説明

粒子ペーストまたは懸濁液の押出を行う方法

液体に粒状固体が含まれるペーストまたは懸濁液から成形体の押出を行うため、少なくとも一つの部分的に液体透過性壁部を有する壁によって規定される成形流路の入口端に流動性ペーストまたは懸濁液を導入する工程;およびペーストまたは懸濁液に圧力を加え、それにより、液体透過性部に差圧を生じさせることで、少なくともペーストまたは懸濁液の液体の大部分を流路から除去し、ペーストまたは懸濁液の圧密された粒状固体の非流動性成形体を流路中に形成し、流路の出口端から漸次的に非流動性成形体の押出を行う工程を含む方法を実施する。非流動性成形体を流路の出口端から液体透過性壁部を超える長さに維持するように圧力の範囲、液体の除去速度、および押出速度を制御し、液体透過性壁部の上流に成形体の一部を提供する。懸濁液から排出される液体が液体透過性部の上流に維持された非流動性成形体の一部でろ過される定圧ろ過により、液体を流路から除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自立するグリーン体押出物を製造するための粒子ペーストまたは懸濁液の脱水押出に関する。
【背景技術】
【0002】
ペーストまたは懸濁液状の粒子材料の押出を行う押出機には、二つの基本的な種類が従来から存在する。これらは、ラム押出機(バッチ型押出機)およびスクリュー押出機(連続押出機)である。いずれの場合も、押出機の下流端は、ダイランドの上流にダイ入口を有するダイからなる。ダイ入口では、押出物を所望の断面形状に成形し、さらに、断面積を減少させることにより、好適な圧力下で形作る方法が行われることを可能にする。以下では、粒子材料の押出物が粘性および塑性変形特性を示すことを前提とする。通常、そのような材料は粘塑性材料と呼ばれる。粘塑性材料の物理的な材料特性はレオロジー特性と呼ばれる。
【0003】
ラム押出機は、ピストン(ラム)によって供給室内の所定量の材料に圧力を加えることを特徴とする。供給室はダイに通じており、材料はダイを通過することで押出物として成形される。押出圧力は、押出物を形成する材料に対するダイの抵抗によって決定される。すなわち、押出圧力は、押出物を形成する材料のレオロジー特性と、ピストンの移動によって順次制御される押出速度との組み合わせで決定される。
【0004】
スクリュー押出機では、ラム押出機のピストンに代わってハウジング内のスクリューを用いる。ハウジングは、押出物を形成する材料がスクリューによって連続的に加圧され、ダイに供給されるように、供給室に接続される。この方法は、スクリューの逆方向における材料流動抵抗が、ダイにおける材料流動抵抗よりも大きい場合にのみ機能する。この条件が満たされる場合、押出を行う材料に対するダイの抵抗によって押出圧力が決定されるという点で、状況はラム押出機と同一である。すなわち、押出圧力は、押出を行う材料および結果的に得られる押出物のレオロジー特性と、スクリューの回転速度によって順次制御される押出速度との組み合わせで決定される。
【0005】
上記から、押出を行う材料および粒子材料のペーストまたは懸濁液から形成される押出物のレオロジーパラメータは、従来の押出機を使用する押出方法で大きな役割を果たすことになる。粒子懸濁液のレオロジーパラメータは、多相または単相モデルを起点として説明することができる。多相モデルでは、液体のレオロジー特性と同様に、たとえば粒子の形状、粒度、粒度分布、表面特性、および体積濃度という点から、粒子懸濁液のすべての構成要素を明示的にモデル化する。しかし、いわゆる単相モデルを用いて多相粒子懸濁液を説明すれば、粒子懸濁液はより容易に理解され、現在の文脈でも十分に説明される。単相モデルでは、一つの構成関係、具体的には材料の変形とそれに関連する応力との関連性を説明する関係を利用して、粒子懸濁液のレオロジー挙動を説明する。このような理論上の単相材料のレオロジーパラメータは、粒子懸濁液の特性、粒度分布、粒子の粒度および形状、粒子の表面特性、粒子の体積濃度、ならびに粒子を懸濁させる液体のレオロジー特性を黙示的に反映するパラメータと考えられる。
【0006】
いずれも非ニュートン性かつ粘塑性であり、一部はさらに非線形であることを特徴とする様々な種類の粒子懸濁液について、多くの単相の構成関係が提唱されている。すなわち、固体を変形させるには一定の降伏応力を克服する必要があり、固体は変形すると粘性的に振る舞うと考えられる。これらの関係式としては、例を挙げれば、Bingham、Herschel-Bulkley、およびCassonの式があるが、この中でもっとも簡潔なBinghamの塑性関係式は次のとおりである:
【化4】


