説明

粒子状の混合リチウム金属リン酸塩材料から粒子状汚染物質を除去する方法

本発明は、a)粒子状汚染物質及び質量xm(x>100)を有する微細な粒子状混合リン酸リチウム金属を含む粒子状の混合リチウム金属リン酸塩材料を供給し、b)粒子状の混合リチウム金属リン酸塩材料が平均質量mを有するように流動ステージに供給して流動化し、c)流動化された粒子状の混合リチウム金属リン酸塩材料を選別ステージに供給してそれを通過させ、d)10から100回質量mが供給された後、粒子状のリチウム金属リン酸塩材料を流動ステージに供給することを中止し、e)流動ステージに存在する物質の質量が質量mの10%から100%になるまで、供給中止後に流動ステージに存在する物質を流動化し選別し、f)流動ステージから残渣物質を取り除くことを含み、合計質量xmが処理されるまでステップb)からf)のシーケンスが繰り返される、粒子状の混合リチウム金属リン酸塩材料から粒子状汚染物質を除去する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子状の混合リチウム金属リン酸塩材料から粒子状汚染物質を除去する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池の他の陰極材料として合成混合リチウム遷移金属リン酸塩(特にリン酸鉄リチウム(LiFePO)を使用することは、先行技術によって知られており、多くの研究努力がなされている。このことはA. K. Padhi, K. S. Nanjundaswamy, J. B. Goodenough, J. Electrochem. Soc. Vol. 144 (1997)に初めて記載され、また、例えばUS 5,910,382にも開示されている。
【0003】
今まで、不純物をドープした及びドープしていないリチウム遷移金属リン酸塩を得るための多くの合成方法が記述されてきた。
【0004】
WO 02/099913 A1は、混合固体を生成するためにLi、Fe3+及びPO3−のモル水溶液から水を蒸発させ、その後、純粋な混合Li/Feリン酸塩前駆体を生成するために500℃以下の温度で混合固体が分解される方法を開示する。それから、純粋なLiFePO粉末のフェイズは、還元雰囲気中で800℃以下の温度で前駆体に反応を生じさせることによって得られる。
【0005】
また、固体状のプロセスが先行技術によって知られている。欠点としては、第1に、出発化学物質(例えばシュウ酸鉄)の高い材料費が挙げられる。焼結プロセスの間の保護ガスの消費もかなり多く、また、例えばCOのような有毒な副産物が焼結の間に生成される。このようにして得られる生成物の粒子粒度分布(particle size distribution)がしばしば非常に広範であり、かつ二峰性である(bimodal)ということも発見された。更なる生成プロセスは、例えば、WO 02/083555、EP 1 094 523 A1、US 2003/0124423及びFranger et al.,Journal of Power Sources 119−121(2003),pp.252−257によって知られている。
【0006】
特開2002−151082には、リン酸鉄リチウムを生成する方法及びそれを用いる二次電池が記載されている。リン酸鉄リチウムを生成する当該方法は、リチウム化合物、二価鉄化合物及びリン酸化合物が、少なくとも二価鉄イオンとリン酸イオンとのモル比が約1:1であるような方法で互いに混合され、そして、当該混合物は、極性溶媒と不活性ガスとが追加された密閉された容器の中で、少なくとも100℃から最高200℃までの温度範囲で反応させられるという点で特徴付けられる。このようにして得られるリン酸鉄リチウムは、その後物理的に粉砕されることができる。
【0007】
先行技術に基づくプロセスを用いてすでに利用可能なリン酸鉄リチウムを得ることができるにもかかわらず、前記生成プロセスでは、非常に小粒径で、かつ、非常に狭範囲の粒子粒度分布を有する粉末状リン酸鉄リチウムを得ることができないという欠点がある。
【0008】
先行技術の前記欠点を回避し、とりわけ充電式電池の電極に特に適した材料を提供するために、例えばリン酸鉄リチウムのような混合リチウム金属リン酸塩を生成する方法がUS 2007/0054187 A1に記載されている。
【0009】
