説明

粉粒体

【課題】 製造工程の簡略化およびフッ素系化合物の有効利用が可能で、かつ製造工程において工業排水を一切出さず、十分なスベリ性および撥水性を有する粉粒体を提供すること。
【解決手段】 一般式;R−X(式中、Rは炭素数3〜30のフッ化アルキル基である;Xは水酸基、カルボキシル基、ビニル基、アクリル基、メタクリル基、アミノ基、エポキシ基、またはトリアルコキシシリル基である)で表される有機フッ素系化合物および有機珪素系化合物により微粒子を表面処理してなる粉粒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粉粒体、優れたスベリ性を有する粉粒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ファンデーション、アイシャドウ等のメーキャップの化粧料には撥水性を向上させる目的で、有機珪素系化合物単独で微粒子を表面処理してなる粉粒体が混合されている。しかしながら、そのような粉粒体は十分なスベリ性を有さないため、化粧料に十分なスベリ性を付与できなかった。
【0003】
また、メーキャップの化粧料にスベリ性を付与する目的で、有機珪素系化合物およびフッ素系化合物で微粒子を表面処理した粉粒体を混合することが知られている(特許文献1)。そのような粉粒体の製造法の概略は以下のごときである。
【0004】
酸化チタンの粉末を被覆する場合を例にとると、初めに酸化チタンの水スラリーを作製し、然る後に酸化チタンに対して固形分換算5重量%のパーフルオロアルキルリン酸エステルジエタノールアミン塩の水エマルジョンを徐々に添加混合し、酸性条件下で充分撹拌する。この操作によってパーフルオロアルキルリン酸エステルジエタノールアミン塩の錯体構造は安定性を失い、粉体表面に沈着する。この工程の後、中和剤を加えて中和し、3回の水洗をおこなって乾燥粉砕する。このようにして得られた粉体にシリコーン系の被覆剤メチルハイドロジェンポリシロキサン2重量%をイソプロパノールにて稀釈した液のスプレー噴霧を行い、ヘンシェルミキサーにて500rpm、30分間ミキシングした後解砕し、乾燥する。
【特許文献1】特開平9−301827号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記技術では以下に示すような問題を有していた。
(1)パーフルオロアルキルリン酸エステルジエタノールアミン塩は錯体構造を有しているので、粉体の表面に沈着させるためには酸性条件下で中和する必要がある。しかる後に、中和、水洗、乾燥工程を経て一旦被膜を形成させなければならない。従って、シリコーン被覆剤と同時に処理することができず、製造工程が煩雑であった。またパーフルオロアルキルリン酸エステルジエタノールアミンの有効利用という観点からも問題があった。
(2)中和工程や洗浄工程で工業排水が出るため、環境に良くなかった。
(3)得られた粉粒体は十分なスベリ性を有さないため、化粧料に十分なスベリ性を付与できなかった。
(4)パーフルオロアルキルリン酸エステルジエタノールアミン塩は酸性物質であるパーフルオロアルキルリン酸とアルカリ性物質であるジエタノールアミンとの錯体化合物であり、化粧料として用いるには安全性に多大の疑問があった。
【0006】
本発明は、製造工程の簡略化およびフッ素系化合物の有効利用が可能で、かつ製造工程において工業排水を一切出さず、十分なスベリ性および撥水性を有する粉粒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は一般式(I);
−X (I)
(式(I)中、Rは炭素数3〜30のフッ化アルキル基である;Xは水酸基、カルボキシル基、ビニル基、アクリル基、メタクリル基、アミノ基、エポキシ基、またはトリアルコキシシリル基である)で表される有機フッ素系化合物および有機珪素系化合物により微粒子を表面処理してなる粉粒体に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の粉粒体は優れたスベリ性および撥水性を有する。
