説明

粉粒体散布装置

【課題】拡散手段の着脱作業等の煩わしい作業を必要とすることなく、実際に放出される粉粒体の量を計測する際に粉粒体の回収を良好に行うことが可能となる粉粒体散布装置を提供する。
【解決手段】繰出し手段25から繰り出される粉粒体を圃場に拡散放出させる回転駆動式の拡散手段27と、繰出し手段25と拡散手段27の作動を制御する制御手段とが備えられ、制御手段が、圃場の単位面積あたりに設定量の粉粒体を供給する通常作業モードと、その通常作業モードにおける繰出し量と同等な繰出し量にて粉粒体を繰り出すように繰出し手段25を作動させるとともに、通常作業用駆動状態よりも粉粒体の跳ね飛ばしが少ない計量用駆動状態で拡散手段27を作動させる計量用動作を実行する計量用モードとに切り換え自在に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯留部に貯留される粉粒体を繰出す繰出し手段と、前記繰出し手段から繰り出される粉粒体を圃場に拡散放出させる回転駆動式の拡散手段と、前記繰出し手段と前記拡散手段の作動を制御する制御手段とが備えられている粉粒体散布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記粉粒体散布装置において、従来では、貯留部に貯留されている粉粒体の一例としての薬剤が供給経路を通して供給されて回転駆動式の拡散手段によって拡散散布させるように構成され、且つ、例えば植付け対象苗における複数株の苗を送り出し供給する動作に同調させて、開閉機構により供給経路を設定時間だけ開状態にさせて薬剤を拡散手段に供給するように構成され、回転駆動式の拡散手段は常に同じ回転数で駆動されるように構成されていた(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−151559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したような粉粒体散布装置では、実際に圃場に散布供給される粉粒体(薬剤)の量が予め設定した供給量になっているか否かを確認するためには、粉粒体散布装置を実際に作動させて、例えば、拡散手段の周囲を囲うように回収容器を用意して、拡散手段により散布される粉粒体をこの回収容器により回収して、その回収した粉粒体の重量を計測する等の計量作業により、実際に放出される粉粒体の量を計測する必要がある。
【0005】
しかし、上記従来構成では、上述したような計量作業を行う場合であっても、回転駆動式の拡散手段は常に同じ回転数で駆動されるように構成されているから、計量作業の際に粉粒体の回収を良好に行えないものとなるおそれがある。
【0006】
つまり、粉粒体をできるだけ広範囲に拡散放出させるために、圃場に粉粒体を散布する散布作業を行うときは、回転駆動式の拡散手段を高速で連続的に回転駆動させる必要があるが、計量作業の際にもこのように回転駆動式の拡散手段を高速で連続的に回転駆動させている状態で粉粒体を繰り出すと、粉粒体が強い打撃を受けて大きく飛散して回収容器の外側に撒き散らしてしまう等、粉粒体の回収を良好に行えないものとなるおそれがあるからである。
尚、このような不利を回避するために、計量を行う場合に回転駆動式の拡散手段を取り外して、繰出した粉粒体をそのまま回収容器に回収することも考えられるが、このような構成にすると、回転駆動式の拡散手段を取り外したり、再度、取り付ける等の煩わしい作業が必要となり、作業性の面で不利がある。
【0007】
本発明の目的は、拡散手段の着脱作業等の煩わしい作業を必要とすることなく、実際に放出される粉粒体の量を計測する際に粉粒体の回収を良好に行うことが可能となる粉粒体散布装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る粉粒体散布装置は、貯留部に貯留される粉粒体を繰出す繰出し手段と、前記繰出し手段から繰り出される粉粒体を圃場に拡散放出させる回転駆動式の拡散手段と、前記ものであって、前記制御手段が、圃場の単位面積あたりに設定量の粉粒体を供給するように前記繰出し手段を作動させるとともに、通常作業用回転数で回転駆動する通常作業用駆動状態で粉粒体を圃場に拡散放出させるように前記拡散手段を作動させる通常散布動作を実行する通常作業モードと、前記通常作業モードにおける繰出し量と同等な繰出し量にて粉粒体を繰り出すように前記繰出し手段を作動させるとともに、前記通常作業用駆動状態よりも粉粒体の跳ね飛ばしが少ない計量用駆動状態で前記拡散手段を作動させる計量用動作を実行する計量用モードとに切り換え自在に構成されている点にある。
【0009】
第1特徴構成によれば、制御手段が、通常作業モードに切り換えられて通常作業装置を実行すると、粉粒体を設定量ずつ供給するように繰出し手段を作動させ、且つ、粉粒体を圃場に拡散放出させるように拡散手段を作動させて、圃場の単位面積毎に粉粒体を設定量ずつ供給することができる。そして、制御手段が、計量用モードに切り換えられて計量用動作を実行すると、通常作業モードにおける繰出し量と同等な繰出し量にて粉粒体を繰り出すように繰出し手段を作動させ、且つ、通常作業用駆動状態よりも粉粒体の跳ね飛ばしが少ない計量用駆動状態で拡散手段を作動させることになる。
【0010】
前記通常作業用駆動状態では、粉粒体を圃場の所定領域に粉粒体を散布させるために、高速の通常作業用回転数にて拡散手段を連続的に回転作動させる必要があるが、前記計量用駆動状態では、通常作業用駆動状態よりも粉粒体の跳ね飛ばしが少ない状態で拡散手段を作動させることになるので、粉粒体が大きく飛散して回収容器からはみ出すように外側に撒き散らすといった不利がなく、粉粒体の回収を良好に行えるものとなる。
【0011】
従って、第1特徴構成によれば、拡散手段の着脱作業等の煩わしい作業を必要とすることなく、実際に散布供給される粉粒体の供給量を計測する際に粉粒体の回収を良好に行うことが可能となる粉粒体散布装置を提供できるに至った。
【0012】
本発明の第2特徴構成は、第1特徴構成に加えて、前記制御手段が、前記計量用駆動状態として、前記繰出し手段により設定量の粉粒体を繰出してその繰出し作動を停止するまでの間、前記通常作業用回転数よりも低速の計量用回転数で回転させるように前記拡散手段の作動を制御するように構成されている点にある。
【0013】
第2特徴構成によれば、計量用モードでは、繰出し手段により設定量の粉粒体を繰出してその繰出し作動を停止するまでの間、通常作業用回転数よりも低速の計量用回転数で拡散手段が回転するので、拡散手段が通常作業用回転数のような高速で回転する場合に比べて、粉粒体が回収容器からはみ出すように外側に撒き散らすおそれが少ないものになる。
【0014】
本発明の第3特徴構成は、第2特徴構成に加えて、前記制御手段が、電源投入されて起動すると、計量用回転数で回転させるように前記拡散手段の作動を制御する予備モードに設定されるように構成され、その予備モードにおいて手動操作式の計量指令手段により計量の開始が指令されると前記計量用モードに切り換えられ、前記予備モードにおいて作業の開始が指令されると前記通常作業モードに切り換えられるように構成されている点にある。
