説明

粉砕装置

【課題】 粉砕効率を向上させ、連続的な大容量の粉砕処理を可能にする粉砕装置を提供する。
【解決手段】 本粉砕機は、円筒容器1を回転させることによって、円筒容器1内の木質材を複数の粉砕媒体で粉砕するようになっていて、円筒容器1の上記回転は、円筒容器1の静止状態の中心軸と略同じ位置になる仮想軸の周りの公転である。粉砕媒体のそれぞれは、回転体2であり、その側面に複数の凸部3が形成され、中央に軸方向の穴部4が形成されている。この回転体2は、その中心軸を円筒容器1の中心軸に平行にして、軸方向に複数並べられつつ、円筒容器1内に転動可能に収容される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒容器を水平に保持しつつ、この円筒容器を自転させることなく、その中心軸を仮想軸周りに円筒容器を公転させることによって、円筒容器内の木質材を複数の粉砕媒体で粉砕する粉砕装置に係り、特に、このような粉砕装置の粉砕媒体に関する。この粉砕装置は、例えば、木質系バイオマスのセルロース又はヘミセルロースを酵素で糖化(加水分解)して単糖に変換し、変換した糖を菌や酵母でエタノールや生分解プラスチックに変換するといった木質系バイオマスの加工や、水素ガスや一酸化炭素ガスのような可燃性ガスの製造に用いられる。
【背景技術】
【0002】
大聖泰弘/三井物産株式会社編の「バイオエタノール最前線」(工業調査会発行)によると、我国は京都議定書に対応するため、2012年までに、1990年を基準として炭酸ガスの排出量を6%削減する必要がある。その一方策として、環境省が、乗用車からの排出量を削減するための次のようなシナリオを策定していることが示されている。即ち、カーボンニュートラルな木質系バイオマスから、工業的に安価な燃料用エタノールを製造し、ガソリンに3%混合させてE3燃料としたものの全面普及を2012年に、10%混合させたE10燃料の全面普及を2020年に達成させる。
【0003】
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、木質系バイオマスから燃料用エタノールを製造するための「バイオマス高効率転換技術開発」を2001年から2005年に行っている(NEDO報告書バーコード100000836参照)。ここでは、濃硫酸による加水分解法を用いて木質系バイオマス中のセルロースを糖に変換している。ところが、糖液の回収率が低いこと、酸耐性・耐塩性の酵母の開発が必要なこと、濃硫酸廃液を処理する必要があること等の問題があり、ガソリンと競合できる価格での製造技術は、いまだ確立されていない。
【0004】
硫酸加水分解法の問題を解決する方法として、機械的前処理法と、酵素を用いる糖化処理法とを組み合わせたエタノール製造法がある。この機械的前処理法で用いられる振動式粉砕装置の一つに、粉砕媒体としてロッドを装入した第1粉砕筒と、ボールを装入した第2粉砕筒とを組み合わせて用いたものを挙げることができる(特許文献1)。この粉砕装置によると、木質材をチップから100μm以下にすることが可能である。
【0005】
【特許文献1】特開2004−188339号公報(段落0020、図1等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、粉砕された木質系バイオマスを酵素で効率良く糖化するためには、木質系バイオマスを20μm〜30μm程度まで微細化する必要がある。特許文献1の粉砕装置では、木質系バイオマスを100μm程度の粒径にすることが可能であるものの、この粉砕装置によって、例えば1時間以内といった十分に短い処理時間で、さらに20μm〜30μm程度にまで粉砕することは困難である。
【0007】
本発明の目的は、このような課題を解決することができる粉砕装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る粉砕装置は、円筒容器を自転させずに公転させることによって、該円筒容器内の木質系バイオマスを複数の粉砕媒体で粉砕し、前記円筒容器の公転は、該円筒容器の静止状態の中心軸と略同じ位置になる仮想軸の周りの公転である。本粉砕装置は、前記粉砕媒体のそれぞれが、周辺に複数の凸部が形成され、中央に軸方向の穴部が形成された回転体であるとともに、該粉砕媒体が、該粉砕媒体の中心軸を前記円筒容器の中心軸に平行にして、軸方向に複数並べられつつ、前記円筒容器内に転動可能に収容されることを特徴とする。
請求項2に係る粉砕装置は、請求項1に係る粉砕装置において、前記円筒容器の内径と、前記粉砕媒体の外径との差が、60mm以下であることを特徴とする。
請求項3に係る粉砕装置は、請求項1又は請求項2に係る粉砕装置において、前記粉砕媒体は、片側端面に、前記穴部から放射状に延びた溝部を有することを特徴とする。
