説明

粉粒体散布装置

【課題】粉粒体を繰り出すアクチュエータと制御基板等の合理的な配置により小型化が可能な粉粒体散布装置を構成する。
【解決手段】ホッパー21から粉粒状の薬剤を繰り出す電磁ソレノイド26と、繰り出された薬剤を拡散させるため回転羽根28を、縦軸芯Yを中心に駆動回転する電動モータ27と、これらを制御する制御基板31とを備えている。回転羽根28で水平方向に粉粒体を拡散させる拡散空間Sの上方で、電動モータ27の近傍位置に電磁ソレノイド26と制御基板31とを隣接配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯留部に貯留される粉粒体を繰り出す繰出手段と、この繰出手段から自重により落下供給される粉粒体を水平方向に拡散させる回転式拡散手段とが備えられている粉粒体散布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のように構成された粉粒体散布装置として特許文献1には、貯留部としての薬剤ホッパーに貯留された粉粒状の薬剤を目皿に供給し、この目皿の揺動により目皿の繰出し孔から薬剤を下方に繰り出し、この下方位置において横軸芯周りで回転する拡散羽根によって、薬剤の拡散を行う構成が示されている。
【0003】
この特許文献1では、目皿と、この目皿を揺動するステッピングモータとが本発明の繰出手段に対応し、拡散羽根と、この拡散羽根を駆動するモータとが本発明の回転式拡散手段に対応する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003‐304793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されるように繰出手段と回転式拡散手段とが駆動用の電動モータを備えるものでは、夫々の電動モータを制御するための制御基板を必要とするものとなり、この制御基板を装置内部に備えることが合理的である。
【0006】
この種の粉粒体散布装置は、田植機等の機体の後端に備えられることが多く、運搬時にトラックの荷台への積載を容易にするために、前後長の縮小も望まれている。しかしながら、制御基板は電力制御用の素子やスイッチ類や可変抵抗器等が備えられるため所定の面積が必要となり、この制御基板を単純に配置した場合には装置の大型化に繋がることも考えられた。
【0007】
特に、特許文献1の繰出手段では、ステッピングモータの駆動力をギヤ式の伝動系を介して目皿に伝える構成であるため、繰出手段全体が大型化を招きやすいものであり、この繰出手段の小型化も併せて望まれている。
【0008】
本発明の目的は、アクチュエータと制御基板等の合理的な配置により小型化が可能な粉粒体散布装置を合理的に構成する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の特徴は、貯留部に貯留される粉粒体を繰り出す繰出手段と、この繰出手段から自重により落下供給される粉粒体を水平方向に拡散させる回転式拡散手段とが備えられている粉粒体散布装置であって、
前記繰出手段が、前記粉粒体の繰出作動を行うアクチュエータを備えて構成され、
前記回転式拡散手段が、縦軸芯周りで回転自在に支持された回転羽根と、この回転羽根を駆動回転するため前記縦軸芯上に配置された電動モータとを備えて構成され、
前記回転羽根で前記粉粒体が拡散される拡散空間の上方位置に、前記アクチュエータと、前記電動モータ及び前記アクチュエータを制御する制御基板とが位置するように前記アクチュエータと前記制御基板とが前記電動モータに隣接する位置関係で並列配置されている点にある。
【0010】
この構成によると、回転式拡散手段が、電動モータの駆動力により縦軸芯周りで駆動回転される回転羽根で構成されるため、特許文献1に示されるものように横軸芯周りで回転するものと比較して回転式拡散手段の小型化が可能となる。また、電動モータとアクチュエータと制御基板とが、回転羽根で粉粒体が拡散させる拡散空間の上方位置に重複する位置関係で並列配置されるので、電動モータに隣接する位置にアクチュエータと制御基板とを集中配置することで、電動モータとアクチュエータと制御基板との間の空間を小さくし結果として装置全体の前後方向の寸法の縮小が可能となる。