【0015】
第3特徴構成によれば、制御手段が電源投入されて起動すると、計量用回転数で回転させるように拡散手段の作動を制御する予備モードに設定される。そして、その予備モードにおいて、計量用モードに切り換えるときは、手動操作式の計量指令手段を操作することにより対応でき、又、計量用モードではなく、圃場への粉粒体の散布作業を行うときは、前記予備モードにおいて作業の開始を指令すると通常作業モードに切り換えることができる。
【0016】
このように制御手段が電源投入されて起動したときに、拡散手段が計量用回転数で回転するので、計量作業を行うときに、拡散手段が通常作業用回転数にて回転する状態で誤って計量作業することを回避でき、しかも、圃場への粉粒体の散布作業を行うときに、煩わしいモードの切り換え操作を行うことなく、そのまま作業の開始を指令するだけで対応でき、操作の煩わしさが少ないものとなる。
【0017】
本発明の第4特徴構成は、第1特徴構成に加えて、前記制御手段が、前記計量用駆動状態として、前記繰出し手段により設定量の粉粒体を繰出してその繰出し作動を停止するまでの間は前記拡散手段の回転を停止させ、且つ、粉粒体の繰出し作動が停止したのちに設定時間だけ回転させるように前記拡散手段の作動を制御するように構成されている点にある。
【0018】
第4特徴構成によれば、計量用モードでは、繰出し手段により設定量の粉粒体を繰出してその繰出し作動を停止するまでの間は拡散手段の回転を停止しているので、繰り出された粉粒体は停止している拡散手段にて受止められるが、繰出し量が多くなると、あふれ出て下方に落下するので、拡散手段の周囲を覆うように配備されている回収容器にて回収することができる。そして、粉粒体の繰出し作動が終了したのちに設定時間だけ拡散手段を回転させるから、拡散手段にて受止められている粉粒体を拡散手段の回転による遠心力にて外方に飛散させることにより回収容器にて回収することができる。このとき、拡散手段は停止状態から回転を開始するので、回転し始めるときは、低回転状態から回転速度が上昇していくので、連続的に高速で回転している場合に比べて粉粒体が回収容器からはみ出すように外側に撒き散らすおそれが少ないものになる。
【0019】
本発明の第5特徴構成は、第1特徴構成に加えて、前記制御手段が、前記計量用駆動状態として、前記繰出し手段により設定量の粉粒体を繰出してその繰出し作動を停止するまでの間、回転状態と回転停止状態とを交互に現出させる形態で前記拡散手段の作動を制御するように構成されている点にある。
【0020】
第5特徴構成によれば、計量用モードでは、繰出し手段により設定量の粉粒体を繰出してその繰出し作動を停止するまでの間、拡散手段が回転状態と回転停止状態とを交互に繰り返すので、回転が停止しているときには、繰り出された粉粒体は、停止している拡散手段にて受止められるか又は回収容器にて外側に撒き散らすおそれの無い状態で回収することができ、しかも、停止状態から回転状態に切り換わり、拡散手段が回転し始めるときは、回転速度が低速状態から段々と回転速度が上昇していくので、連続的に高速で回転している場合に比べて粉粒体が回収容器からはみ出すように外側に撒き散らすおそれが少ないものになる。
【0021】
本発明の第6特徴構成は、第1特徴構成〜第5特徴構成のいずれかに加えて、前記制御手段が、前記通常作業モードに切り換えられると、繰出し用作業信号が入力されるに伴って前記通常散布動作を実行するように構成され、前記計量用モードに切り換えられると、繰出し用作業信号が入力されなくても前記計量用動作を実行するように構成されている点にある。
【0022】
第6特徴構成によれば、制御手段は、通常作業モードに切り換えられると、繰出し用作業信号が入力されるに伴って通常散布動作を実行するので、粉粒体散布装置が圃場において粉粒体を散布すべき領域に対応する位置にあるときに、繰出し用作業信号が入力されるようにしておくと、圃場における散布すべき領域に適切に粉粒体を散布させることが可能となり、使い勝手がよいものとなる。
【0023】
一方、計量用モードでは、粉粒体を圃場に実際に散布放出させるものではなく、散布放出される粉粒体を回収容器により回収するものであるから、計量用モードに切り換えられると、繰出し用作業信号が入力されなくても計量用動作を実行するのである。このようにすると、計量作業を能率よく行うことができ、計量作業の後に通常作業モードでの作業に迅速に移行することができる。
【0024】
本発明の第7特徴構成は、第1特徴構成〜第6特徴構成のいずれかに加えて、前記拡散手段が、横向き姿勢の受止め面を備えるとともに縦向きの回転軸芯周りで駆動回転される受止め体と、前記受止め面に立設された拡散用羽根体と、前記受止め体を回転駆動する電動モータとを備えて構成されている点にある。
【0025】
第7特徴構成によれば、受止め体が電動モータにより回転駆動されて、繰出し手段から繰り出された粉粒体は、受止め体の受止め面に落下して受止められるか、あるいは、落下途中にて回転する拡散用羽根体によって打撃を受けてそのまま外方に向けて拡散放出されることになる。受止め体上にて受止められた粉粒体は、受止め体の回転に伴って均される状態で周方向に移動するとともに、拡散用羽根体によって外方に向けて拡散放出される。その結果、受止め体にて落下供給された粉粒体を、周方向に極力均等に分散された状態で外方に向けて拡散放出させることができる。
【0026】
本発明の第8特徴構成は、第1特徴構成〜第7特徴構成のいずれかに加えて、前記制御手段が、手動操作式の調節操作具の操作に基づいて前記繰出し手段による粉粒体の繰出し量を変更調整自在に構成され、且つ、粉粒体の繰出し量を調節するときの調節操作状態として、前記調節操作具の操作位置が最小調節位置から最大調節位置に変化するに伴って粉粒体の繰出し量が漸次増大する形態で変化する調節操作状態であって且つ前記調節操作具の操作位置が同じであるときの粉粒体の繰出し量が互いに異なる複数の調節操作状態に切り換え自在に構成され、
前記制御手段の前記調節操作状態の切り換えを指令する手動操作式の調節操作状態切換手段が備えられ、
前記制御手段が、前記計量用モードにおける粉粒体の散布量が前記調節操作状態切換手段及び前記調節操作具の設定情報に基づいて設定された散布量になるように、前記繰出し手段の作動を制御するよう構成されている点にある。
【0027】
第8特徴構成によれば、制御手段が、複数の調節操作状態に切り換え自在であり、調節操作状態切換手段により切り換えが指令されると調節操作状態が切り換えられる。そして、いずれかの調節操作状態に切り換えられると、調節操作具の操作位置が最小調節位置から最大調節位置に変化するに伴って粉粒体の繰出し量が漸次増大する形態で変化する。
【0028】