請求項4に係る粉砕装置は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に係る粉砕装置において、前記粉砕媒体の前記穴部が、前記粉砕媒体と同心の円柱状に設けられることを特徴する。
請求項5に係る粉砕装置は、請求項4に係る粉砕装置において、前記粉砕媒体の前記穴部の内径より小さな外径に形成され、前記穴部内に転動可能に装着される小回転体を有することを特徴とする。
請求項6に係る粉砕装置は、請求項5に係る粉砕装置において、前記粉砕媒体の前記穴部の内径と、該穴部内の前記小回転体の外径との差が、60mm以下であることを特徴とする。
請求項7に係る粉砕装置は、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に係る粉砕装置において、前記円筒容器の公転数と公転半径とで定義される加速度の大きさが、重力加速度の4倍から14倍の範囲であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る粉砕装置では、公転するが自転しない円筒容器内で、穴部を有する粉砕媒体が、円筒容器の内面を転動するようになっている。この穴部によって、粉砕効率が向上し、連続的な大容量の粉砕処理が可能になっている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係る実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面には、構成を判り易く表すこと等を目的として、模式的に誇張された部分が含まれている。
(第1の実施の形態)
本発明に係る第1の実施の形態である粉砕機について説明する。この粉砕機は、杉間伐材、製材廃材、建築廃材などの木質系バイオマスで既に予備粉砕されたものを、さらに微細化するための高衝撃粉砕装置である。この粉砕機は、図1に示すように、円筒容器1と、粉砕媒体となる回転体2とを備えていて、この円筒容器1は、その中心軸が水平方向を向くように、公転可能に保持されている。一例として、円筒容器1及び回転体2は鋼鉄からなり、表面には焼入れが行われるものとしてよい。粉砕機は、円筒容器1の公転、即ち、円筒容器1を、その静止状態の中心軸と略同じ位置となる仮想軸の周りに公転させることによって、円筒容器1内の木質材を複数の回転体2で粉砕するようになっている。(同図1の矢印aは円筒容器1の中心軸の公転方向と、回転体2の転動方向を表している。なお、円筒容器1の公転は自転を伴わない。)円筒容器1のこの公転のためのモータ、偏心錘などからなる機構は、周知のものと同様であり、上述した特開2004−188835号公報、又は、特開2004−188339号公報等に開示されている。
【0011】
円筒容器1内へは、原料となる木質系バイオマスの予備粉砕物(予備粉砕された木質系バイオマスチップ)が供給され、この予備粉砕物が円筒容器1内で微粉砕物(予備粉砕物から生成されたバイオマス粉末)へと粉砕されて取り出される。この粉砕機での粉砕処理の後、微粉砕物は、酢酸緩衝液に入れられる。そして、この酢酸緩衝液に、所定の酵素を加えて、酵素活性が最も大きくなる温度に加熱することによって、微粉砕物中のセルロースが糖(グルコース)に加水分解される。この糖がエタノール発酵酵母によりエタノールに変換され、これを蒸留・脱水して回収することで無水エタノールが得られる。
【0012】
本粉砕機につきより詳細に説明すると、回転体2には、同図1のように、その周辺(周囲)に、複数の凸部3が形成され、中央に、軸方向(中心軸方向)への穴部4が形成されている。即ち、回転体2は、円板状(短円柱状)をした基部を有し、凸部3は、その基部の外周面上から外側へと延び、三角形状(歯車の三角歯と同様の形状)に形成されている。回転体2の転動に伴い、この凸部3の先端面(三角歯の歯先面)と、円筒容器1の内周面とが当接し、主として、この当接部分で、予備粉砕物が微粉砕物へと粉砕される。回転体2の穴部4は、回転体2と同心の円柱状に設けられており、余剰の予備粉砕物(未粉砕及び粉砕過程にあるバイオマス粉末を含む。以下同様)を一時的に蓄えることが可能である。回転体2の転動中に上記当接部分の近傍の空間にある予備粉砕物が減容してくると、同図1の矢印bのように、穴部4内の予備粉砕物が回転体2間を通ってこの空間へと供給される。つまり、当接部分の予備粉砕物の量が減ってくると、穴部4からこの当接部分近くへと自動的に予備粉砕物が供給され、その量が一定に保たれるわけである。
【0013】
ここでは、図示を省略したが、円筒容器1の片側の端面と、側面(胴部)の下側とには、それぞれ、開口部が設けられている。未処理の予備粉砕物が、片側端面の開口部から円筒容器1内へと連続して供給され、粉砕処理後の微粉砕物が、側面下側の開口部から連続して取り出される。これら2つの開口部に代え、円筒容器1の側面の上側に、予備粉砕物の供給用の開口部を設け、その側面の下側に、微粉砕物の取出し用の開口部を設けてもよい。この場合、供給された予備粉砕物が直接的に取り出されないように、供給用の開口部と、取出し用の開口部とを軸方向に離す。
