粉末造形品
【課題】場所毎に弾性を細かく変化させることができる粉末造形品、自動車用内装材および自動車用シートの座部クッション部材などを提供する。
【解決手段】シート2の座部クッション1、シートバック4、ダッシュボードなどの自動車用部品、航空機などの部品、自転車のサドル部、オフィス用の椅子の座部などとして用いることができる粉末造形法により製造される粉末造形品であって、隔壁14で仕切られ2次元アレイ状に配列された複数の柱状セル12を有し、複数の柱状セル12は、内部に形成された一対の内部隔壁16と隔壁14とに囲まれた内部空間に未焼結の前記粉末材料Fが充填されている粉末充填セル部分12aと、内部が中空の中空セル部分12bとを含んでいる。このような構成によれば、一つの部材である粉末造形品内で、場所毎に弾性を細かく変化させることができ、荷重が加わる部分の弾性を選択的に低下させることができる。
【解決手段】シート2の座部クッション1、シートバック4、ダッシュボードなどの自動車用部品、航空機などの部品、自転車のサドル部、オフィス用の椅子の座部などとして用いることができる粉末造形法により製造される粉末造形品であって、隔壁14で仕切られ2次元アレイ状に配列された複数の柱状セル12を有し、複数の柱状セル12は、内部に形成された一対の内部隔壁16と隔壁14とに囲まれた内部空間に未焼結の前記粉末材料Fが充填されている粉末充填セル部分12aと、内部が中空の中空セル部分12bとを含んでいる。このような構成によれば、一つの部材である粉末造形品内で、場所毎に弾性を細かく変化させることができ、荷重が加わる部分の弾性を選択的に低下させることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末造形品に関し、詳細には、粉末焼結法により製造された粉末造形品、自動車用内装材および自動車用シートの座部クッション部材などに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のシート座部およびシートバック(背もたれ部)のクッション、ダッシュボードなどの自動車用部材は、快適な車内環境を実現するために、適度な弾性を有することが求められる。このような自動車用部材、例えば、シート座部およびシートバックのクッション部材は、ウレタンフォームなどの弾性材料から形成される。典型的には、ウレタン原料液を金型に入れ、発泡固化させて、シートクッションなどの形状に成形している。
【0003】
例えば、シートの座部クッション部材では、座り心地を改善するために、ウレタンの発泡度などを制御することによって弾性を調整することが知られている。また、より快適な座り心地を提供するために、例えば、硬度が異なる2種類のウレタンパッドから構成され、乗員が座る着座部分(即ち、乗員からの荷重が加わる部分)とそれ以外の部分とで弾性が異なるシートパッドが提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2001−238752号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ウレタンフォームなどの弾性材料は場所毎に弾性を細かく変化させることができないので、このような弾性材料から形成された自動車用部材は、クッション性能を細かく調整することができないという問題があった。
【0006】
このような問題は、自動車用部材のみならず他の乗り物用のイスのクッション部材などのように、場所毎に弾性を細かく変化させることが求められる部材にも共通するものであった。
【0007】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、場所毎に弾性を細かく変化させることができる粉末造形品、自動車用内装材および自動車用シートの座部クッション部材などを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、
粉末材料を放射エネルギにより部分的に焼結させる粉末造形法により製造される粉末造形品であって、
隔壁で仕切られ2次元アレイ状に配列された、複数の柱状セルを有し、
前記複数の柱状セルは、
内部に形成された一対の内部隔壁と前記隔壁とに囲まれた内部空間に未焼結の前記粉末材料が充填されている粉末充填セルを含んでいる、
ことを特徴とする粉末造形品が提供される。
【0009】
このような構成によれば、弾性が比較的高い粉末充填セルの配置により、一つの部材である粉末造形品内で、場所毎に弾性を細かく変化させることができる。
【0010】
本発明の他の態様によれば、
前記複数の柱状セルは、
前記隔壁に囲まれた内部空間全体が中空の中空セルを更に含んでいる。
【0011】
このような構成によれば、弾性が比較的高い粉末充填セルと弾性が比較的低い中空セルとの組み合わせにより、一つの部材である粉末造形品内で、場所毎に弾性を細かく変化させることができる。
【0012】
本発明の他の好ましい態様によれば
前記粉末充填セルが、前記一対の内部隔壁間の粉末充填セル部分と、内部が中空の中空セル部分とを備えている。
【0013】
このような構成によれば、弾性が比較的高い粉末充填セル部分と弾性が比較的低い中空セル部分との組み合わせにより、一つの部材である粉末造形品内で、場所毎に弾性をより細かく変化させることができる。
【0014】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記粉末材料は、ゴムライク材料であり、
前記複数の柱状セルは、平行に配置されている。
【0015】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記複数の柱状セルは、
前記隔壁に囲まれた内部空間が前記粉末材料の焼結体で充填されている中実セル部分、または前記内部空間の一部が前記粉末材料の焼結体で充填されている一部中実セル部分を有する中実セルを含む。
【0016】
このような構成によれば、より低い弾性を有する中実セルによって、一つの部材である粉末造形品内で、場所毎に弾性をより細かく変化させることができる。
【0017】
本発明の他の好ましい態様によれば、粉末造形品から形成される自動車用内装材が提供される。
【0018】
このような構成によれば、場所毎に弾性を細かく変化させることができる自動車用内装材となる。
