説明

粉末化粧料

【課題】 肌へのなじみ、密着性に優れ、しかも滑らかで、経時での色ぐすみが少ない粉末化粧料を提供する。
【解決手段】 表面をカチオン性界面活性剤によって処理されたカチオン性界面活性剤処理粉体と、疎水化処理色材とを配合し、前記カチオン性界面活性剤処理粉体の基板となる粉体が白雲母、金雲母、黒雲母、合成フッ素金雲母、絹雲母から選ばれる一種または二種以上であるものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カチオン性界面活性剤により処理された粉体を含有する粉末化粧料に関し、更に詳しくは肌へのなじみ、密着性に優れ、しかも滑らかで、経時での色ぐすみが少ない粉末化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パウダリーファンデーション、アイシャドウ、おしろい、頬紅などに代表される粉末化粧料には無機顔料、樹脂粉末、有機顔料などが配合されている。これらの顔料のうち、タルク、マイカ、カオリンなどに代表される体質顔料は粉末化粧料中に多く配合されるものであり、その性質が粉末化粧料の特性に大きく影響する。そこで、使用性、付着性、成形性に優れた体質顔料の探索がこれまでも盛んに行われてきており、そのなかから窒化ホウ素、合成フッ素金雲母、硫酸バリウムなどの優れた体質顔料が開発されてきた。
なかでも、窒化ホウ素は非常に優れた性質を有していることが知られているが、価格が高いため大量に使用することが困難であるという問題がある。そのため、安価で窒化ホウ素と伍する性質を持つ体質顔料が望まれている。
また、体質顔料の性質を変化させる方法として、表面処理が挙げられる。表面処理剤としては、金属石鹸処理、シリコーン処理、フッ素変性化合物による処理などさまざまなものが挙げられる。そのなかで、使用性を向上させる処理として、テトラアルキルアンモニウム塩に代表されるようなカチオン性界面活性剤で表面処理する方法が知られている(特許文献1、特許文献2参照)。この方法は、表面の電荷が負となる顔料の表面をカチオン性界面活性剤にて処理するというものであり、滑らかさが非常に向上した粉体を得ることができる。
【0003】
【特許文献1】特公平4−45483号公報
【特許文献2】特開2001−335410号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、種々の粉体にカチオン性界面活性剤を処理したところ、すべての粉体に効果があるわけではなく、処理することでかえって悪影響を及ぼすこともあった。また、カチオン性界面活性剤にて処理した体質顔料と未処理の酸化鉄などの着色顔料を用いた場合、化粧後の経時での色ぐすみが生じてしまい問題であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる実情に鑑み、本発明者らは、特定の粉体表面をカチオン性界面活性剤によって処理したカチオン性界面活性剤処理粉体と、特定の化合物で表面処理を行った疎水化処理色材とを配合することにより、肌へのなじみ、密着性に優れ、しかも、滑らかで、経時での色ぐすみが少ない粉末化粧料が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち本発明は、表面をカチオン性界面活性剤によって処理されたカチオン性界面活性剤処理粉体と、シリコーン化合物またはフッ素化合物で表面処理された疎水化処理色材疎水化処理色材とを配合し、前記カチオン性界面活性剤処理粉体の基板となる粉体が白雲母、金雲母、黒雲母、合成フッ素金雲母、絹雲母から選ばれる一種または二種以上であることを特徴とする粉末化粧料である。またここで、疎水化処理色材の表面処理剤は、シリコーン化合物またはフッ素化合物であることが好ましい(請求項1)。
【0007】
また、本発明の粉末化粧料は、カチオン性界面活性剤処理粉体と、疎水化処理色材と、油分と、揮発性溶媒とを混合し、分散し、粉砕して得られたスラリーを中皿に充填して、吸引プレス成型することにより得られたものであるか(請求項3)、あるいはカチオン性界面活性剤処理粉体と、疎水化処理色材と、油分と、揮発性溶媒とを混合および/または分散および/または粉砕して得られたスラリーを中皿に充填して、蒸発乾燥により溶媒を除去した後、プレス成型することにより得られたものであることが好ましい(請求項4)。
【発明の効果】
【0008】
本発明の粉末化粧料は、肌へのなじみ、密着性に優れ、しかも、滑らかで、経時での色ぐすみが少ないものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明について詳述する。
(カチオン性界面活性剤処理粉体)
本発明のカチオン性界面活性剤処理粉体において用いられるカチオン性界面活性剤は、肌なじみが良好で、肌への密着性に優れる界面活性剤であり、通常化粧料に使用されるカチオン性界面活性剤が挙げられ、特に下記一般式(1)で表されるテトラアルキルアンモニウム塩が好ましい。
【0010】
【化2】

