説明

粉粒体分離処理装置及び粉粒体分離処理方法

【目的】比重や硬度が比較的大きい粉粒体とこれに同伴される軽量異物類が混ざり合った被処理混合物を系内導入し乾式で分離処理する。
【解決手段】集塵装置や電気掃除機等の外部吸引機器に接続され、被処理混合物を分離処理容器1に吸引導入し、粉粒体を系内回収するとともに、軽量異物類を系外排出するための粉粒体分離処理装置Xである。分離処理容器1は粉粒体を回収貯留するホッパタンク4の上部構造として被冠封着され、周面に被処理混合物を受け入れる吸引導入管2と、上面に外部吸引機器に接続する吸引排出管3を設けている。また、分離処理容器1は、漏斗状に底面形成した分離コーン11と、該分離コーン11の先端部から下向き凸状に垂下し、その口径を階段的に減少させて多段形成した筒口13を有している。吸引排出管3は、その先端部を多重管構成とし、それらの管径を筒口13の各口径に対応する小径なものとして遊挿して開口端部に臨ませている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、比重や硬度が比較的大きく粒径が数mm以下のグリット状又はショット状の初期形状からなる粉粒体と、これに同伴される軽量異物類が混ざり合った被処理混合物を系内導入し、乾式で前記粉粒体と前記軽量異物類とを分離処理する粉粒体分離処理装置及び粉粒体分離処理方法に係り、詳しくは、集塵装置や電気掃除機等の外部吸引機器に接続した分離処理容器内に前記被処理混合物を吸引導入し、該容器内で流動を制御しながら気流と比重差を利用して分離処理し、前記粉粒体を系内回収するとともに、前記軽量異物類を前記外部吸引機器に向けて系外排出するための粉粒体分離処理装置及び粉粒体分離処理方法に関する。
【0002】
被処理混合物の代表的な例として、乾式エアーブラスト装置によるブラスト工程を経た研削材(粉粒体)と、これに同伴される軽量異物類からなるものを挙げることができる。この研削材(粉粒体)と軽量異物類の比重はともに1桁であり、かつ、両者の比重差は比較的小さいといえる。
【0003】
ここで、研削材は金属系と非金属系に大別される。金属系研削材は所謂スチールグリットやスチールショットと称される鋳鉄や鋳鋼の粉粒体である。非金属系研削材は天然鉱物や造鉱物のグリット状又はショット状の粉粒体である〔必要ならば、JISZ0310素地調整用ブラスト処理方法通則の研削材の項を参照〕。なお、グリット[grit]とは角張った形状の粒子、ショット[shot]とは角張りが少ない形状の粒子を指称するものである。
【背景技術】
【0004】
従来より、容器類や家電製品廃棄物、情報機器廃棄物などから発生する廃棄プラスチック類を再生樹脂として回収処理するために、粒子径を10mm以下に破砕処理し、且つ劣化表面層の剥離を主目的にして乾式洗浄処理した後の紙片等の軽量異物類を多数含有するブラスチック破砕粒状体を被処理混合物とするサイクロン型気流応用分離装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。なお、サイクロン型とは、粉塵含有気体(被処理混合物含有気体に同じ)を旋回させて該気体中から粉粒体等を遠心分離して捕集又は分級する分離方式をいう。
【0005】
ここでみるべき点は、円筒部内で遠心降下粒状体含有気流を、中央に開口部を有する仕切板によって気流排出管の先端開口の下部空間部へ急激に流速を高めた渦流として集合させることにより、固形分から軽量異物類の分離機能が促進され上昇流による浮遊分離効率が高まるとしている点である。
【0006】
しかしながら、破砕処理後の廃棄プラスチック類は10mm以下を要請(許容)している点で粒度分布が乱雑であり嵩比重もまちまちであると推認される。要するに、破砕により生じた粒状固形分と、剥離した表面研削層(粉砕微粉)、紙片、テープ片その他の嵩比重の小さい軽量異物等をサイクロン型の気流を応用して浮遊選別するものであろうと思われる。
【0007】
一方、使用済のブラスト材(本発明の研削材に相当)を分離回収する提案も幾つか知られている(例えば、特許文献2、3、4及び5を参照)。これら従来例は、概してフィルター分離、篩選別、風選選別又は浮遊選別である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−283720号公報