【0019】
本発明の他の好ましい態様によれば、
自動車用シートの座部クッション部材であって、
前記複数のセルの延びる方向は、前記クッション部材の前縁部と平行な方向または垂直な方向である、自動車用シートの座部クッション部材が提供される。
【0020】
本発明の他の好ましい態様によれば、
乗員が着座する着座領域には、前記中空セルまたは中空セル部分が配置され、
前記着座領域以外の領域には、前記粉末充填セル、粉末充填セル部分、中実セル部分、または一部中実セル部分が配置されている。
【0021】
このような構成によれば、乗員の身体から荷重が加わる部分の弾性が選択的に低下させられ、その周囲の弾性が高められるので、快適な座り心地が提供される。
【0022】
本発明の好ましい態様によれば、
粉末造形品の製造方法であって、
前記粉末造形品の隔壁の第1層部分に相当する部分に沿って放射エネルギを粉末材料に照射し、前記粉末材料を部分的に焼結させ、前記隔壁の前記第1層部分を形成する第1ステップと、
前のステップで形成された隔壁の層部分の上方に粉末材料を配置し、前記前のステップで形成された隔壁の層部分の上方の隔壁の層部分に相当する部分に沿って放射エネルギを照射し、前記粉末材料を焼結させ、前記前のステップで形成された隔壁の層部分上に前記上方の隔壁の層部分を積層形成する第2ステップと、を備え、
前記第2ステップを繰り返すことによって、隔壁によって仕切られた柱状セルを有する粉末造形品を積層形成する製造方法において、
隔壁に囲まれた特定の領域にも放射エネルギを照射して前記隔壁に囲まれた領域に配置された粉末材料を焼結させ内部隔壁を形成するステップによって、同一の柱状セル内に軸線方向に離れた一対の内部隔壁が形成される、
ことを特徴とする粉末造形品の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、場所毎に弾性を細かく変化させることができる粉末造形品、自動車用内装材および自動車用シートの座部クッション部材などが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して本発明の好ましい実施形態の粉末造形品について説明する。図1は、本発明の好ましい実施形態の粉末造形品が座部クッション1として使用されている自動車用シート2の斜視図である。図2は、図1のII-II線に沿った断面図であり、図3は、座部クッション1の一部分を破断した斜視図である。
【0025】
本実施形態の粉末造形品は、シート2の座部クッション1であるが、本発明はこれに限定されず、シート2のシートバック4、ダッシュボードなどの自動車用部品、航空機などの部品、自転車のサドル部、オフィス用の椅子の座部など、他のどのような弾性部品にも適用可能である。また、本発明は、量産部品だけでなく、試作品にも適用可能である。
【0026】
座部クッション1は、座面6と、座面6とは反対向きの裏面8と、座面6および裏面8とを接続する前側面10などを有する略直方体形状を有している。座部クッション1の内部には、複数のセル12が形成されている。各セル12は、隔壁14で仕切られた断面六角形の柱状形状を有し、座部クッション1の前縁部に平行に延びるように2次元アレイ状に配列されている。したがって、複数のセル12が、隔壁14とともに粉末造形品1内にいわゆるハニカム構造を形成している。
【0027】
複数のセル12は、座部クッション1の前縁部に対してどのような方向に延びていてもよく、各々が異なる方向に延びていてもよいが、着座時の安定感を得るためには、各々が同一方向に、各々の軸線が平行となるように延びることが好ましく、前縁部に対して平行または垂直に延びることがより好ましい。セル12の断面形状は、四角形、円形、多角形などどのような形状でもよく、各々が同一あるいは異なる断面形状を有してもよいが、より大きな弾性を得るためには、本実施形態のように各々が同一の六角形形状を有し、複数のセル12がハニカム構造を形成することが好ましい。
【0028】
図4は、座部クッション1を含むシート2の平面図であり、図5は、座部クッション1と乗員の着座位置との関係を模式的に示す図である。図5中、クロス斜線部分は乗員が着座するときに、乗員の体と接触する着座領域を示す。図6は、図5のVI−VI線に沿った断面の一部を拡大して模式的に示す図であり、図7は、図5のVII−VII線に沿った断面の一部を拡大して模式的に示す図であり、図8は、図5のVIII−VIII線に沿った断面の一部を拡大して模式的に示す図であり、図9は、図8に示されているセル12の1つを抽出して示す斜視図である。
【0029】
図6および図7に示すように、複数のセル12は、着座領域以外の領域では、内部に未焼結粉末Fが充填されている粉末充填セル部分(ドットで示す)12aとされ、着座領域では、内部が中空の中空セル部分(白抜きで示す)12bとされている。粉末充填セル部分12aは、内部に未焼結粉末Fが充填されているので、内部が中空である中空セル部12bより、弾性(硬度)が高い。
【0030】
図8および図9に示すように、本実施形態の座部クッション1では、一部のセル12は、内部に対となった内部隔壁16、16が形成され、この対となった各内部隔壁16と隔壁14とに囲まれた内部空間に未焼結の粉末材料Fが充填されている粉末充填セルとされている。図8および図9に示されている各セル12には、それぞれ、3対の内部隔壁16が形成され、3つの粉末充填セル部分12aが設けられている。
【0031】
隔壁14および内部隔壁16は、公知の粉末造形法で一般に使用されるゴムライク材料を粉末造形法によって焼結させた、ゴムのように弾力性を有する材料で形成されており、座部クッション1全体に弾力性を付与している。ゴムライク材料としては、例えば、3Dシステムズ社のDuraForm(登録商標)Flex(ASTM D790による曲げ弾性率が5.9Mpa)やナイロン樹脂(平均粒子径57μm、融点185℃)などが挙げられる。
【0032】
図5のクロス斜線で示す乗員が着座する着座領域では、座部クッション1の厚さ方向全体にわたって、中空セル部分12bが配置され、着座領域以外の領域には、座部クッション1の厚さ方向全体にわたって、粉末充填セル部分12aが配置されている。このような配置にすることによって、着座領域の弾性が低く(柔らかく)なるとともに、着座領域の周囲の弾性が高く(硬く)なるので、サポート性が向上する。