【0011】
(式中、Xは塩素原子または臭素原子であり、R1〜R4のいずれか1つ以上が炭素原子10〜22個の直鎖アルキル基であって、その残りが炭素原子1〜10個の直鎖アルキル基である。)
【0012】
このうち特に、モノ長鎖アルキル型の第4級アンモニウム塩、ジ長鎖アルキル型の第4級アンモニウム塩が好ましい。これらは具体的には、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ジベヘニルジメチルアンモニウム、塩化ジセチルジメチルアンモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ジラウリルジメチルアンモニウム等が挙げられ、これらを一種又は二種以上用いることができる。
【0013】
これらの内でも、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ジベヘニルジメチルアンモニウム、塩化ジオクチルジメチルアンモニウム、塩化オクチルトリメチルアンモニウムなどが特に好ましい。
【0014】
本発明に用いられる前記カチオン性界面活性剤で処理される粉体は、粉砕またはへき解面に交換性の陽イオンを有する白雲母、金雲母、黒雲母、合成フッ素金雲母、絹雲母などに代表される2:1型粘土鉱物に属するケイ酸塩およびそれらケイ酸塩の焼成物が挙げられる。これらの各粉末は、いずれも負の表面電荷を持つ粉末である。
【0015】
次にこれらの粉体をカチオン性界面活性剤で表面処理する方法について説明する。まず表面処理しようとする粉体を1〜50質量%、好ましくは10〜20質量%の濃度で30〜100℃において溶媒、例えば水、アルコール、水とアルコールとの混合溶媒等に分散させる。一方、粉体に対して0.01〜10.0質量%、好ましくは0.05〜2.0質量%のカチオン性界面活性剤を溶媒、例えば水、アルコール、水とアルコールとの混合溶媒等に溶解する。この界面活性剤溶液を前記の粉体分散液中に、30〜90℃で撹拌しながら添加する。ここでカチオン性界面活性剤は粉体表面に強固に化学的吸着する。次に、50〜100℃で水洗いし、濾過し、80〜120℃で乾燥してカチオン性界面活性剤表面処理粉体を得る。
このようにすることにより、カチオン性界面活性剤が粉体表面に容易に、しかも強固に吸着するので、煮沸及び水洗などによって脱着することはなくなる。
【0016】
前記したカチオン性界面活性剤で粉体を表面処理する方法は上述の方法に限られず、粉体とカチオン性界面活性剤を直接あるいは水、水とアルコールの混合溶媒に分散させ、これをポールミル、ローラーミルで処理する方法、粉体を流動させこれにカチオン性界面活性剤を溶解した水、水とアルコールの混合溶媒を噴霧するフローコーター法、等で行うこともできる。
【0017】
かかるカチオン性界面活性剤処理粉体を用いることにより、滑らかさなどの使用性や肌へのなじみが良好で、肌への密着性に優れた粉末化粧料とすることができる。
【0018】
カチオン性界面活性剤処理粉体の粉末化粧料中における配合量は、0.1〜90質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜60質量%である。0.1質量%未満では、効果がほとんど感じられないという問題があり、90質量%を超えると、化粧もちが著しく悪化するという問題がある。
【0019】
(疎水化処理色材)
本発明の疎水化処理色材に用いられる表面処理剤としては、シリコーン化合物またはフッ素化合物が好ましい。表面処理剤としてシリコーン化合物またはフッ素化合物を用いることにより、色ぐすみの改善効果はより顕著となる。
シリコーン化合物としては、ジメチコン、メチコン、シランカップリング剤、アルキル変性シリコーン、シリコーンレジンなどが挙げられる。
フッ素化合物としては、フッ素変性アルキル化合物およびフッ素変性シリコーン化合物が挙げられ、例えばパーフルオロアルキルリン酸エステルとその塩、パーフルオロアルキルシラン、テフロン(登録商標)、パーフルオロアルキルカルボン酸などが挙げられる。またフッ素化合物とともにアクリル酸アルキルや(アクリル酸アルキル/ジメチコン)コポリマーなどと併用した疎水化処理も好適である。
【0020】
処理される色材としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウムなどの白色顔料や、黄酸化鉄、赤色酸化鉄、黒酸化鉄、酸化クロム、カーボンブラック、群青、紺青、などの有色顔料が挙げられる。
【0021】
本発明の疎水化処理色材は、表面エネルギーがアルキル化合物よりも低い化合物にて表面処理を行った着色顔料であり、かかる顔料を用いることにより、テトラアルキルアンモニウム塩などに代表されるカチオン界面活性剤にて表面処理を施した体質顔料と着色顔料を併用した場合に生じていた経時での色ぐすみが解消される。