本発明の粉粒体は、微粒子、有機硅素系化合物および有機フッ素系化合物を同時に混合撹拌し乾燥することによって製造可能であるので、工程は著しく簡略化される。また微粒子は有機硅素系化合物およびフッ素系化合物で同時に被覆処理が可能であって、フッ素系化合物は少量で使用されても、フッ素系化合物構造中のフッ化アルキル基の撥水撥油性により、被覆層表面にブリードアウトするため、フッ素系化合物の有効利用を達成できる。
本発明の粉粒体の製造工程では酸性およびアルカリ性薬品を使用しない。従って、中和工程および水洗工程も不要なので、工業排水も発生しなくなり、極めて環境にやさしい技術である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の粉粒体は、有機フッ素系化合物および有機珪素系化合物により微粒子を表面処理してなるものである。
【0010】
(微粒子)
本発明において処理される微粒子は、特に制限されるものではなく、得られる粉粒体の用途に応じて、公知の無機微粒子および有機微粒子が使用可能である。
無機微粒子としては、例えば、軽質または重質炭酸カルシウム、タルク、セリサイト、マイカ、シリカ、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸ストロンチウム、無機顔料類等が挙げられる。
有機微粒子としては、例えば、ナイロン、シリコーン、アクリル、ウレタン、有機顔料等が挙げられる。
【0011】
上記微粒子の中でも、粉粒体を化粧料に使用する観点からは、無機微粒子が好ましく、特にタルク、セリサイト、マイカ、酸化チタン、酸化鉄が好ましい。
【0012】
微粒子の粒径は粉粒体の用途に応じて適宜決定されればよく、例えば、粉粒体を化粧料に使用する場合には、平均粒径で0.01〜30μmが好ましい。
【0013】
本明細書中、平均粒径はSARADA2000(島津製作所製)によって測定された値を用いている。しかし、上記装置によって測定されなければならないというわけではなく、上記装置と同様の原理・原則に従って測定可能な装置であればいかなる装置によって測定されてもよい。
【0014】
(有機フッ素系化合物)
本発明において使用される有機フッ素系化合物は一般式(I);
−X (I)
で表されるものであり、それらの混合物であってもよい。
【0015】
式(I)中、Rは炭素数3〜30、好ましくは6〜13のフッ化アルキル基である。フッ化アルキル基は直鎖状であっても、分枝鎖状であってもよく、好ましくは直鎖状である。フッ化アルキル基における「フッ素原子/(フッ素原子+水素原子)」で表されるフッ化度は本発明の目的が達成される限り特に制限されるものではないが、スベリ性のさらなる向上の観点からは大きいほど好ましい。そのようなフッ化度は好ましくは50〜100%、より好ましくは70〜100%、特に80〜95%である。
【0016】
フッ化アルキル基の好ましい具体例として、例えば、一般式;
−(CFm1−(CHn1− (i)
(Yは水素原子またはフッ素原子である;mは5〜18、好ましくは6〜13の整数である;nは0〜8、好ましくは0〜3の整数である)で表される1価有機基が挙げられる。
【0017】
式(I)中、Xは水酸基、カルボキシル基、ビニル基、アクリル基、メタクリル基、アミノ基、エポキシ基、または一般式(ii);
−Si(OR)(OR)(OR) (ii)
で表されるトリアルコキシシリル基であり、好ましくは水酸基、ビニル基、アクリル基、メタクリル基、アミノ基、またはエポキシ基であり、より好ましくは水酸基またはエポキシ基である。
本明細書中、アクリル基はアクリロイル基およびアクリロイルオキシ基を包含する概念で用いるものとする。またメタクリル基はメタクリロイル基およびメタクリロイルオキシ基を包含する概念で用いるものとする。
またエポキシ基はエチレンオキシドから1個の水素原子を除いた1価の残基を意味するものとする。
【0018】
式(ii)中、R、RおよびRはそれぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基である。そのようなアルキル基として、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基が挙げられる。
【0019】
上記のような有機フッ素系化合物の好ましい具体例として、例えば、以下に示す化合物が挙げられる;
