説明

粒子の分離方法と分離装置

【課題】種々の粒径の粒子が混在するものから、特定の大きさの粒子を効率よく選別する。
【解決手段】粒子の分離方法は、粒子の分離方法は、粒径が異なる粒子を含む液体を超音波振動させて霧化し、霧化されたミストMに含まれる粒子と原液Gに残存する粒子とで粒子を大きさ別に分離する。粒子の分離装置は、微細粒子を含む液体を超音波振動させてミストMに霧化する超音波霧化機1と、この超音波霧化機1で霧化されたミストMの微細粒子を回収する回収部5とを備える。超音波霧化機1は、粒径が異なる粒子を含む液体を入れる超音波霧化室4と、この超音波霧化室4の液体を超音波振動させてミストMに霧化する超音波振動子2と、超音波振動子2に高周波電力を供給する超音波電源3とを備える。分離装置は、超音波霧化機1で霧化されたミストMに含まれる微細粒子を回収部5で回収して、微細粒子を大きさ別に分離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主としてナノオーダーないしミクロンオーダーの微細な粒子を大きさで分離するのに最適な粒子の分離方法と分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノ粒子を分離できる装置は開発されている。(特許文献1参照)
特許文献1に記載される装置は、レンズと平板の間に形成される空隙を利用して微粒子をそのサイズにより分離する。この装置は、レンズと平板の間に形成される両者の距離が連続的に小さくなる空隙部分に微粒子を含む溶液を注入して、微粒子を含む溶液中の微粒子をレンズの中心方向に向かって移動させる。微粒子がその大きさに応じた空隙の部分にトラップされることを利用して、微粒子をサイズによって分離し、微粒子がトラップされた位置の空隙間の距離をレンズと平板の間の光の干渉によって生じるニュートンリングによって測定する。
【特許文献1】特開2005−249753号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1の分離装置は、ナノサイズの粒子を分離できる。しかしながら、この装置は、種々の粒径の粒子から特定の粒径の粒子を能率よく選別することができない。
【0004】
本発明は、種々の粒径の粒子が混在するものから、特定の大きさの粒子を効率よく選別できる粒子の分離方法と装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の粒子の分離方法は、前述の目的を達成するために以下の構成を備える。
粒子の分離方法は、粒径が異なる粒子を含む液体を超音波振動させて霧化し、霧化されたミストMに含まれる粒子と原液Gに残存する粒子とで粒子を大きさ別に分離する。
【0006】
本発明の粒子の分離方法は、霧化されたミストMに強制送風することができる。さらに、本発明の粒子の分離方法は、ミストMに強制送風する風量を、超音波振動させる超音波振動子2の入力電力1Wに対して、1リットル/分以上とすることができる。
【0007】
本発明の粒子の分離方法は、ミストMに強制送風する風量を変化させることができる。本発明の粒子の分離方法は、粒子を含む液体に、水またはアルコール水溶液を使用することができる。さらに、本発明の粒子の分離方法は、粒子を含む液体に、表面張力変化剤あるい粘度調整剤のいずれか一方または両方を添加することができる。さらに、本発明の粒子の分離方法は、分離する粒子の平均粒径を1nmないし100μmとすることができる。さらに、本発明の粒子の分離方法は、粒子を、遺伝子もしくはタンパク質、糖質、糖タンパク質のいずれかとし、また、カーボンナノチューブ、発光材料、蛍光体、あるいはそれらの金属錯体、ポリマーのいずれかとすることができる。
【0008】
本発明の粒子の分離装置は、前述の目的を達成するために以下の構成を備える。