US 2007/0054187 A1に基づくプロセスは、沈殿物を生成し、その後、混合前駆体(precursor mixture)又は懸濁液(suspension)の沈殿物の粒子のD90値が50μm未満となり、水熱状況下での反応によって混合前駆体又は懸濁液からLiMPOを得るまで、混合前駆体又は懸濁液を分散させ又はミリングする前駆体懸濁液を生成するために、Mが第一遷移系列のうち少なくとも1つの金属からなり、少なくとも1つのLi源、少なくとも1つのM2+源及び少なくとも1つのPO3−源を含む混合前駆体を生成することによって実行される。
【0010】
US 2007/0054187 A1によって得られるLiMPO生成物は、充電式電池の電極材料として用いられるために満足な特性を備える。
【0011】
しかしながら、実際にはUS 2007/0054187 A1によって得られるLiMPO生成物を用いると、前記LiMPO生成物とともに生成されるリチウムイオンセルは、しばしば自己放電と欠陥率の増加という問題を生じることに注意されたい。前記リチウムイオンセルのために用いられるLiMPO生成物を分析すると、それらが、特に金属及び/又は酸化物(酸化)粒子汚染、例えば前記LiMPO生成物の粒度を超える平均粒度を有するLiFePOの場合にはFe及びFe酸化物のような粒子汚染を含むことが判明した。LiMPO生成物に基づく前記粒子汚染の量は1ppm〜10ppmの範囲であった。
【0012】
自己放電の増加の発生と前記LiMPO生成物に伴って生成されるリチウムイオンセルの欠陥率とを下げ、好ましくはこれらを除去するために、前記LiMPO生成物から前記粒子汚染を除去するためのシンプルで有効な方法を提供する必要がある。
【0013】
粒子汚染が粒子状物質より大きな粒径を有する粒子状物質から粒子汚染を取り除く従来の技術によれば、流動床の汚染された粒子状物質は、例えばサイクロン又は選別ホイール(sifting wheel)のような選別装置(sifting device)に連続的に通される。この技術によれば、粒子状物質のより微細な粒子が、流動床に阻まれた粒子汚染の粗い粒子から分離される。汚染された粒子状物質が流動化/選別される前に製粉される場合において、金属粒子のような製粉されにくい粒子汚染は、大きな状態を保って流動床で多少堆積されるため、主要物質ほど容易にはふるいを通過しないことも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第5,910,382号明細書
【特許文献2】国際公開第02/099913号
【特許文献3】国際公開第02/083555号
【特許文献4】欧州特許出願公開第1094523号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2003/0124423号明細書
【特許文献6】特開2002−151082号公報
【特許文献7】米国特許出願公開第2007/0054187号明細書
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】A. K. Padhi, K. S. Nanjundaswamy, J. B. Goodenough, J. Electrochem. Soc. Vol. 144 (1997)
【非特許文献2】Franger et al.,Journal of Power Sources 119−121(2003),pp.252−257
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上述した従来の技術が粒子状の混合リチウム金属リン酸塩材料から粒子状汚染物質を除去するために用いられるとき、従来の技術は、大量の、好ましくは基本的にすべての粒子状汚染物質を粒子状の混合リチウム金属リン酸塩材料から除去するのに十分に効果的でないことが分かった。
【0017】
したがって、本発明の基礎をなす課題は、粒子状の混合リチウム金属リン酸塩材料から粒子状汚染物質を除去するための更なる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記課題は下記ステップからなる粒子状の混合リチウム金属リン酸塩材料から粒子状汚染物質を除去する方法によって解決される。
【0019】
a) 粒子状汚染物質及び質量(mass)xm(x>100)を有する微細な粒子状混合リン酸リチウム金属を含む粒子状の混合リチウム金属リン酸塩材料を提供し、
【0020】
b) 粒子状の混合リチウム金属リン酸塩材料を流動ステージに供給し、流動ステージにおいてそれらを流動化し、
