説明

粉末泥水処理剤、泥水の脱水方法、および泥水の減容化処理装置

【課題】高濃度の泥水を希釈することなく処理することができる、粉末泥水処理剤を提供すること。
【解決手段】吸着物質、炭酸塩、無機凝集剤および高分子凝集剤を含有した粉末泥水処理剤において、前記高分子凝集剤は、第1高分子凝集剤と第2高分子凝集剤の混合物であり、前記第1高分子凝集剤は、泥水中に含まれる凝集力低下原因物質が、一定濃度以上になると、該凝集力低下原因物質との凝集力低下反応によって急激に凝集力が下降する性質を有し、前記凝集力低下原因物質が一定濃度以上存在する泥水に添加すると、凝集反応と前記凝集力低下反応との両反応が進行するものであり、前記第2高分子凝集剤は、その凝集力は前記第1高分子凝集剤の前記凝集力低下原因物質の影響を受けない状態での本来の凝集力よりも低いが、該凝集力低下原因物質によって凝集力が低下しない性質のものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、泥水処理において、高濃度の泥水を希釈することなく処理することができる、粉末泥水処理剤、泥水の脱水方法および泥水の減容化処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
泥水処理の際には、吸着物質、炭酸塩、無機凝集剤および高分子凝集剤を粉末状で混合した処理剤を、泥水に直接添加、攪拌し、無機凝集剤によって泥水中のアニオン化している汚濁物質の表面電荷を中和し、高分子凝集剤によって前記汚濁物質をフロック化する方法が用いられている(特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
泥水中にはフロック化対象である土粒子等はアニオン状態で存在しており、特に土木現場から排出される排泥水には、ベントナイトやカルボキシメチルセルロース(CMC)などがアニオン性の物質として含まれていることが多い。
前記泥水中にポリ塩化アルミニウム(PAC)等の無機凝集剤を加えることによって、前記土粒子のアニオン状態を中和し、次いで高分子凝集剤により、前記中和された土粒子をフロック化させる。
【特許文献1】特開平09−225208号公報
【特許文献2】特開2000−135407号公報
【0004】
ここで、一般的に、泥水処理剤に含まれる高分子凝集剤としては、アクリルアミドとアクリル酸ナトリウムの共重合物あるいはポリアクリルアミド部分加水分解物のようなカルボキシル基を有する水溶性高分子が使用されている。
【0005】
このようなカルボキシル基を有する水溶性高分子は、土粒子などの汚濁物質には強い凝集活性を発揮するが、アルミニウムイオンやカルシウムイオンなどの多価金属イオンを含む泥水中では該多価金属イオンと反応して不活性の塩をつくって不溶化し易く、凝集効果が弱くなる。
【0006】
従って、カルボキシル基を有する高分子凝集剤は、無機凝集剤であるポリ塩化アルミニウム等の多価金属イオンと反応して不溶化し、その凝集効果が弱くなってしまう。また、泥水中には、カルシウム、鉄、アルミニウム、マグネシウム等の多価金属イオンが元々含まれており、それらによっても、カルボキシル基を有する高分子凝集剤は劣化してしまう。
【0007】
比重1.05〜1.10程度の薄い泥水では、土粒子等の汚濁物質が少ないので、結果的にアニオン性の物質の量が少なく、無機凝集剤であるPACの添加も少なくて済むため、PACの添加によるアルミニウムイオンの発生も少なくなる。また、泥水中に元々含まれる多価金属イオンの量も少ない。その結果、全体としての多価金属イオンが少なく、多価金属イオンによる高分子凝集剤の劣化は起こるが、その劣化は顕在化せず、フロック形成は良好に進行する。
【0008】
しかし、泥水が高濃度になると、土粒子等の汚濁物質は多くなり、汚濁物質のアニオン状態を中和するための無機凝集剤であるPACの添加量も増える。その結果、無機凝集剤由来のアルミニウムイオン等も増加する。また、泥水が高濃度になると、泥水中に元々含まれるカルシウムイオンなどの多価金属イオンの含有量も多くなる。
【0009】
比重が1.10より大きい高濃度の泥水になると、土粒子等の汚濁物質の量も多くなるので、結果的に前記アニオン性物質の量も多くなり、無機凝集剤であるPACの添加量も増えるため、PACの添加によるアルミニウムイオンの発生が多くなる。また、泥水中に元々含まれる多価金属イオンの量も多くなる。その結果、全体としての多価金属イオンが多くなり、多価金属イオンによって劣化する高分子凝集剤の割合も多くなり、全体としての該高分子凝集剤の凝集活性は著しく低下し、フロック形成を進める凝集力が発揮できなくなる。
【0010】
従って、上述の高濃度凝集剤の多価金属イオンによる劣化の関係から、上記フロック化処理は、従来は比重1.05〜1.10程度の薄い泥水に適用され、比重が1.10より大きい高濃度の泥水には適用できないというのが実状である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そのため、比重が1.10よりも大きい濃い泥水の場合、泥水の原水に水を加え、処理しうる比重である1.05〜1.10まで希釈して処理が行われている。従って、原水の比重が1.10以上の高濃度の泥水の場合には、多量の希釈水が必要となる問題があった。
【0012】
本発明は、比重が1.10以上の濃い泥水であっても、原水を希釈する必要がなく、直接原水に処理剤を添加することにより簡便に処理することができる、粉末泥水処理剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様に係る粉末泥水処理剤は、吸着物質、炭酸塩、無機凝集剤および高分子凝集剤を含有した粉末泥水処理剤であって、前記高分子凝集剤は、第1高分子凝集剤と第2高分子凝集剤の混合物であり、前記第1高分子凝集剤は、泥水中に含まれる凝集力低下原因物質が、一定濃度以上になると、該凝集力低下原因物質との凝集力低下反応によって急激に凝集力が下降する性質を有し、前記凝集力低下原因物質が一定濃度以上存在する泥水に添加すると、凝集反応と前記凝集力低下反応との両反応が進行するものであり、前記第2高分子凝集剤は、その凝集力は前記第1高分子凝集剤の前記凝集力低下原因物質の影響を受けない状態での本来の凝集力よりも低いが、該凝集力低下原因物質によって凝集力が低下しない性質のものであることを特徴とする。
【0014】
