説明

粉粒体の固形化装置

【課題】集塵機によって集塵した粉粒体を圧縮して固形化する際に、装置外部への飛散を防ぐ。
【解決手段】粉粒体の固形化装置Aは、金属板からなる被切断材を熱化学的に切断したときに生じるヒュームを吸引して該ヒュームに含まれた粉粒体を集塵する集塵機Bと、シュート1と、両端部2b、2cが開放され受入口2aを排出口1aに接続して水平方向に配置された成形筒体2と、成形筒体2の内部に往復移動可能に配置され内周面2dとの間に間隙10を形成し移動に伴って外周面3bが受入口2aと対向又は開放すると共に粉粒体を固形化する成形部材3と、成形部材3を駆動する成形部材駆動シリンダー4と、成形筒体2の端面2cと接触して閉鎖する開閉部材5と、開閉部材5を駆動する開閉部材駆動シリンダー7と、成形部材3の先端面3aを清掃する清掃部材7と、清掃部材7を駆動する清掃部材駆動シリンダー8を有して構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属板を熱化学的に切断したときに発生するヒュームを構成する粉粒体を集塵した集塵機から廃棄する際に、該粉粒体を固形化することで容積を小さくする粉粒体の固形化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鋼板やステンレス鋼板をガス切断やプラズマ切断或いはレーザ切断等の熱化学的な切断を行ったとき、微少な粉粒体を含んだヒュームが発生することが知られている。特に、鋼板をプラズマ切断したときには大量のヒュームが発生して作業環境の劣化を招く、このため、集塵機によって切断部位からヒュームを含んだ大気を吸引して粉粒体を分離し、分離した粉粒体を定期的に排除することが行われている。
【0003】
集塵機によって吸引されたヒュームから分離した粉粒体は、集塵機の下方に配置されたホッパーに収容され、定期的に排出される。特に、切断装置に付属して設置された集塵機の場合、ホッパーに収容された粉粒体を排出する作業は作業員によって行われる。即ち、作業員が、ホッパーの排出口に空の袋を取り付けて保持した状態でホッパーの排出口を開放して収容された粉粒体を自由落下させることで行われる。
【0004】
例えばガス切断やプラズマ切断によって発生した粉粒体の中心的な粒度は約1〜20ミクロン程度であるため、ホッパーから袋に排出する際に落下に伴って舞い上がり、袋から外に出てしまうという問題や、袋を保持している作業員に粉粒体が降りかかるなど、作業環境が劣化するという問題がある。また、粉粒体はかさ比重が小さく、廃棄時の容積が大きくなるため、集塵機から粉粒体を廃棄する作業を頻繁に行うことが必要となり、廃棄作業が容易ではないという問題が生じる。
【0005】
このような粉粒体を固形化するために幾つかの技術が提案されている。例えば特許文献1には、ヒュームから分離した微粉末をホッパーに貯留しておき、この微粉末をスクリューコンベアによって縦型に配置された成形室に搬送して供給し、成形室に供給された微粉末を加圧して減容させるように構成したヒューム処理装置が記載されている。この発明では、粉塵の舞い上がりを防ぐと共に微粉末を1/7〜1/11に減容することができる。
【0006】
また、特許文献2には、ホッパーに収容された粉粒体をシュートを介して円筒体からなる固形化部材に供給し、供給された粉粒体を圧縮部材によって圧縮することで固形化し得るように構成された固形化装置が記載されている。この発明では、固形化部材の一方側の端部に形成された開放部を開閉部材、或いは清掃部材によって閉鎖した状態で、圧縮部材を駆動することで粉粒体を固形化することができる。
【0007】
また、特許文献3には、ホッパーに収容した紙粉を圧縮成形して処理する装置が記載されている。この処理装置では、ホッパーの底部に水平状に設けたプレスシリンダーの内部に往復移動可能なプレスラムを収容すると共に、端部を外周面に溝を形成した栓体によって開閉可能に構成しておき、ホッパーに収容した紙粉に粘着剤を吹き付けて混合しながら、プレスラムと栓体を駆動して連続的に紙粉を圧縮成型し、且つプレスシリンダーから排出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO2007/049393A1明細書
