説明

粉末塗布ブース用自動修整装置

本発明は、特に噴霧ブース(3)用の自動修整作業のための部品(5)に粉末の形態の塗布製品を噴霧するのに用いられる装置(17)に関する。本発明は、本質的に垂直な柱状体(18)と、柱状体(18)の全長に沿って本質的に垂直に独立して動くことのできる少なくとも二つのキャリッジ(19)と、キャリッジ(19)で支持され、塗布製品を供給するガン(10)とを有することを特徴としている。本発明は、塗布製品の自動塗布に対して補足的な仕方で行われる部品の自動修整又は予調整に適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動粉末塗布プラントに、一層特に複合部品に粉末を噴霧するように構成した粉末噴霧装置を有する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複合形式の複数の機械部品への粉末の塗布は、これらの部品を通す噴霧ブースと、噴霧ブースを通る部品の移動軸線に対して本質的に垂直に粉末を噴霧する噴霧ガンとを有する自動プラントによって公知の仕方で行われている。この塗布方法は、部品の全体に粉末を一様な厚さに塗布することができない。
【0003】
その結果、これら部品のある特定の領域には、自動塗布の前又は後に付加的な塗布又は増し塗布(intensification)を行う必要があり、この塗布は、それぞれ予調整又は修整として知られている。
【0004】
増し塗布は、手動で行われ得るため、コストが高くなり、高度に熟練した者を使用する必要があり、また反復可能な結果を達成する能力がない。
【0005】
増し塗布は、噴霧ブースの入口または出口に固定した垂直ブームにおいて粉末塗布される各部品の特定の領域に粉末を塗布するのに特化した一連の自動ガンを配置することによって行われ得る。この方法は、各異なる形式の部品に合わせるため高さや深さに関して各噴霧ガンを手動で位置決めすることを必要とし、従って、設定のために製造ダウンタイムが伴い、同一部品をバッチで処理する必要がある。
【0006】
増し塗布はまた、高さに関して位置決めする軸線と深さに関して位置決めする軸線とをもち、しかも各々自動噴霧ガンを備えた一連の2軸ロボットを噴霧ブースに対して並置することにより行うこともできる。この解決法では、この形式の多くのロボット、恐らく8〜10台のかかるロボットを位置決めする必要があり、このことはブームの長さを長くすることが必要となり、コストを増大し、望ましくない大きな床スペースが必要となる。
【0007】
増し塗布はまた、ブースの入口又は出口に、塗装工の動きを本質的に再現できる6軸ロボットを配置することでも行うことができる。しかし、この形式のロボットは、非常に大きなブース床及び壁スペースを占め、該ロボットを作動し、維持し、保守点検するのが複雑であるため、ロボットのコストと相俟って、ほぼ全部の会社にとって適当ではない。さらに、6軸ロボットはブースの壁に大きな開口部を必要とし、このことはじょうき ブースから粉末が飛散するのを防ぐように低圧に維持されるこれらブース内へ流入する空気の流量の実質的増加につながる。
【0008】
増し塗布装置はさらに、粉末の度合いの変化する毎に噴霧ガンを清掃できるように、これらの噴霧ガンを容易に挿置したり取出したりできる必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の解決法の欠点を軽減でき、同時に大きな動作融通性、高度に反復できる結果、人員の通常の能力に適合しかつ占有床スペースの小さい動作及び施設を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的のために、本発明の要旨は、特に噴霧ブース用の自動修整作業のための部品に粉末の形態の塗布製品を噴霧する噴霧装置において、
本質的に垂直な柱状体と、
柱状体に沿って本質的に垂直に独立して動くことのできる少なくとも二つのキャリッジと、
キャリッジで支持され、塗布製品を供給する噴霧ガンと
を有することを特徴としている。
【0011】
垂直に動くことのできるように噴霧ガンを配列することによって、占有スペースの大きさを低減できる解決法が提供される。さらに、かかる構成は、噴霧ガンを通すために噴霧ブースにおいて必要とされる開口の数および大きさを低減でき、ただ一つの垂直開口が必要とされるだけである。キャリッジの独立性は使用における大きな融通性を保証する。