本発明の高分子凝集剤は、第1高分子凝集剤と第2高分子凝集剤の二成分が混合されてなる。前記第1高分子凝集剤は、泥水中に含まれる凝集力低下原因物質が、一定濃度以上になると、該凝集力低下原因物質との凝集力低下反応によって急激に凝集力が下降する性質を有し、前記凝集力低下原因物質が一定濃度以上存在する泥水、例えば高濃度の泥水に添加すると、凝集反応と前記凝集力低下反応との両反応が進行する。そして、該凝集反応によって、泥水中の汚濁物質がフロック化されて初期フロックを形成されると同時に、該凝集力低下反応によって前記第1高分子凝集剤が不溶化した物質が生成し、生成した不溶物質は泥水中に浮遊して存在する。
【0015】
次に、前記第2高分子凝集剤は、その凝集力は前記第1高分子凝集剤の前記凝集力低下原因物質の影響を受けない状態での本来の凝集力よりも低いが、該凝集力低下原因物質の影響を受けて凝集力が低下しないものである。
【0016】
高分子凝集剤として前記第1高分子凝集剤と前記第2高分子凝集剤を含む粉末泥水処理剤を泥水中に添加すると、該第1高分子凝集剤の凝集反応によって形成された前記初期フロックを種フロックとして、該第2高分子凝集剤が、泥水中の汚濁物質を更にフロック化させる。加えて、第1高分子凝集剤と凝集力低下原因物質との凝集力低下反応によって生成した、第1高分子凝集剤が不溶化した物質も、泥水中の汚濁物質と共に、第2高分子凝集剤の凝集力によってフロック化させることができる。
【0017】
即ち、本発明は、凝集力低下原因物質との凝集力低下反応に起因する第1高分子凝集剤の凝集力の低下を、第2高分子凝集剤の凝集力によって補うものであり、その際、第2高分子凝集剤の凝集力は第1高分子凝集剤の凝集力よりも低いが、第1高分子凝集剤の凝集反応によって生成した初期フロックが種フロックとなって、第2高分子凝集剤が効果的に作用して汚濁物質がフロック化され、これにより、十分な凝集効果が得られるものである。
【0018】
本発明の第2の態様に係る粉末泥水処理剤は、第1の態様において、前記高分子凝集剤は、第1高分子凝集剤がアクリルアミドとアクリル酸ナトリウムの共重合物であり、第2高分子凝集剤がアクリルアミドと2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルフォン酸ナトリウムの共重合物であることを特徴とする。
【0019】
本発明に係る高分子凝集剤のうち、第1高分子凝集剤であるアクリルアミドとアクリル酸ナトリウムの共重合物は、凝集力は強いが、泥水中のカルシウムイオンなどの多価金属イオンと結合して不溶化する性質がある。そのため、泥水に添加後、前記凝集反応によって初期フロックを形成すると共に、泥水中の多価金属イオンと結合して不溶化し、短時間でその凝集力が低下してしまう。
ここで、前記カルシウムイオンなどの多価金属イオンや無機凝集剤由来の多価金属イオンが、第1高分子凝集剤であるアクリルアミドとアクリル酸ナトリウムの共重合物の凝集力低下原因物質に相当する。
【0020】
泥水中のアニオン化した土粒子等の汚濁物質の濃度が高くなれば、泥水中に含まれる多価金属イオン(カチオン)の濃度も高くなる。更に、前記アニオン化した汚濁物質を中和するための無機凝集剤の添加量を多くしなければならないため、無機凝集剤由来の多価金属イオンも多くなる。
従って、泥水中の汚濁物質の濃度が高くなれば、泥水全体に含まれる多価金属イオンの濃度も高くなり、第1高分子凝集剤は高濃度の多価金属イオンの影響を受けて短時間に劣化し、前記凝集反応も短時間で終わってしまう。
【0021】
一方、第2高分子凝集剤であるアクリルアミドと2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルフォン酸ナトリウムの共重合物は、前記多価金属イオンと結合しても不溶化しないため、泥水に添加した後に凝集力が低下することなく、初期の凝集力が維持される。
【0022】
本発明によれば、泥水に粉末泥水処理剤を添加した直後は、第1高分子凝集剤である凝集力の高いアクリルアミドとアクリル酸ナトリウムの共重合物が積極的に作用して、初期フロックを形成し、その後、該アクリルアミドとアクリル酸ナトリウムの共重合物が泥水中の多価金属イオンと結合して不溶化し、短時間でその凝集力が低下しても、第2高分子凝集剤であるアクリルアミドと2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルフォン酸ナトリウムの共重合物の凝集力は、多価金属イオンの影響を受けて低下しないため、前記初期フロックを種フロックとして、アクリルアミドとアクリル酸ナトリウムの共重合物によって処理し切れなかった成分をフロック化することができる。そのため、従来よりも高濃度の泥水を処理することができる。
【0023】
これにより、泥水処理の際、通常処理可能な比重1.05〜1.10の泥水よりも高濃度である比重が1.10以上の濃い泥水であっても、原水を希釈する必要がなく、直接原水に処理剤を添加することにより簡便に処理することができる。
尚、高分子凝集剤としてアクリルアミドと2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルフォン酸ナトリウムの共重合物だけを用いると、初期の凝集力が弱く、凝集しないか凝集不十分となる。
【0024】
本発明の第3の態様に係る粉末泥水処理剤は、第1の態様において、前記高分子凝集剤は、第1高分子凝集剤がアクリルアミドとアクリル酸ナトリウムの共重合物であり、第2高分子凝集剤がアクリルアミドとアクリル酸ナトリウムと2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルフォン酸ナトリウムの三元共重合物であることを特徴とする。
【0025】
本発明によれば、第2高分子凝集剤としてアクリルアミドとアクリル酸ナトリウムと2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルフォン酸ナトリウムの三元共重合物を用いているので、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルフォン酸ナトリウムのスルフォン基の存在により、多価金属イオンとの結合による不溶化が起こり難くできる上、アクリル酸ナトリウムのカルボキシル基の存在により、第2高分子凝集剤の凝集作用を高めることができる。
【0026】
本発明の第4の態様に係る粉末泥水処理剤は、第2または第3の態様において、吸着物質はベントナイト、炭酸塩は炭酸水素ナトリウム、無機凝集剤はポリ塩化アルミニウムの微粉末であることを特徴とする。
