説明

粉砕装置

【課題】充分に加速された高圧エア中に粉体を分散させ、その分散状態で衝突板に衝突させて粉体を効果的に粉砕できる粉砕装置を提供する。
【解決手段】エア入口8の下流側にスロート部9が形成され、そのスロート部9の下流側に先拡がりの円錐形ディフューザ部10が設けられた入口側ノズル部材6と先狭まりのテーパ状ノズル孔13を有する出口側ノズル部材12との間に混合空間14を設け、混合空間14の外周部に粉体ホッパ18の下部出口18aを連通する。エア入口8に高圧エアを供給し、スロート部9において音速域まで加速し、その高圧エアが混合空間14から出口側ノズル部材12のノズル孔13に噴射される際、エジェクタ作用により粉体ホッパ18内の粉体を混合空間14内に吸引流入させて高圧エア中に分散させ、その分散状態の粉体を出口側ノズル部材12のノズル孔13から前方に配置された衝突板15に向けて噴射して、衝突により粉体を粉砕する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、希土類磁石、医薬品、農薬、化学物質等の各種の粉体を粉砕処理して細粉化する粉砕装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図3に示すように、高圧エア源21からインジェクションフィーダ22に高圧エアを供給し、その高圧エアのエジェクタ作用により粉体定量供給機23から定量供給される粉体をインジェクションフィーダ22内に吸引して気流式分級機24に搬送し、その気流式分級機24において粉体を遠心分離により粗粉と微粉とに分級し、製品としての微粉を微粉排出口25から取り出すようにした分級プラントにおいては、普通、気流式分級機24の粗粉排出口26から排出される粗粉を粉砕装置27内に導入して粉砕し、その粉砕された粉体を循環路28から気流式分級機24内に循環させて、再度分級処理を行うようにしている。
【0003】
上記分級プラントに採用される粉砕装置として、特許文献1に記載されたものが従来から知られている。この粉砕装置においては、図4に示すように、粉砕ケーシング31に形成された粉砕室32内に衝突板33を設け、その衝突板33にラバール管からなるエア噴射ノズル34の噴射口を対向配置し、そのエア噴射ノズル34に形成されたディフューザ部35に粉体ホッパ36の下部出口36aを連通し、上記エア噴射ノズル34に供給される高圧エアを上記ディフューザ部35で加速し、そのディフューザ部35でのエジェクタ作用により、粉体ホッパ36内の粉体をディフューザ部35に吸引して高圧エアと混合し、その固気混合流体を衝突板33に向けて噴射し、上記衝突板33に対する衝突、および衝突板33から径方向外方に飛散して粉砕室32の内周に設けられたライナ38に対する衝突によって粉体(粗粉)を粉砕処理するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−39779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来の粉砕装置においては、ディフューザ部35の下側部中程位置で開口する1か所の供給口37からディフューザ部35内に粉体を吸引するようにしているため、ディフューザ部35内の供給口37の形成部位と、それより180°周方向に位置がずれた反対の位置とで粉体の分布量に大きな差が生じ、粉体は、充分に加速されない偏析状態で噴射されて衝突板33に衝突することになり、粉体を効果的に粉砕処理することができず、その粉砕効率を高める上において改善すべき点が残されていた。
【0006】
この発明の課題は、充分に加速された高圧エア中にできるだけ均一に粉体を分散させ、その分散状態で衝突板に衝突させるようにして粉体の粉砕効率を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、この発明においては、エア入口の下流側にスロート部が形成され、そのスロート部の下流側に先拡がりの円錐形ディフューザ部が設けられた入口側ノズル部材と、先狭まりのテーパ状絞り孔からなるノズル孔を有し、そのノズル孔が前記入口側ノズル部材の軸心上に配置されるようにしてその入口側ノズル部材の前方側に設けられた出口側ノズル部材と、その出口側ノズル部材のノズル孔の前側方に対向配置された衝突板とからなり、前記入口側ノズル部材のエア噴射口と前記出口側ノズル部材の対向部間に密閉された円筒形状の混合空間を設け、その混合空間の外周上部に粉体ホッパの下部出口を連通させた構成を採用したのである。
【0008】
