説明

粒子分析装置および粒子分析方法

【課題】粒子分析装置において、励起光強度や蛍光物質の濃度、及び周辺環境に影響されることなく、高精度に被検粒子の内部構造に基づく分析を可能にする。
【解決手段】粒子分析装置1は、パルス励起光L1を発生する励起光発生手段10と、被検粒子Dを含む液体71を含む流れFにパルス励起光L1を照射する励起光照射手段20と、パルス励起光L1が照射されることにより被検粒子Dから生じる蛍光Lfを受光する受光手段30と、パルス励起光L1の照射と同期して蛍光Lfを時間分解する時間分解手段40と、時間分解された蛍光Lfを検出する検出手段50と、検出手段50により検出された蛍光Lfの強度から蛍光Lfの蛍光寿命Tfを算出し、蛍光寿命Tfに基づいて被検粒子Dを分析する分析手段60とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フローサイトメータ等の粒子分析装置および粒子分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞等の粒子を分析する装置として、フローサイトメトリーの手法を用いた装置(フローサイトメータ)が用いられている。従来知られているフローサイトメータでは、通常、サンプルから採取された大量の細胞をシース液で包み込んだシース流とすることにより一列に整列させて流し、シース流中の各細胞にレーザ光等の光を照射し、細胞から発せられた蛍光や散乱光を細胞ごとに検出することにより、個々の細胞の同定や、正常・異常等の判別を行う。フローサイトメータには、細胞を分類して回収する分取機能を有するソータータイプのもの(一般にセルソーターと呼ばれる)と、分析機能のみを有し分取機能を有しないアナライザタイプのものがある。フローサイトメータを用いることにより、大量の細胞を高速に分析することが可能になり、統計的な情報を短時間で得ることが可能になる。
【0003】
フローサイトメータにおいて、散乱光による分析では細胞の大きさに関する情報しか得ることができないことから、細胞の同定や正常・異常等の判別を行うためには内部構造の情報を得ることができる蛍光強度による分析が主に行われている。
【0004】
特許文献1及び特許文献2では、蛍光を分光して得られた蛍光スペクトルにより粒子分析を行っている。例えば、特許文献1では。被検粒子からの蛍光を分光手段により波長毎に分離してそれぞれの強度をイメージセンサで測定している。この方法によれば、個々の粒子に対して同時に複数の蛍光強度を測定することができる。
【0005】
また、特許文献3には、共焦点光学系を有するフローサイトメータにおいて、細胞から2光子励起により発せられる蛍光を検出することにより、微小サイズの細胞を分析する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−043090号公報
【特許文献2】特開平2−024535号公報
【特許文献3】特開2004−347608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、蛍光強度や蛍光スペクトルは、励起光波長や強度、蛍光物質の濃度や退色等の影響を受けて変化するうえ、粒子に含まれる複数物質からの蛍光や周囲からの蛍光の影響も分析結果に反映されることから精度の高い粒子分析をすることが難しい。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、励起光波長や強度、蛍光物質の濃度や退色、及び不要な物質の蛍光に影響されることなく、高精度に被検粒子の内部構造に基づく分析が可能な粒子分析装置および粒子分析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の粒子分析装置は、パルス励起光を発生する励起光発生手段と、被検粒子を含む液体の流れに前記パルス励起光を照射する励起光照射手段と、前記パルス励起光が照射されることにより前記被検粒子から生じる蛍光を含む光を受光する受光手段と、前記パルス励起光の照射と同期して前記蛍光を時間分解する時間分解手段と、該時間分解された前記蛍光を検出する検出手段と、該検出手段により検出された前記蛍光から該蛍光の蛍光寿命を算出し、該蛍光寿命に基づいて前記被検粒子を分析する分析手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の粒子分析方法は、被検粒子を含む液体の流れにパルス励起光を照射し、該パルス励起光が照射されることにより前記被検粒子から生じる蛍光を受光し、前記パルス励起光の照射と同期して前記蛍光を時間分解し、該時間分解された前記蛍光から蛍光強度時間分布を検出し、該蛍光強度時間分布を解析して蛍光寿命を算出し、該蛍光寿命に基づいて前記被検粒子を分析するものである。
【0011】
ここで、「分析」とは、被検粒子の同定及び正常・異常の判別を意味する。また、「液体の流れ」とは、生体内に流れる血液やリンパ液等の体液や、流路内を流れる液体試料等を意味する。流れの種類としては特に制限されず、層流や乱流などを含むものとする。
【0012】