又、制御手段の調節操作状態が前記いずれかの調節操作状態とは異なる調節操作状態に切り換えられると、調節操作具の操作位置が最小調節位置から最大調節位置に変化するに伴って粉粒体の繰出し量が漸次増大する形態で変化することは、前記いずれかの調節操作状態の場合と同じであるが、調節操作具の操作位置が同じであるときの粉粒体の繰出し量が前記いずれかの調節操作状態の場合とは異なる。
【0029】
例えば、圃場の単位面積当たりに多めの散布量が必要とされる種類の粉粒体を用いる場合には、複数の調節操作状態のうちの調節操作具の操作位置が同じであるときの粉粒体の繰出し量が他の調節操作状態よりも大きい値となる調整操作状態を使用する。又、圃場の単位面積当たりに必要とされる散布量が少なめの粉粒体を用いる場合には、複数の調節操作状態のうちの調節操作具の操作位置が同じであるときの粉粒体の繰出し量が他の調節操作状態よりも小さい値となる調整操作状態を使用する。
【0030】
このように粉粒体の種類の違いに応じて適切な調整操作状態を使用することによって、調節操作具の操作位置が最小調節位置から最大調節位置に変化するに伴う粉粒体の繰出し量の変化度合いを、該当する種類の粉粒体に応じて適切な変化度合いに設定することができ、繰出し量の調節操作を精度よく行うことが可能となる。
【0031】
そして、制御手段が、計量用モードにおいて、粉粒体の散布量が調節操作状態切換手段及び調節操作具の設定情報に基づいて設定された散布量になるように、繰出し手段の作動を制御するよう構成されているから、計量用モードにおいて繰出し量の調節を精度よく行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】乗用型田植機の全体側面図である。
【図2】乗用型田植機の全体平面図である。
【図3】薬剤散布装置の背面図である。
【図4】薬剤散布装置の取り付け部の分解斜視図である。
【図5】薬剤散布装置の縦断側面図である。
【図6】薬剤散布装置の底面図である。
【図7】電気制御ユニットの操作部を示す側面図である。
【図8】拡散放出機構の横断平面図である。
【図9】繰出し機構の縦断側面図である。
【図10】繰出し機構の横断平面図である。
【図11】繰出し機構の縦断正面図である。
【図12】繰出し機構の分解斜視図である。
【図13】ケーシングのシール部材配設状態を示す図である。
【図14】薬剤散布装置の電気回路図である。
【図15】制御動作のフローチャートである。
【図16】調節操作位置と開作動時間との関係を示す図である。
【図17】別実施形態の制御動作のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面に基づいて、本発明に係る粉粒体散布装置を乗用型田植機に装備した薬剤散布装置に適用した場合について説明する。
図1に示すように、乗用型田植機は、操向操作自在な左右一対の前輪1及び左右一対の後輪2を備えた走行機体3の前部側に、エンジン4及びミッションケース5を備え、走行機体3の中央部にステアリングハンドル6等を装備した操縦部7と運転座席8とを備えて構成され、又、走行機体3の左右両側に予備苗のせ台9が配設されている。走行機体3の後方には、リフトシリンダ10の操作によりリンク機構11を介して昇降操作自在に苗植付装置12が連結され、その苗植付装置12の後方に、粉粒体としての例えば除草剤等の薬剤を散布する粉粒体散布装置としての薬剤散布装置13が備えられている。図2に示すように、苗植付装置12は4条植型式に構成されている。ミッションケース5には、変速レバー16を操作することにより変速操作される静油圧式の無段変速装置(図示せず)が備えられている。
【0034】
図1,2に示すように、苗植付装置12は、1個のフィードケース14に連結された機体左右方向に延びる支持フレーム(図示せず)に、2個の伝動ケース15が後向きに片持ち状に連結されている。伝動ケース15の後部の左右両側部に植付アーム18がクランク機構17により上下に揺動自在に支持され、植付アーム18に植付爪22が備えられており、苗植付装置12の下部には接地フロート19が支持されている。
又、苗植付装置12には、苗のせ台20が左右に一定ストロークで往復横送り駆動自在に備えられており、苗のせ台20がストロークエンドに達する毎に、載置された苗を所定量だけ下方に送るベルト式の縦送り装置21が苗のせ台20に備えられている。
【0035】
そして、フィードケース14に伝達される動力が伝動ケース15に伝達されて、植付アーム18が駆動される一方、フィードケース14に伝達される動力により苗のせ台20が往復横送り駆動されて、苗のせ台20の下部から上下に揺動運動する植付アーム18が、その先端部に備えられた植付爪22により1株ずつ苗を取り出して田面に植え付けるのであり、苗のせ台20が往復横送りのストロークエンドに達すると、フィードケース14に伝達される動力により縦送り装置21が駆動されて、苗のせ台20に載置された苗が下方に送られる構成となっている。
【0036】
次に、薬剤散布装置13について説明する。
図1〜図3に示すように、左右両側の伝動ケース15に夫々固定されて架設された支持フレーム23Aの中間部から支柱23Bを固定立設してあり、この支柱23Bの上部に、
苗植付け状態において田面から設定距離上方に位置する状態で薬剤散布装置13が支持される構成となっている。そして、図4及び図5に示すように、薬剤散布装置13は、薬剤を貯留する貯留部としての貯留ホッパー24と、その貯留ホッパー24の下部に位置して貯留される薬剤を繰り出す繰出し手段としての繰出し機構25と、繰り出されて供給経路としての案内通路26(図5参照)を通して落下供給される薬剤を拡散させる回転式の拡散手段としての拡散放出機構27と、繰出し機構25の作動を制御するための電気制御ユニット28とを備えて構成されている。
【0037】
繰出し機構25及び拡散放出機構27は、ケーシング29に収納される構成となっており、このケーシング29は、合成樹脂材からなり、拡散放出機構27に薬剤を落下供給する案内通路26を構成する筒部30が一体形成されている。図3,図5,図6に示すように、ケーシング29は、左右両側の分割ケーシング部分29a,29b(ケース単位体の一例)を合わせ面w同士で接続する左右2つ割り構造となっている。
【0038】
そして、図13に示すように、この左右両側の分割ケーシング部分29a,29bの合わせ面wのうち、ケーシング29の下面29Aに対応する下部合わせ面部分w1以外の他の合わせ面部分w2、すなわち、ケーシング29の上面及び側面に対応する合わせ面部分w2には、ケーシング29内部に水が侵入することを防止するための防水性のシール材Siが設けられている。このように左右両側の分割ケーシング部分29a,29bの合わせ面wのうち下部合わせ面部分w1以外の他の合わせ面部分w2にシール材Siを設けることで、例えば、雨水や作業終了後に行われる洗浄作業の際に水が降りかかることがあっても、ケーシング29の内部、特に、薬剤が通過する筒部30の内部に水が侵入することを回避できるものとなる。尚、ケーシング29の下面29Aに対応する箇所に位置する下部合わせ面部分w1は、上記したような雨水や洗浄水が浸入するおそれは少ないので、シール材Siを設けないようにしてコスト低減を図るようにしている。