上記の構成からなる粉砕装置において、入口側ノズル部材のエア入口に高圧エアを供給すると、その高圧エアはスロート部において圧力が高められ、ディフューザ部において加速されて、入口側ノズル部材の先端から噴射される。
【0009】
このとき、ディフューザ部のテーパ状内周面には従来のような開口がなく、軸方向の全長にわたって滑らかであるため、高圧エアは、乱れを生じることなく充分に加速された状態で出口側ノズル部材のノズル孔に向けて噴射される。その際、高圧エアは混合空間の中心部を高速度で直進するため、その高圧エアの流動により混合空間内のエアが高圧エアに引き込まれて外周部が減圧され、その減圧によるエジェクタ作用により粉体ホッパ内の粉体が混合空間内に吸引されて浮遊する。その浮遊する粉体は直進する高圧エアの全周囲からその高圧エア中に混入し、分散された状態で出口側ノズル部材のノズル孔内に至り、そのノズル孔から衝突板に向けて噴射される。
【0010】
このように、粉体は充分に加速された高圧エア中にほぼ均一に分散する状態で衝突板に向けて噴射されるため、その衝突板に対する衝突によって効果的に粉砕処理されることになる。また、均一に分散する状態で衝突板に衝突するため、衝突板の摩耗も少ない。
【発明の効果】
【0011】
この発明においては、上記のように、入口側ノズル部材のエア入口に供給された高圧エアをディフューザ部において乱れを生じさせることなく充分に加速することができ、その加速された高圧エア中に粉体をほぼ均一に分散させた状態で衝突板に衝突させることができるため、粉体を極めて効果的に粉砕処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明に係る粉砕装置の実施の形態を示す縦断面図
【図2】図1の一部を拡大して示す断面図
【図3】分級プラントを示す概略図
【図4】従来の粉砕装置を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の実施の形態を図1および図2に基づいて説明する。図示のように、粉砕ケーシング1には、その一端面から水平方向に向くノズル取付孔2と、そのノズル取付孔2に連通して粉砕ケーシング1の他端面で開口する粉砕室3とが形成されている。
【0014】
粉砕ケーシング1は、粉砕室3において前部粉砕ケーシング1aと後部粉砕ケーシング1bとに分割され、その分割面間に衝突板ホルダ4が組み込まれている。
【0015】
衝突板ホルダ4は、径の異なる二つの円板4a、4bを複数の放射状配置のリブ4cにより連結した構成とされ、その大径側の円板4aが前部粉砕ケーシング1aと後部粉砕ケーシング1bの分割面間に配置され、図示省略したボルトの締め付けによって前部粉砕ケーシング1a、後部粉砕ケーシング1bおよび衝突板ホルダ4のそれぞれが結合一体化されている。
【0016】
前部粉砕ケーシング1aに形成されたノズル取付孔2には入口側ノズル部材6が嵌合され、前部粉砕ケーシング1aの一側面に取付けられたホース連結用ソケット7によって抜止めされている。
【0017】
入口側ノズル部材6は、ラバール管からなり、エア入口8の下流側に小径のスロート部9が設けられ、そのスロート部9の下流側に先拡がりのテーパ状のディフューザ部10が設けられている。
【0018】
前部粉砕ケーシング1aの粉砕室3は、円筒状とされ、その内周面にはライナ11が内張りされ、そのライナ11と粉砕室3の閉塞端面間に出口側ノズル部材12が組み込まれている。
【0019】
出口側ノズル部材12は円盤状をなし、その中心部には先細りの絞り孔からなるノズル孔13が形成されている。出口側ノズル部材12は、そのノズル孔13が入口側ノズル部材6の軸心上に配置される組込みとされ、その出口側ノズル部材12と入口側ノズル部材6との間に円筒形状の混合空間14が設けられている。
【0020】
ここで、ディフューザ部10の混合空間14側に位置する先端開口の口径をa、ノズル孔13の混合空間14側に位置する入口の口径をb、粉砕室3側の出口側の口径をcとしたとき、それぞれの開口の相互には、a≦c≦bの関係が成り立つ関係とされている。
【0021】
衝突板ホルダ4には、出口側ノズル部材12と対向する面の中央に衝突板15が設けられている。衝突板15は円盤状をなし、出口側ノズル部材12に対する対向面に円錐形の粉体拡散用突起部16が設けられている。
【0022】
ここで、突起部16は、出口側ノズル部材12におけるノズル孔13の出口内に先端が位置する配置とされているが、その先端位置は、被粉砕物の性状や必要な粒径等に応じて出口側ノズル部材12により近づけたり、あるいは、遠ざけたりと、適切位置に配置される。
