説明

粉粒体の循環装置

【課題】粒径の大きい粒体や流動性の悪い粉粒体であっても、好適に循環させることができる粉粒体の循環装置を提供する。
【解決手段】粉粒体Pを収容可能な循環容器12と、該循環容器12内に起立状態で設けられた上昇管14と、上昇管14内に下方から圧縮空気を供給する送気手段15とを備え、該送気手段15によって、粉粒体Pを上昇管14の下端から流入させ且つ上端から流出させて上昇管14内外で循環させる粉粒体Pの循環装置において、上昇管14の下端から内部へ粉粒体Pを吸引する吸引手段49と、上昇管14の周囲から上昇管14の下方域へ向けて循環容器12内の底面上の粉粒体Pに圧縮空気を噴射する噴射手段46と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉粒体の循環装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
工業製品や薬剤の原材料等として利用される粉粒体は、一般に、均質性を得やすく、物理的・化学的加工操作が容易であるほか、「固体」でありながら「液体」の特性である「流動性」を有しているため、運搬や混合等も容易に行えるという利点がある。
【0003】
下記特許文献1には、このような粉粒体の流動性を利用して、粉粒体を循環し混合する装置が開示されている。この装置201は、図7に示すように、粉粒体を収容可能なサイロ202の底壁に粉粒体の排出口203を形成し、この排出口203の周りに、通気性を有するとともに粉粒体の通過を阻止する多孔板204を設け、サイロ202内の排出口203の上方に上昇管205を起立状態で設け、多孔板204と上昇管205とに下方から送気する空気管206,207を設けたものである。
【0004】
そして、空気管206,207からの送気によってサイロ202内の粉粒体を流動化させるとともに、上昇管205内で粉粒体を上昇させ、上昇管205の上端開口から噴出した粉粒体を下降させて、上昇管205の内外で粉粒体を循環させるようにしている。
【特許文献1】実開昭60−176238号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
粉体や比較的粒径の小さい粒体は、サイロ202の下方からの送気に対して自己シール作用を奏し、これによって、粉体等は流動化し、送気は粉体と共に上昇管内に流入し、粉体を上昇させる。しかし、粒径の大きい粒体の場合、互いの隙間が大きくなるために自己シール作用を奏さず、流動化及び上昇管内外の循環が適切になされないという問題がある。
【0006】
また、流動性の悪い粉粒体、例えば、ゴム製品の原料となるゴムペレット等の場合、上昇管202内に流入したとしても、その後、上昇管202の下方域に新たな粉粒体が流れ込まなくなり、空洞化(ブリッジ)を生じ易くなる。したがって、継続した循環がなされないという問題がある。
【0007】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、粒径の大きい粒体や流動性の悪い粉粒体であっても、好適に循環させることができる粉粒体の循環装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の粉粒体の循環装置は、粉粒体を収容可能な循環容器と、該循環容器内に起立状態で設けられた上昇管と、上昇管内に下方から圧縮空気を供給する送気手段とを備え、該送気手段によって、粉粒体を上昇管の下端から流入させ且つ上端から流出させて上昇管内外で循環させる粉粒体の循環装置において、上昇管の下端から内部へ粉粒体を吸引する吸引手段と、上昇管の周囲から上昇管の下方域へ向けて循環容器内の底面上の粉粒体に圧縮空気を噴射する噴射手段と、を備えていることを特徴とする。
【0009】
前記吸引手段は、上昇管の内周面の周方向複数箇所から上向きの圧縮空気を吐出するエジェクタにより構成されていることが好ましい。
【0010】
前記噴射手段は、上昇管の下方域から離れた位置から圧縮空気を噴射する第1噴射ノズルと、該第1噴射ノズルよりも上昇管の下方域に近い位置から圧縮空気を噴射する第2噴射ノズルとを有していることが推奨され、該第1,第2噴射ノズルは、上昇管の周囲に周方向交互に配置されていることが好ましい。
【0011】
また、前記噴射手段は、上昇管の周囲に周方向に並設された複数の噴射ノズルを有しており、複数の噴射ノズルが時間差をもって順番に作動するように制御されているのが好適である。
【0012】
