説明

粒子径が揃った金属微粉末の製造方法

【課題】 貴金属電極層の製造などに有用な、粒子径が揃った金属微粉末の製造方法を提供すること。
【解決手段】 互いに酸化還元電位の異なる二種の金属(例、AgとPd)の塩を含むコロイド溶液を用意する工程;該コロイド溶液に還元剤を接触させることにより、先ず酸化還元電位の低い金属(例、Ag)の微細粒子を析出させ、次いでその金属の微粒子の周囲に酸化還元電位の高い金属(例、Pd)を析出させて、酸化還元電位の低い金属の微細粒子の周囲が酸化還元電位の高い金属の層で被覆された二重層粒子を生成させる工程;そして、該二重層粒子を含むコロイド溶液に第三の金属(例、Ag−Pd、Pt)の塩と還元剤とを接触させる工程を順次実施することからなる粒子径が揃った金属微粉末の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子径が揃った金属微粉末の製造方法に関する。本発明は特に、表面層としてパラジウム、パラジウム・銀合金、白金、銀、もしくはニッケルからなる金属層を有し、粒子径が揃った金属微粉末の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パラジウム、パラジウム・銀合金、白金、あるいは銀などの微粉末は、コンデンサの電極、センサの電極、あるいはIC回路の電極を形成させるための必須な金属材料である。また、ニッケル微粒子は、固体電解質型燃料電池や水蒸気電解セル等の電極と他の構造部材との電気的な接合のための導電性接合剤として有用である。
【0003】
近年、上記のような各種の電極は、電子部品の小型化と高性能化の要求を受けて、ますます薄膜化する傾向がある。この電極の薄膜化に際しては当然、膜厚の均一な薄膜電極層が要求され、そのためには、粒子径の揃った金属微粉末が必要となる。しかしながら、粒径がミクロン(μm)レベル、そして特にナノメートル(nm)レベルの微粒子となると、粒子径が揃った金属の微粉末が得られにくいと云う問題がある。
【0004】
また、特許文献1に記載されているように、電極を、微細な球状白金粉末とさらに微細な不定形の白金粉末の混合物から製造することにより、高性能の電極を製造する発明も提案されている。このような場合でも、白金粉末のそれぞれが所定の粒子径レベルで粒子径が揃っていることが望ましい。
【0005】
【特許文献1】特開平5−334911号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、特に貴金属電極層の製造などに有用な、粒子径が揃った金属微粉末の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、互いに酸化還元電位の異なる二種の金属の塩を含む水溶液を用意する工程;該水溶液に還元剤を保護コロイドの存在下に接触させることにより、先ず酸化還元電位の低い金属の微細粒子を析出させ、次いでその金属の微粒子の周囲に酸化還元電位の高い金属を析出させて、酸化還元電位の低い金属の微細粒子の周囲が酸化還元電位の高い金属の層で被覆された二重層粒子を生成させる工程;そして、該二重層粒子を含むコロイド溶液に第三の金属の塩と還元剤とを接触させる工程を順次実施することからなる粒子径が揃った金属微粉末の製造方法にある。
【0008】
本発明はまた、酸化還元電位の低い金属の微細粒子の周囲が酸化還元電位の高い金属の層で被覆された二重層粒子を含むコロイド溶液に第三の金属の塩と還元剤とを接触させる工程を順次実施することからなる粒子径が揃った金属微粉末の製造方法にもある。
【0009】
本発明はまた、銀、銅もしくは錫のいずれかからなる核粒子、核粒子の周囲に形成されたパラジウム層、そしてパラジウム層の周囲に形成されたパラジウム、パラジウム・銀合金、白金、銀、もしくはニッケルからなる被覆層からなる金属微粒子にもある。