ここで、τはせん断応力、τは降伏応力、μは粘度、およびγはひずみ速度である。
粒子ペーストまたは懸濁液では、Binghamの塑性関係式で適切に示されるように、降伏応力および粘度の両方が懸濁液、すなわち液体(多くの場合は水)および粒子の相の関数である。液体の粘度は懸濁液の粘度に影響し、粒子の体積濃度、充填、表面特性、形状、および粒度分布は降伏応力および粘度に影響する。
【0007】
懸濁液のレオロジー特性については、押出方法における要求が対立する。押出物の寸法を安定させるには、主に、高い降伏応力および高い粘度が必要となる(後加工が迅速に行われない場合には、粘度に関する要求が特に重要となる)。固体粒子に関する液相の大規模な移動、すなわち相移行または分離を防ぐため、液体の粘度を高くすべきである(したがって、懸濁液を高粘度とする)。しかし、押出機内での流動という観点からすると、押出物を形成する材料の流動パターンにおいて静的領域が形成されるのを防ぎ、また押出圧力を制限するために降伏応力を制限すべきであり、同時に、方法を円滑化し、また押出圧力を制限するために粘度を制限すべきである。
【0008】
本発明は、特に、セメント系粒子材料の押出に関する。セメント系材料の押出は、高い粒子間摩擦と、流動パターンにおいて硬化および水和反応によって形成される静的領域の致命的な影響とが組み合わさることにより、さらに相移行または分離が容易であるため、特に困難であることが証明されている。また、セメント系押出物の自重は比較的大きいため、形状安定性を維持するうえで降伏応力に関する要求が高く、流動パターンにおける静的領域を回避することが一層困難となる。
【0009】
セメント系粒子材料のレオロジー特性に関するこのような要求の対立、特に、降伏応力に関する要求の対立に対処するため、押出時に粒子懸濁液を脱水し、それにより、材料の流動および成形時における低い降伏応力に加え、加工後の押出物におけるより高い降伏応力を可能にするための様々な方法が発案されてきた。しかし、セメント系の大型薄肉要素の実用的な押出が可能となったのは、Krenchelらの米国特許第6398998号で「脱水押出原理」が発見されてからであり、これによって降伏応力に関する要求の対立に対処することが可能となった。
【0010】
Rouvinらの英国特許第1080217号では、脱水が可能である流動コンクリート混合物の押出により、中空のコンクリート製品を製造する方法および装置を開示している。そこでは、一定の断面形状を有する押出機で往復ピストンによって混合物を圧縮する。押出時に、混合物は圧力を加えられて押出機内を徐々に移動する一方、押出機の壁の外側を真空状態にすることで、液体は押出機の終端部において押出機の壁の開孔部から除去される。
【0011】
英国特許第1080217号の押出機では、有孔壁での合計差圧が数バールの桁を超えることはない。明らかに、真空の生成によって生じる差圧への寄与は、およそ1バール未満である。このような寄与の他に、変動する間欠的な力が往復ピストンによって加えられる。しかし、ピストンによって加えられる力について、実質的に圧密されていない混合物がそのまま押出機から排出されるような一定の低いレベルを超えることはできない。実質的に圧密されていない混合物がそのように排出されるのを防ぐうえで、十分な反対の力は存在しないためである。さらに、こうした排出が回避されるような低い差圧で運転を行ったとしても、英国特許第1080217号の押出機では、混合物の粒子間の空間から液体を除去する能力が制限される。押出物が重力に対してその形状を維持するだけの十分な構造強度を有する程度にまで液体は除去される。しかし、押出物の粒子間に液体が残存する度合いとして、通常、細心の注意を払わない限り、変形、損壊、または崩壊なしでは、比較的新鮮で実質的に未硬化の押出物を取り扱うことができない。
【0012】
同じくRouvinらの米国特許第3905732号では、それ自体は非常に複雑であるものの、やはり運転時に脱水が可能である装置を開示している。米国特許第3905732号は、英国特許第1080217号で発案された方法で装置を運転した場合のさらなる問題を指摘している。しかし、そのさらなる問題の解決策として米国特許第3905732号で開示されている複雑な装置では、依然として、有孔壁での合計差圧が数バールの桁を超えない。したがって、英国特許第1080217号に関して詳述した問題が再び該当する。
【0013】
Krenchelらの米国特許第6398998号では、英国特許第1080217号および米国特許第3905732号と同様に、圧密された粒子材料の成形体を、粒子ペーストまたは懸濁液の押出によって製造することができる方法を開示している。しかし、Krenchelらの場合、押出方法は英国特許第1080217号および米国特許第3905732号と大きく異なり、本明細書で呼ぶところの「脱水押出原理」を利用する。この原理では、50〜400バールというように、はるかに高い範囲の差圧を適用することができる。結果的に、押出物は、自立することに加え、変形、損壊、または崩壊の危険性が少ない状態で成形直後に取り扱う、または機械的に操作することができるグリーン体を含む。
【0014】
指摘されているように、英国特許第1080217号および米国特許第3905732号におけるRouvinらの発案では、差圧が比較的小さい。この結果、脱水は実現されるものの、液体が少なくとも粒子材料の有意な割合を分離する連続相でなくなる段階に進むことはできない。このため、これらの発案によって製造される押出物の構造強度は、製造時の取り扱いで押出物が損傷する危険性を実質的に除去する程度には達しない。一方、米国特許第6398998号で開示されたKrenchelらの発案では、言及されている脱水押出原理によって押出物を製造する。この原理による製造において、脱水とは、実質的に押出物の至るところで隣接する粒子が密に接触し、有意な程度に液体が連続相ではなくなる段階を示す。この状態の粒子材料および結果的に得られる押出物は、圧密状態にあると呼ばれる。液体が連続相ではなくなるため、粒子骨格を保持するメニスカスで毛管力が生じ、押出物の実質的な強度および剛性が与えられる。この原理で製造された押出物の強度および剛性は、一般にグリーン強度および剛性と呼ばれる。このように、脱水押出で製造された押出物は、新鮮かつ未加工である粘塑性粒子ペーストまたは懸濁液と比較して、実質的に異なる特性を有する。さらに、この種類の押出機では、懸濁液の降伏応力を所望のように低く維持することができる。
【0015】
