説明

粉末洗剤組成物

【課題】ゼオライト由来の溶け残りによる染みを低減でき、再汚染防止性に優れた粉末洗剤組成物を提供する。
【解決手段】(A)陰イオン界面活性剤、(B)非イオン界面活性剤、(C)平均粒径が3〜50μmのゼオライト5〜60質量%、(D)重量平均分子量20万〜200万、かつ、エーテル化度0.18〜0.65のカルボキシメチルセルロース又はその塩0.1〜10質量%を含有し、(A)と(B)の含有量の合計が5〜60質量%であり、(A)/(B)質量比が4/6〜6/4であり、平均粒径が100〜1000μmである、粉末洗剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末洗剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
衣料用粉末洗剤には、汚れを速やかに落とす優れた洗浄性能、すばやく水に溶解・分散する溶解性能、過酷条件に保管されても品質劣化しない保存安定性能などが求められる。
【0003】
しかし、規定を超える量の洗濯物を詰め込んだ時のような、過酷な条件で洗濯された場合、衣類の間に挟まれた粉末洗剤は、水との接触効率が低下し、周囲の溶液が飽和濃度に達してしまうことから、溶け残りを発生させる場合がある。更には特許文献1に記載されているように、洗剤の保存時に、ゼオライトが空気中の炭酸ガスによる酸の影響を受けて固まってしまうことで、繊維に残留することがある。これらの課題を解決するために、特許文献2では、洗剤粒子を複数の特定粒径範囲に分けてから、各フラクションの溶解性に優れる粒子を再ブレンドすることで溶け残りの少ない洗剤が提案されている。また、特許文献3のように、ゼオライトの配合量を制限しつつ、セルロース系ポリマーを含有する2種類の顆粒の粒度を厳密に調整するなどの工夫を行い、課題の解決を試みる技術もあるが、配合や粉末洗剤の粒子設計に自由度が低いといった難点がある。
【0004】
一方、粉末洗剤組成物にカルボキシメチルセルロースを配合する試みは、特許文献4のような再汚染防止のためや、特許文献5のように押し出し造粒されたペレット洗剤の崩壊助剤として配合されるケースが知られているが、これまで、詰め込み洗い時のゼオライトによる染み状の溶け残りの防止の観点からカルボキシメチルセルロースの利用を検討した例はなく、従って十分な効果が得られるものは見出されていなかった。また、粉末洗剤組成物のうち、洗剤成分を捏和・混合することでドウ状物を形成し、該ドウ状物を穴あきスクリーンを通して押し出しつつ、先端をカットを続けることで得られる円柱状ないし粒状の高嵩密度粉末洗剤や、塊状の洗剤を粉砕後、整粒化して得られた高嵩密度粉末洗剤については、洗浄成分が緊密且つ圧密化されていることから、溶け残りの問題を十分に解決するものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61−85494号公報
【特許文献2】再公表WO00/042162号公報
【特許文献3】特表2008−527159号公報
【特許文献4】特開2009−173917号公報
【特許文献5】特表2010−526202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、再汚染防止性に優れるだけでなく、溶け残りが生じた際に繊維製品に染みを発生させない粉末洗剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記したようにカルボキシメチルセルロース(以下、CMCという場合がある。)は、再汚染防止剤として洗剤に使用することが知られている。再汚染防止剤とは、洗濯洗浄時に洗濯物から遊離した泥汚れなどが洗濯液から再び洗濯物に付着することを抑制する剤である。しかし、このような目的で配合されるCMCは、洗濯液に均一に分散した汚れの再汚染防止には効果があり、ゼオライトについても洗濯液中のゼオライトであれば洗濯物に付着しにくく、付着しても目立たない。これに対して、本発明の課題として指摘したような、規定以上に詰め込まれた洗濯物の間に挟まれた粉末洗剤が、十分に分散できずに染み状に洗濯物に溶け残ることがあり、このようにして発生した染みについては、CMCの効果は未知である。染みの発生は、黒、紺などの明度の低い色の繊維製品の見た目を台無しにしてしまう。
【0008】