【0022】
(湿式成型)
本発明においては、粉末化粧料の製法として、カチオン性界面活性剤にて表面処理を施した体質顔料と色材等の粉体成分と油分とを混合・分散する際に種々の揮発性溶媒中で行い、得られた粉体スラリーを既知のフィルタープレス成型や粉体スラリーを乾燥した後にプレス成型する方法をとることが好ましい。この結果得られる化粧料は、従来の乾式混合法により得られたものと比較して、滑らかさ、フィット感がさらに向上し、カチオン性界面活性剤処理粉体の特徴をより生かすことができる。
かくして、本発明の粉末化粧料は、上記したカチオン性界面活性剤処理粉体と、疎水化処理色材と、油分と、揮発性溶媒とを少なくとも含む材料を混合および/または分散および/または粉砕して得られたスラリーを中皿に充填して、吸引プレス成型することにより得られる。また、カチオン性界面活性剤処理粉体と、疎水化処理色材と、油分と、揮発性溶媒とを少なくとも含む材料を混合および/または分散および/または粉砕して得られたスラリーを中皿に充填して、蒸発乾燥により溶媒を除去した後、プレス成型することにより得られる。
【0023】
本発明の上記方法に用いる揮発性溶媒としては、環状シリコーン、揮発性直鎖状シリコーン、軽質流動イソパラフィン、塩化メチレン、フルオロカーボン、ヘキサン、シクロヘキサン、エーテル、トルエン、キシレン、アセトン、ベンゼン、テルペン類、水、1,3ブタンジオール、エタノール、メタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどが挙げられる。これら、いずれを用いることも可能であるが、エタノール中で分散させることにより粉体表面に吸着したカチオン性界面活性剤の一部が脱離することが確認されており、これらカチオン性界面活性剤が脱離しやすい溶媒は用いないことが望ましい。
【0024】
本発明に用いる湿式分散機としては、ディスパーミキサーやホモジナイザーなどの通常の湿式分散機から、ジルコニアビーズ、ガラスビーズ、ステンレスビーズなどのメディアを用いた媒体攪拌ミルが挙げられる。
【0025】
(化粧料)
また本発明によれば、上記したカチオン性界面活性剤処理粉体と、疎水化処理色材と、不揮発性油分とを少なくとも含む材料を揮発性溶媒に混合および/または分散および/または粉砕して得られたスラリーを蒸発乾燥させて得られた複合粉体を配合することによって得られる化粧料が提供される(請求項5)。
【0026】
(その他)
本発明の粉末化粧料は、上記必須成分以外に、必要に応じて、水、上記以外の粉末、油分、界面活性剤、低級アルコール、多価アルコール、保湿剤、防腐剤、高分子(被膜剤を含む)、酸化防止剤、紫外線防御剤、香料、その他の各種薬剤等を本発明の所期の効果を損なわない質的、量的範囲で含有させることが可能である。
【0027】
本発明の粉末化粧料においては、その中に配合する全粉末成分が、前記のカチオン性界面活性剤で表面処理した粉末あるいは疎水化処理色材であることは必ずしも必要でなく、未処理粉末あるいは色材と組み合わせて配合して、十分な効果を得ることもできる。
【0028】
ここで、未処理粉末としては、タルク、カオリン、雲母、絹雲母(セリサイト)、白雲母、黒雲母、金雲母、合成雲母、パーミキュライト、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、タングステン酸金属塩、マグネシウム、シリカ、ゼオライト、硫酸バリウム、焼成硫酸カルシウム、焼セッコウ、リン酸カルシウム、フッ素アパタイト、ヒドロキシアパタイト、セラミックパウダー等の無機粉末;ポリアミド樹脂粉末、ポリエチレン粉末、ポリメタクリル酸メチル粉末、ポリスチレン粉末、スチレン−アクリル酸共重合体樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、ポリ四フッ化エチレン粉末、セルロース粉末等の有機粉末;二酸化チタン、酸化亜鉛等の無機白色系顔料;酸化鉄(ベンガラ)、チタン酸鉄等の無機赤色系顔料;γ−酸化鉄等の無機褐色系顔料;黄酸化鉄、黄土等の無機黄色系顔料;黒酸化鉄、カーボン、低次酸化チタン等の無機黒色系顔料;マンゴバイオレット、コバルトバイオレット等の無機紫色系顔料;酸化クロム、水酸化クロム、チタン酸コバルト等の無機緑色系顔料;群青、紺青等の無機青色系顔料;酸化チタン被覆マイカ、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆タルク、着色酸化チタン被覆マイカ、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔等のパール顔料;アルミニウムパウダー、カッパーパウダー等の金属粉末顔料;等が挙げられる。
【0029】