【特許文献2】特開2004−9222号公報
【特許文献3】特開2001−212764号公報
【特許文献4】特開平9−193019号公報
【特許文献5】特開平8−25223号公報
【0009】
近年、ブラスト用の非金属系研削材として、天然鉱物のうち「けい砂」は珪肺症予防の観点から使用しないので、アルマンディンガーネット[Fe3Al2(SiO4)3] の代替使用が増大している。代表的な物性のうち比重は4.1 、モース硬度は 7.6−8.3 である。なお、ガーネットはほどんど輸入に頼っているのが現状である。
【0010】
例えば、ブラスト工程を経たガーネット粉粒体(被処理混合物)の性状は、粒度分布(粒径)でいえば、概略3mm以下である。そして、研削材として再使用可能なガーネット粉粒体(減耗後)が仮に0.2mm以上であるとすると、0.2mm未満、より具体的には0.1mm未満の粉体は表面剥離した(研掃された)塗膜や錆などの軽量異物類と磨耗により生じた研削粉からなる廃棄処理されてよい粉体(産廃粉体)である。この種の研削材について、現状では、ブラスト工程を経たあとは廃棄処分している。
【0011】
こうしたなかで、比重や硬度が比較的大きく粒径が数mm以下のグリット状又はショット状の初期形状からなる粉粒体と、これに同伴される軽量異物類が混ざり合った被処理混合物、とりわけ、乾式エアーブラスト装置によるブラスト工程を経た粉粒体(これに同伴される軽量異物類を含む)を効率よく分離し、再使用可能な粉粒体を回収することによりマテリアルリサイクルを推進することが強く望まれている。この種の被処理混合物は比重差が比較的小さく、これを分離処理するという問題もある。
【0012】
しかしながら、上記従来技術を適用しようとしても、比重差の小さいもの同士の分離は困難で、再使用可能な粒径(例えば0.2〜0.5mm程度)の粉粒体(研削材)が廃棄側に移行してしまうか、回収側に産廃粉体(例えば0.2mm未満)がかなり残留してしまうという問題があった。しかも、従来技術はバッチ処理であると推認され、ブラスト作業の現場と分離処理の現場との間の移送の問題がある。
【0013】
当然のことながら、ブラスト作業の現場でブラスト工程を経た粉粒体(詳しくは被処理混合物)に対して分離処理をおこない、直ちに再使用に供するようにしたいという課題提起があった。しかも、研削材回収の歩留りを高めたいという要請から、分離精度を改善するという課題もある。
【0014】
本発明者らは、この種の粉粒体(これに同伴される軽量異物類を含む)を効率よく分離し、研削材として再使用可能な粉粒体を効率的に回収可能な分離処理技術の研究開発を進めてきた。
【0015】
特に、既存の集塵装置や電気掃除機等の外部吸引機器の前流に粉粒体分離処理装置を配置して接続し、該粉粒体分離処理装置により再使用可能な粉粒体を系内回収し、産廃粉体を系外排出して外部吸引機器の負荷を低減する試みを重ねてきた。
【0016】
本発明はその成果物のひとつであって、新たな装置構成により、分離処理容器内に受け入れた被処理混合物を、該容器内で流動を制御しながら気流と比重差を利用して多段的に産廃粉体を吸引排出するとともに再使用可能な粉粒体を落下回収する手法で分離処理するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明が解決しようとする問題点は、比重や硬度が比較的大きく粒径が数mm以下のグリット状又はショット状の初期形状からなる粉粒体と、これに同伴される軽量異物類が混ざり合った被処理混合物を分離し、再使用可能な粉粒体を系内回収する点にある。ここに、粉粒体と軽量異物類との比重差は比較的小さいという点を考慮する必要がある。
【0018】
とりわけ、乾式エアーブラスト装置によるブラスト工程を経た研削材からなる粉粒体(これに同伴される軽量異物類を含む)を分離し、研削材として再使用可能な粉粒体を系内回収するとともに、軽量異物類や粒径の小さい産廃粉体を系外排出する点を技術解決課題とする。これにより、マテリアルリサイクルを推進するという目的効果の達成を図る。あわせて、後流接続した外部吸引機器の負荷を低減するという目的効果も包含する。