上記課題を解決するために本発明者らは、洗濯物を詰め込み過ぎた際に生じる染みについて解析を進めた。その結果、繊維製品の表面に染みとなる粒子が残留するのではなく、繊維製品の内部に染みの原因となる粒子が侵入していることを見出した。その上で本発明者らは、染みの原因粒子が繊維製品内部に入り込まない仕組みを考え、本発明をここに提供するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、(A)陰イオン界面活性剤〔以下、(A)成分という〕、(B)非イオン界面活性剤〔以下、(B)成分という〕、(C)平均粒径が3〜50μmのゼオライト〔以下、(C)成分という〕5〜60質量%、(D)重量平均分子量20万〜200万、かつ、エーテル化度0.18〜0.65のカルボキシメチルセルロース又はその塩〔以下、(D)成分という〕0.1〜10質量%を含有し、(A)と(B)の含有量の合計が5〜60質量%であり、(A)/(B)質量比が4/6〜6/4であり、平均粒径が100〜1000μmである、粉末洗剤組成物に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、繊維製品に溶け残りによる染みを発生させない、再汚染防止性に優れた粉末洗剤組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<(A)成分>
陰イオン界面活性剤としては、炭素数10〜18のアルコールの硫酸エステル塩、炭素数8〜20のアルコールのアルコキシル化物の硫酸エステル塩、アルキル(炭素数10〜16)ベンゼンスルホン酸塩、パラフィン(炭素数10〜18)スルホン酸塩、脂肪酸塩が挙げられる。これらの塩はアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩等が挙げられる。本発明では更に、アルキル鎖の炭素数が10〜16、より好ましくは12〜14の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩が好ましく、対イオンとしては、アルカリ金属類やアミン類が好ましく、更にはナトリウムイオン及び/又はカリウムイオンが好ましく、アルキル鎖の炭素数が12〜14のアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムがより好ましい。本発明の粉末洗剤組成物は、その配合物であるゼオライトの分散性を向上させる観点から、主たる界面活性剤としてアルキル(炭素数10〜16)ベンゼンスルホン酸塩を含有することが好ましく、全陰イオン界面活性剤中に、アルキル(炭素数10〜16)ベンゼンスルホン酸塩、更には、炭素数10〜16、好ましくは炭素数10〜14、より好ましくは炭素数12〜14の直鎖アルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸塩が、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上を占める。
【0012】
<(B)成分>
非イオン界面活性剤としては、例えば、高級アルコールのエチレンオキシド(以下「EO」という)付加物、高級アルコールのEO/プロピレンオキシド(以下「PO」という)付加物、脂肪酸アルカノールアミド、アルキルポリグリコシド等が挙げられる。より具体的には、ポリオキシアルキレンアルキル(炭素数10〜16)エーテル、ポリオキシアルキレンアルキル(炭素数10〜16)フェニルエーテル、アルキル(炭素数8〜16)ポリグリコシド、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸(炭素数10〜18)エステル、ポリオキシアルキレングリコール脂肪酸(炭素数10〜18)エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシアルキレンアルキロール(脂肪酸)(炭素数10〜18)アミド等が例示される。(B)成分の非イオン界面活性剤としては、高級アルコールのEO付加物であるポリオシキエチレンアルキルエーテルが好ましく、更には(D)成分自体を分散させるための観点から、アルキル基の炭素数が10〜16であり、EOの平均付加モル数が3〜30のポリオキシエチレンアルキルエーテルが好ましい。
【0013】
<(C)成分>
本発明で使用するゼオライトはA型、X型、Y型、P型等が挙げられるが、中でも洗剤用ビルダーとして一般にカチオン交換能に優れるA型ゼオライトが好ましい。A型ゼオライトとはX線回折パターンがJCPDS(Joint Committee on Powder Diffraction Standards)によって提示された4A型ゼオライト(No.38−241)に示される位置に回折ピークを有するものであり、無水物の一般式がxM2O・ySiO2・Al23(ただし、Mはアルカリ金属表し、x=0.5〜1.5、y=0.5〜6である)のものである。
