説明

粉末珊瑚を使用した食材の消臭方法及びこれを利用した干物の製造方法

【課題】風化した珊瑚や貝殻の粉末を使って、魚介類や獣肉等の食材の消臭方法、及び、干物の製造方法を提供する。
【解決手段】魚介類や獣肉等の食材を、粉末化した風化珊瑚に水を混ぜて泥状にした珊瑚クレイの中に所定時間漬けることにより食材の消臭を行う。また、魚介類や獣肉等の食材を、粉末化した風化珊瑚に水と塩を混ぜて泥状にした珊瑚クレイの中に所定時間漬けて消臭したあと、食材を水で洗い、食材全体を透水性を有するシート状素材で包囲した状態で、粉末化した風化珊瑚に所定時間漬けて脱水、熟成を行うことにより干物を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風化した珊瑚や貝殻の粉末を使って、魚介類や獣肉等の食材を消臭し、さらにこれを利用して干物にする製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、種々の消臭方法が存在し、また、干物の製造方法の一つとして、干物にする食材を灰の中に埋め、長い時間をかけて食材の水分を脱水させる灰干製法が知られている(下記非特許文献1)。
特に、干物の製造方法については、灰干方法によれば、食材からゆっくり均一に脱水することができ、また、食材を直接天日に当てることがないため、脂質の変化が少なく、臭みを取り除き、食材の組織を壊さずに、食材を熟成させることができる。
【0003】
本発明は、粉末化した風化珊瑚や貝殻を使って、魚介類や獣肉等の食材を消臭し、さらに、消臭した食材を、前記の灰干製法によって、魚介類や獣肉等の食材を干物にする製造方法を提供するものである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】株式会社丸新(兵庫県明石市林3丁目18−8)のウェブサイト(http://www.haibosi.com/cgi-bin/marusin/siteup.cgi?category=1&page=1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
灰干製法に使用する灰は、火山灰が多く使用されており、火山灰以外には、木灰が使用されている例もある。
しかし、風化した珊瑚や貝殻を粉末化したもので灰干製法が実施されたことは、これまで一度もない。
風化した珊瑚や貝殻の主成分は、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムであり、その他に各種ミネラルを含んでいる。
特に、風化した珊瑚は、多孔質であるため、微細な孔に汚れや不純物などを吸着する。
また、食材をアルカリ性にすることで、微生物の繁殖やカビの発生を常温で長期間防ぐことができる。
【0006】
本発明は、粉末化した風化珊瑚や貝殻の利点に着目してなされたものであり、風化した珊瑚や貝殻の粉末を使って、魚介類や獣肉等の食材を干物にする製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明は、上記課題を解決するため、次の技術的手段を講じている。
【0008】
本発明は、
魚介類や獣肉等の食材を、
粉末化した風化珊瑚に水を混ぜて泥状にした珊瑚クレイの中に所定時間漬ける
ことを特徴とする食材の消臭方法である。
【0009】
食材とは、魚介類や獣肉など、一般に食用とされている全ての物を含む意味であう。
例えば、魚介類は、魚類、貝類、甲殻類などの水産動物類、鯨などの海産ほ乳類、海藻類などであり、それが養殖されたものであるか、天然であるか、さらには、生の状態であるか、冷凍されたものであるかは問わない。
また、獣肉は、牛、豚、鳥、馬、羊、山羊など、一般に食肉を得る目的で肥育された動物の肉のほか、野生動物の肉や、爬虫類や両生類も含む。
なお、使用する食材の具体的な部位は、問わない。
風化珊瑚とは、化石化した珊瑚を意味するが、粉末化した風化珊瑚は、風化した珊瑚や貝殻を粉末化したものとして表現する。