【0010】
本発明はまた、上記の本発明の金属微粒子の集合体からなる金属微粉末にもある。この金属微粉末の平均粒子径は0.1乃至0.9μmの範囲にあることが好ましく、特に0.2乃至0.8μmの範囲にあることが好ましい。また、本発明の金属微粉末の粒子径の正規分布σgは2.0以下であることが好ましく、1.9以下であることが更に好ましく、1.8以下であることが特に好ましい。
本発明の金属微粉末は、エチルセルローズなどの結合剤とテルピネオールなどの展延剤と共に混合し、ペースト化することにより電極などの導電層の形成に有利に利用できる導電性ペーストとすることができる。
【0011】
本発明はさらに、互いに酸化還元電位の異なる二種の金属の塩を含む水溶液を用意する工程;該水溶液に還元剤を保護コロイドの存在下に接触させることにより、先ず酸化還元電位の低い金属の微細粒子を析出させ、次いでその金属の微粒子の周囲に酸化還元電位の高い金属を析出させて、酸化還元電位の低い金属の微細粒子の周囲が酸化還元電位の高い金属の層で被覆された二重層粒子を生成させる方法にもある。
【0012】
本発明の金属微粉末の製造方法の最終工程である酸化還元電位の低い金属の微細粒子の周囲が酸化還元電位の高い金属の層で被覆された二重層粒子を含むコロイド溶液に第三の金属の塩と還元剤とを接触させる工程では、二重層粒子を含むコロイド溶液と予め還元剤を混合し、次いで、該混合液を混合しながら、この混合液に第三の金属の塩の溶液を添加する方法(以下、逆添加法と云うことがある)、あるいは二重層粒子を含むコロイド溶液を攪拌しながら、この溶液に、還元剤と第三の金属の塩の溶液とを同時に添加する方法(以下、同時添加法と云うことがある)を利用することが好ましい。
【0013】
本発明では、酸化還元電位の低い金属が銀、銅もしくは錫であって、酸化還元電位の高い金属がパラジウムであることが好ましい。第三の金属が、パラジウム、パラジウム・銀合金、白金、銀、もしくはニッケルであることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の金属微粉末の製造方法を利用することにより、簡易な方法で、粒子径が揃った金属微粉末を得ることができる。本発明の金属微粉末は、導電性ペーストとして用いることができ、特に薄膜の電極層を形成する材料として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の粒子径が揃った金属微粉末の製造方法は、互いに酸化還元電位の異なる二種の金属の塩を含む水溶液を用意する第一工程;該水溶液に還元剤を保護コロイドの存在下に接触させることにより、先ず酸化還元電位の低い金属の微細粒子を析出させ、次いでその金属の微粒子の周囲に酸化還元電位の高い金属を析出させて、酸化還元電位の低い金属の微細粒子の周囲が酸化還元電位の高い金属の層で被覆された二重層粒子を生成させる第二工程;そして、該二重層粒子を含むコロイド溶液に第三の金属の塩と還元剤とを接触させる第三工程からなる。
【0016】
本発明は、互いに酸化還元電位の異なる二種の金属の塩と保護コロイドとを含む水溶液に還元剤を接触させることにより、まず酸化還元電位の低い金属の塩を還元して粒子径の揃った金属微細粒子を析出させ、続いて、酸化還元電位の高い金属の塩を、先に析出した金属微細粒子の周囲に析出させることにより粒子径の揃った二重層金属粒子を形成させ、次いで、この二重層金属粒子の周囲に、金属塩の還元を利用して、表面層を形成する金属を析出させ、被覆させる方法を利用して、粒子径が揃った金属微粉末を製造する方法である。本発明の製造方法において、コロイド溶液は、析出あるいは形成された金属微粒子の成長や凝集を抑制して、微粒子かつ高分散の金属微粉末の生成を可能にする。