【0021】
c) 流動化された粒子状の混合リチウム金属リン酸塩材料を選別ステージに供給し、それらに選別ステージを通過させ、
【0022】
d) 質量mが10から100回流動ステージに供給された後、粒子状の混合リチウム金属リン酸塩材料の流動ステージへの供給を中止し、
【0023】
e) 前記流動ステージに存在する前記物質の質量が質量mの10%から100%になるまで、前記供給の中止後に流動ステージに存在する前記物質を流動化し選別し、
【0024】
f) 前記流動ステージから前記残渣物質を取り除くこと
【0025】
を含み、合計質量xmが処理されるまでステップb)からf)のシーケンスが繰り返される。
【0026】
本発明の文脈において、mは流動ステージで使用される流動床チャンバ(fluidized bed chamber)の充填レベル(filling level)(物質の平均質量)を意味する。複数の流動床チャンバが用いられる場合、mはすべての流動床チャンバの充填レベルを意味する。
【0027】
驚くべきことに、本方法によれば、粒子状の混合リチウム金属リン酸塩材料から粒子状汚染物質を除去し、粒子状の混合リチウム金属リン酸塩材料の中に残存する粒子状汚染物質の量を、粒子状の混合リチウム金属リン酸塩材料の1ppm未満、より好ましくは0.1ppm未満、より好ましくは0.02ppm未満にすることが可能であることが分かった。
【0028】
本方法の好ましい実施形態によれば、質量mが流動ステージに20から85回、好ましくは30から70回、とりわけ40から60回供給された後、流動ステージへの粒子状の混合リチウム金属リン酸塩材料の供給が中止される。
【0029】
本方法の好ましい実施形態によれば、流動ステージに存在する物質は、供給を中止した後に、流動ステージに存在する物質の質量が質量mの20%から80%、好ましくは30%から70%、とりわけ40%から60%になるまで流動化され、選別される。流動ステージは、好ましくは、いくつかの、すなわち2つか3つのそのような流動床チャンバを用いる本発明の更なる実施例において実施されてもよい。
【0030】
粒子状の混合リチウム金属リン酸塩材料は、微細な粒子状の混合チウム金属リン酸塩と粒子状汚染物質とを含む。
【0031】
本方法の更に好ましい実施形態によれば、混合リン酸リチウム金属は式LiMPOによって表示され、ここで、MはFe,Sc,Ti,V,Cr,Mn,Co,Ni,Cu,Zn,Be,Mg,Ca,Sr,Ba,Al,Zr,La及び希土類金属並びにこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの金属から選択されてもよい。
【0032】
Mは合成LiMPOにおける2つ以上の遷移金属を示すことも可能である。例えば、LiFePO中の鉄は,Mn,Co,Ni,Mg,Nb,Ta,Sc,Zr,Zn及び希土類金属のような上記の群から選択された1つ以上の他の金属によって部分的に置換されてもよい。
【0033】
したがって、本方法の更に好ましい実施形態によれば、MはFe,Mn,Co及び/又はNiから選択される。
【0034】
本方法の更に好ましい実施形態によれば、MはFeである。すなわち、混合リン酸リチウム金属はLiFePOである。
【0035】
本方法の更に好ましい実施形態によればMはFeであり、そして、更なる遷移金属はMg又はNbである。すなわち、混合リン酸リチウム金属はx≦0.5であるLiFe1−xMgPO又はLiFe1−xNbPOである。
【0036】
本方法のまた更なる好ましい実施形態によれば、微細な粒子状の混合リン酸リチウム金属は、最大で25μm、より好ましくは20μm、特に好ましくは15μmのD90値を有する粒子からなる。
【0037】
前記粒子の中間(平均)粒径(D50)値は、好ましくは0.8μm未満であり、より好ましくは0.7μm未満、とりわけ0.6μm未満であり、最も好ましくは0.5μm未満である。粒子粒度分布は、好ましくは少なくとも実質的には正規分布(単峰性)である。
【0038】
前記粒子のD10値が0.35μm未満、好ましくは0.40μm未満であることがより好ましいが、狭い粒子粒度分布においてはD90値に応じてより高い値であってもよい。D90値は、好ましくは3.0μm未満、好ましくは2.5μm未満、とりわけ2.0μm未満である。
【0039】
微細な粒子状の混合リン酸リチウム金属の粒子粒度分布は非常に狭いことが好ましい。したがって、D90値とD10値との差は、好ましくは2μm未満、好ましくは1.5μm未満、とりわけ1μm未満、最も好ましくは0.5μm未満である。