【0027】
本発明によれば、吸着物質としてベントナイト、炭酸塩として炭酸水素ナトリウム、無機凝集剤としてポリ塩化アルミニウムの微粉末を組み合わせることにより、第2または第3の態様と同様の作用効果が一層効果的に得られる。
【0028】
本発明の第5の態様に係る泥水の脱水方法は、第1から第4のいずれかの態様の粉末泥水処理剤を、泥水に添加、攪拌することによってフロックを形成させ、被処理泥水を、脱水袋に入れて脱水し、固液分離することを特徴とする。
【0029】
本発明によれば、前記粉末泥水処理剤によってフロックを形成させた泥水を、脱水袋に入れて吊るし、自然濾過、あるいは袋を絞ることによってフロックと水分とを分離し、簡単に固液分離することができる。前記脱水方法は脱水袋によって被処理泥水中のフロックを分離する単純な方法であるため、低コストで導入できる。また、前記脱水袋は、泥水の量や作業場の広さに応じて袋の大きさを変えることができ、袋脱水装置として省スペースで設置することが可能である上、移動も容易である。
【0030】
本発明の第6の態様に係る泥水の脱水方法は、第1から第4のいずれかの態様の粉末泥水処理剤を、泥水に添加、攪拌することによってフロックを形成させ、被処理泥水を遠心分離し、固液分離することを特徴とする。
【0031】
本発明によれば、前記粉末泥水処理剤によってフロックを形成させた泥水を、遠心分離することによって、短時間でフロックと水分とを分離することができる。このことによって、被処理泥水の脱水効率が向上し、短時間でより多くの泥水を脱水処理することができる。また、遠心分離による脱水は、自然濾過等による脱水よりも脱水率が高く、固体成分の減容化率も高くなる。
【0032】
本発明の第7の態様に係る泥水の脱水方法は、第1から第4のいずれかの態様の粉末泥水処理剤を、泥水に添加、攪拌することによってフロックを形成させ、被処理泥水を加圧脱水し、固液分離することを特徴とする。
【0033】
本発明によれば、前記粉末泥水処理剤によってフロックを形成させた泥水を、加圧脱水することによって、短時間でフロックと水分とを分離することができる。このことによって、被処理泥水の脱水効率が向上し、短時間でより多くの泥水を脱水処理することができる。特に、加圧脱水は、自然濾過や遠心分離による脱水よりも脱水率が高く、固体成分の減容化率は更に高くなる。また、例えば、加圧脱水装置としてフィルタープレスを用いれば、前記固体成分が高強度脱水ケーキ(コーン指数:400kN/m以上)として得られ、該脱水ケーキを盛土材や埋戻し材としてリサイクルすることができる。フィルタープレス等の加圧脱水装置は、一度に大量の被処理泥水を脱水処理することが可能であるため、大容量の泥水処理の際に有効である。
【0034】
本発明の第8の態様に係る泥水の減容化処理装置は、第1から第4のいずれかの態様の粉末泥水処理剤を、泥水に添加、攪拌してフロックを形成させるためのフロック形成部と、該フロック形成部から移された被処理泥水を固液分離する脱水部と、を備えたことを特徴とする。
【0035】
本発明によれば、フロック形成部によって泥水と粉末泥水処理剤を効率よく混合撹拌し、速やかにフロックを形成させ、脱水部によって減容土(固体成分)と分離水(液体成分)とに分離することによって、泥水の減容化を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、泥水処理において、粉末泥水処理剤中に含まれる高分子凝集剤として、第1高分子凝集剤と第2高分子凝集剤の混合物を用い、両高分子凝集剤が相乗的に作用することによって、通常の泥水処理剤によって処理可能な、比重1.05〜1.10の泥水だけでなく、更に高濃度の比重1.10以上の濃い泥水であっても、原水の比重を1.05〜1.10にまで希釈せず処理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
本発明に係る粉末泥水処理剤は、吸着物質、炭酸塩、無機凝集剤および高分子凝集剤を含有した粉末泥水処理剤であって、前記高分子凝集剤は、第1高分子凝集剤と第2高分子凝集剤の混合物であるものである。
【0038】
本発明における吸着物質としては、例えば、ベントナイト、活性炭、ゼオライト、などが挙げられる。前記吸着物質はアニオン性またはイオン性を持たない物質である。アニオン性のものは泥水中に含まれる汚濁物質と共に無機凝集剤によって中和される。これらの吸着剤は、高分子凝集剤によってフロック化されるための核になるものである。
吸着物質は、前記粉末泥水処理剤に45〜75wt%の割合で含まれている。
【0039】
本発明における炭酸塩としては、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、などが挙げられる。炭酸塩はpH調整剤として用いられるものである。凝集剤による凝集反応には最適なpH範囲があり、使用する凝集剤に応じて処理泥水の原水のpHを調整する必要がある。炭酸塩は原水のpHと、使用する凝集剤の種類によって選択することができる。
炭酸塩は、前記粉末泥水処理剤に10〜20wt%の割合で含まれている。
【0040】
本発明における無機凝集剤としては、例えば、ポリ塩化アルミニウム(PAC)、硫酸アルミニウムなどのアルミニウム塩や、塩化第二鉄、ポリ硫酸鉄などの鉄塩などが挙げられる。前記無機凝集剤は、汚濁物質のマイナスの表面電荷を中和し、該汚濁物質が高分子凝集剤によってフロック化され易くするものである。
無機凝集剤は、前記粉末泥水処理剤に10〜20wt%の割合で含まれている。
【0041】
次に、本発明の高分子凝集剤は、第1高分子凝集剤と第2高分子凝集剤の二成分が混合されてなる。
高分子凝集剤は、前記粉末泥水処理剤に5〜15wt%の割合で含まれている。
【0042】
該第1高分子凝集剤は、泥水中に含まれる凝集力低下原因物質が、一定濃度以上になると、該凝集力低下原因物質との凝集力低下反応によって急激に凝集力が下降する性質を有し、前記凝集力低下原因物質が一定濃度以上存在する泥水、例えば高濃度の泥水に添加すると、凝集反応と前記凝集力低下反応との両反応が進行する。そして、無機凝集剤によって中和された汚濁物質が、該凝集反応によってフロック化されて初期フロックが形成されると同時に、該凝集力低下反応によって前記第1高分子凝集剤が不溶化した物質が生成し、前記凝集反応は短時間で終わってしまい、生成した不溶物質は泥水中に浮遊して存在する状態に至る。
