説明

粒子材料を粉砕するためのローラミル

セメント原材料、セメントクリンカ、および同様の材料など粒子材料を粉砕するためのローラミル(1)の説明を行う。このローラミルは、少なくともローラから生じ、ローラシャフト(6)の長手方向に作用する軸力を、少なくとも部分的に吸収するための力装置(8)を備える。前記力装置(8)は、第1の部分(9)および第2の部分(10)であって、この第1および第2の部分(9、10)が対向する圧力面(9a、10a)を備え、これら両方の圧力面が、その間に区画(11)を形成し、この区画において、第1の部分の圧力面(9a)が、ローラシャフトの長手方向に作用する軸力とは逆方向に配向されるように設けられる第1の部分(9)および第2の部分(10)と、圧力をかけた粘性媒質をこれら対向する圧力面の間の区画に導入するための手段(12)とを備える。これにより、市販のベアリングによってこのように構成することができるローラベアリング上に働く軸力を解放するための、効率的で調整可能な力装置が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[1]本発明は、セメント原材料、セメントクリンカ、および同様の材料など粒子材料を粉砕するためのローラミルに関し、前記ローラミルは、実質的に水平の粉砕台を備え、ローラベアリングによってその中心線の周りを回転し、ローラシャフトに連結されるように構成された少なくとも1つのローラが、その粉砕台と相互作用的に作動する。
【背景技術】
【0002】
[2]前述の種類のローラミルが一般に知られている。こうした種類のローラミルの作動に関しては、ローラベアリングは、外側に向いた軸力に曝されるが、この軸力は、通常、たとえばローラベアリングを球面のローラベアリングとして形成することによって吸収される。しかし、ミルの構成によっては、この軸力がかなりの大きさになることがあり、通常のタイプのローラベアリングを利用することが妨げられる。この問題は、大きいローラミル、特に1つまたは複数のローラが垂直の中心軸の周りを回転するローラミルにおいて特に顕著であるが、それというのも、このことは、遠心力が軸力に非常に大きく寄与することになり、こうしたローラミルでは、この軸力が、1つまたは複数のローラがこうした垂直の中心軸の周りを回転することのないローラミルで発生する軸力の10倍の大きさを超えることがあることを意味するからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
[3]前述の不利な点がなくなる、または著しく軽減されるローラミルを実現することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
[4]少なくともローラから生じ、ローラシャフトの長手方向に作用する軸力を、少なくとも部分的に吸収するための力装置であって、前記力装置が、ローラシャフトの長手方向に対して静止している機械構成部品に取り付けられた第1の部分と、ローラの中心線の周りをローラとともに回転する機械構成部品に取り付けられた第2の部分とを備え、第1の部分および第2の部分が、両方ともローラシャフトの長手方向に対して実質的に垂直に延在する対向した圧力面であって、第1の部分の圧力面が、ローラシャフトの長手方向に作用する軸力とは逆方向に配向されるように設けられ、第2の部分の圧力面が、ローラシャフトの長手方向に作用する軸力と同じ方向に配向されるように設けられる区画をその間に形成する圧力面を備える力装置と、圧力をかけた粘性媒質をこれら対向する圧力面の間の区画に導入する手段とを備えることを特徴とする、導入部で述べた種類のローラミルによって、これが得られる。
【0005】
[5]これにより、市販のベアリングによってこのように構成することができるローラベアリング上に働く軸力を解放するための、効率的で調整可能な力装置が得られる。これの理由は、油などの粘性媒質を区画に導入することにより、この区画内に圧力が形成されるようになり、この圧力が、関連する軸力および圧力面の領域に十分適合し、その結果、ローラベアリングを軸方向において完全にまたは部分的に解放することができることである。
【0006】