【特許文献2】特開2008−194723号公報
【特許文献3】特開昭62−259700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載された処理装置では微粉末を合理的に処理することができる。しかし、ホッパーから成形室に至る間にスクリューコンベアを配置することが必要であり、構造が複雑になる虞がある。
【0010】
特許文献2に記載された固形化装置では、特許文献1に記載された処理装置に比較して構造が簡単であるものの、固形化部材に収容された粉粒体を圧縮部材によって圧縮する際に該固形化部材の内部圧力が上昇し、この影響を受けて固形化部材の開放部を閉鎖する開閉部材、清掃部材が離隔して隙間が形成され、この隙間から粉粒体が噴出する。このため、固形化部材の端部の近傍に一端が集塵機に接続されたホースを配置してあるが、このホースであっても完全ではなく、周囲が飛散した粉粒体によって汚染されてしまうという問題がある。
【0011】
特許文献3に記載された処理装置では、栓体の外周面に通気用の溝が形成されているため、プレスシリンダーに供給された紙粉をプレスラムによって圧縮する際に、該プレスシリンダー内の空気が前記溝を通して排出されるため、内部圧力が上昇することはない。しかし、空気の排出に伴って紙粉も排出されることとなり、周囲を汚染する虞がある。
【0012】
本発明の目的は、集塵機によって集塵した粉粒体を圧縮して固形化する際に、装置外部への飛散を防ぐことができる粉粒体の固形化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために本発明に係る粉粒体の固形化装置は、金属板からなる被切断材を熱化学的に切断したときに生じるヒュームを吸引して該ヒュームに含まれた粉粒体を集塵する集塵機と、前記集塵機のホッパーに接続され底部に所定の形状を持った排出口を有するシュートと、周壁に前記シュートの排出口と略等しい形状を持った受入口を有し且つ両端部が開放された筒体からなり、該受入口を前記シュートの排出口に接続して水平方向に配置された成形筒体と、前記成形筒体の内部に該成形筒体の一方の端部側から他方の端部側へと往復移動可能に配置され、一方の端部側へと移動して先端が該成形筒体の一方の端部に到達したとき外周面が前記受入口と対向し他方の端部側へと移動したとき前記受入口を開放し得る長さと、該成形筒体の内周面との間に前記受入口を介して前記ホッパーと連通し且つ粉粒体が流通し得る隙間を形成する太さと、を有し、該成形筒体の他方の端部側へと移動する際に該成形筒体に受け入れた粉粒体を圧縮して固形化する成形部材と、前記成形筒体の一方の端部に配置され、前記成形部材を往復移動させる成形部材駆動シリンダーと、前記成形筒体の他方の端部と対向し且つ該成形筒体の軸心に沿って往復移動可能に配置され、該成形筒体の他方の端部と対向する対向面にシール部材が設けられており、該対向面が成型筒体の他方の端部の面と接触したとき前記シール部材が該端部の面に於ける開放部をシールして閉鎖する開閉部材と、前記成形部材駆動シリンダーよりも大きい出力を有し、且つ前記開閉部材を往復移動させる開閉部材駆動シリンダーと、前記成形筒体の他方の端部側に配置され、前記成形部材の先端面に沿って往復移動して該先端面を清掃する清掃部材と、前記清掃部材を往復移動させる清掃部材駆動シリンダーと、を有し、前記開閉部材駆動シリンダーを駆動して前記開閉部材を前記成形筒体の他方の端部の面に圧接させたとき、該他方の端部に於ける開放部を気密状態に閉鎖し、前記成形部材駆動シリンダーを駆動して前記成形部材を前記成形筒体の一方の端部側に移動させて該成形筒体の受入口を開放することで前記ホッパーに収容されている粉粒体を前記シュートを介して受け入れた後、該成形部材駆動シリンダーを駆動して該成形部材を該成形筒体の他方の端部側に移動させ、該成形部材を該成形筒体の受入口に対向させると共に受け入れた粉粒体を圧縮して固形化し、その際に前記成形筒体と前記成形部材との隙間に前記ホッパーの圧力を作用させて該隙間に存在する粉粒体を該ホッパーに吸引させるように構成したものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る粉粒体の固形化装置(以下、単に「固形化装置」という)では、ホッパーに収容された粉粒体をシュートの排出口、筒体からなる成形筒体の受入口を介して該成形筒体に受け入れ、成形筒体の他方の端部の開放部を開閉部材によって閉鎖した後、成形部材駆動シリンダーによって成形部材を駆動することで、粉粒体を圧縮して固形化することができる。