【0039】
図5に示すように、繰出し機構25は、薬剤の通過用開口31が形成された金属製の開口形成板32と、通過用開口31を閉塞する閉状態と薬剤の通過用開口31を開放する開状態とにわたりスライド移動自在な金属製のシャッター部材33と、そのシャッター部材33を閉状態と開状態とに切り換えるアクチュエータとしてのソレノイド34とを備えて構成されている。
【0040】
図9,10,11に示すように、開口形成板32とシャッター部材33とが上下に重なる状態で設けられ、シャッター部材33が開口形成板32に形成された通過用開口31を閉じると閉状態となり、薬剤の落下供給が停止され、シャッター部材33が通過用開口31を開放する位置までスライドすると、通過用開口31が開放されて開状態となり、この開状態では、通過用開口31を通して薬剤が下方に落下供給される構成となっている。
この構成では、通過用開口31の下方側では、シャッター部材33だけが存在しており、シャッター部材33の下方には他の部材が存在しないので、薬剤が詰まり難い構成となっている。
【0041】
開口形成板32には、通過用開口31が形成される水平面部分32aの開口側端部に下方に向けて屈曲する下向き屈曲片32bが形成され、それと反対のソレノイド34側端部には上方に向けて屈曲する上向き屈曲片32cが形成されている。又、水平面部分32aの開口側端部とソレノイド34側端部との中間部における幅方向両側部夫々に、シャッター部材33が下方に離間するのを防止するために、シャッター部材33を上下から囲うように略コ字状に屈曲する保持部32dが形成されている。つまり、開口形成板32は、1枚のプレートを屈曲させることにより、下向き屈曲片32b、上向き屈曲片32c、及び、保持部32dが形成されている。
【0042】
この開口形成板32は、下向き屈曲片32bがケーシング29の筒部30の内側に形成された係止凹部35に係合して、シャッター部材33がソレノイド34に近接する方向にスライド移動することによって連なって移動することが規制され、且つ、上向き屈曲片32cがケーシング29の筒部30の外側の端縁部36に係合して、シャッター部材33がソレノイド34から離間する方向にスライド移動することによって連なって移動することが規制される構成となっている。
【0043】
図12に示すように、通過用開口31は、ソレノイド34によるシャッター部材33の移動方向に沿う方向での開口幅L1が移動方向と直交する方向での開口幅L2よりも小になるように横長の長方形状に形成され、開口面積を充分大きくしながらも、ソレノイド34によるシャッター部材33の移動操作量を短くすることができるようにしている。
【0044】
シャッター部材33は、帯板状に形成されて、ソレノイド34の操作ロッド37に対して連結ピン38で枢支連結される構成となっており、開口形成板32の下側に接する状態で備えられ、保持部32dによって開口形成板32から上下に離間することを阻止する構成となっている。又、図9,10に示すように、シャッター部材33の開口遮蔽箇所33Aよりもソレノイド34側に寄った箇所に、開口形成板32とシャッター部材33との間に嵌まり込む薬剤を下方に落下させるために上下方向に貫通する掻き出し孔39が形成されている。
【0045】
図5に示すように、ケーシング29における筒部30の横一側箇所には、ソレノイド34を収納するための収納空間としてのソレノイド収納室40が形成されており、反対側箇所には、拡散放出機構27における電動モータ41を収納するための収納空間としてのモータ収納室42が形成されている。ソレノイド収納室40側の筒部30の側壁には、シャッター部材33と開口形成板32とを挿通するためのスリット孔43が形成されている。
図9に示すように、このスリット孔43の上側には、開口形成板32とシャッター部材33とを水平姿勢で保持するための幅広案内部44が形成されており、この幅広案内部44の上面には、通過用開口31に向かうほど下方に傾斜する傾斜面45が全幅にわたって形成されている。又、スリット孔43の上側における幅方向両側部には、開口形成板32の浮き上がりを防止する両側ガイド部46が形成されている。
【0046】
スリット孔43の下部側には、幅方向両側部にシャッター部材33を受止め支持する下側ガイド部47が形成されるとともに、シャッター部材33を開状態に切り換えたときに、掻き出し孔39の下方から排出される薬剤を拡散放出機構27に案内できるように幅広の排出用空間48が形成されている(図9参照)。
【0047】
シャッター部材33と開口形成板32とを挿通するためのスリット孔43が形成される箇所に対して、通路幅方向の反対側に寄せた状態で通過用開口31が形成されており、 又、案内通路26は、平面視で横断面形状が略四角形状に形成されるが、排出用空間48の下方側には、出口54側に向かうほど径方向に沿う方向での案内通路26の幅が順次幅狭になるように傾斜面56が形成されて順次幅を狭くしてあり、その幅狭の箇所は通過用開口31を通過した薬剤がそのまま抵抗になることなく直線状に落下するように構成されている。このようにして、繰り出された薬剤が流動抵抗の少ない状態で良好に拡散放出機構27に向けて案内供給できるようにしている。
【0048】
図9に示すように、シャッター部材33は、ソレノイド34に備えられるコイルバネ49が座金50を介して連結ピン38に作用することにより閉位置(通過用開口31を閉じる位置)に移動付勢され、ソレノイド34に通電することによりコイルバネ49の付勢力に抗して引き操作することにより開位置(通過用開口31を開放する位置)に移動操作することができるように構成されている。
【0049】
図5,8に示すように、拡散放出機構27は、横向き姿勢の受止め面51Aを備えるとともに縦向きの回転軸芯周りで駆動回転される受止め体51と、受止め面51Aに立設された拡散用羽根体52と、受止め体51を縦向きの回転軸芯Y周りで回転駆動する電動モータ41とを備えて構成されている。
【0050】
受止め体51は縦軸芯Y周りで回転する状態で板面が横向き姿勢となるように設けられた円板形状になっており、拡散用羽根体52が、周方向に沿って分散配置される状態で且つ受止め体51における回転軸芯Yから径方向外方側に寄った状態で放射状に複数備えられている。従って、受止め体51における回転軸芯Yを含むその周囲の領域は、周方向全域にわたって拡散用羽根体52が存在しない羽根無し領域Qとして形成されている。
【0051】
具体的には、図8に示すように、拡散用羽根体52は、周方向に沿って約60度ずつ等間隔をあけて分散配置される状態で6個備えられており、各拡散用羽根体52は、受止め体51の半径の約半分の距離に相当する横幅を有し、且つ、横幅の略半分の距離に相当する高さを有する状態で、受止め体51の径方向外方側に寄った位置に立設される構成となっている。
【0052】