【0040】
本方法で用いられるLiMPOの粒子粒度分布は、市販の器材を用いた光散乱によって測定される。当業者はこれらの方法に精通しており、また、この文脈において、関連の記述は特開2002−151082号公報及びWO 02/083555に開示されている。本件の場合、粒子粒度分布は、測定ユニットとしてのレーザー回折測定装置(Mastersizer S, Malvern Instruments GmbH, Herrenberg, DE)及びMalvern Small Volume Sample Dispersion Unit, DIF 2002にかかる当該製造業者のソフトウェア(バージョン2.19)によって測定された。以下の測定条件が選択された。圧縮範囲;活性光線長2.4mm;測定範囲:300RF;0.05から900μm。試料作成と測定は製造業者の指示に従って行われた。
【0041】
90値は、測定されたサンプルの粒子の90%が当該値より小さい又は同じ粒径を持つような値を示す。したがって、D50値とD10値とは、測定されたサンプルの粒子の50%と10%とが、これらの値より小さ1又は同じ粒径を持つような値を示す。
【0042】
本方法の更に好ましい実施形態によれば、粒子状汚染物質は金属物質及び/又は金属酸化物質である。粒子状汚染物質を形成する金属材料及び/又は金属酸化物質の種類は、使用された特定の微細な粒子状の混合金属リン酸塩リチウムに依存する。例えばLiFePOの場合、粒子状汚染物質は金属のFe粒子及び/又はFe,Feなどのような酸化鉄を含む。
【0043】
粒子状汚染物質の平均粒度は、微細な粒子状の混合リン酸リチウム金属の平均粒度より大きい。特に、粒子状汚染物質の平均粒度は少なくとも50μm、好ましくは少なくとも60μm、とりわけ少なくとも70μmである。
【0044】
本方法の更に好ましい実施形態によれば、流動ステージは流動床チャンバである。当業者は、上述した汚染された微細な粒子状の混合リン酸リチウム金属を流動化するために適するように設計された流動床チャンバについて良く知っている。流動化は、例えばノズル又は分配板(distribution plate)によって、もしくは例えばローターシステムによる機械的衝撃力によって注入される空気又は他の通常の流動ガスによって実現されてもよい。
【0045】
さらに、選別ステージでは、それらの大きさ及び/又は密度に応じた粒子の分類にふさわしいどのような装置も用いることができる。選別ステージとして適切な装置は、したがって、分類ホイール(classifier wheels)、空気流ふるい(airstream sifter)及びサイクロン(cyclones)である。
【0046】
本方法の更に好ましい実施形態において、本方法は、ステップa)とb)との間又はステップb)とc)との間に、ミリングステージにおいて粒子状の混合リチウム金属リン酸塩材料をミリングするステップb1)を追加的に含む。
【0047】
ミリングステージは、粒子状の混合リン酸リチウム金属から粒子状汚染物質を容易に除去するために粒子状の混合リチウム金属リン酸塩材料の粒子を小さくする(deagglomerate)のに役立つ。
【0048】
ミリングステージは、好ましくはジェットミルによって実現される。本発明の目的のために、当業者が適切であると考えるどのようなジェットミルも用いることができる。
【0049】
本方法のまた更なる好ましい実施形態によれば、流動ステージ、選別ステージ、及び任意のミリングステージは別々のステージである。この場合、流動化された粉は、空気圧式運搬チューブによって及び/又は重力によって運搬されてもよい。
【0050】
本方法の更に好ましい実施形態において、流動ステージ、選別ステージ及び任意のミリングステージは、1台の装置に集積される。本発明の目的のために、当業者が適切であると考える、コンビネーションとして流動ステージ、選別ステージ及び任意のミリングステージを含むどのような装置も用いることができる。
【0051】
本方法を実施するために、例えば、Hosokawa Alpine AG, Augsburg, Germany製の「Fluidized Bed Opposed Jet Mill AFG200」型のジェットミルが用いられてもよい。
【0052】