【0017】
次に、本発明の粒子径が揃った金属微粉末の製造方法の各工程について、詳しく説明する。
まず、互いに酸化還元電位の異なる二種の金属の塩を含む水溶液を用意する。酸化還元電位の異なる二種の金属の組合せとしては、例えば、酸化還元電位が相対的に低い金属としての銀、銅もしくは錫、と酸化還元電位が相対的に高い金属としてのパラジウム、あるいは酸化還元電位が相対的に低い金属としての銅と酸化還元電位が相対的に高い金属としての銀などの組合せを挙げることができる。すなわち、二種の金属の組合せにおける酸化還元電位の高低は相対的なものである。それぞれの金属の塩としては、水溶性の塩が用いられる。ただし、水溶性は必ずしも高くなくてもよい。たとえば、硫酸塩、硝酸塩、塩酸塩、炭酸塩、有機酸、あるいは各種の錯塩などが利用される。酸化還元電位が相対的に低い金属の塩と酸化還元電位が相対的に高い金属の塩との比率は一般に、金属量換算で、1:10乃至1:100000(前者:後者)にあり、好ましくは1:100乃至1:10000の範囲にある。
【0018】
次に、上記の金属塩水溶液に還元剤を保護コロイドの存在下に接触させる。この接触操作の際の温度については特に限定はないが、10〜40℃の範囲の環境温度が好ましく、特に20〜30℃の範囲の温度が好ましい。保護コロイドは、前述のように、金属塩の還元により析出する金属微細粒子の凝集を効率良く防ぐ機能を有する。このような機能を有する保護コロイドとしては、カルボキシメチルセルロール(CMC)などの水溶性セルロース誘導体、ゼラチンなどの蛋白質、そしてポリビニルアルコールなどの合成高分子化合物などの各種の物質が知られている。還元剤としては、ヒドラジンヒドラートなどの有機還元剤を用いることが好ましい。
【0019】
上記の保護コロイド存在下の金属塩水溶液と還元剤との接触により、まず酸化還元電位の低い金属の塩を還元して粒子径の揃った金属微細粒子を析出させ、続いて、酸化還元電位の高い金属の塩を、先に析出した金属微細粒子の周囲に析出させ、その成長を抑制させることにより粒子径の揃った二重層金属粒子を生成させる。
【0020】
次に、上記の二重層金属粒子を含むコロイド溶液に、表面層を形成する第三の金属の塩と還元剤とを接触させて、二重層金属粒子の表面に第三の金属を析出させ被覆する。この接触操作の際の温度については特に限定はないが、10〜40℃の範囲の環境温度が好ましく、特に20〜30℃の範囲の温度が好ましい。第三の金属としては、パラジウム、パラジウム・銀合金、白金、銀、あるいはニッケルなどを挙げることができる。それらの金属の塩としては、硫酸塩、硝酸塩、塩酸塩、炭酸塩、有機酸、あるいは各種の錯塩などが利用される。また、還元剤としては、前記のヒドラジンヒドラートなどの有機還元剤を用いることが好ましい。
【0021】
二重層金属粒子と第三の金属の塩、そして還元剤の保護コロイド存在下での接触方法としては、下記の方法のうちのいずれかを利用することが好ましい。
(1)二重層粒子を含むコロイド溶液と予め還元剤を混合し、次いで、該混合液を混合しながら、この混合液に第三の金属の塩の溶液を添加する(逆添加法)。
(2)二重層粒子を含むコロイド溶液を攪拌しながら、この溶液に、還元剤と第三の金属の塩の溶液とを同時に添加する(同時添加法)。
これらの添加方法の詳細は、特開2002−334614号公報に記載がある。
【0022】
