説明

粒子を含む塗料

本発明は、a)固形分が20重量%〜90重量%のヒドロキシル官能性塗膜形成樹脂(L)と、b)遊離イソシアネートおよび/または保護されたイソシアネート基(熱処理で保護基が除去されイソシアネート基が解放される)を含む、固形分が1重量%〜90重量%のコーティング用硬化剤(H)と、c)その表面上にイソシアネート反応性基を有する粒子(P)の50%以上の反応性基のほうが、塗膜形成樹脂(L)の60%以上のヒドロキシル基よりもイソシアネートに対する反応が大きい、固形分が0.05重量%〜40重量%の粒子(P)と、d)コーティング配合物(B)全体で固形分が0重量%〜90重量%の溶媒または溶媒混合物を含むコーティング配合物(B)を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その表面にイソシアネート反応性基を有する粒子を含むコーティング配合物と、コーティング材料としてのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
粒子、より具体的には、ナノ粒子を含むコーティングシステムは最先端技術である。このようなコーティングについては、例えば特許文献1、特許文献2、特許文献3、または特許文献4に記載されている。このようなコーティング中の粒子により、コーティングの特性、より具体的には引っかき抵抗性と、適宜、耐薬品性が改善される。
【特許文献1】欧州特許第1 249 470号明細書
【特許文献2】国際公開第03/16370号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第20030194550号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第20030162015明細書
【0003】
有機コーティングシステムにおいて一般的に無機粒子の使用に関連して頻繁に起こる問題は、通常、粒子とコーティング材料のマトリックスとの間の不十分な相溶性である。これにより、コーティング材料のマトリックスにおいて粒子の分散が不十分となり得る。その上、よく分散された粒子でも長時間放置または貯蔵される間に沈降し、より大きな凝集体または凝集塊を形成する可能性があり、再分散させても元の粒子へ分離することは不可能または困難である。このような不均一システムを加工することは、どのような場合でも極めて難しく、実際には不可能であることが多い。いったん塗布され硬化すると、一般的にはこのような方法では表面が平滑なコーティング材料を調製することができない、あるいはコスト集約的なプロセスに則った場合しか調製できない。
【0004】
したがって、表面にコーティング材料のマトリックスとの相溶性を改善させる有機基を有する粒子を使用することが好ましい。そうすれば、無機粒子は有機シェルにより「被覆」される。この意味において、特に好ましいコーティング材料の特性が達成され得るのは、さらに粒子の表面上の有機基もコーティング材料のマトリックスに対し反応を示し、問題になっているコーティング材料の各硬化条件下でこれらの有機基がマトリックスと反応できる場合である。このように、コーティング材料が硬化する間に粒子をマトリックスに化学的にうまく組み込むことで特に優れた力学的性質がしばしば得られるが、耐薬品性も改善される。このようなタイプのシステムは、例えば特許文献5、特許文献6、または特許文献7に記載されている。本明細書に記載されているシステムの欠点は、コーティング材料の固形分全体に対し比較的高価なナノ粒子の占める割合が一般にかなり大きいことである。
【特許文献5】ドイツ特許出願公開第102 47 359(A1)号明細書
【特許文献6】欧州特許出願公開第832 947(A)号明細書
【特許文献7】欧州特許出願公開第0 872 500(A1)号明細書
【0005】
さらに、ナノ粒子を有する改良された結合剤を含むコーティングの使用も周知である。これらのコーティングは、反応性官能基を備えた粒子を相補的な基を含む結合剤と反応させることにより作製される。したがって、この場合、コーティング材料の硬化段階だけでなく結合剤の調製段階にも、有機官能基を有する粒子がコーティング材料のマトリックスに化学的に組み込まれる。このようなタイプのシステムは、例えば特許文献8または特許文献9に記載されている。しかし、このシステムには比較的調製が複雑であるという欠点があり、結果として調製費用が高くなる。
【特許文献8】欧州特許出願公開第1 187 885(A)号明細書
【特許文献9】国際公開第WO 01/05897号明細書
【0006】
特に重要なタイプのコーティング材料の場合、ヒドロキシル官能性プレポリマー、より具体的にはヒドロキシル官能性ポリアクリル酸および/またはポリエステルを含む塗膜形成樹脂が使用され、コーティング材料の硬化時にイソシアネート官能性硬化剤(ポリウレタンコーティング材料)および/またはメラミン硬化剤(メラミンコーティング材料)と反応する。ポリウレタンコーティング材料は、特に優れた性質により注目に値する。例えば、ポリウレタンコーティング材料は具体的には耐薬品性が優れており、メラニンコーティング材料は一般的により優れた引っかき抵抗性を有する。このようなタイプのコーティング材料は、具体的には高価で要求水準の高い応用分野、例えば自動車車両産業におけるOEM塗料システムの透明塗料および/またはトップコートとして一般的に使用されている。自動車の塗換用トップコート材料の大部分も、このタイプのシステムからなる。このようなコーティングの膜厚は、一般的には20〜50 μmの範囲である。
【0007】
ポリウレタンコーティングシステムの場合、いわゆる2Kシステムと1Kシステムとに区別されるのが一般的である。2Kシステムは2種類の成分からなり、そのうちの1種類は基本的にイソシアネート硬化剤から構成され、もう1つの成分にはイソシアネート反応性基を有する塗膜形成樹脂が含まれる。この場合、完全混合物のポットライフが大幅に短いため、両成分とも別々に保管・輸送すべきであり、加工直前まで混合してはならない。したがって、1種類の成分のみからなる1Kシステムがしばしばより好ましく、この成分には塗膜形成樹脂とともに保護されたイソシアネート基を有する硬化剤が含まれている。1Kコーティング材料は熱により硬化し、イソシアネートユニットの保護基が除去されると、脱保護されたイソシアネート基は塗膜形成樹脂と反応できるようになる。このような1Kコーティング材料の焼付温度は、120〜160℃である。メラミンコーティング材料は一般的に1Kコーティング材料であり、焼付温度は同等の温度範囲であるのが一般的である。
【0008】
特にこのような高価なコーティング材料の場合は、特性をさらに改善することが望ましい。これは、より具体的には車両の仕上げ塗料にあてはまる。例えば、具体的には従来の自動車用仕上げ塗料が到達できる引っかき抵抗性は依然として十分ではなく、結果として、例えば、洗車場の洗浄水中の粒子により仕上げ塗料が著しい表面損傷を受ける。それにより、経時的に仕上げ塗料の光沢が持続に損なわれてしまう。このような場合、引っかき抵抗性が改善されたコーティング配合物が望まれる。
【0009】
この目的を達成するための特に有利な方法は、その表面上に塗膜形成樹脂または硬化剤に対して反応する有機基を有する粒子を用いることである。さらに、粒子表面上のこれらの有機基は粒子を被覆するため、粒子とコーティング材料のマトリックスとの間の相溶性が強化される。
【0010】
このように適切な有機基を有するタイプの粒子は、基本的には既知である。コーティングにおけるこれらの粒子とその使用については、例えば特許文献10、特許文献11、特許文献12、または特許文献13に記載されている。
【特許文献10】欧州特許出願公開第0 768 351号明細書
【特許文献11】欧州特許出願公開第0 832 947号明細書
【特許文献12】欧州特許出願公開第0 872 500明細書
【特許文献13】独国特許出願公開第10247359号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
実際に、このようなタイプの粒子の組込みにより、コーティングの引っかき抵抗性は著明に増加し得る。しかし、先行技術で記載されているこのような粒子を使用するすべての方法においても、最適な結果は依然として達成されていない。具体的には、相当するコーティングは粒子含量が多いため、コストだけの理由ではあるが、そのようなコーティング材料を大規模生産ラインのコーティングシステムで使用するのは実現が困難である。
【0012】