【0019】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、上記課題を解消し、集塵装置や電気掃除機等の外部吸引機器に接続した分離処理容器に被処理混合物を吸引導入し、該容器内で流動を制御しながら乾式で気流と比重差を利用して分離処理し、粉粒体を系内回収するとともに、産廃粉体を含む軽量異物類を外部吸引機器に向けて系外排出するための粉粒体分離処理装置及び粉粒体分離処理方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
課題を解決するために本発明は、比重や硬度が比較的大きく粒径が数mm以下のグリット状又はショット状の初期形状からなる粉粒体と、これに同伴される軽量異物類が混ざり合った被処理混合物を系内導入し、乾式で前記粉粒体と前記軽量異物類とを分離処理する粉粒体分離処理装置において、
集塵装置や電気掃除機等の外部吸引機器に接続した分離処理容器に前記被処理混合物を吸引導入し、該容器内で流動を制御しながら気流と比重差を利用して分離処理し、前記粉粒体を系内回収するとともに、前記軽量異物類を前記外部吸引機器に向けて系外排出するための粉粒体分離処理装置であって、
前記粉粒体を回収貯留するホッパタンクと、該ホッパタンクの上部構造として被冠封着され周面に前記被処理混合物を受け入れる吸引導入管と、上面に前記外部吸引機器に接続する吸引排出管を設けた分離処理容器を備えるとともに、
前記分離処理容器が、漏斗状に底面形成した分離コーンと、該分離コーンの先端部から下向き凸状に垂下し、その口径を階段的に減少させて多段形成した筒口を有してなり、
前記吸引排出管が、その先端部を多重管構成とし、それぞれの軸芯を前記分離コーンの回転軸(円錐軸)に合致させ、かつ、それらの管径を前記筒口の各口径に対応する小径なものとして遊挿して開口端部に臨ませてなり、
前記分離処理容器内に吸引導入した前記被処理混合物を前記筒口に向けて落下誘導するとともに、前記吸引排出管により軽量異物類を多段階に吸引して系外排出し、残る粉粒体を系内に落下回収するようにしたことを特徴とするものである。
【0021】
また、上記構成の粉粒体分離処理装置において、
分離処理容器内で分離コーンによる被処理混合物の落下誘導と吸引排出管による軽量異物類の吸引排出とを協働させて流動を制御しながら粉粒体と軽量異物類とを分離処理するようにした粉粒体分離処理方法であって、
吸引導入により受け入れた前記被処理混合物を前記分離処理容器内で発生する気流を利用して軽重分離しながら、前記分離コーンの内表面に受け止めて旋回と落下を一旦阻止し、跳ね返りを含む爾後の自由落下に任せ、前記分離コーンの筒口に向けてカスケード状に落下誘導しながら、前記吸引排出管により軽量異物類を多段階に吸引して系外排出し、残る粉粒体を落下回収するようにしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明は以上の構成よりなるものであり、これによれば比重や硬度が比較的大きく粒径が数mm以下のグリット状又はショット状の初期形状からなる粉粒体と、これに同伴される軽量異物類が混ざり合った被処理混合物を分離処理し、粉粒体を系内回収し軽量異物類を系外排出することができる。
【0023】
とりわけ、乾式エアーブラスト装置によるブラスト工程を経た研削材からなる粉粒体(これに同伴される軽量異物類を含む)を効率的に分離し、研削材として再使用可能な粉粒体を系内回収することにより、マテリアルリサイクルの推進に寄与することができる。あわせて、産廃粉体(軽量異物類と減耗により粉体化した研削材を含む)を系外排出することにより、後流接続した外部吸引機器の負荷を低減することができる。
【0024】
また、本発明の分離処理方法は、分離コーンの筒口に向けてカスケード状の落下誘導と吸引排出を協働させて被処理混合物の流動を制御しながら多段的に粉粒体の系内回収と軽量異物等(産廃粉体)の系外排出が可能である。当然のことながら、被処理混合物の性状に応じて吸引力を最適調整可能とするものである。
【0025】
したがって、本発明方法の適用範囲は、研削材はもとより、廃プラスチック破砕粉粒体、穀類その他の粉粒体とこれに同伴する軽量異物類からなる種々の被処理混合物に及び、それぞれの分離条件に対して柔軟に対応可能で汎用性が高いという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施例装置の斜視説明図である。