その結果、電動モータとアクチュエータと制御基板との合理的な配置により粉粒体散布装置が小型に構成された。
【0011】
本発明は、前記繰出手段が、貯留部に貯留される粉粒体を自重で下方に送る排出経路を開閉することにより粉粒体の供給量を設定するシャッターと、このシャッターを開閉作動させる往復作動型の前記アクチュエータとを備えて構成され、
前記制御基板が縦壁状に配置され、この制御基板の基板面に直交する方向視で、この制御基板とアクチュエータとが重なり合う位置に配置されても良い。
【0012】
これによると、縦壁状に配置された制御基板の基板面に直交する方向視において、制御基板と、アクチュエータとが重なり合う位置に配置されることにより、夫々を小さい空間の内部に配置して一層の小型化が実現する。
【0013】
本発明は、前記制御基板が、横方向の寸法より縦方向の寸法を長く設定しても良い。
【0014】
これによると、装置全体の縦方向の寸法が拡大することはあるが、粉粒体散布装置の前後方向の寸法の一層の縮小が可能となる。
【0015】
本発明は、前記制御基板には、前記電動モータと前記アクチュエータとへの電力の供給と遮断とを行う起動スイッチと、前記アクチュエータの作動形態の設定により粉粒体の繰出量を設定する可変抵抗器とが、この制御基板の下側領域に備えられ、
前記アクチュエータと前記制御基板とを収容するケースの側面に、前記起動スイッチの起動操作具と、前記可変抵抗器の調整操作具とが備えられても良い。
【0016】
これによると、ケースの側面の下側領域に起動操作具と調整操作具とが配置されることになり、上部に配置される貯留部に妨げられることなく、これらの操作具の操作を容易に行え、これらの視認性も向上する。
【0017】
本発明は、前記制御基板の上側領域に、前記アクチュエータを予め設定された作動形態で、予め設定された時間だけ作動させることにより、粉粒体を繰り出す計量スイッチが備えられ、この計量スイッチの計量操作具が前記ケースの側面に形成されても良い。
【0018】
これによると、ケースの側面で操作性の良くない領域に計量スイッチが備えられるので、この計量スイッチを誤って操作する不都合が解消される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】田植機の全体側面図である。
【図2】田植機の全体平面図である。
【図3】薬剤散布装置のケースの縦断側面図である。
【図4】薬剤散布装置のケースの底面図である。
【図5】拡散空間を示す平面図である。
【図6】薬剤散布装置のケースの側面図である。
【図7】制御基板と操作パネルとの位置関係を示す横断平面図である。
【図8】制御基板と操作パネルとの位置関係を示す斜視図である。
【図9】排出管と配線と支持部材との位置関係を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔田植機の全体構成〕
図1及び図2に示すように、左右一対の前車輪1と左右一対の後車輪2とを有する走行機体Aの中央部に運転座席3を備え、走行機体Aの後端に油圧シリンダ4の作動により昇降作動するリンク機構Lを介して昇降自在に苗植付装置Bを備え、この苗植付装置Bに粉粒体散布装置の一例としての薬剤散布装置Cを備えて乗用型の田植機が構成されている。
【0021】
この田植機は、走行機体Aの前部位置にエンジン5が配置され、このエンジン5の駆動力が伝えられるミッションケース6からの駆動力を変速して左右の前車輪1と左右の後車輪2とに伝える伝動系を備えている。運転座席3の前方位置には前車輪1を操向操作するステアリングホイール7と、走行速度を任意に設定する主変速レバー8とが配置され、エンジン5を内蔵するボンネットの両側部には予備苗載台9が備えられている。
【0022】
苗植付装置Bは、整地フロート11と、複数のマット状苗を載置する苗載台12と、苗載台12に載置されたマット状苗から苗を切り出して圃場面に植え付ける複数の植付機構13と、走行機体Aからの駆動力を植付機構13に伝える左右一対の伝動ケース17を備えている。尚、夫々の伝動ケース17の後端位置に両側部に植付機構13が備えられている。そして、苗植付け作業時には、走行機体Aの走行に伴い整地フロート11が苗植え付け箇所の泥面を整地する一方で、走行機体Aから伝えられる駆動力により、苗載台12を左右方向に一定ストロークで往復作動させ、この往復作動時に苗載台12の複数のマット状苗の下端から複数の植付機構13が苗を所定量ずつ切り出して圃場に植え付ける作動が行われる。これにより複数条の苗の植え付けが可能となり、苗の植え付けが行われた圃場面に対して薬剤散布装置Cによる薬剤の散布が行われる。