本発明における消臭方法では、化石化した珊瑚を粉末化して水を混ぜて泥状にしたものを「珊瑚クレイ」と表現する。
粉末化した風化珊瑚の大きさは、粉末状であれば粒子径は問わない。
泥状とは、特定の形態を一定時間保持できない流動性のある状態をいうものとし、固体や液体の状態でないことをいうものとする。
食材は、この泥状の珊瑚クレイの中に所定時間埋もれた状態で漬け込まれる。
食材は、そのまま漬けても良いし、漬ける前に洗浄し、鱗や皮を剥ぐなどの前処理をしても良く、また、特定の部位だけを漬けるために、解体したり、切り分けたりしても良い。
漬ける時間に制限はなく、食材が痛まない程度に長時間漬けることもできるし、短時間だけ漬けるのでも良い。
珊瑚クレイに漬けた食材は、珊瑚クレイから取り出し、食材に付着した珊瑚クレイを流水で洗い流す。
珊瑚の多孔質性により、極めて微細な汚れや不純物、臭いを珊瑚クレイが吸着することで、食材に付着している汚れ、臭いを低減し、もしくは消すことができる。
【0010】
本発明は、
魚介類や獣肉等の食材を、
吸水性のシート状素材で包囲した状態で、
粉末化した風化珊瑚に水を混ぜて泥状にした珊瑚クレイの中に所定時間漬ける
ことを特徴とする食材の消臭方法である。
【0011】
本発明は、上記発明に加え、食材を珊瑚クレイに漬ける前に、食材を吸水性のシート状素材で包囲してから食材を珊瑚クレイに漬けるものである。
吸水性のシート状素材とは、吸水性の機能を有するシート状の素材を意味し、材質は問わない。
食材をそのままの状態で珊瑚クレイに漬けると、時間が経つにつれて珊瑚クレイの水分と固形分とが分離して固形分が沈殿し、珊瑚クレイが食材を完全に覆った状態を維持できない場合がある。
そこで、吸水性のシート状素材で食材を包囲することで、シート状素材が、珊瑚クレイが食材の周りを流れ動く際の抵抗になり、珊瑚クレイを食材の周囲に留めておくことができ、その結果、食材を珊瑚クレイに長時間漬けることができる。
なお、吸水性のシート状素材は、シート状以外にも、袋状でも良い。
袋状の場合、食材を完全に包み込むため、珊瑚クレイが食材に付着せず、食材を洗い流す手間が省けるし、密封できる袋状のものであれば尚良い。
また、本発明以下は、化石化した珊瑚を粉末化して水と混ぜて泥状にしたものを「珊瑚クレイ」と表現する。
【0012】
本発明は、
魚介類や獣肉等の食材を、
その表面に粉末化した風化珊瑚を付着させ、さらに吸水性のシート状素材で包囲した状態で、
粉末化した風化珊瑚に水を混ぜて泥状にした珊瑚クレイの中に所定時間漬ける
ことを特徴とする食材の消臭方法である。
【0013】
本発明は、上記発明に加え、食材を吸水性のシート状素材で包囲する前に、食材の表面に、粉末化した風化珊瑚を付着させてから、食材を吸水性のシート状素材で包囲するものである。
食材を吸水性のシート状素材で包囲した状態で珊瑚クレイに漬けると、食材をそのままの状態で珊瑚クレイに漬ける場合に比べて、消臭効率が落ちる。
そこで、消臭効率を上げるために、シート状素材で包囲した内側(食材側)にも粉末化した風化珊瑚を付着させるようにしたものである。
食材の表面に付着させる粉末化した風化珊瑚の量は、食材の表面に振り掛ける程度でも良いし、食材が粉末化した風化珊瑚で覆い隠される程度でも良い。
食材を、その表面に粉末化した風化珊瑚を付着させ、さらに吸水性のシート状素材で包囲した状態で、珊瑚クレイに漬けた食材は、同じ時間、珊瑚クレイにそのまま漬けた食材に比べて、消臭時間が短縮され、消臭効果が上がる。
【0014】
本発明は、
魚介類や獣肉等の食材を、
その表面に粉末化した風化珊瑚を付着させ、さらに吸水性のシート状素材で包囲した状態で、
2以上の異なる粒子径に粉末化した風化珊瑚に水を混ぜて泥状にした珊瑚クレイの中に所定時間漬ける
ことを特徴とする食材の消臭方法である。
【0015】
本発明は、上記発明に加え、珊瑚クレイに使用する粉末化した風化珊瑚を、2以上の異なる粒子径に粉末化したものを使用するものである。