前記第1高分子凝集剤としては、例えば、アクリルアミドとアクリル酸ナトリウムの共重合物、などが挙げられる。
【0043】
次に、本発明における第2高分子凝集剤は、その凝集力は前記第1高分子凝集剤の前記凝集力低下原因物質の影響を受けない状態での本来の凝集力よりも低いが、該凝集力低下原因物質の影響を受けて凝集力が低下しないものである。
前記第2高分子凝集剤としては、例えば、アクリルアミドと2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルフォン酸ナトリウムの共重合物、アクリルアミドとアクリル酸ナトリウムと2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルフォン酸ナトリウム(AMPS)の三元共重合物、などが挙げられる。
【0044】
高分子凝集剤として前記第1高分子凝集剤と前記第2高分子凝集剤を含む粉末泥水処理剤を泥水中に添加すると、該第1高分子凝集剤の凝集反応によって形成された前記初期フロックを種フロックとして、該第2高分子凝集剤が、泥水中の汚濁物質を更にフロック化させる。加えて、第1高分子凝集剤と凝集力低下原因物質との凝集力低下反応によって生成した、第1高分子凝集剤が不溶化した物質も、泥水中の汚濁物質と共に、第2高分子凝集剤の凝集力によってフロック化させることができる。
【0045】
即ち、凝集力低下原因物質との凝集力低下反応に起因する第1高分子凝集剤の凝集力の低下を、第2高分子凝集剤の凝集力が補い、その際、第2高分子凝集剤の凝集力は第1高分子凝集剤の凝集力よりも低いが、第1高分子凝集剤の凝集反応によって生成した初期フロックが種フロックとなって、第2高分子凝集剤が効果的に作用して汚濁物質をフロック化させ、これにより、十分な凝集効果を得ることができる。
【0046】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらによって制約されるものではない。
【0047】
〔実施例1〕
本実施例に係る粉末泥水処理剤は、吸着物質にベントナイト、炭酸塩に炭酸水素ナトリウム、無機凝集剤にポリ塩化アルミニウムの微粉末、そして、高分子凝集剤に、第1高分子凝集剤としてアクリルアミドとアクリル酸ナトリウムの共重合物と、第2高分子凝集剤としてアクリルアミドと2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルフォン酸ナトリウムの共重合物が用いられている。
【0048】
前記第1高分子凝集剤であるアクリルアミドとアクリル酸ナトリウムの共重合物と、前記第2高分子凝集剤であるアクリルアミドと2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルフォン酸ナトリウムの共重合物は、それぞれ一般式(1)及び一般式(2)で表される。
【0049】
【化1】

【0050】
【化2】

【0051】
一般式(1)で表される第1高分子凝集剤である、アクリルアミドとアクリル酸ナトリウムの共重合物は、アクリルアミド部分が95〜60mol%(60≦m≦95)含まれ、アクリル酸ナトリウム部分が5〜40mol%(5≦n≦40)含まれるものが、第1高分子凝集剤として好ましい凝集力を有している。
【0052】
一般式(2)で表される第2高分子凝集剤である、アクリルアミドと2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルフォン酸ナトリウムの共重合物は、アクリルアミド部分が99〜80mol%(80≦m≦99)含まれ、アクリルアミドと2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルフォン酸ナトリウム部分が1〜20mol%(1≦n≦20)含まれるものが好ましい。
【0053】
第1高分子凝集剤と第2高分子凝集剤の混合割合x:yは、0<x≦50、50≦y<100の範囲でx+y=100となるような任意の割合であることが好ましい。前記混合割合は泥水の比重や性質によって調整することができる。
【0054】
第1高分子凝集剤であるアクリルアミドとアクリル酸ナトリウムの共重合物は、凝集力は強いが、泥水中のアルミニウムやカルシウムイオンなどの多価金属イオンと結合して不溶化する性質がある。そのため、泥水に添加後、前記凝集反応によって初期フロックを形成すると共に、泥水中の多価金属イオンと結合して不溶化し、短時間でその凝集力が低下してしまう。
【0055】
ここで、前記カルシウムイオンなどの多価金属イオンや無機凝集剤由来の多価金属イオンが、第1高分子凝集剤であるアクリルアミドとアクリル酸ナトリウムの共重合物の凝集力低下原因物質に相当する。
泥水中のアニオン化した土粒子等の汚濁物質の濃度が高くなれば、泥水中に含まれる多価金属イオン(カチオン)の濃度も高くなる。更に、前記アニオン化した汚濁物質を中和するための無機凝集剤の添加量を多くしなければならないため、無機凝集剤由来の多価金属イオンも多くなる。
従って、泥水中の汚濁物質の濃度が高くなれば、泥水全体に含まれる多価金属イオンの濃度も高くなり、第1高分子凝集剤は高濃度の多価金属イオンの影響を受けて短時間に劣化し、前記凝集反応も短時間で終わってしまう。
【0056】
一方、第2高分子凝集剤であるアクリルアミドと2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルフォン酸ナトリウムの共重合物は、前記多価金属イオンと結合しても不溶化しないため、泥水に添加した後に凝集力が低下することなく、初期の凝集力が維持される。
従って、泥水に粉末泥水処理剤を添加した直後は、第1高分子凝集剤である凝集力の高いアクリルアミドとアクリル酸ナトリウムの共重合物が積極的に作用して、初期フロックを形成する。その後、該アクリルアミドとアクリル酸ナトリウムの共重合物が泥水中の多価金属イオンと結合して不溶化して、短時間でその凝集力が低下しても、第2高分子凝集剤であるアクリルアミドと2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルフォン酸ナトリウムの共重合物の凝集力は、多価金属イオンの影響を受けて低下しないため、前記初期フロックを種フロックとして、アクリルアミドとアクリル酸ナトリウムの共重合物によって処理し切れなかった成分をフロック化する。そのため、従来よりも高濃度の泥水を処理することができる。
【0057】