特許文献14には、コーティング材料の本体セグメントよりも表面セグメントにより多くの粒子が存在していることを特徴とする、粒子含有コーティングシステムが記載されている。このような粒子分布の利点は、引っかき抵抗性を著明に改善するのに必要とされる粒子濃度が比較的低いことである。コーティング材料の表面の粒子に望ましい高親和性は、シリコン樹脂界面活性剤を粒子表面に適用することにより達成される。こうして得られた改良粒子は、しばしばシリコンにしばしばみられるように、その表面エネルギーが比較的低い。その結果、これらの粒子は塗膜形成マトリックスの表面上に優先的に自己配列する。しかし、本法の欠点は、この粒子のシリコン樹脂の改良だけでなく、目的に必要とされるシリコン樹脂自体の調製にもコストがかかり、技術的に複雑であるという事実である。シリコン樹脂の調製に特有の問題は、有効な引っかき抵抗性を達成するには有機基、例えばカルビノール基を備えたシリコン樹脂が必要であり、そのシリコン樹脂を介してこのように改良された粒子をコーティング材料硬化時に化学的に組み込むことができるという事実である。このように官能基化されたシリコン樹脂は市販されていないか、ごくわずかしか市販されていない。具体的には、このシステムの場合、本当に実現可能な有機基の選択肢はかなり限定される。したがって、このシステムの場合、他の先行技術のシステムと同じく、最適な結果は依然として達成されていない。したがって、先行技術の欠点を克服するコーティングシステムを開発することが本発明の目的である。
【0013】
本発明は、
a)固形分が20重量%〜90重量%のヒドロキシル官能性塗膜形成樹脂(L)と、
b)遊離イソシアネート基および/または保護されたイソシアネート基(熱処理で保護基が除去されイソシアネート基が解放される)を含む、固形分が1重量%〜90重量%のコーティング用硬化剤(A)と、
c)その表面上にイソシアネート反応性基を有する粒子(P)の50%以上の反応性基のほうが、塗膜形成樹脂(L)の60%以上のヒドロキシル基よりもイソシアネートに対する反応が大きい、固形分が0.05重量%〜40重量%の粒子(P)と、
d)コーティング配合物(B)全体で固形分が0重量%〜90重量%の溶媒または溶媒混合物を含むコーティング配合物(B)を提供する。
【0014】
固形分には、コーティング材料が硬化したときにその中に残っているコーティング配合物(B)のこれらの成分も含むものとした。
【0015】
本発明は、本発明のコーティング配合物(B)から生産されるコーティングでは、粒子(P)の大部分のイソシアネート反応性基のほうが塗膜形成樹脂(L)の大部分のヒドロキシル基よりも反応が大きく、かつ、粒子(P)と塗膜形成樹脂のイソシアネート反応性基の反応がほぼ同じであるコーティングよりも引っかき抵抗性が優れている。
【0016】
粒子(P)のイソシアネート反応性基は、粒子(P)が第一炭素結合ヒドロキシル基のみまたは大部分としてこれを有し、ヒドロキシル官能性塗膜形成樹脂(L)が第二ヒドロキシル基のみまたは大部分としてこれを有するときに反応が大きくなる。粒子(P)のイソシアネート反応性基は、粒子(P)が炭素結合アミン基またはチオール基のみまたは大部分としてこれを有し、ヒドロキシル官能性塗膜形成樹脂(L)がヒドロキシル基のみまたは大部分としてこれを有するときも反応が大きくなる。脂肪酸アミン基がイソシアネートに対し特に反応が大きいため、脂肪酸アミン基を有する粒子(P)の使用が特に好ましい。
【0017】
好適なコーティング配合物(B)は、粒子を70%以上、特に好ましくは90%以上を含むコーティング配合物であって、その粒子のイソシアネート反応性基が、塗膜形成樹脂(L)の60%以上のヒドロキシル基よりもイソシアネートに対し反応が大きい。同様に、好適は、そのイソシアネート基が60%のみならず70%以上、特に好ましくは90%以上であって、粒子(P)のイソシアネート反応性基よりもイソシアネートに対し反応が小さい塗膜形成樹脂である。
【0018】
特に好ましくは、塗膜形成樹脂(L)の全てのイソシアネート反応性基よりもイソシアネートに対する反応が大きい、コーティング配合物(B)中の粒子(P)の全てのイソシアネート反応性基である。
【0019】
コーティング配合物(B)は、好ましくはコーティング用硬化剤(H)に加えて、1つ以上のさらなるコーティング用硬化剤(H1)を固形分0重量%〜50重量%含む。
【0020】
コーティング配合物(B)は、好ましくは透明塗料および/またはトップコートの材料として、より具体的には自動車のOEM仕上げ塗料または自動車の塗換に使用される。
【0021】
本発明の1つの好適な実施形態において、コーティング配合物(B)は、
a)固形分が30重量%〜80重量%のヒドロキシル官能性塗膜形成樹脂(L)と、
b)固形分が10重量%〜60重量%のコーティング用硬化剤(H)と、
c)固形分が0.1重量%〜30重量%の粒子(P)と、
d)固形分が0重量%〜40重量%の1つ以上のさらなるコーティング用硬化剤(H1)と、
e)コーティング配合物(B)全体の10重量%〜70重量%の1つ以上の溶媒を含む。
【0022】
特に好適なコーティング配合物(B)は、
a)固形分が40重量%〜70重量%のヒドロキシル官能性塗膜形成樹脂(L)と、
b)固形分が15重量%〜50重量%のコーティング用硬化剤(H)と、
c)固形分が0.5重量%〜15重量%の粒子(P)と、
d)固形分が0重量%〜30重量%の1つ以上のさらなるコーティング用硬化剤(H1)と、
e)コーティング配合物(B)全体の10重量%〜70重量%の1つ以上の溶媒を含む。
【0023】
溶媒または溶媒混合物の留分は、全コーティング配合物(B)の割合として、10重量%〜60重量%、より好ましくは10重量%〜40重量%である。
【0024】
粒子(P)量は、好ましくは固形分0.1重量%〜40重量%、より好ましくは0.2重量%〜20重量%または0.2重量%〜10重量%である。本発明の特に有利な実施形態において、粒子(P)量は、固形分0.5重量%〜5重量%、より具体的には0.7重量%〜3重量%である。
【0025】
塗膜形成樹脂(L)、粒子(P)、コーティング用硬化剤(H)、および(あれば)コーティング用硬化剤(H1)は、コーティング配合物(B)が硬化する際に形成される三次元架橋構造ポリマーネットワークのため、好ましくは十分な数の反応性基を有する。
【0026】
本発明の1つの好適な実施形態において、粒子(P)は、金属原子、シリコン原子、および酸素原子から選択した原子またはシリコン樹脂から構成される粒子(P1)を反応させ、

一般式(I)および一般式(II)から選択されるオルガノシラン(A)をもつ遊離ヒドロキシル基を有することにより得られる。
は、各例において1〜6個の炭素原子を有する水素基またはアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基を示し、炭素鎖は隣接しない酸素、硫黄、またはNRの群により遮断される。
は、各例において1〜12個の炭素原子を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、またはアリールアルキル基を示し、炭素鎖は隣接しない酸素、硫黄、またはNRの群により遮断される。
は、水素基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アミノアルキル基、またはアスパラギン酸エステル基を示す。
は、水素基または任意の有機基を示す。
Aは、1〜10個の炭素原子を有する、任意に置換された二価のアルキル基、シクロアルキル基、またはアリール基を示し、酸素、硫黄、またはNRの群により任意に遮断される。
Xは、コーティングの硬化時に硬化剤(H)により化学反応を生じ得る有機基を示す。
Yは、コーティングの硬化時に、Si‐Y結合が切断されてから適宜、硬化剤(H)により化学反応を生じ得る有機基を示す。
nには、0、1、または2の数値が適用される。
mには、0、1、または2の数値が適用される。
qには、0または1の数値が適用され得る。
【0027】
オルガノシラン(A)において、R群は、好ましくはメチル基またはエチル基である。R群は、好ましくは1〜6個の炭素原子を有するアルキル基またはフェニル基であり、より具体的にはメチル基、エチル基、またはイソプロピル基である。Rの炭素原子は、好ましくは10個以下、より具体的には4個以下である。Rは、好ましくは1〜10個、特に好ましくは1〜6個の炭素原子を有する水素基またはアルキル基であり、より具体的にはメチル基またはエチル基である。Aは、好ましくは1〜6個の炭素原子を有する二価のアルキル基であり、酸素、硫黄、またはNRの群により適宜遮断され得る。さらに特に好ましくは、Aは(CH群またはCH群である。
【0028】