図5に示すように、拡散用羽根体52の径方向での内端縁は径方向外方側ほど高くなる傾斜縁52Aに形成されている。拡散用羽根体52の上端縁は水平に形成され、拡散用羽根体52の上下高さが受止め体51の受止め面51Aの傾斜の分、径方向外方側ほど低くなるように形成されている。
【0053】
尚、受止め体51及び拡散用羽根体52は合成樹脂材にて一体形成される構成となっており、受止め体51には、電動モータ41の駆動軸53に外嵌する筒軸部80も一体形成されており、筒軸部80は、電動モータ41の駆動軸53に外嵌装着されてそれに横向きに装着されたビスbiを駆動軸53に圧接して受止め体51が駆動軸53と一体回転するように連結されている。
【0054】
図5に示すように、円板形状の受止め体51は中央部が下向きに突出する形状となっており、受止め体51の上部側の位置する受止め面51Aが回転軸芯Y側ほど下方に位置する中凹み状の傾斜面に形成されている。このように構成することで薬剤を周方向に均す機能をより発揮させ易いようにしている。
【0055】
そして、受止め体51における上方側には上部側を仕切る天井壁部58Aが設けられ、又、受止め体51の外周側には、周方向の一部の領域から薬剤が外方に拡散放出されるのを規制する規制用縦壁58Bが備えられ、且つ、この規制用縦壁58Bの両側部の夫々に、受止め体51における周方向の他の領域から外方に拡散放出される薬剤の拡散放出方向を調整する拡散方向調整板59,60が備えられている。
【0056】
図6に示すように、拡散方向調整板59,60は、ボルトBoにより天井壁部58Aに取り付けられており、ボルトBoを緩めて、左右回動位置を変更させて再度締め付けることで薬剤の拡散放出方向(開き角度)を変更調整することが可能なように構成されている。
薬剤の拡散放出方向(開き角度)を変更調整するにあたって、ボルトBoの緩み操作により位置調整する構成に代えて、拡散方向調整板59,60を、天井壁部58Aに対して縦軸芯周りで回動自在に且つ摩擦により位置保持する状態で取り付け、手動操作にて摩擦保持力に抗して任意の操作位置に位置変更可能に構成するものでもよい。
【0057】
規制用縦壁58Bは、ケーシング29に一体成形される状態で設けられ、受止め体51の外周縁の近傍に、周方向に沿って約半周にわたり受止め体51の外周部を覆うように、所定の上下幅を有する状態で且つ外周縁に沿うように平面視で半円弧状に形成されている。
【0058】
次に、薬剤散布装置13には、繰出し機構25及び拡散放出機構27の作動を制御する制御手段としての制御装置66が備えられ、この制御装置66は、圃場の単位面積あたりに設定量の薬剤を供給するように繰出し機構25を作動させるとともに、通常作業用回転数で回転駆動する通常作業用駆動状態で薬剤を圃場に拡散放出させるように拡散放出機構27を作動させる通常散布動作を実行する通常作業モードと、通常作業モードにおける繰出し量と同等な繰出し量にて薬剤を繰り出すように繰出し機構25を作動させるとともに、通常作業用駆動状態よりも薬剤の跳ね飛ばしが少ない計量用駆動状態で拡散放出機構27を作動させる計量用動作を実行する計量用モードとに切り換え自在に構成されている。
【0059】
又、制御装置66は、最小調節位置と最大調節位置との間の操作範囲内で操作自在な手動操作式の調節操作具としてのポテンショメータ式の散布量調節器68の操作に基づいて、繰出し機構25による薬剤の繰出し量を変更調整自在に構成され、薬剤の繰出し量を調節するときの調節操作状態として、散布量調節器68の操作位置が最小調節位置から最大調節位置に変化するに伴って薬剤の繰出し量が漸次増大する形態で変化する調節操作状態であって且つ散布量調節器68の操作位置が同じであるときの薬剤の繰出し量が互いに異なる2つの調節操作状態のいずれかに切り換え自在に構成され、制御装置66の調節操作状態の切り換えを指令する調節操作状態切換手段Kの一例である調整操作具としての切換スイッチ69が備えられている。
【0060】
以下、繰出し量を調節するための具体的な制御構成について説明する。
図14に示すように、制御装置66は電気制御ユニット28に備えられている。そして、走行機体3には充電式のバッテリーが搭載されておらず、エンジン4によって駆動される外部電源としての発電機61(例えば、前照灯等を点灯させるために設けられる発電機等)にて発電された電力が電気制御ユニット28に供給されるように構成されている。走行機体3にはバッテリーが搭載されていないので、エンジン4はリコイル式の始動装置(図示せず)により始動される構成となっている。
【0061】
電気制御ユニット28は、電源入切スイッチ62を介して供給される発電機61からの交流電力を整流回路63により整流したのち第1レギュレータ回路64により直流12Vに電圧調整して、その直流12Vの電力を電動モータ41及びソレノイド34の駆動用の電力として利用するように構成され、さらに、第1レギュレータ回路64の出力を第2レギュレータ回路65により直流5Vに電圧調整して制御装置66の駆動用電力として利用するように回路が構成されている。直流12Vの電力は、制御装置66によりオンオフ制御されるスイッチングトランジスタ67を介してソレノイド34に供給されるように構成されている。
【0062】
直流12Vの電力は電動モータ41にも供給されるが、制御装置66により例えばパルス幅変調により電動モータ41に供給する電力を調整する駆動回路71と、電動モータ41の回転数を検出するホール素子等からなる回転センサ72とが設けられ、回転センサ72の検出結果を制御装置66にフィードバックして、設定回転数で受止め体51を回転する状態になるように、制御装置66が、駆動回路71に出力するパルス信号のデューティ比を変更して電動モータ41に供給される電力を調節するように、電動モータ41の駆動状態を制御するように構成されている。
【0063】
このように構成することで、例えば、発電機61による発電状態が変動すること等に起因して電源電圧が変動することがあっても、電動モータ41により、受止め体51を設定回転数で回転することができるように構成されている。
【0064】
尚、前記回転センサ72は、図示はしていないが、小型のプリント配線基板に端子を半田付けして固定される状態で装着されるものであり、その上方側はプリント配線基板における絶縁用のレジスト膜によって防水を図るようにしてあり、半田付けされた箇所は別途、防湿用シール材にて防水シールを施すようにしている。
【0065】
ちなみに、受止め体51が回転する設定回転数としては、通常作業モードでは高速の通常作業用回転数が設定され、計量用モードでは通常作業用回転数よりも低速の計量用回転数が設定される。
【0066】
図14に示すように、切換スイッチ69及び電源入切スイッチ62は、1つのロータリースイッチRSにて構成され、このロータリースイッチRSは、3位置に切り換え自在であり、中央の「切」位置に操作すると、電源入切スイッチ62が切り状態となり、「A」位置及び「B」位置に操作すると、電源入切スイッチ62が入り状態となり且つ「A」位置又は「B」位置の違いにより上述したような制御装置66の調節操作状態が互いに異なるものに切り換わる構成となっている。