本方法の更に好ましい実施形態によれば、摩耗を減らし、これにより対応するステージの耐用期間を長くするために、流動ステージ、選別ステージ及び任意のミリングステージは摩耗防止のためのゴムライニング及び/又はセラミック部品を含む。
【0053】
都合のよいことに、流動ステージは、ステップf)において流動ステージの在中物を取り除くための自動イジェクト弁(automatic eject valve)を含む。
【0054】
自動イジェクト弁は、本方法の汚染物質除去効果を達成をするために定期的に流動ステージのすべての在中物を取り出すのに役立つ。
【0055】
さらに、流動床チャンバの充填率が選別ステージの効率に影響する可能性があるため、重量管理による充填率の制御、選別ステージで要求されるパワーの制御又はこの目的のための適切な他のいかなるタイプの制御も好ましい。
【発明の効果】
【0056】
本方法によれば、粒子状の混合リチウム金属リン酸塩材料から粒子状汚染物質を除去し、粒子状の混合リチウム金属リン酸塩材料の中に残存する粒子状汚染物質の量を、粒子状の混合リチウム金属リン酸塩材料の1ppm未満、より好ましくは0.1ppm未満、より好ましくは0.02ppm未満にすることが可能である
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1A】本実施例で得られる最終生成物のサンプルのSEM/BSE(BSE=back scattered electron imaging)イメージである。
【図1B】本実施例で得られる流動床残渣のサンプルのSEM/BSEイメージである。
【図2A】比較例で得られる最終生成物のサンプルのSEM/BSEイメージである。
【図2B】比較例で得られる流動床残渣のサンプルのSEM/BSEイメージである。
【発明を実施するための形態】
【0058】
以下では、本発明は本発明の範囲を制限するものではない実施例と図面とによってより詳細に説明される。
【実施例】
【0059】
粒子状混合リチウム金属リン酸塩材料としてUS 2007/0054187 A1で開示される方法によって得られる粒子状のリチウムイオンリン酸物質5000kg(質量xm、ここでx=500)は、本方法に従ってFluidized Bed Opposed Jet Mill AFG200(Hosokawa Alpine AG, Augsburg, Germany製)によって継続的に処理される。ジェットミルは、耐摩耗性セラミックの分類ホイール及び空気噴射ノズル及びセラミック製の生成物排出チューブを備える。チューブを導くミリングチャンバ及び他の全ての付随する部品は、ブルコラン(Vulkollan)(登録商標)ゴム層によって摩耗から保護されている。
【0060】
使用されるミリングパラメータは以下のとおりである。
【0061】
ノズル直径:5mm
空気圧:2.5bar
選別ステージ内の圧力:1atm(1013hPa)
分類ホイールの回転速度:7530rpm
流動床チャンバの充填率:10kg(すなわち質量m)
【0062】
処理は、連続的に粒子状リン酸鉄リチウム材料をジェットミルに供給することによって始まる。500kg(質量mの50回分)の粒子状リン酸鉄リチウム材料がジェットミルに供給された後、流動床チャンバの在中物が5kg(質量mの50%)に減少するまで、粒子状のリン酸鉄リチウム材料をジェットミルにさらに供給することなくプロセスが連続する。その後、ジェットミルが開き、そして、5kgの残留粉が完全に流動床チャンバから除去され、廃棄される。同じ処置、すなわち500kgの処置が、残りの4500kgの微細な粒子状のリン酸鉄リチウムについてそれぞれ繰り返される。
【0063】
最終生成物のサンプル500gは、以下の試験方法によって磁気粒子汚染の検査がなされる。
【0064】
2リットルの円筒形のプラスチックボトルに、直径12.7mmの1つのボール磁石(材質:NdFeB N35、表面:Ni−Cu−Ni、磁束密度:11700から12100ガウス)と共に、サンプル物質500gを1000mlの蒸留水に分散させる。ボール磁石は、磁極領域に触れることなくスラリーから分離され、磁束密度が最大値を有し、磁石の磁気物質付着物が極に集中するように水流が方向付けられ、蒸留水で洗い流され、超音波バスで洗浄される。その後、90℃以下の温度で実験室のオーブンで乾燥される。両極は、SEM分析のために磁気物質をサンプルホルダーの上に移す目的で、接着された導電性フィルムを備えるSEMサンプルホルダーの上に圧着される。前記分析は、磁気金属又は酸化物粒子(明るい白から明るい灰色のBSEコントラスト)と付着したリン酸鉄リチウム粒子(濃い灰色のBSEコントラスト)とを識別可能とするために、BSE探知モードで実施される。