ここで、「被検粒子」は、前記パルス励起光照射により蛍光が励起されるものであれば特に限定されず、蛍光標識にて標識された粒子であってもよいし、粒子内部に蛍光物質が含有されるものであってもよい。また、「被検粒子」は、医療・生物分野だけでなく工業分野におけるものでもよいが、生体物質である場合に好ましく適用することができる。
【0013】
本発明の粒子分析装置において、前記励起光照射手段に、前記流れに対して略垂直方向に前記被検粒子上で前記励起光を走査させる走査光学系を含むことが好ましい。更に、前記受光手段により受光した前記蛍光を分光して前記時間分解手段に前記蛍光の蛍光スペクトルを出力する分光手段を備えた構成では、前記時間分解手段により、前記蛍光スペクトルから所定の波長の前記蛍光を時間分解することができる。
【0014】
被検粒子が生体物質である場合は、前記蛍光が前記被検粒子の自家蛍光であることが好ましい。かかる構成では、前記被検粒子をin vivoにて分析することができる。従って、前記液体が生体内の血管中を流れる血液中の粒子分析にも適用することができるので、眼部血管中の細胞の診断等に好ましく適用することができる。
【0015】
また、血液中の粒子分析においては、前記液体の流れが、前記血管から外部に取り出された血液であり、該血液を外部に取り出す第1の流路と、該第1の流路から前記血液を受け入れて前記流れを形成するフローセルと、該フローセルから前記分析後の前記血液を受け入れて該血液を前記血管に戻す第2の流路とを備えた構成としてもよい。
【0016】
また、本発明の粒子分析装置は、前記層流が前記液体をシース液で包んで流したシースフローであり、前記液体を受け入れて前記シースフローを形成するフローセルを更に備えた構成としてもよい。かかる構成では、前記分析手段で得られた分析結果に基づいて、前記被検粒子を分離する粒子分離部を更に備えた構成としてもよい。
【0017】
ここで、「シースフロー」とは、被検粒子を液の流れの略中央部に精度良く一列に整列させて通過させるために、被検粒子を含む試料液の周囲を層流のシース液(電解液)で被覆した流れを意味する。通常、「シース液」としては、試料液の希釈液等を用いることができる。
【0018】
前記蛍光は、多光子励起により励起されるものであってもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の粒子分析装置および粒子分析方法は、蛍光寿命により被検粒子を分析するものである。蛍光寿命は、物質固有の値を持ち、励起光の波長や強度、蛍光物質の濃度や退色等に影響されることなく、周囲の環境によって変化するため、高精度に被検粒子の同定や正常・異常の判断等の内部性質に基づく分析が可能となる。
【0020】
また、被検粒子から種々の物質の蛍光が発せられる場合にも、各物質の蛍光を高精度に分離することができるので、所望の物質からの蛍光を高精度に分析することができる。特に、蛍光スペクトルの時間分解測定を行って蛍光寿命を測定することで、より高精度に各物質の蛍光の分離を行うことができる。
【0021】
また、生体物質の粒子分析の際に、本発明の粒子分析装置および粒子分析方法では、物質固有の値である蛍光寿命により粒子分析を行うため、蛍光強度による粒子分析では、その蛍光強度の弱さから分離が難しく精度の点で分析には不向きとされていた自家蛍光による粒子分析が可能である。自家蛍光により分析では、被検粒子を蛍光色素による染色する必要がないため、染色によるダメージを与えることなく粒子分析をすることができる。 従って、分析後の粒子の再利用やin vivoにおける分析を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施形態による粒子分析装置の概略構成図
【図2A】生物物質中に含まれる主な自家蛍光発光物質の励起光吸収特性を示す図
【図2B】図2Aに示される自家蛍光発光物質の蛍光スペクトルを示す図
【図3】時間分解による蛍光寿命の算出方法を示す図
【図4】本発明の第1の実施形態による粒子分析装置に走査光学系を備えた構成を示す概略構成図
【図5】図4に示される粒子分析装置に更に分光手段を備えた構成を示す概略構成図
【図6】本発明の第2の実施形態による粒子分析装置の概略構成図
【図7】本発明の第2の実施形態による粒子分析装置に流路及びフローセルを備えた構成を示す概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0023】
「粒子分析装置の第1実施形態(フローサイトメータ)」
以下、図面を参照して本発明にかかる第1実施形態の粒子分析装置および粒子分析方法について説明する。図1は、本実施形態の粒子分析装置1の概略構成図である。視認しやすくするため、各部の縮尺は適宜変更して示してある。
【0024】
図1に示されるように、粒子分析装置1は、被検粒子Dを含む試料液(液体)71を含む層流(流れ)Fにパルス励起光L1(以下、励起光L1とする)を励起光照射手段20により照射し、励起光L1が照射されることにより被検粒子Dから生じる蛍光を受光手段30により受光し、所定の蛍光Lfを時間分解手段40により時間分解し、時間分解された蛍光Lfを検出手段50により検出し、検出された蛍光Lfの強度から分析手段60により蛍光強度時間分布を得て蛍光寿命Tfを算出し、蛍光寿命Tfに基づいて被検粒子Dを分析するフローサイトメータである。