【0014】
(C)成分の平均粒径は、繊維の隙間の奥深くまで侵入するのを防止する観点から、3μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましい。また、染みの溶け残りを防止する観点から、50μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましく、20μm以下が更に好ましい。(C)成分についての平均粒径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製、「LA950」)を用いて、屈折率1.30の水を分散媒として、循環速度4、超音波照射なしで1分間循環後、測定したときの体積中位粒径(D50)の値を平均粒径とする。
【0015】
<(D)成分>
本発明の粉末洗剤組成物は、溶け残りによる染みを低減することと再汚染防止性の観点から、(D)成分として、重量平均分子量20万〜200万、かつ、エーテル化度(以下、DSと表記する)0.18〜0.65のカルボキシメチルセルロース又はその塩を含有する。
【0016】
カルボキシメチルセルロースは、例えばパルプなどのセルロース原料をアルコール溶媒と苛性と混合しスラリー状態にしてアルセル化(セルロースの活性化)し、クロロ酢酸と反応させて、カルボキシル化反応することで得られ、その際の原料パルプの選定やクロロ酢酸の処理量によって得られるカルボキシメチルセルロースの分子量とDSがきまる。
【0017】
(D)成分は、溶け残りによる染みの抑制と再汚染防止性の観点から、重量平均分子量が20万〜200万であり、25万〜200万が好ましく、25万〜100万がより好ましく、25万〜50万が更に好ましい。
【0018】
(D)成分の重量平均分子量は、RI及びUV検出器を備えたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定でき、サンプル注入量100μL、溶離液0.2Mリン酸バッファー/CH3CN=9/1、流速1ml/min、カラムとしてGMPWXL+GMPWXL(アニオン)を用い、カラム温度40℃で測定する。なお重量平均分子量はポリエチレングリコール換算の分子量である。
【0019】
(D)成分のエーテル化度(DS)は、溶け残りによる染みの抑制の観点から、0.18〜0.65であり、0.18〜0.50が好ましく、0.18〜0.30がより好ましい。(D)成分についてのDSは、後述の実施例の方法で記載される。
【0020】
本発明者らは、前記したように染みの原因として、繊維内部に染みとなる粒子が入り込んでいることを見出した。この理由として、洗浄工程後の脱水や濯ぎ後の脱水により、繊維を水が透過することで粒子が繊維内部へと浸入することを考えた。すなわち脱水時に溶け残り残分が繊維内部に入り込むことを抑制することで、染みの原因となっている粒子を繊維表面にとどめることができ、溶け残りによる染みに成りにくいことを見出すに至った。その解決手段として、重要な構成成分が(D)成分である。すなわち本発明では、(D)成分の生成するゲルが繊維表面をコートし、溶け残り残分がすすぎ工程で容易に洗い流せないほど繊維の奥まで侵入してしまうのを阻止することにより、溶け残りによる染みを低減する。本発明に用いられる(D)成分は、布表面にゲル状の皮膜を形成し、溶け残り残分が布の繊維の奥まで侵入するのを防ぐために用いられる。かかる作用を発現するのに適したカルボキシメチルセルロースを布に処理すると、布を通過する水の通過速度が遅延するといった現象が認められる。本発明では、(D)成分として、後述の実施例記載のろ過速度が、80〜450秒であるものが好ましい。本発明は、(D)成分である特定の重量平均分子量及び特定のエーテル化度を有するカルボキシメチルセルロース又はその塩を、洗濯時の染み汚れの発生を抑制するために使用するものであり、このような(D)成分の効果が特定の(A)/(B)質量比において顕著に発現することを見出したものである。
【0021】
<粉末洗剤組成物>
本発明の粉末洗剤組成物では、溶け残りによる染み防止と洗浄性能の観点から、(A)/(B)質量比が4/6〜6/4であり、好ましくは4/6〜5/5である。
【0022】