【0033】
上記実施形態の座部クッション1は、着座部分では厚さ方向全体にわたって中空セル部分が配置された構成であるが、着座部分を他の部分より柔らかくできれば他の配置でもよい。
【0034】
図10、図11および図12は、着座部分におけるセルの他の配置パターンを示す部分断面図である。即ち、本発明では、着座部分において、粉末充填セル部分12aの上下に中空セル部分12bを配置した図10に示す構成、中空セル部分12bの上下に粉末充填セル部分12aを配置した図11に示す構成、あるいは、粉末充填セル部分12aの周囲を囲むように中空セル部分12bを配置した図12に示す構成をとってもよい。
【0035】
上記実施形態の座部クッション1では、着座領域以外の領域には、未焼結粉末で充填されている粉末充填セル部分12aが配置されているが、粉末充填セル部分12aの一部または全部に代えて、隔壁14に囲まれた内部空間全体が粉末材料を焼結させた焼結体で充填されている中実セル部分、または内部空間の一部が粉末材料の焼結体で充填されている一部中実セル部分を配置した構成でもよい。
【0036】
上記実施形態の座部クッション1では、1本の柱状セル12が粉末充填セル部分12aと中空セル部分12bの両方のセル部分を有している構成であったが、内部空間全体が中空のセルと内部空間全体が未焼結粉末で充填されているセルとを組み合わせて、座部クッション1の硬さを場所毎に変化させる構成でもよい。
【0037】
次に、座部クッション1の製造方法について説明する。
図13および図14は、座部クッション1の製造工程を模式的に示す図面である。座部クッション1は、従来技術の粉末造形品と同様に、粉末材料にレーザなどの放射エネルギビームを照射することにより粉末材料を焼結させる工程を繰り返す粉末造形法によって製造される。
【0038】
図13に示すように、座部クッション1の製造に使用される成形装置18は、成形を行う成形槽20と、内部に粉末材料22を収容する一対の容器24a、24bと、粉末材料22を成形槽20まで運ぶローラ26と、成形槽20の上方に設置されたレーザー発振器(図示せず)と、を有する。成形槽20内には、上下動可能な作業ステージ28が備えられ、容器24a、24b内には、それぞれ、上下動可能なステージ30a、30bが備えられる。
【0039】
粉末材料としては、上述したように、例えば、3Dシステムズ社のDuraForm(登録商標)Flex(ASTM D790による曲げ弾性率が5.9Mpa)やナイロン樹脂(平均粒子径57μm、融点185℃)などが使用される。
【0040】
先ず、座部クッション1の最下層の形成を行う。まず、作業ステージ28を、所定の深さ(最下層の高さ)だけ下方に移動させ、成形槽20の上部に最下層の高さに相当する深さの空間部を形成し、更に、ステージ30aを上方に移動させて、粉末材料22の表面がローラ26の移動面よりも高くなるようにする。
【0041】
次いで、ローラ26を回転させながら容器24aと作業ステージ28上を通過させ、容器24a内の粉末材料22を作業ステージ28上に運び、作業ステージ28上に粉末材料22を均一な厚さで配置する。ローラ26は、容器24bを通過した地点で停止させる(図13)。
【0042】
座部クッション1の最下層(第1層)の形状を示すCADデータに基づいて、レーザ発振器から放射エネルギであるレーザビームLが、成形槽20内の粉末材料22に照射される。すなわち、レーザビームLが、座部クッション1の最下層の隔壁の位置に沿って粉末材料22に照射される。粉末材料22は、作業ステージ28上で、レーザビームLが照射された部分では焼結し焼結部分32となり、レーザビームLが照射されなかった部分は未焼結のまま未焼結部分34として残る。
【0043】
次に、第2層の形成を行う。焼結部分32と未焼結部分34を有する最下層が載置された作業ステージ28を、上記と同様に所定の深さ(第2層の高さに相当する深さ)だけ下方に移動させ、成形槽20の上部に第2層の高さに相当する深さの空間部を形成する。ついで、ステージ30bを上方に移動させて、粉末材料22の表面がローラ26の移動面よりも高くなるようにする。
【0044】
次いで、ローラ26を、回転させながら容器24bと作業ステージ28上を通過させ、容器24b内の粉末材料22を作業ステージ28上に運び、作業ステージ28上に形成された最下層の焼結部分32上に、所定の深さ(第2層の高さに相当する深さ)の粉末材料22を均一に配置する(図14)。
【0045】
座部クッション1の第2層の形状を示すCADデータに基づいて、レーザ発振器から放射エネルギであるレーザビームLが、成形槽20内の粉末材料22に照射される。すなわち、レーザビームLが、座部クッション1の第2層の隔壁の位置に沿って粉末材料22に照射される。粉末材料22は、レーザビームLが照射された部分では焼結し、第1層の焼結部分32に積層された第2層目の焼結部分となり、レーザビームLが照射されなかった部分は未焼結のまま未焼結部分として残る。
このような作業を繰り返すことにより座部クッション1が形成される。
【0046】
内部隔壁16も、隔壁14と同時に積層形成される。すなわち、内部隔壁16が形成されるセル12では、内部隔壁16を有する層を形成する際に、CADデータに基づいて、隔壁14部分に加えて隔壁14に囲まれた部分にもレーザビームが照射され、隔壁14に囲まれた領域においても粉末材料が焼結させられ、隔壁14と一体となった内部隔壁16が形成されることになる。
【0047】
あるセルに第1の内部隔壁16を形成した後、そのセルに内部隔壁16を備えない層の形成が所定回だけ繰り返され、再び、当該セルに第1の内部隔壁と対となる第2の内部隔壁が同様の方法で形成される。
【0048】
第2の内部隔壁の形成時には、第1の内部隔壁とその後に形成されたそのセルの隔壁とに囲まれた空間には、未焼結の粉末材料22が未焼結部分34として残存しているので、第2の内部隔壁の形成によって、この未焼結の粉末材料22は、第1の内部隔壁とその後に形成されたそのセルの隔壁と第2の内部隔壁とによって囲まれた内部空間内に封入(充填)された粉末材料Fとなり、この部分が粉末充填セル部分12aとなる。
【0049】