【0012】
有利には、キャリッジの少なくとも一つのは、柱状体に沿って連続した設定点を通って適位置へ動かしかつ固定させる手段と組合わされる。
【0013】
このように構成することにより、各部品の特殊な形状に合うように増し塗布を適応させることができることが保証される。
【0014】
一つの実施形態においては、キャリッジの少なくとも一つのは、垂直な柱状体に対して第2の運動軸線に沿って動くことができる。
【0015】
有利には、キャリッジの二つの運動軸線は直交する。
【0016】
非常に深いある特定の部品の場合には、増し塗布を行うために噴霧ガンの水平位置を制御できる必要があり、この制御は、キャリッジが第2の運動軸線に沿って動くことができるように構成することにより可能となる。
【0017】
一つの実施形態においては、少なくとも一つのキャリッジは、ブレーキを備えかつ該キャリッジを動かすように構成した少なくとも一つのサーボモータを備えている。
【0018】
一つの実施形態においては、キャリッジは、柱状体に固定した一つのラックと共動するピニオンを備えている。
【0019】
ブレーキを備えたサーボモータをラック及びピニオン組立体と組合せることによって、キャリッジ及び噴霧ガンは、正確に動かし位置決めすることができる。ブレーキを使用することによって、サーボモータは、キャリッジの動いていない時に停止され得る。
【0020】
一つの実施形態においては、自動制御装置は、キャリッジの動き及び位置を制御し、キャリッジ間の衝突を防ぐ。
【0021】
一つの実施形態においては、自動制御装置は、部品の特定の領域に噴霧ガンを対向させるように、キャリッジの動き及び位置を基準値に拘束する。
【0022】
本装置は、増し塗布する必要のある部品の特定の領域の位置に噴霧ガンの位置を拘束できる電子装置によって制御される。該領域の位置に関する情報は、例えば噴霧ブースの入口に配置したセルのような種々の特定化した装置から生じる。
【0023】
有利には、噴霧ガンの軸線は同一噴霧平面内に含まれる。
【0024】
一つの実施形態においては、柱状体は、噴霧平面に本質的に平行な平面において柱状体を動かすことのできるモーター駆動型台部材に装着される。
【0025】
一つの実施形態においては、柱状体は、噴霧平面に本質的に垂直な平面において柱状体を動かすことのできるモーター駆動型台部材に装着される。
【0026】
修整又は予め調整する部品の深さは例えば数cm〜1m変動し得るので、該装置は、平均において処理する必要のある部品から適当な距離はなれるように予め位置決めされ得る。さらに、噴霧ブースの側壁に形成した開口に対して横方に柱状体を位置決めできるのが有益である。
【0027】
本発明による位置決め装置の幾つかの実施形態を示す添付図面を参照して以下になされる説明から本発明は良く理解される。
【0028】
図1には、部品の粉末塗装用の自動プラントの概略全体図を示し、この自動プラントにおいて、コンベア2は、粉末塗装噴霧ブース3内へ吊下げトレイ4を搬送し、吊下げトレイ4は粉末塗装することになる部品5を支持し、これらの部品は入口開口6からブースに搬入され、そして粉末塗装して出口開口7から搬出される。ブース3は、フィルタ又はサイクロン(これらのいずれも図示されていない)を前置したブロワーによる外部包囲体に対して減圧状態に維持され、そしてブース3の底部ホッパー9の底部の出口8に空気ダクトを介して接続される。
【0029】
適当な供給及び制御手段に接続した噴霧ガン10、この場合には静電噴霧ガンで噴霧された粉末は、部品5の殆どの部分に堆積されるが、この粉末の30〜40%は堆積されずに、ブース内の減圧に維持された空気でフィルタに向って運ばれる。
【0030】
減圧を達成する空気は、作業場から外側に通じる全ての開口を介して、特に入口6、出口開口7、噴霧ガン10を支持する支持体の通路のための開口12及び吊下げトレイ4を通す開口13を介してブース3内に引き入れられる。
【0031】
噴霧ガン10を備えた二つの噴霧装置はブース3と組合され、開口12は、ブース内を噴霧ガン10が通過できるようにしている。
【0032】