【0023】
〔薬剤散布装置〕
図1〜図6に示すように、薬剤散布装置Cは、粉粒体としての薬剤を貯留する貯留部としての貯留ホッパー21と、その貯留ホッパー21から薬剤(粉粒体の一例)を繰り出す繰出手段Dと、繰出手段Dから自重により落下供給される薬剤を水平方向に拡散させる回転式拡散手段Eとを備え、繰出手段Dは樹脂製のケース22に内蔵され、回転式拡散手段Eは樹脂製のケース22の下面に備えられている。
【0024】
苗植付装置Bの後部には左右の伝動ケース17に左右両端部が連結するアーチ状のパイプフレーム14が備えられ、このパイプフレーム14の左右方向での中央位置に支持プレート15が備えられている。薬剤散布装置Cのケース22の前面側には連結プレート23が備えられ、この連結プレート23が支持プレート15に対して連結具により着脱自在に連結されている。
【0025】
ホッパー21は、透明樹脂製のホッパー本体21Aと、透明樹脂製で開閉自在な蓋体21Bとを有し粉粒状の薬剤を貯留し、下端に接続する縦向き姿勢の排出経路としての排出管24に対して薬剤を自重によって下方に送り出す。
【0026】
繰出手段Dは、排出経路としての排出管24を開閉する作動(繰出作動)により薬剤を自重によって下方に送るため水平方向に移動自在に備えられた板状のシャッター25と、このシャッター25を開放位置と閉塞位置とに往復作動させるアクチュエータとしての電磁ソレノイド26とを備えている。電磁ソレノイド26は、駆動時(通電時)に電磁力により開放方向に作動するプランジャ26Aと、非駆動時(非通電時)このプランジャ26Aを閉塞位置に付勢するコイルスプリング26Bとを備えている。なお、電磁ソレノイド26の本体部分は図示しないステーを介してケース22側に支持されている。
【0027】
回転式拡散手段Eは、出力軸27Aを縦軸芯Yと同軸芯で下方に突出させた電動モータ27と、出力軸27Aに連結し、縦軸芯Yを中心にして回転自在に支持された回転羽根28と、この回転羽根28で拡散される薬剤の拡散範囲と拡散方向とを決める一対のガイド板29とを備えている。
【0028】
回転羽根28は、円盤状のディスク体28Aの外周の上面に複数の羽根体28Bを備えた構造を有しており、この回転羽根28は、ケース22の底面より下側で、排出管24の下端の排出開口24Aの直下位置に配置されている。また、ケース22の底面には平坦となる規制壁22Pが一体的形成され、ケース22の底面の前部側(図3、図4で左側)にはディスク体28Aの外周に沿う縦壁形状となる円弧状の前部ガイド部22Gが一体形成され、この前部ガイド部22Gの端部に連なる位置にガイド板29の前端部が支持されている。
【0029】
ガイド板29は、左右位置に1つずつ備えられ、夫々とも基端部が縦向き姿勢の支軸30を中心にして左右方向に揺動自在、かつ、揺動姿勢を摩擦保持できるようにケース22に支持されている。このような構成から、左右一対のガイド板29の少なくとも一方を支軸30を中心にして揺動させることにより、薬剤の拡散範囲と拡散方向との調節が実現する。特に、前部ガイド部22Gから後方で、回転羽根28によって薬剤が水平方向に拡散される領域によって拡散空間Sが形成される。
【0030】
ケース22の内面に配線を支持する構成を一体的に形成することも考えられるが、このような構成を採用する場合にも金型が複雑化する。このような理由から、ケース22の内面には配線を支持する構成を備えず、図9に示すように、配線40を支持する支持部材41を排出管24に備えている。この配線40は制御基板31と電動モータ27、あるいは、電磁ソレノイド26に電力を供給するもの等で構成される。
【0031】
〔薬剤散布装置の制御構成〕