粒子の分離装置は、微細粒子を含む液体を超音波振動させてミストMに霧化する超音波霧化機1と、この超音波霧化機1で霧化されたミストMの微細粒子を回収する回収部5とを備える。超音波霧化機1は、粒径が異なる粒子を含む液体を入れる超音波霧化室4と、この超音波霧化室4の液体を超音波振動させてミストMに霧化する超音波振動子2と、超音波振動子2に高周波電力を供給する超音波電源3とを備える。分離装置は、超音波霧化機1で霧化されたミストMに含まれる微細粒子を回収部5で回収して、微細粒子を大きさ別に分離する。
【0009】
本発明の粒子の分離装置は、超音波霧化室4に搬送気体を強制送風する気体供給源8を備え、この気体供給源8で霧化されたミストMに送風することができる。気体供給源8は、超音波振動子2の入力電力1Wに対して、1リットル/分以上の風量で超音波霧化室4に搬送気体を強制送風することができる。また、気体供給源8は、超音波霧化室4に送風する搬送気体の風量を変化させる風量変化機構37を有することができる。さらに、本発明の粒子の分離装置は、搬送気体を空気とすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の粒子の分離方法と分離装置は、種々の粒径の粒子が混在するものから、特定の大きさの粒子を効率よく選別できる特長がある。それは、本発明が、粒径が異なる粒子を含む液体を超音波振動させて霧化し、霧化されたミストに含まれる粒子と原液に残存する粒子とで粒子を大きさ別に分離しているからである。大きさが異なる微細な粒子を含む液体を超音波振動させてミストに霧化すると、粒径の小さい粒子は、霧化されるミストに含まれる状態で原液から分離されて、大きい粒子は、霧化されるミストに含まれることなく、原液から分離されない。したがって、霧化されたミストに含まれる微細粒子であって、原液に残存する残存粒子よりも小さな粒径の微細粒子を選別粒子として回収することにより、種々の粒径の粒子が混在するものから、特定の大きさの粒子を効率よく選別できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための粒子の分離方法と分離装置を例示するものであって、本発明は分離方法と分離装置を以下のものに特定しない。
【0012】
さらに、この明細書は、特許請求の範囲を理解しやすいように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
【0013】
本発明の粒子の分離方法と分離装置は、微細な粒子を大きさで分離するのに適している。大きさで分離される粒子は、無機粉末や有機粉末などの微細な粒子である。これらの微細な粒子は、薬剤や蛍光体粒子等である。粒子は、たとえば、遺伝子もしくはタンパク質、糖質、糖タンパク質のいずれかとすることができ、また、カーボンナノチューブ、発光材料、蛍光体、あるいはそれらの金属錯体、ポリマーのいずれかとすることができる。
【0014】
本発明の分離方法と分離装置は、図1の概念図に示すように、大きさが異なる微細粒子L、Sを含む液体を超音波振動させてミストMに霧化する。霧化されたミストMから液体成分Wを除去して微細粒子を回収すると、回収された選別粒子は、原液Gに残存する残存粒子よりも微細な粒子となる。超音波振動で霧化されるミストMは、小さい微細粒子Sである選別粒子を含む状態で原液Gから分離される。ミストMは、大きい微細粒子Lを含む状態で原液Gから分離されない。
【0015】
ミストMに含まれて原液Gから分離される選別粒子の粒径は、ミストMの粒径に影響を受ける。大きな粒径のミストは、大きな粒径の微細粒子を含む状態で原液から分離され、小さい粒径のミストは、小さい粒径の微細粒子のみを含む状態で原液から分離される。ミストは、一般的にはそれ自体の粒径よりも小さい微細粒子を含む状態で原液から分離される。したがって、ミストの粒径をコントロールして、原液から分離される微細粒子の粒径を調整し、ミストに含まれる液体成分から分離される選別粒子の粒径を調整できる。
【0016】