[6]この力装置は、原則として任意の適した方式で構成してもよい。したがって、簡略な一実施形態では、力装置の圧力面は、2つの平面のディスク形状の表面から成り、たとえば、油は、中央に導入され、周辺のギャップで排出される。しかし、この力装置をシリンダ内のピストンとして形成して、区画内の油圧に影響を及ぼすことなく、2つの圧力面が互いに対して移動できるようにすることが好ましい。原則として、力装置の2つの部分のうちのいずれが、それぞれピストンおよびシリンダを構成するかは、2次的に重要な問題である。
【0007】
[7]力装置の第1の部分は、原則として、ローラシャフトの長手方向に静止している任意の機械構成部品に取り付けてもよい。しかし、ローラシャフトが静止しており、ローラシャフトの周りをローラが回転するローラミルの一実施形態では、第1の部分がローラシャフトに取り付けられることが好ましい。同様に、力装置の第2の部分は、原則として、ローラの中心線の周りをローラとともに回転する任意の機械構成部品に取り付けてもよい。しかし、第2の部分はローラに取り付けることが好ましい。
【0008】
[8]力装置の好ましい一実施形態では、第1の部分が、ローラシャフトから軸方向に突出し、その最先端の自由端で、内側に向いた圧力面を有するピストン部を備えているシャフトジャーナルを備え、第2の部分が、外側に向いた圧力面を有する内部カバー部分を備え、前記カバー部分が、第1の部分のシャフトジャーナルを導出するための中心孔、および第1の部分のピストン部を取り囲む外側に向いたシリンダ部とともに形成される。こうした実施形態では、ピストン部の周辺縁部とシリンダ部の内壁との間にギャップが存在することになり、そのギャップのサイズは、ローラベアリング上の軸力を解放するために2つの圧力面の間の区画内に形成することのできる圧力の決定要因になる。
【0009】
[9]第1の部分のシャフトジャーナル上のピストン部は、シャフトジャーナルと一体形成してもよく、このシャフトジャーナルは、ローラシャフトと一体形成してもよく、またはローラシャフトに取り付けられた一部分でもよい。ピストン部はまた、たとえば、収縮および/またはロッキングリングによってシャフトジャーナルにしっかりと取り付けられたリング形状のディスクの形をとってもよい。
【0010】
[10]第2の部分のカバー部分内の中心孔には、複数の油封止リングを設けて、この孔を通過する油の量を抑制または制限してもよい。あるいは、中心孔とこの孔を通して導かれるシャフトジャーナルとの間にギャップを形成して、必要に応じてローラベアリングにおいて、より少ない量の油が油受に流れ込むようにすることができる。
【0011】
[11]任意の適切な方式で、2つの対向する圧力面の間の区画内にこの油を導いてもよい。したがって、第1の部分の圧力面内の1つまたはいくつかの貫通開口を介して区画内にこの油を導いてもよい。しかし、この油は、ローラシャフトおよびシャフトジャーナル内に設けられ、区画内で終端となる、少なくとも1つのダクトを介して、この区画に供給されることが好ましい。
【0012】
[12]2つの圧力面の間の区画から排出される油は、簡略な一実施形態では、この区画の下に配置された容器内に集めてもよい。しかし、第1の部分のピストン部と第2の部分のシリンダ部との間のギャップを介して区画から排出される油は、第1の部分のピストン部の外側と第2の部分のシリンダ部の最先端に取り付けられた蓋とによって境界が定められたチャンバ内に集められることが好ましい。後者の実施形態では、集められた油は、ローラシャフトおよびシャフトジャーナル内に設けられたダクトを介して、チャンバから戻してもよい。戻された油は、リサイクルできるように直接油タンクに送ってもよく、または、ローラシャフト内の複数のダクトを介して、ローラベアリングを潤滑するためにローラベアリングに送り、そこから、ローラシャフト内のさらなるダクトを介して油タンクへと先へ送ってもよい。
【0013】
[13]次に、概略的な図面を参照しながら、本発明をさらに詳細に説明することになるが、この唯一の図は、本発明によるローラミルの一実施形態の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[14]この図は、本発明によるローラミル1の一実施形態を示し、このローラミルは、互いに相互作用的に作動する、水平の粉砕台3およびローラ4を備える。ローラ4は、図示した実施形態では放射状の回転ベアリング7aおよび球面の回転ベアリング7bによって構成されるローラベアリング7により、ローラシャフト6の周りを回転する。ローラベアリング7自体は、本発明の一部分ではなく、たとえばスライドベアリングを組み込んで、異なるやり方で構成してもよい。