一方、前記上昇管の下部の外面には、下方広がり状のガイド部材を設けていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の循環装置によれば、上昇管の下端から内部へ粉粒体を吸引する吸引手段と、上昇管の周囲から上昇管の下方域へ向けて循環容器内部の底面上の粉粒体に圧縮空気を噴射する噴射手段とを備えているので、流動化し難い粉粒体であっても吸引手段によって上昇管内に流入させることができ、さらに、この流入によって上昇管の下方域に空洞(ブリッジ)が生じても、噴射手段によって上昇管の周囲の粉粒体を下方域に流動させることができる。したがって、継続した粉粒体の循環が可能となる。
【0014】
前記吸引手段は、上昇管の内周面の周方向複数箇所から上向きの圧縮空気を吐出するエジェクタにより構成されているので、簡単な構成で吸引力を発生させることができる。
【0015】
前記噴射手段は、上昇管の下方域からの距離が異なる第1,第2噴射ノズルを有しているので、循環容器内の底面上の粉粒体を全体的に上昇管の下方域に向けて流動させることができる。
【0016】
また、第1,第2噴射ノズルが、上昇管の周囲に周方向交互に配置されているので、上昇管の全周にわたって粉粒体を上昇管の下方域に向けて流動させることができる。
【0017】
また、上昇管の周囲に周方向に並設した複数の噴射ノズルが時間差をもって順番に作動するように制御されているので、上昇管の周りの全方位から下方域へ同時に粉粒体が流動するのを防止し、該下方域で粉粒体が詰まってしまうことを防止することができる。
【0018】
前記上昇管の下部の外面には、下方広がり状のガイド部材が設けられているので、上昇管の外面付近の粉粒体を、下方に流れるに従って外側に導き、上昇管の外面から離れた粉粒体とともに、適切に循環させることができる。また、循環容器内の底面とガイド部材との隙間を小さくして上昇管の下方域に積極的に空洞(ブリッジ)を形成させることで、吸引手段を効果的に機能させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る粉粒体の循環装置11の概略全体図である。この循環装置11は、粉粒体の温度調整及び湿度調整を行う装置として構成されている。すなわち、この装置は、循環容器12内に収納した粉粒体Pを、圧縮空気の流入によって流動化させ、更に循環させることにより、粉粒体Pの含水率と温度とを調整するとともに、所定の含水率及び温度となった粉粒体Pを適宜循環容器12から排出する装置とされている。
【0020】
なお、粉粒体Pの流動化とは、空気を流すことによって粉粒体Pを浮遊懸濁化(液体のような状態に)することをいう。但し、粉粒体Pのなかでも、粒径の大きな粒体等は、実質的に流動化しない場合もある。
【0021】
循環装置11は、粉粒体Pが収納される循環容器12と、循環容器12内に配置された上昇管14と、粉粒体Pを循環させるとともに、粉粒体Pの温度及び湿度(含水率)を調整するための圧縮空気を循環容器12内に流入する送気手段15と、を有している。以下各構成について詳細に説明する。
【0022】
〔循環容器12の構成〕
図2は、循環容器12の概略縦断面図である。循環容器12は、上端が開放された円筒形であり、中心軸心を上下方向に向けた状態で配置されている。循環容器12の底壁には、粉粒体Pの排出口16が設けられている。排出口16は、循環容器12の中心軸心上に配置され、排出管17の上端が接続されている。
【0023】
循環容器12から排出口16を介して排出された粉粒体Pは、排出管17を通って次工程の容器等に移送される。排出管17には、粉粒体Pの通過の可否を切り替える排出開閉弁18が設けられている。
【0024】
循環容器12内部の排出口16の周りには内底壁21が設けられている。この内底壁21には、通気性を有するとともに粉粒体Pの通過を阻止する通気部材が用いられている。通気部材21としては、例えば、複数枚の金網を重ねて接合した焼結金網や、布製キャンバス等を採用することができる。
【0025】
図3は循環容器下部の概略縦断面図、図4は、図3のIV−IV矢視断面図である。通気部材21は、平面視円形状であり、中心部には排出口16を形成するパイプ22が挿入されている。通気部材21の外周縁は、循環容器12の内周面に密着するように配置されている。
【0026】
また、通気部材21は、排出口16から径方向に外側にいくに従い上方に移行するように傾斜して設けられており、その傾斜角度は、排出口16に近い部分が、排出口16から離れた部分よりも急となっている。