ミストMの粒径は、液体の種類、風量、温度、超音波振動子の振動周波数で調整できる。粒子を含む液体には、水やアルコール水溶液が使用できる。さらに、液体は、表面張力変化剤あるいは粘度調整剤のいずれか一方または両方を添加して、液体の表面張力や粘度を調整することもできる。表面張力変化剤や粘度調整剤には、両親媒性物質や親水性有機化合物、たとえば、アルコール類、糖、糖アルコール、界面活性物質等が使用できる。液体の種類によりミストMの粒径は変化する。たとえば、30℃の水を超音波振動させて得られるミストの粒径は100nmとなり、30℃のエチルアルコールを超音波振動させてむ得られるミストの粒径は1nmとなる。従って、液体の種類でミストの粒径をコントロールできる。また、液体をエチルアルコール水溶液とすると、液体の温度と供給する風量によって、ミストの粒径は、100nmと1nmに変化する。たとえば、20モル%のエチルアルコール水溶液の温度を20℃とすると、ミストの粒径は1nmとなり、温度を20℃から50℃にすると、ミストは粒径が1nmのものと100nmのものが混在した状態となる。従って、エチルアルコールは、温度を高くして、粒径を大きくできる。さらに、このエチルアルコール水溶液の温度を30℃とし、風量を15リットル/分とすると、ミストは粒径が1nmのものと100nmのものが混在する状態となる。この状態から風量を50リットル/分まで増加すると、ミストの粒径は1nmとなり、100nmのものはなくなる。したがって、風量を多くしてミストの粒径を小さくできる。だたし、以上の試験において、超音波振動子の入力電力は10W、振動周波数は2.4MHzである。超音波振動子の振動周波数を変更してミストの粒径をコントロールすることもできる。この場合、振動周波数を高くして、ミストを粒径を小さくできる。
【0017】
以上の方法で微細粒子を大きさ別に分離する分離装置を図2に示す。この図の分離装置は、液体を超音波振動させてミストに霧化する超音波霧化機1と、この超音波霧化機1で霧化されたミストから選別粒子を回収する回収部5とを備える。超音波霧化機1は、粒径が異なる微細粒子を含む液体が供給される閉鎖構造の超音波霧化室4と、この超音波霧化室4の液体を超音波振動させてミストに霧化する複数の超音波振動子2と、各々の超音波振動子2の上方に配設している筒体6と、超音波振動子2に接続している超音波電源3とを備える。
【0018】
図2の分離装置は、超音波霧化室4と回収部5とを別々に離して、連結ダクト7で連結している。この分離装置は、超音波霧化室4で霧化された液体のミストを、閉鎖構造の回収部5に流入させる。回収部5は、微細なミストから液体成分を分離して選別粒子を回収する。選別粒子は、ミストの液体成分を気化して回収される。
【0019】
超音波霧化室4は、たとえば、微細粒子の濃度が1〜50重量%である液体を霧化して、選別する微細粒子がミストとして分離された後、液体を新しいものに入れ換える。一定の時間経過すると液体を新しいものに入れ換える方法、すなわちバッチ式に液体を交換する。図の分離装置は、超音波霧化室4に、ポンプ11を介して微細粒子を含む液体を蓄えている原液槽10を連結しており、ポンプ11を運転して原液槽10から液体を供給している。ただ、分離装置は、原液槽から連続的に液体を供給することもできる。この装置は、たとえば、超音波霧化室の液体を排出しながら、原液槽から液体を供給して、液体から連続して選別粒子を分離する。超音波霧化室から排出される液体は、原液槽に環流して超音波霧化室に循環させることもできる。
【0020】
超音波霧化室4の液体は、超音波霧化機1で選別粒子を含むミストとして霧化される。超音波霧化機1で霧化されたミストは、粒径の小さい選別粒子を含む状態で原液から分離される。したがって、超音波霧化機1で微細粒子を含む原液をミストに霧化し、ミストから選別粒子を回収して、小さい粒子を効率よく分離できる。
【0021】