【0015】
[15]ローラベアリング7上の軸力を解放して、それを市販のベアリングによって構成することができるようにするための、効率的で調整可能な力装置を得るために、本発明によるローラミルは、ローラシャフト6上に取り付けられた第1の部分9と、ローラ4上に取り付けられ、それとともに回転する第2の部分10とを備える力装置8を備える。第1の部分9および第2の部分10は、対向する圧力面9a、10aを備え、両方とも、ローラシャフト6の長手方向に対して実質的に垂直に延在する。2つの圧力面9aおよび10aは、その間に区画11を形成し、この区画中で、第1の部分9上の圧力面9aが、最先端に設けられ、ローラ4へと内側に向き、また第2の部分10上の圧力面10aが、最も奥の位置に設けられ、ローラ4から離れるように外側に向く。ローラミルはさらに、対向する圧力面9aと10aの間の区画11に、圧力をかけた油を導入するための手段12を備える。区画11に油を導入することにより、この区画11内に圧力を形成することが可能になり、この圧力が、関連する軸力および圧力面の領域に十分適合し、その結果、ローラベアリング7が完全にまたは部分的に解放される。
【0016】
[16]力装置8の図示した好ましい実施形態では、第1の部分9は、ローラシャフト6から軸方向に突出するシャフトジャーナル14、および内側に向いている圧力面9aを有するピストン部15を備え、第2の部分10は、外側に向いた圧力面10aおよびシャフトジャーナル14を導出するための中心孔17を有する内部カバー部分16、ならびにピストン部15を取り囲む外側に向いたシリンダ部18を備える。ピストン部15の周辺縁部とシリンダ部18の内壁との間にギャップ19が存在する。ギャップ19は、ローラベアリング上の軸力を解放するために区画11内に形成することのできる圧力の決定要因である。
【0017】
[17]図に示すように、ピストン部15は、ロッキングリング20によりシャフトジャーナル14にしっかりと取り付けられた、リング形状のディスクから構成される。
[18]図に示した実施形態では、カバー部分16内の中心孔17には、いくつかの油封止リング21を設けて、この孔17を通過する油の量を低減させる。
【0018】
[19]図に示すように、ローラシャフト6およびシャフトジャーナル14内に設けられ、区画11内で終端となるダクト12を介して、区画11内に油が導入される。
[20]図に示した実施形態では、油は、ピストン部15とシリンダ部18の間のギャップ19を介して区画11から排出され、ピストン部15の外側と、第2の部分のシリンダ部18の最先端に固定された蓋23とによって境界が定められたチャンバ22内に集められる。ここから、集められた油は、ローラシャフト6内のダクト24および複数のダクト25を介して、ローラベアリング7に送られて、これを潤滑してから、ローラシャフト6内のさらなるダクト26を介して、リサイクルできるように油タンク(図示せず)に送られる。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント原材料、セメントクリンカ、および同様の材料など粒子材料を粉砕するためのローラミル(1)であって、実質的に水平の粉砕台(3)を備え、ローラベアリング(7)によってその中心線の周りを回転し、ローラシャフト(6)に連結されるように構成された少なくとも1つのローラ(4)が、その粉砕台と相互作用的に作動するローラミルにおいて、
前記ローラミルが、少なくとも前記ローラから生じ前記ローラシャフト(6)の長手方向に作用する軸力を、少なくとも部分的に吸収するための力装置(8)を備え、
前記力装置(8)が、前記ローラシャフト(6)の前記長手方向に対して静止している機械構成部品に取り付けられた第1の部分(9)と、前記ローラの中心線の周りをローラとともに回転する機械構成部品に取り付けられた第2の部分(10)とを備え、前記第1の部分および第2の部分(9、10)が、対向した圧力面(9a、10a)を備え、前記圧力面(9a、10a)は両方とも前記ローラシャフト(6)の前記長手方向に対して実質的に垂直に延在し、区画(11)をその間に形成し、前記第1の部分(9)の前記圧力面(9a)が、前記ローラシャフト(6)の前記長手方向に作用する前記軸力とは逆方向に配向されるように設けられ、前記第2の部分(10)の前記圧力面(10a)が、前記ローラシャフト(6)の前記長手方向に作用する前記軸力と同じ方向に配向されるように設けられる、