米国特許第6398998号の発案は、押出機の出口部において、圧密された粒子材料の非流動性「プラグ」または成形体を実現および維持する必要があり、また、この要求を満たすために脱水原理を適用する必要があることを教示している。始動にあたっては、まず押出機の出口端に一時的にインサートを取り付けて閉塞し、押出時に加えられる力に対する反力を発生させることができる。押出を行う粒子材料がインサートに隣接して脱水され、圧密された粒子材料の非流動性プラグが十分な摩擦抵抗を提供する長さにわたって生成される段階に達したところで、インサートを取り除き、押出を開始することができる。圧密材料のプラグについては、相当の押出圧力を作用させ、プラグと押出機の壁との摩擦を克服する必要がある。このように、プラグは、押出時に加えられる圧力に対する反力を生じる点で、一時的に取り付けられたインサートと類似した機能を果たす。結果的に、押出機出口の上流で脱水を行うことにより、材料が漸次的に圧密されると同時に、圧密材料は圧密された押出物として漸次的に押出機から排出される。
【0016】
圧密材料と押出機の壁との摩擦を克服するため、米国特許第6398998号におけるKrenchelらの発案による押出圧力の範囲は、英国特許第1080217号および米国特許第3905732号の発案における押出圧力よりもはるかに高い。インサートを取り除くと、押出機出口の上流で圧密材料の非流動性プラグの長さが増すにつれて、摩擦が大きくなる。米国特許第6398998号で開示されているように、押出を可能にするために克服すべき摩擦の度合いは、摩擦の影響を低減するのに必要な程度とすることができる。実際に、一般的な状況では、押出物を形成する圧密材料のプラグと押出機の壁との摩擦は押出圧力に比例して増大するが、これは、主に、押出物を形成する圧密材料のプラグによって押出機の壁に横向き(すなわち、押出方向に対して垂直)の圧力が加わる結果として、摩擦が生じるためである。このように、プラグそのものの押出圧力を増加させたとしても、摩擦を克服することはできない。この目的のために様々な方法が開示されており、たとえば、押出物を形成する圧密材料のプラグを下流方向に段階的に前進させることがある。これを実現するには、押出機の一方の壁を押出機の他方の壁に対して相対的に同一方向に移動させ、その壁間で長手方向に相対的な往復運動を起こす。この場合、押出圧力は一定の高いレベルに維持されるため、摩擦が低減することはないものの、実質的に、圧力の最大効果が作用することにより、圧密材料のプラグと他の壁との摩擦の影響を克服することができる。
【0017】
摩擦が低減されると、加えられる押出圧力は低下する。しかし、先に指摘したように、押出時の押出圧力を依然として比較的高く維持するか、またはまったく低下させない場合、粒子材料の脱水および圧密はいずれもその度合いが比較的大きくなる。したがって、押出物は良好な構造強度を有し、変形、損壊、または崩壊の危険性が少ない状態で成形直後に取り扱う、または機械的に操作することができる。
【0018】
脱水押出機では圧密材料のプラグの降伏応力が高いため、押出物がダイ中を流動することはなく、ダイ内部または外部の往復運動もしくは押出物と押出機の壁との摩擦を低減または制御する他の手段によって移送される。これは、一方でのラムまたはスクリュー押出機と、他方での脱水原理による押出機との根本的な相違である。脱水原理による押出機では、流動に関係してダイで一度圧力が低下し、脱水および摩擦部でもう一度圧力が低下するが、通常、前者の圧力低下は可能な限り小さく維持される一方、後者の圧力低下は押出機寸法および加圧能力といった実際の考慮事項によってのみ制限される。このように、脱水原理による押出機では、押出物がダイを通過する際に受ける抵抗(圧力低下)とは関係なく、すなわち、押出物のレオロジー特性とは関係なく、押出圧力を選択することができる。一方、従来のラムまたはスクリュー押出機では、押出圧力はダイを通過する押出物の流動によってのみ決定され、したがって、押出物のレオロジー特性と密接に関係する。
【0019】
発明の要約
本発明は、脱水押出原理を用いて、粒子ペーストまたは懸濁液から自立するグリーン体押出物の改良された製造を提供することに関する。
【0020】
脱水原理に基づいて稼働するように設計された押出機は、必然的に、いわゆる脱水部を含む。脱水部は、押出容器の下流、かつ、先に記載したように、圧密された押出物と押出機の壁との摩擦が押出圧力に対抗する摩擦部の上流に位置する。押出機の脱水部は、押出機の壁が孔またはスリットで開孔されており、液体の流出が可能な部分である。押出物の実質的な最終断面は脱水部で与えられる。
【0021】
本発明では、脱水部で行われる脱水方法は、固液分離技術においてろ過として知られる単位操作に類似している。ろ過では、粒子を分離固相またはケーキとして保持するとともに、流体を清澄なろ液として通過させる多孔質媒体を使用することにより、流体中の懸濁固体粒子を物理的または機械的に流体から除去する。商業用のろ過は、非常に広範囲にわたって応用されている。流体は、ガスまたは液体とすることができる。懸濁固体粒子は、非常に微細(マイクロメートル領域)または非常に大型で、非常に硬質または塑性の粒子であり、形状が球形または不規則である粒子の凝集体または個別の粒子とすることができる。有用な生成物は、ろ過によって得られる清澄なろ液または固体ケーキである。固体粒子の完全な除去が必要な場合もあれば、部分的な除去のみが必要な場合もある。セメント系材料の脱水押出の場合、ろ過とは、必然的に、水性懸濁液中の極めて微細な粒子(サブミクロン、ミクロン、およびサブミリサイズ)を含む物質をろ過することであり、有用な生成物はろ過ケーキである。
【0022】
ろ過に関する多様な問題のため、多くの種類のフィルターが開発されてきた。通常、フィルターには一定の寿命があり、その後には清掃または交換が必要であるが、寿命はろ液の流量および固体の体積濃度に依存する。フィルターを清掃または交換する必要が生じるのは、ろ過ケーキの厚さが増すにつれてろ液の流量が減少する(圧力が一定の場合)、またはろ過ケーキの厚さが増すにつれてフィルターおよびろ過ケーキでの圧力低下が大きくなり(ろ過流量が一定の場合)、また、ろ過ケーキが堆積するにつれて、ろ液の流速という点で方法の効率が低下するためである。ろ過ケーキでの圧力低下Pは、実験的に評価するか、またはたとえば充填層におけるニュートン流体(ろ液)の層流に関するBlake-Kozenyの式を用いて、次のように理論的に評価することができる:
【化5】