第1の自動装置14は、垂直柱状体15及び単一キャリッジ16を備えた通常の装置であり、垂直柱状体15及び単一キャリッジ16は図示していない適当な駆動機構と組合される。この装置14は、五つの重ねて配置された噴霧ガン10に、キャリッジ16で支持された噴霧ガン10の数およびコンベア2の移動速度に指定された大きさ及び速度の普遍的な上下運動を与え、それで噴霧ガン10から粉末で塗装すべき部品5に向って粉末の一様な帯電雲が指向されるようにしている。
【0033】
本発明の主題を成す第2の噴霧装置17は予調整又は修整装置である。概略的に示す実施形態では、装置17は、垂直柱状体18及び四つの直交運動キャリッジ19を有し、これらキャリッジ19の動きは垂直柱状体18に垂直であったり或いはなかったりし、互いに独立して動くことができる。これら四つのキャリッジ19の各々には噴霧ガン10が固定され、従って噴霧ガン10を備えた自動装置14で散布した粉末の一様な雲が、電界の分裂又はファラデーケージ現象に関連した静電的理由及び(又は)直接アクセス可能性に関連した機械的理由で、到達できない部品5の特定の領域に、粉末の狭くて正確な噴流を噴霧するように、矢印20の方向及び(又は)それに垂直な方向、矢印22の方向に柱状体18に沿って動くことができる。
【0034】
従って、キャリッジ19に固定した噴霧ガン10は、特定の領域23、24、25、26に対向して位置決めされ、これらの特定の領域を修整し又は予調整する。
【0035】
部品5の深さは例えば数cm〜1m変動し得るので、装置17は、平均において処理すべき部品5から適当な距離はなれて位置決めできるように、地面28のレール上を走行する台部材27によって矢印29の方向に予め位置決めされ得る。
【0036】
第1の自動装置14もこの予め位置決めするシステムを備えることができる。
【0037】
電子装置30は、二つの軸線20、22に沿ったキャリッジ19の動き、並びに基準値32に応じた静電ガン10の各々からの粉末の噴流の特性及び粉末の流量の静電特性を制御する。基準値32は、ブースの入口に配置した一連のセル又は吊下げトレイ4又は他の任意の適当な手段に設けたバーコードの、ブース3の入口に設けた自動読取り装置であり得る図示していない適当な手段から受けられる。
【0038】
ある特定の部品の場合には、当然噴霧中に装置17のガン10の位置を変えることができ、或いはこれらガン10の一つ以上の作動を止めたりそれらを準備状態に置くこともできる。
【0039】
図2には、図1と比較して噴霧装置17の異なる実施形態を示している。この実施形態において、噴霧ガン10は、柱状体18に対して単に垂直方向に動くようにされている。
【0040】
装置17は柱状体18を有し、柱状体18上を複数のキャリッジ19が走行し、これらキャリッジの各々は、2ボール型ガイドレール33によって垂直の動きが案内され、2ボール型ガイドレール33上においてキャリッジ19に固定したボールシュー34が摺動する。各キャリッジ19にはサーボモータ35及び減速歯車機構36が固定され、サーボモータ35及び減速歯車機構36は、柱状体18に固定されたラック38と結合するピニオン37を駆動する。
【0041】
サーボモータ35が一方向又は他方向に作動されると、柱状体18に固定されたラック38と結合するピニオン37を介してキャリッジ19を上方又は下方へ駆動する。
【0042】
各サーボモータ35は図示していないブレーキを備え、このブレーキはキャリッジ19を所望の位置に到達した時に適位置に維持し、そしてサーボモータ35は止められる。
【0043】
従って各キャリッジ19は柱状体に沿った連続した集合部位にわたって適位置に動かされ保持されることができる。
【0044】
各キャリッジ19はさらに図示していないエンコーダを備え、柱状体に沿った位置をモニタできるようにされる。
【0045】
各キャリッジ19には支持アーム39が固定され、支持アーム39に噴霧ガン10が固定されている。
【0046】
台部材27に固定された柱状体18は、地面に固定したレール28に沿って案内されるホィール40の集合体及び地面に固定したラック44と結合するピニオン43を駆動する減速サーボモータ42を介してコンベアの軸線に対して位置決めされ得る。2軸キャリッジ実施形態によれば、例えば二つのガイドレール33を含む平面に平行な運動において動くモータ駆動型サブキャリッジは、ガン10を支持するアーム39の代わりに、キャリッジ19の幾つか又は全てに固定される。
【0047】
従って各ガン10はサブキャリッジに機械的に固定される。