【0027】
本実施形態では、排出口16に近い部分(急傾斜部分23)の傾斜角度θ1が約45°、排出口16から離れた部分(緩傾斜部分24)の傾斜角度θ2が約30°の傾斜に設定されている。急傾斜部分23と緩傾斜部分24との境界位置は、通気部材21の外径の略半分の位置に設定されている。従って、急傾斜部分23と緩傾斜部分24との面積比は、約1:3となっている。
【0028】
循環容器12内は、通気部材21によって上下に区画されており、通気部材21の下側の部屋が、送気手段15により圧縮空気が流入される空気室26、上側の部屋が、粉粒体Pを循環させる循環室27とされている。
【0029】
空気室26では、通気部材21の急傾斜部分23の下方と緩傾斜部分24の下方とが、第1仕切り壁28によって区画されている。この第1仕切り壁28は、図4に示すように、平面視でリング状に形成され、急傾斜部分23と緩傾斜部分24との境界位置に対応するように配置されている。また、第1仕切り壁28によって区画された各部屋(以下、内側室29及び外側室30という)は、さらに、循環容器12の直径方向に延びる第2仕切り壁31、第3仕切り壁32によって複数の部屋に区画されている。
【0030】
すなわち、内側室29は、第1仕切り壁28と排出口16との間で互いに一直線状に延びる2つの第2仕切り壁31によって2つの部屋に区画され、外側室30は、第1仕切り壁28と循環容器12の内面との間で径方向に十字状に延びる4つの第3仕切り壁32によって4つの部屋に区画されている。
【0031】
図2に示すように、通気部材21の上側に形成された循環室27には、上昇管14が設けられている。上昇管14は、両端が開放した筒(円筒)形状に形成され、その中心軸線が上下方向に指向した起立状態で循環容器12の中心軸心上に配設されている。上昇管14の下端は、排出口16の真上に間隔をあけて配置されている。
【0032】
上昇管14の上端には、反射蓋33が設けられている。反射蓋33は、後述する粉粒体Pの循環により上昇管14上端から噴出した粉粒体Pを下方に反射させる作用をなす。反射蓋33は下向きの略椀形状であり、径方向内方に突設された図示しないブラケットを介して上昇管14の上端部に固定されている。
【0033】
〔送気手段15の構成〕
図1に示すように、送気手段15は、圧縮空気源35と、圧縮空気源35と循環容器12とを接続する送気通路等を有している。圧縮空気源35は、ブロアやコンプレッサ等によって構成されている。
【0034】
送気通路は、第1,第2主送気通路36,42を有し、第1,第2主送気通路36,42にはそれぞれ調量弁V1,V2と流量計FIとヒータHとが設けられている。また、第1主送気通路36は、下流側で第1,第2副送気通路37,38に分岐されている。第1副送気通路37は、さらに複数に分岐して循環容器12の下部に形成した内側室29に接続され、第2副送気通路38は、さらに複数に分岐して外側室30に接続されている。第1,第2副送気通路37,38及び各分岐通路にも調量弁V3,V4が設けられている。
【0035】
第2主送気通路42は、下流側で第3〜5副送気通路43,44,47に分岐されている。第3副送気通路43は排気管17に接続され、第4副送気通路44は後述する噴射手段46に接続され、第5副送気通路47は後述する吸引手段49に接続されている。また、各第3〜5副送気通路43,44,47には、それぞれ調量弁V5や開閉弁V6が設けられている。
【0036】
〔循環装置11の基本作用〕
前記噴射手段46や吸引手段49について説明する前に、まず、循環装置11の基本的な作用(動作)について説明する。
【0037】
循環容器12には、図示しない供給装置を介して上部から粉粒体Pが供給される。そして、反射蓋33の少し下まで粉粒体Pが蓄積されると、図1の圧縮空気源35が作動するとともに、圧縮空気源35から送られた空気が各送気通路を介して循環容器12に流入する。この際、各調量弁V1,V2等によって圧縮空気の流量が調整されるとともに、ヒータHによって温度が調整される。この温度は、粉粒体Pの湿度(含水率)を所定に調整しながら、粉粒体Pの温度も所定に調整する温度である。
【0038】