本発明の粉末化粧料には、しっとり感や使用感を向上させるため、油分を配合することが好ましい。本発明で用いられる油分としては、25℃で液状のもので、例えば、アボガド油,ツバキ油,タートル油,マカデミアナッツ油,トウモロコシ油,ミンク油,オリーブ油,ナタネ油,卵黄油,ゴマ油,パーシック油,小麦胚芽油,サザンカ油,ヒマシ油,アマニ油,サフラワー油,綿実油,エノ油,大豆油,落花生油,茶実油,カヤ油,コメヌカ油,シナギリ油,日本キリ油,ホホバ油,胚芽油,トリグリセリン,トリオクタン酸グリセリン,トリイソパルミチン酸グリセリン等の液状油脂、流動パラフィン,スクワレン,スクワラン,プリスタン等の炭化水素油、オレイン酸,トール油,イソステアリン酸等の高級アルコール脂肪酸、ラウリルアルコール,オレイルアルコール,イソステアリルアルコール,オクチルドデカノール等の高級アルコール、ジメチルポリシロキサン,メチルフェニルポリシロキサン,メチルハイドロジェンポリシロキサン,デカメチルポリシロキサン等のシリコーン、ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、オレイン酸オレイル、オレイン酸デシル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル等が挙げられ、好ましくはジメチルポリシロキサンである。
本発明で用いられる油分の配合量は15%以下であり、好ましくは10%以下である。15%を超えるとカチオン性界面活性剤で処理したことにより得られる特徴(特に滑らかさ)が損なわれる。
【0030】
本発明の粉末化粧料の製品形態としては、上述した必須の要件を満足する限り、粉末化粧料の範疇のあらゆる製品形態をとることが可能である。具体的には、本発明の粉末化粧料は、例えば、化粧下地、ファンデーション、白粉、ボディパウダー、美白パウダー、エモリエントパウダー、フレグランスパウダー、頬紅、口紅、マスカラ、アイシャドウ、アイライナー等の形態を採り得る。
【実施例】
【0031】
製造例1(カチオン性界面活性剤処理粉体の製造法)
1.5重量部のジステアリルジメチルアンモニウムクロライドを700重量部の80℃にあらかじめ加温した水に添加し、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライドが溶解したことを確認した後、100重量部の粉体に添加し、80℃に加温した状態で攪拌混合する。その後、この分散物をろ過し、得られた粉体を再度700重量部の温水(80℃)にて洗浄を行い、再度ろ過して得られた粉末ケーキを70℃のオーブンに一昼夜放置し、乾燥、粉砕することにより所望の粉体を得た。
【0032】
なお、今回検討した粉末としては、(製造例1−1)白雲母(平均粒子径15μm)、(製造例1−2)金雲母(平均粒子径20μm)、(製造例1−3)合成フッ素金雲母(平均粒子径10μm)、(製造例1−4)絹雲母(平均粒子径:8μm)、(製造例1−5)1000℃焼成処理絹雲母(平均粒子径:8μm)、(製造例1−6)タルク(平均粒子径:15μm)、(製造例1−7)薄片状シリカ(平均粒子径:20μm)、(製造例1−8)薄片状酸化チタン(平均粒子径:20μm)を使用した。
【0033】
製造例2(カチオン性界面活性剤処理粉体の製造法)
ジステアリルジメチルアンモニウムクロライドに代えてジラウリルジメチルアンモニウムクロリドを用いた以外は製造例1と同様にしてカチオン性界面活性剤処理粉体を製造した。
【0034】
製造例3(カチオン性界面活性剤処理粉体の製造法)
ジステアリルジメチルアンモニウムクロライドに代えてトリメチルステアリルアンモニウムクロリドを用いた以外は製造例1と同様にしてカチオン性界面活性剤処理粉体を製造した。
【0035】
<製造例1−1〜製造例1−8で得られたカチオン性界面活性剤処理粉体の使用性評価>
10名の化粧品専門パネルに、上記の製造例1のカチオン性界面活性剤処理した粉体および未処理状態の粉体を肌に塗布してもらい、処理前後での違いを各々に対して、「肌なじみ感」、「肌への密着感」、「なめらかさ」の各評価項目について、下記の評価基準に基づき7段階評価してもらい、更に各パネルの評点の平均点より、下記判定基準に従って判定した。その結果を表1に示す。
【0036】
判定基準:
[7段階評価方法]
まったく感じない:0点
感じない :1点
やや感じない :2点
どちらでもない :3点
やや感じる :4点
感じる :5点
とても感じる :6点
【0037】
[判定]
◎:評点の平均点が5点以上
○:評点の平均点が4点以上、5点未満
△:評点の平均点が2.5点以上、4点未満
×:評点の平均点が2.5点未満
【0038】
[水接触角の測定方法]
2t/cm2の圧力にて対象となる粉末を打錠し、ペレットを得る。そのペレットの上に水滴を所定量滴下し、水滴の状態を画像化して接触角を算出した。
【0039】
【表1】