前記ローラミルがさらに、圧力をかけた粘性媒質を前記対向する圧力面(9a、10a)の間の前記区画(11)に導入するための手段(12)を備えることを特徴とするローラミル。
【請求項2】
前記力装置(8)が、シリンダ(18)内のピストン(15)として形成されることを特徴とする、請求項1に記載のローラミル。
【請求項3】
前記力装置(8)の前記第1の部分(9)が、前記ローラシャフト(6)上に取り付けられること、および、前記第2の部分(10)が、前記ローラ(4)上に取り付けられることを特徴とする、請求項1または2に記載のローラミル。
【請求項4】
前記力装置(8)の前記第1の部分(9)がシャフトジャーナル(14)を備え、前記シャフトジャーナル(14)が前記ローラシャフト(6)から軸方向に突出し、その最先端の自由端で、内側に向いた圧力面(9a)を有するピストン部(15)を備え、前記力装置(8)の前記第2の部分(10)が、外側に向いた圧力面(10a)を有する内部カバー部分(16)を備え、前記カバー部分(16)が、前記第1の部分の前記シャフトジャーナル(14)を導出するための中心孔(17)、および前記第1の部分の前記ピストン部(15)を取り囲む外側に向いたシリンダ部(18)とともに形成されることを特徴とする、請求項1、2または3に記載のローラミル。
【請求項5】
前記ピストン部(15)の周辺縁部と前記シリンダ部(18)の内壁との間にギャップ(19)が設けられることを特徴とする、請求項4に記載のローラミル。
【請求項6】
前記ピストン部(15)が、収縮および/またはロッキングリング(20)によって前記シャフトジャーナル(14)にしっかりと取り付けられたリング形状のディスクによって構成されることを特徴とする、請求項4に記載のローラミル。
【請求項7】
前記第2の部分(10)の前記カバー部分(16)内の前記中心孔(17)には、複数の油封止リング(21)が設けられることを特徴とする、請求項4に記載のローラミル。
【請求項8】
前記粘性媒質が少なくとも1つのダクト(12)を介して前記区画(11)に供給され、前記ダクト(12)は前記ローラシャフト(6)および前記シャフトジャーナル(14)に設けられ、前記区画(11)内で終端となる、ることを特徴とする、請求項4に記載のローラミル。
【請求項9】
前記第1の部分の前記ピストン部(15)と前記第2の部分の前記シリンダ部(18)との間の前記ギャップ(19)を介して前記区画(11)から排出される前記粘性媒質が、前記第1の部分の前記ピストン部(15)の外側と前記第2の部分の前記シリンダ部(18)の最先端に取り付けられた蓋(23)とによって境界が定められたチャンバ(22)内に集められることを特徴とする、請求項5に記載のローラミル。
【請求項10】
前記集められた油が、前記チャンバ(22)から、前記ローラシャフト(6)および前記シャフトジャーナル(14)の中に設けられたダクト(24)を介して戻されることを特徴とする、請求項9に記載のローラミル。
【請求項11】
前記ローラシャフト(6)の複数のダクト(25)を介した前記戻された油が、前記ローラベアリングを潤滑するために前記ローラベアリング(7)に送られ、そこから、前記ローラ(6)内のさらなるダクト(26)を介して先に送られることを特徴とする、請求項10に記載のローラミル。

【公表番号】特表2012−509839(P2012−509839A)
【公表日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−538078(P2011−538078)
【出願日】平成21年11月2日(2009.11.2)
【国際出願番号】PCT/IB2009/054862
【国際公開番号】WO2010/061304
【国際公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(510001021)
【Fターム(参考)】