Xは、好ましくは式NHR、NH基を含む複素環またはエポキシ環の群であるヒドロキシル基またはチオール基である。Rの定義はRの通りである。Xがエポキシ環の場合、例えばアンモニア、アミン、水、アルコール、またはアルコキシドとの反応のように、適切な方法によりシラン(A)と粒子(P1)との反応前、反応中、または反応後にXが開環する。
【0029】
一般式(II)のシラン(A)を粒子(P)の調製に使用した場合、粒子調製時に粒子(P1)のヒドロキシ基がシラン(A)のシリコン原子を攻撃することにより、このシランの環構造が開環し、Si‐Y結合が切断される。この場合、Yは好ましくは、このSi‐Y結合の切断後、ヒドロキシル基、チオール基、または式NHRの群を示す官能基である。
【0030】
この意味において特に好ましくは、

一般式(III)または一般式(IIIa)に適合するオルガノシラン(A)を使用する。
Bは、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、エステル基、アミド基、またはNR群である。
の定義はRの通りである。
Xには、0〜10の数値が適用される。
残りの変数には、一般式(I)および(II)に規定にされた定義が当てはまる。
【0031】
極めて特に好ましくは、

一般式(IV)または(V)の化合物をオルガノシラン(A)として使用することであり、この場合、すべての変数には上記の定義が当てはまる。
【0032】
粒子(P)を調製する場合、粒子(P1)の表面を改良するためには、オルガノシラン(A)だけでなくシラン(A)と他のシラン(S1)、シラザン(S2)、またはシロキサン(S3)との任意の混合物を使用することができる。シラン(S1)は、ヒドロキシリル基または他の加水分解性シリル基のいずれかであり、加水分解性シリル基のほうが好適である。これらのシランは、追加的にさらなる有機基を有するが、さらなる有機基をもたないシラン(S1)も使用できる。使用されるシラザン(S2)およびシロキサン(S3)は、特に好ましくは、それぞれヘキサメチルジシラザンおよびヘキサメチルジシロキサンである。シラン(A)の重量分率は、シラン(A)および(S1)、シラザン(S2)、およびシロキサン(S3)により作られる総量の割合として、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上または90重量%以上である。本発明のさらに特に好適な1つの実施形態においては、化合物(S1)、(S2)、および(S3)を一切使用しない。
【0033】
使用され得る粒子(P1)は、いずれも酸化金属粒子および混合酸化粒子(コランダムなどの酸化アルミニウム、他の金属および/またはシリコンの混合酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化鉄等)、酸化ケイ素粒子(ヒュームドシリカ、沈降シリカ、コロイドシリカ等)、または酸化ケイ素化合物であり、シリコンの原子価の一部がシリコン樹脂等、有機基を有する粒子である。これらの粒子(P1)がその表面上に水酸化金属基および/または水酸化ケイ素基を有し、それらを介してオルガノシラン(A)と、また適宜、シラン(S1)、シラザン(S2)、またはシロキサン(S3)との反応が生じ得るという事実は注目に値する。粒子(P1)は、好ましくは平均径が1 nm〜100 μm、好ましくは10 nm〜500 nm、より好ましくは10 nm〜200 nmである。これらの平均粒子径は、例えばTEM(過電子顕微鏡)像などにより、光子相関計による流体力学的等価直径として測定され得る。
【0034】
本発明の1つの好適な実施形態において、粒子(P)はコロイド酸化ケイ素または酸化金属から構成される粒子(P1)から始められ調製され、一般的には水性または非水性の溶媒中で相当するミクロン以下の大きさの酸化粒子が分散する形をとる。この場合、使用され得る酸化物は、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、タンタル、タングステン、ハフニウム、または錫などの金属である。特に好ましくは、コロイドシリカゾルの有機性溶液を使用することである。一般的に、水性または非水性の溶媒中に二酸化ケイ素粒子が分散する。一般的にシリカゾルは、溶解度が1重量%〜50重量%の溶液であり、好ましくは溶解度が20重量%〜40重量%の溶液である。このタイプのゾルは市販されており、多くの製造会社(DuPont、Nalco Chemical Company、Nissan Chemicals等)が販売している。典型的な溶媒は水であるが、より具体的にはアルコール、特に1〜6個の炭素原子を有するアルコールが含まれ、しばしばイソプロパノールや、通常分子量の低い、メタノール、エタノール、n‐プロパノール、n‐ブタノール、イソブタノール、およびt‐ブタノールなど他のアルコールも含まれる。また、例えば極性をもつ非プロトン性溶媒(メチルエチルケトン等)または芳香族系溶媒(トルエン等)においてオルガノゾルも入手できる。二酸化ケイ素粒子(P1)の平均粒子サイズは、一般的には1〜100 nm、好ましくは5〜50 nm、より好ましくは8〜30 nmである。
【0035】
コロイド酸化ケイ素または酸化金属由来の粒子(P)は、様々な方法に従って調製できる。しかし、好ましくは、適宜溶媒および/または他のシラン(S1)、シラザン(S2)、またはシロキサン(S3)との混合物において、シラン(A)を水性または有機ゾルへ添加することにより調製する。このゾルは、適宜、例えば塩酸またはトリフルオロ酢酸により、あるいは基本的にはアンモニアにより酸化的に安定化する。反応は、一般的には0〜200℃、好ましくは20〜80℃、さらに好ましくは20〜60℃で生じる。反応時間は、典型的には5分〜48時間、好ましくは1〜24時間である。任意選択で、酸性、塩基性、または重金属の触媒を添加することもできる。これらの触媒は、好ましくは1000 ppm未満の極微量で使用される。しかし、特に好ましくは、異なる触媒を添加しない。
【0036】
コロイド酸化ケイ素または酸化金属ゾルは、しばしば水性またはアルコール性の分散物の形をとるため、粒子(P)の調製時または調製後にその溶媒または溶媒混合物を別の溶媒または別の溶媒混合物と取り替えるのが有利である。例えば、これは元の溶媒を蒸留法で除去することにより実施可能であり、蒸留前、蒸留時、または蒸留直後に1回のステップまたは2回以上のステップで新しい溶媒または溶媒混合物を添加することができる。この意味において、適切な溶媒には、例えば水、芳香族アルコール、または脂肪族アルコールが含まれ、好ましくは脂肪族アルコール、より具体的には1〜6個の炭素原子を有する脂肪族アルコール(メタノール、エタノール、n‐プロパノール、イソプロパノール、n‐ブタノール、イソブタノール、t‐ブタノールや、ペンタノールおよびヘキサノールの様々な位置異性体等)、エステル(酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸ブチルジグリコール、酢酸メトキシプロピル等)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン等)、エーテル(ジエチルエーテル、t‐ブチルメチルエーテル、THF等)、芳香族系溶媒(トルエン、キシレンの様々な位置異性体、および溶媒ナフサ等の混合物)、ラクトン(ブチロラクトン他等)、またはラクタム(N‐メチルピロリドン等)である。好ましくは、排他的または少なくとも部分的に非プロトン性溶媒からなる非プロトン性溶媒または溶媒混合物である。非プロトン性溶媒の利点は、コーティング材料が硬化したのちコーティング材料に残る溶媒の残留物が、保護基を除去したあとに解放されたイソシアネート基に対し反応を起こしにくいことである。粒子を分散させることと同様に、粒子(P)を固形で分離することについても考慮する。
【0037】
さらに粒子(P)を調製する際には、好ましくは粒子(P1)として、

は、水酸化基であるR、または任意選択的にハロゲン基、ヒドロキシル基、アミノ基、ホスホナト基、カルバメート基、エポキシ基、チオール基、(メタ)アクリル基、または1〜18個の炭素原子を有する他のNCO(イソシアネート)置換炭化水素基を示す。
eは、0以上の数値を示す。
fは、0以上の数値を示す。
gは、0以上の数値を示す。
hは0以上の数値を示し、e+f+g+hの合計は、1以上、好ましくは5以上の1つの数値を示す。
【0038】
好ましくは、すべてのR基の70モル%以上が、メチル基、エチル基、イソプロピル基、またはフェニル基である。
【0039】
1つの好適な実施形態では、一般式(VI)のシリコン樹脂では、e+hの合計は、e+f+g+hの合計の90モル%以上である。
【0040】