【図2】実施例装置の断面視説明図である。
【図3】図2中P部詳細説明図である。
【図4】分離処理容器内での被処理混合物の流動制御を示す模式説明図である。
【図5】実施例装置の性能(作用効果)に係る実験的事実を示す粒度分布に関するそれぞれの篩試験結果とそのデータプロットである。ここに、(a)はブラスト後未処理の被処理混合物(供試材)、(b)は分離処理後の再使用可能な粉粒体、及び(c)は分離処理後の廃棄粉体についてのものである。
【図6】実施例装置とブラスト装置(前流)と外部吸引機器(後流)とで装置系を構成する場合の接続例を示す構成概要説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明を実施するための形態は、上記構成の粉粒体分離処理装置において、分離コーンは、内表面に複数の弾性体からなる整流リブを放射形成したものとされる。
【0028】
また、被処理混合物は、乾式エアーブラスト装置によるブラスト工程を経たものである。金属系研削材か非金属系研削材かを問わない。
【0029】
さらに、上記構成の粉粒体分離処理方法において、被処理混合物の落下誘導を増補するために、分離コーンの内表面に複数の弾性体からなる整流リブを放射形成して被処理混合物を受け止めるようにしている。
【実施例】
【0030】
本発明の一実施例を添付図面を参照して以下説明する。
【0031】
図1に本発明の粉粒体分離処理装置(以下、実施例装置X)の斜視説明図を示す。
【0032】
図示のとおり、実施例装置Xは、集塵装置や電気掃除機等の外部吸引機器〔図示省略〕に接続され、乾式エアーブラスト装置〔図示省略〕によるブラスト工程を経た研削材からなる粉粒体と、これに同伴される軽量異物類からなる被処理混合物を分離処理容器1内に吸引導入し、乾式で気流と比重差を応用して分離処理し、粉粒体を系内回収するとともに、軽量異物類(産廃粉体を含む)を外部吸引機器に向けて系外排出するものである。
【0033】
分離処理容器1は、粉粒体を回収貯留するホッパタンク4と、該ホッパタンク4の上部構造として被冠封着されるものであり、周面に被処理混合物を受け入れる吸引導入管2と、上面に外部吸引機器に接続する吸引排出管3を備えている。なお、ホッパタンク4の下部には脱着自在な回収コンテナ41を配設している。
【0034】
図2に実施例装置Xの断面視説明図、図3に図2中P部詳細説明図を示す。
【0035】
図示のとおり、分離処理容器1の内部構造は、その底面を漏斗状に形成した分離コーン11と、該分離コーン11の先端部から下向き凸状に垂下し、その口径を階段的に減少させて多段形成した筒口13を有している。
【0036】
また、分離コーン11には、内表面に複数の弾性体からなる整流リブ12を放射形成している。
【0037】
吸引排出管3は、その先端部を多重管構成(31;31)とし、それぞれの軸芯を分離コーン11の回転軸(円錐軸)に合致させ、かつ、それらの管径を筒口13の各口径に対応する小径なものとして遊挿して開口端部に臨ませたものとしている。
【0038】
図4に分離処理容器内での被処理混合物の流動制御を模式的に説明する断面視模式説明図を示す。
【0039】
図3及び図4にそれぞれ示すように、分離処理容器1内に吸引導入した被処理混合物Mを筒口13に向けて落下誘導するとともに、吸引排出管3(31;31)により軽量異物類m2(産廃粉体を含む)を多段階に吸引して系外排出し、残る粉粒体m1を自由落下させて系内回収するようにしている。
【0040】
より具体的には、被処理混合物Mを分離処理容器内で発生する気流を利用して軽重分離しながら、分離コーン11の内表面に受け止めて旋回と落下を一旦阻止し、跳ね返りを含む爾後の自由落下に任せ、筒口13に向けてカスケード状に落下誘導しながら、吸引排出管3(31;31)により軽量異物類m2(産廃粉体を含む)を多段階に吸引して系外排出し、残る粉粒体m1を落下回収するものである。
【0041】
ここで、分離コーン11の内表面に複数の弾性体からなる整流リブ12を放射形成して被処理混合物M(m1;m2)を受け止めることにより、旋回方向への流動を阻止し、かつ、落下誘導を増補するものとしている。