柱状セルの内部空間全体に未焼結粉末を充填する場合は、当該セルの最下層と最上層に内部隔壁16を形成すればよい。図9のセルのように、2つの粉末充填セル部分12a間に中空セル部分12bが配置される場合には、第2の粉末充填セル部分12aの第1の内部隔壁を形成する前に、第1の粉末充填セル部分12aの第2の内部隔壁とその後に形成された隔壁に囲まれた空間に残存している未焼結の粉末材料を吸引などによって除去することになる。あるいは、座部クッション1の完成後に、隔壁に穿孔し、残存している未焼結の粉末材料を孔から排出させてもよい。
【0050】
柱状セルの内部空間全体が焼結体で充填されている中実セル部分を形成する場合は、内部隔壁16を形成するときと同様に、中実セル部分12cを構成する層を形成する際に、CADデータに基づいて、隔壁14部分に加えて隔壁14に囲まれた部分にもレーザビームが照射され、隔壁14に囲まれた領域においても粉末材料が焼結させられる。このような作業を所定回繰り返すことにより、中実セル部分12cが形成される。
【0051】
柱状セルの内部空間の一部が粉末材料の焼結体で充填されている一部中実セルを形成する場合には、中実セル部分12cを有する層を形成する際に、CADデータに基づいて、隔壁14部分に加えて隔壁14に囲まれた部分の一部分にもレーザビームが照射され、この部分でも粉末材料が焼結させられる。このような作業を所定回繰り返すことにより、一部中実セル部分12cが形成される。
【0052】
レーザビームが照射されない部分には、未焼結の粉末材料22が未焼結部分34として残存しているので、未焼結部分34を除去することにより、セルの内部空間の一部が焼結体で充填されそれ以外の部分が中空である一部中実セル部分となる。また、一部中実セル部分12cの軸線方向の両端部に内部隔壁16を形成すれば、一対の内部隔壁16と隔壁14とに囲まれたセルの内部空間の一部が焼結体で充填されそれ以外の部分が未焼結粉末で充填された一部中実セル部分となる。
【0053】
本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施形態の座部クッションを備える自動車用シートの斜視図である。
【図2】図1のII−IIに沿った断面図である。
【図3】図1の座部クッションの破断した斜視図である。
【図4】図1の自動車用シートの平面図である。
【図5】座部クッション1と乗員の着座位置との関係を模式的に示す図である。
【図6】図5のVI−VI線に沿った断面の一部を拡大して模式的に示す図である。
【図7】図5のVII−VII線に沿った断面の一部を拡大して模式的に示す図である。
【図8】図5のVIII−VIII線に沿った断面の一部を拡大して模式的に示す図である。
【図9】図8のセルの1つを抽出して示す斜視図である。
【図10】着座部分におけるセルの他の配置パターンを示す部分断面図である。
【図11】着座部分におけるセルの他の配置パターンを示す部分断面図である。
【図12】着座部分におけるセルの他の配置パターンを示す部分断面図である。
【図13】座部クッションの製造工程を説明する模式図である。
【図14】座部クッションの製造工程を説明する模式図である。
【符号の説明】
【0055】
1:座部クッション
2:自動車用シート
12:セル
14:隔壁
16:内部隔壁
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末造形品に関し、詳細には、粉末焼結法により製造された粉末造形品、自動車用内装材および自動車用シートの座部クッション部材などに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のシート座部およびシートバック(背もたれ部)のクッション、ダッシュボードなどの自動車用部材は、快適な車内環境を実現するために、適度な弾性を有することが求められる。このような自動車用部材、例えば、シート座部およびシートバックのクッション部材は、ウレタンフォームなどの弾性材料から形成される。典型的には、ウレタン原料液を金型に入れ、発泡固化させて、シートクッションなどの形状に成形している。
【0003】
例えば、シートの座部クッション部材では、座り心地を改善するために、ウレタンの発泡度などを制御することによって弾性を調整することが知られている。また、より快適な座り心地を提供するために、例えば、硬度が異なる2種類のウレタンパッドから構成され、乗員が座る着座部分(即ち、乗員からの荷重が加わる部分)とそれ以外の部分とで弾性が異なるシートパッドが提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2001−238752号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ウレタンフォームなどの弾性材料は場所毎に弾性を細かく変化させることができないので、このような弾性材料から形成された自動車用部材は、クッション性能を細かく調整することができないという問題があった。
【0006】
このような問題は、自動車用部材のみならず他の乗り物用のイスのクッション部材などのように、場所毎に弾性を細かく変化させることが求められる部材にも共通するものであった。
【0007】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、場所毎に弾性を細かく変化させることができる粉末造形品、自動車用内装材および自動車用シートの座部クッション部材などを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、
粉末材料を放射エネルギにより部分的に焼結させる粉末造形法により製造される粉末造形品であって、
隔壁で仕切られ2次元アレイ状に配列された、複数の柱状セルを有し、
前記複数の柱状セルは、
内部に形成された一対の内部隔壁と前記隔壁とに囲まれた内部空間に未焼結の前記粉末材料が充填されている粉末充填セルを含んでいる、
ことを特徴とする粉末造形品が提供される。
【0009】
このような構成によれば、弾性が比較的高い粉末充填セルの配置により、一つの部材である粉末造形品内で、場所毎に弾性を細かく変化させることができる。
【0010】
本発明の他の態様によれば、