図7に示すように、ケース22は、天井壁と底壁と外周壁とを備えて、その内部における排出管24よりも前方側に前方側収容空間が形成され、その内部の排出管24よりも後方側に後方側収容空間が形成されている。ケース22の外周壁は、その前壁が前側に凸に湾曲した形状に形成され、その後壁が後側に凸に湾曲した形状に形成され、その左右側壁が前後向き直線状となるように、その外形形状を平面視で前後向き長方形状に構成されている。
【0032】
図6〜図8に示すようにケース22の内部には、電動モータ27と電磁ソレノイド26とを制御する制御基板31が縦壁状となる姿勢でケース22の側壁近傍に備えられている。また、ケース22の前後方向の寸法を縮小するために電磁ソレノイド26と、制御基板31とは拡散空間Sの上方に位置するケース22内の後方側収容空間に左右に並んだ状態で配置されると共に、電動モータ27がケース22内の前方側収容空間における排出管24寄りの位置に配置されている。これにより、この電磁ソレノイド26と制御基板31とが電動モータ27に隣接する位置関係で並列配置されている。なお、この実施形態では、電動モータ27に対して排出管24と電磁ソレノイド26が右側に位置ずれした状態(排出管24の排出開口24Aが回転羽根28の回転方向下手側に偏位した状態)で配備されている。
【0033】
この制御基板31は縦方向の寸法が横方向の寸法より長く設定され、基板面に直交する方向視において電磁ソレノイド26と重なり合う位置関係に配置され、ケース22の内部に固定されている。
【0034】
この制御基板31は、走行機体Aから電力と制御信号とがケーブル(図示せず)により伝えられるものであり、制御基板31には、電磁ソレノイド26と電動モータ27とへの電力の供給と遮断とを行う起動スイッチ32と、薬剤の繰出量を調整する可変抵抗器33とが、この制御基板31の下側位置に前後に並んだ状態で備えられると共に、電磁ソレノイド26を予め設定された作動形態で、予め設定された時間だけ作動させることで薬剤を繰り出す計量スイッチ34が、この制御基板31の上部の前方寄り位置に備えられている。
【0035】
図面には示していないが制御基板31には制御を電磁ソレノイド26に電力を供給する電力制御素子、電動モータ27に電力を供給する電力制御素子、電磁ソレノイド26の間歇駆動を実現するマルチバイブレータ等を備えている。
【0036】
起動スイッチ32は、スイッチ軸32Aを有するロータリ操作型に構成され、このスイッチ軸の外端に起動操作具としてのスイッチダイヤル32Bが備えられている。可変抵抗器33は、操作軸33Aを有する回転操作型に構成され、この操作軸33Aの外端に調整操作具としての調整ダイヤル33Bが備えられている。計量スイッチ34は押し操作によりON状態に達し、押し操作を解除することでOFF状態に復帰するモメンタリ型に構成され、この計量スイッチ34の押し操作を実現する計量操作具としての計量ボタン34Aが操作パネル35と一体的に形成される。
【0037】
操作パネル35は、金属板や樹脂板の表面に樹脂シートを貼り付けたものを想定しており、この操作パネル35はケース22の外壁面に取り付けられ、スイッチ軸32Aと操作軸33Aとは、操作パネル35の下側領域に形成された孔部を貫通する状態で備えられている。これにより、操作パネル35の外面側の下側領域においてスイッチ軸32Aの外端にスイッチダイヤル32Bが備えられ、操作軸33Aの外端に調整ダイヤル33Bが備えられている。
【0038】
また、操作パネル35の上側領域には計量ボタン34Aが配置されている。つまり、操作パネル35のうち計量スイッチ34を覆う位置に開口が形成され、この開口を覆う状態となる樹脂シートの弾性変形可能な性質を利用して計量スイッチ34の押し操作が可能となる計量ボタン34Aが構成されることになる。
【0039】
起動スイッチ32は、中立位置(図6に示す位置)と、この中立位置を挟む2つの設定位置とに操作自在に構成され、スイッチダイヤル32Bを中立位置にセットすることで、電磁ソレノイド26と電動モータ27とに電力を供給しない状態となり薬剤の散布を停止する。また、このスイッチダイヤル32Bを2つの設定位置の何れかにセットすることで設定位置に対応した設定量の薬剤の散布を実現する。尚、設定量の薬剤とは単位走行時間(距離)において散布される薬剤の量(散布量)であり、2つの設定位置により散布量の切換が可能となる。
【0040】
