説明

粉砕分別システム及び粉砕分別システムの運転方法

【課題】 粉砕分別処理をしたときのごみの回収率を向上させることができるごみ粉砕分別システムを提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明は、夾雑物が混入する廃棄物を収容する受入ホッパー2と、受入ホッパー2に収容された厨芥1から夾雑物を粉砕分別する粉砕分別機5とを有する粉砕分別システム200において、粉砕分別機5で分別された夾雑物から残渣を分離する残渣分離装置14部と、残渣分離装置14から排出される残渣を収容する残渣受箱と、残渣分離装置14から排出される残渣を残渣箱18へ移送する残渣排出パイプコンベアと、残渣排出パイプコンベア16の途中に設けられた分岐20と、分岐に接続され、残渣分離装置14から排出された残渣の少なくとも一部を受入ホッパー2へ返送する返送系としての残渣返送パイプコンベア17とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉砕分別システム及び粉砕分別システムの運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般家庭や飲食店の厨芥、あるいは食品工場等の有機性廃棄物には、生ごみ以外に紙、プラスチック、セラミックあるいは金属などの夾雑物が混入しており、メタン発酵などの生物処理をする際には、あらかじめ粉砕および夾雑物を除去する前処理を行う必要がある。
【0003】
この前処理としては、例えば回転軸に破砕刃を有した回転体を備えた粉砕分別システムで夾雑物が混入した生ごみを破砕し、この破砕した生ごみを破砕刃下部に設置した所定の大きさの通孔を有したスクリーンあるいは所定の大きさの通孔を有した円筒状の回転ドラムを備えたトロンメルにて、通孔を通過する生ごみと通過しない夾雑物とに分離する。夾雑物を除去分離した生ごみに水を添加して流動性を持たせてポンプ移送に適したスラリー状とし、メタン発酵槽に移送するための貯留槽にスラリー化した生ごみを一軸偏芯ネジ型ポンプなどで移送する構成となっている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0004】
以下、生ごみ以外に紙、プラスチック、セラミックあるいは金属などの夾雑物が混入した一般家庭や飲食店の厨芥、あるいは食品工場等の有機性廃棄物から夾雑物と生ごみとを粉砕分別する従来の前処理装置の構成について説明する。図1は、従来の生ごみ粉砕分別システム100を説明するための模式図である。
【0005】
図1において、ゴミ収集車などにより搬入された一般家庭や飲食店の厨芥、あるいは食品工場等の有機性廃棄物1は、重量を測定したのち受入ホッパー2に投入される。受入ホッパー2に投入された厨芥1は、受入ホッパー2下部の排出スクリュー3によって切り出され、粉砕分別機5に投入される。粉砕分別機5に投入された厨芥1は、粉砕分別機5の押込装置4によって粉砕分別機5内に送られ、回転している粉砕ブレード6とぶつかることで衝撃破砕され、そして徐々に細かくなり、粉砕ブレード6の下部に設置されているパンチングボード7の所定サイズの通孔を通過して生ごみ貯留タンク8内に落下する。
【0006】
生ごみ貯留タンク8内の夾雑物が除去された生ごみは、その重量に対して約2割程度の希釈水を図示していない配管から注入することでスラリー化される。さらに生ごみ貯留タンク8内でスラリー化された厨芥1(以下、生ごみスラリー12と称す)は、排出装置10で生ごみ移送ポンプ11に投入し、該生ごみ移送ポンプ11で図示していない系外の生ごみスラリー貯留槽に移送される。
【0007】
生ごみ移送ポンプ11は、該生ごみ貯留タンク8内に設置されているレベル計9のレベル高の信号により運転を開始し、レベル低の信号で運転を停止する。また、処理の最後には粉砕分別機5および生ごみ貯留タンク8内に水を噴射して洗浄する。洗浄後の廃水は該生ごみスラリー12と同様に生ごみ移送ポンプ11により系外のスラリー貯留槽に移送される。
【0008】
一方、厨芥1に混入している夾雑物(例えば、紙、プラスチック、セラミックあるいは金属など)は、粉砕ブレード6とぶつかっても衝撃破砕されず、粉砕ブレード6によって生じた風または粉砕ブレード6により徐々に排出側に移動して、排出ロータ13により粉砕分別機5の上部から残渣分離装置14に移送される。残渣分離装置14に投入された夾雑物は、サイクロン効果により固形物と気体とが分離され、固形物は残渣分離装置14の下部に落下し残渣排出装置15により該残渣分離装置14から排出される。