【0025】
蛍光寿命の測定方法は、時間領域測定法と周波数領域測定法に大別され、本実施形態においては時間領域測定法を採用する。時間領域測定法には、ストリークカメラ法、時間相関単一光子計数法、時間ゲート法等があるが、本実施形態では、時間ゲート法により蛍光寿命の測定を行う例について説明する。
【0026】
時間ゲート法は、パルス励起光の照射と同期して、発光した蛍光をある時間領域で区切り、その範囲の蛍光強度積分値をCCD等の固体検出器で検出して時間領域を変えて測定することで近似的に蛍光減衰曲線を求めて蛍光強度時間分布を得る方法である。本実施形態では、ビームスプリッタ25により励起光L1から分けられた信号光L2がフォトダイオード44により検出されると、同期制御装置43によりゲートコントローラ42に対して同期信号S1が送られる。ゲートコントローラ42は、同期信号S1を受けて予め設定された所定の時間領域にゲート信号S2を発信し、ゲート機能つきイメージインテンシファイア41を駆動する。ゲート機能つきイメージインテンシファイア41に入力された蛍光像Lfは、ゲート信号S2に応じた時間領域において増強されて、検出手段50により、蛍光Lfの蛍光強度の積分値(蛍光信号)Ltを検出される。この工程をゲート信号S2に応じて繰り返し、分析手段60により単一指数関数による解析を行って蛍光寿命Tfを算出する。
【0027】
蛍光寿命Tfは物質固有の値であり、例えば、細胞に異常があった場合は正常な細胞と値が異なる。例えば、がん細胞は正常細胞と化学的性質が異なるため、蛍光寿命Tfが変化する。更に、蛍光寿命は励起光強度や周辺に存在する別の蛍光により影響を受けないため、精度のよい物質の同定を行うことができる。蛍光寿命測定による物質同定については、例えば特開2002−039943等に記載されている。
【0028】
粒子分析装置1はフローサイトメータであるので、被検粒子Dは、シース液73に包まれたシースフロー(層流)F中で一列に整列し、ほぼ等間隔フローセル75内を流れている。シースフローFを形成するフロー部70は、被検粒子Dを含有する試料液(液体)71を供給する試料液供給部72と、試料液供給部72の周囲に設けられてシース液73を供給するシース液供給部74と、試料液71とシース液73の合流地点に連結された細い管状のフローセル75とを有する。試料液供給部72から試料液71を流すと同時に、試料液71の周囲にシース液供給部74からシース液73を流す。このとき、試料液供給部72にかける圧力をシース液供給部74にかける圧力より若干低く設定することにより、流体力学的な絞り込みが生じ、シース液73に包まれた試料液71の流径が非常に細くなり、試料液71に含まれる被検粒子Dをフローセル75内で一列に整列させてほぼ等間隔で流すことが可能になる。一例として、フローセル75を流れる試料液流の速度は数〜20m/秒、フローセル75の幅は5〜40μmにすることができる。
【0029】
フローセル75の下流側の端部は開口しており、この端部から被検粒子Dを1つずつ含有する液滴57が吐出される。粒子分析装置1はセルソーター型の構成を採用しており、フロー部7は、被検粒子Dを分取するための分取制御手段76、およびフローセル75の下流側に配置された偏向板(分取手段)77a、77bを有している。
【0030】
粒子分析装置1において、励起光発生手段10は、測定する蛍光の励起波長を発振可能なパルスレーザ11と、パルスレーザ11より発振されたパルスを、所定の間隔にて出射させるように間引くパルスピッカー12とを含む。パルスレーザ11は、特に制限されないが、超短パルス光を発振できるレーザであることが好ましく、数十フェムト秒〜数十ピコ秒の時間範囲内でパルス発振可能なレーザであることがより好ましい。パルスレーザ11としては、例えば、発振波長740nmのチタンサファイアレーザの第2次高調波(SHG)である波長370nm、パルス幅3ps、繰り返し周波数80MHz、ピークパワー8kW、平均パワー2W等を用いることができる。また、励起光発生手段10には、第3次高調波(THG)や光パラメトリック発信器(Optical Parametric Oscillator:OPO)等の波長変換素子を備えた構成としてもよい。
【0031】
また、被検粒子D内において励起される蛍光Lfは多光子励起によるものでもよい。その場合は、多光子励起可能な波長及びパルス幅の励起光L1として、発振波長740nmのチタンサファイアレーザ、パルス幅200fs、繰り返し周波数80MHz、ピークパワー30kW、平均パワー0.5W等を用いる。多光子励起では、所望の箇所だけ励起が可能なので、周辺部の蛍光低減ができより低雑音化ができ、また観察箇所より前の部分での吸収減衰を低減できるので効率よく観察箇所に励起光L1を照射することができる。また、高い空間分解能で分析もできる。
【0032】