前記複数の柱状セルは、
前記隔壁に囲まれた内部空間全体が中空の中空セルを更に含んでいる。
【0011】
このような構成によれば、弾性が比較的高い粉末充填セルと弾性が比較的低い中空セルとの組み合わせにより、一つの部材である粉末造形品内で、場所毎に弾性を細かく変化させることができる。
【0012】
本発明の他の好ましい態様によれば
前記粉末充填セルが、前記一対の内部隔壁間の粉末充填セル部分と、内部が中空の中空セル部分とを備えている。
【0013】
このような構成によれば、弾性が比較的高い粉末充填セル部分と弾性が比較的低い中空セル部分との組み合わせにより、一つの部材である粉末造形品内で、場所毎に弾性をより細かく変化させることができる。
【0014】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記粉末材料は、ゴムライク材料であり、
前記複数の柱状セルは、平行に配置されている。
【0015】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記複数の柱状セルは、
前記隔壁に囲まれた内部空間が前記粉末材料の焼結体で充填されている中実セル部分、または前記内部空間の一部が前記粉末材料の焼結体で充填されている一部中実セル部分を有する中実セルを含む。
【0016】
このような構成によれば、より低い弾性を有する中実セルによって、一つの部材である粉末造形品内で、場所毎に弾性をより細かく変化させることができる。
【0017】
本発明の他の好ましい態様によれば、粉末造形品から形成される自動車用内装材が提供される。
【0018】
このような構成によれば、場所毎に弾性を細かく変化させることができる自動車用内装材となる。
【0019】
本発明の他の好ましい態様によれば、
自動車用シートの座部クッション部材であって、
前記複数のセルの延びる方向は、前記クッション部材の前縁部と平行な方向または垂直な方向である、自動車用シートの座部クッション部材が提供される。
【0020】
本発明の他の好ましい態様によれば、
乗員が着座する着座領域には、前記中空セルまたは中空セル部分が配置され、
前記着座領域以外の領域には、前記粉末充填セル、粉末充填セル部分、中実セル部分、または一部中実セル部分が配置されている。
【0021】
このような構成によれば、乗員の身体から荷重が加わる部分の弾性が選択的に低下させられ、その周囲の弾性が高められるので、快適な座り心地が提供される。
【0022】
本発明の好ましい態様によれば、
粉末造形品の製造方法であって、
前記粉末造形品の隔壁の第1層部分に相当する部分に沿って放射エネルギを粉末材料に照射し、前記粉末材料を部分的に焼結させ、前記隔壁の前記第1層部分を形成する第1ステップと、
前のステップで形成された隔壁の層部分の上方に粉末材料を配置し、前記前のステップで形成された隔壁の層部分の上方の隔壁の層部分に相当する部分に沿って放射エネルギを照射し、前記粉末材料を焼結させ、前記前のステップで形成された隔壁の層部分上に前記上方の隔壁の層部分を積層形成する第2ステップと、を備え、
前記第2ステップを繰り返すことによって、隔壁によって仕切られた柱状セルを有する粉末造形品を積層形成する製造方法において、
隔壁に囲まれた特定の領域にも放射エネルギを照射して前記隔壁に囲まれた領域に配置された粉末材料を焼結させ内部隔壁を形成するステップによって、同一の柱状セル内に軸線方向に離れた一対の内部隔壁が形成される、
ことを特徴とする粉末造形品の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、場所毎に弾性を細かく変化させることができる粉末造形品、自動車用内装材および自動車用シートの座部クッション部材などが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して本発明の好ましい実施形態の粉末造形品について説明する。図1は、本発明の好ましい実施形態の粉末造形品が座部クッション1として使用されている自動車用シート2の斜視図である。図2は、図1のII-II線に沿った断面図であり、図3は、座部クッション1の一部分を破断した斜視図である。
【0025】
本実施形態の粉末造形品は、シート2の座部クッション1であるが、本発明はこれに限定されず、シート2のシートバック4、ダッシュボードなどの自動車用部品、航空機などの部品、自転車のサドル部、オフィス用の椅子の座部など、他のどのような弾性部品にも適用可能である。また、本発明は、量産部品だけでなく、試作品にも適用可能である。
【0026】
座部クッション1は、座面6と、座面6とは反対向きの裏面8と、座面6および裏面8とを接続する前側面10などを有する略直方体形状を有している。座部クッション1の内部には、複数のセル12が形成されている。各セル12は、隔壁14で仕切られた断面六角形の柱状形状を有し、座部クッション1の前縁部に平行に延びるように2次元アレイ状に配列されている。したがって、複数のセル12が、隔壁14とともに粉末造形品1内にいわゆるハニカム構造を形成している。
【0027】
複数のセル12は、座部クッション1の前縁部に対してどのような方向に延びていてもよく、各々が異なる方向に延びていてもよいが、着座時の安定感を得るためには、各々が同一方向に、各々の軸線が平行となるように延びることが好ましく、前縁部に対して平行または垂直に延びることがより好ましい。セル12の断面形状は、四角形、円形、多角形などどのような形状でもよく、各々が同一あるいは異なる断面形状を有してもよいが、より大きな弾性を得るためには、本実施形態のように各々が同一の六角形形状を有し、複数のセル12がハニカム構造を形成することが好ましい。
【0028】
図4は、座部クッション1を含むシート2の平面図であり、図5は、座部クッション1と乗員の着座位置との関係を模式的に示す図である。図5中、クロス斜線部分は乗員が着座するときに、乗員の体と接触する着座領域を示す。図6は、図5のVI−VI線に沿った断面の一部を拡大して模式的に示す図であり、図7は、図5のVII−VII線に沿った断面の一部を拡大して模式的に示す図であり、図8は、図5のVIII−VIII線に沿った断面の一部を拡大して模式的に示す図であり、図9は、図8に示されているセル12の1つを抽出して示す斜視図である。