本発明の製造方法により得られる金属微粉末は、酸化還元電位が相対的に低い金属からなる微細粒子核(中心層)、中心層の周囲に形成された酸化還元電位が相対的に高い金属からなる中間層、そして中間層の周囲に形成された表面層からなる三層構成であり、最初に形成される微細粒子核が、金属塩の還元により析出し、その微細粒子核の成長や凝集が保護コロイドの存在により抑制され、従って、水溶液中には、均一な粒子径を持つ微細粒子核群として生成する。また、そのように均一な粒子径を持つ微細粒子核群の核微細粒子核の表面に形成される中間層の成長も保護コロイドの存在により抑制され、また生成する二重層金属粒子の凝集も抑制されるため、粒子径が揃った二重層金属粒子が得られる。さらに、この二重層金属粒子の表面に表面金属層を形成する際にも、保護コロイドが存在しているため、最終的に生成する三重層金属粒子群(金属微粉末)の粒子径も非常に揃ったものとなる。
【実施例】
【0023】
[実施例1]表面層が銀・パラジウム合金の金属微粉末(平均粒子径:0.4μm)の製造
(1)パラジウム塩水溶液の調製
容量500mLのビーカーにジクロロジアンミンパラジウム(II)[cis-[PdCl2(NH3)2](II)]をパラジウム量換算で50gと水300mLとを入れ、マグネチックスターラーで攪拌した。次に、濃アンモニア水(NH4OH)100mLを加えた後、ビーカーをラッピングフィルムにより密閉し、攪拌を1時間続けた。内容物の大部分が溶解したので、溶液を濾過し、次いで水で希釈して、500mLのパラジウム塩水溶液を得た。
【0024】
(2)銀塩水溶液の調製
容量500mLの褐色びんに塩化銀(AgCl)6.67g(銀量換算で5g)とアンモニア水(濃アンモニア水100mLを水で希釈して400mLとしたもの)とを入れ、褐色びんを樹脂フィルムとアルミニウムフォイルとを用いて遮光的に密閉し、マグネチックスターラーで攪拌した。次いで、水を加えて500mLの銀塩水溶液を得た。
【0025】
(3)保護コロイド液の調製
容量5Lのビーカーに水4Lを入れ、この水を激しく攪拌しながら、カルボキシメチルセルロース(CMC)40gを少しずつ加えて、CMC水溶液を得た。ついで、さらに攪拌を1時間続け、保護コロイド液を得た。
【0026】
(4)パラジウム/銀二重層粒子分散液の製造
上記で得た保護コロイド液の全量を攪拌しながら、これにパラジウム塩水溶液を全量(パラジウム量として50g)加え、次に、銀塩水溶液2.5mL(銀量として25mg)を少しずつ加えた。攪拌しながら、攪拌液をゆっくりと加温し、30℃になった時点でこれに、ヒドラジンヒドラート水溶液(15mL/75mL)を加えた。次いで、水溶液混合物を30〜40℃に保温しながら、1時間攪拌した。この操作により、銀微細粒子の周囲にパラジウム層が析出積層したパラジウム/銀二重層粒子分散液が得られた。この分散液は、次いで、樹脂フィルムで密閉して保存した。
【0027】
(5)銀塩・パラジウム塩水溶液の調製
硝酸パラジウム(Pd(NO3)2)水溶液を金属パラジウム換算で60g採取し、これに水500mLを加えて攪拌し、攪拌を続けながらアンモニア水240mLをゆっくりと加えた。次に、固体の硝酸銀を金属銀換算で140gを加え、溶解するまで攪拌を続けた。硝酸銀の溶解を確認して、次にアンモニア水200mLを加え、硝酸パラジウムと硝酸銀との水溶液が透明になるまで攪拌を続けた。攪拌終了後に、硝酸パラジウムと硝酸銀との水溶液に水を加え、液量を1.2Lに調整した。
【0028】
(6)表面層が銀・パラジウム合金の金属微粉末の製造
1%CMC水溶液640mLに上記(4)で得たパラジウム/銀二重層粒子分散液340mLを加え、充分に攪拌した。得られたコロイド液にヒドラジンヒドラート50mLを加え、ついで水を160mL加えた。得られた希釈コロイド液(反応母液)が液温26〜30℃になるように、温度調整した。
上記の温度調整した反応母液に、上記(5)で得た銀塩・パラジウム塩水溶液を、液温が40℃を超えないように注意しながら、60分間かけて少しずつ添加した。添加終了後、反応液を90分間攪拌し、反応の熟成を行なった。