【0067】
図7に示すように、切換スイッチ69及び電源入切スイッチ62を兼用する1つのロータリースイッチRS及び散布量調節器68が、ケーシング29の横一側面の操作パネル面73に並べて備えられる構成となっている。又、この操作パネル面73には、計量用モードを設定するための押し操作式の計量スイッチ74が設けられている。
【0068】
次に、制御装置66における調節操作状態の設定について説明する。
ロータリースイッチRSが「A」位置に操作されると、散布量調節器68の操作位置が最小調節位置から最大調節位置に変化するに伴って、ソレノイド34を開状態に切り換える開作動用の設定時間(薬剤の繰出し量に相当)(以下、開作動時間と称する)が漸次増大する形態で変化する調節操作状態であって且つ散布量調節器68の操作位置が同じであるときの開作動時間が少ない状態となる第1調節操作状態T1が設定される(図16参照)。
【0069】
又、ロータリースイッチRSが「B」位置に操作されると、散布量調節器68の操作位置が最小調節位置から最大調節位置に変化するに伴って開作動時間が漸次増大する形態で変化する調節操作状態であって且つ散布量調節器68の操作位置が同じであるときの開作動時間が第1調節操作状態T1よりも大となる第2調節操作状態T2が設定される(図16参照)。
【0070】
ちなみに、圃場の単位面積当たりに少なめの量を供給する薬剤を使用する場合には、第1調節操作状態T1が使用され、圃場の単位面積当たりに多めの量を供給する薬剤を使用する場合には、第2調節操作状態T2が使用される。
【0071】
そして、苗植付装置12における縦送り装置21が送り作動したことを検出する縦送り検出センサ82が備えられ、この縦送り検出センサ82の出力が制御装置66に入力されており、詳細については後述するが、通常作業モードにおいては、縦送り検出センサ82の検出情報に基づいて散布処理が行われることになる。
【0072】
図5に示すように、電気制御ユニット28は、上記したような電気部品がプリント配線基板上に装着されており、ケーシング29に内装されている。又、図14に示すように、電気制御ユニット28と走行機体3との間での電気配線77は、途中に備えられたコネクタ78によって接続分離自在に構成される構成となっており、電気制御ユニット28とコネクタ78における薬剤散布装置側の接続具78Aとは、ケーシング29の内部に備えられている電気制御ユニット28側の電気配線77により接続されている。
【0073】
図5,6に示すように、前記コネクタ78における薬剤散布装置側の接続具78Aが、左右両側の分割ケーシング部分29a,29bの合わせ面wにて挟み込む状態でケーシング29に装着されている。つまり、ケーシング29の下面29Aに対応する箇所には、左右両側の分割ケーシング部分29a,29bに、接続具78Aを左右両側から挟み込み装着するための取り付け部90を形成してある。この取り付け部90はケーシング29の下面29Aよりも外方側(下方側)に膨出した形状に形成されており、接続具78Aのケース内側部分がこの外方側に膨出している部分(取り付け部90)に収容される構成となっている。
【0074】
このように構成することで、ケーシング29の内部に収容される部材、特に、この実施形態においては、電気制御ユニット28やソレノイド34等の配置に制約を受けることがないので、ケーシング29の外形形状をコンパクトな形状にしながら、接続具78Aを配備することができる。
【0075】
薬剤散布装置13を組立てる際には、左右両側の分割ケーシング部分29a,29bは、電動モータ41やソレノイド34等を内部に組み込んだ状態で、合わせ面wで接続するように位置合せした状態で複数箇所をビス止めすることにより一体的に1つのケーシング29として連結されることになるが、このような左右両側の分割ケーシング部分29a,29bの接続作業の際に、取り付け部90に接続具78Aを挟み込む状態で装着するのである。
【0076】
そして、図3,5,6,7に示すように、前記接続具78Aは、外部電源側の接続具としての相手側の接続具78Bを下方側から上方に向けて差し込み装着される形態で、その差込み口78A1を下向きに開口する状態で且つケーシング29の下面側に位置する状態で設けられている。
又、図5に示すように、ケーシング29の下面における下部合わせ面部分w1における最も下方に位置する箇所、すなわち、接続具78Aの上部側箇所を左右両側から挟み込み装着するための装着箇所としての前記取り付け部90に、水抜き孔としての水抜き用の開口kが形成されており、ケーシング29内に水分が浸入してもこの開口kを通して外方に排出されるように構成されている。
【0077】
コネクタ78の接続を解除して電気配線77を分離させた状態で、薬剤散布装置13全体を支柱23Bに対して容易に着脱させることができるように構成されている。つまり、図4に示すように、ケーシング29に側面視L字形に折り曲げた支持ブラケット89がネジ止め状態で固定され、一方、支柱23Bの上部に側面視L字形の受止め具88が固定状態で備えられ、この受止め具88に左右一対のバックル機構87が備えられている。
【0078】
受止め具88には、その縦面部88Aの下端に支持ブラケット89の下端縁89Aを受止め支持する下側受止め部88Bが形成されるとともに、縦面部88Aの上部には、支持ブラケット89に形成された係合孔89Bが嵌まり合い係合して受止め支持する上側受止め部88Cが形成され、受止め具88の縦面部88Aと支持ブラケット89の縦面部89Cとが接当した状態で、各受止め部88B,88Cにて支持ブラケット89を受止めている状態で、左右のバックル機構87を支持ブラケット89に形成された係止部89Dに係合させた状態で位置保持自在並びに取り外し自在に支持する構成となっている。
その結果、作業終了後に走行機体3や苗植付装置12等を水洗いするような場合に、バックル機構87を外すことで薬剤散布装置13全体を取り外しておくことができる。
【0079】
次に制御装置66の制御動作について説明する。
図15に示すように、エンジン4を始動してロータリースイッチRSが「切」位置から「A」位置又は「B」位置に操作されて制御装置66が起動すると、通常作業モードに設定され、受止め体51が通常作業用回転数で回転するように電動モータ41を駆動制御する。そして、計量スイッチ74が操作されない状態で、乗用型田植機による苗植付け作業を開始し、縦送り検出センサ82が縦送り装置21の送り作動が設定回数行われたことを検出して、その縦送り検出センサ82から検出信号(繰出し用作業信号の一例)が入力されると、その度に、上述したようにして設定される開作動時間が経過する間だけ、シャッター部材33を開状態に切り換え、その後に閉状態に戻すようにソレノイド34の作動を制御する開作動操作(通常用繰出し作動)を実行する。
【0080】