【0029】
図6および図7に示すように、複数のセル12は、着座領域以外の領域では、内部に未焼結粉末Fが充填されている粉末充填セル部分(ドットで示す)12aとされ、着座領域では、内部が中空の中空セル部分(白抜きで示す)12bとされている。粉末充填セル部分12aは、内部に未焼結粉末Fが充填されているので、内部が中空である中空セル部12bより、弾性(硬度)が高い。
【0030】
図8および図9に示すように、本実施形態の座部クッション1では、一部のセル12は、内部に対となった内部隔壁16、16が形成され、この対となった各内部隔壁16と隔壁14とに囲まれた内部空間に未焼結の粉末材料Fが充填されている粉末充填セルとされている。図8および図9に示されている各セル12には、それぞれ、3対の内部隔壁16が形成され、3つの粉末充填セル部分12aが設けられている。
【0031】
隔壁14および内部隔壁16は、公知の粉末造形法で一般に使用されるゴムライク材料を粉末造形法によって焼結させた、ゴムのように弾力性を有する材料で形成されており、座部クッション1全体に弾力性を付与している。ゴムライク材料としては、例えば、3Dシステムズ社のDuraForm(登録商標)Flex(ASTM D790による曲げ弾性率が5.9Mpa)やナイロン樹脂(平均粒子径57μm、融点185℃)などが挙げられる。
【0032】
図5のクロス斜線で示す乗員が着座する着座領域では、座部クッション1の厚さ方向全体にわたって、中空セル部分12bが配置され、着座領域以外の領域には、座部クッション1の厚さ方向全体にわたって、粉末充填セル部分12aが配置されている。このような配置にすることによって、着座領域の弾性が低く(柔らかく)なるとともに、着座領域の周囲の弾性が高く(硬く)なるので、サポート性が向上する。
【0033】
上記実施形態の座部クッション1は、着座部分では厚さ方向全体にわたって中空セル部分が配置された構成であるが、着座部分を他の部分より柔らかくできれば他の配置でもよい。
【0034】
図10、図11および図12は、着座部分におけるセルの他の配置パターンを示す部分断面図である。即ち、本発明では、着座部分において、粉末充填セル部分12aの上下に中空セル部分12bを配置した図10に示す構成、中空セル部分12bの上下に粉末充填セル部分12aを配置した図11に示す構成、あるいは、粉末充填セル部分12aの周囲を囲むように中空セル部分12bを配置した図12に示す構成をとってもよい。
【0035】
上記実施形態の座部クッション1では、着座領域以外の領域には、未焼結粉末で充填されている粉末充填セル部分12aが配置されているが、粉末充填セル部分12aの一部または全部に代えて、隔壁14に囲まれた内部空間全体が粉末材料を焼結させた焼結体で充填されている中実セル部分、または内部空間の一部が粉末材料の焼結体で充填されている一部中実セル部分を配置した構成でもよい。
【0036】
上記実施形態の座部クッション1では、1本の柱状セル12が粉末充填セル部分12aと中空セル部分12bの両方のセル部分を有している構成であったが、内部空間全体が中空のセルと内部空間全体が未焼結粉末で充填されているセルとを組み合わせて、座部クッション1の硬さを場所毎に変化させる構成でもよい。
【0037】
次に、座部クッション1の製造方法について説明する。
図13および図14は、座部クッション1の製造工程を模式的に示す図面である。座部クッション1は、従来技術の粉末造形品と同様に、粉末材料にレーザなどの放射エネルギビームを照射することにより粉末材料を焼結させる工程を繰り返す粉末造形法によって製造される。
【0038】
図13に示すように、座部クッション1の製造に使用される成形装置18は、成形を行う成形槽20と、内部に粉末材料22を収容する一対の容器24a、24bと、粉末材料22を成形槽20まで運ぶローラ26と、成形槽20の上方に設置されたレーザー発振器(図示せず)と、を有する。成形槽20内には、上下動可能な作業ステージ28が備えられ、容器24a、24b内には、それぞれ、上下動可能なステージ30a、30bが備えられる。
【0039】
粉末材料としては、上述したように、例えば、3Dシステムズ社のDuraForm(登録商標)Flex(ASTM D790による曲げ弾性率が5.9Mpa)やナイロン樹脂(平均粒子径57μm、融点185℃)などが使用される。
【0040】
先ず、座部クッション1の最下層の形成を行う。まず、作業ステージ28を、所定の深さ(最下層の高さ)だけ下方に移動させ、成形槽20の上部に最下層の高さに相当する深さの空間部を形成し、更に、ステージ30aを上方に移動させて、粉末材料22の表面がローラ26の移動面よりも高くなるようにする。
【0041】
次いで、ローラ26を回転させながら容器24aと作業ステージ28上を通過させ、容器24a内の粉末材料22を作業ステージ28上に運び、作業ステージ28上に粉末材料22を均一な厚さで配置する。ローラ26は、容器24bを通過した地点で停止させる(図13)。
【0042】
座部クッション1の最下層(第1層)の形状を示すCADデータに基づいて、レーザ発振器から放射エネルギであるレーザビームLが、成形槽20内の粉末材料22に照射される。すなわち、レーザビームLが、座部クッション1の最下層の隔壁の位置に沿って粉末材料22に照射される。粉末材料22は、作業ステージ28上で、レーザビームLが照射された部分では焼結し焼結部分32となり、レーザビームLが照射されなかった部分は未焼結のまま未焼結部分34として残る。
【0043】
次に、第2層の形成を行う。焼結部分32と未焼結部分34を有する最下層が載置された作業ステージ28を、上記と同様に所定の深さ(第2層の高さに相当する深さ)だけ下方に移動させ、成形槽20の上部に第2層の高さに相当する深さの空間部を形成する。ついで、ステージ30bを上方に移動させて、粉末材料22の表面がローラ26の移動面よりも高くなるようにする。
【0044】
次いで、ローラ26を、回転させながら容器24bと作業ステージ28上を通過させ、容器24b内の粉末材料22を作業ステージ28上に運び、作業ステージ28上に形成された最下層の焼結部分32上に、所定の深さ(第2層の高さに相当する深さ)の粉末材料22を均一に配置する(図14)。
【0045】