上記の熟成後にCMCを洗浄除去し、生成した金属微粉末を濾過により集め、乾燥した。得られた金属微粉末の電子顕微鏡写真像を図1に示す。この金属微粉末の平均粒子径は0.4μmで、図1から明らかなように、粒子径が非常に揃っていた。そして、この金属微粉末の各微粒子の表面層は、銀・パラジウム合金からなっていた。
【0029】
[実施例2]表面層がパラジウムの金属微粉末(平均粒子径:0.4μm)の製造
(1)パラジウム/銀二重層粒子分散液の製造
実施例1と同じ方法により得たパラジウム塩水溶液、銀塩水溶液、そして保護コロイドを用いて、実施例1に記載の方法により、パラジウム/銀二重層粒子分散液を得た。
【0030】
(2)パラジウム塩水溶液の調製
硝酸パラジウム(Pd(NO3)2)水溶液を金属パラジウム換算で200g採取し、これに水1Lを加えた攪拌し、攪拌を続けながらアンモニア水1.2Lをゆっくりと加えて、パラジウム塩水溶液を得た。
【0031】
(3)ヒドラジンヒドラート水溶液の調製
ヒドラジンヒドラート100mLに水を加えて500mLのヒドラジンヒドラート水溶液を得た。
【0032】
(4)表面層がパラジウムの金属微粉末の製造
1%CMC水溶液890mLに上記(1)で得たパラジウム/銀二重層粒子分散液355mLを加え、充分に攪拌し、30℃に温度調節した。
得られたコロイド液(反応母液)を攪拌しながら、この攪拌液に、上記(2)で得たパラジウム塩水溶液と上記(3)で得たヒドラジンヒドラート水溶液を同時に加えた。添加終了後、液温を30〜40℃に調整しながら、さらに攪拌を1.5時間継続した。
CMCを洗浄除去し、生成した金属微粉末を濾過により集め、乾燥した。得られた金属微粉末の電子顕微鏡写真像を図2に示す。この金属微粉末の平均粒子径は0.4μmで、図2から明らかなように、粒子径が非常に揃っていた。そして、この金属微粉末の各微粒子の表面層は、パラジウム金属からなっていた。
【0033】
[実施例3]表面層がパラジウムの金属微粉末(平均粒子径:0.8μm)の製造
実施例2の(4)の表面層がパラジウムの金属微粉末の製造に際して、パラジウム/銀二重層粒子分散液の使用量を100mLに変えた以外は、実施例2と同じ操作を行ない、図3に電子顕微鏡写真像として示した表面層がパラジウムからなり、平均粒子径は0.8μmで、粒子径が非常に揃った金属微粉末を得た。
【0034】
[実施例4]表面層がニッケルの金属微粉末(平均粒子径:0.2〜0.3μm)の製造
(1)銀塩水溶液の調製
容量500mLのビーカーに硝酸銀(AgNO3)を銀量換算で50gと水300mLとを入れた。次に、アンモニア水100mLを加え、ビーカーを樹脂フィルムで密閉して1時間攪拌し、その後、水を加えて500mLに調整した。
【0035】
(2)銅塩水溶液の調製
硝酸銅(Cu(NO32)を銅量換算で5gをビーカーに入れ、アンモニア水(濃アンモニア水100mLを水で希釈して400mLとしたもの)を加えた。入れた。次に、ビーカーを樹脂フィルムで密閉して1時間攪拌し、その後、水を加えて500mLに調整した。
【0036】
(3)保護コロイド液の調製
容量5Lのビーカーに水4Lを入れ、この水を激しく攪拌しながら、カルボキシメチルセルロース(CMC)40gを少しずつ加えて、CMC水溶液を得た。ついで、さらに攪拌を1時間続け、保護コロイド液を得た。
【0037】
(4)銀/銅二重層粒子分散液の製造
上記で得た保護コロイド液の全量を攪拌しながら、これに銀塩水溶液を全量(銀量として50g)加え、次に、銅塩水溶液2.5mL(銅量として25mg)を少しずつ加えた。攪拌しながら、攪拌液をゆっくりと加温し、30℃になった時点でこれに、ヒドラジンヒドラート水溶液(7.5mL/75mL)を加えた。次いで、水溶液混合物を30〜40℃に保温しながら、1時間攪拌した。この操作により、銅微細粒子の周囲に銀層が析出積層した銀/銅二重層粒子分散液が得られた。この分散液は、次いで、樹脂フィルムで密閉して保存した。