【0040】
表1の結果より、官能評価で高評価だったのは、水接触角が110以上のものであった。また、AFMを用いた表面観察から、粉末表面に長鎖アルキルアンモニウムのドメイン構造が確認された。このドメイン中では、長鎖アルキルアンモニウムがラメラー状に配列していると考えられる。図1は、製造例1で得られたカチオン性界面活性剤処理粉体のAFM像による写真を示す図である。この長鎖アルキルアンモニウムのラメラー状モノレイヤーが感触を著しく向上させる大きな要因であると結論付けられる。
【0041】
試験例1〜5、比較試験例1〜11(ファンデーション系における粉体のカチオン処理の有無による検討)
次の表2、表3に示す処方でファンデーションを調製し、粉体のカチオン処理の有無による検討を行った。得られたファンデーションについて、「肌なじみ感」、「肌への密着感」、「なめらかさ」の各評価項目について、上記の評価方法で判定した。その結果を併せて表2、表3に示す。
【0042】
【表2】

【0043】
【表3】

【0044】
表2、表3から、試験例に示した2:1型粘土鉱物に属するケイ酸塩に処理した粉体のみ、未処理の状態と比較していずれの評価項目も大きく改善されていることがわかる。
【0045】
実施例1〜2、比較例1〜2(処理粉体のファンデーション系での色ぐすみの検討)
表4に示した処方でファンデーションを下記の方法で調製し、下記の方法で色ぐすみを評価した。
【0046】
(製法)
粉末部と80℃に加温したオイル部をヘンシェルミキサーにて混合し、パルペライザーで2回粉砕した後、樹脂中皿に乾式プレス成型した。
【0047】
(色ぐすみの評価方法)
10名の化粧品専門パネルに、上記のファンデーションを肌に塗布してもらい、塗布後、2時間後の色ぐすみを下記の評価基準に基づき7段階評価してもらい、更に各パネルの評点の平均点より、下記判定基準に従って判定した。その結果を表4に示す。
【0048】
判定基準:
[7段階評価方法]
まったく感じない:6点
感じない :5点
やや感じない :4点
どちらでもない :3点
やや感じる :2点
感じる :1点
とても感じる :0点
【0049】
[判定]
◎:評点の平均点が5点以上
○:評点の平均点が4点以上、5点未満
△:評点の平均点が2.5点以上、4点未満
×:評点の平均点が2.5点未満
【0050】
【表4】

【0051】
表4から、シリコーン処理もしくはフッ素化合物にて表面処理を行った色材を用いた場合、経時での色ぐすみが抑えられていることが分かる。
【0052】
実施例3(3−1〜3−6)、参考例3(揮発性溶媒中での湿式分散工程によるファンデーション製造)
実施例3−1
表5に示す処方中の粉末部に80℃に加温して溶解させた油相部を添加し、ヘンシェルミキサーにて混合後、パルペライザーにて粉砕を行った。得られた粉末・油分混合物100重量部に対して、軽質流動イソパラフィンを50重量部加え、ディスパーミキサーにて混合した。得られたスラリーを樹脂中皿に射出充填し、その後フィルタープレス成型機にてプレス成型し、60℃にて24時間乾燥させて、ファンデーションを得た。