第1主送気通路36から第1,第2副送気通路37,38を介して循環容器12の空気室26に流入した空気は、図2に示すように、通気部材21を通過して循環室27に入り、粉粒体Pを流動化させる。また、第2主送気通路42から第3副送気通路43、排出管17、排出口16を経て循環容器12の循環室27に流入した空気は、周囲の粉粒体Pを巻き込みながら上昇管14内に流入し、該粉粒体Pを上昇管14内で上昇させる。その後、粉粒体Pは、上昇管14の上端開口から噴出し、反射蓋33に当たった後、上昇管14の外側に落下する。この動作の繰り返しによって、粉粒体Pが、上昇管14の内外を循環するようになっている。なお、図2において、粉粒体Pの流れが実線矢印で、空気の流れが白抜き矢印でそれぞれ示されている。
【0039】
このように、圧縮空気を循環室27に流入して粉粒体Pを循環させることによって、循環容器12内に流入した圧縮空気の含水率や温度に応じて、粉粒体Pの含水率及び温度が調整されるようになっている。
【0040】
通気部材21は、排出口16から離れるに従い上方に移行するように傾斜しているので、空気室26から通気部材21を通過する空気の流れは、やや循環容器12の中心に指向する。
【0041】
そして、通気部材21は、排出口16に近い部分(循環容器12の中心側)が急傾斜となっているため、この部分を通過する空気の流れは、循環容器12のより中心側に指向し、粉粒体Pが上昇管14内に流れ込むのを助けることができる。逆に、排出口16から離れた部分(循環容器12の外周側)では、通気部材21が緩傾斜となっているため、この部分を通過する空気の流れは、より上方に指向することになり、通気部材21上の粉粒体Pを流動化させ易くなっている。
【0042】
循環容器12内の粉粒体Pの含水率や温度が所定になると、適宜排出開閉弁18を開いて排出管17から粉粒体Pを排出し、同じ量の新たな粉粒体Pを循環容器12内へ供給するようになっている。粉粒体Pを排出する際、通気部材21は、排出口16に近い部分で急傾斜とされているために、より排出が促進されるようになっている。
【0043】
上記において、循環容器12の排出口16乃至排出管17は、粉粒体Pの排出だけでなく、循環容器12への送気にも用いられるようになっているため、これらを別々に備えた場合に比べて構造の簡素化が図れるようになっている。また、上昇管14の真下にある排出管17から送気することによって、より確実に上昇管14内に圧縮空気を供給することが可能となり、送気効率が向上し、粉粒体Pの上昇及び循環を促進できるようになっている。当然、排出口16からの粉粒体Pの排出も何ら支障なく行うことができる。
【0044】
上記の作業が終了し、循環容器12から全ての粉粒体Pを排出する場合において、通気部材21が、排出口16に近い部分で急傾斜とされているので、当該部分に粉粒体Pが残ることが少なくなっている。
【0045】
ところで、循環の対象となる粉粒体Pが、粉体や粒径の小さな粒体である場合は、以上に説明した作用によって、循環容器12内で流動循環することができるが、粒径の大きな粒体の場合、通気部材21から送られる空気が粒体間をすり抜けてしまい、流動化し難くなる。このため、第3副送気通路43から排出口16を介して上向きの圧縮空気を送っても、粒体は上昇管14内に流入し難い。また、粒体の流動性が悪いと、粒体が上昇管14内に流入したとしても、上昇管14の下方域に空洞化(ブリッジ)を生じ易くなる。
【0046】
そこで、本発明では、粒径の大きな粒体や流動性の悪い粒体を用いる場合であっても、確実に粒体を上昇管14内に流入し、循環させることができるように、以下に説明する吸引手段49及び噴射手段46を備えている。また、併せて、上昇管14の下部外周にガイド部材51を設けている。
【0047】
〔吸引手段49の構成〕
本実施形態の吸引手段49は、いわゆるエジェクタ48であり、該エジェクタ48は、図1に示すように、上昇管14の上下中途部(上下中間よりもやや下側)に設けられている。エジェクタ48には、第5副送気通路47を介して圧縮空気が導入される。図5は、循環容器12下部を拡大して示す概略縦断面図であり、エジェクタ48の内周面には、吐出孔52が周方向に複数形成されており、該吐出孔52は、上向き(やや内向き)に形成されている。エジェクタ48に導入された圧縮空気は、吐出孔52によって絞られて流速を増して吐出され、上昇管14内に強い上昇流を生成する。したがって、エジェクタ48よりも下側には吸引力が働き、粒体(粉粒体)Pを積極的に上昇管14内に吸引するようになっている。
【0048】
〔噴射手段46の構成〕