【0065】
図1Aは、前記最終生成物のサンプルのSEM/BSEイメージを示す。リン酸鉄リチウムが強い常磁性体であるため、イメージの中央の濃い灰色の粒子は、洗浄過程にもかかわらず試験方法で用いられているボール磁石に付着する微細な粒子状のリン酸鉄リチウム生成物粒子である。SEM/BSEイメージは、金属又は主に酸化物磁気粒子による非常に小さな汚染を示すほんの少数の明るい粒子を示す。
【0066】
サンプルの定量分析は、最終生成物が、0.02ppm未満の非常に少量の粒子状汚染物質、主にFeからなる酸化第一鉄(ferrous oxide)を含むことを示す。
【0067】
さらにまた、全5000kgのミリング処理終了後の流動床チャンバから分離された最後の5kgの残渣500gの第2サンプルに、同じ試験方法によって磁気粒子汚染を見つけるための検査がなされた。
【0068】
図1Bは、ボール磁石がかなりの量の磁気粒子(粒子状汚染物質の重量において<10ppm%(主にFe−Cr−Niステンレススチール及び酸化第一鉄Fe)を運搬した第2サンプルのSEM/BSEイメージを示す。これはかなりの量の磁気汚染物質粒子が流動床チャンバに存在したことを示すが、粉砕残渣の断続的な除去によって粒子状汚染物質の蓄積レベルがかなり低下したたため、各粒子は選別ステージに阻まれる。
【0069】
上記の試験は、本方法が、本方法によって処理される生成物のわずか約1%の損失という非常に少量の粒子汚染材料を含む微細な粒子状のリン酸鉄リチウム生成物を提供することを示す。
【0070】
[比較例]
【0071】
粒子状の混合リチウム金属リン酸塩材料としてUS 2007/0054187 A1で開示される方法によって得られる5000kgの微細な粒子状のリン酸鉄リチウムは、ジェットミルが中止されず、粒子状リン酸鉄リチウム材料の全5000kgをミリングする間に流動床チャンバが空にならなかったことを除いて、前記実施例において同じジェットミルと同じミリングパラメータとによって連続的に処理された。
【0072】
全5000kgのミリング処理の最後に、ジェットミルを通過した最終生成物500gに上記の試験方法によって磁気粒子汚染を見つけるための検査が行われた。
【0073】
図2Aは、前記最終生成物のサンプルのSEM/BSEイメージを示す。濃い灰色の粒子は、再び微細な粒子状のリン酸鉄リチウム生成物粒子である。しかしながら、SEM/BSEイメージにおいて観察される金属又は酸化物磁気粒子による高い汚染を示す大量の明るい粒子が存在する。図2Aは、これらの粒子状汚染物質のいくつかは極めて大きく(50μm以上)、したがって選別ステージの典型的な分離限界粒径よりもかなり大きいことも示す。その堆積と結合して選別ステージを通過するには少ないがまだかなりの確率で存在する大きな金属又は酸化物粒子であって、流動粉末床にそのような粒子が存在する確率が高いため、最終生成物中に多くの汚染物質粒子が残存し得る。
【0074】
さらにまた、全5000kgのミリング処理の最後に、流動床チャンバから分離された最後の5kgの残渣500gに、同じ試験方法によって磁気粒子汚染を見つけるための検査が行われた。
【0075】
図2Bは、ボール磁石が非常に大量の磁気粒子を運搬した前記残渣のサンプルのSE/BSEイメージを示す。これは、流動床チャンバに、粉砕残渣と共に断続的に除去されることなく粒子状汚染物質の選別ステージの通過を促進する磁気粒子の強い蓄積が存在したことを示す。
【0076】
上記試験は、本方法によって処理される出発物質のわずか約1%の損失という非常に少量の粒子状汚染物質を含む粒子状のリン酸鉄リチウム生成物を提供することを示す。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 粒子状汚染物質及び質量xm(x>100)を有する微細な粒子状混合リン酸リチウム金属を含む粒子状の混合リチウム金属リン酸塩材料を提供し、
b) 前記粒子状の混合リチウム金属リン酸塩材料を流動ステージに供給し、前記流動ステージで流動化された物質が平均質量mを有するように前記流動ステージにおいてそれを流動化し、
c) 前記流動化された前記粒子状の混合リチウム金属リン酸塩材料を選別ステージに供給し、それに前記選別ステージを通過させ、
d) 前記質量mが10から100回前記流動ステージに供給された後、前記粒子状の混合リチウム金属リン酸塩材料の前記流動ステージへの供給を中止し、