励起光発生手段10から出射された励起光L1は、励起光照射手段20に入射され、励起光照射手段20により被検粒子Dを含む試料液71を含む層流Fに照射される。励起光照射手段20の構成は特に制限されないが、本実施形態では、励起光L1の照射と被検粒子Dから発生した蛍光Lfを含む光L3の受光を同一の対物レンズ21(31)で行う構成としている。従って、励起光照射手段20には、フローセル75内のシースフローFの所定位置に励起光L1を照射し、且つ、光L3を受光できるように配された対物レンズ21及び、励起光L1を対物レンズ21に入射させ、且つ、光L3を時間分解手段40に導くダイクロイックミラー22(32)を備えている。対物レンズ21としては、励起光L1及び蛍光の透過率が高く、レンズ素材による蛍光の発生の少ないものが好ましい。
【0033】
また、本実施形態では、励起光L1の照射と時間分解手段40を同期して駆動させるため、励起光照射手段20に同期信号S1を発信させる信号光L2を励起光L1から分割させるビームスプリッタ25を、そして、励起光L1を検出する蛍光の励起波長の光に絞り込む励起フィルター23を備えている。励起光照射手段20には、必要に応じて励起光L1を導光するミラー(24,26)やレンズ等(図示略)を備えてよい。
【0034】
受光手段30は、励起光L1の照射により被検粒子Dにおいて生じた光L3を受光して時間分解手段40に目的とする蛍光Lfを出力できれば特に制限されないが、本実施形態では、被検粒子Dから発生した光L3を受光する対物レンズ31(21)と、光L3を時間分解手段40に導くダイクロイックミラー32(22)と、光L3から励起光L1の散乱光等のノイズ光を除去するフィルター33とを備えている。
【0035】
対物レンズ31及びダイクロイックミラー32については上述の通りである。フィルター34は、検出する蛍光Lfの波長に応じて、バンドパスフィルタやショートパスフィルタ等適宜選択して用いればよい。複数種類の蛍光を観測するときは、異なる透過波長帯域を有する複数のバンドパスフィルタを用いたり、あるいは透過波長帯域が可変のものを用いるようにしてもよい。
【0036】
検出する蛍光Lfは、被検粒子Dに予め標識された蛍光色素からの蛍光であってもよいし、被検粒子D自身が有する物質固有の自家蛍光であってもよい。有機系蛍光色素及び無機系蛍光色素を用いた検出は、その蛍光強度の強さから感度のよい検出を行うことができるが、生体に対して毒性を有するものが多く、場合によっては被検粒子を死に至らしめることもあるため、被検粒子Dが生物物質である場合は好ましくない。特に、後記する、第2実施形態のように、直接生体内の被検粒子を測定対象とする場合は、有害物質により標識して分析を行うことは難しい。そのため、生物物質を被検粒子とする場合は、自家蛍光を用いた分析が好ましい。
【0037】
自家蛍光は、その蛍光強度が弱いため、蛍光強度の評価では周辺物質の蛍光等による影響により感度の良い検出を行うことが難しいとされているが、本実施形態の粒子分析装置1では、蛍光の絶対強度での分析ではなく、蛍光寿命により物質の分析を行っている。既に述べたように、蛍光寿命は、蛍光強度の絶対値と異なり、物質固有の値であることから、近い波長で発光される周辺物質の蛍光等により影響されることがない。従って、本実施形態の粒子分析装置1では、精度の高い検出を、自家蛍光により実施することができる。より精度の高い検出を行うためには、蛍光寿命が4.9ns以上の物質の自家蛍光を測定対象とすることが好ましい。
【0038】
表1に、主な自家蛍光物質と、時間相関単一光子計数法(TCSPC)により本発明者が測定した各自家蛍光物質の蛍光寿命値を示す。表1の蛍光寿命は、プロテインと結合していないフリー状態にある蛍光物質の蛍光寿命値である。
【0039】
また、図2A,Bに、主な生物物質中の自家蛍光を発する物質の励起光吸収特性及び蛍光スペクトルを示す。
【表1】

【0040】

受光手段30により得られた蛍光Lfは、時間分解手段40に入力される。時間分解手段40は、蛍光Lfの、所定の時間領域の蛍光信号Ltを取り出して検出手段50に出力するものである。蛍光の時間分解は、励起光L1の照射に対する最初の同期信号S1の受信時t0から開始する。同期信号S1は、励起光L1からビームスプリッタ25により分けられた信号光L2が、光検出器44で電気信号に変換されて同期制御装置43から、ゲートコントローラ42に送られる。
【0041】
光検出器44としては特に制限されず、一般的に用いられているフォトダイオード等を用いることができる。
【0042】
同期制御装置43は、光検出器44から出力された信号を受けてゲートコントローラ42に同期信号S1を出力できれば特に制限なく、パーソナルコンピュータ(PC)等を用いることができる。ゲートコントローラ42は、同期信号S1を受けて予め設定された所定の時間領域にゲート信号S2を発信し、ゲート機能つきイメージインテンシファイア41のゲートの開閉を指示する。ゲート機能つきイメージインテンシファイア41には、CCDカメラ等の検出手段50が接続されており、ゲート信号S2に基づいてゲートを開閉し、ゲートが開いているときに受光した蛍光Lfを増幅させ、コントラストの向上した蛍光信号LtをCCD等の検出手段50により受光して電気信号として蓄積し、検出する。例えば、ゲートコントローラ42が同期信号S1を最初に受けた時刻を基準時刻t0として、時間Δtの間だけゲート機能付きイメージインテンシファイア41のゲートを開くように指示するゲート信号S2を出力すると、ゲート機能付きイメージインテンシファイア41により、t0〜Δtの間の蛍光Lfを増幅させて蛍光信号Ltを検出手段50に出力し、検出手段50は、その時間範囲の蛍光信号Ltを検出して、その蛍光強度の積分値S3を分析手段60に出力する。この蛍光強度S3の検出工程を、ゲート信号に応じて繰り返すことにより、時間分解された蛍光強度を分析手段に出力する。