【化1】

【0020】
有機フッ素系化合物は市販品として入手可能である。
例えば、上記一般式(I−1)の化合物はダイキンファインケミカル社製「A−5810」として入手可能である。
また例えば、上記一般式(I−2)の化合物はダイキンファインケミカル社製「E−1830」として入手可能である。
また例えば、上記一般式(I−3)の化合物はダイキンファインケミカル社製「C−1800」として入手可能である。
また例えば、上記一般式(I−4)の化合物はダイキンファインケミカル社製「F−2020」として入手可能である。
また例えば、上記一般式(I−5)の化合物はダイキンファインケミカル社製「R−5810」として入手可能である。
また例えば、上記一般式(I−6)の化合物はダイキンファインケミカル社製「M−5810」として入手可能である。
また例えば、上記一般式(I−7)の化合物はダイキンファインケミカル社製「U−1810」として入手可能である。
【0021】
(有機珪素系化合物)
本発明において使用される有機珪素系化合物は、微粒子の表面に皮膜を形成可能な珪素原子含有化合物であれば特に制限されず、いわゆるシリコーンオイルやシランカップリング剤が使用可能である。
【0022】
シリコーンオイルは例えば、一般式(II);
【化2】

で表されるものである。
【0023】
式(II)中、Rはそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルコキシ基またはフェニル基であり、好ましくはそれぞれ独立して水素原子またはメチル基である。アルキル基は炭素数1〜3のものが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられる。アルコキシ基は炭素数1〜3のものが好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等が挙げられる。
は本発明の目的が達成される限り特に制限されるものではない。
【0024】
一般式(II)のシリコーンオイルとして以下の市販品が使用可能である。
例えば、日本ユニカー社製「L−31」(水素ガス発生量370ml/gSTP)、信越化学工業社製「KF−9901」(水素ガス発生量(0℃、1気圧)160ml/g)等が使用可能である。
【0025】
シランカップリング剤は例えば、一般式(III);
(Rn3−Si−(Rn4 (III)
で表されるものである。
【0026】
式(III)中、n+nは4であって、nは1〜3、好ましくは1の整数、nは3〜1、好ましくは3の整数である。
【0027】
はアルキル基;アリール基;またはビニル基、アミノ基、エポキシ基、アクリル基もしくはメタクリル基等の反応性基を含有する1価の有機基である。
アルキル基は炭素数1〜18、特に1〜8のアルキル基が好ましく、好ましい具体例として、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等が挙げられる。
アリール基は炭素数6〜10、特に6のアリール基が好ましく、好ましい具体例として、例えば、フェニル基が挙げられる。
ビニル基、アミノ基、エポキシ基、アクリル基もしくはメタクリル基等の反応性基を含有する1価の有機基は、当該反応性基そのものであってもよいし、または当該反応性基と他の基との複合基であってもよい。複合基である場合、当該複合基は上記反応性基を末端に有することが好ましく、さらに他の基として炭素数1〜6、特に1〜3のアルキレン基、または
−(CHk1−O−(CHk2− もしくは
−(CHk3−NH−(CHk4
(式中、k〜kはそれぞれ独立して0〜6、特に1〜3の整数である)で表される2価の基を含有することがより好ましい。
が複数個存在する場合にはそれぞれ独立して上記範囲内で選択されればよい。
【0028】
は炭素数1〜3のアルコキシ基である。アルコキシ基として、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等が挙げられる。Rが複数個存在する場合にはそれぞれ独立して上記範囲内で選択されればよい。
【0029】