図の装置は、超音波霧化室4に筒体6を配設している。筒体6は、各々の超音波振動子2の上方に配設されて、超音波振動子2で超音波振動される液体から効率よくミストを飛散させる。筒体6は、上端に噴霧口12を開口している筒状としている。筒体6は、内部に液体を充填し、筒体6内の液体に、噴霧口12に向かって超音波振動を与えて、噴霧口12からミストに霧化して飛散する。図の超音波振動子2は、上方に超音波を放射する。したがって、筒体6は、超音波振動子2の上方に、垂直な姿勢で配設している。図の筒体6は、上端に向かって次第に細くなる円錐ホーンである。ただし、筒体は、内面の形状をエクスポーネンシャルカーブとするエクスポーネンシャルホーンとすることもできる。円錐ホーンやエクスポーネンシャルホーンの筒体6は、内部に効率よく超音波振動を伝達させて、液体を能率よくミストに霧化できる特徴がある。ただ、本発明は、筒体を、円筒形状、楕円筒状、多角筒状とするとすることもできる。
【0022】
筒体6の下端開口部の内形は、超音波振動を効率よく内部に伝達できるように、超音波振動子2の外形より小さく、あるいは大きくして、超音波振動される液柱Pが内面に沿って上昇するようにする。たとえば、筒体6の下端の開口部の内径は、超音波振動子2の外径の50〜150%、好ましくは60〜100%とする。
【0023】
さらに、筒体6の高さと噴霧口12の大きさは、筒体6の内部に沿って、いいかえると筒体6の内面と液柱Pとの間に気層ができないように、超音波振動による液柱Pが筒体6の内部に沿って上昇し、噴霧口12の近傍でミストとなって飛散するように設計される。ただ、液柱Pが噴霧口12から突出するように、いいかえると筒体6を液柱Pよりも低くすることもできる。したがって、筒体6の高さと噴霧口12の大きさは、超音波振動子2の大きさ、出力、周波数等によって最適値に設計される。
【0024】
図の筒体6は、下端を液体の液面よりも下方に、噴霧口12を液面よりも上方に配設する。この筒体6は、液面よりも下方の超音波振動を内部に案内し、液面から上方にある噴霧口12からミストとして飛散させる。
【0025】
図3の筒体6は、超音波振動子2から上方に離して配設され、図4と図5の筒体6は、底部に超音波振動子2を配設して、超音波振動子2で下端の開口部を液密に閉塞している。下端を超音波振動子2で閉塞する筒体6は、内部に液体を供給する流入口13を開口している。
【0026】
さらに、図5の筒体6は、複数の分岐筒6Aに分岐している。各々の分岐筒6Aは、上端を細くする円錐ホーンである。各々の分岐筒6Aは、下端を開口して上端に噴霧口12を開口している。隣接する分岐筒6Aの境界は、超音波振動の反射を少なくして効率よく分岐筒6Aの内部に伝導するように、下端に向かって次第に幅の狭くなるテーパー状として下端縁を先鋭な形状としている。各々の分岐筒6Aは、液体を供給するために流入口13を開口している。この筒体6は、流入口13から液体が供給される。供給された液体は、超音波振動子2から放射される超音波振動の超音波を、複数の分岐筒6Aに分岐して案内する。各々の分岐筒6Aの内部で液体は超音波振動されて液柱Pとなり、上部の噴霧口12からミストに霧化されて飛散される。
【0027】
さらに、筒体6は、噴霧口12から霧化されるミストに搬送気体を供給する噴気口14を開口して、この噴気口14を気体供給源8に連結している。気体供給源8から供給される搬送気体は噴気口14からミストに供給され、噴霧口12から噴霧されるミストは搬送気体中に霧化される。この状態で霧化されたミストを含む搬送気体は回収部5に供給され、回収部5でミストから選別粒子が分離されて回収される。搬送気体は空気である。ただし、搬送気体は空気に特定せず、液体を霧化できる全ての気体、たとえば窒素や炭酸ガス等とすることもできる。図の装置は、気体供給源8を送風機8Aとして、搬送気体を空気としている。気体供給源8の送風機8Aは、空気を吸入して、ミストに搬送気体の空気を供給する。閉鎖構造の超音波霧化室4は、送風機8Aから供給される空気を連結ダクト7に排気して、連結ダクト7で回収部5に送風する。したがって、閉鎖構造の超音波霧化室4に送風機8Aで搬送気体を強制送風する装置は、連結ダクト7に搬送気体を強制送風する送風機などを設けることなく、超音波霧化室4から回収部5に搬送気体を送風できる。ただ、連結ダクトに送風機(図示せず)を連結し、この送風機で超音波霧化室から回収部に搬送気体を強制送風することもできる。