【0015】
成形部材によって粉粒体を圧縮する際に、開閉部材を成形筒体の他方の端部に圧接させている開閉部材駆動シリンダーの出力が成形部材駆動シリンダーの出力よりも大きいため、成形筒体の内部圧力の上昇に関わらず、開閉部材を確実に圧接させて閉鎖状態を保持することができる。このため、成形筒体と開閉部材との圧接部位に隙間ができることがなく、粉粒体が噴出することがない。
【0016】
特に、成形筒体の内周面と成形部材との間にはホッパーに接続され且つ粉粒体が流通し得る隙間が形成されているため、該成形筒体の内部にはホッパーの圧力(例えば水柱200mm程度の負圧)が作用している。このため、成形筒体の内部で成形部材が他方の端部側へと移動したときに生じる内部容積の減少に伴って、空気は前記隙間を通してホッパーに流れることとなり、内部の圧力が大幅に上昇することがない。そして、前記空気の流れに伴って粉粒体も流れることとなり、外部への噴出を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】固形化装置の全体構成を説明する模式図である。
【図2】固形化装置の要部の構成を説明する模式図である。
【図3】成形筒体と成形部材との間に形成される隙間を説明する図である。
【図4】粉粒体を圧縮して固形化する手順を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る固形化装置の構成について図を用いて説明する。
【0019】
図1、2に於いて、固形化装置Aは、鋼板やステンレス鋼板を含む金属板からなる被切断材をガス切断やプラズマ切断或いはレーザ切断等の熱化学的に切断したときに生じるヒュームを吸引して該ヒュームに含まれた粉粒体を集塵する集塵機Bと、集塵機Bのホッパーに接続されたシュート1と、筒体からなりシュート1に接続して水平方向に配置された成形筒体2と、成形筒体2の内部に往復移動可能に配置された成形部材3と、成形部材3を往復移動させる成形部材駆動シリンダー4と、成形筒体2の他方の端部と対向して往復移動可能に配置された開閉部材5と、開閉部材5を往復移動させる開閉部材駆動シリンダー6と、成形筒体2の他方の端部側の先端面に沿って往復移動して該先端面を清掃する清掃部材7と、清掃部材7を往復移動させる清掃部材駆動シリンダー8と、を有して構成されている。
【0020】
集塵機Bは市販されている標準的な構造を有しており、ヒューム切断材を切断したときに発生するヒュームを吸引し、吸引したヒュームから粉粒体を分離してホッパーに収容し得るように構成されている。この集塵機Bには大気圧よりも低い吸引圧力が作用しており、この吸引圧力の作用によってヒュームを吸引している。そして、集塵機Bを構成するホッパーには分離された粉粒体が貯留され、且つ約200mm水柱程度の負圧が作用している。
【0021】
集塵機Bを構成するホッパーに接続されたシュート1は、ホッパーに貯留されている粉粒体を成形筒体2に排出する際の案内をするものであり、底部に排出口1aが形成され、上部には集塵機Bに固定されるフランジ1bが形成されている。排出口1aの形状は特に限定するものではなく、成形筒体2の太さや長さ等の条件に対応した所定の形状を有している。本実施例では、排出口1aは略長方形に形成されている。このように、集塵機Bを構成するホッパーの底部にシュート1を接続することによって、ホッパーに貯留された粉粒体の移動方向を案内して円滑に成形筒体2に排出することが可能となる。
【0022】
成形筒体2はシュート1を介して排出された粉粒体を受け入れると共に、受け入れた粉粒体を圧縮して固形化する際の成形型としての機能を有するものである。このため、成形筒体2は、周壁に前記シュート1の排出口1aと略等しい形状を持った受入口2aが形成されると共に、両端部(端面ともいう)2b、2cが開放された筒体によって形成されている。また、成形筒体2の内部には内周面2dによって成形室2eが形成されており、内周面2dの端部2c側は該端部2cに向けて径が拡大するテーパ面2fが形成されている。