上記シランカップリング剤の好ましい具体例として、例えば、以下に示す化合物が挙げられる;
【化3】

【0030】
そのようなシランカップリング剤は市販品として入手可能である。
例えば、上記一般式(III-1)の化合物は信越化学工業社製「KBM−13」として入手可能である。
また例えば、上記一般式(III-2)の化合物は信越化学工業社製「KBE−13」として入手可能である。
また例えば、上記一般式(III-3)の化合物は信越化学工業社製「KBM−103」として入手可能である。
また例えば、上記一般式(III-4)の化合物は信越化学工業社製「KBE−103」として入手可能である。
また例えば、上記一般式(III-5)の化合物は信越化学工業社製「KBM−3063」として入手可能である。
また例えば、上記一般式(III-6)の化合物は信越化学工業社製「KBE−3063」として入手可能である。
また例えば、上記一般式(III-7)の化合物は東芝シリコーン社製「TSL 8311」として入手可能である。
また例えば、上記一般式(III-8)の化合物は東芝シリコーン社製「TSL 8331」として入手可能である。
また例えば、上記一般式(III-9)の化合物は東芝シリコーン社製「TSL 8340」として入手可能である。
また例えば、上記一般式(III-10)の化合物は東芝シリコーン社製「TSL 8350」として入手可能である。
また例えば、上記一般式(III-11)の化合物は東芝シリコーン社製「TSL 8370」として入手可能である。
【0031】
得られる粉粒体のスベリ性のさらなる向上の観点からは、有機フッ素系化合物と有機珪素系化合物とは以下の組み合わせで使用されることが好ましい;
水酸基を有する有機フッ素系化合物と、カルボキシル基を有する有機珪素系化合物との組み合わせ;
アミノ基を有する有機フッ素系化合物と、カルボキシル基を有する有機珪素系化合物との組み合わせ;
エポキシ基またはカルボキシル基を有する有機フッ素系化合物と、アミノ基を有する有機珪素系化合物との組み合わせ;
アミノ基を有する有機フッ素系化合物と、エポキシ基を有する有機珪素系化合物との組み合わせ。
【0032】
(製造方法)
本発明の粉粒体は、有機フッ素系化合物、有機珪素系化合物および微粒子を同時に混合・撹拌し、乾燥することによって容易に製造可能である。通常は均一なブレンドを短時間におこなうべく、混合時により大きな剪断力を与えたいとの観点から、水および有機溶媒も同時に混合・撹拌される。
【0033】
混合・撹拌装置としては、上記材料からなる混合物を均一に混合できれば特に制限されず、例えば、ヘンシェルミキサーが使用可能である。処理時間は通常、3〜30分間、特に5〜15分間である。
【0034】
有機フッ素系化合物、有機珪素系化合物、水および有機溶媒の使用量は、本発明の目的が達成される限り特に制限されるものではない。通常は以下に記載の範囲が好適に採用される。特に有機フッ素系化合物は、該化合物の有効利用の観点から下記範囲内で少ないほど好ましい。なお、以下の値は微粒子100重量部に対する値である。
有機フッ素系化合物;0.01〜10重量部;特に0.05〜5重量部;
有機珪素系化合物;0.1〜15重量部;特に0.2〜7.0重量部;
水;0〜200重量部;特に0〜50重量部;および
有機溶媒;0〜100重量部;特に0〜50重量部。
【0035】
有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等主としてアルコール類が使用される。
【0036】
混合・撹拌後、乾燥前には通常、アトマイザー等によって解砕処理を行うことが好ましい。解砕条件は使用された微粒子の粒径等によって適宜決定されればよい。
【0037】
乾燥条件は、特に制限されず、例えば、130〜150℃にて1〜5時間の乾燥が行われればよい。
【0038】
このように粉粒体の製造工程では酸性およびアルカリ性薬品を使用しない。従って、中和工程および水洗工程も不要なので、工業排水も発生しなくなり、極めて環境にやさしい技術である。
また有機フッ素系化合物は少量で使用されても、上記のように有機珪素系化合物と共に使用されて当該フッ素系化合物構造中のフッ化アルキル基の撥水撥油性により、被覆層表面にブリードアウトするため、当該フッ素系化合物の有効利用を達成できる。