【0028】
気体供給源8が超音波霧化室4に供給する搬送気体の風量は、霧化されるミストの粒径に影響を与える。搬送気体の風量を多くすると、ミストの粒径は小さくなる。搬送気体は、ミストの霧化量が多くなると多くする必要がある。ミストの霧化量は、超音波振動子2の入力電力を大きくして増加する。したがって、搬送気体の風量は、超音波振動子2の入力電力に比例して大きくする必要がある。このことから、気体供給源8がミストに供給する搬送気体の風量は、超音波振動子2の入力電力1Wに対して、1リットル/分以上、好ましくは、1.5W以上、さらに好ましくは3W以上とする。
【0029】
図の気体供給源8は、超音波霧化室4に送風する搬送気体の風量を変化させる風量変化機構37を備えている。図に示す風量変化機構37は、送風機8Aの運転を制御するインバータ37Aである。この風量変化機構37は、インバータ37Aで送風機8Aのファンの回転数を制御して、超音波霧化室4に供給する搬送気体の風量を調整する。ただ、風量変化機構は、図の鎖線で示すように、ダンパー37Bとして、送風機8Aの排出側に配設することもできる。このダンパー37Bは、搬送気体を通過させる開口面積を調整して、超音波霧化室4に供給する搬送気体の風量を調整する。
【0030】
図3ないし図5の筒体6は、壁面を二重構造として平面の内部にダクト15を設けている。ダクト15は、筒体6の上端に開口している噴気口14に連結している。ダクト15に供給される搬送気体は、噴気口14から排出される。噴気口14は、筒体6上端の周囲に、スリット状に開口されている。スリット状の噴気口14は、搬送気体をリング状に排気する。リング状に排気される搬送気体の内側にミストが放出される。この構造の筒体6は、ミストを新鮮な搬送気体の内側に噴霧する。このため、液体を効率よくミストに霧化できる。ミストが液体濃度の低い搬送気体中に霧化されるからである。
【0031】
図3ないし図5の筒体6は、連結ダクト16に脱着できるように連結している。連結ダクト16には、図示しないが、複数の筒体を連結している。図3の筒体6は、下端の外周に雄ネジ17を設け、連結ダクト16には筒体6の雄ネジ17をねじ込む雌ネジ穴18を設けている。筒体6は、雄ネジ17を雌ネジ穴18の雌ネジにねじ込んで、連結ダクト16に連結される。連結ダクト16は、内部に搬送気体の供給ダクト19を設けている。筒体6は、連結ダクト16に連結される状態で、ダクト15の入口を連結ダクト16の供給ダクト19に連結して、連結ダクト16の供給ダクト19から筒体6のダクト15に搬送気体が供給される。図3の筒体6は、雄ネジ17の上方と底面とに、リング溝を設けて、ここにOリング20、21を入れている。Oリング20、21は、筒体6を連結ダクト16に連結する状態で、雌ネジ穴18の内面に密着して、連結ダクト16と筒体6との連結部の気体漏れを阻止する。すなわち、筒体6を気密な状態で連結ダクト16に連結する。
【0032】
図4と図5の筒体6は、下端に円柱状の連結部22を設け、この連結部22を挿入する連結穴23を連結ダクト16に設けている。連結穴23は、連結ダクト16を上下に貫通して設けている。連結部22と連結穴23との気体漏れを阻止するために、連結部22の上部に設けたリング溝にOリング20を入れて、連結穴23の下部に設けたリング溝にOリング21を入れている。Oリング20、21は、連結部22と連結穴23の隙間を閉塞して、筒体6を連結ダクト16に気密に気体漏れしないように連結する。筒体6を連結ダクト16に連結して、筒体6のダクト15の入口は連結ダクト16の供給ダクト19に連結され、連結ダクト16の供給ダクト19から筒体6のダクト15に搬送気体が供給される。
【0033】