一般式(VI)のシリコン樹脂由来の粒子(P)およびシラン(A)は、上述のプロセスにより調製できる。
【0041】
粒子(P)を調製するための別の好適なプロセスは、ヒドロキシル含有粒子(P1)から始められない。代わりに粒子(P)は、オルガノシラン(A)と他のシラン(S4)との共加水分解を介して調製される。この場合、シラン(S4)として、すべての加水分解性シランおよびヒドロキシリル含有シランも使用できる。シロキサンまたはシラザンも使用できる。この場合、好ましくは、一般式(III)のシランを使用する。適切なシラン(S4)の典型例は、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、またはトリメチルエトキシシランである。様々なシラン(S4)の様々な混合物も使用できることが分かる。その場合、シラン(A)と同じく余計な有機基をもたないシラン(S4)のみを混合物だけでなく、シラン(A)と同じく余計な有機基をもたないシラン(S4)および余分な有機基をもつシラン(S4)とを含む混合物とを使用できる。共加水分解により粒子(P)を調製するため、様々なシランを一緒にまたは連続的に添加できる。粒子(P)を調製するためのさらなるプロセスは、オルガノポリシロキサン樹脂とシラン(A)との平衡化である。共加水分解と平衡化は、触媒の存在下で同時に実行され得る。基本的に、樹脂を調製するための共加水分解および平衡化のプロセスは、文献に多く記載されている。
【0042】
さらなる好適なプロセスでは、ヒュームドシリカから構成される粒子(P1)から始められ粒子(P)が調製される。このシリカは例えば、四塩化ケイ素またはメチルトリクロロシラン(水素化分解性トリクロロシランまたは加水分解性メチルジクロロシラン)、他のメチルクロロシランまたはアルキルクロロシラン(粒子そのものとして、あるいは炭化水素との混合物として)、規定どおり、有機ケイ素化合物と炭化水素との任意の揮発性または噴霧可能な混合物(例えば酸素水素炎における)、または一酸化炭素炎における何らかの化合物から調製されるのと同じく、炎色反応において有機ケイ素化合物から調製されるシリカである。
【0043】
非特許文献1に従って測定される未改良ヒュームドシリカ(P1)の特定のBET比表面積は、10 m/g〜600 m/g、好ましくは50 m/g〜400 m/gである。
【非特許文献1】DIN EN ISO 9277/DIN 66132
【0044】
未改良ヒュームドシリカは、好ましくは、非特許文献2において提案された方法に従って測定される表面シラノール基(SiOH)の密度が2.5 SiOH/nm未満、好ましくは2.1 SiOH/nm未満、より好ましくは2 SiOH/nm未満、特に好ましくは1.7〜1.9 SiOH/nm未満である。
【非特許文献2】G.W. Sears, Anal. Chem 28(1956)1981
【0045】
未改良ヒュームドシリカは、好ましくは、非特許文献3に従って測定されるタップ密度が10 g/l〜500 g/l、より好ましくは20 g/l〜200 g/l、特に好ましくは30 g/l〜100 g/lである。
【非特許文献3】DIN EN ISO 787‐11
【0046】
ヒュームドシリカ由来の粒子(P)は、多様なプロセスにより調製できる。
【0047】
好適な1つのプロセスにおいて、粉末状の乾燥ヒュームドシリカは、適宜、他のシラン(S1)、シラザン(S2)、またはシロキサン(S3)との混合物において、超微細シラン(A)と直接反応させられる。
【0048】
このプロセスは連続的または断続的に実行され、1つ以上のステップから構成され得る。改良ヒュームドシリカは、好ましくは調製が別々のステップで操作されるプロセス法により調製される。そのステップは、(A)まず親水性ヒュームドシリカを調製し、(B)(1)その親水性ヒュームドシリカにシラン(A)を負荷することにより親水性ヒュームドシリカを改良し、(2)ヒュームドシリカと適用される化合物とを反応させ、(3)ヒュームドシリカを精製して過剰に適用された化合物を除去し、生成物を取り除く。
【0049】
表面処理は、好ましくは酸素が10重量%未満、より好ましくは2.5重量%未満、最善の結果が得られるのは酸素が1重量%の大気中において実行される。
【0050】
コーティング、反応、および精製は、断続的または連続的な操作として実行され得る。
【0051】
コーティング(ステップB1)は−30℃〜250℃、好ましくは20〜150℃、より具体的には20〜80℃の温度で生じる。1つの特異的な実施形態では、コーティングステップは、30〜50℃で生じる。
【0052】
滞留時間は1分〜24時間、好ましくは15分〜240分、特に好ましくは、空時収量上の理由から、15分〜90分である。
【0053】
コーティング段階の圧は、やや圧不足の0.2バール以上過圧の100バール以下の範囲であり、技術的理由から標準圧、すなわち外圧/気圧と比較して操作が加圧されない状態が好ましい。
【0054】
シランAおよび/またはその混合物は、好ましくは液状で添加され、より具体的には粉末状の酸化金属に混合される。これらの化合物は純粋な形で、または液体として、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、またはイソプロパノール)、エーテル(例えば、ジエチルエーテル、THF、またはジオキサン)、または炭化水素(例えば、ヘキサンまたはトルエン)など、本技術分野で使用される既知の溶媒と混和され得る。この場合、溶液中の濃度は、5重量%〜95重量%、好ましくは30重量%〜95重量%、より好ましくは50重量%〜95重量%である。
【0055】
混和は、噴霧器またはガス/固体交換アゼンブリを用いて、加圧(好ましくは5〜20バール)下で1液ノズルにより微粒化する、加圧(好ましくは2〜20バールのガスまたは液体)下で2液ノズルにより噴霧する、超微細化するなど有効な微粒化法等、好ましくはノズル法またはノズル法と同等の方法により生ずるものであり、内部が移動、回転、または静止することによりシラン(A)と粉末状のヒュームドシリカの分布を均一にする。
【0056】
シラン(A)は、好ましくは超微細エアゾール状で添加される。このエアゾールの沈降速度は0.1〜20 cm/秒である。
【0057】
シリカの負荷およびシランAとの反応は、好ましくは機械的またはガス支援流動化によりに生じる。機械的流動化は、特に好適である。
【0058】
ガス支援流動化は、あらゆる不活性ガス(好ましくはN、Ar、他の貴ガス、CO他)により起こり得る。流動化ガスは、好ましくは見かけの流速が0.05〜5 cm/秒、より好ましくは0.5〜2.5 cm/秒の範囲で供給される。
【0059】
特に好ましくは、櫂型撹拌機、碇型撹拌機、および他の適切な撹拌エレメントにより起こり、不活化に使用される以上の余分なガスを使用しない機械的流動化である。
【0060】
反応は、好ましくは40〜200℃、好ましくは40〜160℃、さらに好ましくは80〜150℃で生じる。反応時間は、計5分〜48時間、好ましくは10分〜4時間である。
【0061】
適宜、液状または気化可能なアルコールまたは水など、プロトン性溶媒を添加できる。典型的なアルコールは、イソプロパノール、エタノール、およびメタノールである。上述のプロトン性溶媒の混合物も添加できる。酸化金属に対しプロトン性溶媒を1重量%〜50重量%、より好ましくは5重量%〜25重量%添加するのが好適である。水は特に好適である。
【0062】
任意選択的に、塩化水素など、ルイス酸またはブレンステッド酸の意味において酸性の特性をもつ酸性触媒、またはアンモニア、アミン、トリエチルアミンなど、ルイス塩基またはブレンステッド塩基の意味において塩基性の特性をもつ塩基性触媒を添加できる。これらの触媒は、好ましくは1000 ppm以下等、極微量で添加される。特に好ましくは、触媒を添加しないことである。
【0063】
精製は、精製温度20〜200℃、好ましくは50〜180℃、より好ましくは50〜150℃で生じる。精製ステップは、好ましくは撹拌を特徴とし、より好ましくは緩徐な撹拌および軽い混合である。撹拌エレメントは、有利には、完全なボルテックスではなく、好ましくは混合および流動化が生じるような方法で設置され、回転される。
【0064】
精製ステップは、さらに見かけの流速が好ましくは0.001〜10 cm/秒、より好ましくは0.01〜1 cm/秒に相当するガス注入が多いことを特徴とする。これは、好ましくはN、Ar、他の貴ガス、CO他など、あらゆる不活性ガスにより可能である。
【0065】