図1に示すように、噴射手段46は、上昇管14の周囲から上昇管14の下方域へ向けて循環容器12の通気部材21上の粉粒体Pに圧縮空気を噴射するものである。具体的には、図5に示すように、循環容器12の通気部材21上面に略沿うように配置された第1,第2噴射ノズル53,54を有しており、該噴射ノズル53,54は、それぞれ先端の吐出口が、上昇管14の下方域に指向している。
【0049】
図6は、図5のVI−VI矢視断面図であり、第1噴射ノズル53は、先端の吐出口が上昇管14の下方域から径方向に離れた位置に配置され、第2噴射ノズル54は、先端の吐出口が上昇管14の下方域に近い位置に配置されている。第1,第2噴射ノズル53,54は、上昇管14の周囲に交互に配置されている。図例では、各12本の第1,第2噴射ノズル53,54が設けられている。
【0050】
また、互いに隣合う第1噴射ノズル53と第2噴射ノズル54とは、互いに基端部で連通し、共通の第4副送気通路44に接続されている。第4副送気通路44は、図1に示すように、第2主送気通路42から分岐している。第4副送気通路44には電磁開閉弁V6が設けられている。
【0051】
第4副送気通路44に設けられた複数の電磁開閉弁V6は、時間差をもって作動するようになっている。例えば、図6に示すA群の電磁開閉弁V6を開いている間は、他のB、C群の電磁開閉弁V6を閉じておき、所定時間後(数秒)にA群の電磁開閉弁V6を閉じると同時に隣のB群の電磁開閉弁V6を開く。同様に、所定時間経過後にB群の電磁開閉弁V6を閉じると同時に隣のC群の電磁開閉弁V6を開く。このようにすることで、第1,第2噴射ノズル53,54は、周方向に複数個ずつ順番に作動するようになっている。各群に含まれる噴射ノズル53,54の個数や、各開閉弁V6を開く時間等は、適宜変更することができる。
【0052】
〔ガイド部材51の構成〕
図5に示すように、ガイド部材51は、上昇管14の下部外周に設けられており、下方に向けて外径が広がるような裁頭円錐形状に形成されている。このガイド部材51は、上昇管14の外周面付近の粉粒体Pを、下方へ流れるに従い径方向外側に導くようになっている。さらに、ガイド部材51は、上昇管14と通気部材21との間に形成される隙間Tを小さくするようになっている。
【0053】
〔吸引手段49及び噴射手段46の作用〕
図2を参照して説明した循環装置11の基本作用に加え、吸引手段49及び噴射手段46は次のように作用する。
図5に示すように、吸引手段49のエジェクタ48には、第5副送気通路47(図1)から圧縮空気が送られ、各吐出孔52から高速の圧縮空気が吐出される。この圧縮空気によってエジェクタ48よりも下側の上昇管14内には強い吸引力が働き、この吸引力と、排出口16からの送気とによって、上昇管14の下方域にある粉粒体Pが上昇管14内に引き込まれ、上昇する。
【0054】
粉粒体Pの流動性が悪いと、上昇管14の下方域にある粉粒体Pが上昇管14内に引き込まれたときに、その粉粒体Pがあった部分に空洞(ブリッジ)Sが生じる。この空洞Sは、噴射手段46の各噴射ノズル53,54から通気部材21上の粉粒体Pに圧縮空気を吹き付け、該粉粒体Pを積極的に上昇管14の下方域に流動させることによって解消される。
【0055】
上昇管14の下方域に流動した粉粒体P1は、エジェクタ48の吸引により上昇管14内に引き込まれ、以上の動作を繰り返すことによって、粒度の大きい粒体や流動性の悪い粉粒体Pであっても好適に循環させることができる。
【0056】
ここで、噴射ノズル53,54は、第1噴射ノズル53のみであると、上昇管14の下方域に近い粉粒体Pが抵抗となって、動きにくくなり、第2噴射ノズル54のみであると、上昇管14の下方域から遠い粉粒体Pが流動せず、通気部材21上に留まる可能性がある。したがって、第1,第2噴射ノズル53,54の双方を備えることで、通気部材21上の粉粒体Pを循環容器12の径方向に関して全体的に動かすことができる。
【0057】
また、複数の第1,第2噴射ノズル53,54を、周方向に時間差をもって作動することで、上昇管14の下方域へ向けて全方位から同時に粉粒体Pが流れ込むことがなくなり、上昇管の下方域における粉粒体Pの詰まりを防止することができる。
【0058】
粉粒体Pが循環すると、上昇管14の外周面付近の粉粒体Pは、矢印aのように下方へ流れるに従いガイド部材51に沿って径方向外側に導かれ、上昇管14から径方向に離れた粉粒体Pとともに、ガイド部材51と通気部材21との間Tを通って上昇管14の下方域に流動する。したがって、上昇管14に対して径方向に近い粉粒体Pだけでなく離れた粉粒体Pをも適切に循環させることができる。
【0059】