可変抵抗器33は、薬剤の散布量の調整を実現するものであり、調整ダイヤル33Bを一方に回転操作することで、走行機体Aの単位走行時間(距離)における薬剤の散布量を増大させ、他方に回転操作することで、走行機体Aの単位走行時間(距離)における薬剤の散布量を減少させ、結果として薬剤の散布量の調整を実現する。
【0041】
薬剤を散布する制御の制御形態として、(1)設定インターバル毎にシャッター25を開放すると共に、シャッター25開放時間を変更することで散布量の増減を行う、(2)シャッター25の開放時間を一定に維持したままで、シャッター25を開放するインターバルを変更することで散布量の増減を行う、(3)シャッター25の開放のインターバルと、シャッター25を開放時間との双方を変更することで散布量の増減を行うものが考えられる。この(1)〜(3)の何れの制御形態であっても、スイッチダイヤル32Bを2つの何れかの設定位置にセットした場合には、単位走行時間(距離)における薬剤のトータルの散布量の基準値が設定され、調整ダイヤル33Bを操作した場合には単位走行時間(距離)におけるシャッター25のトータルの開放時間が変更され、結果として薬剤の散布量の調整が実現する。
【0042】
計量ボタン34Aは、走行機体Aが走行しない状態で薬剤の散布量を計測する際に操作されるものであり、散布される薬剤の回収が可能な状態で計量ボタン34Aが押し操作されることにより、スイッチダイヤル32Bの設定値と、調整ダイヤル33Bの設定値とに基づいて、走行機体Aが予め設定された距離だけ走行した際の計量制御が実行される。この計量制御は作業時における薬剤の散布時間より短縮した時間内に実行されるものであり、この計量制御によって散布された薬剤を回収して重量を計測し、目標とされる薬剤の重量との比較が可能となり、散布量の調節を行うことも可能となる。
【0043】
このような構成から、薬剤の散布を行う場合には、スイッチダイヤル32Bを2つの設定位置の何れかにセットし、調整ダイヤル33Bを任意の位置にセットし、この状態で走行機体Aを走行させ苗植付作業を開始することにより、制御基板31が、電動モータ27に電力を供給して回転羽根28を回転させると共に、繰出手段Dを作動させ苗植付装置Bによる苗植付位置に薬剤の散布を開始する。この薬剤の散布では前述した何れかの制御形態に従い繰出手段Dの電磁ソレノイド26が設定されたインターバル毎に設定時間だけ駆動されることでホッパー21に貯留されている薬剤が繰り出され、回転羽根28により薬剤散布装置Cの後方に薬剤が散布される。
【0044】
〔実施形態の効果〕
このように構成することにより、薬剤の拡散空間Sの上方位置で、電動モータ27の近傍位置に電磁ソレノイド26と制御基板31とが隣接する位置関係で集中的に並列配置される結果、薬剤散布装置の小型化(ケース22の小型化)が実現する。また、制御基板31が縦長姿勢でケース22の側壁に沿って配置され、この制御基板31の基板面に直交する方向視において制御基板31と電磁ソレノイド26とが重複する位置関係で配置されるので、装置全体の前後方向及び上下方向での寸法を短くできる。
【0045】
また、操作パネル35の下側領域に起動スイッチ32のスイッチダイヤル32Bと可変抵抗器の調整ダイヤル33Bとを配置しているので、これらスイッチダイヤル32Bと調整ダイヤル33Bとを上部のホッパー21に妨げられずに視認できる。また、スイッチダイヤル32Bと調整ダイヤル33Bとが比較的突出した形成されるものであるが、計量ボタン34Aはあまり突出するものではなく、誤操作を抑制できる。
【0046】
〔別実施形態〕
本発明は、上記した実施形態以外に以下のように構成しても良い。
【0047】
(a)粉粒体散布装置を田植機等の自走機体には備えずに、例えば、作業者が人力によって移動させる機体に備える形態や、人が背負う等の形態で使用しても良い。このように構成されるものでも、装置全体が小型化されるので、軽量で取り扱いが容易となる。特に、粉粒体散布装置が肥料を散布するものでも、種子を散布するものでも良い。
【0048】
(b)繰出手段として、特許文献1に記載される目皿や、外周に凹部を形成したロールを回転させることで粉粒体を繰り出すように構成し、この目皿やロールを駆動回転する電動型のモータを備えても良い。このように構成したもので繰出量を変更する場合には、モータの回転速度を変更することになる。