さらに、改良時または精製後、例えばプレス・ローラー、圧延アゼンブリ(エッジランナーミルおよびボールミル等)、持続的またはバッチ式のシリカの機械的圧密、スクリューまたはウォームミキサー、ウォーム圧密機、ブリケッティングマシンによる圧密、または適切な減圧法を用いて存在する空気またはガスの吸込中止による圧密が導入され得る。
【0066】
特に好ましくは、反応のB2ステップにおいて改良時にプレス・ローラー、上述の圧延アゼンブリ(ボールミル等)による機械的圧密、またはスクリュー、ウォームミキサー、ウォーム圧密機、またはブリケッティングマシンによる圧密を実施する。
【0067】
さらに特に好適な手順では、精製後、適切な減圧法を用いて存在する空気またはガスの吸込中止による圧密、またはプレス・ローラー、またはその両方を組み合わせることにより、シリカを機械的に圧密する方法が導入される。
【0068】
加えて、1つの特に好適な手順では、精製後、ピンディスクミル、ハンマーミル、対流式ジェットミル、衝撃式ミル、または圧延/分類装置など、シリカを解凝集する方法が導入される。
【0069】
さらに、特に好適なプロセスでは、親水性ヒュームドシリカは、産業的に使用される水または典型的な溶媒、例えばアルコール(メタノール、エタノール、イソプロパノール等)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン等)、エーテル(ジエチルエーテル、THF、炭化水素等)、ペンタン、ヘキサン、トルエン等の芳香族化合物)、または他の揮発性溶媒(ヘキサメチルジシロキサンまたはその混合物等)のなかへ分散させる、あるいはその混合物をシラン(A)と反応させる。
【0070】
これは連続的プロセスまたはバッチ式プロセスで実行され、1つ以上のステップから構成され得る。好ましくは、連続的なプロセスである。改良ヒュームドシリカは、好ましくはシリカが(1)上述の1つの溶媒と混合され、(2)シラン(A)と反応させられ、(3)溶媒、過剰シラン、および副産物が除去されるプロセスにより調製される。
【0071】
分散(1)、反応(2)、および乾燥(3)は、好ましくは含有される酸素が10重量%、未満、より好ましくは2.5重量%未満、最善の結果が得られるのは酸素が1重量%未満の大気中で実行される。
【0072】
混合(1)は、碇型撹拌機またはクロスアーム式攪拌機等、典型的な混合アゼンブリにより起こり得る。適宜、混合と同時に溶解機、ロータ‐ステータアゼンブリにより高剪断され、適宜、超音波振動子またはボールミル等の圧延アゼンブリにより、計量しながら直接剪断隙間に供給される。適宜、様々な上述のアゼンブリを同時にまたは連続して使用され得る。
【0073】
シラン(A)とシリカとを反応(2)させる場合、シランは純粋な形で、または液体として適切な溶媒中に添加され、シリカが分散され、その成分が均一に混合される。シラン(A)は、分散を調製するために使用される容器または分離反応器に添加され得る。シランが分散器に添加される場合、反応は分散操作と同時に、または分散終了時に生じ得る。適宜、分散溶媒に溶解しているシラン(A)は、分散ステップに直接添加され得る。
【0074】
適宜、水は反応混合物に添加される。適宜、ブレンステッド酸(液状またはガス状のHCL、硫酸、リン酸、または酢酸等)などの酸性触媒またはブレンステッド塩基(液状またはガス状のアンモニア、NEtまたはNaOHなどのアミン等)などの塩基性触媒は、反応混合物に添加される。反応ステップは、0〜200℃、好ましくは10℃〜180℃、より好ましくは20℃〜150℃の温度で実行され得る。
【0075】
溶媒、過剰シラン(A)、および副産物(3)は、乾燥機または噴霧乾燥により除去される。乾燥ステップ後、適宜、反応を完了するための加熱ステップが実施され得る。
【0076】
さらに、乾燥操作後、シリカを機械的に圧密する方法として、例えばプレス・ローラー、圧延アゼンブリ(エッジランナーミルおよびボールミル等)、持続的またはバッチ式のシリカの機械的圧密、スクリューまたはウォームミキサー、ウォーム圧密機、ブリケッティングマシンによる圧密、または適切な減圧法を用いて存在する空気またはガスの吸込中止による圧密が導入され得る。
【0077】
さらに特に好適な手順では、乾燥後、適切な減圧法を用いて存在する空気またはガスの吸込中止による圧密、またはプレス・ローラー、またはその両方を組み合わせることにより、シリカを機械的に圧密する方法が導入される。
【0078】
さらに、1つの特に好適な手順では、乾燥後、ピンディスクミル、ハンマーミル、対流式ジェットミル、衝撃式ミル、または圧延/分類装置など、シリカを解凝集する方法が導入される。
【0079】
本発明の1つの特に有利な実施形態において、粒子(P)は、一般式(I)または(V)のシラン(A)を用いて調製される。この場合、スペーサーAは、CHブリッジまたは一般式(III)、(IIIa)、または(IV)の環状シラン化合物である。これらのシランは、粒子(P1)のヒドロキシル基に対する反応レベルが特に高いため、粒子の官能基化が特に迅速かつ低温で、より具体的には室温でも実行され得ることは注目に値する。
【0080】
例えば、nおよび/またはm=2の一般式(I)、(II)、(III)、(IIIa)、(IV)、または(V)のシラン等、単官能性シリル基のみを有するシラン(A)が使用される場合、モノアルコキシシリル基および反応性環状シラン化合物は、それぞれ粒子(P1)の表面上のヒドロキシル基と直接反応できるので、粒子(P)を調製する際に水を添加する必要はない。これに対し、二官能性または三官能性のシリル基を有するシラン(A)が使用される場合(nおよび/またはm=0または1の一般式(I)、(II)、(III)、(IIIa)、(IV)(IVa)、または(VI)のシラン等)、アルコキシシランは、粒子(P1)のSi‐OH基に反応するだけでなく、加水分解後は互いに反応することができるため、粒子(P)を調製する際に水が存在する、あるいは添加することはしばしば有利である。これにより、相互架橋シラン(A)を構成する殻を有する粒子(P)が生じる。
【0081】
本発明のコーティング配合物(B)に含まれる塗膜形成樹脂(L)は、好ましくはヒドロキシル基含有プレポリマー、より好ましくはヒドロキシル基含有ポリアクリル酸またはポリエステルから構成される。このタイプのヒドロキシル含有ポリアクリル酸およびポリエステルはコーティング材料配合物に適しており、調製法は当業者に周知であり、関連する文献で広範に記載されている。これらは多くの製造会社により生産され、市販されている。
【0082】
コーティング配合物(B)は、1成分(1K)または2成分(2K)のコーティング材料である。第1の場合、使用されるコーティング用硬化剤(H)は、保護されたイソシアネート基を有する化合物である。第2の場合、使用されるコーティング用硬化剤(H)は、遊離イソシアネート基である。
【0083】
イソシアネート、一般的なジイソシアネートおよび/またはポリイソシアネートとして使用される1Kおよび2Kのどちらのコーティング材料も、適宜、予めそれぞれの保護基を備えている。この場合、文献で広範に記載されている従来のイソシアネートは、原則的にすべて使用できる。例えば、一般的なジイソシアネートとは、粗原料または人為的ジイソシアナトジフェニルメタン(MDI)の形だけでなく、純粋な4,4’‐および/または2,4’‐異性体またはその混合物の形でのMDI、異なる位置異性体の形でのトリレンジイソシアナート(TDI)、ジイソシアナトナフタレン(NDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ペルヒドロ化MDI(H‐MDI)、テトラメチレンジイソシアネート、2‐メチルペンタメチレンジイソシアネート、2,2,4‐トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、1,4‐ジイソシアナトシクロヘキサン,1,3‐ジイソシアナト‐4‐メチルシクロヘキサン、またはヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)である。ポリイソシアネートの実施例は、高分子MDI(P‐MDI)、トリフェニルメタントリイソシアネート、および上述のジイソシアネートのすべてのイソシアヌレートトリマーまたはビルレットトリマーである。さらに、ブロックされたNCO基を有する上述のイソシアネートのさらなるオリゴマーも使用できる。ジイソシアネートおよび/またはポリイソシアネートはいずれも個別にあるいは混合して使用され得る。好ましくは、比較的紫外線耐性の高い脂肪酸イソシアネートのイソシアヌレートトリマーおよびビルレットトリマーを使用する。
【0084】