【0043】
分析手段60としては特に制限ないが、PC等のコンピュータシステムを用いることが簡易であり好ましい。分析手段60は、同期制御装置43とを同じ装置により兼ねてもよい。分析手段60は、時間分解された蛍光強度S3から蛍光減衰曲線を求めて蛍光強度時間分布を得る。この蛍光減衰曲線において、蛍光強度が1/eになった時間tmaxと発光の開始時t0との差を蛍光寿命Tfとして算出する。図3に、時間分解された蛍光強度から得られた蛍光強度時間分布及び蛍光減衰曲線から求められた蛍光寿命Tfを示す。図3において、t0からの経過時間tにおける蛍光強度Iとt0における蛍光強度Iとは、下記式の関係で表される。分析手段60では、S3がある時間tにおける蛍光強度Iとなる。
【0044】
I=I−t/Tf
次に、分析手段60は得られた蛍光寿命に基づいて、被検粒子D内部の分子を同定し、被検粒子Dの内部性質の情報を取得し、被検粒子Dを分析する。ここで、細胞の内部性質とは、細胞を構成する成分(例えばタンパク質や脂質、無機質等)、各成分の分布、各成分の割合、化学的性質等である。分析手段60は、分析の目的に応じ、内部性質や機能の情報を用いて細胞を分析することができる。例えば、ある細胞が正常な細胞であるか癌化した細胞であるか等を蛍光寿命Tfにより分析して判別することが可能である。
【0045】
表示部80は、分析手段60の分析結果を表示するものであり、例えばモニタ装置等により構成することができる。
【0046】
分取制御手段76は、分析手段60と接続され、分析手段60からの情報に基づき、吐出された液滴78に正または負の電荷を選択的に帯電させる。液滴78の進行方向の両側にはそれぞれ正、負の所定電圧が印加され、分取用の異なるラインに接続された偏向板77a、77bが配設されている。帯電した液滴78が偏向板77a、77bの間を通過するときに、帯電の正負に応じて電場の力を受けて偏向板77aあるいは偏向板77bの方向へ偏向されることにより、所望の細胞を分取することができる。分取用のラインとは、例えば、培養実験用に被検粒子Dを回収するライン、分析後の細胞を廃棄するためのライン等である。
【0047】
なお、図1では、偏向板77a、77bの2方向へ分取する粒子分析装置100を図示しているが、正にも負にも帯電されない液滴を分取するためのラインをさらに設け、計3つのラインを備えた構成としてもよい。
【0048】
次に、上記構成を有する粒子分析装置1の動作例について説明する。まず、フロー部7において、被検粒子Dを含有する試料液71がシース液73に包まれてフローセル75内を流れるシースフローFを形成する。シースフローFにおいて、被検粒子Dはフローセル75内を一列に整列した状態で流れていく。
【0049】
励起光発生手段10からは励起光L1が出射されて、励起光照射手段20に入射する。励起光照射手段20に入射された励起光L1は、ビームスプリッタ25により同期用信号光L2を分離した後、に対物レンズ21により集光されて、フローセル75内の試料液71の流れに照射され、各被検粒子Dに照射される。この照射により、被検粒子Dからは蛍光Lfが発せられる。受光手段30の対物レンズ31は、被検粒子Dから発せられた光L3を受光する。光L3には、蛍光Lf以外のノイズ光も含まれているが、フィルタ33を通過することにより、蛍光Lf以外の光がほぼ排除される。
【0050】
蛍光Lfは、ミラー34により光路を曲げられて時間分解手段40に入射され、時間分解された蛍光信号Ltとして検出手段50に出力される。検出手段50は、検出された蛍光信号Ltを、各時間においてΔtの時間範囲の積分値である蛍光強度S3を検出し、電気信号として分析手段60に出力される。分析手段60は、時間分解された蛍光強度S3から蛍光強度−時間曲線を得、この曲線において、蛍光強度が1/eになった時間tmaxとt0との差を蛍光寿命Tfとして算出し、蛍光寿命Tfに基づいて、被検粒子Dの内部構造の情報を取得し、被検粒子Dを分析する。これにより、被検粒子Dに含まれる分子が同定され、被検粒子Dの内部性質の情報が取得され、被検粒子Dの同定や正常・異常等の判別が行われる。分析手段60から分取制御手段76へ分取を指示する信号が送信され、分取制御手段76は分取指示の出された被検粒子Dを含む液滴78に正あるいは負の電荷を帯電させて、分取を行う。本実施形態では分析結果に応じて被検粒子Dの分取を行ったが、分取は行わなくてもよい。
【0051】