【0023】
前部粉砕ケーシング1aの上面には粉体ホッパ18の下面が支持され、その粉体ホッパ18の下部出口18aは前部粉砕ケーシング1aに形成された傾斜状の通路19を介して混合空間14の外周部と連通しており、上記通路19はディフューザ部10から噴射される超音速気流の中心軸の直上位置とされている。
【0024】
実施の形態で示す粉砕装置は上記の構造からなり、入口側ノズル部材6のエア入口8に高圧エアを供給すると、その高圧エアはスロート部9からディフューザ部10に流れて、先端の噴射口から噴射される。
【0025】
この場合、高圧エアはスロート部9において圧力が高められ、ディフューザ部10において加速される。この時、ディフューザ部10のテーパ状内周面は軸方向に全長にわたって滑らかであるため、高圧エアは、乱れを生じることなく音速域まで加速されて、ディフューザ部10の先端の噴射口から出口側ノズル部材12のノズル孔13に向けて噴射される。
【0026】
その際、高圧エアは混合空間14の中心部を高速度で直進するため、その高圧エアの流動によって混合空間14内の外周部が減圧され、エジェクタ作用により粉体ホッパ18内の粉体が混合空間14内に吸引されて、その混合空間14内で浮遊する。そして、その混合空間14内を直進する高圧エアの周囲からその高圧エア中に混入して、ほぼ均一に分散された状態で出口側ノズル部材12のノズル孔13内に至り、そのノズル孔13から衝突板15に向けて噴射される。
【0027】
このように、粉体は、充分に加速された高圧エア中にほぼ均一に分散する状態で衝突板15に向けて噴射されるため、その衝突板15に対する衝突によって効果的に一次粉砕されることになる。
【0028】
一次粉砕された粉砕物は、衝突板15の径方向外方に飛散してライナ11の内周面に衝突し、そのライナ11に対する衝突により二次粉砕される。その粉砕物は後部粉砕ケーシング1bの粉砕室3内に流入して、その粉砕室3の開口端から排出される。
【0029】
上述のように、粉体は均一に分散した状態で衝突するので、衝突板15やライナ11の摩耗が少なく、粉砕効率も高いものとなる。
【0030】
実施の形態における粉砕装置においては、入口側ノズル部材6と出口側ノズル部材12の対向部間に混合空間14を形成し、その混合空間14において高圧エアに粉体を混合させるようにしているため、入口側ノズル部材6には、図4で示されるような粉体ホッパの下部出口とディフューザ部を連通させる通路を形成する必要がなくなり、入口側ノズル部材6として、従来のエア噴射ノズル34より軸方向長さの短いラバール管を採用することができる。そのようなラバール管の採用によって、入口側ノズル部材6のスロート部9と衝突板15までの距離Lを図4に示す従来の粉砕装置におけるスロート部と衝突板までの距離より短くすることができる。また、ディフューザ部10には開口がなく、全内周面が連続した滑らかな面であるため、短い距離でも充分な加速が得られる。
【符号の説明】
【0031】
6 入口側ノズル部材
8 エア入口
9 スロート部
10 ディフューザ部
12 出口側ノズル部材
13 ノズル孔
14 混合空間
15 衝突板
16 突起部
18 粉体ホッパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エア入口の下流側にスロート部が形成され、そのスロート部の下流側に先拡がりの円錐形ディフューザ部が設けられた入口側ノズル部材と、先狭まりのテーパ状絞り孔からなるノズル孔を有し、そのノズル孔が前記入口側ノズル部材の軸心上に配置されるようにしてその入口側ノズル部材の前方側に設けられた出口側ノズル部材と、その出口側ノズル部材のノズル孔の前側方に対向配置された衝突板とからなり、前記入口側ノズル部材のエア噴射口と前記出口側ノズル部材の対向部間に密閉された円筒形状の混合空間を設け、その混合空間の外周上部に粉体ホッパの下部出口を連通させた粉砕装置。
【請求項2】
前記衝突板が、出口側ノズル部材と対向する面に円錐形の粉体拡散用突起部を有してなる請求項1に記載の粉砕装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−161722(P2012−161722A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22762(P2011−22762)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000229450)日本ニューマチック工業株式会社 (44)
【Fターム(参考)】