また、本発明の粉末洗剤組成物では、(A)と(B)の含有量の合計は、5〜60質量%である。洗浄性能の観点から10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましい。また、粉末洗剤組成物の流動性の観点から60質量%以下であり、40質量%以下が好ましく、30質量%以下が更に好ましい。
【0023】
また、本発明の粉末洗剤組成物は、(C)成分を5〜60質量%含有する。洗浄性能や粉末物性向上の観点から、5質量%以上であり、20質量%以上が好ましく、30質量%以上が更に好ましい。また、溶け残りによる染みを低減する観点から、60質量%以下であり、50質量%以下が好ましく、40質量%以下が更に好ましい。
【0024】
また、本発明の粉末洗剤組成物は、(D)成分を0.1〜10質量%含有する。溶け残りによる染みを低減する観点から、0.1質量%以上であり、0.2質量%以上が好ましく、0.5質量%以上が更に好ましい。また、カルボキシメチルセルロースそのものの溶け残りを防止する観点から、10質量%以下であり、5質量%以下が好ましく、2質量%以下が更に好ましい。
【0025】
本発明の粉末洗剤組成物は、通常添加される洗剤成分、例えば、各種の界面活性剤、ビルダー、酵素、漂白剤(過炭酸塩、過ホウ酸塩、漂白活性化剤等)、柔軟化剤、還元剤(亜硫酸塩等)、蛍光増白剤、抑泡剤(シリコーン等)香料等を含有することができる。
【0026】
本発明の粉末洗剤組成物の平均粒径は、粉立ちの観点から100μm以上が好ましく、150μm以上がより好ましく、200μm以上が更により好ましい。また、溶解性の観点から、1000μm以下が好ましく、800μm以下がより好ましく、700μm以下が更により好ましい。
【0027】
本発明の粉末洗剤組成物の用途は、家庭用の衣類のみならず、タオル、シーツ、靴及びマットなど布製品を含めた意味での衣料用粉末洗剤組成物として好適である。衣料用粉末洗剤組成物の場合、見掛け密度(嵩密度)は0.5〜1.0g/mlが好ましく、0.6〜0.9g/mlがより好ましい。
【0028】
衣料用の場合の好ましい組成を以下に示す。
【0029】
(界面活性剤)
界面活性剤としては、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、陽イオン界面活性剤を必要に応じ配合することができる。陰イオン界面活性剤としては、高級アルコールの硫酸エステル塩、高級アルコールのエトキシル化物の硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、パラフィンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸塩若しくはそのアルキルエステル塩、又は脂肪酸塩等が挙げられる。更に、炭素数が10〜16の、より好ましくは12〜14の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩が好ましい。
【0030】
非イオン界面活性剤としては、高級アルコールのエチレンオキシド(以下「EO」という)付加物、若しくはEO/プロピレンオキシド(以下「PO」という)付加物、脂肪酸アルカノールアミド、アルキルポリグリコシド等が挙げられる。更に炭素数が10〜16のアルコールのEO1〜10モル付加物が皮脂汚れの除去、耐硬水性、生分解性の点、及び直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩との相性の点で好ましい。
【0031】
両性界面活性剤としては、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミノプロピルベタイン等が、陽イオン界面活性剤としては、モノ(又はジ)長鎖アルキル型第四級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0032】
組成物中の界面活性剤の配合量は、1〜60質量%が好ましい。上限は、より好ましくは50質量%以下であり、更により好ましくは40質量%以下であり、前記量の下限は、より好ましくは5質量%以上、更により好ましくは10質量%以上である。なお、界面活性剤の配合においては、(A)成分、(B)成分の量的関係が本発明の条件を満たすことを考慮する必要がある。
【0033】
(ビルダー)