保護されたイソシアネート基を有するイソシアネートがコーティング用硬化剤(H)として使用される場合、好ましくは80〜200℃の温度、特に好ましくは100〜170℃の温度で除去される保護基である。使用され得る保護基は、例えば、第二または第三アルコール(イソプロパノールまたはt‐ブタノール等)、CH酸性化合物(マロン酸ジエチル、アセチルアセトン、アセト酢酸エチル等)、オキシム(ホルムアルドキシム、アセトアルドキシム、ブタンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、アセトフェノンオキシム、ベンゾフェノンオキシム、またはジエチレングリオキシム等)、ラクタム(カプロラクタム、バレロラクタム、ブチロラクタム等)、フェノール(フェノール、o‐メチルフェノール等)、N‐アルキルアミド(N‐メチルアセトアミド等)、イミド(フタルイミド等)、第二アミン(ジイソプロピルアミン、イミダゾール、2‐イソプロピルイミダゾール、ピラゾール、3,5‐ジメチルピラゾール、1,2,4‐トリアゾール、および2,5‐ジメチル‐1,2,4‐トリアゾール等)である。この場合、好ましくは、ブタンオキシム、3,5‐ジメチルピラゾール、カプロラクタム、マロン酸ジエチル、マロン酸ジメチル、アセト酢酸エチル、ジイソプロピルアミン、ピロリドン、1,2,4‐トリアゾール、イミダゾール、および2‐イソプロピルイミダゾールなどの保護基を使用する。特に好ましくは、例えばマロン酸ジエチル、マロン酸ジメチル、ブタンオキシム、ジイソプロピルアミン、3,5‐ジメチルピラゾール、および2‐イソプロピルイミダゾールなど、焼付温度が低くてよい保護基を使用することである。
【0085】
本発明のコーティング配合物(B)において、塗膜形成樹脂(L)および粒子(P)のイソシアネート基(ブロックされた基
他)とイソシアネート反応性基との比率は、0.5:2、好ましくは0.8:1.5、特に好ましくは1.0:1.2である。
【0086】
コーティング配合物(B)が1Kのコーティング材料を含む場合、保護されたイソシアネート基を有するコーティング用硬化剤(H)は、さらなるコーティング用硬化剤と一緒でも使用され得る。この追加されるコーティング用硬化剤(H1)の使用量は、固形分に基づけば、より具体的には0重量%〜50重量%、好ましくは0重量%〜40重量%、特に0重量%〜30重量%である。コーティング用硬化剤(H1)は、好ましくは1Kコーティング材料の焼付温度が好ましくは100〜200℃で、塗膜形成樹脂および適宜、粒子(P)と付加反応または縮合反応を生じ得る化合物である。特に好ましくは、それらの化合物はメラミン‐ホルムアルデヒド樹脂および/またはトリス(アミノカルボニル)トリアジンである。
【0087】
さらに、コーティング配合物(B)は、普通溶媒、添加物、およびさらなる成分として、コーティング配合物に典型的なコーティング成分もさらに含むことができる。このような例には、流動調節補助剤、界面活性物質、定着剤、紫外線吸収剤等の光安定剤および/またはフリーラジカル捕捉剤、揺変性剤、およびさらなる固体が含まれる。このようなタイプの添加物は、一般的に、コーティング配合物(B)および硬化されたコーティングのどちらにとっても、要求される特定のプロフィールを生ずるために避けられない。コーティング配合物(B)は、色素も含め得る。
【0088】
1つの好適なプロセスにおいて、本発明のコーティング配合物(B)は、混合操作時に適切な溶媒中に粉末状または分散状で粒子(P)を添加することにより生産される。しかし、粒子(P)とコーティング材料成分の1つから最初のマスターバッチが生産され、粒子濃度が>15重量%、好ましくは>25重量%、より好ましくは>30重量%であるさらなるプロセスが好適である。本発明のコーティング配合物(B)を調製するためには、次にこのマスターバッチは残りのコーティング材料成分と混合される。粒子分散がマスターバッチを調製するための起始点を形成した場合、マスターバッチの調製プロセスにおいて、例えば蒸留ステップ等により除去される粒子分散用の溶媒、あるいは別の溶媒または溶媒混合物により置換される溶媒にとって有利となり得る。
【0089】
本発明のコーティング配合物(B)は、引っかき抵抗性、耐摩耗性、または耐薬品性を強化するために任意の基質を塗着するのに使用され得る。好適な基質は、ポリカーボネート、ポリブチレン、テレフタラート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、または塩化ビニル等のプラスチックおよび上流ステップで塗布される下塗材料である。
【0090】
特に好ましくは、本発明のコーティング配合物(B)から生産されるコーティングは、引っかき抵抗性の高い透明塗料またはトップコート材料として、より具体的には車両産業で使用される。コーティング配合物(B)は、液浸法、吹付け法、および流し込み法等、任意の方法により塗布され得る。また、湿式プロセスにおいて、湿潤によりコーティング配合物(B)を下塗へ塗布することもできる。硬化は、一般的には要求される特定の条件下(2Kコーティング材料は、典型的には0〜100℃、好ましくは20〜80℃、1Kコーティング材料は100〜200℃、好ましくは120〜160℃)で加熱することにより達成される。コーティング材料の硬化は、適切な触媒を添加することにより加速され得ることが分かる。この場合、適切な触媒は、より具体的には酸性化合物、塩基性化合物、および重金属含有化合物である。
【0091】
上の式のすべての記号は、相互関係のない各例における定義を有する。いずれの式においても、シリコン原子は四価である。
【0092】
他に示されていない限り、全ての量および割合に関する数字は、重量に基づけば、いずれも圧は0.10 MPa(なし)、温度は20℃である。
【実施例】
【0093】
合成実施例1:グリシジロキシプロピルトリメトキシシランとリチウムメトキシドとの反応による第二カルビノール基を有するシラン(シラン1)の調製
【0094】
3‐グリシジロキシプロピル‐トリメトキシシラン5.00 g(22.7 mmol)とリチウムメトキシド22.7 mmol(メタノール中2M)との混合物は、還流下で5時間加熱される。その生成物は、第二ヒドロキシ基を有するシランのみである。室温まで冷却したのち、混合物がイオン交換樹脂(Amberlyst 15)0.20gと混和され、室温で30分間撹拌される。イオン交換樹脂が濾過され、次いで蒸留により溶媒が除去される。これにより、無色の油5.22gが得られる。
【0095】
合成実施例2:N‐ブチル‐1,1‐ジメチル‐1‐シラ‐2‐アザシクロペンテン(シラン2)の調製
【0096】
1‐ブチルアミン508 g(6.94 mol)の初回投入分は、滴下により2.5時間かけてクロロプロピルジメチルクロロシラン171 g(1.00 mol)と混和され、その混合物は還流下で12時間加熱される。過剰な1‐ブチルアミンが蒸留により除去されたのち、その残留物はトルエン350 mlにて希釈され、10℃まで冷却される。残留物が形成する沈殿物が濾過され、その濾過物が真空中で蒸留される。これによりN‐ブチル‐1,1‐ジメチル‐1‐シラ‐2‐アザシクロペンテン134.5gが得られる。
【0097】
合成実施例3:N‐トリエトキシシリル‐メチルピペラジン(シラン3)の調製
【0098】
ピペラジン905.3 g(10.5 mol)およびキシレン(無水)945 mlは、溶媒として4リットル四つ口フラスコへ負荷され、続いて窒素により不活化される。バッチが100℃の温度まで加熱される間にピペラジンが完全に溶解される。この温度で、撹拌によりクロロメチルトリエトキシシラン446.3 g(2.1 mol)が滴下により1時間かけて添加される。シランの約3分の1の量が添加されると、塩として塩酸ピペラジンが沈殿するが、懸濁液は反応が終了するまで依然として容易に撹拌できる。添加終了後、さらに15分間撹拌が継続される。続いて反応混合物が110℃まで加熱され、沈殿した塩が予熱されたフィルター上で濾過される。
【0099】
バッチは約5℃まで冷却され、この温度で沈殿した過剰ピペラジンが濾過される。続いて蒸留により溶媒が除去され、ピペラジン残留物は除去されるものもあるが、依然として残っているものもある。こうして得られた粗原料生成物は、蒸留により精製される(0.1 ミリバールで84〜86℃)。シランの使用量に基づいて約65%等、収量357.5 g(1.36 mol)が達成される。
【0100】
合成実施例4:第二カルビノール基を有するSiOナノゾル粒子の調製
【0101】