【0038】
(5)ニッケル塩水溶液の調製
容量2Lのビーカーに炭酸ニッケル(NiCO3・2Ni(OH)2・4H2O)を、ニッケル金属量として50g入れ、これに1.5Lの水を加え、ホモジナイザーを用いて、80℃に加温しながら、炭酸ニッケルの分散と粉砕を行なって、微粉状態のニッケル塩が分散されたニッケル塩水溶液を得た。
【0039】
(6)ヒドラジンヒドラート水溶液の調製
ヒドラジンヒドラート100mLに水を加えて500mLのヒドラジンヒドラート水溶液を得た。
【0040】
(7)表面層がニッケルの金属微粉末の製造
1%CMC水溶液1000mLに上記(4)で得た銀/銅二重層粒子分散液300mLを加え、充分に攪拌し、30℃に温度調節した。
得られたコロイド液(反応母液)を攪拌しながら、この攪拌液に、上記(5)で得たニッケル塩水溶液と上記(3)で得たヒドラジンヒドラート水溶液を同時に加えた。添加終了後、液温を30〜40℃に調整しながら、さらに攪拌を継続した。
CMCを洗浄除去し、生成した金属微粉末を濾過により集め、乾燥した。得られた金属微粉末の電子顕微鏡写真像を図4に示す。この金属微粉末の平均粒子径は2〜3μmで、図4から明らかなように、粒子径が非常に揃っていた。そして、この金属微粉末の各微粒子の表面層は、ニッケル金属からなっていた。
【0041】
[実施例5]表面層が白金の金属微粉末(平均粒子径:0.4μm)の製造
(1)パラジウム/銀二重層粒子分散液の製造
実施例1と同じ方法により得たパラジウム塩水溶液、銀塩水溶液、そして保護コロイドを用いて、実施例1に記載の方法により、パラジウム/銀二重層粒子分散液を得た。
【0042】
(2)白金塩水溶液の調製
ジクロロテトラアンミン白金(II)に水を加えて、金属白金換算量200gを含む2.2Lの白金塩水溶液を得た。
【0043】
(3)ヒドラジンヒドラート水溶液の調製
ヒドラジンヒドラート225mLに水を加えて500mLのヒドラジンヒドラート水溶液を得た。
【0044】
(4)表面層が白金の金属微粉末の製造
1%CMC水溶液890mLに上記(1)で得たパラジウム/銀二重層粒子分散液340mLを加え、充分に攪拌し、30℃に温度調節した。
得られたコロイド液(反応母液)を攪拌しながら、この攪拌液に、上記(2)で得た白金塩水溶液と上記(3)で得たヒドラジンヒドラート水溶液を同時に加えた。添加終了後、液温を30〜40℃に調整しながら、さらに攪拌を1.5時間継続した。
CMCを洗浄除去し、生成した金属微粉末を濾過により集め、乾燥した。得られた金属微粉末の電子顕微鏡写真像を図5に示す。この金属微粉末の平均粒子径は0.4μmで、図5から明らかなように、粒子径が非常に揃っていた。そして、この金属微粉末の各微粒子の表面層は、白金金属からなっていた。
【0045】
[実施例6]表面層が白金の金属微粉末(平均粒子径:0.54μm)の製造
(4)の工程において、パラジウム/銀二重層粒子分散液の添加量を100mLに替えた以外は、実施例5と同じ操作を行ない、金属微粉末を得た。得られた金属微粉末の電子顕微鏡写真像を図6に示す。この金属微粉末の平均粒子径は0.54μmで、図6から明らかなように、粒子径が非常に揃っていた。そして、この金属微粉末の各微粒子の表面層は、白金金属からなっていた。この金属微粉末の粒子分布を図7に示す。正規分布50%は0.54μmであり、正規分布σgは1.76であった。
【0046】
[実施例7]表面層が白金の金属微粉末(平均粒子径:0.8μm)の製造
(4)の工程において、パラジウム/銀二重層粒子分散液の添加量を50mLに替えた以外は、実施例5と同じ操作を行ない、金属微粉末を得た。得られた金属微粉末の電子顕微鏡写真像を図8に示す。この金属微粉末の平均粒子径は0.8μmで、図8から明らかなように、粒子径が非常に揃っていた。そして、この金属微粉末の各微粒子の表面層は、白金金属からなっていた。