ビルダーとしては、無機ビルダーおよび有機ビルダーが挙げられる。無機ビルダーとしては、例えば炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、結晶性層状珪酸ナトリウム、珪酸ナトリウムなどのアルカリ性無機塩や硫酸塩、亜流酸塩、硫酸水素塩、塩酸塩、リン酸塩等の水溶性無機塩類などを配合することができる。有機ビルダーとしては、例えばニトリロトリ酢酸塩(NTA)、エチレンジアミンテトラ酢酸塩(EDTA)クエン酸塩やフマル酸塩等の水溶性有機酸塩類、カルボン酸ポリマー等が挙げられる。組成物中のビルダーの配合量は、1〜50質量%が好ましく、1〜40質量%がより好ましい。なお、ビルダーの配合においては、(C)成分の配合量が本発明の条件を満たすことを考慮する必要がある。
【0034】
(その他の成分)
また、その他の洗浄成分として、酵素、漂白剤、過炭酸塩、過ホウ酸塩、漂白活性化剤、再汚染防止剤((D)成分以外のカルボキシメチルセルロース等)、柔軟化剤、還元剤(亜硫酸塩等)、蛍光増白剤、抑泡剤(シリコーン等)香料等を含有することができるが、それらの配合量としては、0.1〜60質量%が好ましく、0.1〜50質量%がより好ましい。
【0035】
なお、衣料用洗剤において移染防止剤等として知られているカチオン化デンプン、ジアリルジアルキルアンモニウム塩をモノマー構成単位に有するような陽イオン性ポリマーは、本発明の効果を阻害することから、その含有量は0.01質量%以下、更には含有しないことが好ましい。
【0036】
好ましくは下記成分を含有する粉末洗剤が挙げられる。なお各成分の濃度の好ましい範囲は前記記載の濃度範囲であってもよい。
【0037】
【表1】

【0038】
表中の成分以外に、洗浄補助剤を含有することができる。例えばプロテアーゼ、セルラーゼ、アミラーゼ又はリパーゼなどの洗浄用酵素、漂白剤として過炭酸ナトリウム又は過ホウ酸ナトリウムなどの過酸化水素放出物、アルカノイルオキシ(炭素数8〜18)ベンゼンスルホン酸ナトリウムまたはテトラアセチルエチレンジアミン(TAED)等の漂白活性化剤、ベントナイト粒子などの柔軟化剤、結晶性層状珪酸ナトリウムなどのアルカリ剤の一種以上を併用することが好ましい。
【実施例】
【0039】
カルボキシメチルセルロースの合成例(1)
回転数を100rpmに調節した二軸ニーダに99%イソプロピルアルコール911部と水酸化ナトリウム78.7部を水189部に溶解したものと加え、市販のセルロース(コットンリンターPCS2400、山東高蜜化繊公司製)を200部(質量部、以下同様)仕込んだ。30℃で90分間攪拌、混合しアルカリセルロースを調製後、更に攪拌しつつ90%イソプロピルアルコール90部に溶解したモノクロロ酢酸20部を添加し、30分で70℃に昇温し、90分間反応させた。反応終了後、80%メタノールで2回洗浄、中和、脱液、乾燥、粉砕し、DS0.10、重量平均分子量30万のカルボキシメチルセルロース(CMC−A)を得た。
【0040】
カルボキシメチルセルロースの合成例(2)
90%イソプロピルアルコール90部に溶解したモノクロロ酢酸の添加量を28部とする以外は(1)の合成例と同様の手法でDS0.20、重量平均分子量30万のカルボキシメチルセルロース(CMC−B)を得た。
【0041】
カルボキシメチルセルロースの合成例(3)
回転数を100rpmに調節した二軸ニーダに99%イソプロピルアルコール1044部と水酸化ナトリウム69.8部を水162部に溶解したものと加え、市販のセルロース(コットンリンターPCS2400、山東高蜜化繊公司製)を200部仕込んだ。30℃で90分間攪拌、混合しアルカリセルロースを調製後、更に攪拌しつつ90%イソプロピルアルコール90部に溶解したモノクロロ酢酸32部を添加し、30分で70℃に昇温し、90分間反応させた。反応終了後、80%メタノールで2回洗浄、中和、脱液、乾燥、粉砕し、DS0.24、重量平均分子量30万のカルボキシメチルセルロース(CMC−C)を得た。
【0042】
カルボキシメチルセルロースの合成例(4)
90%イソプロピルアルコール90部に溶解したモノクロロ酢酸の添加量を25部とする以外は(1)の合成例と同様の手法でDS0.18、重量平均分子量30万のカルボキシメチルセルロース(CMC−D)を得た。
【0043】
(I)カルボキシメチルセルロースのエーテル化度(DS)
試料2gを精秤して、300mL共栓付き三角フラスコに入れた。硝酸液(メタノール1000mLに特級濃硝酸100mLを加えた液)100mLを加え、3時間攪拌して、カルボキシメチルセルロース(CMC)を酸型(以下、H−CMCという)にした。その絶乾H−CMCを1.5〜2.0g秤量し、300mL共栓付き三角フラスコに入れた。80%メタノール15mLでH−CMCを湿潤させ、0.1N−NaOH 100mLを加え、室温で3時間攪拌した。フェノールフタレインを指示薬として、0.1N−H2SO4で過剰のNaOHを逆滴定した。CMCのDSは、次式によって算出した。