【0048】
このサブキャリッジは、ボールねじ、レール及びボールシューを備えるシステム、ベルト駆動システム或いは任意の他の等価のシステムを介してサーボモータ、ステッピングモータ、流体力モータ又は任意の他の形式のアクチュエータによって作動され得る。
【0049】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、全ての変形実施形態を包含するものである。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】位置決めの二つの軸線を含む実施形態の自動噴霧プラントを有する環境における概略斜視図。
【図2】位置決めの一つの軸線を含む実施形態における拡大側面図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に噴霧ブース(3)用の自動修整作業のための部品(5)に粉末の形態の塗布製品を噴霧する噴霧装置において、
本質的に垂直な柱状体(18)と、
柱状体(18)に沿って本質的に垂直に独立して動くことのできる少なくとも二つのキャリッジ(19)と、
キャリッジ(19)で支持され、塗布製品を供給する噴霧ガン(10)と
を有することを特徴とする噴霧装置。
【請求項2】
キャリッジ(19)の少なくとも一つのが柱状体に沿って連続した設定点を通って適位置へ動かしかつ固定させる手段と組合わされることを特徴とする請求項1に記載の噴霧装置。
【請求項3】
キャリッジ(19)の少なくとも一つのが垂直な柱状体(18)に対して第2の運動軸線に沿って動くことのできることを特徴とする請求項1又は2に記載の噴霧装置。
【請求項4】
キャリッジ(19)の二つの運動軸線が直交することを特徴とする請求項3に記載の噴霧装置。
【請求項5】
キャリッジ(19)の少なくとも一つのが、ブレーキを備えかつ該キャリッジ(19)を動かすように構成した少なくとも一つのサーボモータ(35)を備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の噴霧装置。
【請求項6】
キャリッジ(19)が、柱状体(18)に固定した一つのラック(38)と共動するピニオン(37)を備えていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の噴霧装置。
【請求項7】
自動制御装置(30)が、キャリッジ(19)の動き及び位置を制御し、キャリッジ間の衝突を防ぐことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の噴霧装置。
【請求項8】
自動制御装置(30)が、部品(5)の特定の領域(23、24、25、26)に噴霧ガン(10)を対向させるように、キャリッジ(19)の動き及び位置を基準値に拘束することを特徴とする請求項7に記載の噴霧装置。
【請求項9】
噴霧ガン(10)の軸線が同一噴霧平面に含まれていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の噴霧装置。
【請求項10】
柱状体(18)が、噴霧平面に本質的に平行な平面において柱状体(18)を動かすことのできるモーター駆動型台部材(27)に装着されることを特徴とする請求項9に記載の噴霧装置。
【請求項11】
柱状体(18)が、噴霧平面に本質的に垂直な平面において柱状体(18)を動かすことのできるモーター駆動型台部材(27)に装着されることを特徴とする請求項9又は10に記載の噴霧装置。


【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−528065(P2006−528065A)
【公表日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−530371(P2006−530371)
【出願日】平成16年5月19日(2004.5.19)
【国際出願番号】PCT/FR2004/001249
【国際公開番号】WO2004/103574
【国際公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(502275137)アイゼンマン フランス ソシエテ パラクシオン ド・ラ・レスポンサビリテ リミテー (5)
【Fターム(参考)】