【0047】
[比較例1]表面層が白金の金属微粉末の製造
実施例5の(2)で得た白金塩水溶液と実施例5の(3)で得たヒドラジンヒドラート水溶液とを混合し、混合終了後、液温を30〜40℃に調整しながら、さらに攪拌を1.5時間継続した。生成した白金微粉末を濾過により集め、乾燥した。得られた白金微粉末の電子顕微鏡写真像を図9に示し、粒子分布を図10に示す。この白金微粉末の正規分布50%は3.8μmであり、正規分布σgは2.06であった。
【0048】
[評価例]導電性ペーストの調製及び電極の製造と評価
実施例5と7及び比較例1のそれぞれで得られた表面層が白金の金属微粉末(白金被覆金属微粉末)を用いて下記の条件で導電性ペーストを調製した。
1)導電性ペーストの基本配合
無機成分/エチルセルロース/テルピネオール=85/2/13(重量比)
ただし、無機成分は、白金被覆金属微粉末/アルミナ微粉末=95/5(重量比)である。
2)調製した導電性ペースト
導電性ペースト1:比較例1の白金被覆金属微粉末を使用。
導電性ペースト2:実施例7の白金被覆金属微粉末(平均粒子径0.8μm)を使用。
導電性ペースト3:実施例5の白金被覆金属微粉末(平均粒子径0.4μm)を使用。
導電性ペースト4:実施例7の白金被覆金属微粉末(平均粒子径0.8μm)と実施例5の白金被覆金属微粉末(平均粒子径0.4μm)とを9:1(重量比)で混合して使用(ペースト中での最密充填を意図)。
3)電極層の形成
導電性ペーストをスクリーン印刷にてセラミック基板に印刷し、これを1550℃、2時間で焼成して厚さ約15μmの電極層を得た。
4)電極層の抵抗値
導電性ペースト1から形成した電極層:60μmΩ・cm
導電性ペースト2から形成した電極層:40μmΩ・cm
導電性ペースト3から形成した電極層:35μmΩ・cm
導電性ペースト4から形成した電極層:20μmΩ・cm
純白金粉末から形成した電極層(参考):17μmΩ・cm
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】実施例1で得られた、パラジウム/銀二重層粒子をパラジウム・銀合金で被覆して得た微粒子粉末(平均粒子径:0.4μm)の電子顕微鏡写真像を示す図である。
【図2】実施例2で得られた、パラジウム/銀二重層粒子をパラジウムで被覆して得た微粒子粉末(平均粒子径:0.4μm)の電子顕微鏡写真像を示す図である。
【図3】実施例3で得られた、パラジウム/銀二重層粒子をパラジウム金属で被覆して得た微粒子粉末(平均粒子径:0.8μm)の電子顕微鏡写真像を示す図である。
【図4】実施例4で得られた、銀/銅二重層粒子をニッケル金属で被覆して得た微粒子粉末(平均粒子径:0.2〜0.3μm)の電子顕微鏡写真像を示す図である。
【図5】実施例5で得られた、パラジウム/銀二重層粒子を白金で被覆して得た微粒子粉末(平均粒子径:0.4μm)の電子顕微鏡写真像を示す図である。
【図6】実施例6で得られた、パラジウム/銀二重層粒子を白金で被覆して得た微粒子粉末(平均粒子径:0.54μm)の電子顕微鏡写真像を示す図である。
【図7】実施例6で得られた、パラジウム/銀二重層粒子を白金で被覆して得た微粒子粉末の粒度分布を示す図である。
【図8】実施例7で得られた、パラジウム/銀二重層粒子を白金で被覆して得た微粒子粉末(平均粒子径:0.8μm)の電子顕微鏡写真像を示す図である。
【図9】比較例1で得られた白金微粉末の電子顕微鏡写真像を示す図である。