【0042】
以下、実験的事実の基づき実施例装置の作用効果を説明する。
【0043】
供試材は、ブラスト後未処理のガーネット研削材(被処理混合物)であり、図5(a)は、その粒度分布(粒径)を示す篩試験(はかり取り)の結果とそのデータプロットである。
【0044】
図(篩試験結果)から理解されるように、被処理混合物の全量に対して0.2mm未満の粉粒体が61.8重量%を占めている。
【0045】
図5(b)は、分離処理後に系内回収された再使用可能な粉粒体(図中名称のリサイクル可能粒体に同じ)の粒度分布(粒径)を示す篩試験(はかり取り)の結果とそのデータプロットである。
【0046】
図(篩試験結果)から理解されるように、被処理混合物の全量に対する0.2mm未満の粉粒体の割合は44.6重量%を占めている。
【0047】
図5(c)は、分離処理後の系外排出された廃棄粉体(図中名称の産廃粉体に同じ)の粒度分布(粒径)を示す篩試験(はかり取り)の結果とそのデータプロットである。
【0048】
図(篩試験結果)から理解されるように、被処理混合物の全量に対する0.2mm未満の粉粒体の割合は84.9重量%を占めている。
【0049】
なお、分離処理後に系内回収された再使用可能な粉粒体(以下、リサイクル可能粒体)と系外排出された廃棄粉体(以下、産廃粉体)の割合は65:35であった。
【0050】
〔考察及び効果〕
まず、ブラスト後未処理の被処理混合物において、リサイクル可能粒体(粒径0.2mm以上)と産廃粉体(粒径0.2mm未満)が占める割合は4:6程度である〔図5(a)参照〕。
【0051】
そこで、この被処理混合物(ブラスト後未処理)に対して分離処理をおこなって、該被処理混合物全量の65重量%を系内回収している〔データの図示は省略〕。
【0052】
このうち0.2mm未満の粉粒体の割合は44.6重量%を占めているから〔図5(b)参照〕、残る55.4重量%(すなわち被処理混合物全量の3割程度)が再使用において全く問題なく有効利用可能な粉粒体であるといえる。
【0053】
実際には、系内回収した65重量%のリサイクル可能粒体に、目減り分の35重量%相当のバージン材(研削材)を補充して再使用に供することになる。
【0054】
なるほど、リサイクル可能粒体には0.2mm未満の粉粒体が混入しているので、再使用におけるブラスト作業では研削性能がやや劣るのではないかとの懸念があるかもしれない。
【0055】
しかしながら、微粒子も圧縮空気に載って研削対象表面に衝突するので、研削性能に大きく影響することはないが、粉塵はやや増えることになる。
【0056】
いずれにしても、バージン材でブラスト工程を経た被処理混合物について、その6割程度を再使用に供するという点で、このマテリアルリサイクルは従前にない大幅なコストダウンに寄与するものである。
【0057】
もちろん、再使用に供されたブラスト後の研削材を被処理混合物として再度分離処理を施すことも考慮されてよい。当然のことながら、再処理の回数に応じて産廃粉体の割合が増大し、リサイクル可能粒体の系内回収率は低下するが、補充するバージン材(研削材)の割合を増やすことになるので、研削性能が大きく低下してゆく懸念はない。費用対効果を勘案すれば、再処理回数は数回に留めるの実際的である。
【0058】
一方、この被処理混合物(ブラスト後未処理)に対して分離処理をおこなって、該被処理混合物全量の35重量%を系外排出している〔データの図示は省略〕。
【0059】
このうち、約6割は0.1mm未満の粉体であり、2割強が0.1mm以上0.2mm未満の粉体であり、総じて8割強(すなわち被処理混合物全量の3割程度)が産廃粉体である〔図5(c)参照〕。
【0060】
したがって、系外排出される被処理混合物の8割強が廃棄粉体であり、これを受け入れる後流の集塵装置では無理な負荷をかけることなく塵埃処理を実行できる。
【0061】
なお、残る2割弱は廃棄側(産廃粉体)に混入したリサイクル可能粒体(粒径0.2mm以上)であり、廃棄処分を余儀なくすることになるが、現在のところ、本発明手法による分離精度の許容限界である。
【0062】