また、ガイド部材51を設けることによって、ガイド部材51と通気部材21との間の隙間Tが小さくなり、上昇管14の下方域に空洞Sが生じやすくなるが、むしろ空洞Sを積極的に生じさせることによって、エジェクタ48による吸引作用を有効に働かせることができるようになっている。すなわち、エジェクタ48は、上昇管14の下方域が完全に粉粒体Pで詰まっていると該粉粒体Pを吸い上げ難くなるが、上昇管14の下方域に空洞Sを形成することで、噴射ノズル53,54によって上昇管14の下方域に流動した粉粒体P1を適切に吸引することができる。
【0060】
〔他の実施形態〕
本発明は、上記実施形態に限定されることなく適宜設計変更可能である。例えば、以下のように構成することができる。
(1)上記実施形態では、図1に示すように、循環容器12の底部の空気室26に圧縮空気を流入しているが、粉粒体Pの調温や調湿が必要とされない場合や流動化(浮遊懸濁化)しない粉粒体Pを扱う場合には、これを省略(第1主送気通路36を省略)することもできる。この場合、循環容器12内部の底壁21を、通気部材に変えて通気性のない単なる板材により構成することができる。
【0061】
(2)本発明の循環装置11は、粉粒体Pの温度と湿度との双方を調整するに限らず、一方のみとすることができ、また、調湿装置だけでなく、粉粒体Pの混合装置、造粒装置等として構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、粉粒体の調湿装置、混合装置、造粒装置等として適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施形態に係る粉粒体の循環装置の概略全体図である。
【図2】循環容器の概略縦断面図である。
【図3】循環容器下部の縦断面図である。
【図4】図3のIV−IV矢視図である。
【図5】循環容器下部を拡大して示す概略縦断面図である。
【図6】図5のVI−VI矢視断面図である。
【図7】従来技術に係る粉粒体の循環装置の概略縦断面図である。
【符号の説明】
【0064】
11 循環装置
12 循環容器
14 上昇管
15 送気手段
20 内底壁
46 噴射手段
48 エジェクタ
49 吸引手段
51 ガイド部材
53 第1噴射ノズル
54 第2噴射ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉粒体を収容可能な循環容器と、該循環容器内に起立状態で設けられた上昇管と、上昇管内に下方から圧縮空気を供給する送気手段とを備え、該送気手段によって、粉粒体を上昇管の下端から流入させ且つ上端から流出させて上昇管内外で循環させる、粉粒体の循環装置において、
上昇管の下端から内部へ粉粒体を吸引する吸引手段と、
上昇管の周囲から上昇管の下方域へ向けて循環容器内の底面上の粉粒体に圧縮空気を噴射する噴射手段と、を備えていることを特徴とする、粉粒体の循環装置。
【請求項2】
前記吸引手段が、上昇管の内周面の周方向複数箇所から上向きの圧縮空気を吐出するエジェクタにより構成されていることを特徴とする、請求項1記載の粉粒体の循環装置。
【請求項3】
前記噴射手段が、上昇管の下方域から離れた位置から圧縮空気を噴射する第1噴射ノズルと、該第1噴射ノズルよりも上昇管の下方域に近い位置から圧縮空気を噴射する第2噴射ノズルとを有していることを特徴とする、請求項1記載の粉粒体の循環装置。
【請求項4】
前記第1噴射ノズルと第2噴射ノズルとが、上昇管の周囲に周方向交互に配置されていることを特徴とする、請求項3記載の粉粒体の循環装置。
【請求項5】
前記噴射手段が、上昇管の周囲に周方向に並設された複数の噴射ノズルを有しており、複数の噴射ノズルが時間差をもって順番に作動するように制御されていることを特徴とする、請求項1記載の粉粒体の循環装置。
【請求項6】
前記上昇管の下部の外面に、下方広がり状のガイド部材を設けていることを特徴とする、請求項1記載の粉粒体の循環装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−49259(P2008−49259A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−227605(P2006−227605)
【出願日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(000004732)株式会社日本アルミ (64)
【Fターム(参考)】