信頼性の高いものである。
本発明の方法を、上で説明し図1に示したように、水平位置での完全溶込み溶接に適用した。スチール管は厚さが約2.2mmで、速度は11m/minであり、前記管は18.6%の充填率でルチル(TiO2)粉末を含んでいる。
溶接後に、こうして得られた溶接管を分析し、レーザービームが「かすめた」粉末の量はわずか0.4%であることがわかった。比較のための、先行技術による方法、すなわち同じ溶接であるが鉛直位置で、かつ「出現限界」での溶込みで行った試験では、劣化した粉末の量は4%であった。
したがって、本発明の方法は、充填粉末の劣化を10倍減少させ、小さい粒径の粉末の使用も可能にする。
さらに、管の完全溶込み溶接の間に得られた溶接シームの品質は良好である。これを図2で証明する。これは本発明方法によって得られた溶接ワイヤの、得られた溶接シームでの断面図である。
【0006】
したがって、本発明による管の製造方法は、溶接前に充填成分で充填し、その後に完全溶込みレーザー溶接によって溶接した、フラックス入り溶接ワイヤを製造することを可能にし、それらが含んでいる充填成分、特に小さい粒径の充填粉末を損なうことがない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の方法を示す管の断面図。
【図2】本発明方法によって得られた溶接ワイヤの溶接シームでの断面図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
充填成分を含む溶接金属管を製造する方法であって、以下の連続工程:
a)2つの長手エッジを有する長い薄い金属シートを連続的に供給し、
b)2つの長手エッジの一方を他方に近づけることによって、前記の長い薄い金属シートの少なくとも一部を溝の形状にし、
c)充填成分を溝形金属シートに導入し、
d)その2つの長手エッジの一方を他方に、前記2つの長手エッジが互いに接触するかほとんど接触するまで、近づけつづけることによって、工程c)で充填された前記長い薄い金属シートの少なくとも一部を実質的に管の形状にする
ことを行い、工程d)の後、
e)充填成分を含む管を鉛直に対して45°ないし110°の角度で軸回転させ、
f)工程d)において互いに接触させた管の前記2つの長手エッジをレーザービームによって溶接する
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
管は完全溶込み溶接またはほぼ完全溶込み溶接を受けることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
工程(e)において、管を鉛直に対して60°ないし105°の角度で軸回転させることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
工程(e)において、管を鉛直に対して80°ないし100°の角度で軸回転させることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
工程(e)において、管を鉛直に対して85°ないし95°の角度で軸回転させることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
工程(e)において、管を鉛直に対してほぼ90°の角度で軸回転させることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
工程(a)から(f)の間に、金属シートを、たとえばモーターつき回転駆動ローラーにより、さらに連続並進変位運動させることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
充填成分は管の内部容積の50%までを占めることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
工程(f)の後に、得られた溶接管を伸線および/または圧延することを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
得られた溶接管は、フラックス入りアーク溶接ワイヤであることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
粉末状および/または顆粒状の充填成分を含む外側金属シースから形成されたフラックス入りアーク溶接ワイヤ(前記金属シースは完全溶込み長手溶接シームを有する)であって、請求項1ないし10のいずれか1項記載の方法によって直接得られることを特徴とするフラックス入りワイヤ。
【請求項12】
含んでいる充填成分の2%未満が、前記管の溶接の間に損傷を受けることを特徴とする請求項11記載のフラックス入りワイヤ。
【請求項13】
含んでいる充填成分の1%未満が、前記管の溶接の間に損傷を受けることを特徴とする請求項11または12記載のフラックス入りワイヤ。
【請求項14】
含んでいる充填成分の0.6%未満が、前記管の溶接の間に損傷を受けることを特徴とする請求項11ないし13のいずれか1項記載のフラックス入りワイヤ。
【請求項15】
請求項11ないし14のいずれか1項記載のフラックス入りワイヤであって、スチールのシースを含み、および/または、充填成分としてルチルを含むことを特徴とするフラックス入りワイヤ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−222941(P2007−222941A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−23202(P2007−23202)
【出願日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(506209972)レール・リキード・ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード (7)
【出願人】(506390328)エール・リキード・ウェルディング・フランス (11)
【Fターム(参考)】