さらに、これ等の図に示す筒体6は、脱着連結具24を介して超音波振動子2を脱着できるように連結している。脱着連結具24は、上方を開口する装着室25を内部に設けている。この装着室25に超音波振動子2を固定している。図の脱着連結具24は、装着室25に超音波振動子2を駆動するための電源回路部品26も収納している。電源回路部品26は、リード線27を介して超音波振動子2に接続されて、超音波振動子2に電気信号の超音波出力を出力する。超音波振動子2は、装着室25の開口部を気密に閉塞する。したがって、超音波振動子2は、その周囲を、パッキン28を介して装着室25の開口部に密着している。超音波振動子2で水密に閉塞される装着室25に、電源回路部品26を収納している。このため、電源回路部品26を水密構造とする必要はない。図の脱着連結具24は、装着室25に超音波振動子2と電源回路部品26を内蔵するので、超音波振動子2と電源回路部品26を簡単に交換できる特徴がある。ただ、脱着連結具は、装着室に超音波振動子のみを収納し、超音波振動子に接続しているリード線を脱着連結具の外側に引き出して、電源回路に接続する構造とすることもできる。この脱着連結具は、超音波振動子を必ずしも水密構造に固定する必要はない。
【0034】
脱着連結具24は、筒体6の下端に、下方に開口して設けている連結凹部29に脱着できるように連結される。脱着凹部29は、内面に雌ネジを設けている。脱着連結具24は、脱着凹部29に挿入できる外形として、脱着凹部29の雌ネジにねじ込む雄ネジを外周に設けている。雄ネジを雌ネジにねじ込んで、脱着連結具24は脱着凹部29に連結される。脱着凹部29は筒体6の内部に連通しているので、脱着連結具24は筒体6に液密な構造で連結する必要がある。このため、脱着凹部29の内面と脱着連結具24の外周との間にOリング30を挟着している。Oリング30は、Oリング30と脱着連結具24との間を液密な状態で連結して、筒体6の下端の脱着凹部29を脱着連結具24で液密に閉塞する。
【0035】
以上の超音波霧化機1は、超音波振動子2を超音波振動させて、液体をミストとして筒体6の噴霧口12から飛散させる。液体は、筒体6の内部で超音波振動され、噴霧口12からミストとして飛散される。図の超音波霧化機1は、超音波振動子2を上向きに配設している。超音波振動子2は、底から筒体6の内部に向かって上向きに超音波を放射して、液体を超音波振動させ、液体を筒体6の内部で押し上げて、噴霧口12からミストとして飛散させる。超音波振動子2は、垂直方向に超音波を放射する。
【0036】
以上のように、筒体6を備える分離装置は、超音波霧化室4の原液を効率よくミストに霧化できる特長がある。ただ、本発明の分離装置は、必ずしも筒体を設ける必要はない。筒体のない分離装置は、超音波霧化室において、超音波振動子で液体を超音波振動させて、液面に発生する液柱の表面からミストに霧化することができる。
【0037】
図2の超音波霧化機1は、複数の超音波振動子2と、これ等の超音波振動子2を超音波振動させる超音波電源3とを備える。超音波振動子2は、筒体6の下方に固定される。
【0038】
超音波霧化室4で霧化された液体のミストは、回収部5に流入される。ミストを回収部5に流入させるために、図2の装置は、回収部5を連結ダクト7で超音波霧化室4に連結している。
【0039】
さらに、図2の装置は、筒体6の噴霧口12から飛散するミストを効率よく回収して連結ダクト7に供給させるために、筒体6の噴霧口12の上方に、ミストの吸入部9を設けている。図に示す吸入部9は、円筒状のパイプで、筒体6の上方に垂直の姿勢で配置している。筒状のパイプである吸入部9は、下端を筒体6の上部に配置して、上端を超音波霧化室4の上方に延長している。図に示す吸入部9は、筒体6の上端縁に位置して、円筒状パイプの下端縁を配置している。ただ、吸入部は、下端部を筒体の上部にラップする状態で配置することも、あるいは、下端縁を筒体の上端縁から離して配置することもできる。さらに、吸入部9の下端の開口部は、筒体6の噴霧口12よりも広い開口面積としており、筒体6の上端から飛散されるミストを漏れなく回収できるようにしている。吸入部9は上端を、超音波霧化室4の上部に連結しており、この連結部を連結ダクト7に連結して、吸入部9で回収されたミストを連結ダクト7に移送するようにしている。ただ、吸入部は、必ずしも設ける必要はない。