【0014】
これらの回転体2は、その中心軸を円筒容器1の中心軸に平行にして、円筒容器1内に、軸方向に複数並べて収容(装入)されており、回転体2は、円筒容器1の公転に伴い、円筒容器1内で転動可能である。粉砕機の運転による実際の粉砕処理にあっては、円筒容器1は、上記仮想軸周りの振幅(公転半径)が4mm〜15mm、公転数(振動数)が800cpm〜1500cpm程度で公転される。公転中の円筒容器1が最下位置にくるときに、転動している回転体2も最下位置にきて、これらが当接する。一方、円筒容器1が最上位置にきたときに、回転体2も最上位置にくる。円筒容器1の公転の周期と、回転体2の転動の周期とが等しいわけである。
【0015】
さらに、粉砕機は、この円筒容器1の周辺に、ノズル5,6と、コイル7とを有している。これらノズル5,6は、円筒容器1の両端面に取り付けられており、ノズル5から、冷却した乾燥空気(窒素ガス)が注入され、ノズル6から、円筒容器1内で熱交換した空気が排気されるようになっている。予備粉砕物の含水率は15%程度であり、その平均粒径は200μm程度である。微粉砕物については、その初期含水率が10%〜5%程度のときに糖化率が最大となること、及び、平均粒径が20μm程度の大きさになるまでのバイオマス粉末は糖化率があまり大きくないことが確認されている。バイオマス粉末が平均粒径20μm程度に粉砕されるまでに、その含水率が10%〜5%程度になるように、ノズル5より注入する乾燥空気の流量及び温度が調整される。
【0016】
コイル7は、冷却用のものであり、円筒容器1の外周面上に巻き付けられるようにして取り付けられている。円筒容器1の外周表面は、このコイル7に代わる別の冷却方式として、軸方向に一定の間隔で区画されたジャケット構造を有していてもよい。コイル7に冷水を流すことで円筒容器1を冷却し、ノズル5から上述のように注入される乾燥空気は回転体2を冷却するものでもある。これらによって、予備粉砕物の過熱が防がれており、具体的には、ノズル6から排出される空気の温度が40℃程度になるように、コイル7に流す冷水量及び温度、乾燥空気の流量及び温度等が調整される。
【0017】
(1)特に、円筒容器1の内径と、回転体2の外径の差は、60mm以下であることが好ましい。これは、図2(a)のグラフに示した実験結果により確認される。即ち、実験として、次に示す2種の歯車型の回転体2(回転体A,B)を円筒容器1に10枚装入して、上記粉砕機を公転数1000cpm、1200cpm、1500cpmで運転し、予備粉砕物から微粉砕物へと、100分間が経過するまで粉砕し、10分毎にサンプルを採取した。そうして、このサンプルを用いて、上述した糖化を行い、その糖化率を求めるようにした。
【0018】
ここで、回転体A、Bともに、軸方向への厚さ(歯幅)が21mmであり、円筒容器1については、両端の内壁面間の軸方向への長さが216mm、内径が284mmである。回転体Aについて、歯先面間の長さ(外径、歯先円直径)が252mmで、歯底面間の長さ(歯底円直径)が248mmである。円筒容器1の内径と回転体Aの外径との差は、32mmになる。もう一つの回転体Bは、歯先面間の長さが220mm、歯底面間の長さが216mmである。円筒容器1の内径と回転体Bの外径との差は、64mmになる。
【0019】
同図2(a)の実験結果を参照すると、回転体Bのデータ(黒塗りの記号のデータ)について、100分間の粉砕では、1000cpm、1200cpm、1500cpmのいずれの公転数によっても、糖化率が40%前後以上にならないことがわかる。これに対し、回転体Aのデータ(白抜きの記号のデータ)について、100分間の粉砕で、公転数1000cpmで糖化率は90%とやや落ちるものの、1200cpm及び1500cpmの公転数で、糖化率が略100%となっている。
【0020】
加えて、上述同様の実験における目視での観察の結果から、円筒容器1の内径と回転体2の外径との差が60mmより大きな場合、回転体2は、その外周面を円筒容器1の内周面に沿わせたかたちで転動しないことがわかっている。これらによると、円筒容器1の内径と回転体2の外径との差が60mmより大きければ、円筒容器1内でスムーズに転動せず、これが、結果として、糖化率を低下させていることがわかる。(図2(a)の実験結果によると、回転体Aと回転体Bとで平均粒径があまり異ならないにもかかわらず、糖化率が100%近くと40%前後とで異なっていることになる。これは、回転体Bのように、転動の途中で円筒容器1の内周面から落下し、完全にはその内周面に沿った移動をしない場合、バイオマス粉末の平均粒径を小さくする効果は生じるものの、バイオマス粉末を磨り潰す効果が働かないためと考えられる。)
【0021】