【0053】
実施例3−2
表5に示す処方中の粉末部に80℃に加温して溶解させた油相部を添加し、ヘンシェルミキサーにて混合後、パルペライザーにて粉砕を行った。得られた粉末・油分混合物100重量部に対して、軽質流動イソパラフィンを50重量部加え、ディスパーミキサーにて混合した。得られたスラリーを金属中皿に充填し、60℃にて24時間乾燥させて、その後プレス成型してファンデーションを得た。
【0054】
実施例3−3
表5に示す処方中の粉末部に80℃に加温して溶解させた油相部および軽質流動イソパラフィン(対(粉末部+油相部)で50重量部)を添加し、ディスパーミキサーにて粗混合し、得られたスラリーをサンドグラインダーミル(メディア:ジルコニアビーズ1mmφ)にて分散・粉砕を行った。得られたスラリーを樹脂中皿に射出充填し、その後フィルタープレス成型機にてプレス成型し、60℃にて24時間乾燥させて、ファンデーションを得た。
【0055】
実施例3−4
表5に示す処方中の粉末部に80℃に加温して溶解させた油相部および軽質流動イソパラフィン(対(粉末部+油相部)で50重量部)を添加し、ディスパーミキサーにて粗混合し、得られたスラリーをサンドグラインダーミル(メディア:ジルコニアビーズ2mmφ)にて分散・粉砕を行った。得られたスラリーを金属中皿に充填し、60℃にて24時間乾燥させて、その後プレス成型してファンデーションを得た。
【0056】
実施例3−5
表5に示す処方中の粉末部に80℃に加温して溶解させた油相部に添加し、ヘンシェルミキサーにて混合後、パルペライザーにて粉砕を行った。得られた粉末・油分混合物100重量部に対して、軽質流動イソパラフィンを50重量部加え、ディスパーミキサーにて混合した。得られたスラリーを減圧乾燥して得られた粉体をパルペライザーにて粉砕して、複合粉体を得た。この複合粉体を樹脂中皿に充填し、プレス成型することでファンデーションを得た。
【0057】
実施例3−6
表5に示す処方中の粉末部に80℃に加温して溶解させた油相部および軽質流動イソパラフィン(対(粉末部+油相部)で50重量部)を添加し、ディスパーミキサーにて粗混合し、得られたスラリーをサンドグラインダーミル(メディア:ジルコニアビーズ3mmφ)にて分散・粉砕を行った。得られたスラリーを減圧乾燥して得られた粉体をパルペライザーにて粉砕して、複合粉体を得た。この複合粉体を樹脂中皿に充填し、プレス成型することでファンデーションを得た。
【0058】
参考例3
表5に示す処方中の粉末部に80℃に加温して溶解させた油相部を添加し、ヘンシェルミキサーにて混合後、パルペライザーにて粉砕を行った。得られた粉末を樹脂中皿に充填し、プレス成型することでファンデーションを得た。
【0059】
【表5】