【0040】
回収部5は、霧化されたミストの液体成分を気化させて、ミストから選別粒子を回収する。図1と図2の回収部5はサイクロン31である。サイクロン31は、供給される搬送気体を水平面内に回転させながら加熱してミストの液体成分を気化する。気化された液体成分は、搬送気体と一緒に上方に排気される。ミストから分離された選別粒子は、下端の中心に集められて排出される。サイクロン31は円筒状で、天板33の中心に、搬送気体を排出する排気口34を開口している。円筒32の下部は、下方に向かって細くなるテーパー部35としている。このテーパー部35の下端は、ミストから分離された選別粒子を排出する排出口36を開口している。
【0041】
ミストを含む搬送気体が加熱されてミストの液体成分は気化され、ミストから選別粒子が回収される。搬送気体は、サイクロン31で加熱され、あるいは連結ダクト7で加熱される。本発明は、微細粒子を含むミストを原液から霧化させる。その後、ミストに含まれる粒子をミストから分離する必要がある。霧化されたミストの液体成分を気化させて、選別粒子を分離できる。本発明は、ミストの液体成分を気化させるタイミングを特定しない。したがって、本発明は、超音波霧化室でミストの液体成分を気化させることもできる。このことを実現するには、気体供給源で加熱された搬送気体を超音波霧化室のミストに供給する。搬送気体を加熱することは、ミストの霧化効率を向上することにも効果がある。このため、搬送気体を加熱して超音波霧化室に供給する装置は、ミストの霧化効率を高くすると共に、霧化されたミストの液体成分を速やかに気化させて、選別粒子をミストから能率よく分離する。ミストから分離された選別粒子は、搬送気体中に浮遊し、搬送気体で回収部に移送される。回収部5のサイクロン31は、搬送気体を水平面内で回転させて、選別粒子を中心に集めて落下させる。選別粒子の分離された搬送気体は、天板33の排気口34から排気される。
【0042】
回収部5のサイクロン31は、搬送気体から能率よく選別粒子を分離できる。ただ、本発明は、回収部をサイクロンには特定しない。回収部は、ミストを含む搬送気体を熱交換器で冷却し、ミストを結露させて、選別粒子を含む液体として搬送気体から分離することもできる。液体に含まれる選別粒子は、遠心分離機で液体から分離され、あるいは沈降させて液体から分離される。
【実施例】
【0043】
図2に示す分離装置を使用して、100nmと50nmの微細粒子を分離する。
液体である水に、100nmと50nmのラテックス粒子を混合する。この液体を入力電力を10W、振動周波数を2.4MHzの超音波振動子2で超音波振動して、ミストに霧化する。液体の温度を30℃、超音波霧化室4に供給する搬送気体を空気として、その風量を10リットル/分とする。ミストに含まれる選別粒子の粒度分布は図6に示すようになる。この図からわかるように、ミストから回収される選別粒子には100nmの粒子がほとんど含まれず、この条件で100nmの粒子から50nmの粒子を選別できる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施例にかかる粒子の分離方法を示す概念図である。
【図2】本発明の一実施例にかかる粒子の分離装置を示す概略構成図である。
【図3】図2に示す分離装置の筒体を示す断面正面図である。
【図4】筒体の他の一例を示す断面正面図である。
【図5】筒体の他の一例を示す断面正面図である。
【図6】本発明の分離装置で霧化したミストに含まれる選別粒子の粒度分布を示す図である。
【符号の説明】
【0045】
1…超音波霧化機
2…超音波振動子
3…超音波電源
4…超音波霧化室
5…回収部
6…筒体 6A…分岐筒
7…連結ダクト
8…気体供給源 8A…送風機
9…吸入部
10…原液槽