2以上の異なる粒子径に粉末化した風化珊瑚とは、例えば、25μm、50μm、75μm、100μm、150μm、200μm、500μmなどのように、異なる2以上の粒子径で風化珊瑚を粉末化したものであり、この中から2以上を選択して、2以上の異なる粒子径に粉末化した風化珊瑚を混ぜ合わせる。
これに、水を混ぜて珊瑚クレイを作る。
異なる2以上の粒子径に粉末化した風化珊瑚でできた珊瑚クレイは、単一の粒子径からなる珊瑚クレイに比べて、粒子間の隙間が大きいため、食材から染み出る汚れを含む液体が広範囲の珊瑚クレイに行き渡り、広範囲で珊瑚クレイが食材の汚れなどを吸着する結果、消臭力が増す。
【0016】
本発明は、
魚介類や獣肉等の食材を、
粉末化した風化珊瑚に水と塩を混ぜて泥状にした珊瑚クレイの中に所定時間漬けて消臭したあと、
食材を水で洗い、
食材全体を透水性を有するシート状素材で包囲した状態で、
粉末化した風化珊瑚の珊瑚パウダーに所定時間漬けて脱水、熟成を行う
ことを特徴とする粉末風化珊瑚を使用した干物の製造方法である。
【0017】
食材とは、魚介類や獣肉など、一般に食用とされている全ての物を含む意味であう。
例えば、魚介類は、魚類、貝類、甲殻類などの水産動物類、鯨などの海産ほ乳類、海藻類などであり、それが養殖されたものであるか、天然であるか、さらには、生の状態であるか、冷凍されたものであるかは問わない。
また、獣肉は、牛、豚、鳥、馬、羊、山羊など、一般に食肉を得る目的で肥育された動物の肉のほか、野生動物の肉や、爬虫類や両生類も含む。
なお、使用する食材の具体的な部位は、問わない。
風化珊瑚とは、化石化した珊瑚を意味するが、粉末化した風化珊瑚は、風化した珊瑚や貝殻を粉末化したものとして表現する。
本発明における干物の製造方法では、化石化した珊瑚を粉末化して水と塩を混ぜて泥状にしたものを「珊瑚クレイ」と表現する。
粉末化した風化珊瑚の大きさは、粉末状であれば粒子径は問わない。
泥状とは、特定の形態を一定時間保持できない流動性のある状態をいうものとし、固体や液体の状態でないことをいうものとする。
食材は、この泥状の珊瑚クレイの中に所定時間埋もれた状態で漬け込まれる。
食材は、そのまま漬けても良いし、漬ける前に洗浄し、鱗や皮を剥ぐなどの前処理をしても良く、また、特定の部位だけを漬けるために、解体したり、切り分けたりしても良い。
珊瑚クレイに漬ける時間に制限はない。
珊瑚クレイに漬けた食材は、珊瑚クレイから取り出し、食材に付着した珊瑚クレイを流水で洗い流す。
珊瑚の多孔質性により、極めて微細な汚れや不純物、臭いを珊瑚クレイが吸着することで、食材に付着している汚れ、臭いを低減し、もしくは消すことができる。
なお、干物の製造方法における「珊瑚クレイ」は、前記の消臭方法における珊瑚クレイとは、塩が添加されている点で異なる。
これは、珊瑚クレイによる消臭処理と同時に、保存食品として食材に塩分を浸み込ませるためと、干物食品として食材に塩味を添加するためである。
また、粉末化した風化珊瑚を「珊瑚パウダー」と表現する。
粉末化した風化珊瑚の大きさは、粉末状であれば粒子径は問わない。
透水性を有するシート状素材とは、透水性の機能を有するシート状素材を意味し、材質は問わず、また、通気性の機能を有していても良い。
シート状以外にも、袋状素材でも良く、完全に食材を包み込むため、粉末化した風化珊瑚を洗い流す手間が省けるし、袋状素材は、密封できるものでも良い。
粉末化した風化珊瑚に漬けることで、食材から脱水させ、同時に食材を熟成させることができる。
脱水、熟成させる際の温度は、例えば、20℃以下の低温にすることが望ましい。
この製造方法により、食材からゆっくり均一に脱水することができ、また、食材を直接天日に当てることがないため、脂質の変化が少なく、臭みを取り除いたうえで、食材の組織を壊さずに、熟成された食材の干物を作ることができる。
【0018】
本発明は、
魚介類や獣肉等の食材を、
吸水性のシート状素材で包囲した状態で、
粉末化した風化珊瑚に水と塩を混ぜて泥状にした珊瑚クレイの中に所定時間漬けて消臭したあと、
食材を水で洗い、
食材全体を透水性を有するシート状素材で包囲した状態で、