e) 前記流動ステージに存在する前記物質の質量が前記質量mの10%から100%になるまで、前記供給の中止後に前記流動ステージに存在する前記物質を流動化し選別し、
f) 前記流動ステージから前記残渣物質を取り除くこと
を含み、合計質量xmが処理されるまで前記ステップb)からf)のシーケンスが繰り返されることを特徴とする、粒子状の混合リチウム金属リン酸塩材料から粒子状汚染物質を除去する方法。
【請求項2】
前記流動ステージへの前記粒子状の混合リチウム金属リン酸塩材料の供給が、30から70回前記質量mが前記流動ステージに供給された後に中止されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記流動ステージに存在する前記物質は、前記供給が中止された後に、前記流動ステージに存在する前記物質の質量が前記質量mの20%から80%になるまで流動化され選別されることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記混合リン酸リチウム金属が式LiMPOによって表わされ、前記MはFe,Sc,Ti,V,Cr,Mn,Co,Ni,Cu,Zn,Be,Mg,Ca,Sr,Ba,Al,Zr,La及び希土類金属からなる群から選択される少なくとも1つの金属から選択されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
前記MがFe,Mn,Co及び/又はNi並びにそれらの混合物から選択されることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記MがFeであることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記粒子状の混合リン酸リチウム金属が最大25μmのD90値を有する粒子を含むことを特徴とする請求項1から6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
前記粒子が0.8μm未満のD50値を有することを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記粒子状汚染物質が金属及び/又は酸化物質であることを特徴とする請求項1から8のいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
前記流動ステージが流動床チャンバであることを特徴とする請求項1から9のいずれか一つに記載の方法。
【請求項11】
前記方法がさらにステップa)とb)との間又はステップb)とc)との間のミリングステップにおいて、前記粒子状の混合リチウム金属リン酸塩材料をミリングするステップb1)を含むことを特徴とする請求項1から10のいずれか一つに記載の方法。
【請求項12】
前記ミリングステップがジェットミルによって行われることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記流動ステージ、前記選別ステージ及び前記任意のミリングステージが別々のステージであることを特徴とする請求項1から12のいずれか一つに記載の方法。
【請求項14】
前記流動ステージ、前記選別ステージ及び前記任意のミリングステージが、1つの装置に集積されることを特徴とする請求項1から12のいずれか一つに記載の方法。
【請求項15】
前記流動ステージは、前記ステップf)において前記流動ステージの在中物を除去するための自動イジェクト弁を含むことを特徴とする請求項1から14のいずれか一つに記載の方法。


【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【公表番号】特表2013−507247(P2013−507247A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−533524(P2012−533524)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【国際出願番号】PCT/EP2010/006266
【国際公開番号】WO2011/045049
【国際公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(508131358)ズード−ケミー アーゲー (30)
【Fターム(参考)】