【0039】
以上の方法で得られる粉粒体はスベリ性および撥水性に優れている。
本発明の粉粒体は未処理の同じ微粒子を基準に、例えば、後で詳述するようなスベリ指数で少なくとも0.01g/cm低減され得る。なお、粉体のもつスベリ性は粉体の種類、形状および粒子径等によって大きく左右され、従来は粉体を直接肌にこすりつけたりして、官能的に判断されてきたが、本発明のようにスベリ指数を用いることで、そのような必要もなく、当該指数は有用である。
【0040】
本発明の粉粒体は優れたスベリ性および撥水性を有するので、それらの特性が必要とされる種々の用途、例えば、ファンデーション、アイシャドウおよびほほ紅等のメーキャップ化粧料;乳液およびクリーム等の基礎化粧料;カーボントナー;塗料;ゴム;合成樹脂等に有用である。本発明の粉粒体がそれらの用途に適用される場合には、従来からそれらの用途に使用される材料組成物等へ単に混入すればよい。
【実施例】
【0041】
(実験例1)
実施例において用いる材料は便宜上、下記ものを選定したが、本発明の目的を達成できる限り他の材料であっても差し支えはない。
(a)微粒子
・日本タルク社製 タルクSG−2000 平均粒径1μm
・浅田製粉社製 タルクJA−46R 平均粒径11〜12μm
・富士タルク工業社製 タルクSP−38 平均粒径48μm
・石原産業社製 酸化チタンCR−50 平均粒径0.25μm
(b)有機硅素系化合物
・日本ユニカー社製 HシリコーンL−31
・信越化学工業社製 シランカップリング剤KBM−13
【0042】
(c)フッ素化合物
・ダイキンファインケミカル社製 A−5810(前記一般式(I−1)で表される1H,1H,9H−ヘキサデカフルオロノナノール(20℃で固体))
・ダイキンファインケミカル社製 E−1830(前記一般式(I−2)で表される3−パーフルオロオクチル−1,2−エポキシプロパン(20℃で液体))
【0043】
(実施例および比較例)
表1または2に記載の微粒子、処理剤、水および有機溶媒を全てヘンシェルミキサーで10分間同時混合した後、アトマイザー(条件:1mmφスクリーン、10000rpm)で解砕し、130〜150℃にて3時間の乾燥を行い、粉粒体を得た。表において微粒子および処理剤は品番で示した。得られた粉粒体の平均粒径は使用された微粒子の平均粒径と同等であった。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【0046】
得られた粉粒体のスベリ性を評価した。
(スベリ性の数値化)
図1に示すようにガラス板(下)(フロー板ガラス)2の表面に、粉粒体3をできるだけ薄く均一に塗布した。その上にガラス板(上)(フロー板ガラス)1を載せて基点Oの位置がずれないように点Pの位置を上昇させ、ガラス板(上)1がスベリ始めた時のP点からの垂直高さPQを測定した。このとき、傾斜角αを測定してもよいが、測定の容易さの観点からは、PQの測定を行うことが好ましい。
【0047】
PQの測定値を5回求め、最大値と最小値を除外した3回の平均値と5回の測定値全ての平均値を求めた。これらの平均値よりスベリ指数δを以下のごとき計算式で求めた。スベリ指数δは下3桁を四捨五入して求め、単位は「g/cm」である。
【0048】
【数1】

【0049】
α:ガラス板(上)がスベリ始めたときの角度
OP:ガラス板(下)の長さ
PQ:ガラス板(上)がスベリ始めたときの高さ
S:ガラス板(上)の面積
W:ガラス板(上)の重量
【0050】
なお、表中に記載されている3点値は、最大値と最小値をカットした残りの3点から算出した数値であり、5点値は5回の測定値の全ての平均値から算出した数値である。
【0051】
以上より、粉粒体に対し特定量のフッ素系化合物とシリコーン系ビヒクル剤とを併用することにより粉粒体の表面スベリ性の向上をはかることができた。
【0052】
(実験例2)
本発明者は、一応用例としてファンデーションへの混入を実施し、他社製品と比較することによってその効果を確認した。
【0053】
以下の実施例17及び18はともにパウダーファンデーションの処方である。