【0049】
(c)前述した実施形態に代えて、電動モータ27の側部位置に電磁ソレノイド26を配置し、この前部側や後部側に制御基板31を配置するように位置関係を設定しても良い。このように配置した場合には、装置の横幅方向の寸法は拡大するものの装置の前後方向に寸法を一層縮小できる。
【0050】
(d)制御基板31を電磁ソレノイド26に対して左側(ケース22の左側の側壁)に配置しても良い。
【0051】
(e)電動モータ27に対して排出管24と電磁ソレノイド26を左側に位置ずれした状態で配置しても良く、電動モータ27に対して排出管24と電磁ソレノイド26を左右方向に位置ずれしない状態で配置しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、アクチュエータの作動により粉粒体の繰出を行い、電動モータの作動により回転羽根を回転させて粉粒体を拡散させる粉粒体散布装置全般に利用できる。
【符号の説明】
【0053】
21 貯留部(ホッパー)
22 ケース
24 排出経路(排出管)
25 シャッター
26 アクチュエータ(電磁ソレノイド)
27 電動モータ
28 回転羽根
31 制御基板
32 起動スイッチ
32B 起動操作具(スイッチダイヤル)
33 可変抵抗器
33B 調整操作具(調整ダイヤル)
34 計量スイッチ
34A 計量操作具(計量ボタン)
D 繰出手段
E 回転式拡散手段
S 拡散空間
Y 縦軸芯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯留部に貯留される粉粒体を繰り出す繰出手段と、この繰出手段から自重により落下供給される粉粒体を水平方向に拡散させる回転式拡散手段とが備えられている粉粒体散布装置であって、
前記繰出手段が、前記粉粒体の繰出作動を行うアクチュエータを備えて構成され、
前記回転式拡散手段が、縦軸芯周りで回転自在に支持された回転羽根と、この回転羽根を駆動回転するため前記縦軸芯上に配置された電動モータとを備えて構成され、
前記回転羽根で前記粉粒体が拡散される拡散空間の上方位置に、前記アクチュエータと、前記電動モータ及び前記アクチュエータを制御する制御基板とが位置するように前記アクチュエータと前記制御基板とが前記電動モータに隣接する位置関係で並列配置されている粉粒体散布装置。
【請求項2】
前記繰出手段が、貯留部に貯留される粉粒体を自重で下方に送る排出経路を開閉することにより粉粒体の供給量を設定するシャッターと、このシャッターを開閉作動させる往復作動型の前記アクチュエータとを備えて構成され、
前記制御基板が縦壁状に配置され、この制御基板の基板面に直交する方向視で、この制御基板とアクチュエータとが重なり合う位置に配置されている請求項1記載の粉粒体散布装置。
【請求項3】
前記制御基板が、横方向の寸法より縦方向の寸法を長く設定している請求項2記載の粉粒体散布装置。
【請求項4】
前記制御基板には、前記電動モータと前記アクチュエータとへの電力の供給と遮断とを行う起動スイッチと、前記アクチュエータの作動形態の設定により粉粒体の繰出量を設定する可変抵抗器とが、この制御基板の下側領域に備えられ、
前記アクチュエータと前記制御基板とを収容するケースの側面に、前記起動スイッチの起動操作具と、前記可変抵抗器の調整操作具とが備えられている請求項2又は3記載の粉粒体散布装置。
【請求項5】
前記制御基板の上側領域に、前記アクチュエータを予め設定された作動形態で、予め設定された時間だけ作動させることにより、粉粒体を繰り出す計量スイッチが備えられ、この計量スイッチの計量操作具が前記ケースの側面に形成されている請求項4記載の粉粒体散布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−157273(P2012−157273A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18674(P2011−18674)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】