説明

粉砕装置

【課題】 被粉砕物を容易かつ確実に粉砕する粉砕装置を提供する。
【解決手段】
装置本体2と、装置本体2の上部に設けられた載置台3に収容される乳鉢4と、装置本体2に支柱5を介して乳鉢4内で支持される乳棒6とを備える粉砕装置1であって、装置本体2は、乳棒6を固定した状態で、載置台3を駆動させる駆動手段を備える粉砕装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被粉砕物を粉砕する粉砕装置に関する。
【背景技術】
【0002】
試薬や鉱物などの被粉砕物を粉砕するために、モータによって乳棒を乳鉢内で回転させ、自動で被粉砕物を粉砕する粉砕装置が知られている。例えば、特許文献1には、被粉砕物が収容された乳鉢を固定し、モータと遊星歯車機構によって、乳棒を乳鉢内で自転と公転させ、被粉砕物を粉砕する粉砕装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−243167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような粉砕装置は、自転と公転する乳棒の動作により、被粉砕物が乳鉢の壁面に押しやられ、被粉砕物はそのまま乳鉢の壁面で滞留するため、壁面に滞留した被粉砕物を粉砕することができなかった。また、乳鉢の壁面に滞留した被粉砕物を粉砕するためには、被粉砕物を掻き落とす必要があり、作業効率に問題があった。さらに、ヘラを使用して被粉砕物を掻き落とすと、ヘラに付着した異物や、ヘラの破片の混入というコンタミネーションの問題があった。
【0005】
本発明は、このような問題を解決すべくなされたものであって、被粉砕物を容易かつ確実に粉砕する粉砕装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の前記目的は、装置本体と、前記装置本体の上部に設けられた載置台に収容される乳鉢と、前記装置本体に支柱を介して前記乳鉢内で支持される乳棒とを備える粉砕装置であって、前記装置本体は、前記乳棒を固定した状態で、前記載置台を駆動させる駆動手段を備える粉砕装置により達成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、被粉砕物を容易かつ確実に粉砕する粉砕装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態に係る粉砕装置1の縦断面図である。
【図2】図1に示す遊星歯車機構11の拡大図である。
【図3】図1に示す遊星歯車機構11の平面図である。
【図4】乳鉢4の動きを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る粉砕装置1の縦断面図である。図1に示すように、粉砕装置1は、ケース状の装置本体2と、装置本体2の上部に設けられた載置台3に収容される乳鉢4と、装置本体2の上部で支柱5により支持される乳棒6とを備えている。
【0010】
装置本体2の内部には、載置台3を駆動させる正逆回転可能なモータ7が、支持板8上に固定されている。この支持板8は、装置本体2の内部の側面に固定されている。モータの出力軸9は、支持板8から下向きに突出し、その先端でプーリー10aが固定されている。プーリー10aは、遊星歯車機構11を構成する回転体12の入力軸13に固定されたプーリー10bと、タイミングベルト14を介して連結されている。なお、他の実施形態として、タイミングベルト14を介さずに、モータ7を回転体12の下に配置し、モータ7と回転体12とを直接連結させてもよい。
【0011】
装置本体2の内部には、モータ7の駆動により、遊星歯車16に公転と自転を生じさせ、載置台3を駆動させる遊星歯車機構11が支持板8上に設けられている。
【0012】
図2は、図1に示す遊星歯車機構11の拡大図である。また、図3は、図1に示す遊星歯車機構11の平面図である。図2及び図3に示すように、遊星歯車機構11は、支持板8に固定される太陽内歯車15と、上記の入力軸13が連結され太陽内歯車15の内部において回転可能に支持される回転体12と、太陽内歯車15と噛合され回転体12に回転可能に支持される遊星歯車16とを備える。
【0013】