縦送り装置21の送り作動が設定回数行われると、走行機体3が設定距離走行することになるので、上述したような散布動作を実行することで、乗用型田植機が苗植付け作動を実行しながら走行を行っているときに、走行機体3が設定距離走行する毎に、設定条分の既植苗が存在する領域(薬剤供給対象領域)に、ソレノイド34の開作動時間に対応する量の薬剤を散布供給する動作を繰り返し実行することにより、圃場の単位面積当たりに所定量の薬剤を供給することができるのである。このような動作が通常散布動作に対応する。
【0081】
そして、このような通常作業モードに設定されている状態で計量スイッチ74が設定時間(数秒間)以上連続して押し操作(長押し)されると、計量用モードに切り換わる。計量用モードに切り換わると、縦送り検出センサ82からの検出信号が入力されなくても、受止め体51が計量用回転数で回転するように電動モータ41を駆動制御するとともに、通常作業モードにおける繰出し量と同等な繰出し量にて薬剤を繰り出すように、設定回数だけソレノイド34の開作動(計量用繰出し作動)を繰り返し実行する。このような動作が計量用動作に対応する。
このように、計量用モードに切り換わるには計量スイッチ74を長押しする必要があり、誤って短時間だけ操作した場合に、作業者の意に反して計量用モードに切り替わらないようにしている。
【0082】
尚、計量スイッチ74の操作による計量用モードへの切り換えの別の態様として、例えば、所定時間内に設定回数以上押し操作を繰り返すと計量用モードへ切り換える態様等、異なる態様であってよい。
【0083】
前記計量用動作について説明を加えると、通常作業モードにおいて圃場の単位面積(例えば、10a)当たりに所定量の薬剤を散布すると設定しているような場合には、この所定量の薬剤を繰り出すのに必要とされる予め設定される設定回数だけ繰出し機構25を開状態に切り換える。そして、そのとき、拡散放出機構27の外周を囲うように予め用意した回収容器(図示せず)により放出される薬剤を回収して、薬剤の量を計測することになる。
【0084】
計量用動作が終了したのちは、計量スイッチ74が再度、長押し操作されるか、又は、縦送り検出センサ82からの検出信号が入力されると、受止め体51が通常作業用回転数で回転するように電動モータ41を駆動制御する状態に復帰し、ロータリースイッチRSが「切」位置に操作されるまで、通常散布動作を実行する。
【0085】
尚、計量スイッチ74の操作による計量用モードから通常作業モードへの切り換えの別の態様として、例えば、所定時間内に設定回数以上押し操作を繰り返すと通常作業モードへ切り換える態様等、異なる態様であってよい。
【0086】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、制御装置66の起動時に電動モータ41が通常作業用回転数で回転するようにしたが、次のように構成してもよい。
すなわち、制御装置66が、電源投入されて起動すると、計量用回転数で回転させるように拡散放出機構27の作動を制御する予備モードに設定されるように構成され、その予備モードにおいて手動操作式の計量指令手段としての計量スイッチ74により計量の開始が指令されると計量用モードに切り換えられ、予備モードにおいて作業の開始が指令されると通常作業モードに切り換えられるように構成するものでよい。
【0087】
具体的な制御動作について説明を加えると、図17に示すように、エンジン4を始動してロータリースイッチRSが「切」位置から「A」位置又は「B」位置に操作されて制御装置66が起動すると、受止め体51が計量用回転数で回転するように電動モータ41を駆動制御する。そして、その後、計量スイッチ74がオン操作されると、受止め体51が計量用回転数で回転するように電動モータ41を駆動制御するとともに、通常作業モードにおける繰出し量と同等な繰出し量にて薬剤を繰り出すように、設定回数だけソレノイド34の開作動操作(計量用繰出し作動)を繰り返し実行する。
【0088】
そして、電動モータ41が計量用回転数で回転している予備モードにおいて、縦送り検出センサ82から検出信号(繰出し用作業信号)が入力されると、通常作業モードに切り換えられ、受止め体51が通常作業用回転数で回転するように電動モータ41を駆動制御する。その後は、縦送り装置21から検出信号が入力される度に、切換スイッチ69の操作に基づく調節操作状態と散布量調節器68の調整位置の情報に基づいて設定される開作動時間が経過する間だけ、シャッター部材33を開状態に切り換え、その後に閉状態に戻すようにソレノイド34の作動を制御する開作動操作(通常用繰出し作動)を実行する。このような通常散布動作をロータリースイッチRSが「切」位置に操作されるまで実行する。
【0089】
(2)上記実施形態では、計量用モードにおける計量用駆動状態として、繰出し機構25により設定量の薬剤を繰出してその繰出し作動を停止するまでの間、計量用回転数で回転させるように拡散放出機構の作動を制御するようにしたが、このような構成に代えて、次の(2−1)(2−2)のように構成してもよい。
(2−1)制御装置66が、計量用モードにおける計量用駆動状態として、上記実施形態と同様に、所定量の薬剤を繰り出すのに必要なものとして予め設定される設定回数だけ繰出し機構25を開状態に切り換えて、繰出し機構25により設定量の薬剤を繰出してその繰出し作動を停止するまでの間は、拡散放出機構27における電動モータ41の回転を停止させておく。そして、繰出し機構25による薬剤の繰出し作動が停止したのちに、設定時間(例えば、数秒間)だけ電動モータ41を回転させて、受止め体51に載置されている薬剤を外方の回収容器(図示せず)に放出させるように拡散放出機構27における電動モータ41の作動を制御する構成。
(2−2)制御装置66が、計量用モードにおける計量用駆動状態として、上記実施形態と同様に、所定量の薬剤を繰り出すのに必要とされる予め設定される設定回数だけ繰出し機構25を開状態に切り換えて、繰出し機構25により設定量の薬剤を繰出してその繰出し作動を停止するまでの間、所定の短時間(例えば数秒間)ずつ回転状態と回転停止状態とを交互に現出させる形態で拡散放出機構27における電動モータ41の作動を制御する構成。
【0090】
(3)上記実施形態では、調節操作状態切換手段Kが手動操作式の切換操作具としてロータリースイッチRSにて切り換え操作される切換スイッチ69にて構成するものを示したが、このような構成に代えて次の(3−1)(3−2)(3−3)のように構成してもよい。
(3−1)2位置に切り換え自在なトグル式の切換スイッチや、一対の押し操作式の切換スイッチにて構成するもの。
(3−2)手動操作式の切換操作具を用いるのではなく、走行機体3側から切り換え用の操作情報が指令されて、その指令情報に基づいて、調整操作状態を切り換える構成としてもよい。例えば、走行機体3の操縦部7に備えられた操作具(図示せず)の情報がコネクタ78にて接続分離自在な配線77を介して制御装置66に伝えられる構成や、あるいは、走行機体3側の制御装置に出荷国や出荷地域ごとに予め設定されている切換用情報が、出荷時の本機側の設定変更に伴って配線77を介して制御装置66に伝えられる構成でもよい。