ここで、μfはろ液の粘度、νはろ液の空塔線速度、Lはろ過ケーキの厚さ、Dは充填層(またはろ過ケーキ)を構成する(球形)粒子の有効径であり、εは充填層(またはろ過ケーキ)のボイド体積率である。
【0023】
ろ過方法そのものは、フィルターの幾何学的な配置および粒子懸濁液の状態に基づいて特徴付けることができる。ごく一般的な構成は、粒子懸濁液がフィルターに沿って流動することで、粒子がフィルターに沿って徐々に堆積し、ろ過ケーキが形成されるクロスフローろ過として特徴付けられる。また、根本的に異なる方法として、加圧された粒子懸濁液の容器の片側をフィルターによって閉じる定圧ろ過が知られている。容器のフィルター側でろ液が排出され、ろ過ケーキが残存するため、容器内では一定の圧力が維持される。脱水押出の場合、ろ過ケーキが加工された押出物となる。
【0024】
脱水原理を利用すると、粒子ペーストまたは懸濁液の脱水は、他のろ過方法のクロスフローろ過と同様に、押出機の脱水部の全体または一部で同時に起こる。
【0025】
英国特許第1080217号および米国特許第3905721号におけるRouvinらのそれぞれの発案では、脱水は、事実上、脱水孔がろ材表面として機能する押出機の壁と平行にペーストまたは懸濁液が流動する、ワンパス式の低圧クロスフローろ過によって行われる。米国特許第6398998号によるKrenchelらの発案では、圧密された粒子材料のプラグを脱水部の下流で実現および維持するうえで、粒子材料が脱水部を通過して摩擦部に入るにつれて徐々に脱水および圧密される高圧クロスフローろ過に一層類似したものを利用する。摩擦部から押出物が排出される結果、圧密された押出物は脱水部から継続的に除去され、同時に、あらたに材料を供給することでさらにろ過および脱水を行う。
【0026】
脱水押出原理とクロスフローろ過とを併用すると、下流に位置する未脱水の押出物が、より上流に位置する脱水された押出物によって「遮蔽」され、脱水のために利用可能な圧力が局所的に低下する可能性がある。これが発生すると、押出物は完全に均一にならず、押出物の部分によって液体量(したがって、グリーン体強度および剛性)にばらつきが生じるであろう。
【0027】
本発明者らは、クロスフローろ過の原理に代わって定圧ろ過と脱水押出原理とを組み合わせることにより、事実上、クロスろ過に基づく脱水押出を行う際の問題を克服できることを発見した。
【0028】
事実上、摩擦部内の脱水部を含めた押出機の脱水部の上流において、圧密および脱水を進行させることができる場合に、定圧ろ過は実現される。Blake-Kozenyの式によって確認されるように、粒子ペーストまたは懸濁液の押出圧力を所与とすると、圧密された押出物を通過する液体の流量は、粒子材料の成分、液体の粘度、および脱水部の先頭から圧密の開始位置まで上流方向に測定した、圧密された押出物の長さによって制御されることが分かる。さらに、押出圧力が高くなるにつれて、ろ過ケーキを通過する液体の流量が増加する。
【0029】
したがって、本発明は、押出を行う粒子材料の物理的特性(たとえば、粒子の形状、粒度、粒度分布、表面特性、および体積濃度について)および粒子を懸濁する液体のレオロジー特性の双方に関係する押出方法を、押出圧力および押出速度の点で制御する特有の方法に関する。制御パラメータがわずかに変動しても、押出条件の変化は小さく、加工後の押出物の質はまったく、またはほとんど変化しないことが発見されており、本方法による脱水押出方法の制御は安定した押出と見なすことができる。粒子懸濁液は、周知の簡易的な圧密試験で特徴を明らかにすることができ、その結果については、圧密定数Cと呼ばれる単一の材料パラメータから解釈することができる。安定した押出方法による押出にあたっては、押出機において、圧密厚さが小さい場合であっても、開孔部を提供する孔またはスリットでの圧力低下が圧密された押出物での圧力低下よりも実質的に小さい脱水部が必要となる。さらに、安定した押出方法では、脱水部を実質的に短縮することができるという点で、押出機の設計を簡易化することができる。
【0030】
先に詳述したように、米国特許第6,398,998号は脱水押出原理について記載しており、それは、管押出を行うための円形断面を有する一般的な押出機によって説明されている。押出機は四つの部分からなることが記載されており、すなわち、圧縮される流動性懸濁液を供給するための入口部Aが流動部Bに続き、そこでは懸濁液が順方向に流動することができ、排水および圧密部Cに入る。排水および圧密部Cでは、外部およびおそらくは内部モールドの壁が開孔されており、それによってフィルターを形成する。最後に、押出機は固体摩擦部Dを有する。流動部Bならびに少なくとも排水および圧密部Cの隣接部にわたる静水圧は高く、脱水および圧密は脱水部で徐々に起こることが記載されている。さらに、モールドの表面全体にわたって同時に液体が搾出されるため、下流に位置する未脱水の押出物が、より上流の脱水された押出物によって「遮蔽」され、脱水のために利用可能な圧力が局所的に低下し、結果的に最終製品が完全に均一にならない危険性があることが言及されている。この欠点については、密に充填かつ圧密された粒子材料が極めて空隙率の低いコンパクトな成形体を形成し、成形空間を完全に占めるまで、まずモールド中でスラリー入口からもっとも隔離した部分から、次にモールド中で入口により近い部分から、その後さらに入口に近い部分から、順次、液体が搾出されるよう、開孔部が分散および適応されたモールドの使用によって回避できることが示唆されている。
【0031】
米国特許第6398998号は、懸濁液を成形空間に完全に導入し、排水および圧密部Cの液体透過性壁で差圧を発生させることにより、少なくとも液体の大部分を除去する工程が、高圧スラリーポンピング方法として開始され、粉末成形方法として終了することを指摘している。圧力が加えられると、液体透過性壁では20〜400バールの範囲、たとえば50〜400バールの差圧が生じる。装置は、成形空間の一方の端部における高圧スラリーポンピングとして始動し、成形空間の他方の端部から安定的に進行する粉末成形方法として終了する。
【0032】
本発明は、脱水押出原理に基づき、自立するグリーン体押出物を粒状固体と液体とのペーストまたは懸濁液から製造するための改良された方法に関する。
【0033】
本発明は、液体に粒状固体が含まれるペーストまたは懸濁液からグリーン体の押出のための方法であって、
(1)流動性ペーストまたは懸濁液を、少なくとも一つの部分的な液体透過性壁部を有する壁によって規定される成形流路の入口端に導入する工程;および
(2)ペーストまたは懸濁液に圧力を加える工程、それにより;
(i)液体透過性部で差圧を生じさせることで、少なくともペーストまたは懸濁液の液体の大部分を流路から除去し、ペーストまたは懸濁液の粒状固体の非流動性成形体を流路中に形成すること、および
(ii)流路の出口端から漸次的に非流動性成形体の押出を行うこと;
の工程を含み、
非流動性成形体を、流路の出口端から液体透過性壁部を横切り超える長さに維持するために、圧力の大きさ、液体の除去速度、および押出速度を制御し、液体透過性部の上流に成形体の一部を提供することで、懸濁液から排出される液体が、液体透過性部の上流に維持された非流動性成形体の一部でろ過される定圧ろ過により、液体を流路から除去する方法である。
【0034】
本発明は、完全に脱水された均一な製品を提供するため、安定した信頼性の高い脱水押出の実施を可能にする方法を確立するものである。本方法により、モールドの脱水部の全体または一部で同時に粒子懸濁液の脱水が起こる、すなわちクロスフローろ過の場合に、下流に位置する未脱水の押出物が、より上流の脱水された押出物によって「遮蔽」され、脱水のために利用可能な圧力が局所的に低下し、結果的に最終製品が完全に均一でなくなる危険性があるという問題を解決することができる。本発明は、クロスフローろ過の原理に代わり、定圧ろ過を脱水原理と組み合わせることによって、事実上、この問題を解決することができるという発見に基づく。脱水押出器の脱水部の上流において脱水および圧密の進行を可能にすることで、定圧ろ過は実現される。与えられた粒子懸濁液の押出圧力に対して、圧密された押出物を通過する液体の流量は、固体成分、液体の粘度および量、ならびに脱水部の先頭から圧密の開始位置まで上流方向に測定した、圧密された押出物の長さによって制御される。液体の流量は、圧密速度として示される、圧密された押出物の増加速度に比例する。圧密された押出物は押出方法によって常に前進するため、圧密された押出物の長さは、先に説明したように摩擦を制御する方法に応じて段階的または実質的に一定の割合で、連続的に減少する。したがって、一方では、圧密された押出物の長さは圧密速度に応じて連続的に増加し、他方では、圧密された押出物の長さは平均押出速度に応じて減少する。平均押出速度が圧密速度よりも低い場合、事実上、圧密された押出物の長さは上流方向に増加するであろう。平均押出速度が圧密速度よりも高い場合、事実上、圧密された押出物の長さは減少するであろう。しかし、圧密された押出物の長さが上流方向に増加するときには圧密速度が低下し、圧密された押出物の長さが下流方向に減少するときには圧密速度が上昇するため、平均平衡が確立されることになるが、ただし、押出速度が高いために、脱水部の上流端から上流における圧密された押出物の長さが減少してゼロになり、方法が徐々にクロスフローろ過方法となる場合、または押出速度が低いために、圧密された押出物が増加して押出容器に達する場合には、この限りではない。実際、脱水に際しては、常に、圧密された押出物の壁厚の全部または半分(開孔部を与えられるのが押出機の壁の一方または両方のいずれかによる)に等しい、圧密された押出物の側厚を通過する必要があるため、最大押出速度は、後述のように押出物の壁厚および押出機の壁における開孔部の構成によって決定される圧密速度に一致する。平衡状態は安定した押出と呼ばれるが、これは、押出圧力、粒子懸濁液の成分、および/または押出速度がわずかに変化すると、脱水部から圧密された押出物の先頭までの平均距離のわずかな変化によって特徴付けられる新たな平衡状態が導かれ、加工後の押出物の質はまったく、またはほとんど変化しないためである。
【0035】
圧密された押出物と押出機の壁との摩擦の影響を連続的に低減および制御する脱水押出方法を使用する場合、平均押出速度として、もっとも好ましくは、単純に実質的に一定の押出速度を適用する。摩擦を低減せず、先に説明したように押出機の壁の往復運動を利用して押出速度を制御する場合、平均押出速度は、周期的な往復運動のパラメータ、たとえば周期および振幅によって決定されるであろう。
【0036】
実際に、押出圧力を所与として、圧密された押出物の関連する側壁厚および押出機の壁における開孔部の構成によって決定される圧密速度を下回り、かつ圧密された押出物が増加して成形流路に達するようになる圧密長さに対応する圧密速度を上回るように押出速度(好ましくは平均速度)を維持する工程を押出方法に追加することで、本発明によって可能となる安定した脱水押出を促進することができる。このような制限内に押出速度を維持することを支援するため、押出圧力を実質的に一定に維持することができ、それにより、実質的に一定である関連圧力における、圧密された押出物の長さの関数として圧密速度を反映する関係に実質的に準拠して運転が行われる。この準拠に代わって、または加えて、たとえば圧密境界の位置を参照して常に押出速度を制限内に維持するなど、押出方法をリアルタイムで監視することができる。
【0037】
圧密された押出物の長さの関数として圧密速度を反映する関係は、好ましくは、実験的または実験的な検証によって理論的に決定されるであろう。本発明および押出方法をリアルタイムで監視する変形例では、上記の式(2)におけるBlake-Kozenyの関係式から、基本的なパラメータ依存性を説明することができる。その関係式をあらためて以下に示す:
【化6】