これにより、泥水処理の際、通常処理可能な比重1.05〜1.10の泥水よりも高濃度である、比重1.10以上の濃い泥水であっても、原水を希釈する必要がなく、直接原水に処理剤を添加することにより簡便に処理することができる。
【0058】
〔実施例2〕
本実施例に係る粉末泥水処理剤は、吸着物質にベントナイト、炭酸塩に炭酸水素ナトリウム、無機凝集剤にポリ塩化アルミニウムの微粉末、そして、高分子凝集剤に、第1高分子凝集剤としてアクリルアミドとアクリル酸ナトリウムの共重合物と、第2高分子凝集剤としてアクリルアミドとアクリル酸ナトリウムと2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルフォン酸ナトリウムの三元共重合物が用いられている。
【0059】
前記第1高分子凝集剤であるアクリルアミドとアクリル酸ナトリウムの共重合物は、上述の一般式(1)、第2高分子凝集剤であるアクリルアミドとアクリル酸ナトリウムと2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルフォン酸ナトリウムの三元共重合物は一般式(3)で表される。
【0060】
【化3】

【0061】
第2高分子凝集剤としてアクリルアミドとアクリル酸ナトリウムと2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルフォン酸ナトリウムの三元共重合物を用いれば、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルフォン酸ナトリウムのスルフォン基の存在により、多価金属イオンとの結合による不溶化が起こり難くできる上、アクリル酸ナトリウムのカルボキシル基の存在により、第2高分子凝集剤の凝集作用を高めることができる。
【0062】
一般式(3)で表される第2高分子凝集剤である、アクリルアミドとアクリル酸ナトリウムと2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルフォン酸ナトリウムの三元共重合物は、アクリルアミド部分が50〜99mol%未満(50≦l<99)、アクリル酸ナトリウム部分が0より大きく30mol%未満(0<m≦30)、アクリルアミドと2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルフォン酸ナトリウム部分が1〜20mol%(1≦n≦20)含まれるものが好ましい。
【0063】
第1高分子凝集剤と第2高分子凝集剤の混合割合x:yは、実施例1と同様、0<x≦50、50≦y<100の範囲でx+y=100となるような任意の割合であることが好ましい。前記混合割合は泥水の比重や性質によって調整することができる。
【0064】
〔凝集試験〕
次に、本実施例の粉末泥水処理剤を用いた高濃度泥水の凝集試験について説明する。
本試験では、第1高分子凝集剤として、アクリル酸ナトリウム部分が30mol%含まれるアクリルアミドとアクリル酸ナトリウムの共重合物を用いた。また第2高分子凝集剤として、アクリル酸ナトリウム部分が1mol%、アクリルアミドと2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルフォン酸ナトリウム部分が5mol%含まれるアクリルアミドとアクリル酸ナトリウムと2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルフォン酸ナトリウムの三元共重合物を用いた。
【0065】
本試験に使用する粉末泥水処理剤の組成を以下に示す。
試料1
ベントナイト 60wt%
炭酸水素ナトリウム 15wt%
ポリ塩化アルミニウム 15wt%
第1高分子凝集剤 5wt%
第2高分子凝集剤 5wt%
【0066】
試料1と比較するための従来の粉末泥水処理剤の組成を以下に示す。
比較例1
ベントナイト 60wt%
炭酸水素ナトリウム 15wt%
ポリ塩化アルミニウム 15wt%
アクリルアミドとアクリル酸ナトリウムの共重合物(第1高分子凝集剤) 10wt%
【0067】
試験方法
ベントナイトを含有する泥水(比重1.15、1.20、1.25)10リットルに対し、粉末泥水処理剤(試料1及び比較例1)を添加し、混合・攪拌し、フロックを形成させ、フロック径を計測した。
また、凝集した泥水全量を土嚢袋(スーパーどのう[3号土のう]、萩原工業(株)製)に入れて、1時間静置し、自然脱水された濾水の量を測定した。泥水10リットル中に含まれる水の量に対する、自然脱水された濾水量の割合を、脱水率(%)として表した。
その結果を表1〜表3及び図1〜図3に示す。
【0068】
【表1】

【0069】
【表2】

【0070】
【表3】

【0071】
表1及び図1は泥排水の比重が比重1.15の場合の結果である。粉末泥水処理剤の添加量(kg/m)は、1.5、2.0、2.5、3.0とした。
試料1では、形成されたフロック径が1.0mm〜4.0mmであった。特に、1.5kg/mを添加した際のフロック径は1.0mm〜2.0mmであり、脱水率は61.1%で最も高い脱水効果を示した。
【0072】
一方、比較例1においては、1.5kg/mの添加では形成されたフロック径は0.5mm未満であり、添加量を高くしても1.0mm以上のフロックは形成されなかった。脱水率はいずれの添加量においても11.1%未満であった。フロック径が0.5mm未満では、該フロックは未だ懸濁状態であり、土嚢袋が目詰まりしてしまい、分離することができない。
【0073】
表2及び図2は泥排水の比重が比重1.20の場合の結果である。粉末泥水処理剤の添加量(kg/m)は、3.0、4.0、5.0とした。
試料1においては、添加量に応じて1.0mm〜4.0mmのフロックを形成した。添加量が3.0kg/mのとき、脱水率は57.8%で最も高い脱水効果を示した。その際、形成されたフロック径は1.0mm〜2.0mmであった。
比較例1においては、いずれの添加量でも1.0mm以上のフロックは形成されなかった。脱水率は、添加量3.0kg/mのときに0%(脱水されない)、その他の場合でも11.6%未満であった。
【0074】
表3及び図3は泥排水の比重が比重1.25の場合の結果である。粉末泥水処理剤の添加量(kg/m)は、5.0、6.0、7.0とした。
試料1においては、添加量に応じて1.0mm〜4.0mmのフロックを形成した。添加量が5.0kg/mのとき、脱水率は42.2%であり、最も高い脱水効果を示した。その際、形成されたフロック径は1.0mm〜2.0mmであった。