回転体12は円板の形状を有し、回転体12の下面側の中心に入力軸13が連結されている。回転体12と太陽内歯車15は同心状に配置され、回転体12は、太陽内歯車15の中央部に設けられた軸受17aを介して、回転可能に支持されている。
【0014】
遊星歯車16の底面の中心には、支持軸16aが連結されている。これにより、遊星歯車16は、回転体12に、入力軸13に対して偏心して回転体12に設けられた軸受17bを介して回転可能に支持される。また、遊星歯車16の上部には、載置台3を支持するための支持軸16bが、支持軸16aに対して偏心して連結されている。
【0015】
図1に示すように、載置台3は、上面側に乳鉢4を収容する窪み3aが形成されている。この窪み3aの底部には、複数の係合突起3bが設けられている。乳鉢4は、この係合突起3bに嵌合するように凹部4aが形成され、乳鉢4の中心は載置台3の中心と一致する。載置台3の窪み3aと係合突起3bが、乳鉢4と凹部4aにそれぞれ嵌合し、乳鉢4は、載置台3と一体的に回転するように、載置台3に収容される。
【0016】
また、載置台3は、底面に下方突出部3cを有する。下方突出部3cの内部の中央部には、軸受17cが設けられている。これにより、載置台3は、遊星歯車16の支持軸16bによって、軸受17cを介して回転可能に支持される。
【0017】
図1に示すように、支柱5は、L字型の形状を有し、載置された乳鉢4の上部まで伸びる。支柱5には、ネジ18が螺合するようにネジ孔5aが形成され、装置本体2から突出する突出板2aには、上下方向に延びる長孔2bが形成されている。そして、ネジ18を、縦孔2bに挿入し、ネジ孔5aに螺合させることにより、支柱5は、高さ調整可能に突出板2aに固定されている。
【0018】
図1に示すように、乳棒6には、軸状部材19が連結されている。また、軸状部材19には支柱5の先端付近に形成された貫通孔5bに、上下動可能に挿入されており、上部には抜け止めの係止部20が設けられている。乳棒6は乳鉢4内で支持されており、また、乳棒6の中心軸は、入力軸13と一致している。そして、乳棒6と支柱5との間には、軸状部材19のまわりを巻きつけるようにバネ21が介装されている。
【0019】
装置本体2の上部には、モータ7の回転方向(正方向、逆方向)、回転速度及び回転時間などを設定する操作パネル22が設けられている。そして、この操作パネル22の設定により、装置本体2の内部にある制御手段(図示せず)がモータ7を制御し、自動で乳鉢4を動作させるように構成されている。なお、他の実施形態として、操作パネル22は、モータ7の回転速度や回転時間を調整できるツマミなどアナログタイプの入力手段であってもよい。
【0020】
次に、このような構成を有する粉砕装置1の作動を説明する。被粉砕物を入れた乳鉢4を載置台3に収納させる。そして、バネ21の付勢力により乳棒6の先端が乳鉢4の底面を押圧するように、乳棒6の高さ調整を行う。
【0021】
この後、操作パネル22を操作し、モータ7を駆動させると出力軸9が回転し、プーリー10a、10b及びタイミングベルト14を介して、入力軸13が固定された回転体12が、入力軸13を中心に回転する。そして、回転体12の回転により、遊星歯車16が、太陽内歯車15の内周面に沿って、公転及び自転をし、乳鉢4が動く。
【0022】
乳棒6は、上下動可能であるため、乳鉢4が動いても乳棒6の上下動により、乳棒6の先端部が、乳鉢4の底面を押圧しながら摺動することができ、乳鉢4はスムーズに動くことができる。そして、乳鉢4が動くことによって、乳鉢4に入れられた被粉砕物は、乳棒6により押圧され、次々に粉砕される。
【0023】
また、粉砕された被粉砕物が、乳鉢4の壁面に押しやられ、付着しても、乳鉢4が動くことにより、付着した被粉砕物は壁面から振り落とされる。これにより、振り落とされた被粉砕物を、さらに乳棒6によって粉砕することができ、被粉砕物を確実に粉砕することができる。
【0024】
本実施形態の、乳鉢4の動きを図4に示す。回転体12がR1方向に回転すると、遊星歯車16は、R1方向に公転し、またR2方向に自転する。そして、乳鉢4の中心C1が、遊星歯車16の中心C2に対して偏心しているため、遊星歯車16の公転及び自転により、乳鉢4の中心C1は、軌跡Lを描く。これにより、乳鉢4を、一定の円軌道ではなく星の形のような軌跡に沿って、様々な方向に動かせることができるため、乳鉢4の壁面に付着した被粉砕物を全体的に振り落とすことができる。