A=〔(100×F−B×F’)×0.1〕/(H−CMCの絶乾質量(g))
DS=0.162×A/(1−0.058×A)
A:H−CMCの1gの中和に要する0.1N−NaOH量(mL)
B:0.1N−H2SO4(mL)の滴定値(mL)
F:0.1N−H2SO4のファクター
F’:0.1N−NaOHのファクター
【0044】
(II)カルボキシメチルセルロースのろ過速度
フィルター寸法25φmmのフィルターホルダー(ファンネルとサポートスクリーンを装着したベースに別れたガラス製のろ過器で、間にフィルターを装着しをクランプで固定するタイプのもの)に55φmmの定性ろ紙(No.2)をはさみ、ファンネル部分にカルボキシメチルセルロースの水溶液(濃度6.7ppm)を150mL添加し、自然ろ過させる。ファンネル部分に残った水溶液の量が150mLから125mLになるまでに要した時間(秒)をろ過速度とした。
【0045】
実施例1〜7及び比較例1〜10
表2に示す割合で各成分を配合して、粉末洗剤組成物a〜eを調製した。各組成物は、表3のカルボキシメチルセルロースを、これ以外の成分を含有する組成物(ベース洗剤)と混合して調製した。得られた粉末洗剤組成物の平均粒径、布残留性(白色度)を以下の方法で測定、評価した。結果を表3に示す。
【0046】
(1)粉末洗剤組成物の平均粒径
目開き125μm、180μm、250μm、355μm、500μm、710μm、1000μm、1400μm、2000μmの9段の篩と受け皿を用いて、受け皿上に目開きの小さな篩から順に積み重ね、最上部の2000μmの篩の上から100gの顆粒を添加し、蓋をしてロータップ型ふるい振とう機(株式会社平工製作所製、タッピング156回/分、ローリング:290回/分)に取り付け5分間振動させた後、それぞれの篩及び受け皿上に残留した粒子の質量を測定し、各篩上の粒子の質量割合(%)を算出した。受け皿から順に目開きの小さな篩上の粒子の質量割合を積算していく。重量頻度が50%以上となる最初の篩の目開きをaμmとし、またaμmよりも一段大きい篩の目開きをbμmとした時、受け皿からaμmの篩までの重量頻度の積算をc%、またaμmの篩上の重量頻度をd%とした場合、平均粒径は次の式から求められる。
【0047】
【数1】

【0048】
(2)布残留性試験
布残留性試験に際し、粉末洗剤は30℃、70%RHの部屋に3日間放置したものを用いた。また試験布として、染色試材株式会社 谷頭商店の黒染綿ブロード40(平織り黒布)を直径8cmの円状に切ったものを用いた。を作成する。25℃にした交換水を1リットルビーカー(内径105mm、高さ150mmの円筒型、例えば岩城硝子株式会社製)の中に満たし、25℃の水温をウオーターバスにて一定に保った状態で、攪拌子(長さ35mm、直径8mm、例えば型式:ADVANTEC社製、テフロン(登録商標)丸型細型)にて水深に対する渦巻きの深さが略1/3となる回転数(1000rpm)で攪拌する。0.6667±0.0010gとなるように秤量した粉末洗剤組成物を攪拌下に水中に投入・分散させ攪拌を続ける。投入から10分後に予め吸引ろ過器にセットしておいた黒布に分散液を流し吸引ろ過する(吸引ろ過器=直径90mmのブフナーロート・吸引瓶に、直径8cmに切り取った黒布をセットしたもの)。次いで、1Lの水道水(20℃)をいれたターゴトメーターに、布を添加し、85rpmで1分間撹拌の後、ターゴトメーターの撹拌を停止し、布を取り出し、水道水を満たした洗面器にいれて軽くすすぐ。その布を、105℃の乾燥機で30分間乾燥する。乾燥した布の白色度(L*値)を分光式色差計(日本電色製SE−2000)で測定し、布の白色度とした。白色度は小さい方が残留量が少ないことを意味する。本評価では、白色度は21.5以下であることが好ましい。白色度が21.5を超えた場合、目視評価において、黒布に明らかに白い染みが目立つようになる。
【0049】
(3)再汚染防止性(カーボン)
20℃の4°硬水1Lに、粉末洗剤組成物を添加し、十分攪拌し洗浄液とした。この洗浄液に、日本油化学協会選定のカーボンブラック(旭カーボン株式会社製、旭洗浄用カーボンブラック)0.25gを加え分散させた後、この液をターゴトメータ(Terg−O−Tometer)の試料カップに移し、評価布として6cm×6cmの木綿の白布(日本油化学協会選定の標準品、洗濯科学協会が販売する#2023布)5枚と、さらに調整布として6cm×6cmの木綿の白布を48g入れて、温度20℃、回転速度80rpmで10分間撹拌し、カーボンの再汚染処理を行った。