比較例1においては、いずれの添加量でも0.5mm以上のフロックは形成されなかった。脱水率もいずれの添加量でも0%であり、土嚢袋による自然脱水はできなかった。
【0075】
以上の結果より、従来の粉末泥水処理剤では、凝集が不十分(フロックが小さい)、凝集しない(フロックを形成しない)などの問題で、処理困難であった高濃度泥水であっても、本発明の粉末泥水処理剤によれば、第1高分子凝集剤の強い初期凝集力によって種フロックを形成し、高濃度泥水中でも凝集力が持続する第2高分子凝集剤が、該種フロックを核として更に大きなフロックを形成することができ、固液分離が容易にできると言える。
【0076】
また、泥水の比重が1.15、1.20、1.25のいずれの結果でも、1.0〜2.0mmのフロックが形成されたときの自然脱水効率がよい。これは、フロック径が大きくなると、フロックに水分が保持され易くなり、自然脱水による分離が行われ難いためであると考えられる。この場合、後述する実施例3に記載するように、土嚢袋をプレス機等で圧搾し、フロック間に保水された水分を分離することができる。フロック径が大きい場合は、目詰まりし難く、自然脱水は極めて速やかに行われる。従って、泥水の量に応じては、粉末泥水処理剤の添加量によって形成されるフロック径を調整し、プレス機等を併用することも可能である。
【0077】
〔実施例3〕
次に、本実施例に係る泥水の減容化処理装置について図4を用いて説明する。図4は実施例3に係る泥水減容化処理装置1の概略図である。泥水減容化処理装置1は、粉末泥水処理剤2を泥水3に添加、攪拌してフロックを形成させるためのフロック形成機5と、該フロック形成機5から移された被処理泥水4を固液分離する脱水機7と、を備えている。更に、フロック形成機5中の被処理泥水4を脱水機7に移すためのポンプ6を備えている。
【0078】
フロック形成機5は、泥水3と粉末泥水処理剤2を混合攪拌し、泥水3中に含まれる汚濁物質をフロック化させることができるものである。例えば、撹拌槽と撹拌機を備えたバッチミキサーや管路ミキサーなどが挙げられる。バッチミキサーは少〜中容量の泥水を処理する場合に適している。管路ミキサーは、泥水と粉末泥水処理剤を連続的に混練することができるので、大容量の泥水を処理する場合に適している。
【0079】
フロック形成機5において泥水3と粉末泥水処理剤2を混合攪拌し、フロックが形成された被処理泥水4は、ポンプ6で脱水機7に移される。ポンプ6としては、スクイズポンプのような固形物や粘性物の移送に適したポンプを用いることが好ましい。
フロックが形成された被処理泥水4は、脱水機7において固体成分と液体成分に分けられる。脱水機7としては、脱水袋を用いた自然濾過または圧搾濾過脱水装置や、遠心分離装置、加圧脱水装置、および減圧脱水装置などが挙げられる。
【0080】
本実施例によれば、フロック形成機5によって泥水3と粉末泥水処理剤2を効率よく混合し、速やかにフロックを形成させ、脱水機7によって減容土8(固体成分)と分離水9(液体成分)とに分離し、泥水3の減容化を容易に行うことができる。
【0081】
次に、小容量(実施例4)、中容量(実施例5)、および大容量(実施例6)の泥水を処理する場合について説明する。実施例4〜実施例6には、実施例3の泥水減容化処理装置1を用いることができる。
【0082】
〔実施例4〕
本実施例では、小容量の泥水を処理する場合の脱水方法について説明する。本実施例は、図3における泥水減容化処理装置1の脱水機7として、脱水袋を用いた自然濾過または圧搾濾過脱水装置(以下、袋脱水装置7aと言う)を用いるものである。尚、小容量とは、目安として処理泥水3の量が1〜10m/日程度の場合である。図5は実施例4に係る袋脱水装置7aの概略図である。
【0083】
本実施例の泥水の脱水方法は、フロック形成機5において泥水3と粉末泥水処理剤2を混合攪拌し、泥水3中に含まれる汚濁物質をフロック化させた後に、フロックが形成された被処理泥水4を、水分は通過するが土粒子程度の固体は通過しないような粗い目の脱水袋10にポンプ6で移し、脱水して固液分離するものである。フロック形成機5としては、例えば撹拌槽13と撹拌機14を備えたバッチミキサー5aを用いることできる。また、ポンプ6としては、スクイズポンプのような固形物や粘性物の移送に適したポンプが用いられる。
【0084】
袋脱水装置7aに用いられるの脱水袋10は、水分は通過するが土粒子程度の固体は通過しないような粗い目の袋であり、例えば土嚢袋のようなものが好ましい。該脱水袋10として例えば芦森工業株式会社製、ロジパック(登録商標)を用いれば、被処理泥水4中のフロックが目詰まりすることなく、あるいはフロックが水分と一緒に通過することなく、水分のみが濾過されて、効率良く固液分離することができる。本実施例の泥水の脱水方法によれば、比重1.10〜1.35の高濃度泥水を約40〜50%に減容化することができる。また、前記脱水袋10の大きさは、泥水3の量や、使用する場所の空きスペースに応じて変えることができる。例えば、芦森工業株式会社製、ロジパック25を用いれば、一度に約3mの泥水を脱水処理することができる。袋脱水装置7aは、省スペースで設置することが可能であるため、該袋脱水装置7aを複数機導入することが可能であり、ロジパック25を用いた袋脱水装置7aを3機導入することによって、一日に約10mの泥水を処理することができる。
【0085】
前記脱水袋10は、前記被処理泥水4を該脱水袋10に入れるだけで自然濾過され、ほとんどの水分が分離水9として脱水されるが、自然濾過後の脱水袋10をプレス機11を用いて圧搾し、フロック12にしみ込んでいる水分を絞れば、固体成分の体積を更に減らすことができる。前記プレス機11は、例えばローラ対11a、11bによって脱水袋10を扱いて搾るようなプレス機を用いることができる。
本実施例では、脱水袋10の数を増やすことによって泥水の減容化処理能力を上げることができる。
【0086】
〔実施例5〕
本実施例では、中容量の泥水を処理する場合の脱水方法について説明する。本実施例は、図3における泥水減容化処理装置1の脱水機7として、遠心分離機7bを用いるものである。尚、中容量とは、目安として処理泥水の量が10〜90m/日程度の場合である。
【0087】