粉末化した風化珊瑚の珊瑚パウダーに所定時間漬けて脱水、熟成を行う
ことを特徴とする粉末風化珊瑚を使用した干物の製造方法である。
【0019】
本発明は、上記発明に加え、食材を珊瑚クレイに漬ける前に、食材を吸水性のシート状素材で包囲してから食材を珊瑚クレイに漬けるものである。
吸水性のシート状素材とは、吸水性の機能を有するシート状の素材を意味し、材質は問わない。
食材をそのままの状態で珊瑚クレイに漬けると、時間が経つにつれて珊瑚クレイの水分と固形分とが分離して固形分が沈殿し、珊瑚クレイが食材を完全に覆った状態を維持できない場合がある。
そこで、吸水性のシート状素材で食材を包囲することで、シート状素材が、珊瑚クレイが食材の周りを流れ動く際の抵抗になり、珊瑚クレイを食材の周囲に留めておくことができ、その結果、食材を珊瑚クレイに長時間漬けることができる。
なお、吸水性のシート状素材は、シート状以外にも、袋状でも良い。
袋状の場合、食材を完全に包み込むため、珊瑚クレイが食材に付着せず、食材を洗い流す手間が省けるし、密封できる袋状のものであれば尚良い。
【0020】
本発明は、
魚介類や獣肉等の食材を、
その表面に粉末化した風化珊瑚を付着させ、さらに吸水性のシート状素材で包囲した状態で、
粉末化した風化珊瑚に水と塩を混ぜて泥状にした珊瑚クレイの中に所定時間漬けて消臭したあと、
食材を水で洗い、
食材全体を透水性を有するシート状素材で包囲した状態で、
粉末化した風化珊瑚の珊瑚パウダーに所定時間漬けて脱水、熟成を行う
ことを特徴とする粉末風化珊瑚を使用した干物の製造方法である。
【0021】
本発明は、上記発明に加え、食材を吸水性のシート状素材で包囲する前に、食材の表面に、粉末化した風化珊瑚を付着させてから、食材を吸水性のシート状素材で包囲するものである。
食材を吸水性のシート状素材で包囲した状態で珊瑚クレイに漬けると、食材をそのままの状態で珊瑚クレイに漬ける場合に比べて、消臭効率が落ちる。
そこで、消臭効率を上げるために、シート状素材で包囲した内側(食材側)にも粉末化した風化珊瑚を付着させるようにしたものである。
また、シート状素材の内側である食材の表面にも粉末化した風化珊瑚を付着させることで、食材の弾力性、粘性が増し、食材が柔らかくなる。
【0022】
本発明は、
魚介類や獣肉等の食材を、
その表面に粉末化した風化珊瑚を付着させ、さらに吸水性のシート状素材で包囲した状態で、
粉末化した風化珊瑚に水と塩を混ぜて泥状にした珊瑚クレイの中に所定時間漬けて消臭したあと、
食材を水で洗い、
食材全体を透水性を有するシート状素材で包囲した状態で、
2以上の異なる粒子径に粉末化した風化珊瑚の珊瑚パウダーに所定時間漬けて脱水、熟成を行う
ことを特徴とする粉末風化珊瑚を使用した干物の製造方法である。
【0023】
本発明は、上記発明に加え、脱水、熟成に使用する珊瑚パウダーとして、2以上の異なる粒子径に粉末化した風化珊瑚を使用するものである。
2以上の異なる粒子径に粉末化した風化珊瑚とは、例えば、25μm、50μm、75μm、100μm、150μm、200μm、500μmなどのように、異なる2以上の粒子径で風化珊瑚を粉末化したものであり、この中から2以上を選択して、2以上の異なる粒子径に粉末化した風化珊瑚を混ぜ合わせる。
この珊瑚パウダーの中に、食材を漬けて脱水、熟成を行う。
同じ粒子径に粉末化した風化珊瑚のみを使う場合に比べて、粒子間の隙間が大きいため、食材から染み出る汚れを含む液体が広範囲の珊瑚パウダーに行き渡り、広範囲で珊瑚パウダーが食材の水分を吸水する結果、脱水力が増し、また食材の弾力性、粘性が増し、食材が柔らかくなる。
【0024】
本発明は、
魚介類や獣肉等の食材を、
その表面に粉末化した風化珊瑚を付着させ、さらに吸水性のシート状素材で包囲した状態で、
粉末化した風化珊瑚に水と塩を混ぜて泥状にした珊瑚クレイの中に所定時間漬けて消臭したあと、
食材を水で洗い、
食材全体を透水性を有するシート状素材で包囲した状態で、