【0050】
次に評価布を取り出し、充分濯いだ後に乾燥させ、下記の式により再汚染防止率を算出した。
再汚染防止率(%)=〔(試験後の木綿の白布の反射率)/(試験前の木綿の白布の反射率)〕×100
反射率は日本電色工業株式会社製の色差計(SE2000)で測定(測定波長550nm)した。
各洗剤組成物の再汚染防止率を比較例1と比較し、以下の基準で評価した。
【0051】
評価基準
◎:比較例1の再汚染防止率よりも10%(10ポイント)以上高い
○:比較例1の再汚染防止率よりも5%以上10%未満(5ポイント以上10ポイント未満)高い
△:比較例1の再汚染防止率よりも0%以上5%未満(0ポイント以上5ポイント未満)高い
×:比較例1の再汚染防止率との差が0%未満(マイナスポイント)(比較例1の再汚染防止率よりも低い)
【0052】
(4)再汚染防止性(泥)
前記したカーボンブラック0.25gの代わりに、泥粒子(200メッシュの篩いを通過した園芸用鹿沼赤土〔(株)国幸園(大阪府和泉市善正町10)から購入〕)を2.5g用いること以外は、カーボンの再汚染評価と同様の処理で泥の再汚染評価を行った。泥汚れのときの評価基準を以下に示す。
◎:比較例1の再汚染防止率よりも5%(5ポイント)以上高い
○:比較例1の再汚染防止率よりも1%以上5%未満(1ポイント以上5ポイント未満)高い
△:比較例1の再汚染防止率よりも0%以上1%未満(0ポイント以上5ポイント未満)高い
×:比較例1の再汚染防止率との差が0%未満(マイナスポイント)(比較例1の再汚染防止率よりも低い)
【0053】
【表2】

【0054】
*1 比較例1ではカルボキシメチルセルロースを0質量%、硫酸ナトリウムを11質量%とした。
【0055】
表2中の成分は以下のものである。
・LAS−Na:アルキル基の炭素数12〜14の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム
・非イオン性界面活性剤:炭素数10〜14の1級アルコールにEOを平均8モル付加させたもの
・脂肪酸ナトリウム:炭素数14〜18のアルキル基を有する脂肪酸ナトリウム
・ゼオライト:ゼオビルダー社製「ゼオビルダー」(4A型、平均粒径4μm)
・AA/MAポリマー:アクリル酸−マレイン酸コポリマー(ナトリウム塩(70モル%中和)であり、モノマー比はアクリル酸/マレイン酸=3/7(モル比)、平均分子量70000)
・結晶性シリケート:結晶性層状珪酸ナトリウム〔製品名プリフィード6N、(株)トクヤマシルテック製〕
・PEG:ポリエチレングリコール(重量平均分子量8500)
・蛍光染料:チバガイギー社製「チノパールCBS−X」と住友化学工業株式会社製「ホワイテックスSA」とを1/1(質量比)で配合したもの
・酵素:セルラーゼK(特開昭63−264699号公報記載)
なお、ゼオライトの平均粒径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製、「LA950」)を用いて、屈折率1.30の水を分散媒として、循環速度4、超音波照射なしで1分間循環後、測定したときの体積中位粒径(D50)の値を平均粒径とした。
【0056】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)陰イオン界面活性剤、(B)非イオン界面活性剤、(C)平均粒径が3〜50μmのゼオライト5〜60質量%、(D)重量平均分子量20万〜200万、かつ、エーテル化度0.18〜0.65のカルボキシメチルセルロース又はその塩0.1〜10質量%を含有し、(A)と(B)の含有量の合計が5〜60質量%であり、(A)/(B)質量比が4/6〜6/4であり、平均粒径が100〜1000μmである、粉末洗剤組成物。
【請求項2】
(A)中、炭素数10〜16の直鎖アルキル基を有する、アルキルベンゼンスルホン酸塩が90質量%以上を占める、請求項1記載の粉末洗剤組成物。

【公開番号】特開2012−255091(P2012−255091A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128991(P2011−128991)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】