【0023】
そして、受入口2aをシュート1の排出口1aに対応させると共に、軸心を水平方向に配置してシュート1に気密を保持して接続されている。このため、内部に形成された成形室2eは受入口2a、排出口1aを介してホッパーと連通しており、該成形室2eにはホッパー内に作用している負圧が作用することとなる。
【0024】
成形筒体2は筒体であれば良く、円筒体であるか角筒体であるかを限定するものではない。本実施例では、成形筒体2をシュート1とは気密性を保持して接続されるため、該成形筒体2を角筒体として形成し、シュート1に対し図示しないパッキンを介して接続することで気密性を保持し得るように構成している。
【0025】
成形筒体2の受入口2aは、該受入口2aの成形筒体2の軸方向に沿った寸法(長さ)と、受入口2aの端部から成形筒体2の端部2cまでの寸法が略等しくなる位置に形成されている。従って、成形筒体2の全長は受入口2aの長さの2倍よりも大きい寸法を有している。本実施例では、受入口2aの長さは100mmに設定されており、成形筒体2の全長は220mmに設定されている。しかし、この寸法に限定するものではないことは当然である。
【0026】
また、成形筒体2の内部に形成された成形室2eの径(内周面2dの径)は特に限定するものではない。本実施例では、内周面2dの径は約40mmに設定されており、受入口2aの成形筒体2の軸方向に直交する方向の寸法(幅寸法)も約40mmに設定されている。
【0027】
また、成形筒体2の端部2c側の内周面2dにテーパ面2fが形成されている。このテーパ面2fのテーパ角度は特に限定するものではなく、端面2cに向けて径が拡大することで、固形化した粉粒体が円滑に排除し得るものであれば良い。このため、本実施例ではテーパ面2fのテーパは1/50に設定されている。
【0028】
成形部材3は成形筒体2の内部に形成された成形室2eに対し、端部2b側から端部2c側へと往復移動し得るように配置され、端部2b側の移動限に達したとき、成形筒体2に形成された受入口2aを開放してホッパーに貯留されている粉粒体をシュート1を介して受け入れ、端部2c側に移動するのに伴って受入口2aと対向しつつ、受け入れた粉粒体を圧縮して固形化する機能を有するものである。
【0029】
このため、成形部材3は先端(先端面ともいう)3aが成形筒体2の端部2cに到達したときに外周面3bが受入口2aと対向し得る長さと、外周面3bと成形筒体2の内周面2dとの間に粉粒体が流通し得る程度の隙間10(図3参照)を形成し得る程度の太さを有する丸棒状の部材として形成されている。
【0030】
本実施例では、成形部材3は長さが約220mm、太さが約38mmの寸法を持って形成されており、これにより、成形部材3の外周面3bと成形筒体2の内周面2dとの間には約1mmの隙間10が形成されている。
【0031】
上記の如く、成形部材3の外周面3bと成形筒体2の内周面2dとの間に形成された約1mmの隙間10は、成形室2eに受け入れた粉粒体を移動する成形部材3によって圧縮する際に、この移動及び圧縮に伴う内部空気の流通と、該空気の流通に伴って一部の粉粒体が流通するのに略充分である。しかし、隙間10の寸法を1mmに限定するものではなく、成型部材3による圧縮に伴って粉粒体が円滑に流通し得る寸法であれば良い。
【0032】
上記隙間10は、成形筒体2に形成された成形室2eの全長にわたって形成される。このため、成形部材3が受入口2aに対向したとき、隙間10は受入口2aに連通することとなる。即ち、隙間10は受入口2a、排出口1a、シュート1を介してホッパーと連通する。従って、ホッパーに作用している負圧は隙間10にも作用することとなり、該隙間10に於ける空気及び粉粒体の流通を円滑にすることが可能となる。
【0033】
成形部材駆動シリンダー4は、成形部材3を駆動して成形筒体2の成形室2eの内部で端部2b側から端部2c側へと往復移動させるものである。このため、成形部材駆動シリンダー4は成形筒体2の端部2b側に配置されている。本実施例では、ストロークが200mmのエアシリンダーによって構成されている。
【0034】