上記のように、粒子分析装置1は、蛍光寿命Tfにより被検粒子Dを分析するものである。蛍光寿命Tfは、物質固有の値を持ち、励起光L1の波長や強度、蛍光物質の濃度や退色等に影響されることなく、周囲の環境によって変化するため、高精度に被検粒子Dの同定や正常・異常の判断等の内部性質に基づく分析が可能となる。
【0052】
また、被検粒子Dから種々の物質の蛍光が発せられる場合にも、各物質の蛍光を高精度に分離することができるので、所望の物質からの蛍光Lfを高精度に分析することができる。
【0053】
また、物質固有の値である蛍光寿命により粒子分析を行うため、蛍光強度による粒子分析では、その蛍光強度の弱さから分離が難しく精度の点で分析には不向きとされていた自家蛍光による粒子分析が可能である。自家蛍光により分析では、被検粒子を蛍光色素による染色する必要がないため、染色によるダメージを与えることなく粒子分析をすることができる。従って、分析後の粒子の再利用やin vivoにおける分析を可能とすることができる。
【0054】
上記実施形態では、照射する励起光L1のビーム径に応じた領域の分析を行う形態について説明した。励起光強度が不足し、十分な蛍光強度が得られない場合や、被検粒子Dの粒径が励起光L1のビーム径に比して大きく、ビーム径に応じた領域だけの分析では不十分な場合や、被検粒子Dの粒径が流路径よりもかなり小さく、流れの垂直方向全体の分析ができない場合は、図4に示される粒子分析装置2のように、ビーム径を小さく集光するなどして、励起光照射手段20に、層流Fに対して略垂直方向に被検粒子D上で励起光L1を走査させる走査光学系27を備えた構成とすることにより、被検粒子Dについて2次元の分析を行うことができる。走査光学系を用いない場合として、流れの垂直方向に長いラインビーム集光により励起光L1を照射する構成としてもよい。共焦点系の光学系を構成し、光軸方向への走査手段を備えれば、3次元の分析も行うことができる。
【0055】
かかる構成とする場合は、励起光L1により励起される蛍光の種類が複数になる可能性が高いため、図5に示される粒子分析装置3ように、受光手段30により受光した蛍光Lfを分光して時間分解手段40に蛍光Lfの蛍光スペクトルLsを出力する分光手段35を備えた構成とすることが好ましい。蛍光Lfを分光して蛍光スペクトルLsを時間分解することにより、より高精度に複数の蛍光を分離して所定の波長の蛍光の蛍光寿命を測定することができる。
【0056】
図4又は図5に示される走査光学系を備えた構成は、局所的な励起を行う多光子励起の場合等に、特に好ましく用いることができる。
【0057】
「粒子分析装置の第2実施形態(in vivo測定・眼底カメラ)」
次に、本発明の別の実施形態にかかる粒子分析装置について説明する。第1実施形態の粒子分析装置1は、フローサイトメータであったが、本実施形態の粒子分析装置4は、in vivoにて粒子分析を行う粒子分析装置である点で第1実施形態と異なっている。なお、以降の実施形態の説明および図面においては、前述の実施形態の構成要素と実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0058】
図6に示されるように、粒子分析装置4は、生体内の血管(脈管)90内の細胞(被検粒子)Dを分析するものである。本実施形態において血管90内を流れる血液(液体)71が血流(流れ)Fとなる。
【0059】
粒子分析装置4は、測定する被検粒子Dが生体内の血管90中の細胞であるため、分取等を行わない点を除けば第1実施形態と同様の構成としている。
【0060】
粒子分析装置4は、眼底の血管構造中における異常の有無等の診断に好ましく用いることができる。眼底の血管の診断に用いる場合は、励起光L1の波長等は、眼底に使用可能で、眼組織を過度に損傷させることなく、且つ、診断する脈管に到達可能なものを選択する必要がある。眼底部では、動脈(通常は皮膚の奥にある)、静脈、毛細血管の全ての血管が表層近くにあり、皮膚などでは困難な動脈を流れる血液の検出も容易となる。
【0061】
眼底部の粒子分析においても、第1実施形態において示した光源を用いた分析を行うことができるが、近赤外光を良く透過するので、発振波長800nmのチタンサファイアレーザを利用した多光子励起による分析を行うことが好ましい。この場合、励起光L1のパルス幅は10ピコ秒以下であることが好ましい。第1実施形態において述べたように、多光子励起では、所望の箇所だけ励起が可能なので、周辺部の蛍光低減ができより低雑音化ができ、また観察箇所より前の部分での吸収減衰を低減できるので効率よく観察箇所に励起光を運ぶことができるため、眼部分析等においては特に有効である。また、高い空間分解能での分析も可能となる。
【0062】
また、上記のように、直接血管90中の血流Fの被検粒子Dを分析する以外に、図7に示されるように、被検粒子Dを含む血液71をいったん外部に取り出して粒子分析を行った後に、分析後の血液71をまた生体内に戻す構成としてもよい。例えば、図7に示される粒子分析装置5のように、生体内の血管90に、血管90内を流れる血液71を外部に取り出す第1の流路101と、第1の流路101から血液71を受け入れて血流Fを形成するフローセル75と、フローセル75から分析後の血液71を受け入れて血液71を血管90に戻す第2の流路102を備えた構成とすればよい。実際には、流路101に血液71を取り出すためのポンプや、分析時の血液の凝固等を抑制する抗凝固薬の注入手段等が必要になるが、図7においては記載を省略する。