本実施例の泥水の脱水方法は、フロック形成機5において泥水3と粉末泥水処理剤2を混合し、泥水3中に含まれる汚濁物質をフロック化させた後に、フロックが形成された被処理泥水4を、遠心分離機7bにポンプ6で送り、遠心分離によって固液分離するものである。フロック形成機5としては、撹拌槽と撹拌機を備えたバッチミキサー5aを用いることができる。また、泥水3の量に応じて管路ミキサー5bを用いることできる。また、ポンプ6としては、スクイズポンプのような固形物や粘性物の移送に適したポンプが用いられる。
【0088】
本実施例によれば、前記粉末泥水処理剤2によってフロックを形成させた被処理泥水4を、遠心分離することによって、短時間でフロックと水分とを分離することができる。このことによって、被処理泥水4の脱水効率が向上し、短時間でより多くの泥水を脱水処理することができる。また、遠心分離による脱水は、自然濾過等による脱水よりも脱水率が高く、固体成分である減容土8の減容化率も高くなる。
【0089】
〔脱水試験1〕
試験方法
ベントナイトを含有する泥水(比重1.25、1.30)200リットルに対し、粉末泥水処理剤を添加し、混合・攪拌し、フロックを形成させ、凝集した泥水全量を遠心分離機(石川島播磨重工業(株)製、スクリューデカンタ形遠心分離機)にかけて固液分離し、固体成分の容積を測定した。粉末泥水処理剤としては前述の凝集試験において用いた試料1を用いた。粉末泥水処理剤の添加量は、比重1.25の泥水に対しては4.5kg/m、比重1.30の泥水に対しては5.0kg/mである。なお、粉末泥水処理剤4.5〜5.0kg/mは、容量にして約2リットルである。
【0090】
泥水200リットルに対する遠心分離後の固体成分の容積の割合を、減容化率(vol%)として表し、図6に示す。また、前記遠心分離によって分離された分離水の水質を測定した結果を図7に示す。
【0091】
図6に示されるように、比重1.25および1.30という高濃度の泥水に対して粉末泥水処理剤を直接添加し、その被処理泥水を遠心分離によって固液分離することによって、原水に対して約40vol%に減容化された固体成分を分離することができる。更に、分離された液体成分である分離水は、図7に示されるように公共下水道水質基準を満たした濁度であり、下水放流が可能である。
粉末泥水処理剤を添加しない泥水に対して同様の遠心分離を行うと、ほとんど固液分離することはできない。減容化率は80〜100vol%であり、分離水も公共下水道水質基準の約1000倍の濁度であるため、産業廃棄物として処理する必要がある。
【0092】
〔実施例6〕
本実施例では、大容量の泥水を処理する場合の脱水方法について説明する。
本実施例は、図3における泥水減容化処理装置1の脱水機7として、加圧脱水機7cを用いるものである。尚、大容量とは、目安として脱水機1機あたりの処理泥水の量が100〜200m/日程度の場合である。
【0093】
本実施例の泥水の脱水方法は、フロック形成機5において泥水3と粉末泥水処理剤2を混合し、泥水3中に含まれる汚濁物質をフロック化させた後に、フロックが形成された被処理泥水4を、フィルタープレス等の加圧脱水機7cにポンプ6で送り、加圧脱水によって固液分離するものである。大型のフィルタープレス(例えば株式会社氣工社製、KFP−2000)では一度に大容量の被処理泥水を脱水することができるので、フロック形成機5も、管路ミキサー5b等を用い、大容量の泥水3を連続的に混合撹拌することができるものを用いることが好ましい。管路ミキサー5bから加圧脱水機(フィルタープレス)7cに被処理泥水4を送るためのポンプ6としては、移送する被処理泥水4量に応じた吐出量のスクイズポンプ等が用いられる。
【0094】
本実施例によれば、被処理泥水4の脱水効率が向上し、短時間でより多くの泥水3を脱水処理することができる。特に、加圧脱水は、自然濾過や遠心分離による脱水よりも脱水率が高く、固体成分である減容土8の減容化率は更に高くなる。また、加圧脱水装置7cとしてフィルタープレスを用いれば、前記減容土8が高強度脱水ケーキとして得られ、該脱水ケーキを盛土材や埋戻し材としてリサイクルすることができる。フィルタープレス等の加圧脱水装置7cは、一度に大量の被処理泥水4を脱水処理することが可能であるため、一日の処理泥水3の量が100〜200m程度の大容量である場合に適している。
【0095】
〔脱水試験2〕
実施例6の泥水の脱水方法について、簡易フィルタープレス装置20を用い、小スケールでの試験を行った。
試験方法
ベントナイトを含有する泥水(比重1.20)2リットルに対し、粉末泥水処理剤を添加してポリバケツ中で混合攪拌し、フロックを形成させ、図8に示すような簡易フィルタープレス装置20を用いて固液分離した。フロックが形成された被処理泥水全量を、泥水投入口21からフランジ容器22に入れ密閉し、加圧用ガス(窒素ガス等)により圧力をかけて加圧脱水した。脱水圧力は0.5MPaに設定し、脱水容器部23を通って排出口24から排出される分離水(液体成分)の量が1ミリリットル/分以下となることを脱水終了の目安とした。被処理泥水をフィルタープレスにより脱水した後、脱水容器部23に残る減容土(固体成分)は脱水ケーキとして回収される。前記脱水容器部23の円柱形状の空間の大きさは、Φ100mm、d(高さ)=32mmである。
粉末泥水処理剤としては前述の凝集試験において用いた試料1を用い、粉末泥水処理剤の添加量を変化させ、回収される脱水ケーキの強度(コーン指数)を測定した。粉末泥水処理剤の量が、0、1.0、2.0、および3.0kg/mの場合について試験を行った。
【0096】
上記試験結果を図9および図10に示す。図9は、泥水に粉末泥水処理剤(1kg/m)を添加した場合と無添加の場合(原水)における脱水率と脱水時間の関係である。図10は、粉末泥水処理剤の添加量と分離された固体成分(脱水ケーキ)の強度の関係を示す図である。
【0097】
図9に示されるように、粉末泥水処理剤(1kg/m)を添加した場合、脱水が終了する(脱水率がほぼ100%になる)まで約10分であるのに対し、無添加の場合(原水)は約15分を要する。粉末泥水処理剤を添加し、混合撹拌することによって、十分にフロックが形成され、短時間でフロックと水分とを分離することができている。
【0098】
また、図10に示されるように、粉末泥水処理剤を加えると、フィルタープレスを用いた加圧脱水によって形成される脱水ケーキのコーン指数は、無添加の場合よりも高くなる。通常、泥水の脱水ケーキは産業廃棄物となるが、その強度(コーン指数)によっては、盛土材や埋戻し材として再利用することができる。粉末泥水処理剤無添加の場合のコーン指数は約200kN/mであり、これは建設発生土の土質区分(建設汚泥リサイクル指針:建設大臣官房技術調査室監修)としては第4種建設発生土に該当する。第4種建設発生土は、そのままではリサイクルすることができず、適切な処理(含水比低下、粒度調整、安定処理等)が必要であり、その用途が限られる。