ろ液の粘度および空塔線速度であるμfおよびνは、懸濁液の液相の粘度および速度であり、ろ過ケーキの厚さであるLは、液体透過性部上流の圧密材料の長手方向における長さであり、事実上、Lが減少するにつれて側壁厚に制限され、ろ過ケーキの有効径であるDは、懸濁液の固体の平均径であり、ろ過ケーキのボイド体積率であるεは、上流の圧密材料のボイド体積率である。
【0038】
側壁厚は、脱水を行うのが対向する押出機の壁の一方またはそれぞれのいずれかによって、それぞれ押出物の壁厚の全部または半分の厚さに一致するであろう。
【0039】
安定した脱水原理によって稼動する押出機では、ほぼすべての脱水が最初の上流部で起こるため、短距離の脱水部のみが必要となるであろう。実用的な観点からすると、一般に、開孔部を与えられるのが押出機の壁の両方または一方のみのいずれかにより、信頼性の高い脱水部は押出物の壁厚の1〜5倍または2〜10倍という長さを有する。さらに、押出機の壁の開孔部であるスリットまたは孔は、圧密された押出物での圧力低下と比較して圧力低下が小さくなるのに十分な大きさであることが必要とされる。
【0040】
図1は、Binghamの粘塑性関係式を示す。この直線関係は、粒子材料の多くの懸濁液に対して適切である。本発明者らの発見から、セメント系懸濁液にもこの関係が適切であることが確認され、セメント系懸濁液は本発明で使用するうえで好ましい懸濁液である。もっとも好ましくは、製品の提供を目的とする脱水押出に適したセメント系懸濁液は、繊維強化材料であり、もっとも好ましくは高靭性繊維補強セメント複合材料(ECC)である。好適なセメント系懸濁液は、重量部で以下の組成範囲のものとすることができる:
セメント 0.3〜0.8
ポゾラン材料 0.1〜0.3
粒子材料 0.1〜0.4
水 0.1〜0.5
ここで、全固形分に対する繊維の割合は1〜5体積%である。通常、ECC材料は、汎用または早強性などのポルトランドセメントと少なくとも一つのポゾランとの組み合わせを含む。通常、粒子材料は、粒度が1mm未満、たとえば0.1mm未満の細砂および/または石英粉末である。繊維は、有機および/または鉱物繊維とすることができ、ポリマー繊維が好ましい。好適なポリマー繊維としては、ポリプロピレン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリイミド、およびポリアクリロニトリル繊維、ならびにその混合物である。固形分を、十分な水ならびに必要に応じて分散剤および/または流動化剤と混合し、押出に適した流動性懸濁混合液を生成する。懸濁液の水と結合材(セメントおよびポゾラン)の比は約0.3〜0.5とすることができるが、これは、脱水押出によって実質的に低下する。水と結合材の比は、脱水押出によって約0.2以下まで低下してもよいが、一般には約0.22〜0.26まで低下する。
【0041】
図2は、ラム押出機の一部を概略的に示す。図は、押出の圧力を加えるラム18を有する成形流路16の一部を規定する壁12および14である。図示された部分は壁12および14の縦断面であり、セメント系の大型薄肉要素、たとえばフラットパネルまたは管などの管状部材の押出に使用することが可能であろう。パネルの場合、パネルの各主要面はそれぞれ壁12および14によって形成され、図2の平面に対して垂直な流路幅は、壁12と壁14との間隔よりも大きい。管の場合、図は同心円筒壁12および14の径方向断面である。いずれの場合も、ラム18は、流路16の横断面に一致する、流路16に対して横方向の形状を有する。
【0042】
流路16に沿って、壁12、14および流路16は、入口部20、摩擦部22、および入口部20と摩擦部22との間に脱水部24を規定する。脱水部24に沿って、壁12および14のそれぞれに複数の開孔部26が与えられる。開孔部26は、壁12および14のそれぞれに与えられるように図示されているが、一方の壁のみに与える必要がある。
【0043】
ラム18が(図2の方向では右側へ)後退すると、注入口(図示せず)を通じて粒子懸濁液28を供給し、流路16を満たすことができる。その後、ラム18は左側に向かって前進し、作動行程を完了する。最初に、流路16の出口端はラム18から離間しており、ラム18の作動行程によって加えられる力に対する反力を発生させるため、その出口端に取り付け具(図示せず)を挿入して閉塞する。この結果、液体が開孔部26を通過することで懸濁液が脱水され、結果的に、インサートから摩擦部22を経て脱水部24に及ぶ範囲で、圧密された粒子材料30の非流動性成形体が堆積する。壁12および14(ならびにそのいずれかの側壁)と圧密材料30の成形体との摩擦により、ラム18によって加えられる力に対する反力が生じる。摩擦部22の長さは、摩擦で生じる反力により、流路16の出口端で取り付け具が取り除かれる程度である。その後、ラム18の作動行程ごとに押出を行うことができる。図2では、押出時に摩擦を低減および制御する手段を図示しない。
【0044】
図2は、米国特許第6398998号によるKrenchelらの開示に基づく運転を示す。図示されたように、圧密材料30の成形体は、実質的に脱水部24の全長に及ぶことができる。懸濁液の粒子材料は圧密され、脱水部24で壁12および14に対する層32が形成される。層32は脱水部24に沿って漸次的に厚みを増し、やがて、摩擦部22および脱水部24に隣接し、かつその下流における流路16の全断面が圧密材料によって占められる。図2はこの堆積の理想的な形態を示すが、この配置では、流路16に沿った懸濁液の移動に対してクロスフローろ過による脱水が起こる。すなわち、液体は、脱水部24において懸濁液28の中心部34から部分的に脱水され、層32を横方向に通過し、壁12および14の開孔部26に達する。しかし、このろ過形態で安定した運転を維持することは困難である。層32の堆積が不規則になる場合があるだけでなく、中心部34の懸濁液28において部分的に脱水された領域が、圧密材料30の成形体に囲まれる可能性がある。この結果、含水量および圧密度が完全に均一でない押出物が製造される。押出物のグリーン体強度および剛性がその全長にわたって一様でない場合があると同時に、結果的に得られる最終製品が局所的に脆弱であり、目的の用途に適さない可能性がある。
【0045】
図3は、図2に類似しているものの、本発明による運転を示す。主に、図3に図示した配置およびそれによる運転は、図2の説明を参照することで理解されるであろう。そのため、図3に図示したそれぞれの特徴については、図2の対応する参照番号に100を加えた番号を参照番号とする。
【0046】
図3では、脱水部124の長さは比較的短い。図中の脱水部124の長さは、本質的に、開孔部126によって示される。図示された装置として、これは主要な相違である。再び、図3でも、押出時に摩擦部(122)および脱水部(124)で摩擦を低減および制御する手段を図示しない。
【0047】
図3の配置で始動する場合、最初に流路116の出口端に与えられる取り付け具をある期間にわたって保持すると、圧密された粒子材料130の非流動性成形体が脱水部124を越えた位置にまで達する。このため、圧密材料の一部は脱水部124の上流に位置する。また、粒子懸濁液128と圧密材料130の成形体との間の遷移は、壁112および114に囲まれた流路116を横方向に移動する圧密境界36で起こる。結果的に、クロスフローろ過およびこれを可能にするところの壁112および114に沿った層の堆積が除外される。逆に、材料130の成形体のうち、開孔部126の上流かつ入口部120の内部に位置する部分により、定圧ろ過が可能となる。押出時にラム118によって一定の圧力が加えられることにより、流路116の出口端から押出物が排出される速度は、圧密境界36で粒子材料が圧密される速度と適度に合致し、圧密材料130の一部は脱水部124の上流に維持される。このような定圧下において、材料130の上流部分は、液体が脱水部124に向かって長手方向に移動して開孔部126から流出するためのろ床として機能し、定圧ろ過による脱水が実現される。
【0048】
このような定圧ろ過による運転では、ラム118の作動行程で与えられる所与の押出圧力により、式(2)におけるBlake-Kozenyの関係式に基づいた脱水が可能であることが分かる。すなわち、このような所与の圧力では、材料130の成形体のうち、開孔部126の上流に位置する部分を通過する液体の流量は、その部分の長さ、液体の粘度、および材料130の固体の平均粒度によって制御される。押出のために十分に準備された懸濁液の場合、液体の粘度および固体の平均粒度は実質的に一定であろう。これに伴い、材料130のうち、開孔部126の上流に位置する部分の長さを実質的に一定に維持できることが分かる。したがって、押出圧力および押出速度によって押出を制御することができ、安定した押出、特にクロスフローろ過による問題が発生しない押出が可能である。また、定圧ろ過で材料130を通過する液体の流量は押出圧力に応じて増加するため、押出物の質をほとんど変化させることなく、押出速度を上昇させることができる。
【0049】
本発明の安定した押出原理は、図3に図示するように、押出機においてその原理に基づく部分に関する以下の記述から、さらに理解することができる。左側(下流)には、押出機の脱水部124および摩擦部122を占める圧密材料130の成形体を示す。押出物の壁厚はTである。図示された脱水部124は極めて短く、押出機の壁112および114における数組の開孔部126のみからなる。右側(上流)は入口部120であり、入口部120は加圧室(図示せず)に接続するか、または図示されたようにラム118によって加圧される。入口部120は、部分的には粒子懸濁液128で満たされ、かつ部分的には、押出機の入口部120に達した圧密材料130の成形体で満たされる。圧密材料130と粒子懸濁液128との間の遷移部分は圧密境界36であり、脱水部124の上流端から圧密境界36までの距離は圧密長さLである。
【0050】
ラム118の作動行程中、液体は圧密材料130を通過し、材料130はフィルターとして機能するため、粒子懸濁液128は下流方向に連続的に流動する。粒子が圧密境界36で堆積し、圧密境界は上流側に増加する。
【0051】
圧密された押出物は、式(2)に示すような特性を有するフィルターとして機能する。式(2)を並べ替えて書き直すと、以下のようになる:
【化7】