座部クッション1の第2層の形状を示すCADデータに基づいて、レーザ発振器から放射エネルギであるレーザビームLが、成形槽20内の粉末材料22に照射される。すなわち、レーザビームLが、座部クッション1の第2層の隔壁の位置に沿って粉末材料22に照射される。粉末材料22は、レーザビームLが照射された部分では焼結し、第1層の焼結部分32に積層された第2層目の焼結部分となり、レーザビームLが照射されなかった部分は未焼結のまま未焼結部分として残る。
このような作業を繰り返すことにより座部クッション1が形成される。
【0046】
内部隔壁16も、隔壁14と同時に積層形成される。すなわち、内部隔壁16が形成されるセル12では、内部隔壁16を有する層を形成する際に、CADデータに基づいて、隔壁14部分に加えて隔壁14に囲まれた部分にもレーザビームが照射され、隔壁14に囲まれた領域においても粉末材料が焼結させられ、隔壁14と一体となった内部隔壁16が形成されることになる。
【0047】
あるセルに第1の内部隔壁16を形成した後、そのセルに内部隔壁16を備えない層の形成が所定回だけ繰り返され、再び、当該セルに第1の内部隔壁と対となる第2の内部隔壁が同様の方法で形成される。
【0048】
第2の内部隔壁の形成時には、第1の内部隔壁とその後に形成されたそのセルの隔壁とに囲まれた空間には、未焼結の粉末材料22が未焼結部分34として残存しているので、第2の内部隔壁の形成によって、この未焼結の粉末材料22は、第1の内部隔壁とその後に形成されたそのセルの隔壁と第2の内部隔壁とによって囲まれた内部空間内に封入(充填)された粉末材料Fとなり、この部分が粉末充填セル部分12aとなる。
【0049】
柱状セルの内部空間全体に未焼結粉末を充填する場合は、当該セルの最下層と最上層に内部隔壁16を形成すればよい。図9のセルのように、2つの粉末充填セル部分12a間に中空セル部分12bが配置される場合には、第2の粉末充填セル部分12aの第1の内部隔壁を形成する前に、第1の粉末充填セル部分12aの第2の内部隔壁とその後に形成された隔壁に囲まれた空間に残存している未焼結の粉末材料を吸引などによって除去することになる。あるいは、座部クッション1の完成後に、隔壁に穿孔し、残存している未焼結の粉末材料を孔から排出させてもよい。
【0050】
柱状セルの内部空間全体が焼結体で充填されている中実セル部分を形成する場合は、内部隔壁16を形成するときと同様に、中実セル部分12cを構成する層を形成する際に、CADデータに基づいて、隔壁14部分に加えて隔壁14に囲まれた部分にもレーザビームが照射され、隔壁14に囲まれた領域においても粉末材料が焼結させられる。このような作業を所定回繰り返すことにより、中実セル部分12cが形成される。
【0051】
柱状セルの内部空間の一部が粉末材料の焼結体で充填されている一部中実セルを形成する場合には、中実セル部分12cを有する層を形成する際に、CADデータに基づいて、隔壁14部分に加えて隔壁14に囲まれた部分の一部分にもレーザビームが照射され、この部分でも粉末材料が焼結させられる。このような作業を所定回繰り返すことにより、一部中実セル部分12cが形成される。
【0052】
レーザビームが照射されない部分には、未焼結の粉末材料22が未焼結部分34として残存しているので、未焼結部分34を除去することにより、セルの内部空間の一部が焼結体で充填されそれ以外の部分が中空である一部中実セル部分となる。また、一部中実セル部分12cの軸線方向の両端部に内部隔壁16を形成すれば、一対の内部隔壁16と隔壁14とに囲まれたセルの内部空間の一部が焼結体で充填されそれ以外の部分が未焼結粉末で充填された一部中実セル部分となる。
【0053】
本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施形態の座部クッションを備える自動車用シートの斜視図である。
【図2】図1のII−IIに沿った断面図である。
【図3】図1の座部クッションの破断した斜視図である。
【図4】図1の自動車用シートの平面図である。
【図5】座部クッション1と乗員の着座位置との関係を模式的に示す図である。
【図6】図5のVI−VI線に沿った断面の一部を拡大して模式的に示す図である。
【図7】図5のVII−VII線に沿った断面の一部を拡大して模式的に示す図である。
【図8】図5のVIII−VIII線に沿った断面の一部を拡大して模式的に示す図である。
【図9】図8のセルの1つを抽出して示す斜視図である。
【図10】着座部分におけるセルの他の配置パターンを示す部分断面図である。
【図11】着座部分におけるセルの他の配置パターンを示す部分断面図である。
【図12】着座部分におけるセルの他の配置パターンを示す部分断面図である。
【図13】座部クッションの製造工程を説明する模式図である。
【図14】座部クッションの製造工程を説明する模式図である。
【符号の説明】
【0055】
1:座部クッション
2:自動車用シート
12:セル
14:隔壁
16:内部隔壁
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末材料を放射エネルギにより部分的に焼結させる粉末造形法により製造される粉末造形品であって、
隔壁で仕切られ2次元アレイ状に配列された、複数の柱状セルを有し、
前記複数の柱状セルは、
内部に形成された一対の内部隔壁と前記隔壁とに囲まれた内部空間に未焼結の前記粉末材料が充填されている粉末充填セルを含んでいる、
ことを特徴とする粉末造形品。
【請求項2】
前記複数の柱状セルは、
前記隔壁に囲まれた内部空間全体が中空の中空セルを更に含んでいる、
請求項1に記載の粉末造形品。
【請求項3】
前記粉末充填セルが、前記一対の内部隔壁間の粉末充填セル部分と、内部が中空の中空セル部分とを備えている、
請求項1または2に記載の粉末造形品。
【請求項4】
前記粉末材料は、ゴムライク材料であり、
前記複数の柱状セルは、平行に配置されている、
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の粉末造形品。
【請求項5】
前記複数の柱状セルは、