【0099】
一方、1.0〜2.0kg/mの粉末泥水処理剤を添加した場合に得られる脱水ケーキのコーン指数は400(kN/m)以上となり、建設発生土の土質区分としては第3種建設発生土に該当する。第3種建設発生土は、多くの用途に対してそのまま利用可能であり、リサイクルの面で有用である。
尚、粉末泥水処理剤の添加量を3.0kg/mに増やすと、コーン指数は低下し、無添加の場合と同程度の強度になっているが、当該粉末泥水処理剤の添加により、泥水中のフロックは速やかに形成される。すなわち、3.0kg/m以上の粉末泥水処理剤を添加した場合には、脱水ケーキの強度は高くないが、脱水効率が高い。したがって、目的用途に応じて粉末泥水処理剤の添加量を調整し、脱水ケーキの強度もしくは被処理泥水の脱水効率を調整することができる。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明は、泥水処理において、比重1.10以上の高濃度の泥水を希釈することなく処理することができる、粉末泥水処理剤、泥水の脱水方法および泥水の減容化処理装置として利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】凝集試験(泥水比重1.15)の結果を示す図である。
【図2】凝集試験(泥水比重1.20)の結果を示す図である。
【図3】凝集試験(泥水比重1.25)の結果を示す図である。
【図4】実施例3に係る泥水減容化処理装置の概略図である。
【図5】実施例4に係る袋脱水装置の概略図である。
【図6】脱水試験1における泥水の減容化率を示す図である。
【図7】脱水試験1における分離水の水質を示す図である。
【図8】脱水試験2に係る簡易フィルタープレス装置の概略図である。
【図9】脱水試験2における、泥水に粉末泥水処理剤を添加した場合と無添加の場合における脱水率と脱水時間の関係を示す図である。
【図10】脱水試験2における、粉末泥水処理剤の添加量と分離された固体成分(脱水ケーキ)の強度の関係を示す図である。
【符号の説明】
【0102】
1 泥水減容化処理装置、 2 粉末泥水処理剤、 3 泥水、
4 被処理泥水、
5 フロック形成機、 5a バッチミキサー、 5b 管路ミキサー、
6 ポンプ、 7 脱水機、 7a 袋脱水装置、
7b 遠心分離機、 7c 加圧脱水機(フィルタープレス)、
8 減容土、 9 分離水、 10 脱水袋、
11 プレス機、 11a、11b ローラ対、 12 フロック、
20 簡易フィルタープレス装置、 21 泥水投入口、
22 フランジ容器、 23 脱水容器部、 24 排出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着物質、炭酸塩、無機凝集剤および高分子凝集剤を含有した粉末泥水処理剤であって、
前記高分子凝集剤は、第1高分子凝集剤と第2高分子凝集剤の混合物であり、
前記第1高分子凝集剤は、泥水中に含まれる凝集力低下原因物質が、一定濃度以上になると、該凝集力低下原因物質との凝集力低下反応によって急激に凝集力が下降する性質を有し、前記凝集力低下原因物質が一定濃度以上存在する泥水に添加すると、凝集反応と前記凝集力低下反応との両反応が進行するものであり、
前記第2高分子凝集剤は、その凝集力は前記第1高分子凝集剤の前記凝集力低下原因物質の影響を受けない状態での本来の凝集力よりも低いが、該凝集力低下原因物質によって凝集力が低下しない性質のものであることを特徴とする粉末泥水処理剤。
【請求項2】
請求項1において、前記高分子凝集剤は、第1高分子凝集剤がアクリルアミドとアクリル酸ナトリウムの共重合物であり、第2高分子凝集剤がアクリルアミドと2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルフォン酸ナトリウムの共重合物であることを特徴とする粉末泥水処理剤。
【請求項3】
請求項1において、前記高分子凝集剤は、第1高分子凝集剤がアクリルアミドとアクリル酸ナトリウムの共重合物であり、第2高分子凝集剤がアクリルアミドとアクリル酸ナトリウムと2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルフォン酸ナトリウムの三元共重合物であることを特徴とする粉末泥水処理剤。
【請求項4】
請求項2または3において、吸着物質はベントナイト、炭酸塩は炭酸水素ナトリウム、無機凝集剤はポリ塩化アルミニウムの微粉末であることを特徴とする粉末泥水処理剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の粉末泥水処理剤を、泥水に添加、攪拌することによってフロックを形成させ、被処理泥水を脱水袋に入れて脱水し、固液分離することを特徴とする泥水の脱水方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の粉末泥水処理剤を、泥水に添加、攪拌することによってフロックを形成させ、被処理泥水を遠心分離し、固液分離することを特徴とする泥水の脱水方法。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の粉末泥水処理剤を、泥水に添加、攪拌することによってフロックを形成させ、被処理泥水を加圧脱水し、固液分離することを特徴とする泥水の脱水方法。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の粉末泥水処理剤を、泥水に添加、攪拌してフロックを形成させるためのフロック形成部と、該フロック形成部から移された被処理泥水を固液分離する脱水部と、を備えたことを特徴とする泥水の減容化処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−152344(P2007−152344A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−303012(P2006−303012)
【出願日】平成18年11月8日(2006.11.8)
【出願人】(000148346)株式会社錢高組 (67)
【出願人】(000142148)ハイモ株式会社 (151)
【出願人】(301044565)株式会社ホージュン (7)
【Fターム(参考)】