2以上の異なる粒子径に粉末化した風化珊瑚の珊瑚パウダーを、食材から近い距離に粒子径が大きい珊瑚パウダーを、食材から遠い距離に粒子径が小さい珊瑚パウダーをそれぞれ配して、所定時間漬けて脱水、熟成を行う
ことを特徴とする粉末風化珊瑚を使用した干物の製造方法である。
【0025】
本発明は、上記発明に加え、脱水、熟成に使用する珊瑚パウダーとして、2以上の異なる粒子径に粉末化した風化珊瑚を使用するものであるが、特に、粒子径が大きい珊瑚パウダーを食材から近い距離に、粒子径が小さい珊瑚パウダーを食材から遠い距離に、それぞれ配すものである。
2以上の異なる粒子径に粉末化した風化珊瑚とは、例えば、25μm、50μm、75μm、100μm、150μm、200μm、500μmなどのように、異なる2以上の粒子径で風化珊瑚を粉末化したものであり、この中から2以上を選択して、2以上の異なる粒子径に粉末化した風化珊瑚を混ぜ合わせる。
この異なる粒子径に粉末化した2以上の風化珊瑚を、食材に遠い位置から近い位置へ、徐々に粒子径が大きくなるように配する。
例えば、食材を漬ける容器内に、小さい粒子径になるように粉末化した珊瑚パウダーを敷き詰め、そのあと、徐々に粒子径が大きい珊瑚パウダーを複数の層になるように重ねていき、珊瑚パウダーの上に食材を乗せたあと、さらに、今度は、粒子径が大きい珊瑚パウダーから、徐々に粒子径が小さい珊瑚パウダーを複数の層になるように重ねていく。
このようにすることで、食材に近い位置には大きい粒子径の珊瑚パウダーを、食材から遠い位置には小さい粒子径の珊瑚パウダーを配することができる。
単一の粒子径で粉末化された風化珊瑚に食材を漬け込んでも、食材の周囲にある風化珊瑚にしか食材の水が行き渡らず、一定量しか脱水されないほか、また脱水が緩慢で時間がかかる。
そこで、2以上の異なる粒子径に粉末化した風化珊瑚を、食材からの位置によって複数層に分けるようにした。
特に、食材から近い位置に粒子径が大きい珊瑚パウダーを、食材から遠い位置に粒子径が小さい珊瑚パウダーをそれぞれ配することで、食材から遠くなるにつれて珊瑚パウダー間に生じる隙間が徐々に小さくなり、毛細管現象を利用して、食材から脱水された水分が、食材から遠い位置にある珊瑚パウダーにまで行き渡るようになる。
その結果、食材からの脱水量が増え、また、脱水時間も短縮される。
なお、粒子径の大小は、そのときに使用する粉末化された風化珊瑚の中で相対的に決めるものとする。
【0026】
本発明は、
魚介類や獣肉等の食材を、
その表面に粉末化した風化珊瑚を付着させ、さらに吸水性のシート状素材で包囲した状態で、
2以上の異なる粒子径に粉末化した風化珊瑚に水と塩を混ぜて泥状にした珊瑚クレイの中に所定時間漬けて消臭したあと、
食材を水で洗い、
食材全体を透水性を有するシート状素材で包囲した状態で、
2以上の異なる粒子径に粉末化した風化珊瑚の珊瑚パウダーを、食材から近い距離に粒子径が大きい珊瑚パウダーを、食材から遠い距離に粒子径が小さい珊瑚パウダーをそれぞれ配して、所定時間漬けて脱水、熟成を行う
ことを特徴とする粉末風化珊瑚を使用した干物の製造方法である。
【0027】
本発明は、上記発明に加え、珊瑚クレイに使用する粉末化した風化珊瑚を、2以上の異なる粒子径に粉末化したものを使用するものである。
2以上の異なる粒子径に粉末化した風化珊瑚とは、例えば、25μm、50μm、75μm、100μm、150μm、200μm、500μmなどのように、異なる2以上の粒子径で風化珊瑚を粉末化したものであり、この中から2以上を選択して、2以上の異なる粒子径に粉末化した風化珊瑚を混ぜ合わせる。
これに、水を混ぜて珊瑚クレイを作る。
異なる2以上の粒子径に粉末化した風化珊瑚でできた珊瑚クレイは、単一の粒子径からなる珊瑚クレイに比べて、粒子間の隙間が大きいため、食材から染み出る汚れを含む液体が広範囲の珊瑚クレイに行き渡り、広範囲で珊瑚クレイが食材の汚れなどを吸着する結果、消臭力が増す。
【0028】
本発明は、
魚をそのままの状態で、
その表面に粉末化した風化珊瑚を付着させ、さらに吸水性のシート状素材で包囲した状態で、