前記隔壁に囲まれた内部空間が前記粉末材料の焼結体で充填されている中実セル部分、または前記内部空間の一部が前記粉末材料の焼結体で充填されている一部中実セル部分を有する中実セルを含む、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の粉末造形品。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の粉末造形品から形成される、自動車用内装材。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の粉末造形品から形成される、自動車用シートの座部クッション部材であって、
前記複数のセルの延びる方向は、前記クッション部材の前縁部と平行な方向または垂直な方向である、自動車用シートの座部クッション部材。
【請求項8】
乗員が着座する着座領域には、前記中空セルまたは中空セル部分が配置され、
前記着座領域以外の領域には、前記粉末充填セル、粉末充填セル部分、中実セル部分、または一部中実セル部分が配置されている、
請求項7に記載の自動車用シートの座部クッション部材。
【請求項9】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の粉末造形品の製造方法であって、
前記粉末造形品の隔壁の第1層部分に相当する部分に沿って放射エネルギを粉末材料に照射し、前記粉末材料を部分的に焼結させ、前記隔壁の前記第1層部分を形成する第1ステップと、
前のステップで形成された隔壁の層部分の上方に粉末材料を配置し、前記前のステップで形成された隔壁の層部分の上方の隔壁の層部分に相当する部分に沿って放射エネルギを照射し、前記粉末材料を焼結させ、前記前のステップで形成された隔壁の層部分上に前記上方の隔壁の層部分を積層形成する第2ステップと、を備え、
前記第2ステップを繰り返すことによって、隔壁によって仕切られた柱状セルを有する粉末造形品を積層形成する製造方法において、
隔壁に囲まれた特定の領域にも放射エネルギを照射して前記隔壁に囲まれた領域に配置された粉末材料を焼結させ内部隔壁を形成するステップによって、同一の柱状セル内に軸線方向に離れた一対の内部隔壁が形成される、
ことを特徴とする粉末造形品の製造方法。
【請求項1】
粉末材料を放射エネルギにより部分的に焼結させる粉末造形法により製造される粉末造形品であって、
隔壁で仕切られ2次元アレイ状に配列された、複数の柱状セルを有し、
前記複数の柱状セルは、
内部に形成された一対の内部隔壁と前記隔壁とに囲まれた内部空間に未焼結の前記粉末材料が充填されている粉末充填セルを含んでいる、
ことを特徴とする粉末造形品。
【請求項2】
前記複数の柱状セルは、
前記隔壁に囲まれた内部空間全体が中空の中空セルを更に含んでいる、
請求項1に記載の粉末造形品。
【請求項3】
前記粉末充填セルが、前記一対の内部隔壁間の粉末充填セル部分と、内部が中空の中空セル部分とを備えている、
請求項1または2に記載の粉末造形品。
【請求項4】
前記粉末材料は、ゴムライク材料であり、
前記複数の柱状セルは、平行に配置されている、
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の粉末造形品。
【請求項5】
前記複数の柱状セルは、
前記隔壁に囲まれた内部空間が前記粉末材料の焼結体で充填されている中実セル部分、または前記内部空間の一部が前記粉末材料の焼結体で充填されている一部中実セル部分を有する中実セルを含む、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の粉末造形品。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の粉末造形品から形成される、自動車用内装材。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の粉末造形品から形成される、自動車用シートの座部クッション部材であって、
前記複数のセルの延びる方向は、前記クッション部材の前縁部と平行な方向または垂直な方向である、自動車用シートの座部クッション部材。
【請求項8】
乗員が着座する着座領域には、前記中空セルまたは中空セル部分が配置され、
前記着座領域以外の領域には、前記粉末充填セル、粉末充填セル部分、中実セル部分、または一部中実セル部分が配置されている、
請求項7に記載の自動車用シートの座部クッション部材。
【請求項9】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の粉末造形品の製造方法であって、
前記粉末造形品の隔壁の第1層部分に相当する部分に沿って放射エネルギを粉末材料に照射し、前記粉末材料を部分的に焼結させ、前記隔壁の前記第1層部分を形成する第1ステップと、
前のステップで形成された隔壁の層部分の上方に粉末材料を配置し、前記前のステップで形成された隔壁の層部分の上方の隔壁の層部分に相当する部分に沿って放射エネルギを照射し、前記粉末材料を焼結させ、前記前のステップで形成された隔壁の層部分上に前記上方の隔壁の層部分を積層形成する第2ステップと、を備え、
前記第2ステップを繰り返すことによって、隔壁によって仕切られた柱状セルを有する粉末造形品を積層形成する製造方法において、
隔壁に囲まれた特定の領域にも放射エネルギを照射して前記隔壁に囲まれた領域に配置された粉末材料を焼結させ内部隔壁を形成するステップによって、同一の柱状セル内に軸線方向に離れた一対の内部隔壁が形成される、
ことを特徴とする粉末造形品の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−29064(P2009−29064A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−197143(P2007−197143)
【出願日】平成19年7月30日(2007.7.30)
【出願人】(500142073)株式会社インクス (51)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月30日(2007.7.30)
【出願人】(500142073)株式会社インクス (51)
【Fターム(参考)】
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