開閉部材5は、成形筒体2の内部に形成された成形室2eの端面2cに於ける開放部を開閉する機能を有するものである。そして、前記開放部を閉鎖したときに該開放部を気密に保持させ、且つ開放したときに清掃部材7の動作範囲を回避し得るように構成されている。
【0035】
このため、開閉部材5は成形筒体2の軸心と略一致した軸心を有し且つこの軸心に沿って往復移動し得るように構成されたブロック状に形成されている。そして、成形筒体2の端面2cと対向する面5aには該端面2cに於ける開放部の径よりも充分に大きい径を持ったリング状の溝(図示せず)が形成され、この溝にシール部材となるOリング11が嵌め込まれている。このように、開閉部材5は成形筒体2の軸心に沿って往復移動して端面2cに対し、接触、離隔して開閉し得るように構成されるため、Oリング11の消耗を防いで安定した気密保持を実現することが可能である。
【0036】
特に、開閉部材5の外形寸法を限定するものではないが、成形筒体2の端面2cの外形寸法よりも小さいことが好ましい。このように、開閉部材5の外形寸法を端面2cの外形寸法よりも小さくすることによって、この端面2cに於ける成形筒体2の外周部位に清掃部材7を接触させた状態で配置することが可能となる。
【0037】
開閉部材駆動シリンダー6は、開閉部材5を駆動して成形筒体2の端面2cに圧接させて該端面2cに形成されている開放部を気密性を保持して閉鎖し、或いは前記開放部を開放させる機能を有するものである。このため、開閉部材駆動シリンダー6は、軸心が成形筒体2の軸心と略一致し得るように水平状態で配置されている。従って、開閉部材駆動シリンダー6を駆動することで、開閉部材5を成形筒体2の軸心と一致した軸心に沿って往復移動する。
【0038】
開閉部材駆動シリンダー6は、成形部材駆動シリンダー4の出力よりも大きい出力となるように構成されている。例えば両駆動シリンダー4、6の出力が等しい場合、粉粒体を圧縮して固形化する過程で成形室2eの内圧が上昇して粉粒体が成形筒体2の端部2cから噴出する虞がある。即ち、開閉部材5を成形筒体2の端部2cに圧接させた状態で、成形部材駆動シリンダー4によって成形部材3を駆動して成形室2eに受け入れた粉粒体を圧縮すると、粉粒体への圧縮に伴って成形室2eの内圧が上昇して開閉部材5の圧接に対抗する。このとき、両駆動シリンダー4、6の出力が等しいと、開閉部材5の成形筒体2に対する圧接力と成形室2eに作用する内圧による力とが平衡し、開閉部材5による端部2cの気密性を保持し得なくなり、結果、粉粒体が噴出することになる。
【0039】
従って、開閉部材駆動シリンダー6の出力を成形部材駆動シリンダー4の出力よりも大きくすることによって、開閉部材5を確実に成形筒体2の端部2cに圧接させておくことが可能となり、充分な気密性を保持することが可能となる。
【0040】
開閉部材駆動シリンダー6の出力を成形部材駆動シリンダー4の出力よりも大きくする構造は特に限定するものではなく、開閉部材駆動シリンダー6のボア径を成形部材駆動シリンダー4のボア径よりも大きく設定することで良い。また、両駆動シリンダー4、6のボア径を同じとし、開閉部材駆動シリンダー6に供給するエア圧力を成形部材駆動シリンダー4に供給するエア圧力よりも高くしても良い。しかし、配管系の構成を簡単にするためには、両駆動シリンダー4、6のボア径を変えることが好ましい。
【0041】
清掃部材7は成形筒体2の成形室2eで固形化された粉粒体の固形物Cを端部2cから排出した後、成形部材3の先端面3aを清掃する機能を有するものである。このため、清掃部材7は成形筒体2の端面2cに沿って上下方向に移動し得るように構成されたブロック状に形成されており、該清掃部材7のエッジによって成形部材3の先端面3aに付着した粉粒体を擦り落として清掃し得るように構成されている。
【0042】
清掃部材駆動シリンダー8は清掃部材7を上下方向に駆動する機能を有するものであり、成形筒体2の端面2cに於ける外形寸法と略等しいか僅かに小さいストロークを持ったエアシリンダーによって構成されている。
【0043】
次に、上記の如く構成された固形化装置Aによって粉粒体を固形化する手順について図4により説明する。予め集塵機Bでは発生したヒュームを吸引して粉粒体を分離する作業を継続しており、分離された粉粒体はホッパーに貯留され、該ホッパーからシュート1側に排出されている。