上記の式はダルシーの法則としても知られ、ここで、Qは圧密材料130を通過する液体の合計流量、Aは押出機の流路116の断面積、およびKは、透水係数として知られる、液体の粘度、粒子の粒度、および圧密材料のボイド体積率に関する情報を含む定数である。
【0052】
脱水部124の上流に位置する圧密材料130の体積(ボイドを含む)に対する、脱水によって排水される液体の比率wを導入すると、時間ステップdtにおける液体の流量とそれに対応する圧密長さの増加との間について、以下の関係式が得られる:
【化8】


式(3)および(4)を組み合わせ、それによって得られる微分方程式を圧力一定として解くと、L(t)について以下の式が得られる:
【化9】


これは、地質工学でも知られている、片側排水に関する標準的な解である。本明細書では、定数Cを圧密定数とする。
【0053】
圧密定数Cは、圧密材料130の特性、液体、および圧力にのみ依存する。押出機の圧密方法の分析にあたってCを適用する場合には、押出機の壁112および114の開孔部126が十分に大きく、開孔部126での圧力低下が圧密材料130での圧力低下と比較して小さいと仮定する。また、圧密材料130が開孔部126から上流に向かって適当な距離に達している、すなわち、Lが圧密された押出物の壁厚Tよりも大きいと仮定する。
【0054】
式(5)から、圧密長さの増加速度または圧密速度について以下の式を導くことができる:
【化10】