2以上の異なる粒子径に粉末化した風化珊瑚に水と塩を混ぜて泥状にした珊瑚クレイの中に所定時間漬けて消臭したあと、
魚を洗い、
切り開いて内臓を除去したのち、
切り開いた魚全体を透水性を有するシート状素材で包囲した状態で、
2以上の異なる粒子径に粉末化した風化珊瑚に所定時間漬けて脱水、熟成を行う
ことを特徴とする粉末風化珊瑚を使用した干物の製造方法である。
【0029】
本発明は、魚の干物の製造方法に関し、特に、魚をさばくことなく、1匹をまるごと、その表面に粉末化した風化珊瑚を付着させ、さらに吸水性のシート状素材で包み、珊瑚クレイに漬けて消臭し、その後、珊瑚クレイを洗い流して、切り開いて内臓を除去して、風化珊瑚に漬けて、干物を製造する方法である。
魚の干物を製造する場合、製造工程に入る前処理として、内臓を除去するのが一般的であるが、魚の切り開いて内臓を除去してから珊瑚クレイに漬けてしまうと、珊瑚クレイが切り開いた魚の身の細かい隙間に入り込んだまま洗い流せなくなってしまう。
このようなことから、珊瑚クレイに漬ける段階では、魚は一切切り開くことなく、そのままの状態で漬けるようにした。
これにより、切り開いた魚の身の隙間に珊瑚クレイが入り込むことが無く、また、珊瑚クレイに漬けたあとの珊瑚クレイを洗い流す作業も楽にできるようになる。
なお、珊瑚クレイに漬ける魚は、切り開くことはしないが、適宜必要に応じて、鱗を除去し、血や汚れを洗い流す処理をしても良い。
珊瑚クレイに漬けて消臭処理をした後は、魚を切り開いて内臓を除去し、珊瑚パウダーによる脱水、熟成の処理をする。
【0030】
本発明は、
請求項5〜11に記載の脱水、熟成を行う際に使用する珊瑚パウダーは、
粉末化したハーブ類または香辛料が混ぜ合わされている
ことを特徴とする請求項5から請求項11までのいずれか一項に記載の粉末風化珊瑚を使用した干物の製造方法である。
【0031】
本発明は、脱水、熟成を行う際に使用する珊瑚パウダーに、粉末化したハーブ類または香辛料が混ぜ合わされているものである。
粉末化したハーブ類または香辛料が混ぜ合わされていることで、食材に香味付けをすることができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明では以下の効果を奏する。
【0033】
1)食材を珊瑚クレイに漬ける方法によって、極めて高い消臭効果を得られる
【0034】
2)粉末化した風化珊瑚に埋めて長時間置くことで、食材からゆっくり均一に脱水することができ、食材を直接天日に当てることがないため、脂質の変化が少なく、臭みを取り除き、食材の組織を壊さずに、食材を熟成させることができる。
【0035】
3)粒子径が異なる2以上の粉末化した風化珊瑚に埋めて長時間置くことで、単一の粒子径の粉末化した風化珊瑚を使用する場合に比べて、脱水量が増え、また、脱水時間も短縮される。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本願発明によれば、種々の食材で、干物を作ることができる。
本実施例では、生の状態のカジキを使用する。
なお、食材は、初めから生の状態のままのものを使用しても良いし、一旦冷凍した後に解凍したものを使用しても良い。
カジキを、厚さ20〜30mm、重さ200〜300gの大きさの切り身にし、表面に粉末化した風化珊瑚が疎らに付着する程度に振り掛け、カジキ全体をキッチンペーパーで包囲する。
その後、カジキの切り身を、粉末化した風化珊瑚に塩と水を混ぜて泥状にした珊瑚クレイに漬け込み、消臭する。
このとき、カジキの最終的な調理方法に応じて、珊瑚クレイの配合割合や、漬け込み時間を調整することができる。
例えば、
ステーキとして調理する場合は、漬け込む珊瑚クレイを、粉末化した風化珊瑚800g、水1000cc、塩130gの割合にし、
生ハムとして調理する場合は、漬け込む珊瑚クレイを、粉末化した風化珊瑚1000g、水1000cc、塩200gの割合にする。
また、珊瑚クレイに漬け込む時間は、