【0044】
先ず、開閉部材駆動シリンダー6を駆動して開閉部材5を成形筒体2の端面2cに圧接させる。これにより、端面2cに開放する開放部は周囲がOリング11に包囲されることで、気密性が付与される。このため、成形筒体2の成形室2eは端部2cが閉鎖された閉鎖空間を形成することになる。
【0045】
図4(a)に示すように、成形部材駆動シリンダー4を駆動して成形部材3を成形筒体2の端部2b側へ移動させる。成形部材3の端部2b側への移動に伴って、該成形部材3の外周面3bの受入口2aへの対向面積が小さくなり、受入口2aの成形室2eに対する開口面積が大きくなる。そして、成形部材3が端部2b側への移動限に到達したとき、受入口2aには対向する成形部材3の外周面3bがなくなり、該受入口2aは成形室2eに対し完全に開口する。
【0046】
成形筒体2の受入口2aの開放に伴って、成形室2eにホッパーに貯留されシュート1に排出されていた粉粒体15が、排出口1a、受入口2aを経て受け入れられる。このようにして受け入れられた粉粒体15は個々の粉粒が自由な状態で存在しており、成形室2eに於ける空気の流れに応じて流動する。また、成形室2eの内部には、ホッパーに作用する負圧がシュート1を経て作用している。
【0047】
成形部材3は、成形筒体2の端部2b側の移動限に到達した後、成形部材駆動シリンダー4によって端部2c方向へと駆動される。端部2c方向への移動に伴って、成形部材3の外周面3bは先端3aから順に受入口2aと対向してゆき、該受入口4aの成形室2eに対する開口面積が小さくなる。同時に成形室2eに受け入れられた粉粒体15は端部2c側へと送られる。このとき、成形部材3の端部2c側への移動に伴う成形室2eの容積の減少に応じて、空気は容易に受入口2aからホッパー側に流通し、この流通に応じて粉粒体の一部も容易にホッパー側へと流通する。
【0048】
そして、同図(b)、図3に示すように、成形部材3の先端面3aが成形筒体2の受入口2aを通過すると、成形室2eは先端面3aによって封鎖され且つ内周面2dと外周面3bとの間に受入口2aと連通した隙間10が形成された空間となる。そして、継続する成形部材3の端部2c側への移動に応じて、粉粒体15が圧縮されると共に、成形室2eの内圧が上昇する。しかし、成形室2e内の空気は、容易に隙間10を流通して受入口2aからホッパーへと流通し、この流通に伴って一部の粉粒体15も受入口2aからホッパーへと流通することが可能である。
【0049】
更なる成形部材3の端部2c側への移動によって、成形室2e内の粉粒体15は開閉部材5に押圧されて固形化する。このとき、開閉部材5は成形部材駆動シリンダー4の出力よりも大きい出力を持つ開閉部材駆動シリンダー6によって成形筒体2の端面2cに押し付けられているため、成形室2eの内部圧力が上昇しても対抗することが可能であり、気密性を保持することが可能となる。従って、端面2cと開閉部材5との間に隙間が形成されることがなく、粉粒体が外部に噴射することがない。
【0050】
成形部材3の成形筒体2の端部2c側への移動によって、粉粒体15からなる固形物Cが形成される。固形物Cが形成されたことは、例えば成形部材駆動シリンダー4の内部に収容されているピストンの移動位置を検出することで検出することが可能である。そして、固形物Cが形成されたことを検出した後、成形部材駆動シリンダー4を中立状態とし、この状態で開閉部材駆動シリンダー6を駆動して、成形筒体2の端面2cに圧接している開閉部材5を離隔させることで、成形室2eを開放する。
【0051】
次いで、図4(c)に示すように、成形部材駆動シリンダー4を駆動して成形部材3の先端面3aを成形筒体2の端面2cと略同一面となる位置まで移動させる(成形部材3の端部2c側への移動限)。この移動に伴って、成形室2eにある固形物Cは成形室2eの外部に排出されて下方へと落下し、図示しない容器に収容される。
【0052】
上記の如く成形部材3の先端面3aと成形筒体2の端面2cとを略同一面となる位置にある状態で、清掃部材駆動シリンダー8を駆動して清掃部材7を下降させる。このとき、清掃部材7は端面2cに沿って下降し、このとき成形部材3の先端面3aを擦るようにして付着している粉粒体を落下させることが可能である。そして、清掃部材7を下降限まで下降させた後、上昇限まで上昇させることで、成形部材3の先端面3aに対する清掃作業が終了する。