【0009】
残渣分離装置14により分離された臭気を含んだ空気は、再び粉砕分別機5に戻される。残渣分離装置14から排出された夾雑物(以下、排出残渣19と称す)は、残渣排出パイプコンベア16によって残渣受箱18に移送され一時貯留されたのち、最終的には場外に搬出し焼却処理される。
【特許文献1】特開2000−334431号公報
【特許文献2】特開2004−329975号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、図1で示した粉砕分別では、生ごみの一部が粉砕ブレード6で生じる風力や排出ロータ13の回転力によって飛ばされ、パンチングボード7の通孔から落下せずに残渣分離装置14内に入ってしまうことがある。残渣受箱18内に貯留された排出残渣19の構成を調べた結果、紙、プラスチック、セラミックあるいは金属などの夾雑物だけではなく、わずかではあるが回収可能な生ごみが含まれており、後段で生物処理する生ごみの回収率が低減し、効率良く生ごみを処理できなくなるとともに、別途処理する残渣に生ごみが混入するので分離した残渣量が増大し、処理コストが増大する問題がある。
【0011】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、粉砕分別処理をしたときのごみの回収率を向上させることができるごみ粉砕分別システム及びごみ粉砕分別システムの運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の粉砕分別システムは、夾雑物が混入する廃棄物を収容する収容部と、前記収容部に収容された廃棄物から前記夾雑物を粉砕分別する粉砕分別部とを有する粉砕分別システムにおいて、前記粉砕分別部で分別された夾雑物から残渣を分離する残渣分離部と、前記残渣分離部から排出された残渣の少なくとも一部を前記収容部へ返送する返送系とを備える。この構成によれば、簡単な構成及び運転方法で粉砕分別処理をしたときの生ごみ回収率を向上できる。さらに、粉砕分別機から排出される残渣量が減少し、残渣の処理コストを低くできる利点がある。
【0013】
本発明の粉砕分別システムは、前記残渣分離部から排出される残渣を収容する残渣収容部と、前記残渣分離部から排出される残渣を前記残渣収容部へ移送する移送系と、前記移送系の途中に設けられた分岐とをさらに備え、前記返送系は、前記分岐に接続されている。この構成によれば、簡単な構成で排出される残渣を収容部へ返送することができる。また、前記返送系は、コンベアを含んで構成されている。
【0014】
前記返送系を介して前記収容部へ返送される残渣の量は、特に、前記残渣分離部から排出される残渣の0.5〜0.9であるのが好ましい。この構成によれば、生ごみ回収率を向上でき、粉砕分別機から排出される残渣量を減少させ、残渣の処理コストを低くできる。
【0015】
本発明の粉砕分別システムの運転方法は、夾雑物が混入する廃棄物を収容する収容部と、前記収容部に収容された廃棄物から前記夾雑物を粉砕分別する粉砕分別部とを有する粉砕分別システムの運転方法において、前記粉砕分別部で分別された夾雑物から残渣を分離する残渣分離ステップと、前記分離された残渣のうちの少なくとも一部を前記収容部へ返送するステップとを有する。この構成によれば、簡単な構成及び運転方法で粉砕分別処理をしたときの生ごみ回収率を向上できる。さらに、粉砕分別機から排出される残渣量が減少し、残渣の処理コストを低くできる利点がある。
【0016】
前記返送系を介して前記収容部へ返送される残渣の量は、前記残渣分離ステップで排出される残渣の0.5〜0.9であるのが好ましい。この構成によれば、生ごみ回収率を向上でき、粉砕分別機から排出される残渣量を減少させ、残渣の処理コストを低くできる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、粉砕分別処理をしたときのごみの回収率を向上させることができるごみ粉砕分別システム及びごみ粉砕分別システムの運転方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の最良の実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0019】