【0063】
上記したように、上記第1及び第2実施形態の粒子分析装置は、例えば、組織に含まれる正常細胞と癌細胞を分離する際に使用可能である。医療現場等においては、癌細胞が含まれると思われる組織をその周辺領域とともに摘出し、細胞分離試薬により組織から単体の細胞に分離することが行われている。分離された細胞群には正常細胞と癌細胞の両方が存在する。正常細胞と癌細胞では、上述したように蛍光寿命が異なり、蛍光寿命であれば蛍光強度の小さい自家蛍光を利用して、非染色で正常細胞と癌細胞を分離することができる。従来の蛍光強度を用いた分析装置に比べて細胞へのダメージは軽減されるため、分取した癌細胞を培養して株化細胞の作製や、抗癌剤の効果検証等の実験、そして、in vivoでの分析に用いることができる。例えば、培養した細胞を分析して、細胞の大きさや構造に関する情報を得ることにより、細胞の周期を測定することができる。
【0064】
一方、自家蛍光による分析では、様々な物質の蛍光が発せられる可能性が高いが、様々な物質の蛍光が存在しても、上記したように、蛍光スペクトルを時間分解する等の方法を用いて高精度に分離して、所定の波長の蛍光寿命に基づいて分析を行うことができる。
【0065】
また、上記実施形態の粒子分析装置は、癌腫瘍を摘出する際の判断材料を提供することも可能である。癌腫瘍の摘出手術では、癌細胞が患者の身体に残存すると再発の可能性が高まり好ましくないが、再発を恐れるあまり、過剰に組織を切除するのも患者の身体の負担が増大し好ましくない。そこで、摘出腫瘍が接していた領域の組織を微少量切り取り、細胞分離試薬により単体の細胞に分離した後、本発明の粒子分析装置を用いて、癌細胞の有無を調べる。癌細胞が検出された場合はさらなる切除が必要と判断し、癌細胞が検出されなかった場合は摘出が十分であったと判断することができる。
【0066】
上記の株化細胞の作製や、抗癌剤の効果検証は、細胞が新鮮なうちに培養を始める必要がある。また、上記の癌腫瘍の摘出の判断は手術中に短時間で行う必要がある。すなわち、大量の細胞の分析や分取を短時間で行う必要があり、スループットが高い粒子分析装置は有用である。
【0067】
また、上記第2実施形態の粒子分析装置では、血管中の癌細胞の流れ、及びその機能を検出することができるので、癌の転移メカニズムの解明やその診断などにも有用である。
【0068】
また、上述した実施形態の粒子分析装置の用途としては、赤血球、白血球等の血球細胞の分類にも用いることができる。その際には、赤血球に含まれるヘモグロビン量の分析や、5種類の白血球(好中球、好酸球、好塩基球、単球、リンパ球)の分類を行うことができる。この5種類の白血球は、形状が異なるだけでなく、独自の機能を有し、病気により増減する種類が違うため、各種類の増減数を調べて診断材料とすることができる。
【0069】
「設計変更」
以上、本発明による粒子分析装置および方法の好ましい実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない限りにおいて、種々変更することが可能である。
【0070】
例えば、上記実施形態では、測定対象を分取するセルソーター型のフローサイトメータを例にとり説明したが、本発明は分取機能を持たないアナライザ型のフローサイトメータにも適用可能である。また、上記実施形態では、フローセル内を流れる被検粒子に光を照射して分析する例について説明したが、フローセルで覆われてない試料液流中の被検粒子に光を照射して分析するジェット・イン・エア方式のフローサイトメータにも適用可能である。
【0071】
また、上記実施形態では、励起光照射手段20と受光手段30とを同一の対物レンズ等を用いた形態について示したが、受光手段30は、励起光照射手段20と流れFに対して反対側に配置した構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の粒子分析装置及び粒子分析方法は、正常細胞と異常細胞(癌細胞等)の診断及び分離に好ましく用いることができる。
【符号の説明】
【0073】
1,2,3,4,5 粒子分析装置
10 励起光発生手段
11 レーザ(光源)
20 励起光照射手段
27 走査光学系
30 受光手段
35 分光手段
40 時間分解手段
50 検出手段
60 分析手段
70 フロー部
71 試料液(液体、血液)
72 試料液供給部
73 シース液
74 シース液供給部
75 フローセル
76 分取制御手段
77a、77b 偏向板
78 液滴
80 表示部
90 血管(脈管)
101 第1の流路
102 第2の流路
L1 パルス励起光
Ls 蛍光スペクトル
Lf 蛍光
Lt 蛍光信号(蛍光の強度)
Tf 蛍光寿命
D 被検粒子
F 層流(シースフロー、流れ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス励起光を発生する励起光発生手段と、