【0053】
このように、清掃部材7を下降、上昇させて成形部材3の先端面3aを清掃するので、固形化された固形物Cが成形部材3の先端面3aに付着しているような場合でも、確実に固形物Cを落下させることが可能であり、且つ先端面3aを確実に清掃することが可能である。
【0054】
上記の如くして成形部材3の先端面3aを清掃した後、開閉部材駆動シリンダー6を駆動して開閉部材5を成形筒体2の端面2cに圧接させると共に、成形部材駆動シリンダー4を駆動して成形部材3を端部2b側へと移動させることで、固形化作業を繰り返すことが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の固形化装置Aは、鋼板やステンレス鋼板を含む被切断材を切断するのに伴って発生するヒュームから粉粒体を分離する際に利用して有利である。
【符号の説明】
【0056】
A 固形化装置
B 集塵機
C 固形物
1 シュート
1a 排出口
1b フランジ
2 成形筒体
2a 受入口
2b、2c 端部(端面)
2d 内周面
2e 成形室
2f テーパ面
3 成形部材
3a 先端(先端面)
3b 外周面
4 成形部材駆動シリンダー
5 開閉部材
5a 面
6 開閉部材駆動シリンダー
7 清掃部材
8 清掃部材駆動シリンダー
10 隙間
11 Oリング
15 粉粒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板からなる被切断材を熱化学的に切断したときに生じるヒュームを吸引して該ヒュームに含まれた粉粒体を集塵する集塵機と、
前記集塵機のホッパーに接続され底部に所定の形状を持った排出口を有するシュートと、
周壁に前記シュートの排出口と略等しい形状を持った受入口を有し且つ両端部が開放された筒体からなり、該受入口を前記シュートの排出口に接続して水平方向に配置された成形筒体と、
前記成形筒体の内部に該成形筒体の一方の端部側から他方の端部側へと往復移動可能に配置され、一方の端部側へと移動して先端が該成形筒体の一方の端部に到達したとき外周面が前記受入口と対向し他方の端部側へと移動したとき前記受入口を開放し得る長さと、該成形筒体の内周面との間に前記受入口を介して前記ホッパーと連通し且つ粉粒体が流通し得る隙間を形成する太さと、を有し、該成形筒体の他方の端部側へと移動する際に該成形筒体に受け入れた粉粒体を圧縮して固形化する成形部材と、
前記成形筒体の一方の端部に配置され、前記成形部材を往復移動させる成形部材駆動シリンダーと、
前記成形筒体の他方の端部と対向し且つ該成形筒体の軸心に沿って往復移動可能に配置され、該成形筒体の他方の端部と対向する対向面にシール部材が設けられており、該対向面が成型筒体の他方の端部の面と接触したとき前記シール部材が該端部の面に於ける開放部をシールして閉鎖する開閉部材と、
前記成形部材駆動シリンダーよりも大きい出力を有し、且つ前記開閉部材を往復移動させる開閉部材駆動シリンダーと、
前記成形筒体の他方の端部側に配置され、前記成形部材の先端面に沿って往復移動して該先端面を清掃する清掃部材と、
前記清掃部材を往復移動させる清掃部材駆動シリンダーと、を有し、
前記開閉部材駆動シリンダーを駆動して前記開閉部材を前記成形筒体の他方の端部の面に圧接させたとき、該他方の端部に於ける開放部を気密状態に閉鎖し、
前記成形部材駆動シリンダーを駆動して前記成形部材を前記成形筒体の一方の端部側に移動させて該成形筒体の受入口を開放することで前記ホッパーに収容されている粉粒体を前記シュートを介して受け入れた後、該成形部材駆動シリンダーを駆動して該成形部材を該成形筒体の他方の端部側に移動させ、該成形部材を該成形筒体の受入口に対向させると共に受け入れた粉粒体を圧縮して固形化し、その際に前記成形筒体と前記成形部材との隙間に前記ホッパーの圧力を作用させて該隙間に存在する粉粒体を該ホッパーに吸引させるように構成したことを特徴とする粉粒体の固形化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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