【図10】比較例1で得られた白金微粉末の粒度分布を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに酸化還元電位の異なる二種の金属の塩を含む水溶液を用意する工程;該水溶液に還元剤を保護コロイドの存在下に接触させることにより、先ず酸化還元電位の低い金属の微細粒子を析出させ、次いでその金属の微粒子の周囲に酸化還元電位の高い金属を析出させて、酸化還元電位の低い金属の微細粒子の周囲が酸化還元電位の高い金属の層で被覆された二重層粒子を生成させる工程;そして、該二重層粒子を含むコロイド溶液に第三の金属の塩と還元剤とを接触させる工程を順次実施することからなる粒子径が揃った金属微粉末の製造方法。
【請求項2】
酸化還元電位の低い金属の微細粒子の周囲が酸化還元電位の高い金属の層で被覆された二重層粒子を含むコロイド溶液に第三の金属の塩と還元剤とを接触させる工程を順次実施することからなる粒子径が揃った金属微粉末の製造方法。
【請求項3】
二重層粒子を含むコロイド溶液と予め還元剤を混合し、次いで、該混合液を混合しながら、この混合液に第三の金属の塩の溶液を添加することを特徴とする請求項1もしくは2に記載の金属微粉末の製造方法。
【請求項4】
二重層粒子を含むコロイド溶液を攪拌しながら、この溶液に、還元剤と第三の金属の塩の溶液とを同時に添加することを特徴とする請求項1もしくは2に記載の金属微粉末の製造方法。
【請求項5】
酸化還元電位の低い金属が銀、銅もしくは錫であって、酸化還元電位の高い金属がパラジウムである請求項1もしくは2に記載の金属微粉末の製造方法。
【請求項6】
第三の金属が、パラジウム、パラジウム・銀合金、白金、銀、もしくはニッケルである請求項1もしくは2に記載の金属微粉末の製造方法。
【請求項7】
銀、銅もしくは錫のいずれかからなる核粒子、核粒子の周囲に形成されたパラジウム層、そしてパラジウム層の周囲に形成されたパラジウム、パラジウム・銀合金、白金、銀、もしくはニッケルからなる被覆層からなる金属微粒子。
【請求項8】
請求項7の金属微粒子の集合体からなる金属微粉末。
【請求項9】
平均粒子径が0.1乃至0.9μmの範囲にある請求項8に記載の金属微粉末。
【請求項10】
平均粒子径が0.2乃至0.8μmの範囲にある請求項8に記載の金属微粉末。
【請求項11】
粒子径の正規分布σgが2.0以下である請求項9に記載の金属微粉末。
【請求項12】
粒子径の正規分布σgが1.9以下である請求項9に記載の金属微粉末。
【請求項13】
請求項8乃至12のうちのいずれかの項に記載の金属微粉末を含む導電性ペースト。
【請求項14】
互いに酸化還元電位の異なる二種の金属の塩を含む水溶液を用意する工程;該水溶液に還元剤を保護コロイドの存在下に接触させることにより、先ず酸化還元電位の低い金属の微細粒子を析出させ、次いでその金属の微粒子の周囲に酸化還元電位の高い金属を析出させて、酸化還元電位の低い金属の微細粒子の周囲が酸化還元電位の高い金属の層で被覆された二重層粒子を生成させる方法。
【請求項15】
酸化還元電位の低い金属が銀、銅もしくは錫であって、酸化還元電位の高い金属がパラジウムである請求項14に記載の金属微粉末の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【国際公開番号】WO2005/053885
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【発行日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−515931(P2005−515931)
【国際出願番号】PCT/JP2004/017791
【国際出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【出願人】(393017188)小島化学薬品株式会社 (13)
【出願人】(503034548)
【Fターム(参考)】