【0025】
また、図2にように載置台3は回転体12に軸受17cを介して回転可能に支持されているため、遊星歯車16がR2方向に自転しても、載置台3は軸受17cによって空回りし、乳鉢4は自転しない。これにより、乳鉢4は自転せずに軌跡Lを移動し、乳鉢4の底面全体にわたって、乳棒6を接触させることができ、被粉砕物を確実に粉砕することができる。
【0026】
さらに、操作パネル22により、モータ7を一定時間ごとに正回転、逆回転切り替わるように設定しておくと、乳鉢4の移動方向が、一定時間経過ごと急激に正反対に変わり、この衝撃により、壁面に付着した被粉砕物を効果的に振り落とすことができる。
【0027】
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明の具体的な態様は、上記実施形態に限定されない。例えば、遊星歯車機構11の他の構成として、遊星歯車16が回転体12と噛合され、回転体12と太陽内歯車15との間に遊星歯車16が介在する遊星歯車機構11であってもよい。この構成においても、上記実施形態と同様に、遊星歯車16は、太陽内歯車15の内周面に沿って公転及び自転が可能である。
【0028】
また、上記実施形態では、載置台3が遊星歯車16の中心に対して偏心するように、遊星歯車16の上部に、載置台3を支持するための支持軸16bが、支持軸16aに対して偏心して連結されているが、載置台3が偏心しないように、支持軸16bを、支持軸16aの線上において連結させてもよい。
【0029】
また、上記実施形態では、載置台3が回転体12に回転可能に支持されるように、載置台3の下方突出部3cの内部の中央部に、軸受17cが設けられているが、載置台3が回転体12に固定されるように、軸受17cを設けず、遊星歯車16の支持軸16bを下方突出部3cに直接連結させてもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 粉砕装置
2 装置本体
2a 突出板
2b 長孔
3 載置台
3a 窪み
3b 係合突起
3c 下方突出部
4 乳鉢
4a 凹部
5 支柱
5a ネジ孔
5b 貫通孔
6 乳棒
7 モータ
8 支持板
9 出力軸
10a、10b プーリー
11 遊星歯車機構
12 回転体
13 入力軸
14 タイミングベルト
15 太陽内歯車
16 遊星歯車
16a、16b 支持軸
17a、17b、17c 軸受
18 ネジ
19 軸上部材
20 係止部
21 バネ
22 操作パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体と、
前記装置本体の上部に設けられた載置台に収容される乳鉢と、
前記装置本体に支柱を介して前記乳鉢内で支持される乳棒とを備える粉砕装置であって、
前記装置本体は、前記乳棒を固定した状態で前記載置台を駆動させる駆動手段を備える粉砕装置。
【請求項2】
前記駆動手段は、
遊星歯車機構を備え、
前記遊星歯車機構は、
前記装置本体に固定される太陽内歯車と
前記太陽内歯車と同心状に配置され、モータにより回転駆動される回転体と、
前記太陽内歯車と噛合され、前記回転体の回転により、前記太陽内歯車の内周面に沿って、公転及び自転可能な遊星歯車とを備え、
前記載置台は、前記遊星歯車に支持される請求項1に記載の粉砕装置。
【請求項3】
前記遊星歯車は、前記回転体の中心に対して偏心し、前記回転体に回転可能に支持される請求項2に記載の粉砕装置。
【請求項4】
前記遊星歯車は、前記回転体と噛合される請求項2に記載の粉砕装置。
【請求項5】
前記乳鉢は、前期遊星歯車の中心に対して偏心する請求項2から4のいずれかに記載の粉砕装置。
【請求項6】
前記載置台は、前記遊星歯車に回転可能に支持される請求項2から5のいずれかに記載の粉砕装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−72855(P2011−72855A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−224096(P2009−224096)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(397069868)アズワン株式会社 (23)
【Fターム(参考)】