ステーキとして調理する場合は6時間にし、生ハムとして調理する場合は24時間にする。
珊瑚クレイは、長時間静置すると、水と珊瑚粒子とに分離して珊瑚粒子が沈殿することで漬け込んでいる食材が露出してしまうことがあるが、食材全体をキッチンペーパーで包囲することで食材が珊瑚クレイから完全に露出することなく、珊瑚クレイが食材の周囲に留まり、長時間静置した状態で漬け込むことができる。
珊瑚クレイに漬け込んだ後、カジキの切り身に付着している珊瑚クレイを流水などで洗い流す。
なお、珊瑚クレイに漬けたあとのカジキの切り身は無臭に近い状態になっている。
そして、カジキの切り身を珊瑚パウダーに漬けて、脱水、熟成するが、これも、カジキの最終的な調理方法に応じて、漬け込み時の温度や、珊瑚パウダーへの漬け込み時間を調整することができる。
例えば、
ステーキとして調理する場合は、10〜15℃の温度下で、8〜12時間、珊瑚パウダーに漬け込み、
生ハムとして調理する場合は、10〜15℃の温度下で、48時間、珊瑚パウダーに漬け込む。
このとき使用する珊瑚パウダーの粒子径は、44μmである。
また、珊瑚パウダーに漬け込む前に、カジキの切り身をセロハンで包囲する。
セロハンで包囲したカジキの切り身には、珊瑚パウダーは付着しないが、セロハンは透水性があるため、カジキの切り身の水分を珊瑚パウダーが吸うことで、脱水できる。
また、低温度下で、長時間珊瑚パウダーに漬け込むことによって、カジキの切り身は熟成され、脂分が少ない肉質でありながら、弾力性に富み、粘性が増すほか、全体として柔らかい肉質になる。
ステーキとして調理する場合は、そのまま焼いて食べることができる。
生ハムとして調理する場合は、切り身を2〜3mm程度にスライスして食べることができる。
なお、食材の大きさによって、塩分濃度や各漬け込み時間などは調整する必要がある。
【0037】
また、例えば、グルクン(タカサゴ)のように小さい魚は、そのままの状態で、珊瑚クレイに漬け込むことができる。
まず、グルクンの表面に粉末化した風化珊瑚が疎らに付着する程度に振り掛け、グルクン全体をキッチンペーパーで包囲する。
その後、グルクンを、粉末化した風化珊瑚に塩と水を混ぜて泥状にした珊瑚クレイに漬け込み、消臭する。
珊瑚クレイに漬け込んだ後は、グルクンに付着している珊瑚クレイを流水などで洗い流す。
グルクンは、そのままの状態で漬け込んであるため、珊瑚クレイを簡単に洗い流すことができる。
洗い流した後、グルクンを開きにして、血抜きと内臓を取り除く。
その後、グルクンをセロハンで包囲して、珊瑚パウダーに漬け込み、脱水、熟成させる。
以上の方法によれば、あらゆる食材の臭みを取り除くことができるほか、食材を直接天日に当てることなく、脂質の変化を抑え、かつ、食材の組織を壊さずに熟成させて干物を製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚介類や獣肉等の食材を、
粉末化した風化珊瑚に水を混ぜて泥状にした珊瑚クレイの中に所定時間漬ける
ことを特徴とする食材の消臭方法。
【請求項2】
魚介類や獣肉等の食材を、
吸水性のシート状素材で包囲した状態で、
粉末化した風化珊瑚に水を混ぜて泥状にした珊瑚クレイの中に所定時間漬ける
ことを特徴とする食材の消臭方法。
【請求項3】
魚介類や獣肉等の食材を、
その表面に粉末化した風化珊瑚を付着させ、さらに吸水性のシート状素材で包囲した状態で、
粉末化した風化珊瑚に水を混ぜて泥状にした珊瑚クレイの中に所定時間漬ける
ことを特徴とする食材の消臭方法。
【請求項4】
魚介類や獣肉等の食材を、
その表面に粉末化した風化珊瑚を付着させ、さらに吸水性のシート状素材で包囲した状態で、
2以上の異なる粒子径に粉末化した風化珊瑚に水を混ぜて泥状にした珊瑚クレイの中に所定時間漬ける
ことを特徴とする食材の消臭方法。
【請求項5】
魚介類や獣肉等の食材を、
粉末化した風化珊瑚に水と塩を混ぜて泥状にした珊瑚クレイの中に所定時間漬けて消臭したあと、
食材を水で洗い、
食材全体を透水性を有するシート状素材で包囲した状態で、