図2は本発明の実施の形態に係るごみ粉砕分別システム200を示す模式図である。粉砕分別システム200は、厨芥や食品工場等の有機性廃棄物など、夾雑物が混入する生ごみを粉砕分別し、分別された生ごみをメタン発酵処理する生ごみ処理装置において、夾雑物と生ごみとを粉砕分別する前処理装置である。図2において、ゴミ収集車などにより搬入された一般家庭や飲食店の厨芥、あるいは食品工場等の有機性廃棄物1は、重量を測定したのち夾雑物が混入する廃棄物を収容する受入ホッパー2に投入される。
【0020】
受入ホッパー2に投入された厨芥等1は、受入ホッパー2下部の排出スクリュー3によって切り出され、粉砕分別機5に投入される。粉砕分別機5に投入された厨芥1は、粉砕分別機5の押込装置4によって粉砕分別機5内に送られ、回転している粉砕ブレード6とぶつかることで衝撃破砕され、そして徐々に細かくなり、粉砕ブレード6の下部に設置されているパンチングボード7の10mmの通孔を通過して生ごみ貯留タンク8内に落下する。
【0021】
生ごみ貯留タンク8内の夾雑物が除去された生ごみは、その重量に対して約2割程度の希釈水を図示していない配管から注入することでスラリー化される。さらに生ごみ貯留タンク8内でスラリー化された生ごみスラリー12は、排出装置10で生ごみ移送ポンプ11に投入し、該生ごみ移送ポンプ11で図示していない系外の生ごみスラリー貯留槽に移送される。
【0022】
生ごみ移送ポンプ11は、該生ごみ貯留タンク8内に設置されているレベル計9のレベル高の信号により運転を開始し、レベル低の信号で運転を停止する。また、処理の最後には粉砕分別機5および生ごみ貯留タンク8内に水を噴射して洗浄する。洗浄後の廃水は該生ごみスラリー12と同様に生ごみ移送ポンプ11により系外のスラリー貯留槽に移送される。
【0023】
一方、厨芥1に混入している夾雑物は、粉砕ブレード6とぶつかっても衝撃破砕されず、粉砕ブレード6によって生じた風または粉砕ブレード6により徐々に排出側に移動して、排出ロータ13により粉砕分別機5の上部から残渣分離装置14に移送される。
【0024】
残渣分離装置14は、投入された夾雑物を、サイクロン効果により固形物と気体とに分離し、固形物は残渣分離装置14の下部に落下し残渣排出装置15により該残渣分離装置14から排出される。このようにして夾雑分離部で分離された夾雑物から残渣を分離する。残渣分離装置14により分離された臭気を含んだ空気は、再び粉砕分別機5に戻される。残渣分離装置14から排出された排出残渣19は、残渣排出パイプコンベア16によって残渣受箱18に移送される。これによって残渣分離装置14によって排出される残渣は残渣受箱18に収容される。
【0025】
また、残渣分離装置14から排出された残渣を残渣受箱18に移送する残渣排出パイプコンベア16の途中に分岐20を設け、受入ホッパー2に残渣を返送する残渣返送パイプコンベア17はその分岐20に接続される。そして、該残渣排出パイプコンベア16の途中に設けた分岐20から予め設定した割合で、回収可能な生ごみを含んだ排出残渣19の一部を残渣返送コンベア17を通して受入ホッパー2に返送する。ここで、残渣排出パイプコンベアから分岐して受入ホッパー2に返送する量が、残渣分離装置14から排出される残渣の0.5〜0.9であるのが好ましい。尚、残渣返送パイプコンベア17が本発明の返送系に相当する。
【0026】
受入ホッパー2に返送された残渣は、ゴミ収集車などにより搬入された一般家庭や飲食店の厨芥、あるいは食品工場等の有機性廃棄物と混合され、再び受入ホッパー2下部の排出スクリュー3により粉砕分別機5に投入されて、混入している夾雑物と生ごみとに分別される。
【0027】
これを繰り返すことにより、残渣受箱18に溜まる排出残渣19に含まれる回収可能な生ごみの割合は低減し、粉砕分別機5下部に設置されている生ごみ移送ポンプ11より移送される生ごみの量が増大するので、生ごみの回収率が向上する。さらに、最終的に場外に搬出され焼却処理される排出残渣19の量が減るので、処理コストも低減できる。
【0028】
表1に試験用粉砕分別機を用いて、学校給食厨芥の粉砕分別を行った結果を示した。
【0029】
【表1】

【0030】
粉砕分別機5への投入試験は次のように行った。搬入された厨芥を粉砕分別機5に投入し、排出された残渣中の生ごみと夾雑物を手分別して回収されなかった生ごみ量と夾雑物量を求める(投入1回目)。
【0031】
次に、これらの排出残渣全てを再び粉砕分別機5に投入し、同じように手分別で排出された残渣中の生ごみと夾雑物量を求める(投入2回目)。さらにもう一度同じことを繰り返し、それぞれの投入での生ごみ回収率を求めた。
【0032】