25℃の温度で、SiOオルガノゾル(Nissan chemicals製IPA‐ST(登録商標)、イソプロパノール中30.5重量%のSiO、平均粒子径12 nm)3.50 gは、イソプロパノール13.5 g、水0.03 g、およびシラン0 0.10 g(0.40 mmol)と混和される。バッチは室温で24時間撹拌され、大部分が透明な懸濁液が得られ、若干のチンダル効果を呈する。この懸濁液は、固形分6.71重量%、SiO含量6.23重量%、およびOH基含量0.023 mmol/gを有する。
【0102】
合成実施例5:アミノアルキル基性SiOナノゾル粒子の調製
【0103】
イソプロパノール7.5gのシリカゾルIPA‐ST(登録商標)(Nissan Chemicals製)(イソプロパノール中30.5重量%のSiO、平均粒子径12 nm)7.5gへの添加により得られた希薄性シリカゾル11.0 gは、滴下によりエタノール0.4g中で合成実施例2に記載されたシラン2 0.085g溶液と速やかに混和され、その反応混合物は、室温で1時間撹拌される。若干のチンダル効果を呈する改良シリカゾルは、固形分10.0重量%、SiO含量9.3重量%、およびNH基含量0.04 mmol/gを有する。
【0104】
合成実施例6:アミノアルキル基性SiOナノゾル粒子の調製
【0105】
イソプロパノール7.5gのシリカゾルIPA‐ST(登録商標)(Nissan Chemicals製)(イソプロパノール中30.5重量%のSiO、平均粒子径12 nm)3.5gへの添加により得られた希薄性シリカゾル11.0gは、滴下によりエタノール0.4g中で合成実施例3に記載されたシラン0.095g溶液と速やかに混和され、その反応混合物は、室温で1時間撹拌される。若干のチンダル効果を呈する改良シリカゾルは、固形分9.7重量%、SiO含量9.3重量%、およびアミン含量0.03 mmol/gを有する。
【0106】
合成実施例7:アミノアルキル基性ヒュームドシリカ粒子の調製
【0107】
不活性ガス下25℃の温度で、含水率<1%、HCL含量<100 ppm、および特定の表面積300 m/g(非特許文献4および非特許文献5に準拠してBET法により測定可能)(Wacker‐Chemie GmbH[Munich,D]製Wacker(登録商標) HDK T30という製品名で入手可能)の親水性シリカ100 gは、1液ノズル(圧5バール)を介する微粒化より水5gおよびアミノプロピルトリメトキシシランと混和される。こうして負荷されたシリカは、滞留時間0.25時間、25℃の温度で撹拌により流動化され、続いてN下の100l乾燥チャンバーにおいて、滞留時間2時間、80℃の温度で反応させられる。その生成物は白いシリカ粉末であり、シリル化剤の層が均一である。
【非特許文献4】DIN 66131
【非特許文献5】DIN 66132
【0108】
合成実施例8:分散時のアミノアルキル基性ヒュームドシリカ粒子の調製
【0109】
2l三つ口フラスコにおいて、KPG撹拌機、滴下漏斗、および還流冷却器を用いて、N下でアセトン880 mlと水220 mlの混合物は、含水率<1%、HCL含量<100 ppm、および特定の表面積300 m/g(非特許文献4および非特許文献5に準拠してBET法により測定可能)(Wacker‐Chemie GmbH[Munich,D]製Wacker(登録商標) HDK T30という製品名で入手可能)の親水性シリカ100gと混和される。その混合物は、撹拌しながら沸騰するまで加熱され、滴下によりアミノプロピルトリメトキシシラン48gが緩徐に添加される。結果として生じる混合物は還流下でさらに2時間加熱され、ロータリーエバポレータ上で揮発性部分が取り除かれる。続いて白い粉末状残留物が、N下の100l乾燥チャンバーにおいて、滞留時間2時間、80℃の温度で加熱される。その生成物は白いシリカ粉末であり、シリル化剤の層が均一である。
【0110】
対照実施例1および2:第二カルビノール基を有する改良されたSiOナノゾル粒子を含む1Kコーティング配合物の調製(発明ではない)
【0111】
コーティング配合物を調製するため、固形分52.4重量%(溶媒:ナフサと酢酸メトキシプロピル[10:1]の溶媒)、ヒドロキシ基含量1.46 mmol/g樹脂溶液、および酸価10〜15 mgのKOH/gを有するアクリル酸をベースとする塗料多価アルコールは、Bayer製Desmodur(登録商標) BL 3175 SN(ブタンオキシムブロックポリイソシアネート、ブロックされたNCO含量2.64 mmol/g)と混合される。使用される各成分の量は、表1で確認され得る。続いて、合成実施例4に従って調製される分散物について表1に記載された量が添加される。この場合、保護されたイソシアネート基とヒドロキシル基のモル比は、いずれの例においても約1.1:1となる。さらに、各例において、イソプロパノール中でジブチルスズジラウラート0.01 gとTego AG製10%強度溶液ADDID(登録商標)100(ポリシロキサンをベースとする流動調節補助剤)0.03 gとが混和され、固形分約50%のコーティング配合物が得られる。これらの混合物は当初、依然として若干濁っていて、室温で4時間撹拌されると、透明なコーティング配合物が得られる。

表1:コーティング材料の配合
(対照例1〜2)
*各コーティング配合物の総固形分の割合として合成実施例4の粒子部分
1)発明ではない
【0112】
実施例1〜4:カルバミン酸基を有する改良されたSiOナノゾル粒子を含む1Kコーティング配合物の調製。
【0113】
発明によるコーティング配合物を調製するため、固形分52.4重量%(溶媒:ナフサと酢酸メトキシプロピル[10:1]の溶媒)、ヒドロキシ基含量1.46 mmol/g樹脂溶液、および酸価10〜15 mg KOH/gを有するアクリル酸をベースとする塗料多価アルコールは、Bayer製Desmodur(登録商標) BL 3175 SN(ブタンオキシムブロックポリイソシアネート、ブロックされたNCO含量2.64 mmol/g)と混合される。使用される各成分の量は、表2で確認され得る。続いて、合成実施例5または6(表2参照)に従って調製される分散物について表2に記載された量が添加される。この場合、保護されたイソシアネート基とヒドロキシル基またはアミノ基のモル比は、いずれの例においても約1.1:1となる。さらに、各例において、イソプロパノール中でジブチルスズジラウラート0.01 gとTego AG製10%強度溶液ADDID(登録商標)100(ポリシロキサンをベースとする流動調節補助剤)0.03 gとが混和され、固形分約50%のコーティング配合物が得られる。これらの混合物は当初、依然として若干濁っていて、室温で4時間撹拌されると、透明なコーティング配合物が得られる。

表2:コーティング材料の配合
(実施例1〜4)
*各コーティング配合物の総固形分の割合として合成実施例5または6の粒子部分
【0114】
実施例5〜6:カルバミン酸基を有する改良されたヒュームドシリカ粒子を含む1Kコーティング配合物の調製
【0115】
発明によるコーティング配合物を調製するため、Bayer製Desmodur(登録商標)A 365 BA/X(ヒドロキシル基含量が1.71 mmol OH/gのアクリル酸をベースとする塗料多価アルコール)85.6 gは、Bayer製Desmodur(登録商標) BL3175 SN(メチルエチルケトンオキシムブロックポリイソシアネート、ブロックされたNCO含量約11%)ポリイソシアネート63.3 gと混合される。これは、保護されたイソシアネート基とヒドロキシル基とのモル比1.1:1と一致する。さらに、ポリイソシアネート50%強度溶液(メチルエチルケトン中)0.5 gと、Tego AG製ADDID(登録商標)100(ポリシロキサンをベースとする流動調節補助剤)0.1gと、メチルエチルケトン31.5 gも混合され、固形分約50%のコーティング配合物が得られる。
【0116】
実施例5:結果生じる混合物に、合成実施例7から得られたカルバミン酸基を有する改良されたヒュームドシリカ18 gが溶解機により組み込まれ、続いてその生成物がビーズミルで30分間よく拡散されると、透明なコーティング配合物が得られる。
【0117】
実施例6:結果生じる混合物に、合成実施例8から得られたカルバミン酸基を有する改良されたヒュームドシリカ18 gが溶解機により組み込まれ、続いてその生成物がビーズミルで30分間よく拡散されると、透明なコーティング配合物が得られる。
【0118】
実施例1〜6および対照例1〜2のコーティング配合物由来の塗膜の生産および評価
【0119】
対照例1および実施例1〜4のコーティング配合物は、Erichsen社の薄膜延伸装置Coatmaster(登録商標)509 MCを用いてガラス板上でナイフコートされる。ナイフスロットの高さは120 μmである。続いて通風乾燥チャンバーにおいて得られた塗膜が70℃で30分間、次いで150℃で30分間乾燥される。実施例および対照例のどちらのコーティング配合物からも、視覚的には完璧で滑らかなコーティングが得られる。