大量の予備粉砕物を処理するために円筒容器1の内径を大きくした場合でも、この円筒容器1の内径と回転体2の外径との差を変えないように、回転体2の外径を大きくする。これによると、円筒容器1内での回転体2の高速転動を確保でき、粉砕効率が低下しない。例えば、1時間以下といった短時間の間での粉砕処理によって、糖への変換効率が高いバイオマス粉末を生成することが可能である。
【0022】
(2)また、円筒容器1の公転数fと振幅rとで定義される加速度aの大きさが、重力加速度Gの4倍から14倍の範囲であることが好ましい。即ち、加速度aは、角速度をωとして、次の数1によるもので、この加速度aが、数2を満たすことが好ましい。
【0023】
【数1】


【数2】

【0024】
この円筒容器1の加速度についての条件は、同図2(b)のグラフに示した実験結果により確認される。即ち、上述と同様の実験(回転体の形状が若干異なるのみ)を行い、その実験結果を、同図2(b)のグラフに、粉砕時間と糖化率との関係として表している。ここでは、上記回転体Aを用いた。
【0025】
同図2(b)の実験結果を参照すると、公転数fが1200cpm、1500cpmの場合に、粉砕時間100分で糖化率が略70%に達している。公転数f=1000cpm、振幅r=4mmを上記数1に代入すると、加速度a=4.47Gが得られる。公転数f=1200cpm、振幅r=4mmを代入すると、加速度a=6.44Gが得られ、また、公転数f=1500cpmとすると、加速度a=10.06Gとなる。
【0026】
本粉砕機では、振幅rを最大で15mmとすることが可能であり、この場合に加速度a=14Gを実現することができる。当然ながら、加速度aがより大きくなったときの粉砕効率は向上されているはずで、これらによると、加速度aとして、上記数2の範囲が有効であることがわかる。粉砕機のこのような運転によって、回転体2の円筒容器1の内周面に沿った転動がスムーズに行われ、粉砕効率が向上するということである。
【0027】
以上のように、本発明に係る粉砕装置では、公転する円筒容器内で、穴部を有する粉砕媒体が転動するようになっている。この穴部によって、粉砕効率が向上し、連続的な大容量の粉砕処理が可能になっている。つまり、円筒容器1を公転させたとき、回転体2のそれぞれが、独立に、その外周面を円筒容器1の内周面に沿わせて高速で転動する。そのため、大容量化を目的として円筒容器1の軸方向への長さを大きくしたとしても、粉砕効率が大きく低下するといったことがない。(これらは、上述と同様の実験により確認されている。)
【0028】
(第2の実施の形態)
次に、本発明に係る第2の実施の形態の粉砕機につき図3を用いて説明する。本実施の形態では、同図3に示すように、回転体10の端面に溝部11が形成されている点が、第1の実施の形態と異なる。ここで説明する回転体10の構成及び作用効果以外の回転体(粉砕媒体)の構成及び作用効果については、上記第1の実施の形態に準ずるものとする。
【0029】
上述したように、回転体10の穴部4内には、余剰の予備粉砕物が一時的に蓄えられる。回転体10の転動時に粉砕の進行に伴って、この予備粉砕物が、隣り合った2つの回転体10の隙間を通って、回転体10の外周面と、円筒容器1の内周面との当接部分の近傍の空間に導かれる。加えて、ここでは、溝部11が、回転体10の片側端面に、穴部4から放射状に延びており、穴部4内の予備粉砕物が、同図3の矢印cのように、溝部11を通って、その当接部分の近傍の空間に導かれる。そうして、上記当接部分で粉砕された予備粉砕物の一部は、隣り合った回転体10の隙間、及び、溝部11によって、回転体10の穴部4に還流する。即ち、バイオマス粉末の上記当接部分と、穴部4との間での循環が行われながら、粉砕処理が進行していく。
【0030】
本実施の形態によれば、円筒容器1内での回転体10の転動運動中に、その当接部分近傍の空間のバイオマス粉末の量と、回転体10の穴部4内のバイオマス粉末の量との割合が自動調整される。即ち、回転体10の転動運動エネルギーが最小になるように、バイオマス粉末が、複数の回転体10の間隙、及び、溝部11を通って、当接部分近傍の空間と、穴部4内との間を移動する。これは、粉砕効率の向上につながる。
【0031】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態の粉砕機を、図4を用いて説明する。本実施の形態では、図4に示すように、回転体2の穴部4に小回転体21を転動可能に装着する点が、第1の実施の形態と異なる。ここで説明する以外の回転体の構成及び作用効果については、第1の実施の形態に準ずる。
【0032】
穴部4内の小回転体21は、回転体2の穴部4の内径より小さな外形に形成され、回転体2と同様に、三角形状の凸部を有するものとしてよい。この穴部4の内径と、小回転体21の外径との差は、円筒容器1の内径と、回転体2の外径との上述した差と同様に、60mm以下であることが好ましい。