処方No.KF−1のファンデーションはタルク、酸化チタン、セリサイトおよびマイカの全量と、ステアリン酸マグネシウム、弁柄、酸化鉄類をヘンシェルミキサーに投入し、5分混合した後オイル類およびビタミンEを滴下しながら、さらに5分撹拌混合した混合粉を計量して所定の容器に入れ、加圧して作製した。
なお、処方No.KF−2〜KF−7のファンデーションもKF−1の作製方法に準じておこなった。
【0054】
(実施例17)
【表3】

【0055】
タルク比較試料他社フッ素処理品は、浅田製粉社のJA−46Rを母体とした商品である。自社シリコーン処理品の酸化チタンは石原産業社のCR−50、セリサイトは三信鉱工社のFSE、マイカは山口雲母社のY−2300Xを母体とし、いずれも日本ユニカー社のL−31で表面処理したものである。
また、シリコーンオイルは信越化学工業社のKF−96A、フッ素オイルはモンテフルオス社のFOMBLIN HC−25を使用した。
弁柄として森山弁柄社製の弁柄七宝を用いた。黄色酸化鉄としてチタン工業社製のタロックスLL−XLOを用いた。黒色酸化鉄としてチタン工業社製のBL100を用いた。
【0056】
(実施例18)
【表4】

【0057】
酸化チタン比較試料他社フッ素処理品は石原産業社のCR−50を母体とした商品である。自社シリコーン処理品のタルクは、浅田製粉社のJA−46R、セリサイトは三信鉱工社のFSE、マイカは山口雲母社のY−2300Xを母体とし、いずれも日本ユニカー社のL−31で表面処理したものである。
また、シリコーンオイル、フッ素オイル、弁柄、黄色酸化鉄、黒色酸化鉄は実施例17と同様のものを用いた。
【0058】
実施例17および18で作製したパウダーファンデーションを「肌へのフィット感」、「化粧のり」、「化粧もち」および「化粧伸び」について官能テストをおこなった。
なお、「肌へのフィット感」とは塗布した時に肌が感じる違和感に基づくものである。
「化粧のり」とは塗布した時に外観上、視覚的に感じる違和感に基づくものである。
「化粧もち」とは塗布してから約5時間経過後における化粧くずれに基づくものである。化粧くずれは塗布層の消失、崩壊等によって起こるものである。
「化粧伸び」とは塗布した時にファンデーションを均一かつ広範囲に広げることができるという塗布感に基づくものである。
【0059】
評価パネラーは10名であり、以下の基準に基づく評点を得た。
4点:大変良い
3点:良い
2点:ふつう
1点:悪い
【0060】
評点の平均値に基づいて評価を行った。結果を表5に示す。総合評価は全ての項目の評価結果のうちで最悪の結果を採用した。
○:4.0
△:3.0〜3.9
×:2.0〜2.9
××:0〜1.9
【0061】
【表5】

【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】スベリ指数の測定方法を説明するための概略図である。
【符号の説明】
【0063】
1:ガラス板(上)、2:ガラス板(下)、3:粉粒体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I);
−X (I)
(式(I)中、Rは炭素数3〜30のフッ化アルキル基である;Xは水酸基、カルボキシル基、ビニル基、アクリル基、メタクリル基、アミノ基、エポキシ基、またはトリアルコキシシリル基である)で表される有機フッ素系化合物および有機珪素系化合物により微粒子を表面処理してなる粉粒体。
【請求項2】
有機フッ素系化合物、有機珪素系化合物および微粒子を同時に混合・撹拌し、乾燥してなる請求項1に記載の粉粒体。
【請求項3】
化粧料に混合して使用される請求項1または2に記載の粉粒体。


【図1】
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【公開番号】特開2006−45116(P2006−45116A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−228363(P2004−228363)
【出願日】平成16年8月4日(2004.8.4)
【出願人】(504297836)小山油脂工業株式会社 (1)
【出願人】(504297881)
【Fターム(参考)】