上記から、押出圧力が一定であれば、圧密速度は時間および圧密長さの増加に応じて減少することになる。
【0055】
押出時、圧密材料130は下流方向に移動する。これは、特定の平均速度Vで行われる。この平均速度は、特定の特徴的な期間にわたって測定すべきである。内部および外部ダイの往復運動によって押出物が移動する場合、平均押出速度は以下のように示される:
【化11】


ここで、fは下流方向へのストロークの長さであり、cは一回の往復サイクル全体を完了するのに要する時間である。
押出速度Vを所与とすると、特定の平均圧密長さは以下のように求めることができる。
【化12】


関係式(8)によると、平均的に、押出機によって圧密材料130が下流側に移動するのと同じ速度で圧密境界36は上流側に増加する。押出速度がわずかに上昇すると圧密長さLがわずかに減少し、逆に押出速度が低下すると圧密長さLが増加することから、この状況は安定的である。
【0056】
理論上、特定の押出速度に対応する圧密長さLが常に存在する。しかし、押出機の入口部の長さL’および押出物の壁厚Tにより、必然的に押出速度は制限される。
【0057】
本発明者らは、実際のところ、脱水原理による押出機を運転する場合、安定した状況を得るには以下の条件を順守する必要があることを発見した:
【化13】


ここで、
【化14】


上記で行った微分は、ダルシーの法則による式(3)において断面積Aが一定であり、かつ壁厚Tに関係しているという仮定に基づく。これは、圧密長さLがごく小さい場合には正当ではない。押出機の壁112および114の開孔部126付近において液体が圧密材料130を通過する流路は、開孔部126の断面積によって示される面積に制限され、圧密長さLが小さくなると、この部分の流路に関する圧力低下が著しくなる。そのため、押出速度の上限は、押出機の壁における開孔部126の構成(寸法および間隔)に影響される。実際に、上限Θおよび下限Φは常にフルスケール試験で確認すべきであるが、ただし、Cに対する線形依存性は常に維持される。
【0058】
式(9)および(10)は、定圧ろ過を利用した脱水押出原理によって安定した押出を行うための条件に相当する。押出機の形状および押出を行う粒子材料に依存する押出速度および押出圧力について、これらの条件が運転モードを規定することが分かる。さらに、上記の条件は押出機の設計(所望の圧力は可能な限り高く、入口部の長さは可能な限り長く、および押出機の壁の開孔部は可能な限り効率的とする)および粒子懸濁液の材料設計(液体透過性係数は可能な限り高く、および液体量は可能な限り少なくする)に関する方向性を示す。
【0059】
実際に、押出機の費用有効性の点で、押出速度を可能な限り上限近くに設定する必要がある。このため、式(9)の上限によって示される、粒子材料の脱水特性を確認することが非常に重要となる。これは、たとえば、下記のように計測機器を備えた定圧ろ過装置の支援によって実現することができる。
【0060】
安定した脱水押出原理を利用して押出を行う粒子懸濁液について、好ましくは、その脱水特性を定期的に確認し、押出の費用有効性を最適化する、すなわち、式(9)および(10)で規定される最大押出速度に近い速度で押出を行う。また、適用する押出速度が下限を十分に上回っていることも重要である。これは、押出を行う粒子懸濁液50に関し、図4に図示されるように適量を円筒容器52に入れることで、実際には容易に行うことができる。容器の底部には開孔部54があるため、粒子懸濁液から液体のみを排水することができる。開孔部54は、開孔部での圧力低下が懸濁液における少量の圧密固体での圧力低下と比較して小さくなるように設計すべきである。ピストン56が容器52の上端に配置され、一定の力で負荷を受けると、懸濁液には押出圧力とほぼ同等の定圧が生じる。力が加えられると、容器の有孔底部で脱水方法が開始される。液体が排水されるにつれて、時間とともにピストン56の変位δが起こる。懸濁液が脱水され、固体が完全に圧密されると、ピストンの変位は停止する。実験中、変位δは時間の関数として測定する。
【0061】
式(5)から、以下が明らかである:
【化15】