【0120】
コーティングの光沢は、Byk製Micro gloss20度光沢測定器を用いて決定され、すべてのコーティング配合物は、光沢度159〜164である。こうして生産される硬化した塗膜の引っかき抵抗性は、Peter‐Dahn耐摩耗性試験法を用いて決定される。そのため、45×45 mmの面積のScotch Brite(登録商標)2297研磨パッドに500 gの重さが負荷される。この負荷パッドを用いて、コーティング試料は計50回引っかかれる。引っかき試験の開始前および終了後も、各コーティングの光沢は、Byk製Micro gloss20度光沢測定器を用いて確認される。
【0121】
各コーティングの引っかき抵抗性の測定値として、初期値に対するつやびけが確認される。

表3:Peter‐Dahn引っかき試験おけるつやびけ
1)発明ではない
【0122】
実施例7〜8および対照例3:カルバミン酸基を有する改良されたSiOナノゾル粒子を含む2Kコーティング配合物の調製
【0123】
コーティング配合物を調製するため、固形分52.4重量%(溶媒:ナフサと酢酸メトキシプロピル[10:1]の溶媒)、ヒドロキシ基含量1.46 mmol/g樹脂溶液、および酸価10〜15 mgのKOH/gを有するアクリル酸をベースとする塗料多価アルコールは、合成実施例6において調製されるナノゾルと混合される。使用される各成分の量は、表4に記載される。結果として生じる分散物は当初、依然として若干濁っていて、室温で約2時間撹拌されると、透明かつ貯蔵安定性のある混合物が得られる。
【0124】
使用直前に、この塗膜形成樹脂成分は、硬化剤としてBayer製Desmodur(登録商標) BL 3390BA/SN(ポリイソシアネート、NCO含量4.63 mmol/g)と混合される。使用される各成分の量は、表4で確認され得る。この場合、イソシアネート基とヒドロキシル基またはアミノ基のモル比は、約1.1:1となる。さらに、各例において、イソプロパノール中でジブチルスズジラウラート0.01 gとTego AG製10%強度溶液ADDID(登録商標)100(ポリシロキサンをベースとする流動調節補助剤)0.03gとが混合され、固形分約50%のコーティング配合物が得られる。

表4:コーティング剤の配合
(実施例1〜4)
*各コーティング配合物の総固形分の割合として合成実施例5または6の粒子部分
1)発明ではない。
【0125】
実施例7〜8および対照例3のコーティング配合物由来の塗膜の生産および評価
【0126】
塗膜形成樹脂成分とコーティング用硬化剤成分とをそれぞれ組み合わせた直後に、対照例3および実施例7〜8のコーティング材料は、Erichsen社の薄膜延伸装置Coatmaster(登録商標)509 MCを用いてガラス板上でナイフコートされる。ナイフスロットの高さは120 μmである。続いて、通風乾燥チャンバーにおいて、得られた塗膜が80℃で30分間乾燥される。実施例7〜8および対照例3のどちらのコーティング配合物からも、視覚的には完璧で滑らかなコーティングが得られる。
【0127】
コーティングの光沢は、Byk製Micro gloss20度光沢測定器を用いて決定され、すべてのコーティング配合物は、光沢度159〜164である。こうして生産される硬化された塗膜の引っかき抵抗性は、Peter‐Dahn耐摩耗性試験法を用いて決定される。そのため、45×45 mmの面積のScotch Brite(登録商標)2297研磨パッドに500 gの重さが負荷される。この負荷パッドを用いて、コーティング試料は計50回引っかかれる。引っかき試験の開始前および終了後も、各コーティングの光沢は、Byk製Micro gloss20度光沢測定器を用いて確認される。
【0128】
各コーティングの引っかき抵抗性の測定値として、初期値に対するつやびけが確認される。

表5:Peter‐Dahn引っかき試験おけるつやびけ
1)発明ではない

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)固形分が20重量%〜90重量%のヒドロキシル官能性塗膜形成樹脂(L)と、
b)遊離イソシアネートおよび/または保護されたイソシアネート基(熱処理で保護基が除去されイソシアネート基が解放される)を含む、固形分が1重量%〜90重量%のコーティング用硬化剤(A)と、
c)その表面上にイソシアネート反応性基を有する粒子(P)の50%以上の反応性基のほうが、塗膜形成樹脂(L)のヒドロキシル基のうち少なくとも60%以上よりもイソシアネートに対する反応が大きい、固形分が0.05重量%〜40重量%の粒子(P)と、
d)コーティング配合物(B)全体で全固形分が0重量%〜90重量%の溶媒または溶媒混合物を含む、コーティング配合物(B)。
【請求項2】
粒子(P)が炭素結合アミン基またはチオール基を有することを特徴とする、請求項1に記載のコーティング配合物(B)。
【請求項3】
a)固形分が30重量%〜80重量%のヒドロキシル官能性塗膜形成樹脂(L)と、
b)固形分が10重量%〜60重量%のコーティング用硬化剤(H)と、
c)固形分が0.1重量%〜30重量%の粒子(P)と、
d)固形分が0重量%〜40重量%の1つ以上のさらなるコーティング用硬化剤(H1)と、
e)コーティング配合物(B)全体の20重量%〜70重量%の1つ以上の溶媒を含む、請求項1および請求項2に記載のコーティング配合物(B)。
【請求項4】
粒子(P)が、金属原子、シリコン原子、および酸素原子から選択した原子またはシリコン樹脂から構成される粒子(P1)を反応させ、

一般式(I)および(II)から選択されるオルガノシラン(A)をもつ遊離ヒドロキシル基を有することにより得ることができて、
が、各例において1〜6個の炭素原子を有する水素基またはアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基をs示し、炭素鎖は隣接しない酸素、硫黄、またはNRの群により遮断され、
が、各例において1〜12個の炭素原子を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、またはアリールアルキル基を示し、炭素鎖は隣接しない酸素、硫黄、またはNRの群により遮断され、
が、水素基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アミノアルキル基、またはアスパラギン酸エステルを示し、
が、水素基または任意の有機基を示し、
Aが、1〜10個の炭素原子を有する、任意に置換された二価のアルキル基、シクロアルキル基、またはアリール基を示し、酸素、硫黄、またはNRの群により任意に遮断され、
Xが、コーティングの硬化時に硬化剤(H)により化学反応を生じ得る有機基を示し、
Yが、コーティングの硬化時に、Si‐Y結合が切断されてから適宜、硬化剤(H)により化学反応を生じ得る有機基を示し、
nには、0、1、または2の数値が適用され、
mには、0、1、または2の数値が適用され、
qには、0または1の数値が適用され得ることを特徴とする、請求項1〜3に記載のコーティング配合物(B)。
【請求項5】
粒子(P1)の平均径が1 nm〜100 μmであることを特徴とする、請求項1〜4に記載のコーティング配合物(B)。
【請求項6】
粒子(P)が、コロイド酸化ケイ素または酸化金属から構成される粒子(P1)から始められ調製されることを特徴とする、請求項1〜5に記載のコーティング配合物(B)。
【請求項7】
粒子(P)が、ヒュームドシリカから構成される粒子(P1)から始められ調製されることを特徴とする、請求項1〜6に記載のコーティング配合物(B)。
【請求項8】
塗膜形成樹脂(L)が、ヒドロキシル基含有ポリアクリル酸またはポリエステルから構成されることを特徴とする、請求項1〜7に記載のコーティング配合物(B)。
【請求項9】
コーティング材料として、請求項1〜8に記載のコーティング配合物(B)の使用。

【公表番号】特表2009−503128(P2009−503128A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−521823(P2008−521823)
【出願日】平成18年6月27日(2006.6.27)
【国際出願番号】PCT/EP2006/006207
【国際公開番号】WO2007/009557
【国際公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(507303435)ウァッカー ケミー アーゲー (17)
【Fターム(参考)】