【0033】
ここでは、回転体2が円筒容器1の内周面に沿って転動するのに伴って、小回転体21も回転体2の穴部4の内周面に沿い転動する。このとき、予備粉砕物は、隣り合う回転体2の隙間を通り、円筒容器1の内周面と、回転体2の外周面との当接部分近傍の空間に導かれ、この当接部分で粉砕される。粉砕された予備粉砕物の一部は、回転体2の隙間から回転体2の穴部4に還流され、この穴部4の内周面と、小回転体21の外周面との当接部分でも粉砕が行われる。
【0034】
本実施の形態によれば、円筒容器1の内周面と回転体2の外周面との当接部分、及び、回転体2の穴部4の内周面と小回転体21の外周面との当接部分の2箇所で、予備粉砕物が粉砕されるため、第2の実施の形態より短時間に効率よく粉砕処理を行うことが可能である。
【0035】
(他の実施の形態等)
以上、具体的な実施の形態により本発明を説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で、上記実施の形態を変更して実施することができる。
a. 例えば、上記第1〜第3の実施の形態において、凸部3は、三角形状に形成するものとしたが、他の形状であってもよい。歯先面を、円筒容器1の内周面に沿うように、弧状に形成することにより、粉砕効率の向上を図ることができる。
【0036】
b. 特に、回転体2は、円筒容器1内に複数個装入するようにしている。複数個挿入することで、軸方向に隣り合う回転体2の端面同士が当接し、この当接部分で粉砕を進行させることが可能であるからである。
c. 上記第3の実施の形態において、小回転体21は、複数の回転体2の複数の穴部4を貫通するようになっていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】第1の実施の形態での円筒容器内の回転体を示す斜視図
【図2】回転体の外径(a)及び円筒容器の加速度(b)に関する実験データを表したグラフ
【図3】第2の実施の形態での回転体を示す模式的断面図
【図4】第3の実施の形態での回転体内の小回転体を示す模式的断面図
【符号の説明】
【0038】
1……………円筒容器
2,10……回転体
3……………凸部
4……………穴部
5,6………ノズル
7……………コイル
11…………溝部
21…………小回転体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒容器を自転させずに公転させることによって、該円筒容器内の木質系バイオマスを複数の粉砕媒体で粉砕する粉砕装置であって、
前記円筒容器の公転は、該円筒容器の静止状態の中心軸と略同じ位置になる仮想軸の周りの公転であり、
前記粉砕媒体のそれぞれは、周辺に複数の凸部が形成され、中央に軸方向の穴部が形成された回転体であるとともに、該粉砕媒体は、該粉砕媒体の中心軸を前記円筒容器の中心軸に平行にして、軸方向に複数並べられつつ、前記円筒容器内に転動可能に収容されることを特徴とする粉砕装置。
【請求項2】
前記円筒容器の内径と、前記粉砕媒体の外径との差が、60mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の粉砕装置。
【請求項3】
前記粉砕媒体は、片側端面に、前記穴部から放射状に延びた溝部を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の粉砕装置。
【請求項4】
前記粉砕媒体の前記穴部は、前記粉砕媒体と同心の円柱状に設けられることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の粉砕装置。
【請求項5】
前記粉砕媒体の前記穴部の内径より小さな外径に形成され、前記穴部内に転動可能に装着される小回転体を有することを特徴とする請求項4に記載の粉砕装置。
【請求項6】
前記粉砕媒体の前記穴部の内径と、該穴部内の前記小回転体の外径との差が、60mm以下であることを特徴とする請求項5に記載の粉砕装置。
【請求項7】
前記円筒容器の公転数と公転半径とで定義される加速度の大きさが、重力加速度の4倍から14倍の範囲であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の粉砕装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−233542(P2009−233542A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−81342(P2008−81342)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(306024148)公立大学法人秋田県立大学 (74)
【Fターム(参考)】