(3−3)粉粒体の種類は2種類に限らず、3種類以上の粉粒体に対応すべく、3つ以上の調節操作状態に切り換える構成としてもよい。
【0091】
(4)上記実施形態では、計量指令手段として、押し操作式の計量スイッチ74にて構成されるものを示したが、このような構成に代えて、例えば、2位置切り換え式のスイッチやロータリースイッチ等、種々の形態のスイッチを用いることができ、又、計量用モードへ切り換えるための計量開始専用のスイッチと、計量モードを解除して通常作業モードへ切り換えるための計量解除専用のスイッチとを設ける構成等、種々の形態で実施することができる。
【0092】
(5)上記実施形態では、開口形成板32とシャッター部材33とにより通過用開口31を開閉させる構成としたが、このような構成に代えて、例えば、通過用開口31が形成された開口形成板32、ソレノイド34によってスライド移動自在なシャッター部材33に加えて、シャッター部材33を下方側から弾性的に押し操作する板バネ式の押圧部材(図示せず)を上下に重ね合わせた三層構造とする等、種々の構成を用いることができる。
【0093】
(6)上記実施形態では、縦送り装置21の送り作動が設定回数行われたことを検出する毎に、シャッター部材33を開状態に切り換えるようにソレノイド34を制御する構成としたが、これに代えて、走行機体3が設定距離走行する毎に、シャッター部材33を開状態に切り換える構成にしてもよい。
【0094】
(7)上記実施形態では、粉粒体として薬剤を散布するものを示したが、薬剤に限らず、肥料や種子等、他の粉粒体を散布するものでもよい。又、上記実施形態では、粉粒体散布装置が乗用型田植機の後部に装着されるものを示したが、このような構成に代えて、圃場を歩行しながら歩行型田植機を操縦する作業者の背中に背負う状態で散布作業を行う形態の粉粒体散布装置であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、粉粒体を設定量ずつ繰り出して拡散放出させるように構成された粉粒体散布装置に適用できる。
【符号の説明】
【0096】
24 貯留部
25 繰出し手段
27 拡散手段
41 電動モータ
51 受止め体
51A 受止め面
52 拡散用羽根体
66 制御手段
68 調節操作具
74 計量指令手段
K 調節操作状態切換手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯留部に貯留される粉粒体を繰出す繰出し手段と、前記繰出し手段から繰り出される粉粒体を圃場に拡散放出させる回転駆動式の拡散手段と、前記繰出し手段と前記拡散手段の作動を制御する制御手段とが備えられている粉粒体散布装置であって、
前記制御手段が、
圃場の単位面積あたりに設定量の粉粒体を供給するように前記繰出し手段を作動させるとともに、通常作業用回転数で回転駆動する通常作業用駆動状態で粉粒体を圃場に拡散放出させるように前記拡散手段を作動させる通常散布動作を実行する通常作業モードと、
前記通常作業モードにおける繰出し量と同等な繰出し量にて粉粒体を繰り出すように前記繰出し手段を作動させるとともに、前記通常作業用駆動状態よりも粉粒体の跳ね飛ばしが少ない計量用駆動状態で前記拡散手段を作動させる計量用動作を実行する計量用モードとに切り換え自在に構成されている粉粒体散布装置。
【請求項2】
前記制御手段が、前記計量用駆動状態として、前記繰出し手段により設定量の粉粒体を繰出してその繰出し作動を停止するまでの間、前記通常作業用回転数よりも低速の計量用回転数で回転させるように前記拡散手段の作動を制御するように構成されている請求項1記載の粉粒体散布装置。
【請求項3】
前記制御手段が、電源投入されて起動すると、計量用回転数で回転させるように前記拡散手段の作動を制御する予備モードに設定されるように構成され、その予備モードにおいて手動操作式の計量指令手段により計量の開始が指令されると前記計量用モードに切り換えられ、前記予備モードにおいて作業の開始が指令されると前記通常作業モードに切り換えられるように構成されている請求項2記載の粉粒体散布装置。
【請求項4】
前記制御手段が、前記計量用駆動状態として、前記繰出し手段により設定量の粉粒体を繰出してその繰出し作動を停止するまでの間は前記拡散手段の回転を停止させ、且つ、粉粒体の繰出し作動が停止したのちに設定時間だけ回転させるように前記拡散手段の作動を制御するように構成されている請求項1記載の粉粒体散布装置。
【請求項5】
前記制御手段が、前記計量用駆動状態として、前記繰出し手段により設定量の粉粒体を繰出してその繰出し作動を停止するまでの間、回転状態と回転停止状態とを交互に現出させる形態で前記拡散手段の作動を制御するように構成されている請求項1記載の粉粒体散布装置。
【請求項6】
前記制御手段が、前記通常作業モードに切り換えられると、繰出し用作業信号が入力されるに伴って前記通常散布動作を実行するように構成され、前記計量用モードに切り換えられると、繰出し用作業信号が入力されなくても前記計量用動作を実行するように構成されている請求項1〜5のいずれか1項に記載の粉粒体散布装置。
【請求項7】
前記拡散手段が、横向き姿勢の受止め面を備えるとともに縦向きの回転軸芯周りで駆動回転される受止め体と、前記受止め面に立設された拡散用羽根体と、前記受止め体を回転駆動する電動モータとを備えて構成されている請求項1〜6のいずれか1項に記載の粉粒体散布装置。
【請求項8】
前記制御手段が、手動操作式の調節操作具の操作に基づいて前記繰出し手段による粉粒体の繰出し量を変更調整自在に構成され、且つ、粉粒体の繰出し量を調節するときの調節操作状態として、前記調節操作具の操作位置が最小調節位置から最大調節位置に変化するに伴って粉粒体の繰出し量が漸次増大する形態で変化する調節操作状態であって且つ前記調節操作具の操作位置が同じであるときの粉粒体の繰出し量が互いに異なる複数の調節操作状態に切り換え自在に構成され、
前記制御手段の前記調節操作状態の切り換えを指令する手動操作式の調節操作状態切換手段が備えられ、
前記制御手段が、前記計量用モードにおける粉粒体の散布量が前記調節操作状態切換手段及び前記調節操作具の設定情報に基づいて設定された散布量になるように、前記繰出し手段の作動を制御するよう構成されている請求項1〜7のいずれか1項に記載の粉粒体散布装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−152170(P2012−152170A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−15464(P2011−15464)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【特許番号】特許第4944996号(P4944996)
【特許公報発行日】平成24年6月6日(2012.6.6)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】