図6は実施例装置Xとブラスト装置(前流)と外部吸引機器(後流)とで装置系を構成する場合の接続例を示す構成概要説明図である。
【0063】
図6から理解されるように、実施例装置Xの前流に乾式エアーブラスト装置5を接続し、後流に集塵装置6、該集塵装置6に電気掃除機7を接続している。乾式エアーブラスト装置5に代替して床面スイーパ51又は吸い口(ホースアタッチメント)52を接続する場合がある。吸引導入から吸引排出に至る管路系(容器内を含む)は電気掃除機7のバキューム機能を駆動源とする吸引経路である。
【0064】
このように、ブラスト作業に係る各機器を現場配置して連携接続するので、作業性が向上し、しかもマテリアルリサイクルによりコストダウンが可能となるものである。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、既存の外部吸引機器と連携(接続)することにより、分離処理容器内で、カスケード状の落下誘導と吸引排出を協働させて被処理混合物の流動を制御しながら、軽量異物類(産廃粉体)を多段的に排出可能とし、リサイクル可能粒体を系内回収可能とする点で、比重差が小さい粉粒体と軽量異物類からなる被処理混合物について分離精度を増補する革新的な手法を提案するものであり、とりわけ乾式エアーブラスト装置のブラスト工程を経た研削材を被処理混合物として分離回収する際に有用であり、斯界において貢献が期待できる。
【符号の説明】
【0066】
1 分離処理容器
11 分離コーン
12 整流リブ
13 筒口
2 吸引導入管
3 吸引排出管
31 多重管
4 ホッパタンク
41 回収コンテナ
5 乾式エアーブラスト装置
51 床面スイーパ
52 吸い口(ホースアタッチメント)
6 集塵機
7 電気掃除機
M 被処理物混合物
m1 研削材(粉粒体)
m2 軽量異物類
X 粉粒体分離処理装置(実施例装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
比重や硬度が比較的大きく粒径が数mm以下のグリット状又はショット状の初期形状からなる粉粒体と、これに同伴される軽量異物類が混ざり合った被処理混合物を系内導入し、乾式で前記粉粒体と前記軽量異物類とを分離処理する粉粒体分離処理装置において、
集塵装置や電気掃除機等の外部吸引機器に接続した分離処理容器に前記被処理混合物を吸引導入し、該容器内で流動を制御しながら気流と比重差を利用して分離処理し、前記粉粒体を系内回収するとともに、前記軽量異物類を前記外部吸引機器に向けて系外排出するための粉粒体分離処理装置であって、
前記粉粒体を回収貯留するホッパタンクと、該ホッパタンクの上部構造として被冠封着され周面に前記被処理混合物を受け入れる吸引導入管と、上面に前記外部吸引機器に接続する吸引排出管を設けた分離処理容器を備えるとともに、
前記分離処理容器が、漏斗状に底面形成した分離コーンと、該分離コーンの先端部から下向き凸状に垂下し、その口径を階段的に減少させて多段形成した筒口を有してなり、
前記吸引排出管が、その先端部を多重管構成とし、それぞれの軸芯を前記分離コーンの回転軸(円錐軸)に合致させ、かつ、それらの管径を前記筒口の各口径に対応する小径なものとして遊挿して開口端部に臨ませてなり、
前記分離処理容器内に吸引導入した前記被処理混合物を前記筒口に向けて落下誘導するとともに、前記吸引排出管により軽量異物類を多段階に吸引して系外排出し、残る粉粒体を系内に落下回収するようにしたことを特徴とする粉粒体分離処理装置。
【請求項2】
分離コーンが、内表面に複数の弾性体からなる整流リブを放射形成したものである請求項1記載の粉粒体分離処理装置。
【請求項3】
被処理混合物が、乾式エアーブラスト装置によるブラスト工程を経たものである請求項1記載の粉粒体分離処理装置。
【請求項4】
集塵装置や電気掃除機等の外部吸引機器に接続され、乾式エアーブラスト装置によるブラスト工程を経た研削材からなる粉粒体と、これに同伴される軽量異物類からなる被処理混合物を分離処理容器内に吸引導入し、該容器内で流動を制御しながら乾式で気流と比重差を利用して分離処理し、前記粉粒体を系内回収するとともに、前記軽量異物類を前記外部吸引機器に向けて系外排出する粉粒体分離処理装置であって、