さらに、wの定義から、図4を参照しながら説明される圧密実験について以下が分かる:
【化16】


このため、
【化17】


圧密定数Cは、ピストンの変位の二乗を時間に対してプロットし、その傾きを求めることで求められる。そのうえで、以下から圧密定数が求められる:
【化18】


ここで、Lおよびδはそれぞれ圧密固体の最終長さおよびピストンの最終変位である。ピストンの最終変位は排出された液体の量と直接関係するため、実験の前後に試料の重量を測定することで、δに関する情報を正確に得ることができる。
【0062】
図5は、時間の関数として圧密長さの二乗をプロットした一般的なプロット図であり、通常のポルトランドセメントに基づいた一般的なセメント系粒子懸濁液について、予想された線形挙動を示している。線形挙動からの逸脱は、初期段階(完全な接触圧力が得られるまでの段階)および最終段階(圧密境界がピストンに達し、圧密された押出物の粘性変形が起こる段階)で見られる。
【0063】
さらに、加えられる圧力Pに対する圧密定数Cの依存性を調査した。式10の根拠となる理論では、Pに対するCの線形依存性を予測している。これは、各種のセメント系材料について、最大でおよそ15MPaの圧力までほぼ保持されることが実証されている。それ以上の圧力では、おそらくは圧密材料中の毛管流路が圧縮されるため、図6(a)に図示されるように圧密定数Cの増加は鈍化する。圧密圧力Pが10MPaである場合の圧密定数に対する相対的な値として、二つの混合物に関する圧密定数を図6(b)に示すように、圧力に対する圧密定数の直線性が混合物の内容に依存しないことに留意すべきである。
【0064】
安定した脱水押出原理による押出を行う場合、所与の押出圧力で平均押出速度の上下限に達すると、以下の結果がもたらされるであろう:
(a)一般に、入口部の上流における押出機の形状は断面積が増加する特徴を有するため、圧密長さが上流入口部の長さを越えると、通常は押出機が閉塞する(押出速度がとても低くなる)。
(b)押出機において、押出物が十分に脱水されずにウェットパッチが見られるようになり、グリーン材料の強度および剛性が低下する可能性があり、また摩擦部で摩擦が失われ、圧密された押出物の押出が制御されない状態になり、最終的に圧力が低下する可能性がある(押出速度がとても高くなる)。
いずれの状況も極めて望ましくない。しかし、押出速度が上昇すると費用有効性が改善するという事実から、可能な限り高い押出速度を用いることが望ましい。このため、式(9)および(10)の上限を明示的に決定することが重要である。所与の押出機の種類、脱水部における開孔部の構成、押出圧力、および所与の押出物壁厚について、本方法による最大押出速度は圧密定数Cに直線的に依存する。
【0065】
実験用の押出機を使用し、押出圧力を10MPaとしてT=10mmである100mm径の管の押出を行った際に、異なる圧密定数を有する各種のセメント系粒子懸濁液を用いて、様々な押出速度で押出を行ったところ、方法の安定性が観察された。この結果を図7にプロットし、安定した押出速度と不安定な押出速度との間に直線を近似すると、Cと最大押出速度との直線関係が実験でも観察されたことが分かる。また、入口長さを100mmとして計算した最小押出速度も示す。
【0066】
図7の結果と類似した結果を図8に示すが、これは、産業用の押出機を使用し、押出圧力を10MPaとしてT=12mmである管の押出を行って得られた結果である。再び、Cの調査範囲について、安定した押出速度と不安定な押出速度とが直線によって適度な精度で分離される。さらに、実験用の押出機がより効率的な構成を有する、すなわち、C対T比を所与とすると最大押出速度がより高いことは明らかである。最後に、図8では、入口長さを150mmとして計算した最小押出速度も示す。
【0067】
最後に、本明細書に説明された本発明の精神を逸することなく、様々な改変、変形、および/または追加が可能であることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】図1は、Binghamの粘塑性関係式の説明図である。
【図2】図2は、脱水押出を行うための、先行技術による配置の概略図である。
【図3】図3は、脱水押出を行うための、本発明による配置の概略図である。
【図4】図4は、粒状固体のペーストまたは懸濁液の脱水特性を測定するための実験配置の概略図である。
【図5】図5は、時間の関数として圧密長さを示す説明図である。
【図6a】図6aは、押出を行う二種類の代表的なセメント系混合材料について、圧密圧力の関数として圧密定数Cを(a)絶対値としてプロットした説明図である。
【図6b】図6bは、押出を行う二種類の代表的なセメント系混合材料について、圧密圧力の関数として圧密定数Cを(b)圧密圧力が10MPaである場合の圧密定数に対する相対的な値としてプロットした説明図である。
【図7】図7は、実験用の押出機で実際に得られた押出速度とともに、近似した最大押出速度および計算した最小押出速度を示すプロット図である。
【図8】図8は、産業用の押出機で実際に得られた押出速度とともに、近似した最大押出速度および計算した最小押出速度を示す説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体に粒状固体が含まれるペーストまたは懸濁液からグリーン体の押出のための方法であって、
(1)流動性ペーストまたは懸濁液を、少なくとも一つの部分的な液体透過性壁部を有する壁によって規定される成形流路の入口端に導入する工程;および
(2)ペーストまたは懸濁液に圧力を加える工程、それにより;
(i)液体透過性部で差圧を生じさせることで、少なくともペーストまたは懸濁液の液体の大部分を流路から除去し、ペーストまたは懸濁液の圧密された粒状固体の非流動性成形体を流路中に形成すること、および
(ii)流路の出口端から漸次的に非流動性成形体の押出を行うこと;
の工程を含み、
非流動性成形体を、流路の出口端から液体透過性壁部を横切り超える長さに維持するために、圧力の大きさ、液体の除去速度、および押出速度を制御し、液体透過性壁部の上流に成形体の一部を提供し、懸濁液から排出される液体が、液体透過性部の上流に維持された非流動性成形体の一部でろ過される定圧ろ過により、液体を流路から除去する方法。
【請求項2】
所与の押出圧力に対して、以下の押出速度を維持する工程を含む、請求項1記載の方法:
(a)圧密された押出物の壁厚および押出機の壁における開孔部の構成によって決定される、粒状固体の圧密速度を下回り、しかし
(b)成形流路における圧密された押出物の増加に対応する圧密長さに対応する圧密速度を上回る押出速度。
【請求項3】
押出圧力が、実質的に一定に維持され、それにより、圧密された押出物の長さの関数として圧密速度を反映する関係に実質的に準拠して運転が行われる、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
関係が、実験的または実験的な検証によって理論的に決定される、請求項3記載の方法。
【請求項5】
方法が、リアルタイムで監視される、請求項3または4記載の方法。
【請求項6】
圧密された粒子材料の先頭の位置を参照して、方法が、リアルタイムで監視される、請求項5記載の方法。
【請求項7】
方法の基本的なパラメータ依存性が、以下のBlake-Kozenyの関係式によって決定される、請求項3〜6のいずれか1項記載の方法:
【化1】


(μfは懸濁液の液体の粘度、νは懸濁液の液体の空塔線速度、Lは押出物の有効側壁厚、Dは粒子材料の成形体における粒状固体の粒子の有効径、およびεは液体透過性壁部の上流における粒子材料の成形体の一部のボイド体積率)。
【請求項8】
部分的な液体透過性壁部が、成形流路を規定する対向する壁の一つのみに与えられ、有効側壁厚が押出物の全壁厚である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
部分的な液体透過性壁部が、成形流路を規定する対向する壁部のそれぞれに与えられ、有効側壁厚が押出物の全壁厚の半分である、請求項7記載の方法。
【請求項10】
液体透過性壁部の長さが、押出物の全壁厚の2〜10倍である、請求項8記載の方法。
【請求項11】
液体透過性壁部の長さが、押出物の全壁厚の1〜5倍である、請求項9記載の方法。
【請求項12】
圧密された押出物よりも圧力低下が実質的に小さい成形流路の壁における開孔部により、少なくとも一つの部分的な液体透過性壁部が規定される、請求項1〜11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
以下の条件が適用される、請求項1〜12のいずれか1項記載の方法:
【化2】


ここで、
【化3】


(Vは押出速度、Cは圧密定数、L’は液体透過性壁部から上流の流路の長さ、Kは透水係数、Pは液体透過性部の上流における非流動性成形体の一部での圧力低下、wは脱水によって除去される液体の、その一部の非流動性成形体の体積(ボイドを含む)に対する比率、およびTは側壁厚)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−514459(P2008−514459A)
【公表日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−533828(P2007−533828)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【国際出願番号】PCT/AU2005/001516
【国際公開番号】WO2006/034557
【国際公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【出願人】(506172160)
【氏名又は名称原語表記】3H INVENTORS APS
【Fターム(参考)】