粉末化した風化珊瑚の珊瑚パウダーに所定時間漬けて脱水、熟成を行う
ことを特徴とする粉末風化珊瑚を使用した干物の製造方法。
【請求項6】
魚介類や獣肉等の食材を、
吸水性のシート状素材で包囲した状態で、
粉末化した風化珊瑚に水と塩を混ぜて泥状にした珊瑚クレイの中に所定時間漬けて消臭したあと、
食材を水で洗い、
食材全体を透水性を有するシート状素材で包囲した状態で、
粉末化した風化珊瑚の珊瑚パウダーに所定時間漬けて脱水、熟成を行う
ことを特徴とする粉末風化珊瑚を使用した干物の製造方法。
【請求項7】
魚介類や獣肉等の食材を、
その表面に粉末化した風化珊瑚を付着させ、さらに吸水性のシート状素材で包囲した状態で、
粉末化した風化珊瑚に水と塩を混ぜて泥状にした珊瑚クレイの中に所定時間漬けて消臭したあと、
食材を水で洗い、
食材全体を透水性を有するシート状素材で包囲した状態で、
粉末化した風化珊瑚の珊瑚パウダーに所定時間漬けて脱水、熟成を行う
ことを特徴とする粉末風化珊瑚を使用した干物の製造方法。
【請求項8】
魚介類や獣肉等の食材を、
その表面に粉末化した風化珊瑚を付着させ、さらに吸水性のシート状素材で包囲した状態で、
粉末化した風化珊瑚に水と塩を混ぜて泥状にした珊瑚クレイの中に所定時間漬けて消臭したあと、
食材を水で洗い、
食材全体を透水性を有するシート状素材で包囲した状態で、
2以上の異なる粒子径に粉末化した風化珊瑚の珊瑚パウダーに所定時間漬けて脱水、熟成を行う
ことを特徴とする粉末風化珊瑚を使用した干物の製造方法。
【請求項9】
魚介類や獣肉等の食材を、
その表面に粉末化した風化珊瑚を付着させ、さらに吸水性のシート状素材で包囲した状態で、
粉末化した風化珊瑚に水と塩を混ぜて泥状にした珊瑚クレイの中に所定時間漬けて消臭したあと、
食材を水で洗い、
食材全体を透水性を有するシート状素材で包囲した状態で、
2以上の異なる粒子径に粉末化した風化珊瑚の珊瑚パウダーを、食材から近い距離に粒子径が大きい珊瑚パウダーを、食材から遠い距離に粒子径が小さい珊瑚パウダーをそれぞれ配して、所定時間漬けて脱水、熟成を行う
ことを特徴とする粉末風化珊瑚を使用した干物の製造方法。
【請求項10】
魚介類や獣肉等の食材を、
その表面に粉末化した風化珊瑚を付着させ、さらに吸水性のシート状素材で包囲した状態で、
2以上の異なる粒子径に粉末化した風化珊瑚に水と塩を混ぜて泥状にした珊瑚クレイの中に所定時間漬けて消臭したあと、
食材を水で洗い、
食材全体を透水性を有するシート状素材で包囲した状態で、
2以上の異なる粒子径に粉末化した風化珊瑚の珊瑚パウダーを、食材から近い距離に粒子径が大きい珊瑚パウダーを、食材から遠い距離に粒子径が小さい珊瑚パウダーをそれぞれ配して、所定時間漬けて脱水、熟成を行う
ことを特徴とする粉末風化珊瑚を使用した干物の製造方法。
【請求項11】
魚をそのままの状態で、
その表面に粉末化した風化珊瑚を付着させ、さらに吸水性のシート状素材で包囲した状態で、
2以上の異なる粒子径に粉末化した風化珊瑚に水と塩を混ぜて泥状にした珊瑚クレイの中に所定時間漬けて消臭したあと、
魚を洗い、
切り開いて内臓を除去したのち、
切り開いた魚全体を透水性を有するシート状素材で包囲した状態で、
2以上の異なる粒子径に粉末化した風化珊瑚に所定時間漬けて脱水、熟成を行う
ことを特徴とする粉末風化珊瑚を使用した干物の製造方法。
【請求項12】
請求項5〜11に記載の脱水、熟成を行う際に使用する珊瑚パウダーは、
粉末化したハーブ類または香辛料が混ぜ合わされている
ことを特徴とする請求項5から請求項11までのいずれか一項に記載の粉末風化珊瑚を使用した干物の製造方法。

【公開番号】特開2013−106575(P2013−106575A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254918(P2011−254918)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(511283974)
【Fターム(参考)】