前記分離処理容器が、前記粉粒体を回収貯留するホッパタンクと、該ホッパタンクの上部構造として被冠封着され周面に前記被処理混合物を受け入れる吸引導入管と、上面に前記外部吸引機器に接続する吸引排出管を備えるとともに、
該分離処理容器の底面を漏斗状に形成した分離コーンと、該分離コーンの先端部から下向き凸状に垂下し、その口径を階段的に減少させて多段形成した筒口を有してなり、
前記吸引排出管が、その先端部を多重管構成とし、それぞれの軸芯を前記分離コーンの回転軸(円錐軸)に合致させ、かつ、それらの管径を前記筒口の各口径に対応する小径なものとして遊挿して開口端部に臨ませてなり、
前記分離処理容器内に吸引導入した前記被処理混合物を前記筒口に向けて落下誘導するとともに、前記吸引排出管により軽量異物類を多段階に吸引して系外排出し、残る粉粒体を自由落下させて系内回収するようにしたことを特徴とする粉粒体分離処理装置。
【請求項5】
分離コーンが、内表面に複数の弾性体からなる整流リブを放射形成したものである請求項4記載の粉粒体分離処理装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項記載の粉粒体分離処理装置において、
分離処理容器内で分離コーンによる被処理混合物の落下誘導と吸引排出管による軽量異物類の吸引排出とを協働させて流動を制御しながら粉粒体と軽量異物類とを分離処理するようにした粉粒体分離処理方法であって、
吸引導入により受け入れた前記被処理混合物を前記分離処理容器内で発生する気流を利用して軽重分離しながら、前記分離コーンの内表面に受け止めて旋回と落下を一旦阻止し、跳ね返りを含む爾後の自由落下に任せ、前記分離コーンの筒口に向けてカスケード状に落下誘導しながら、前記吸引排出管により軽量異物類を多段階に吸引して系外排出し、残る粉粒体を落下回収するようにしたことを特徴とする粉粒体分離処理方法。
【請求項7】
被処理混合物の落下誘導を増補するために、分離コーンの内表面に複数の弾性体からなる整流リブを放射形成して被処理混合物を受け止めるようにした請求項6記載の粉粒体分離処理方法。
【請求項8】
集塵装置や電気掃除機等の外部吸引機器に接続され、乾式エアーブラスト装置によるブラスト工程を経た研削材からなる粉粒体と、これに同伴される軽量異物類からなる被処理混合物を分離処理容器内に吸引導入し、該容器内で流動を制御しながら気流と比重差を利用して乾式で分離処理し、前記粉粒体を系内回収するとともに、前記軽量異物類を前記外部吸引機器に向けて系外排出するために、前記分離処理容器が、前記粉粒体を回収貯留するホッパタンクと、該ホッパタンクの上部構造として被冠封着され周面に前記被処理混合物を受け入れる吸引導入管と、上面に前記外部吸引機器に接続する吸引排出管を備えてなる粉粒体分離処理装置において、
前記分離処理容器の底面を漏斗状に形成した分離コーンと、該分離コーンの先端部から下向き凸状に垂下し、その口径を階段的に減少させた筒口を多段形成するとともに、
前記吸引排出管の先端部を多重管構成とし、それぞれの軸芯を前記分離コーンの回転軸(円錐軸)に合致させ、かつ、それらの管径を前記筒口の各口径に対応する小径なものとして遊挿して開口端部に臨ませてなり、
前記分離処理容器内で前記分離コーンによる前記被処理混合物の落下誘導と前記吸引排出管による前記軽量異物類の吸引排出とを協働させて流動を制御しながら前記粉粒体と前記軽量異物類とを分離処理するようにした粉粒体分離処理方法であって、
吸引導入により受け入れた前記被処理混合物を前記分離処理容器内で発生する気流を利用して軽重分離しながら、前記分離コーンの内表面に受け止めて旋回と落下を一旦阻止し、跳ね返りを含む爾後の自由落下に任せ、前記筒口に向けてカスケード状に落下誘導しながら、前記吸引排出管により軽量異物類を多段階に吸引して系外排出し、残る粉粒体を落下回収するようにしたことを特徴とする粉粒体分離処理方法。
【請求項9】
被処理混合物の落下誘導を増補するために、分離コーンの内表面に複数の弾性体からなる整流リブを放射形成して被処理混合物を受け止めるようにした請求項8記載の粉粒体分離処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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