表1に示したように、1回の粉砕分別処理では残渣分離装置14から排出された残渣210kg中には、回収可能な生ごみが192.7kgも含まれており、生ごみの回収率も88.6%と低い、そこで、再度排出残渣の粉砕分別処理を行うと、排出された残渣80.8kg中の生ごみは63.4kgとなり、回収率も95.2%と向上することが分かった。
【0033】
しかし、3回目の粉砕分別処理では、排出残渣中の生ごみは63.4kgから38.0kgと減るものの、回収率は1.5%しか向上せず、排出残渣中に含まれる生ごみの量が少なくなっており、回収率向上の大きな効果は望めないことも分かった。
【0034】
上記本実施形態によれば、残渣分離装置14から排出された残渣を残渣受箱18に移送する残渣排出パイプコンベア16の途中に分岐20を設け、その分岐20から受入ホッパー2に残渣を返送する残渣返送パイプコンベア17を設けて残渣受箱18に移送する残渣の一部を受入ホッパー2に返送するようにしたので、簡単な構成及び運転方法で粉砕分別処理をしたときの生ごみ回収率を向上できる。さらに、粉砕分別機から排出される残渣量が減少し、残渣の処理コストを低くできる利点がある。
【0035】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】従来の生ごみ粉砕分別システムを説明するための模式図である。
【図2】本発明によるごみ粉砕分別システムの実施の形態を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0037】
1・・・厨芥
2・・・受入ホッパー
3・・・排出スクリュー
4・・・押込装置
5・・・粉砕分別機
6・・・粉砕ブレード
7・・・パンチングボード
8・・・生ごみ貯留タンク
9・・・レベル計
10・・・排出装置
11・・・生ごみ移送ポンプ
12・・・生ごみスラリー
13・・・排出ロータ
14・・・残渣分離装置
15・・・残渣排出装置
16・・・残渣排出パイプコンベア
17・・・残渣返送パイプコンベア
18・・・残渣受箱
19・・・排出残渣

【特許請求の範囲】
【請求項1】
夾雑物が混入する廃棄物を収容する収容部と、前記収容部に収容された廃棄物から前記夾雑物を粉砕分別する粉砕分別部とを有する粉砕分別システムにおいて、
前記粉砕分別部で分別された夾雑物から残渣を分離する残渣分離部と、
前記残渣分離部から排出された残渣の少なくとも一部を前記収容部へ返送する返送系と、を備えることを特徴とする粉砕分別システム。
【請求項2】
前記残渣分離部から排出される残渣を収容する残渣収容部と、
前記残渣分離部から排出される残渣を前記残渣収容部へ移送する移送系と、
前記移送系の途中に設けられた分岐と、をさらに備え、
前記返送系は、前記分岐に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の粉砕分別システム。
【請求項3】
前記返送系は、コンベアを含んで構成されている、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の粉砕分別システム。
【請求項4】
前記返送系を介して前記収容部へ返送される残渣の量は、前記残渣分離部から排出される残渣の0.5〜0.9である、ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の粉砕分別システム。
【請求項5】
夾雑物が混入する廃棄物を収容する収容部と、前記収容部に収容された廃棄物から前記夾雑物を粉砕分別する粉砕分別部とを有する粉砕分別システムの運転方法において、
前記粉砕分別部で分別された夾雑物から残渣を分離する残渣分離ステップと、
前記分離された残渣のうちの少なくとも一部を前記収容部へ返送するステップと、を有することを特徴とする粉砕分別システムの運転方法。
【請求項6】
前記返送系を介して前記収容部へ返送される残渣の量は、前記残渣分離ステップで排出される残渣の0.5〜0.9である、ことを特徴とする請求項6に記載の粉砕分別システムの運転方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−221149(P2008−221149A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−64080(P2007−64080)
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【出願人】(507214083)メタウォーター株式会社 (277)
【Fターム(参考)】