被検粒子を含む液体の流れに前記パルス励起光を照射する励起光照射手段と、
前記パルス励起光が照射されることにより前記被検粒子から生じる蛍光を含む光を受光する受光手段と、
前記パルス励起光の照射と同期して前記蛍光を時間分解する時間分解手段と、
該時間分解された前記蛍光を検出する検出手段と、
該検出手段により検出された前記蛍光から該蛍光の蛍光寿命を算出し、該蛍光寿命に基づいて前記被検粒子を分析する分析手段とを備えたことを特徴とする粒子分析装置。
【請求項2】
前記受光手段により受光した前記蛍光を分光して前記時間分解手段に前記蛍光の蛍光スペクトルを出力する分光手段を更に備え、
前記時間分解手段が、前記蛍光スペクトルから所定の波長の前記蛍光を前記パルス励起光の照射と同期して時間分解するものであることを特徴とする請求項1に記載の粒子分析装置。
【請求項3】
前記励起光照射手段に、前記流れに対して略垂直方向に前記励起光を走査させる走査光学系を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の粒子分析装置。
【請求項4】
前記被検粒子が生体物質であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の粒子分析装置。
【請求項5】
前記蛍光が、前記被検粒子の自家蛍光であることを特徴とする請求項4記載の粒子分析装置。
【請求項6】
前記被検粒子がin vivoにて分析されるものであることを特徴とする請求項4又は5に記載の粒子分析装置。
【請求項7】
前記液体の流れが生体内の血管中を流れる血液であることを特徴とする請求項6に記載の粒子分析装置。
【請求項8】
前記血管が眼部血管であることを特徴とする請求項7に記載の粒子分析装置。
【請求項9】
前記液体の流れが、前記血管から外部に取り出された血液であり、該血液を外部に取り出す第1の流路と、該第1の流路から前記血液を受け入れて前記流れを形成するフローセルと、該フローセルから前記分析後の前記血液を受け入れて該血液を前記血管に戻す第2の流路とを備えたことを特徴とする請求項7に記載の粒子分析装置。
【請求項10】
前記流れが前記液体をシース液で包んで流したシースフローであり、前記液体を受け入れて前記シースフローを形成するフローセルを更に備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の粒子分析装置。
【請求項11】
前記分析手段で得られた分析結果に基づいて、前記被検粒子を標識する分取制御手段と、前記標識された被検粒子を前記標識応じて分取する分取手段とを更に備えたことを特徴とする請求項10に記載の粒子分析装置。
【請求項12】
前記蛍光が、多光子励起により励起されるものであることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の粒子分析装置。
【請求項13】
被検粒子を含む液体の流れにパルス励起光を照射し、
該パルス励起光が照射されることにより前記被検粒子から生じる蛍光を受光し、
前記パルス励起光の照射と同期して前記蛍光を時間分解し、
該時間分解された前記蛍光から蛍光強度時間分布を検出し、
該蛍光強度時間分布を解析して蛍光寿命を算出し、
該蛍光寿命に基づいて前記被検粒子を分析することを特徴とする粒子分析方法。
【請求項14】
前記蛍光を分光して該蛍光を含む蛍光スペクトルを得、
前記パルス励起光の照射と同期して、前記蛍光スペクトルから所定の波長の蛍光を時間分解することを特徴とする請求項13に記載の粒子分析方法。
【請求項15】
前記流れに対して略垂直方向に前記照射位置を走査して複数箇所の前記液体の流れに前記パルス励起光を照射し、
該パルス励起光が照射されることにより、前記被検粒子の複数箇所から生じる蛍光を受光することを特徴とする請求項13又は14に記載の粒子分析方法。
【請求項16】
前記蛍光が自家蛍光であることを特徴とする請求項13〜15のいずれかに記載の粒子分析方法。
【請求項17】
前記液体の流れが生体内の血管中を流れる血液であることを特徴とする請求項16に記載の粒子分析方法。
【請求項18】
前記血管が眼部血管であることを特徴とする請求項17に記載の粒子分析方法。
【請求項19】
前記液体の流れが、生体内の血管から流路を介して取り出されてフローセル中を流れる血液であり、前記分析後に前記血液を別の流路を介して前記血管内に戻すことを特徴とする請求項17に記載の粒子分析方法。
【請求項20】
前記蛍光が、多光子励起により励起されるものであることを特徴とする請求項13〜19のいずれかに記載の粒子分析方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−185841(P2011−185841A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−53213(P2010−53213)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【出願人】(504173471)国立大学法人北海道大学 (971)
【Fターム(参考)】