【0060】
表5から、参考例3と比較して実施例3ではいずれの評価項目も向上していることが分かる。
【0061】
実施例4(4−1〜4−6)
表6に示す処方中の粉末部に80℃に加温して溶解させた油相部を添加し、ヘンシェルミキサーにて混合後、パルペライザーにて粉砕を行った。得られた粉末を樹脂中皿に充填し、プレス成型することでパウダリーファンデーションを得た。
【0062】
【表6】

【0063】
実施例5
表7に示す処方中の粉末部に80℃に加温して溶解させた油相部を添加し、ヘンシェルミキサーにて混合後、パルペライザーにて粉砕を行った。得られた粉末を樹脂中皿に充填し、プレス成型することでおしろいを得た。
【0064】
【表7】

【0065】
実施例6
表8に示す処方中の粉末部に80℃に加温して溶解させた油相部を添加し、ヘンシェルミキサーにて混合後、パルペライザーにて粉砕を行った。得られた粉末を樹脂中皿に充填し、ルースパウダーを得た。
【0066】
【表8】

【0067】
実施例7、8
表9に示す処方中の粉末部に80℃に加温して溶解させた油相部を添加し、ヘンシェルミキサーにて混合後、パルペライザーにて粉砕を行った。得られた粉末を樹脂中皿に充填し、プレス成型することでアイシャドウを得た。
【0068】
【表9】

【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】製造例1で得られたカチオン性界面活性剤処理粉体のAFM像による写真を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面をカチオン性界面活性剤によって処理されたカチオン性界面活性剤処理粉体と、シリコーン化合物またはフッ素化合物で表面処理された疎水化処理色材とを配合し、前記カチオン性界面活性剤処理粉体の基板となる粉体が白雲母、金雲母、黒雲母、合成フッ素金雲母、絹雲母から選ばれる一種または二種以上であることを特徴とする粉末化粧料。
【請求項2】
前記カチオン性界面活性剤処理粉体が下記一般式(1)で示されるテトラアルキルアンモニウム塩で表面処理された無機粉体であることを特徴とする請求項1記載の粉末化粧料。
【化1】

(式中、Xは塩素原子または臭素原子であり、R1〜R4のいずれか1つ以上が炭素原子10〜22個の直鎖アルキル基であって、その残りが炭素原子1〜10個の直鎖アルキル基である。)
【請求項3】
前記粉末化粧料が、カチオン性界面活性剤処理粉体と、疎水化処理色材と、油分と、揮発性溶媒とを少なくとも含む材料を混合および/または分散および/または粉砕して得られたスラリーを中皿に充填して、吸引プレス成型することにより得られたものであることを特徴とする請求項1記載の粉末化粧料。
【請求項4】
前記粉末化粧料が、カチオン性界面活性剤処理粉体と、疎水化処理色材と、油分と、揮発性溶媒とを少なくとも含む材料を混合および/または分散および/または粉砕して得られたスラリーを中皿に充填して、蒸発乾燥により溶媒を除去した後、プレス成型することにより得られたものであることを特徴とする請求項1記載の粉末化粧料。
【請求項5】
白雲母、金雲母、黒雲母、合成フッ素金雲母、絹雲母から選ばれる一種または二種以上よりなる基板粉体の表面をカチオン性界面活性剤によって処理したカチオン性界面活性剤処理粉体と、疎水化処理色材と、不揮発性油分とを少なくとも含む材料を揮発性溶媒に混合および/または分散および/または粉砕して得られたスラリーを蒸発乾燥させて得られた複合粉体を配合したことを特徴とする化粧料。

【図1】
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【公開番号】特開2006−199645(P2006−199645A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−14270(P2005−14270)
【出願日】平成17年1月21日(2005.1.21)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】