11…ポンプ
12…噴霧口
13…流入口
14…噴気口
15…ダクト
16…連結ダクト
17…雄ネジ
18…雌ネジ穴
19…供給ダクト
20…Oリング
21…Oリング
22…連結部
23…連結穴
24…脱着連結具
25…装着室
26…電源回路部品
27…リード線
28…パッキン
29…連結凹部
30…Oリング
31…サイクロン
32…円筒
33…天板
34…排気口
35…テーパー部
36…排出口
37…風量変化機構 37A…インバータ
37B…ダンパー
P…液柱
G…原液
M…ミスト
L…微細粒子
S…微細粒子
W…液体成分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒径が異なる粒子を含む液体を超音波振動させて霧化し、霧化されたミスト(M)に含まれる粒子と原液(G)に残存する粒子とで粒子を大きさ別に分離する粒子の分離方法。
【請求項2】
霧化されたミスト(M)に強制送風する請求項1に記載される粒子の分離方法。
【請求項3】
ミスト(M)に強制送風する風量が、超音波振動させる超音波振動子(2)の入力電力1Wに対して、1リットル/分以上である請求項2に記載される粒子の分離方法。
【請求項4】
ミスト(M)に強制送風する風量を変化させる請求項1に記載される粒子の分離方法。
【請求項5】
粒子を含む液体に水を使用する請求項1に記載される粒子の分離方法。
【請求項6】
粒子を含む液体にアルコール水溶液を使用する請求項1に記載される粒子の分離方法。
【請求項7】
粒子を含む液体に表面張力変化剤あるいは粘度調整剤のいずれか一方または両方を添加する請求項1に記載される粒子の分離方法。
【請求項8】
分離する粒子の平均粒径を1nmないし100μmとする請求項1に記載される粒子の分離方法。
【請求項9】
粒子が、遺伝子もしくはタンパク質、糖質、糖タンパク質のいずれかである請求項1に記載される粒子の分離方法。
【請求項10】
粒子が、カーボンナノチューブ、発光材料、蛍光体、あるいはそれらの金属錯体、ポリマーのいずれかである請求項1に記載される粒子の分離方法。
【請求項11】
微細粒子を含む液体を超音波振動させてミスト(M)に霧化する超音波霧化機(1)と、この超音波霧化機(1)で霧化されたミスト(M)から微細粒子を回収する回収部(5)とを備え、超音波霧化機(1)は、粒径が異なる粒子を含む液体を入れる超音波霧化室(4)と、この超音波霧化室(4)の液体を超音波振動させてミスト(M)に霧化する超音波振動子(2)と、超音波振動子(2)に高周波電力を供給する超音波電源(3)とを備え、
超音波霧化機(1)で霧化されたミスト(M)に含まれる微細粒子を回収部(5)で回収して、微細粒子を大きさ別に分離する粒子の分離装置。
【請求項12】
超音波霧化室(4)に搬送気体を強制送風する気体供給源(8)を備え、この気体供給源(8)で霧化されたミスト(M)に送風する請求項11に記載される粒子の分離装置。
【請求項13】
気体供給源(8)が、超音波振動子(2)の入力電力1Wに対して、1リットル/分以上の風量で超音波霧化室(4)に搬送気体を強制送風する請求項12に記載される粒子の分離装置。
【請求項14】
気体供給源(8)が、超音波霧化室(4)に送風する搬送気体の風量を変化させる風量変化機構(37)を有する請求項12に記載される粒子の分離装置。
【請求項15】
搬送気体が空気である請求項14に記載される粒子の分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−49220(P2008−49220A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−225110(P2006−225110)
【出願日】平成18年8月22日(2006.8.22)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(503268143)超音波醸造所有限会社 (20)
【Fターム(参考)】